ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Juan Atkins ──デトロイト・テクノの創始者、ホアン・アトキンスが日韓ツアー、来日は13年ぶり
  2. R.I.P. Sensational (Colin Julius Bobb) センセーショナルとの思い出
  3. 自転車日記 - デヴィッド・バーン 著 / 東辻賢治郎 訳
  4. The Durutti Column - Renascent | ザ・ドゥルッティ・コラム
  5. Various - Peace Anthems | レッド・フック・レコーズ
  6. 未来マニア──エレクトロニック・ミュージック・ガイド
  7. THE CROWD──ele-king presents HIP HOP JAPAN
  8. Columns Techno Walk 大阪~ベルリン、テクノ散歩
  9. interview with Toru Hashimoto 橋本徹がブラジリアン&ブリージンなコンピに込めた渋谷系の哲学 | 『Free Soul』&『Cafe Apres-midi』最新作をめぐって
  10. レイヴ・カルチャー──エクスタシー文化とアシッド・ハウスの物語
  11. Cornelius ──ドキュメンタリー映像シリーズ第4弾が公開
  12. interview with Juan Atkins 愛してるぜ。オレたちはVery Sexy Funkyナイトをともにするんだ。準備をしておいてくれよ!
  13. Kassel Jaeger - Sub Re | カッセル・イェーガー
  14. Arthur Russell ——アーサー・ラッセル、なんと80年代半ばのライヴ音源がリリースされる
  15. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  16. Oyubi - White birch burns
  17. Juan Atkins & Moritz von Oswald - Borderland  / Moritz von Oswald Trio - Blue | ホアン・アトキンス、モーリッツ・フォン・オズワルド・トリオ
  18. Columns スクエアプッシャーはいつだってテクノロジーの限界を超えていく ――7月20日(月祝)@昭和音楽大学、特別講義のレポート
  19. Seefeel - Sol.Hz | シーフィール
  20. 野田 努

Home >  Reviews >  Album Reviews > Solar Bears- She Was Coloured in

Solar Bears

Solar Bears

She Was Coloured in

Planet Mu

Amazon iTunes

Teengirl Fantasy

Teengirl Fantasy

7am

Merok

Amazon iTunes

三田 格   Oct 12,2010 UP

 かつてトラウマはトラとウマに分かれてどうのこうの......といってたのは浅田彰だけど(爆)、00年代前半の花形サウンドだったエレクトロクラッシュもいつのまにかチップチューンとチルウェイヴに分かれていた。M.I.A.のレーベルにサインしたスレイ・ベルやディスラプト、あるいはクォーター330やニール・キャンベルによるアストラル・ソシアル・クラブの新作もチップチューンで、聴いたことはないけれど、撲殺少女工房やエラーズもその筋に当たるらしい。アイコニカフライング・ロータスも部分的には手を出しているし、ペット・ショップ・ボーイズは早くも「ドィド・ユー・シー・ミー・カミング?」でリミックスに取り入れている。詳しくは書かなかったけれど、実はコレもそうだった→http://www.dommune.com/ele-king/review/album/000755/
 いっぽうのチルウェイヴはエレクトロクラッシュ(やその先祖である80年代のシンセ-ポップ)がシューゲイザー(とくにアンビエント・シューゲイザー)と結びついたもので、アリアル・ピンクウォッシュト・アウトが起源とされている。サーフ・ミュージックとの親和性も顕在化していて、このところ急速に拡大しているのは......レヴュー欄の過去ログを参照。
 
 ダブステップの狂騒に湧く〈プラネット・ミュー〉から「イナー・サンシャインEP」でデビューしたダブリンのジョン・コワルスキーとライアン・トレンチもその裾野を広げようとするニュー・カマー。ほぼ1ヶ月のインターバルでリリースされたデビュー・アルバムもチルウェイヴの例に漏れず、実にやる気のないはじまりで、EPでは『レムリアン』の成功で知られるアンビエント調ヒップホップのローンによってリミックスされていた"ツイン・スターズ"のオリジナルや続くタイトル曲に辿り着く頃には完璧にダレ切っていること請け合い。なんの深みもない音楽の谷間に意味もなく埋没してしまいます。エレクトロクラッシュからチルウェイヴを通り越してすでにラウンジ・ミュージックの域に達していると考えたほうがいいのかもしれないし、レコード・ショップのバイヤーを真似て「これがチルウェイヴの決定版だ!」と開き直ったほうがいいのかもしれない。実際、ティーンガール・ファンタジーのデビュー・アルバムはそのように書かれていた。半分ぐらいはバリアック・ハウスなんだけど。

 チルウェイヴの穏やかさにはひとつ特徴があって、それは感情的な強さを持たず、思ったほどセンチメンタルでもなければ絶望感もなく、ましてやハッピーではないし、メロディが豊富なわりにどこか淡々としていることだろう。なぜ、ここにリズムがあり、ロー・ファイのクリシェから意識的に遠ざかろうとするのか。一脈で通じる部分があるながらもピンク・フロイドのようなドラマ性はもちろんループ・サウンドの多用によって周到に回避されている(やはりアニマル・コレクティヴについてもっと考えるべきなのか?)。彼らはいったい、何を抑圧しようとしているのだろうか。それともこのシーンにフロイト的な葛藤が隠されていると判断する僕の方が何かに抑圧されているのだろうか。わからない。ぜんぜん、わからない。

 そういえば、10年ほど前に♪心の揺れを静めるために静かな顔をするんだ~と歌い出す曲があったな......

三田 格