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interview with Ralf Hütter(Kraftwerk)

interview with Ralf Hütter(Kraftwerk)

マンマシーンの現在

──ラルフ・ヒュッター(クラフトワーク)、インタヴュー

取材:野田努/協力:赤塚りえ子    通訳:Aimie 写真:小原泰広   May 13,2019 UP

私が自転車で大怪我を負ったというのはフェイクニュースです。別の年にいちど転んだことはありましたけど。そのときは3~4日病院で過ごしました。で、前にフェイク・ニュースを流されたので、そのときは病院で新しい脳をもらったというフェイク・ニュースを自ら流しました。

大丈夫です(笑)。ここ数年のクリング・クラング・スタジオにおける作業はどんなものがあるのでしょうか? ソフトウェアの開発やヴィジュアル・テクノロジーの開発などでしょうか?

ラルフ:ソーラー・エネルギーを導入しました。ソーラー・エネルギーを導入したり、新しい歌詞を作ったり、まだ秘密ですが新しいプロジェクトをはじめたりしています。新しいプロジェクトの話は完成するまで口外できません。
 あとは、昔のアーカイヴをアナログからデジタルフォーマットに移行するすることを楽しんでいます。2、3人くらいしかいない小さな会社なんです。ステージで見る4人がコミュニケーションを取りながら力を合わせて今回のツアーやミュージアム・ツアーを可能にしています。最近ルイビトンでも演奏したんですけど、オーナーはアートをとても支持している方でした。彼は、2日前に火災が起きてしまったノートル・ダム大聖堂に多額のお金を寄付したんです。人と人の触れ合いや対話から生まれる音楽、アート、ヴィジュアルアーツや言語のインスピレーションですよね。私は残念ながら日本語は喋りはできないけど、いろんな言語を使います。“電卓”は友だちに訳してもらってから何度も日本語で歌っているのでもう慣れていますが、坂本龍一に訳してもらった“レディオアクティヴィティ”はまだパソコンの画面を見て読みながらじゃないと歌えません。で、えーと、(クリング・クラング)スタジオではインタラクティヴ・ミュージックを3Dアニメーションと3Dイメージで作り上げるのに励んでいます。未来のためのコンセプト作りもやってます。

最後にぼくも自転車好きなので訊きたいのですが、かつて自転車で大怪我されたことがあると聞きましたが……

ラルフ:それはフェイクニュースです。

通訳:全部がフェイクなんですか? 怪我すらしていないってことですか?

ラルフ:そもそも、その話をしている人たちは、私と一緒にサイクリングしたことがありません。別の年にいちど転んだことはありましたけど。そのときは3~4日病院で過ごしました。で、前にフェイク・ニュースを流されたので、そのときは病院で新しい脳をもらったというフェイク・ニュースを自ら流しました。(一同笑)でもこの怪我は仕事や生活には何の影響も及ぼしていません。

通訳:軽傷だったって事ですか?

ラルフ:はい。アルバムにもツアーにも影響は出ませんでした。新しい脳を手に入れただけです(笑)。

で、あなたの自転車好きは有名ですが(公式サイトではサイクリング用グッズを売っている)、なにゆえにあなたはそこまで自転車を愛しているのでしょう?

ラルフ:サイクリング自体からはとてもインスピレーションをもらいます。はじめたのは70年代後期でした。スタジオの外でできることを探していたのがきっかけです。昔のスタジオというのは暗くて、密閉されてて、防音環境だったので、何年もスタジオにこもってばかりの生活を送っていときに、それはなんだか私が生きていく上では正しくない環境だと感じはじめたんです。私は外に出ようと思いました。しかし、歩いて散歩したりするのは、私にはペースが遅すぎたんです。私はスキーなど他のスポーツもやりますよ。
 で、そのときに私たちは気づいたんですよ。ちょうどオランダの近くに住んでいて、オランダではサイクリング文化が発達していました。フランスでの経験からツール・ド・フランスのことを知りました。もちろん、このサイクリングを始めたことがのちの「ツール・ド・フランス」に繋がっています。
 サイクリングを通して、音楽の延長線上みたいな感覚を見出したんです。自転車に乗るマン・マシーンのようなものですね。完璧なインディペンダントになれるんです。行きたいところに行けるし、精神的にも体力的にもリフレッシュができる。音楽に似ています。残念ながら日本は道路が逆(車両は左側通行)なので、私は日本ではサイクリングできません。しかしサイクリングは音楽を作る上でインスピレーションを与えてくれる素晴らしいものです。フランスやイタリアをサイクリングしたり、サイクリングを通じて世界のことを学んだりできるんですよ。サイクリング・イベントで会えるサイクリング仲間もできました。
 では、ロボットを見ましょうか?

 クラフトワークのライヴは、彼らの大衆主義の成果のひとつと言える。3Dメガネをしたオーディエンスは、ただひたすら純粋にショーを楽しむ。もちろん“レディオアクティヴィティ”のような例外はあるにせよ、基本的にぼくたちはエレクトロ・ポップの発明者のステージを2時間のあいだ無心に楽しむのだ。そしてそれは決してあなどることのできない素晴らしい体験だった。
 ヒット曲のオンパレードのライヴではあるが、たとえばかわいらしいポップ・ソングだと思っていた“電卓”が電子のうねりを有するファンクで再現されると座っている身体が不自由に感じてならない。そのように曲はアップデートされている。個人的にもっとも好きな曲のひとつ、“ツール・ド・フランス”は、レトロな映像をともなって展開する。そこには、デジタルに統率されているであろう現在のクラフトワークが、しかしアナログに対する愛着があることを示している。そしてもちろんクラフトワークがファンキーであることはライヴで充分に証明されている。ステージ衣装を見るだけでもおわかりになるだろう。

 ヒュッターが自ら言ったように、クラフトワークには「先見の明」があった。エレクトロ・ポップだけではない。ヒップホップ、ハウス、テクノ、あるいはそのミュータントたち、つまりダブステップやトラップにいたるまで、ほとんど多くのエレクトロニック・ダンス・ミュージックには1968年にふたりのドイツ人が始動させたコンセプトに借りがある。
 クラフトワークは古くならない。それはカンやヴェルヴェット・アンダーグラウンドが古くならないのと似ているのかもしれない。つまり、完璧にオリジナルで、ヒュッターが自ら説明するように、それは流行を気にして作ったものではない、ただ自分たちで発明したものだからだ。もしクラフトワークが古くなるとしたら、それは我々がロボットを笑えなくなったとき、人間たち自身が本物のロボットになったときだろう。

取材:野田努/協力:赤塚りえ子(2019年5月13日)

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