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Shabazz Palaces

Shabazz Palaces

Black Up

Sub Pop/Pヴァイン

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二木 信   Nov 15,2011 UP

 キップ・ハンラハンが醸し出すアヴァン・ラテン・ジャズの妖しい色気とワンネス・オブ・ジュジュのアフロ・ファンクの濃厚なブラックネスと〈ストラタ・イースト〉のスピリチュアル・ジャズの気高さを同時に味わえるアヴァン・ヒップホップとでも言えるだろうか。あるいは、シャバズ・パラセズは、アンチコンやデイダラス、アンチ・ポップ・コンソーシアムやカンパニー・フロウ、マイク・ラッドといったヒップホップのレフトフィールドの実験主義者たちに並ぶ存在と言えないだろうか。この手の前衛的なヒップホップを聴くと、黒人音楽(あるいは、黒人文学)の歴史の奥深さというヤツを思い知らされる気がする。アミリ・バラカがシャバズ・パラセズを聴いたら、なんと評するだろうか、という知的好奇心を刺激される音楽でもある。『ピッチフォーク』はシャバズ・パラセズのことを「得体の知れないシアトルのアヴァン・ラップ・プロジェクト」と評して、2009年に彼らが自主で発表した『オブ・ライト』『シャバズ・パラセズ』といった2枚のミニ・アルバムを高く評価している。ここで紹介する『ブラック・アップ』は、彼らにとって初のオフィシャル・フル・アルバムとなる。

 シャバズ・パラセズはPalaeer LazaroとTendai Maraireという2人から成るヒップホップ・プロジェクト。(おそらくリーダーの)Palaeer Lazaroは、90年代前半にジャズ・ラップの先駆的存在としてネイティヴ・タンやアシッド・ジャズと併走したディゲブル・プラネッツの元メンバーで、バタフライことイシュメール・バトラーとして知られた人物でもある。ディゲブル・プラネッツのデビュー・アルバム『リーチン』はクロスオーヴァー・ヒットし、彼らは1993年度のグラミーの最優秀ラップ・グループ賞を受賞している。1994年にセカンド・アルバム『ブロウアウト・コーム』を発表後、実質、活動休止状態に入り、2005年にコレクション・アルバム『ビヨンド・ザ・スペクトラム』を〈ブルーノート〉から発表している。その後はグループとしては目立った動きを見せていない。イシュメール・バトラーはディゲブル・プラネッツの活動休止後、チェリー・ワインというオルタナティヴ・ヒップホップ・グループのフロントマンとして活躍している。音楽評論家の小林雅明氏のツイートで知ったのだけれど、イシュメール・バトラーは4ヒーローやテック9の曲にも参加している。ちなみに、フライング・ロータスのセカンド・アルバム『ロス・アンジェルス』の"Testament"に参加したゴンジャスフィは彼のいとこでもある。なんというか、調べれば調べるほど、ユニークなキャリアを持ったアーティストなのだ。

 PCとサンプラーを操りながら渋い声でぼそぼそとラップするPalaeer Lazaroに、Tendai Maraireはパーカッションとラップ、マリンバなんかを駆使しながら応答していく。やっていることはシンプルなのだけれど、サンプリング・ソースの引き出しの多さと間の取り方とラップの抑揚で、黒人音楽の歴史を総ざらいしていくようにこれだけ多くの表情を見せられるというのはやはりかなり面白い。マイゼル・ブラザーズの官能的なフュージョンをアップデートしたような甘美な"アー・ユー...キャン・ユー...ワー・ユー(フェルト)"やキャバレーで流れる煙たいアフロ・キューバン・ジャズとビリー・ホリデイとエレクトロニック・ミュージックを融合させた" エンデヴァーズ・フォー・ネヴァー"といった曲があったかと思えば、チャントのような掛け合いや酔っぱらったマーチング・バンドとジャズ・ドラマーをミックスさせたようなポリリズミックなドラム・プログラミングを披露したりしている。"アン・エコー・フロム・ザ・ホスツ・ザット・プロフェス・インフィナイタム"という曲のホラー・コアなトラックはオッド・フューチャー周辺とそう遠くない領域にあるように思える。またリリックが面白くて、シュールなブラック・ユーモアに溢れたリリックには、それこそイシュメール・リードのような黒人文学からの影響があるのではないかと想像する。まあ、とにかく、聴けば聴くほど、深みにはまるというか、〈サブ・ポップ〉が初めて契約を交わしたヒップホップ・アクトであるというのも納得できる。

二木 信