ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Smith & Mighty ——ブリストル・サウンドのオリジネイター、スミス&マイティが久しぶりにアナログ盤をリリース
  2. The Fall ——上村彰子著『ザ・フォールの素晴らしき世界』が刊行
  3. Eli Keszler and Alpha Maid ──〈MODE〉が贈る2026年最後のプログラム、イーライ・ケスラーとアルファ・メイドの来日公演
  4. Moodymann ──ムーディーマンの来日公演が決定、今年は東京と京都をツアー
  5. Arab Strap - Half-Told Tales | アラブ・ストラップ
  6. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  7. interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax UKダブ・“トーク”・セッション | ――エイドリアン・シャーウッド×ナイトメアズ・オン・ワックス特別対談
  8. Eden Aurelius - Entre Nous / emer ft. Ugnė Uma - You and Me | エデン・オーレリウス、エメル、ウグネ・ウマ
  9. Columns #15:「すべてのロックンロールに反対してやる」 ──『UKインディ・ロック入門』刊行のお知らせ
  10. ジャパニーズ・ヒップホップ第二世代──あるDJの証言
  11. Protomartyr - Hotel Usona | プロトマーター
  12. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  13. ゲーセン波乱万丈の100年史
  14. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  15. 三田 格
  16. Marcellus Pittman ──デトロイト・ハウス珠玉の逸材、マーセラス・ピットマンの来日ツアーが開催
  17. ポピュラー文化がラディカルな思想と出会うとき──マーク・フィッシャーとイギリス現代思想入門
  18. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集
  19. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  20. METHOD MOTEL - @名古屋・栄CENTRAL

Home >  Reviews >  Album Reviews > Broken Social Scene- Hug of Thunder

Broken Social Scene

Indie Rock

Broken Social Scene

Hug of Thunder

Arts & Crafts/ホステス

Tower HMV Amazon

大久保祐子   Sep 05,2017 UP

 今年の5月にアリアナ・グランデのコンサート会場で起きた痛ましい爆発事件の翌日、同じ市内のマンチェスターでライブを行ったブロークン・ソーシャル・シーンは、ゲストにマンチェスターのレジェンドことジョニー・マーを迎えて代表曲“Anthems for a Seventeen Year Old Girl”を一緒に演奏した。その日のステージでバンドの中心人物のケヴィン・ドリューは客席に向かってこう話した。
 「もっとも大事なことは、僕らがこうしてみなで一緒にいるってことなんだ」

 トータスのジョン・マッケンタイアをプロデューサーに迎えて制作した2010年の『Forgiveness Rock Record』を最後に活動を休止していたカナダ出身のブロークン・ソーシャル・シーンが再び集まったのは2015年。その年の11月にパリのコンサート会場などで起きた銃乱射事件がきっかけだったという。そこで仲間たちは再び集まる。別々の活動に散らばっていたメンバーはみな、空白の時間と同じ数だけ歳をとっているし、各々がソロとしても活動できる経験と才能を持ち合わせている。いまや誰もがひとりで音楽を作って簡単に発信できるような世のなかで、同じパートを担当する人間が何人もいるスーパーバンドなどは、もはや時代錯誤かもしれない。それでも彼らは集まった。かつてのように、一緒に音楽を奏でるために。

 ストロークスの『Angles』を手掛けたジョー・チッカレリをプロデューサーに起用した7年ぶりのアルバム『Hug of Thunder』。雷にハグされたような衝撃の後に生まれた作品。そのつど人数が変わるバンドは、今回18人のメンバーがクレジットに名を連ねている。先に公開されていた曲の素晴らしさにまず歓喜し、これはブロークン・ソーシャル・シーンの過去の名盤に並ぶクオリティになるだろうと確信を持っていた。今作から新たに参加したアリエル・エングルが3曲でリード・ヴォーカルを担っているのだが、同メンバーのファイストにも似たハスキー且つ儚さがプラスされたような歌声が、バンドの名だたる女性ヴォーカリストたちに引けを取らないような魅力を醸し出し、楽曲に淡い色彩を美しく落とす。もちろんケヴィンやブレンダン・カニング、ファイストやエミリー・ヘインズやリサ・ロブシンガーなどお馴染みのメンバーも曲ごとに代わる代わる歌っているし、歌詞カードを覗くと“Skyline"のところに元ジェリー・フィッシュの名前も見つかったり(まあヴォコーダーで参加なのでよくわからないけれど)、相変わらずドラマチックなホーンの音色といい、大所帯バンドの醍醐味を改めて確認できる。ファイストが歌うタイトル曲は、同時期に出したソロ・アルバムの尖ったギター・ロックとはまた違う浮遊感のあるサウンドで印象的。出はじめの頃はポスト・ロックなどとも括られ、じょじょにエクスペリメンタル・ミュージックの要素を深めてきた音楽は、ときにたくさんの輝きがぶつかり合って得体のしれないパワーを発揮していたこともあったけれど、今作は少しシンプルでより誠実なサウンドに変化を遂げている。バラバラの個性はそのまま残しながら、内側に暖かく強いエネルギーを放つ。何かを隠して白く塗り潰された壁の前で共に並んで自由に絵を描くみたいに。

 ブロークン・ソーシャル・シーンの音楽を聴いていると、自分がそのクリエイティヴなものに混じって一緒に何かを作り上げているような気分にすらなる。そして“Halfway Home”で、演奏する男性たちの真んなかで女性たちが向かい合いながら

 And yon'll forget
 Call out for a change
 But not believe in anything!
 (そして君は忘れるだろう
  変化を求めて叫べ
  だけどなにも信じるな)

 と何度も何度も繰り返し腕を掲げて歌う凛々しい姿を見ると、たまらず胸が熱くなる。何だってできるような気がする。


大久保祐子