ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 別冊ele-king 坂本慎太郎の世界
  2. Taylor Deupree & Zimoun - Wind Dynamic Organ, Deviations | テイラー・デュプリー&ジムーン
  3. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第3回 映画『金子文子と朴烈』が描かなかったこと
  4. Ikonika - SAD | アイコニカ
  5. VMO a.k.a Violent Magic Orchestra ──ブラック・メタル、ガバ、ノイズが融合する8年ぶりのアルバム、リリース・ライヴも決定
  6. interview with bar italia バー・イタリア、最新作の背景と来日公演への意気込みを語る
  7. MURO ──〈ALFA〉音源を用いたコンピレーションが登場
  8. interview with Chip Wickham スピリチュアル・ジャズはこうして更新されていく | チップ・ウィッカム、インタヴュー
  9. ポピュラー文化がラディカルな思想と出会うとき──マーク・フィッシャーとイギリス現代思想入門
  10. Shintaro Sakamoto ——坂本慎太郎、ニュー・アルバム『ヤッホー』発売決定
  11. heykazmaの融解日記 Vol.3:≋師走≋ 今年の振り返り WAIFUの凄さ~次回開催するパーティについて˖ˎˊ˗
  12. Columns 12月のジャズ Jazz in December 2025
  13. Eris Drew - DJ-Kicks | エリス・ドリュー
  14. Autechre ──オウテカの来日公演が決定、2026年2月に東京と大阪にて
  15. ele-king vol.36 特集:日本のシンガーソングライター、その新しい気配
  16. Shintaro Sakamoto ——坂本慎太郎、先行シングル「あなたの場所はありますか?」のライヴ演奏MV公開!
  17. Geese - Getting Killed | ギース
  18. MariMari ——佐藤伸治がプロデュースした女性シンガーの作品がストリーミング配信
  19. ele-king vol. 36 紙エレキング年末号、お詫びと刊行のお知らせ
  20. Oklou - choke enough | オーケールー

Home >  Reviews >  Album Reviews > Omar Souleyman- Jazeera Nights: Folk & Pop S…

Omar Souleyman

Omar Souleyman

Jazeera Nights: Folk & Pop Sounds of Syria

Sublime Frequencies

Amazon

三田 格   May 27,2010 UP

 映画『ミスター・ロンリー』のサウンドトラック・アルバムを置き土産に解散したらしきサン・シティ・ガールズのアラン・ビショップ(サーじゃない方)が運営するコンピレイション攻めのレーベルから、シリア産の(ほとんどテクノにしか聴こえない)カントリー・フォークの3作目。〈ファット・キャット〉が世に知らしめたコノノNo.1や、昨年は〈クラムド・ディスク〉が発掘してきたコンゴのスタッフ・ベンダ・ビリリもそうだったけど、ソウレイマンもワールド・ミュージックに対して持っているスピード感のイメージではありません。速いです。途中からは本当に速すぎます。イスラエルの戦闘機のように矢継ぎ早にタッチ・ア......いや。ワールド・ミュージックも掘る人が変わるとこうも違うというか......あー、かといってM.I.A.やチリのDJビットマンのように西欧のフォーマットに伝統を溶け込ませていくわけではなく、サンプラーやシンセサイザーを使いまくっているからというわけではなく、どこかで必然的にモダンな要素と絡み合わざるを得なかった結果なんでしょう(別なレーベルからはこんなメンツでもコンピレイションが→)。

 ソウレイマンに関していえば本国ではかなりの人気者らしく、前2作とも500本以上のカセット・リリースからセレクトされたコンピレイションなんだとか(あー、やっぱり、このレーベルはコンピレイション......)。ちなみにソウレイマンというのは本名なのかなんなのか、ウィーン包囲で有名なオスマン朝のスレイマン一世にOを足してソウルと掛けたようなスペルになっています(シリア人がそんなことはしないかなー。西欧社会においてスレイマン一世はいまだに脅威として受け止められているらしく、スローン・レンジャー上がりのダイアナ妃がトルコのデザイナーを贔屓にしていたことは、ある意味、あの結末を暗示していたとも)。

 オープニングは"いつかお前の墓をこの手で掘り返す"、続いて"ベドウィンの刺青""オレの心臓を打て""すべての女の子は婚約済み"といった曲が並び(英訳詞を見る限りでは女性にふられる歌が多いような)、ディプロが南半球で展開しまくっているような呆けたムードにはいっさいならず、パーカッションの激しさはURさえ思い出させ、ピヨピヨと飛び回る笛のような音はまるでYMO(そういえばハードコア・テクノにバグ・パイプを組み合わせたパープレクサーというユニットがあったなー)。すべてはライヴ音源らしいけど、これを聴いてシリアの人たちは踊り狂ったりしているのだろうか。いちど見てみたいような、そうでもないような。ベースが入っていないのはやはり残念だし......(砂漠にベースは響かないのかなー)。

 ここまで読んで、どんな音楽なのか、さっぱりわからないという人は間違っていないです。アチャラすちゃらかガガンガがーん、ですよ。ビシッビシッビシッビシッでピュピューピュピューとか。10分以上に及ぶ"わからない/紅茶のなかの砂糖のように"はけっこうシリアスなんですけどね。

三田 格