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Mount Kimbie

Mount Kimbie

Crooks & Lovers

Hotflush Recordings

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野田 努   Nov 08,2010 UP
E王

 ジェームス・ブレイクがまだアルバムを発表していない現在、ポスト・ダブステップの最前線にいるのはスキューバの主宰する〈ホットフラッシュ〉かもしれない。2010年にダブステップは過渡期を迎えた......といってもそれは欧米でのことだが、まあ、それでもわれわれは何枚もの印象的な作品を手にすることができた。〈ハイパーダブ〉からのアイコニカとダークスター、〈パンチ・ドランク〉からのグイード、〈オネスト・ジョンズ〉からのアクトレス、そしてもちろん〈ホットフラッシュ〉からのスキューバのセカンド・アルバム『トライアングレーション』......そう、これもたしかに美しい作品だったけれど、マウント・キンビーのデビュー・アルバム『クルックス&ラヴァーズ(ペテン師と恋人たち)』はそれらを抑えてトップに躍り出る。気がついたら1位だったというのではない。僕がただ気がつくのが遅かっただけなのである(......と、つまり偉そうに言える立場ではないわけです、すいません......)。

 ポスト・ダブステップにおいて注意すべき点は、当たり前の話だが......それをどこに落とし込むかということである。ポスト・ダブステップとは、要するにダブステップの狂騒から一歩引くということで、ブリアル以降の音を真剣に探ってみるということなのだから、寄り掛かる大きな柱を主体的に放棄するということだ。これが手法に溺れてしまいかねないことは、10年前のエレクトロニカが証明している。とにかく変わっていれば良いという、目的のない実験主義に陥りがちな状態でもあるわけだ。ゆえにグイードの『アニーディア』はよりR&B色を意識して、アクトレスの『スプラシュ(Splazsh)』はIDMテクスチャーに色目を見せた(まあ、いちばん危ういパターンではある)。
 アイコニカの『コンタクト、ラヴ、ウォント、ハヴ』はテクノとチップチューンへ、ダークスターの『ノース』はシンセ・ポップへ、スキューバの『トライアングレーション』はベルリンのミニマリズムへとアプローチしている。あるいはラマダンマンやアントールドがミニマル・テクノへと、そしてジェームス・ブレイクだけが新しい場所を切り開こうとしているのかと思っていたら、ドミニク・メイカーとカイ・カンポスのふたりによるマウント・キンビーはもうひとつの場所を見つけていた。そう、あたかも廃墟の上に温かい場所を見つけ出すように......、そして言うなればマウント・キンビーは、ブリアルとボーズ・オブ・カナダの溝を埋めようとしている。

 マウント・キンビーはザ・XXの"ベーシック・スペース"のリミックスを手掛けているが、ある意味で両者は似た感覚を持っている。収録された11曲は長くて4分という長さで、曲は空間的に録音され、反復を強調している。曲には陶酔感と緊張が混ざっている。"カーボネイティッド"や"ルビー"は真夜中をひとりで過ごす人たちのためにある。そしてより孤独な"オデ・トゥ・ベア"は上品なアンビエント・ダブステップとして繰り返し聴かれるに違いない。
 アルバムにはときとしてボーズ・オブ・カナダの牧歌性とエイフェックス・ツインの子供っぽさが適度に注がれる。トイ・ピアノと声のサンプリングがお茶目に交錯する"メイアー"はジェームス・ブレイクによるリミックス・ヴァージョンも出ているが、これはゴールド・パンダの"ユー"と並んで今年を象徴する曲のひとつである。

 もっと早く紹介するべきだった。ゴールド・パンダにも言われたマウント・キンビーのデビュー・アルバム『クルックス&ラヴァーズ』は2010年にリリースされたエレクトロニック・ミュージックにおいておそらく5本の指に入る......(いや、しかしフライング・ロータス、ゴールド・パンダ、エメラルズにOPN、アグラフも良かったし......)。
 まあとにかくいまでもUKがクラブ・ミュージックにおいて大胆な手を打ってきていることをわれわれはもっと知るべきです。

野田 努