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小川充   Sep 30,2015 UP

 2000年代後半から現在まで続く80sサウンド・リヴァイヴァルの最大の貢献者であるデイム・ファンクことデイモン・ギャリック・リディック。80sサウンドにもいろいろあるが、彼の場合はモダン・ファンクやシンセ・ブギーで、自身の出生地であるUSカリフォルニア産のサウンド(LAの〈ソーラー・レコード〉などがその典型)がベースとなっている。2009年に〈ストーンズ・スロー〉から『トゥイーチゾーン(Toeachizown)』を発表し、一躍その名を轟かせた彼だが、それ以来となるニュー・アルバム『インヴァイト・ザ・ライト』が発表された。じつに6年ぶりの新作だが、その間もデイム・ファンクにとっては憧れのヒーロー格にあたるスティーヴ・アーリントン(元スレイヴ)とのコラボ・アルバム『ハイアー』(2013年)を発表し、スヌープ・ドッグの変名であるスヌープジラと組んだ7デイズ・オブ・ファンク、コンピューター・ジェイ、Jワンと組んだマスター・ブラズターでの活動や、ほかにもシングルやEP、リミックス、ミックステープ類や過去の作品集などをいろいろと出していたので、制作作業から遠ざかっていたどころか、かなり精力的に動いていた。

 こうした作品でも一貫してモダン・ファンクや、それに隣接するGファンク系ヒップホップを聴かせてきたのだが、とくに近年はダフト・パンクやファレルによってディスコ・リヴァイヴァルに火が点き、今年に入ってからもメイヤー・ホーソーンとジェイク・ワンによるタキシードがモロにシンセ・ブギー路線のアルバムを出したりと、改めてデイム・ファンクの功績を再検証する機会が増えてきたように思う。そうしたタイミングもあって、発売前から大きな話題を呼んでいたアルバムだ。〈ソーラー・レコード〉のレオン・シルヴァーズ3世(ファミリー・グループのシルヴァーズのメンバー)がプロデュースした『トゥイーチゾーン』は、ほぼ一人での宅録に近い内容だったが、『インヴァイト・ザ・ライト』はとにかくたくさんのゲスト参加があり、予算も内容も格段にスケール・アップしている。それはすなわち、この6年でデイム・ファンクの評価がいかに高まったかを物語る。そのゲストをあげると、レオン・シルヴァーズ3世と4世の親子、オハイオ・プレイヤーズのジュニー・モリソン、ジョディ・ワトリー(彼女も〈ソーラー〉を代表するグループのシャラマー出身)、そしてスヌープ・ドッグ、コンピューター・ジェイ、ナイト・ジュエルなど過去にコラボをしてきた面々、さらにQティップ、アリエル・ピンク、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフレアと多士済々だ。西海岸勢が占める中で東海岸を代表するMCであるQティップとのコラボ、異種顔合わせの最たる例であるアリエル・ピンクやフレアとのコラボなど、実に興味深いセッションが行われている。

 アルバムの楽曲を見ると、フューチャリスティックな“フローティング・オン・エア”、レフトフィールドなエレクトロ“ザ・ハント&マーダー・オブ・ルシファー”のようにさらに進化した姿を見せてくれる曲がありつつも、基本は『トゥイーチゾーン』や『ハイアー』のラインを受け継ぎ、シンセ・ベースによる重低音が貫くモダン・ファンクは相変わらずだ。というか、彼にはこれしかないし、またリスナーもそれ以外のものを望んではいない。古いとか新しいとか、時流や流行などいっさい関係ないし、ゲストに誰が来ようが日和ることもない。ここまで自身の道を貫けるのは潔いし、だからこそ説得力のある音だ。そうした中、ファンキーなサウンドももちろん素晴らしいが、彼の真骨頂は“サムホェア、サムハウ”で聴けるようなメロウなシンセ・ブギーにあると思う。これこそ西海岸の音だし、80sの匂いも残しつつ、いまの時代にもしっかりとフィットする普遍性を備えている。本作はアップにしろスローにしろ、そうしたメロウ・サイドがより洗練された印象で、“O.B.E.”には初期のラリー・ハードが持っていた美的センスと同種のものを感じさせる。そして、そのタイトルどおりスキャットを交えた“スキャッティン”は最高のAORではないだろうか。


小川充