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interview with Clark

interview with Clark

冬のための電子音楽

──クラーク、インタヴュー

木津 毅    通訳:原口美穂   Nov 06,2014 UP

俺はアンディ・ストットが大好きなんだ。彼のニュー・アルバムも良かった。『クラーク』を書いているときに聴いていたとか、それを意識していたわけではないけど、言われてみるとたしかに通じるものはあるかもね。彼のサウンドは、イギリスの北部を思い起こさせるんだ。


Clark
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■最近のベルリンのテクノ・シーンに興味はありますか? (以前は少し興味を失ったとおっしゃっていました。)

クラーク:そうでもない(笑)。でも嫌いってわけじゃない。テクノのレコードは買うし、聴くのも好きだよ。でも正直ベルリンのテクノはあまり知らないんだ。俺がハマってるのはシカゴのサウンド。あとイギリスのテクノのほうが好きなんだよね。でもアンチじゃないよ(笑)。

■(通訳)住んでいるのはまだベルリンなんですか?

クラーク:そう。まだアパートはある。でもいつも旅してるから、そんなにはいないけどね。

■(通訳)そろそろ引っ越したいとは思います?

クラーク:まだ決めてないんだ。ベルリンに帰るのは好きなんだよね。でも同時に他の場所を回るのも好きだし……旅をすると、疲れるというよりも逆に元気になるんだ。ペットが飼えないのがデメリットだけど(笑)。おかしなライフスタイルなんだよ。タイムゾーンも違うし、みんなが俺を変人だと思ってる(笑)。俺はずっとそれをやってるからあまり変わってるとは思ってないけどね。

■資料にはフィールド・レコーディングで環境音を取り込んだと説明されています。そうした手法を取ろうと思った理由は何でしょうか?

クラーク:自然の音がたくさん入ってる。機械的なエレクトロニック・サウンドにこういった音が入ることによって出来るコントラストが良いと思ってね。風、雪、雨なんかのサウンドが、レコード全体に重なって入ってるんだ。

■(通訳)いつ思いついたんですか?

クラーク:このアルバムは、春にイギリスで作ってたんだけど、冬にリリースされることがわかってたから、冬っぽいレコードにしたいと思ったんだ。冷たいというか……冷たいとはいっても、感情がないってわけじゃないよ。天候や自然のサウンドを入れて、惹きつけられるような、何か雪っぽく、肌寒い、ロマンティックな冬の雰囲気を作りたかった。確実にサマー・レコードではないよね(笑)。

■(通訳)そういったサウンドはベルリンで録ったんですか?

クラーク:ベルリンってめちゃくちゃ寒いんだ。氷が溶けないくらい寒いんだよ。だから、ブーツが氷を踏む音とか、そういう音をレコーディングした。ドラムの下に隠れてるからあまり明確じゃないけどね。あまりにわかりやすいとちょっとつまらないと思ったから、あくまでも背景にあるサウンドとして使いたかったんだ。

■録るのにもっとも苦労したのはどんな音ですか?

クラーク:フィールド・レコーディング自体はそんなに難しくないけど、そこから何を実際に使うかを決めるのが苦労だと思う。何時間もかかるんだ。雪の音を2時間聴いて、どの部分が好きかを決める。そこにエフェクトを加えると4時間かかったりもするし。どの音を使うかを決めるプロセスが大変なんだ。レコーディング自体はそんなに大変じゃないけどね。

■アルバムは“シップ・イズ・フラッディング(船が浸水する)”の不穏なノイズとオーケストラで幕を開けますが、この不安を呼ぶタイトルは何を示唆しているのでしょうか?

クラーク:この曲を聴いていると、すごくパワフルなイメージが思い浮かぶと思う。それを表しているのがこのタイトルなんだ。遭難した船や、その船に打ち付けられる水。そして船が浮いたり沈んだり。この曲のサウンドにはこのタイトルがピッタリだと思った。サウンドもダークだし、このシンプルなタイトルがそれをよく表してると思ったんだよ。

■その曲と、“ゼアズ・ア・ディスタンス・イン・ユー”の後半ではとくにオーケストラの要素が大きく入っていて少し意外に思いました。実際、クラークの音楽にはクラシックや現代音楽からの影響は強くあるのでしょうか?

クラーク:もちろん。いろんな意味でね。伝統的な音楽や楽譜に、自由なことをやるスペースがないのは好きじゃないけど。あれには満足できない。ああいう音楽だと、本来はフィールド・レコーディングのサウンドなんて入れることはできないし許されない。でも同時に、曲作りに関して制約があるのも好きなんだ。バイオリンだけで曲をたくさん書くのは無理だから、どうにかするために知恵をしぼって、いろいろなやり方を試して曲を作らなければいけない。そのチャレンジが好きなんだよね。

■“ストレンス・スルー・フラジリティ”は3分に満たない曲ですが、そのなかで美しいピアノ・ハウスが表現されていて引き込まれました。ここで連想されるような、80年代後半から90年代頭にかけての古いハウス・ミュージックはもともとお好きなんですか?

クラーク:俺はもともと強いメロディが好きなんだ。このトラックは、じつはもっとハウスっぽくなるかもしれなかったけど、途中でプロダクションを変えた。曲の半分では激しい雷雨のフィールド・レコーディングが鳴っていて、それがトラックのベースになってる。最初は細くて繊細なサウンドからはじまって、段々と重みのある深いサウンドになっていく。

■ラストのビートレスのトラック“エヴァーレイン”はあなたのこれまでのトラックのなかでも、最高に陶酔的なアンビエントになっています。この曲でアルバムを終えようと思ったのはどうしてですか?

クラーク:この曲は20分でレコーディングした曲だ。ワンテイクだった。音楽はたまにそうやって生まれる。変な感じはするけど、どこかで満足ができてるんだ。変えようとも思ったけど、やっぱり何かがしっくり来ていたから変えずにそのまま使うことにした。そんな風にできる作品もあれば、完成までに4ヶ月かかるものもある(笑)。俺にとっては、できあがった時点ですごく結論的な音楽に感じたから最後のトラックにした。うまく説明はできないけど、たくさんのフィーリングが詰まってる作品で、ほかのトラックをあとにもってくるのが非常に難しいトラックだった。だから最後にこのトラックを持ってきた。

■一方で、“ソディウム・トリマーズ”にはインダストリアル・テクノめいた圧迫感のあるサウンドが展開されています。最近はレーベル〈モダン・ラヴ〉をはじめとして、インダストリアル・サウンドが目立っていますが、そうしたものに共感はあったのでしょうか。

クラーク:俺はアンディ・ストットが大好きなんだ。彼のニュー・アルバムも良かった。『クラーク』を書いているときに聴いていたとか、それを意識していたわけではないけど、言われてみるとたしかに通じるものはあるかもね。彼のサウンドは、イギリスの北部を思い起こさせる。あのサウンドは好きだね。アンディは好きだけど、〈モダン・ラヴ〉のほかの作品に関してはあまりよく知らないんだ。彼の音楽はほかと違っていて、スローで、ダウンビートで、すごくヘビーだ。俺みたいにメロディックじゃない。そこは違いだと思う。俺はいろいろなタイプの音楽に影響されてるんだけど、もちろん彼の音楽もそのひとつだと思う。

質問作成:木津 毅(2014年11月06日)

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Profile

木津 毅木津 毅/Tsuyoshi Kizu
ライター。1984年大阪生まれ。2011年web版ele-kingで執筆活動を始め、以降、各メディアに音楽、映画、ゲイ・カルチャーを中心に寄稿している。著書に『ニュー・ダッド あたらしい時代のあたらしいおっさん』(筑摩書房)、編書に田亀源五郎『ゲイ・カルチャーの未来へ』(ele-king books)がある。

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