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interview with Mala

interview with Mala

ダブステップとキューバ、その美しい出会い

――マーラ、インタヴュー

野田 努    photos by EDDY FITZHUGH   Aug 28,2012 UP

多くの人は〈DMZ〉のリリースやイヴェントが、ダブステップの基礎を築いたと言うけれど、もともと僕は自分がやりたいことを追求しようとしてきただけで、シーンをどうこうしようと思ったことはない。

E王
Mala - Mala in Cuba
Brownwood Recordings / ビート

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■ジャイルス・ピーターソンから何らかのサジェスチョンはありましたか?

マーラ:制作の途中で、いくつかのトラックを送って聴いてもらったときに、どれが好きかという意見はもらったけど、最終的に収録した14曲の順番や中身に関してはジャイルスもレーベルのスタッフもまったく関わっていない。出来上がったものを、「完成品です」と渡しただけだったよ。それをジャイルスが聴いて、幸運にもとても気に入ってくれた。彼は完全に僕を信頼してくれて、僕の作る音楽を信じてくれていた。その分、距離を置いて見守ってくれたね。

■それだけ信頼してくれたからこそ、あなたも自信を持って取り組めたということですね。

マーラ:そう、その通り。

■今回のプロジェクトをやってみて、もっとも良かった点はなんでしょうか?

マーラ:このプロジェクトに携わったことで、僕の考え方は大きく変化した。理由はたくさんあるけれど、そのひとつが、まず僕はアルバムの制作を依頼されたことがなかった。僕自身は、アルバム制作にこれまであまり興味がなかった。だから、それが大きな変化だった。ミュージシャンと共同制作するという体験も大きな変化だった。それもこれまで体験したことがなかった。キューバを訪れたことも、初めての体験だったし、外国でレコーディングすることも初めてだった。テープを使ってレコーディングするのも初めてだったし、それを64チャンネルの巨大なSSLデスクを通してやるのも初めてだった。あんな美しいスタジオで、レコーディング・エンジニアと一緒に仕事をしたことなんてなかった。録音された素材に対して、自分がやることを周りがどう思うかなんていままで気にする必要がなかった。ひとりでしか音楽を作ったことがなかったからだ。
 だからこのアルバムの制作過程のすべてが、僕自身のエゴを捨てて、自分がわかっていると思っていた音楽の作り方をいちど忘れなければならなかった。このプロジェクトにアプローチするためには、自分自身を変えなければいけなかったんだ。自分がやりたいこと、やるべきことに真摯に向き合うということだけでなく、ジャイルスや、〈ブラウンウッド〉や、『ハバナ・カルチュラ』、そして何よりもロベルト・フォンセカと彼のバンド、ダナイ・スアレスなどのミュージシャンたちに対してリスペクトを持つことの大切さを学んだ。彼らが僕に教えてくれたこと、それは音楽だけでなく、人として教えてくれたことは本当にかけがえのないものだった。

■この経験、そしてこの作品は、ダブステップのシーンにどのように還元されるのでしょう?

マーラ:この経験は間違いなく、僕の今後に大きく影響してくると思うよ。一度、新しい考え方や仕事の仕方を学んでしまうと、もうその前の自分には戻れないよ。今後も、いままでやって来たように音楽は作り続けるけど、キューバの要素は、常に僕のなかのどこかに留まり続けるんじゃないかな。それはグルーヴかもしれないし、新たなサンプリングの仕方かもしれないし、とにかく多くのことを学ばせてくれたプロジェクトだった。

■今回のような音楽的な成熟はダブステップのシーンのひとつの可能性だと思うのですが、あなた自身は今日のダブステップのシーンについてどのような意見を持っていますか? 

マーラ:たしかに僕はダブステップのシーンに深く関わって来たし、多くの人は〈DMZ〉のリリースやイヴェントが、ダブステップの基礎を築いたと言うけれど、もともと僕は自分がやりたいことを追求しようとしてきただけで、シーンをどうこうしようと思ったことはない。そもそも「シーン」というのは誰かがコントロールできるものではないし、誰かが支配出来るものでもない。だから、僕は自分自身の方向性や、やりたいと思うことだけを考えるようにしている。この作品が、シーンに有益な何かをもたらせることができれば嬉しいとは思うけどね。

■最後に〈ディープ・メディ〉について質問させてください。スウィンドルの「ドゥ・ザ・ジャズ」が今年の自分のなかのベストなシングルなんですが、あの曲に関するあなたの評価を教えてください。

マーラ:あれはアメージングなレコードだね。僕は音楽を聴くときに、好きか嫌いかということはあまり考えなくて、何を感じるかということに重きを置いているんだけど、スウィンドルの作品は僕にとってもとても興味深くて、さまざまな影響の消化の仕方がとても独特だと思う。例えばハービー・ハンコック......彼はジャズの人間だからね、彼の音楽の作り方はとてもジャズ的だと思う。そんな彼のベース・ミュージック、サウンドシステム・カルチャーへの取り組み方は他の人とまったく違う。
 スウィンドルのことは、シルキーとクエストを介して知ったんだ。彼らがスウィンドルの曲をかけていて、僕は聴いた途端に「何だこれは? 面白いぞ」と思った。その後いくつか彼の曲を聴いて、2ヶ月くらい経ってから、連絡してみようと思った。〈ディープ・メディ〉からリリースする気はないかと訊いてみた。そしたら幸運なことに、彼もとても喜んでくれてレーベルに加わることになったんだ。
 ちょうど彼の2枚目のシングルのマスタリングが終わったところだよ。今回のはまたジャズとは少し違ったアプローチの作品になっている。発売は10月頃になると思う。彼はとても若くて、たしか僕よりも10歳くらい年下なんだけど、とても集中力があって、行動力があって努力家だ。もうすでに何年もがんばってきている。自分のレーベルもやっているし、とてもアクティヴだね。最近の多くの若いアーティストは、いちどレーベルと契約すると、あとはすべてレーベルがやってくれると思いがちだ。でも実際はそうではない。アーティスト自身も努力してがんばり続けないといけない。彼にはそういうミュージシャンシップがある。彼はいま本当にがんばっているから、向こう数年間たくさんの作品を聴けると思うよ。アルバムの制作にも取りかかっているし、常に曲を作っているからね。僕自身も彼の活躍をとても楽しみにしているよ。

■最後に、〈ディープ・メディ〉がヴァイナルにこだわる理由について、あなたの考えを教えてください。

マーラ:僕らはデジタル配信もしているけど、僕個人ににとってヴァイナルは大事なフォーマットなんだ。〈ディープ・メディ〉でリリースしている曲の99%は僕が実際にプレイする曲で、僕はヴァイナルをプレイするから。どちらかというと、僕個人のわがままだね(笑)。僕がレコードを集めるのが好きで、僕のレコード・コレクションに加えたいから(笑)。やはり音質が一番いいしね、大きなシステムで鳴らせばわかるけど、とくに僕の関わっているような音楽に関しては、このフォーマットで再生するのが最良の方法なんだ。それに、アーティストが血と汗と涙を流して作った作品だからさ、やはり手で触れるモノとして持っておきたいと思うのは自然だと思う。完成したという証でもあるしね。モノになって、やっと次の新しいことに取り組める。僕自身は、デジタルで発表するだけでは達成感が得られないな。

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MALA & COKI / DIGITAL MYSTIKZ JAPAN TOUR 2012

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取材:野田 努(2012年8月28日)

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