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Tamaryn

Indie RockPsychedelicShoegaze

Tamaryn

Cranekiss

Mexican Summer / Pヴァイン

Tower HMV Amazon

デンシノオト Sep 11,2015 UP

 サイケデリア。それは00年代末期から2010年代のインディロックを語る上で重要なタームのひとつだ。そして、そのサイケデリアを語るうえで欠くことのできないレーベルが、ニューヨークの〈メキシカン・サマー〉である。

 同レーベルは2008年に設立されている。翌2009年にはウォッシュド・アウトのデビューEP『ライフ・オブ・レジャー』を世に送り出し、10年代的なチルウェイヴ/サイケデリアの重要な源流を作り出す。また、ネオ・シューゲイザーの重要バンド、ノー・ジョイなども本レーベルからリリースを重ねている。
 さらに昨年、アンドラス・フォックス 『ヴィブラート・オン・サイレント』や、トーン・ホーク『レッツ・クライ・アンド・ドゥー・プッシュアップス・アット・ザ・セイム・タイム』など、ポストインターネットな作品もラインナップに加えており、最先端への目配せも忘れてはいない(ワンオートリクス・ポイント・ネヴァー主宰〈ソフトウェア〉は、〈メキシカン・サマー〉傘下)。そのうえロバート・レスター・フォルサムやリンダ・パーハクスのリイシューまで行っているのだから、まさに現代性と歴史性を兼ね備えた優良レーベルといえよう。
 今年のリリース作品を見渡してみても、ジェフレ・キャンツーリデスマ『ア・イヤー・ウィズ・13ムーンズ』、トラヴィス・ブレッツァー『ワキシング・ロマンティック』、ノー・ジョイ『モア・フェイスフル』など、現代のサイケリデリアを象徴するアルバムを多数リリースしている。このタマリンの新作も素晴らしい。

 タマリンは、タマリン・ブラウンの湿り気を帯びたヴォーカルを中心としつつ、ギターのレックス・ジョン・シェルヴァートンの蒼白い炎のようなギターワークの存在感が強いバンドであった。彼らは2010年にファースト・アルバム『ザ・ウェイヴス』、2012年にセカンド・アルバム『テンダー・ニュー・サインズ』などを〈メキシカン・サマー〉に残しているが、その幽玄な音楽性は2010年代的なシューゲイズ/サイケデリアそのものといってよい作風だ。

 しかし本作において彼らは大きな方向転換を図っている。アリエル・ピンクの盟友であり、ノー・ジョイの新作も手掛けたホルヘ・エルブレヒトがプロデュースを担当し、ウィークエンドのショーン・ダーカンをバンドに迎えたのである。結果、その音楽性はシンセポップ的かつインディR&B的な華やかさと、ダークな80年代ニューウェイヴな雰囲気が濃厚になってきたのだ。

 1曲め“クレーンキス”はマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの“スーン”を思わせもするが、2曲め“ハンズ・オール・オーヴァー・ミー”、3曲め“ラスト”から一転してシンセポップ色が強くなる。6曲め“ソフトコア”からは80年代的なニューウェイヴ・モードに突入し、続く7曲め“フェイド・アウェイ・スロウ”にはコクトー・ツインズやバウハウスのような4AD的なダークな雰囲気が充満している。
 とはいえ、このような変化は意外ではない。何故なら近年のシューゲイザーは、MBV的なものと、4AD的なダークなニューウェイヴの強い影響下にあるからだ。

 タマリンの新作もそのような潮流をよく表している。しかし、それがヨーロッパの音楽ではなく、アメリカの音楽という点が私には重要に思える。ヨーロッパ的な歴史が積層されていくゴシック感覚ではなく、資本主義の廃墟に生じるアメリカ的な歴史の止まった環境(音楽でいえばカート・コバーンの死以降、90年代以降)。それが彼らのサイケデリアに(無意識であっても)強く影響しているように思えてならない。
 歴史の停滞とサイケデリア。タマリンと〈メキシカン・サマー〉は、そんな現代のポップミュージックの光景を良質なインディロック/インディ・ミュージックとしてプレゼンテーションしている。資本主義の砂漠に咲く美しいサイケデリアの花のように。

デンシノオト