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Khalab

DubJazzTechno

Khalab

Black Noise 2084

On The Corner

Bandcamp

野田努   Aug 09,2018 UP
E王

 ひと言で言えば、ぶっ飛ばされますね、これは。トーキング・ヘッズの『リメイン・イン・ライト』から歌メロを削除して、あの音響のみを凝縮し、さらにダブ・ミキシングを加えて、高速で再生してみる。アフロ・ファンクのえもいわれぬエコーとグルーヴ。ポリリズミックな武装。圧倒的なトランス・ミュージック。
 いまでもまだ、アフロ・ミュージックのフレーズ/リズム/音色を取り入れているエレクトロニック・ミュージックには多少はもの珍しさという価値があるのかもしれない……いや、もうないか。ま、なんにせよ、しかしDJカラブのこれ──その名も『ブラック・ノイズ2084』は、記号的にアフロを取り入れているから面白いというわけではない。情報をかき集めて作ったものであることはたしかだろうが、小手先で作った音楽とは思えない濃密さと説得力がある。雑食性の高いサウンドだが、すべての音は有機的に結びついているし、そのすごさは下調べを要することなく伝わる。
 基本的に、『ブラック・ノイズ2084』はダンス・ミュージックのアルバムだ。その冴えたミキシングによる音響の独特さを備えた1枚であり、なんといってもここにあるリズムの迫力、躍動感に満ち満ちたアフロ・エレクトロが展開される。

 まずはアルバムの前半、Tenesha The Wordsmithという女流詩人がリーディングする表題曲“Black Noise”からシャバカ・ハッチングスがサックスを吹きまくる“Dense”という曲までの展開が最高。続く“Chitita”もヤバい。ダブ処理されたチャント、地面を這いつくばるベースライン、ゴーストリーなエコー……超越的なアロフ・フューチャー・テクノ。
 
 DJカラブは、クラップ!クラップ!のマブダチで(ele-king vol.20参照)、モー・カラーズニノス・ドュ・ブラジルとも親しくしているそうだ。もともとはラジオDJだったというが、10年以上前からローマでアフリカをコンセプトにしたパーティをはじめている。イタリアの音楽は将来的によりアフリカと交わっていくだろうという読みが、カラブにはあった。
 そしてアフリカの多彩なリズムのミキシングを試みるようになったというそのパーテで、カラブはエチオピアン・ジャズのリジェンド、ムラトゥ・アスタトゥケを招いているし、マリのベテラン・シンガー、ババ・シソコ(※アート・アンサンブル・オブ・シカゴにも参加している)にも出演してもらっている。そんな縁もあってカラブは2015年、ババ・シソコとのコラボ・アルバムを出しているが、それもまた素晴らしいです。
 2015年といえば、カラブはその年、〈ブラック・エーカー〉からのEP「Tiende! 」(クラップ!クラップ!も参加)によって注目を集めているようだが、しかし本作『ブラック・ノイズ2084』は、とてもそのEPなんかの比ではない。

 アフロ・ミュージックに精通している人が聴いたら、いろんな地方のいろんな音楽が、そして多彩な楽器音が再編集されていることに気づくだろう。シャンガーン、ゴム……、まあいろいろ。ぼくは最初はマーク・エルネトストゥスのンダガ・リズム・フォースを思い出したけれど、先述したように、『ブラック・ノイズ2084』はより雑食的であり、雑種である。そういう意味でも“ブラック・ノイズ”だし、そしてたしかにこの音楽はとことんやかましく、つまりノイジーなのだ。
 アルバムの制作時に、カラブはブリュッセルの王立中央アフリカ博物館を訪ねている。同所には、国王レオポルド2世による非情な植民地政策の痕跡も残されているというが、『ブラック・ノイズ2084』の背後には、植民地主義への批判精神、ヨーロッパ中心主義への怒りが込められている。2084とはリズムにちなんだ数字のようで、リズムは、呪いを振り払うための手段でもあった。
 とはいえこのアルバムは、政治的な音楽にありがちな悪い重さに支配されてはいない。アルバムの後半、コラージュ・アートめいたクラップ!クラップ!との共作“Cannavaro”から気鋭のUKジャズ・ドラマー、モーゼス・ボイドが参加している“Dawn”への流れもまったく拍手もの。

野田努