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工藤キキのTHE EVE

工藤キキのTHE EVE

文:工藤キキ Feb 08,2013 UP

 「ニューヨークはみんなが半分遊んでいる街だよ......」と言ってくれた長くNYに住む友だちの言葉で、人生はじめての大きな引っ越しの不安は多少和らいだと思う。世界はインターネットでつながっていて、さほどどの都市も変らないともいわれているけど、実際に住んでみるといままでとは別次元を生きている感じで、言語も習慣も違うと、寂しい、不安だ、英語わかんない、などにマジメに向き合えないほど、とにかく驚いてばかりの日々も1年が過ぎた。だけど良かったと思うのは、大人になってから来たので、すでに自分の好きなものを知っているから闇雲に何にでも手を出さなくてもいい。だって、あれもこれも、というぐらいNYは月曜から日曜まで毎日どこかでパーティがある。
 そんななかでもハーレム育ちのドミニカン・フィメールDJ(......というかアーティストと言った方がいいかも)のVenus Xと'HOOD BY AIR'というファッション・ブランドのデザイナーでもあり彼女の幼なじみの$HAYNEでオーガナイズしているパーティGHE20G0TH1K(ゲトーゴシック)は、フリークドアウトできるパーティのひとつだ。

 ダウンタウンやブルックリンのヤング・ジェネレーションが集まるパーティには案外ミュージック・ナードが少ない。サウンドシステムにうるさい人もあまりいない。'グッドミュージック'を楽しもうとするよりも、ウイード吸ってハイになって、MDMAやマッシュルームでどれだけ踊り狂えるか、フリークドアウトできるのか......というような音楽の楽しみ方をしている若い子が多いと思う。だからほんとストレス発散には最高だし、そして最近のMDMAは翌日のディプレスもない......!  
 とはいえ、GHE20G0TH1Kにはもちろんグッド・ミュージックで踊るために行っているんだけど、そのパワフルな動きを一緒につくっているのが、FADE TO MINDのKingdomやNguzunguzu、MikeQ、Fatima Al QadiriそしてPhysical Therapy、Dutch E Germ、 Brenmar、Total Freedom(この人は最高!)など、同時代にタイミングよくメンツが揃っているのも、このシーンを強いものにしていると思う。

 フロアでかっている曲は、シカゴのジュークやグライム、レゲトンやラテン・ハウス、ハード・ハウス、ローカル・アンダーグラウンドや南部のゴス・ラップ、テクノ、R&Bにアルジャジーラの放送や、メイクアップに倒錯したアメリカのティーンのYoutubeをかぶせたり、ニルバーナの"スメルズ・ライク・ティーン・スピリット"を激重くチョップド&スクリュードしたり......さらに初音ミク的なものも。そうだ、ゲストに元Three 6 MafiaのGangsta Booや地元ハーレムの仲間としてA$APも登場したこともある、かなりラジカルでクレイジーなパーティ。
 客層もゲイ・ピープル、フェミニスト、アーティスト、ミュージシャン(というかNYで出会った人の80%はアーティストまたはミュージシャンと名乗る人ばかりだけど......)。ファッション系はNYのオールドスクール「V」や「W」 ではなく、まさにGHE20G0TH1Kと同時期にスタートした、ニュースクールのファッション・サイト『DIS MAGAZINE』や、そのフォロアー。
 ハッキリ言ってNYの若い子は東京やロンドンに比べたら全員がとびきりオシャレではない、と思う。パーティに集まる若い子も、90'Sのレイヴの独自の解釈? Tumbler的なインターネットに転がっているゴミをかき混ぜたような......ファッショントレンドというよりも、DIYで混ぜこぜにしたイメージを楽しんでいる。そして、どれだけパーティのブッ飛び要素になれるか......。

 GHE20G0TH1Kも最初は小さいバーからスタートして、2010年にはそれを面白いと思ったMoMA PS1のキュレーターが毎夏開催しているWarm UpというシリーズのパーティにGHE20G0TH1Kを抜擢、その後はブッシュウイックのトルティーヤ工場などのウエアハウスのパーティで知られるようになって、2011年には『NY Magazine』や『Village Voice』のベスト・パーティに選ばれ、さらに2012年にはガゴシアン・ギャラリーでのダミアン・ハースト展のアフター・パーティ、Gang Gang Danceのフロント・アクトとして一緒にツアーを周り、ファッションウイークのDJ、そしてマイアミのアートバーゼルにも呼ばれてと......。'アメリカンドリーム'じゃないけど、新しい動きには必ずフックアップする人たちがいて'次へのステップ'が用意されているのも興味深い。しかも、そういったヤングのアンダーグラウンドのトレンドをファッションよりもアートが先に眼を付けるのが、アートマーケットが確立しているNYならではだ。
 GHE20G0TH1Kって名前もそうだけど、NYはヴェルヴェット・アンダーグラウンドしかりヒップホップしかり昔から、ラリー・レヴァンさながらダンス・ミュージックを'言葉'でつなぐようなリリカルなものに反応するDNAがある街だと思う。Venusたちにもパーティのフライヤーには'Mind Fuck'や、いつもアナーキーなパンチラインがあり、それこそエジプトのデモがあった時のアルジャジーラの放送をビートにのせるような、わけのわからないサウンドを生み出しているけど、それが狂乱の夜にがっちりとハマる。まさに言葉で煽るというNYのダンス・ミュージックの伝統を継承しているニュースクールだ。
 最初は一緒にパーティに行く友だちも少なくて、あのパーティ行ってみたいけど......ひとりだと嫌だなーと見逃したこともたくさんあったけど、開き直ってひとりでも遊びに行くうちにだんだん、いつものメンツがいたりして、東京にいた時もそう思っていたけど、一緒に酔っぱらったり踊っているうちに仲良くなるって世界共通なんだよね

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