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Reeko Squeeze

TrapUK DrillUK Rap

Reeko Squeeze

Child’s Play 2

Rah Boy Music Ltd

三田格   Mar 13,2019 UP

 2010年代のシカゴではギャング同士の抗争によってイラクよりも人が死んでいることから「シャイラク」という呼称が定着し、これをミュージカル仕立てでスパイク・リーが映画化したことは『ブラッククランズマン』でも触れた通り。僕がもっとも印象に残っているのは通行人を撃ち殺していたタクシーがその合間に客も乗せながら走り続けたという記事で、フロリダに移住する前のジェフ・ミルズが高速道路でも弾が飛んでくるようになったと言っていたのはかなり生々しいものがあった。こうした抗争のサウンドトラックをなしていたのがドリルと呼ばれるヒップ・ホップのサブジャンルで、これがイギリスに飛び火したものがUKドリルとされ、やはりギャングの抗争とワンセットになっている。イギリスは銃ではなく、主にナイフによる殺傷事件が後をたたず、坂本麻里子さんによればこの二週間で5人が刺し殺されたそう。UKドリルの代表格といえるJ・ハスも一時、警察に拘束されたと伝えられ、ドリルとギャングが完全に重なっているかどうかは定かでないものの、90年代のLAでウエストサイド・ヒップホップの背景にクリップスとブラッズの抗争が横たわっていたことを思い出すなという方が無理だろう。同じく坂本さんによると、UKドリルのミュージシャンがユーチューブにアップする動画が抗争を煽っている要因とされ、かなり多くの動画が削除された上に、今後は新たなヴィデオをアップする際は、警察に内容を見せてからでないとアップできないことになったという。当然のことながら、動画規制に対しては賛否両論があり、そもそもUKドリルに対する様々な規制にも反対の声はある。音楽という表現手段を奪うべきではないし、音楽というはけ口を失った時の方が怖いという判断でもある。

 削除対象となったUKドリルのヴィデオをまとめて観ていると、言葉がわからないので音楽だけに集中することになり、どれも似たり寄ったりで悲壮感に満ちたトラックばかりだなあと思う。サウンドはことさらに暴力的ではない。むしろ冷たい感じが全体を覆っていて、サウンドに煽られて暴力的な言葉を吐き散らすというものでもない。その方が凄みが引き立つのかもしれないけれど……。本サイトで米澤くんが紹介してきたストームジーやオクタヴィアンもUKドリルにまとめられるMCだけれど(つーか、ジャンル分けがそんなにはっきりしているとも思えない)、音楽性はまったくといっていいほど異なり、そもそもシカゴのドリルと違って「UKドリル」である以上、グライムやUKガラージから受け継ぐものが多く、言葉以前に音楽で惹かれるところが決定的な差だといえる。好むと好まざるに関わらずワイリーやベースメント・ジャックスの流れで聞くことも可能だし、ここ数年はドリルをモノマネだけで終わらせず、どれだけドメスティックなものに消化できるかという試行錯誤が、いわば聞きものであった。そしてUKガラージからUKファンキーが分岐したり、もっと以前にはラヴァーズ・ロックからラヴァーズ・ヒップ・ホップ(=グラウンド・ビート)が新たな道筋をつけた時と同じことが、いま、アフロビーツを得ることで新たなUKサウンドを編み出しつつあるといえるだろう。大量のクズとひと握りのジェム。クリップスとブラッズの抗争が終わりを告げたところからオッド・フューチャーが出てきたということもあるだろうけれど、UKドリルはまだどうにでもなる状態のように思える(米澤くんの今後のリポートを注視いたしましょう)。

 サウス・ロンドンからリーコ・スクイーズも3枚目となるミックステープで、アフロビーツからゴム(クワイト)を加えたスタイルへと進路を変えた。ブリーピーでソリッドな作風を確立し、3~4年前に立て続けにMOBOアワードを受賞したセクション・ボーイズ(現スモーク・ボーイズ)を脱退し、チャッキー改めリーコ・スクイーズとして2015年に最初のミックステープ『Child’s Play』をリリースし、ほとんどの曲でシンプルなラガ・ベース(バッシュメント?)とひしゃげたハットだけというシンプルな構成にスタイルを刷新し、これはいいと思わせたものの(ヤング・テフロンをフィーチャーした「Lifes A Bitch」はまるでUKガラージ版リニゲイド・サウンドウェイヴ「Biting My Nails」)、続く『Str8 Authentic(ストレート・オーセンティック)』(2016)とファースト・アルバム『#LNS(ライフスタイル・アンド・ストラッグル)』(2017)ではタイトル通り、本物志向を打ち出したがためにやや古典的と感じられたり、トラップやUKドリルのステロタイプに引きずられた感が強く、ヴァリエーションとしての面白さはあるという程度だったものが、ようやく『Child’s Play』の方向性を踏襲してくれたのが『Child’s Play 2』となる。プロデューサー陣に大きな移動はないのでリーコ・スクイーズ自身の意志で作風は変えているのだろう。セクション・ボーイズとしてマイク・ウェル・メイド~イットやドレイクともコラボレーションをする機会があったので、彼なりにアメリカ進出を射程に入れた試行錯誤だったとは思う。しかし、真っ向からロンドンに意識を向けたことで、確実にオリジナリティのある一歩が拓けたことは確か。

三田格