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The Steoples

Experimental Latin R&B Soul

The Steoples

Wide Through The Eyes Of No One

Stones Throw

小川充 Sep 10,2021 UP

 1990年代にヒッポホップ・レーベルからスタートした〈ストーンズ・スロウ〉は、2000年代に入ってマッドリブのイエスタデイズ・ニュー・クインテットをリリースする頃からジャズをはじめ幅広い作品をリリースするようになっていった。現在はビート・ミュージックからロックやアンビエントなど多岐に渡る作品がリリースされるのだが、そうしたなかでもメイヤー・ホーソーンやアロー・ブラックなどのリリースでソウル~R&B路線もひとつの柱となっている。彼らとアプローチは異なるが、ザ・スティオプルズもそうしたソウル系のアーティストと言える。

 ザ・スティオプルズはガブリエル・レイエス・ホイテカーとイエオフィ・アンドーによるユニットで、2012年に「ザ・スティオプルズ・EP」でデビュー。それ以前もガブリエル・レイエスはGB(ギフティッド&ブレスド)名義で活動してきており、レーベルの〈ギフティッド&ブレスド〉も主宰している。LAビート・シーンの初期から活動するプロデューサーで、GB名義のアルバム『サウンドトラック・フォー・サンライズ』(2004年)はスティーヴ・スペイセックから大御所のアイアート&フローラ・プリム夫妻まで参加するなど、彼の幅広い音楽性と人脈が窺い知れるものだ。LAビート勢のなかにあって、マッドリブのプロジェクトのDJレルズと共に当時のUKのブロークンビーツ・ムーヴメントにも呼応したようなところもあった。ほかにもジ・アブストラクト・アイ、ザ・リフレクター、ジュリアン・エイブラーなど複数の名義でエレクトロニック・サウンドのビートメイカーとして活躍し、一方フランキー・レイエス名義では彼のルーツであるラテン音楽を主体とした作品も作っている。

 一方、イエオフィ・アンドーはイギリスからロサンジェルスに移住してきたDJ/プロデューサーで、UK時代はアシッド・ジャズ~ニュー・ジャズ方面で活躍したアウトサイドにシンガーとして参加していた。その後、ア・レイス・オブ・エンジェルスという個人プロジェクトを興すのだが、ここにはアウトサイドのときの同僚のアンドレアス・アレンも参加して、主にダウンテンポ・ソウルやファンク系の音をやっている。2007年にリリースされた『フロム・L.A.・ウィズ・ラヴ』というオムニバスにフライング・ロータス、ノーボディ、カルロス・ニーニョ、ガスランプ・キラーらと共に参加するなど、LAビート・シーンにもコミットした活動をしているが、GBの『サウンドトラック・フォー・サンライズ』にもヴォーカリストとして参加していて、ガブリエル・レイエスとの関係はその頃よはじまっていた。

 ザ・スティオプルズとしてはデビューEPの「ザ・スティオプルズ・EP」を〈ギフティッド&ブレスド〉からリリースした後、2017年に〈ストーンズ・スロウ〉に移籍してアルバム『シックス・ロックス』をリリース。そして、それから4年ぶりのニュー・アルバムの『ワイド・スロー・ジ・アイズ・オブ・ノー・ワン』を先日発表という流れとなる。ふたりのトラックメイカーが作るサウンドは、LAビート・シーンの流れを汲むジャジーなダウンテンポを中心に、ときにサイケデリックでコズミック、ときにディープに沈みこんでいくような世界を作り出す。そして、そこにイエオフィのソウルフルなヴォーカルが結びつき、スティーヴ・スペイセックやテイラー・マクファーリンなどに通じるダウンテンポ・ソウル・アルバムが『シックス・ロックス』だった。中にはアブストラクトな雰囲気のインスト曲もあり、そのあたりはビート・ミュージック色が強いなという印象を持ったものだ。

 その印象からすると、『ワイド・スロー・ジ・アイズ・オブ・ノー・ワン』はより明確なソウル色が出たアルバムとなっている。ビートメイクというよりも、イエオフィのヴォーカルをさらに生かす形でソングライティングに重点が置かれたエレクトリック・ソウルだが、随所に楽器類のオーガニックな演奏が配備されている。ストリングスとギター演奏が生み出す広がりのある空間が印象的なアコースティック・ソウルの“イン・ザ・ダンス”は、ガブリエル・レイエスならではのラテン的なフィーリングを持ち、往年のスティーヴィー・ワンダーを思い起こさせるところがある。“コットン”はマーヴィン・ゲイの“アフター・ザ・ダンス”やエムトゥーメイの“ジューシー・フルーツ”などの世界に繋がるような浮遊感に満ちたクワイエット・ストーム。ラテン・リズムを取り入れた“ワイド・スロー・ジ・アイズ・オブ・ノー・ワン”は哀愁に包まれたバレアリック・ソウルで、“ザ・グッド・ニュース”は4ヒーローのようなブロークンビーツ的なフィーリングを持つ。1970年代から1980年代の良質なソウル・ミュージックのエッセンスを受け継ぎ、そこにブロークンビーツやダウンテンポなどDJ的なセンスを融合したのが『ワイド・スロー・ジ・アイズ・オブ・ノー・ワン』である。

小川充