ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 食品まつり a.k.a foodman - HIKARIGASASHIKOMU
  2. Horse Lords - Demand to Be Taken to Heaven Alive!  | ホース・ローズ
  3. Rough Trade ──完売間近、〈ラフ・トレード〉50周年記念公演がいよいよ来週開催、ジェフ・トラヴィスのDJもあり
  4. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  5. Arca - XXXXX
  6. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  7. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  8. アンビエント/ジャズ マイルス・デイヴィスとブライアン・イーノから始まる音の系譜
  9. R.I.P. 鷲巣功
  10. UKインディ・ロック入門──ポスト・パンク、ギター・ポップ、スカとダブ編
  11. Klara Lewis - Opening | クララ・ルイス
  12. Till Yawuh ——Till君ことティル・ヤウが自身のレーベルからアナログ盤をリリース
  13. まだ名前のない、日本のポスト・クラウド・ラップの現在地 -
  14. interview wuth Geoff Travis and Jeannette Lee 〈ラフ・トレード〉が語る、UKインディ・ロックの現在
  15. Brian Eno ──ブライアン・イーノがレーベル〈Opal〉を再始動、あわせて00年代の2作品がリイシュー
  16. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集
  17. Loraine James ——ロレイン・ジェイムズの新作、突如のリリース(しかも無料DL)
  18. Cornelius - Refractions | コーネリアス
  19. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  20. interview with Wendell Harrison 音楽の楽園=デトロイトから、ウェンデル・ハリソンがファラオ・サンダースとサン・ラーの思い出を語る

Home >  Reviews >  Album Reviews > LSDXOXO- Fuck Marry Kill

LSDXOXO

Baltimore ClubGhettoJersey Club

LSDXOXO

Fuck Marry Kill

Ghetto Gothik

Mad Mimi

野田努   Jul 11,2016 UP

 初めてシカゴのハウス・ミュージックを聴いたときに誰もが感じたのは、そのいかがわしい光沢である。ときに露骨なまでの性欲、避けがたい淫靡さを前にするとドナ・サマーでさえも清純に思えたものだった。スエーニョ・ラティーノにいたっては貴婦人だ。
 ところが、こうしたセックス文化に関しては、日本のほうが寛大だという意見を外国の方から言われたことがある人も少なくないだろう。いくら浄化されたといっても歌舞伎町は歌舞伎町だ。コンビニでエロ本は堂々と売られているし、アイドルが幼児ポルノに見えてしまう外国の方も当たり前のようにいる。ドラッグには厳しく、セックスにはゆるい。だからなのか、リアーナ良いよね、と軽く言える。この調子で、ぼくは数年前にリアーナって良いよねと、あるアメリカ人に言ったら、口を聞いてもらえないほど軽蔑されたという経験がある。広いアメリカのいち部の人たちにとって、彼女はビッチのなかのビッチなのだ。大人の男を怒らせるのに充分なほどの。
 ゲットー・ハウス/ゲットー・エレクトロ、ゲットー・ダンス・ミュージックにも、大人の男を怒らせるほどの猥褻なものがある。本作は、ブルックリンのDJ、LSDの2014年のアルバム『w h o r e c o r e』に続く、セカンド・フル・レングスのミックステープ。基本はもちろんサンプリングで(ゲットーが生演奏であるはずがない!)、カニエ・ウェストの曲も餌食にされている。
 この音楽は、まあLSDという名前からもわかると思うが、まずはどれほどアホをやってられるかという、ゲットー・ハウス(ヒップ・ハウスの極端な展開)や、かつてディプロが引用して世界中にばらまいたボルチモア・ブレイクという淫らなダンスのスタイルの延長線上にあり、近年話題のジャージー・クラブやボールルームの系譜にある。ゲットーであり、ゲイ・カルチャーであり、手法はヒップホップであり、BPMはハウスである。
 〈Fade To Mind〉が昨年出した MikeQ & DJ Sliinkの「Mind To Mind」もニュージャージー発のそのトレンドをキャッチしたもので、聴けばわかるが、細かく、ときに不規則な現代的チョップによるゲットー・ハウス/エレクトロだと説明できる。ダーティーな言葉が飛び交うものの、なんともクリエイティヴで、間違いなくパワフルで、しかもファッショナブルな〈Fade To Mind〉からリリースされたことからも察することができるように、いまはこれがクールなスタイルであり(かつてモ・ワックスがDJアサルトを出したようなもの)、同時にこのスタイルが音楽的にさらに面白くなる可能性も感じないわけにはいかない。
 だが、高尚なゲットー・ミュージックなどはそもそもゲットー・ミュージックではないという矛盾があるように、むしろ生々しいから魅力があると言える。本作『Fuck Marry Kill』はただ淫らなだけではない。微妙な緊張感がある。それはきっとストリートの緊張感なのだ。(この原稿は先週書いたものだが、その数日後、ダラスでの銃撃事件が起きた。大統領選前のアメリカのなんたる殺気。こうした黒人vs警察の模様については、次号の紙ele-king vol.18で三田格が書いている)

 本作と違って、ほとんど年齢的な理由から、実生活のぼくはストイックである。このレヴューは現代のトレンドを紹介してるだけであって、決してぼくが好きな音楽ではない。しかし、オバマ大統領の最大の功績と言われるLGBTへの取り組み(アメリカというマッチョな国の、しかも経済危機のなかで、ゲイの結婚を認めさせることがどれほどのことか……)がアンダーグラウンドの祝祭ムードを盛り上げたことは間違いないだろう。ストーンウォールは観光名所になり、ヴォーグは流行、ボールルームは栄える。そして音楽も熱気を帯びる。これがいまクールなんだよ。

野田努