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Solar Bears

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三田 格   Oct 12,2010 UP

 かつてトラウマはトラとウマに分かれてどうのこうの......といってたのは浅田彰だけど(爆)、00年代前半の花形サウンドだったエレクトロクラッシュもいつのまにかチップチューンとチルウェイヴに分かれていた。M.I.A.のレーベルにサインしたスレイ・ベルやディスラプト、あるいはクォーター330やニール・キャンベルによるアストラル・ソシアル・クラブの新作もチップチューンで、聴いたことはないけれど、撲殺少女工房やエラーズもその筋に当たるらしい。アイコニカやフライング・ロータスも部分的には手を出しているし、ペット・ショップ・ボーイズは早くも「ドィド・ユー・シー・ミー・カミング?」でリミックスに取り入れている。詳しくは書かなかったけれど、実はコレもそうだった→http://www.dommune.com/ele-king/review/album/000755/。
 いっぽうのチルウェイヴはエレクトロクラッシュ(やその先祖である80年代のシンセ-ポップ)がシューゲイザー(とくにアンビエント・シューゲイザー)と結びついたもので、アリアル・ピンクやウォッシュト・アウトが起源とされている。サーフ・ミュージックとの親和性も顕在化していて、このところ急速に拡大しているのは......レヴュー欄の過去ログを参照。
 
 ダブステップの狂騒に湧く〈プラネット・ミュー〉から「イナー・サンシャインEP」でデビューしたダブリンのジョン・コワルスキーとライアン・トレンチもその裾野を広げようとするニュー・カマー。ほぼ1ヶ月のインターバルでリリースされたデビュー・アルバムもチルウェイヴの例に漏れず、実にやる気のないはじまりで、EPでは『レムリアン』の成功で知られるアンビエント調ヒップホップのローンによってリミックスされていた"ツイン・スターズ"のオリジナルや続くタイトル曲に辿り着く頃には完璧にダレ切っていること請け合い。なんの深みもない音楽の谷間に意味もなく埋没してしまいます。エレクトロクラッシュからチルウェイヴを通り越してすでにラウンジ・ミュージックの域に達していると考えたほうがいいのかもしれないし、レコード・ショップのバイヤーを真似て「これがチルウェイヴの決定版だ!」と開き直ったほうがいいのかもしれない。実際、ティーンガール・ファンタジーのデビュー・アルバムはそのように書かれていた。半分ぐらいはバリアック・ハウスなんだけど。

 チルウェイヴの穏やかさにはひとつ特徴があって、それは感情的な強さを持たず、思ったほどセンチメンタルでもなければ絶望感もなく、ましてやハッピーではないし、メロディが豊富なわりにどこか淡々としていることだろう。なぜ、ここにリズムがあり、ロー・ファイのクリシェから意識的に遠ざかろうとするのか。一脈で通じる部分があるながらもピンク・フロイドのようなドラマ性はもちろんループ・サウンドの多用によって周到に回避されている(やはりアニマル・コレクティヴについてもっと考えるべきなのか?)。彼らはいったい、何を抑圧しようとしているのだろうか。それともこのシーンにフロイト的な葛藤が隠されていると判断する僕の方が何かに抑圧されているのだろうか。わからない。ぜんぜん、わからない。

 そういえば、10年ほど前に♪心の揺れを静めるために静かな顔をするんだ~と歌い出す曲があったな......

三田 格