「Nothing」と一致するもの

大崎剛 - ele-king

 なんと、食品まつりがレーベルを始動する。その名も〈Kuromon label〉。彼の地元・名古屋の友人たちをリリースする、というのがコンセプトだそうで、第1弾リリースはレーベルの共同設立者でもある、シンガーソングライターの大崎剛。時代の流れに左右されない、直球のポップ・ソングを奏でているとのことなので、チェックしておきましょう。発売は明日!

大崎剛『絵本』〈Kuromon label〉から
2019年10月22日配信リリース

食品まつりと大崎剛の立ち上げた新レーベル〈Kuromon label〉から
大崎剛の初アルバム『絵本』2019年10月22日配信リリース決定

名古屋を拠点に活動している電子音楽家の食品まつりと友人で名古屋でシンガーソングライターとして活動中の大崎剛が「地元の友達をリリースする」というコンセプトで立ち上げたレーベル〈Kuromon label〉から大崎剛の初のアルバムがリリース。
ジブリ映画の音楽にインスパイアされ音楽活動をスタートした大崎剛の、絵本のような優しくて誰もが口ずさみたくなるようなメロディと世界観、荒井由実や山崎まさよしにも通ずるメランコリックでノスタルジーを感じるサウンドと歌。
マルチプレイヤーである自身の演奏と名古屋のバンド「ミミコ」も全篇に渡りアレンジに参加。今の時代めずらしいくらいの、ど真ん中直球ひたすらに「いい曲」が全7曲収録。

大崎剛『絵本』
2019/10/22 Apple music、Spotify、各種サブスク、配信サイトで配信スタート

-収録曲-
1. ボンボヤージュ
2. 愛の
3. 明日晴
4. サーカス (feat.はやかわともみ)
5. 月見坂
6. 自問自答
7. 夢降街

interview with Floating Points - ele-king

 まず弦の響きに驚く。やがて極小の電子音が静かに乱入してくる。終盤、両者は混じり合い、高速スピッカートなのかエレクトロニクスなのか判然としない音の粒子が烈しく舞い乱れる。冒頭の“Falaise”が高らかに宣言しているように、弦(と管)がこのアルバムのひとつの個性になっていることは疑いない。ストリングスは4曲目“Requiem for CS70 and Strings”や10曲目“Sea-Watch”でも効果的に活用されており、そういう意味ではフローティング・ポインツによる4年ぶりのこのアルバムは、昨今のモダン・クラシカルの文脈から捉え返すことも可能だろう。
 が。やはり、それ以上にわれわれを惹きつけるのは、そのエレクトロニックかつダンサブルな側面だ。2曲目“Last Bloom”のエレクトロ、3曲目“Anasickmodular”や7曲目“Bias”におけるダブステップ~ジャングルの再召喚、そして先行シングルとなった“LesAlpx”の4つ打ちなんかを耳にすれば、いやでも身体を揺らさずにはいられない。他方で8曲目“Environments”の音の響かせ方はある時期のエイフェックスを想起させるし、穏やかな“Karakul”や“Birth”では細やかな実験が展開されている。サム・シェパードの雑食性が見事に花開いたアルバムと言えるが、ようするに、テクノなのだ。
 デビューから6年ものときを経て届けられたファースト・アルバム『Elaenia』(2015)によって、クラブ系以外のリスナーにまでその名を轟かせることになったフローティング・ポインツは、新たなファンの期待に応えるかのようにバンドを結成し、「Kuiper」(2016)や『Reflections』(2017)でロック的なアプローチを追究していったわけだけれど、ここにきて彼はふたたびダブステップやテクノの躍動と、実験に立ち戻っている。何か大きな心境の変化でもあったのだろうか?
 本作でもうひとつ注目しておくべきなのは、そのテーマだろう。たとえば“Environments”はリテラルに「環境」を意味しているが、「僕にとって、『Crush』は、じわじわと僕らを蝕んでいく破壊行為を想起させる」と、サム・シェパードはプレスリリースで語っている。「つまり、利己主義に凝り固まった政治的権力闘争、気候変動、抑圧された思想や人びとといった圧倒的に不可避な物事──日常的に僕らが怒りを覚えているこうしたすべてのことにたいし、無力だと感じてしまうような」。
 フローティング・ポインツがポリティカルな要素を直接的に作品とリンクさせたのは、おそらく今回が初めてだろう。プラッドがそうだったように、シェパード青年もまたこの暗黒の社会のなかで怒りに打ち震えている。その怒りが生み出した、しかしあまりに美しい音楽に、わたしたちは耳をすまさなければならない。(小林拓音)

今回、デジタルじゃなくて本物の楽器が使いたかったんだよね。本物の楽器を使って、その音をデジタルの楽器であるかのように扱いたかったんだ。僕からしたら同じなんだ。だから、このアルバムの曲の根本はぜんぶストリングスなんだよ。

今回ヴァイオリンやヴィオラ、チェロを入れようと思ったのは?

サム・シェパード(Sam Shepherd、以下SS):じつはヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、クラリネット、フルート、バスクラリネットとフレンチホルンを使ってるんだ。僕は1日じゅうストリングスを聴いていられるほどストリングスが大好きなんだ。天国の音に聴こえるんだよね。でも木管楽器って忘れられがちな気がするんだ。とくに僕自身が忘れてたりすることが多いんだけどね(笑)。トーク・トークのフロントマンのマーク・ホリスのアルバムに木管楽器の音がたくさん使われていて、僕自身はそのアルバムの曲のアレンジはそこまで好きだとは言い切れないんだけど、サウンドは大好きなんだ。すごくオリジナルで美しい音だったから僕もいつか自分の曲でそういう音を使ってみたいなと思ったんだ。

ローラ・カネルはご存じですか?

SS:知らないなぁ……名前のスペルは? 聴いてみるよ。

いまはエレクトロニック・ミュージック全盛の時代ですが、そういうヴァイオリンのようなストリングスの音が逆に求められているのかなという気もしていて。どう思います?

SS:僕は今回、デジタルじゃなくて本物の楽器が使いたかったんだよね。本物の楽器を使って、その音をデジタルの楽器であるかのように扱いたかったんだ。僕からしたら同じなんだ。1曲目はストリングスや木管楽器がふつうにスピーカーから鳴っていて、そこからブクラ(Buchla:モジュラー・シンセサイザー。かなり特定されたもの)に通して、リブートして、音を細かく切って、その切った音をデジタルな音として扱ったんだ。

エレクトロニクスとストリングスの融合が今回のテーマだった?

SS:まったくそのとおりだよ。

冒頭“Falaise”の最後のほうで鳴っているシンセはヴァイオリンのようで、まさに両者の区分が融解しているように聞こえます。

SS:モジュラー・シンセサイザーはすごくテクニカルなんだ。ほんとうはオシレイター(oscillator)っていう、シンセサイザーの音のもとになる波形をつくり出す発振器でベーシックな音をつくるんだ。そのベーシックな音をプロセシして、音楽的な音にするんだけど、今回はオシレイターの代わりにヴァイオリンを使ったんだよね。まるでヴァイオリンがこのデジタル機材の一部であるかのように扱った。だから、このアルバムの曲の根本はぜんぶストリングスなんだよ。機械でプロセスして、フェイドインさせたり、フェイドアウトさせたりしているストリングスの音なんだ。「プロセスする」っていうのは、フィルターに通したり、パンを振ったりしてるってことね。サラウンド・サウンドなんだ。

現代音楽、クラシカルはよく聴いていたんですか?

SS:クラシカルしか聴いてなかったね。エレクトロニック・ミュージックやジャズやソウルを聴きはじめたのは14歳か15歳のときだったかな。目覚めるのが遅かったんだ。僕がそのとき聴いてたエレクトロニック・ミュージックはカールハインツ・シュトックハウゼンとかモートン・サボトニックのようなクラシカル・エレクトロニック・ミュージックで、カール・クレイグとかそっち系ではなかったんだ。

ダブステップやジャングル的なリズムの曲もありつつ、全体としてはテクノのトーンで、それが見事にストリングスと合体している──今回こういうアルバムにしようと思ったのはなぜですか? 少し前まではバンド・サウンドを追求していましたよね?

SS:Elaenia』はエレクトロニックだったんだけど、バンド・サウンドになるポテンシャルがすごくあるアルバムだったんだ。ギターやドラムの音も入っててね。だからバンドにしたんだ。アルバムを聴いたときに「バンドとしてできる!」って思ったんだよね。バンドとして世界中をツアーでまわって、よりバンドっぽくなっていって、つねにライヴしてたんだ。毎日毎日ライヴ、ライヴ、ライヴ……。それで僕ら、いや、僕の音が変わったんだよね。サイケデリック・ロック・バンドのサウンドになってしまったんだ。そのツアーが2017年のコーチェラで終わって、僕は自分のスタジオに戻ってふたたび音楽をつくりはじめた。でも、もうこのときはバンドとしてっていうのは終わったので、ひとりで帰って、ひとりでつくりはじめたんだ。べつにバンドに飽きたわけじゃなくて、ちがうことをやりはじめただけなんだよね。『Elaenia』の前はテクノっぽい感じの音楽をずっとやってたし、『Elaenia』はちょっとしたバンド・フェイズだったってだけなんだ。ツアー終了と同時にそのフェイズが終わって、僕はひとりでスタジオに戻って、それまでやってきたことに戻ったんだ。だからこのアルバムは本能的というか、より直感的なものなんだよね。僕と機材だけ。僕が愛してる音楽はそういう音楽なんだ。サイケデリック・ロックも大好きだけど、テクノも大好きなんだ。

ユースセンターや更生施設に力を入れずに警察に権力を与えまくっていることが腹立たしいよ。理解不可能だ。あとは医療制度だね。お金がないと病院に行けないっていう制度には怒りを感じるよ。

今回の『Crush』はいつごろからつくりはじめたんですか?

SS:今年の2月だね。3月にはつくり終わってたよ。5週間でできたんだ。

制作にあたり「Shadows EP」(2011)を聴き返したそうですが、原点回帰のような意識が?

SS:僕は自分がつくった音楽はあまり聴かないんだ。だって世の中はもっといい音楽で溢れてるでしょ(笑)? べつに聴き飽きてるわけではないけど、つくってるときに聴きまくってるからちょっと離れたくなるんだよね。でも何年か後に聴いたりすると、なんか予想外というか……まったくちがう聴き方ができて、自分がつくったものじゃないかのような感じがしたりするんだ。わくわくするんだよね。深い意味があって聴いたりするわけじゃないんだけど、「Shadows」はもうちょっと長くやっていたかったって気持ちはあるんだ。その気持ちにたいする答えが『Crush』なのかなって思う。僕はいま「Shdows EP」がすごく好きなんだ。8年くらい前につくったんだけど、聴くといまでもわくわくするんだ。

『Crush』をつくる際にとくに参照した作品やアーティストはありましたか?

SS:ものすごいスピードでできたんだ。32年間音楽を聴いてきた僕がいて、ロンドンにある僕の大きな、機材がぜんぶ置いてあるスタジオがあって、機材が正常に動いているのを確認してくれるティムって言う仲間がいたから作業がすごく早くなった。このアルバムはスピーディに作業ができた結果みたいなものだと思うんだ。激しかったよ。音楽を聴いて「こういうふうにしたいなぁー」とかはなかったんだ。アルバム制作中は音楽を聴いてなかったからね。ゆっくりめの曲もピアノの前に座って淡々とできていった、溢れ出てきたって感じだったよ。

《Sónar 2019》でのDJはすごくダンサブルかつ多様なセットでしたが、今回のアルバムがこのようなスタイルになった理由は?

SS:いい質問だねぇ。僕の頭のなかでは、僕がいままで聴いてきた音楽が乾燥機状態になってるんだ。頭のなかで転がりまわってるんだよね。で、僕のスタジオのなかにはブクラやコルグやローランドのようなエレクトロニックな楽器がたくさんある。だから僕のつくる音楽がエレクトロニックなサウンドなんだ。たとえば僕がスタジオに行って、ヴァイオリニスト4人が座ってたとしたら、僕はきっとヴァイオリンの音楽だけをつくるだろう。たとえば「LesAlpx」のBサイドの“Coorabell”って曲なんかはドラムを全部ローランドの新しいドラム・マシーンでつくったんだ。それで8分もあるこの曲のベースを、淡々と10分でつくったよ。できちゃったんだよね。
 やっぱりエキサイティングじゃないといけないと思うんだ。エレクトロニック・ミュージックをつくるうえで僕がたいせつだと思うのは、たとえばチェロ奏者。チェロを弾くには、楽器を抱えて、包み込んで弾かないといけない。だから、チェロの演奏をみると、そのチェロの音を通り越して演奏者の心の音まで聞こえると思うんだ。エレクトロニックの機材だとそれが難しいと思うんだよね。自分と機械だからさ。リスナーがその機械を通り越してアーティストの心が聞こえるようにするには、機材のことを知り尽くさないといけないと思うんだ。これは絶対。

『Elaenia』は音響的にけっこうクリアでしたが、今回は良い意味で濁りがあって、たくさん細やかな音が入っています。それは意図的にやりました?

SS:それもつくりあげたスピードが関係してるんだと思う。今回使った機材はツアー中でも使ってる機材で、曲を早く流したり、ディテールを足すこともできるものなんだ。でもたまに、手を離したら何もコントロールできなくなる状態のセッティングにするんだ。だからつねに機材の舵を取ってないといけないんだよね。前作よりちょっと乱雑な音になっているのはそれが原因かな。ぜんぶセッティングして、機材に声を与えたんだ。でも舵は僕が握っている。野獣に手綱をつけて、暴れすぎたら引く感じって言えばいいのかな。

怒りの根本は、僕たち人間が時間を無駄にしていることからきてると思うんだ。でも希望はある。このアルバムをつくったときは絶望を感じていたし、怒ってたけど、希望がなければ何も正せないと思うんだ。希望は捨てちゃいけない。

本作の背景には「政治的権力競争」や「環境変動」などがあるようですが、やはりいまのUKの情況に影響されたんでしょうか?

SS:グローバルな情況だね。どの問題もちょっと似ていると思う。UKやアメリカ、ブラジルなどでは右派の政治が増えていて、それにしたがって独立主義も増えているんだよね。この世代にとってはほんとうに悲しいことだと思うし、それにたいして闘わないといけないと思うんだ。僕はこの問題についてなら延々と話せるよ。

そういったポリティカルなことを明確に作品とリンクさせたのは今回が初めてですよね?

SS:そうだね。このアルバム以外の作品はもっと抽象的なものばかりだったと思うな。「自分の信じているものを最前線に」っていう形でやったんだけど、それは自分の信じてることが正しいと思ってるからなんだよね(笑)。

いま何にいちばん怒ってる?

SS:毎日ちがうんだよね。たとえばUKでは青少年犯罪がすごく増えているのに、政府はどんどんユースセンターを減らしているんだ。ユースセンターや更生施設に力を入れずに警察に権力を与えまくっていることが腹立たしいよ。理解不可能だ。あとはヘルスケア・システム(医療制度)だね。僕はすべての人間がヘルスケアにアクセスできて当たり前だと思ってる。お金がないと病院に行けないっていう制度には怒りを感じるよ。ほかにも怒ってることはたくさんあるけど、僕が生きている限りずっと怒りを感じ続ける問題は、ヘルスケア・システムだろうね。いまでもつねに頭をよぎるからね。

なぜ今回のアルバムはそういうものとリンクしたんだと思いますか?

SS:リンクしているかどうかは正直はっきりわからない。今年の初めごろに僕は、人生でこれまで感じたことのないほどの絶望を感じていたんだ。その気持ちが僕の音楽に浸透したのは間違いないと思うけどね。修道士のように毎日スタジオにこもる。毎日毎日。僕はそこにいないといけないんだ。でもそれと同時に僕は、世界から自分を締め出してしまいたくないんだよね。だからつねにいろいろ読むんだ。僕自身がより意識するようになったからなのか、ニュースがどんどんひどくなっていってるからなのかわからないけど、確実に読むニュースのひどさに意識が向いているんだよね。そのニュースが僕に怒りを感じさせているし、その怒りから生まれてきた曲も確実にあるんだ。ピアノに向かって「よし、いまからボリス・ジョンソンについて曲を書くぞ」っていう感じでつくってるわけではないんだけど、自分の心が勝手に、つくる曲に反映されているとは思うんだよね。

今回アルバムをこのような構成にした意図は?

SS:けっこう難しかったよ。最初はアップテンポで次第にゆっくり、って順番で並べてみたりもしたんだけど、ぜんぜんしっくりこなかったんだよね。その並べ方だとソフトな曲を聴いてもリラックスできないって思ったんだ。友だちのキーレンとふたりでいろんなコンビネイションを聴いてみたりしたよ。キーレンはシーケンスをすごく助けてくれたんだ。“Sea-Watch”だけはちょっと多めにスペースを与えたいって思ってね。ほかの曲との距離感をたいせつにしたかったんだ。

“Sea-Watch”はアルバムのなかでもとくに静かな曲ですよね。

SS:人道的活動グループの曲なんだ。地中海に船を出して難民を救う団体なんだけど、イタリア政府は認めていない。キャロラ・ラケット(Carola Rackete)っていうドイツ人女性の船長がいて、彼女の船だけで500人の難民を救ってるんだよね。彼女やその団体の人たちはイタリアの政府からしたら犯罪者かもしれないけど、僕はほんとうのヒーローだと思ってるんだ。政治家は揉めているだけだけど、この人たちは危険な海に出て、行動を起こして、人を救っているからね。

8曲めはいきなり唐突に終わります。これは怒りですか?

SS:トラックリストある? 8曲めがどの曲かわからないんだ(笑)。……ああ、“Environments”か。このアルバムは、どの曲もけっこう重めでディテールが強いドラムスが入ってるんだよね。メロディのほうはけっこうピアニスティックでシンプルでメロンコリックだけど。“Environments”の場合はピアノがゆっくり忍び寄る感じで入ってきて、悲しみの感覚が曲の最初から最後まで存在してるんじゃないかな。でもその悲しみのうえに怒りもつねにいる感じなんだよね。曲の最後はすべてがぐるっと回転したかのような激しい怒りで終わるんだ。このアルバムをライヴでやるときがきたら、きっともっと大きな怒りを表現するんだろうなと思うよ(笑)。

そしてアルバムは“Apoptose”という連曲で終わります。「アポトーシス」と聞くと暗い印象を抱く人もいるかもしれませんが、これにはどういう意味が?

SS:僕は学校に行って生物学者になったから、こういう言葉は日常的に使うんだよね。家のキッチンから出てすぐの壁に、プログラムされた細胞死(アポトーシス)のポスターを貼ってるんだ。オタクっぽいって言われるんだよね。友だちとかが家にくると「なんでこんなポスター貼ってんだよ」って突っ込まれるし。だから僕はふだんから「アポトーシス」って言葉に触れてるんだよね。「アポトーシス」って言葉の響きが好きなんだ(註:黙字を発音して「アポプトーシス」と読むことも)。「ポップ!」ってさ、なんかシャボン玉がはじけるような、かわいい音というか。暴力的には聞こえないんだよね。なんか……良いことのようなさ。ぜんぜんいいことじゃないんだけどね(笑)。曲も悪いことを指してるし。でも言葉の響きはいい。「ポップ!」って。日本語だと風船が割れる音をどう表現するの? パン? パン! 英語だと「ポップ!」なんだよね。「ア・ポップ!・トーセス」。その響きが好きなんだ。曲中のドラムスの音もはじけてるような音になってる。ディデールがたくさん詰め込まれた曲だからいろんな音がはじけてるように聞こえると思うんだよね。アポトーシスは末期というか、細胞が死ぬ、ようするに終わりだからアルバムの最後に持ってきたんだけど、そんな悲しいとか暗い終わりって感じじゃなくて、単純に終わりって感じで最後にしただけなんだよね。

こちらの考えすぎだったかな?

SS:いや。この曲はたまたまゆるい感じの曲なんだ。逆に“Sea-Watch”とかにはすごく献身的な意味がある。クリアな意味というか。でも“Apoptose”はゆるめなんだ。

今回のアルバムは、オプティミスティックですか? それともペシミスティック?

SS:オプティミスティックだね。“Birth”は新しい命を祝福する曲だし、いま僕らが目の当たりにしている環境問題や政治問題は人間がつくってしまった問題で、だから人間で正せる問題なんだ。新しく生まれてくる人間たちでね。怒りの根本は、僕たち人間が時間を無駄にしていることからきてると思うんだ。でも希望はある。このアルバムをつくったときは絶望を感じていたし、怒ってたけど、希望がなければ何も正せないと思うんだ。希望は捨てちゃいけない。

 北海道出身のエレクトロニック・ミュージシャンのNoahが新作 『Thirty』をリリースする。英『ガーディアン』も絶賛したファースト・アルバム『Sivutie』から4年ぶりとなるアルバムで、東京に移住してからの最初の作品。そして、 『Thirty』は東京の混沌としたさまざまなイメージが彼女の折衷的なエレクトロニカ・ポップによって表現されている。まったく……渋谷にそびえ立つ高層ビルを見ているとこの風景が冗談のように思えてくるが、まさにそんな、この現実から自分だけが取り残されていくような感覚が描写されている。ぜひ、チェックしてみてください!

■ Noah「Thirty」

タイトル:Thirty
アーティスト:Noah
CAT#: FLAU81
発売日:2019年10月18日

tracklist:
1. intro
2. 像自己
3. 夢幻泡影
4. 18カラット
5. メルティン・ブルー
6. 愛天使占
7. シンキロウ
8. 風在吹
9. 像自己 alternative ver

https://flau.jp/releases/thirty/


Noah

北海道出身の音楽家。子どもの頃から慣れ親しんできたピアノの繊細さ、印象的なビートとR&Bの要素、VaporwaveのLo-Fiさとノスタルジーが同居する彼女の楽曲には、妖艶さと可憐さを併せ持った独創的な個性が形作られている。3枚のミックステープに続くファースト・アルバム『Sivutie』を2015年にリリース。英ガーディアンでMura Masa、Little Simz、Tinkらと共に同年のBest New Bands5組に選ばれるなど注目を集める。イギリスのプロデューサーkidkanevilとのプロジェクトnemui pjや、Teams、Repeat Patternと共にコンセプトアルバム「KWAIDAN」のリリース、SELA.やJoni Voidへの客演を経て、4年ぶりの新作『Thirty』を今年リリース。

DJ Python - ele-king

 ニューヨーク、と聞くとやはりまずハウスのことを思い浮かべてしまう方が多いと思われるが、じつは近年かの地ではテクノのシーンが盛り上がりを見せている。ブルックリンのプロデューサーでありヴィジュアル・アーティストでありプロモーターでもあるオーロラ・ハラル、彼女の運営するパーティ《Mutual Dreaming》やフェスティヴァル《Sustain-Release》の成功はそのひとつの証左だが、クイーンズのDJパイソンことブライアン・ピニェイロも、そのようなNYアンダーグラウンドの勢いを体現するプロデューサーのひとりだ。

 エクアドルとアルゼンチンにルーツを持つ両親のもと、NYで生まれ育ったピニェイロは、14歳のときに兄からもらったハーバートの『Bodily Functions』とボーズ・オブ・カナダの『Music Has The Right To Children』がきっかけで、〈Warp〉や〈Rephlex〉、〈Kompakt〉といったレーベルの音楽を好むようになったという。同時にミックスマスター・モリスやクルーダー&ドルフマイスター、MLOなどのアンビエントも摂取していたようだが、高校時代にマイアミへと移り住んだ彼は、そこでレゲトンをはじめとするラテン・カルチャーの洗礼を受けることになる。その後NYへと舞い戻った彼は自分でも音楽をつくりはじめ、友人だったフエアコ・Sを介してアンソニー・ネイプルズと出会う。
 ディープ・ハウスとレゲトンとの融合を思いついたピニェイロは、2016年にネイプルズの〈Proibito〉から12インチ「¡Estéreo Bomba! Vol. 1」を送り出し、翌年おなじくネイプルズの〈Incienso〉からファースト・アルバム『Dulce Compañia』をリリース、「ディープ・レゲトン」なるスタイルを確立し、一気に高い評価を得ることとなる(その間、ディージェイ・ザナックスやDJウェイ、ルイスといった名義でこつこつとジャングルやハウスにも挑戦)。そんな彼が今年、アムスの〈Dekmantel〉から放ったEPがこの「Derretirse」だ。

 先行する「¡Estéreo Bomba! Vol. 1」や『Dulce Compañia』では軸足がハウスに置かれていたが、本作でレゲトンと融合させられているのはいわゆるIDMで、たとえばアンビエント・タッチのシンセで幕を開ける“Lampara”は、キックの外し方もおもしろいんだけど、全体のムードや細やかなノイズの散らせ方はボーズ・オブ・カナダを想起させる。あるいは“Cuando”の上モノは初期のエイフェックスを彷彿させるし、“Espero”や“Pq Cq”には初期のオウテカがこだましている。ようするに「Artificial Intelligence」シリーズである。
 そのような「部屋で聴くテクノ」がきれいにレゲトンのリズムと共存しているところこそ最大のミソで、その相互作用の結果だろう、EP全体は催眠的であると同時に妙な肉感も伴っていて、なんとも不思議な空気に覆われている。レゲトンの機能性がもっとも発揮されているのは“Tímbrame”だが、“Be Si To”にはたしかにハーバートっぽさもあるので、このEPはきっと、彼がマイアミで発見したラテンという、みずからのルーツの掘り下げであるとともに、初めて夢中になった電子音楽の回想でもあるのだろう。グローバル・ビーツの観点からもIDMの観点からも(そしてノスタルジーの観点からも)捉えられる、じつに興味深い作品である。

Lee "Scratch" Perry × Brian Eno × Adrian Sherwood - ele-king

 今年発表したアルバム『Rainford』が好評のリー・ペリーですが、同作のダブ盤『Heavy Rain』が11月22日に日本先行でリリースされます。ミックス担当はエイドリアン・シャーウッド。そんなわけで本日、収録曲“Here Come The Warm Dreads”が公開されたわけですけれども、なんとブライアン・イーノがフィーチャーされています(原曲は『Rainford』の“Makumba Rock”)。イーノのソロ・デビュー作(73年)をもじったタイトルに思わずニヤリとさせられますね。なお、『Heavy Rain』が発売される11月22日には、エイドリアン・シャーウッドの来日公演も予定されています。詳細は下記より。

[12月19日追記]
 現在好評発売中の『Heavy Rain』から、イーノとのコラボ曲“Here Come The Warm Dreads”(ちなみに、左チャンネルをエイドリアンが、右チャンネルをイーノがミックスしたそう)のMVが公開されました。このコラージュ・センス……ヤヴァいですね。なお、12月26日に発売される『ele-king vol.25』は、巻頭でリー・ペリーを大フィーチャー。「ダブは赤ん坊」と語る本人インタヴューも掲載しています。ぜひチェックを。

リー・スクラッチ・ペリー×ブライアン・イーノ×エイドリアン・シャーウッド
11/22に日本先行リリースとなる『HEAVY RAIN』より、レジェンドが集った新曲“HERE COME THE WARM DREADS”を解禁!
発売日にはエイドリアン・シャーウッド来日公演も!

伝説中の伝説、リー・スクラッチ・ペリーが、11月22日(金)に発売となる最新作『Heavy Rain』よりブライアン・イーノとコラボレーションした新曲“Here Come The Warm Dreads”を解禁!

Here Come The Warm Dreads (feat. Brian Eno)
https://www.youtube.com/watch?v=41nLDnHbdhc

今作『Heavy Rain』は、今年4月にリリースされ各所から大絶賛されている『Rainford』をエイドリアン・シャーウッドがダブ・ヴァージョンに再構築。またゲストにはブライアン・イーノが参加! 他にもボブ・マーリーの作品群に参加していることでも知られる伝説的トロンボーン奏者ヴィン・ゴードンが参加している。
本日解禁された今曲は、『Rainford』収録の“Makumba Rock”をダブ・ミックスしたもので、ブライアン・イーノのアルバム『Here Come The Warm Jets』 をもじったそのタイトルにリーとエイドリアンのいたずら心が見える。

俺たちがブライアンにこの曲への参加を持ちかけた時、彼は戸惑いもせず、リー・スクラッチ・ペリーと一緒に何かやることを喜んでくれた。 ──エイドリアン・シャーウッド

国内盤にはボーナス・トラックが追加収録され、解説書が封入。数量限定でオリジナルTシャツセットも発売! LPは通常盤に加え限定のシルバー・ヴァイナルも登場し、オリジナルである『Rainford』のゴールド・ヴァイナルと合わせてゲットしたいアイテムとなっている。11月22日(金)に日本先行リリース(海外は12月6日(金)リリース)。
そして日本先行リリース日に、エイドリアン・シャーウッドのヘッドライン公演が大決定!! 詳細は下記をチェック。

label: On-U Sound / Beat Records
artist: Lee "Scratch" Perry
title: Heavy Rain
release date: 2019.11.22 FRI ON SALE
日本先行リリース!

国内盤CD BRC-620 ¥2,400+税
国内盤CD+Tシャツ BRC-620T ¥5,500+税
限定盤LP(シルバーディスク) ONULP145X ¥OPEN

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10538

TRACKLIST
01. Intro - Music Shall Echo
02. Here Come The Warm Dreads
03. Rattling Bones And Crowns
04. Mindworker
05. Enlightened
06. Hooligan Hank
07. Crickets In Moonlight
08. Space Craft
09. Dreams Come True
10. Above And Beyond
11. Heavy Rainford
12. Outro - Wisdom
13. Drown Satan (Bonus Track for Japan)

UKダブのゴッドファーザー、エイドリアン・シャーウッドのヘッドライン公演!!
自身のセットに加え、ゲスト・アクトのライヴのダブ・ミックスをその場で行うことが決定!

ADRIAN SHERWOOD and more
Time Boom X The Upsetter Dub Sessions

Exotico De Lago Live Dub Set by Adrian Sherwood
and more...

2019.11.22 Fri WWW X
Ticket Adv. ¥5,800
Open 18:00 / Start 18:30

UKダブのゴッドファーザー:エイドリアン・シャーウッドが、マイティ・アプセッター=リー・スクラッチ・ペリーとの過去35年間の冒険を総括するライヴをここ日本で行うことが大決定!!
オリジナルのマルチトラック等マスター音源を用いて、エイドリアンとリーとの大名盤『Time Boom X The Devil Dead』『Secret Laboratory』から『Dubsetter』『Rainford』 そして最新作『Heavy Rain』、さらには伝説的な Upsetter Productions、Black Ark のアーカイヴにまで潜り込み、生ダブ・ミックスを行う。
さらに、ゲスト・アクトとして長久保寛之を中心に結成され、ヴィンテージな質感とレイドバックした空気感、そして、ストレンジでムーディーなサウンドを展開するバンド、エキゾティコ・デ・ラゴの出演も決定し、なんとライヴのダブ・ミックスもその場でエイドリアンが行うことが決定! ダブに浸り、目の前で繰り広げられる伝説のミックス技に圧倒される夜。見逃せない体験となるだろう。
来場者特典として、エイドリアン・シャーウッドが今回のために録り下ろした特典 MIX CD をプレゼント!

チケット一般発売中!!
詳細はこちら:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10536

象は静かに座っている - ele-king

 1行目を書き出すことがこんなにも楽しく、そして、どこから書けばいいのか皆目見当がつかない作品も珍しい。題材から書き始めれば重苦しい作品だという先入観が生まれてしまうだろう。特異な撮り方から説き始めれば過剰にシネフィル的な作品だという印象を与えるかもしれない(まあ、シネフィルだけど)。上映時間が4時間近いといえば何を想像するだろうか。どうしよう。どこから書こう。あー楽しい。

 中国の地方都市を舞台にした中国映画だけれど、仕上がりはヨーロッパ映画。始まってほどなく中期ヴィスコンティやベルトルッチの名前が思い浮かぶ。フー・ボー監督は実際にタル・ベーラに師事したそうで、ベーラが94年に撮った『サタンタンゴ』が奇しくも今年、日本で初公開となっている。こちらは上映時間が7時間。さすがに観ていない。気合が足りない。

 やはり題材から明確にしていこう。重慶が人口で上海を抜いたとか、発展的な側面ばかり伝えられる中国とはまるで無縁の地方都市(北京から南東に50キロ)。かつては炭鉱業で栄えたらしく、中途半端に飾り立てられたショッピング・モールが逆に物悲しさを増幅させる。経済成長から取り残された地方都市だと一目でわかるということは格差社会の実相をリアルタイムで記録したということであり、今年のカンヌでパルムドールを獲得したポン・ジュノ監督『パラサイト』が中国では格差社会を意識させるという理由で前日になって公開中止になったという事実と合わせて考えてみると、一時的に忘れられるようなことがあっても、歴史的な文脈を持ち出される時には何度も思い出される作品になるだろうということが予見できる(『パラサイト』は日本では来年1月公開予定)。

 公団なのか低所得アパートなのか、画一的な間取りの集合住宅で朝を迎えるいくつかの家族。かなりの大人数を絡ませる群像劇なので、いきなり誰が誰だかわからなくなりかけてしまい、しかも、老若男女のすべてが荒んでいて、キャラクター的にも見分けがつかない。チャン・ユー演じるユー・チェンが窓を開けると「ゴミを燃やすな!」と怒鳴る声が路上から聞こえる。ユー・チェンは声が聞こえた方向に「燃やせ!」とハッパをかけ、路上からは「下りてこい!」と恫喝する声が戻ってくる。フー・ボー監督は登場人物が誰かと会話している時に、会話の相手をほとんど映さない。会話だけでなく、登場人物が何をしているか、手の先にあるものとか、登場人物が見ているものをまったくといっていいほどフレームに収めない。監督が撮っているのは登場人物の意識で、誰かが登場人物に話しかけても、ほかのことを考えていて相手の話を聞いていなければ、相手にはフォーカスを合わせず、ぼんやりとしか画面に映し出されない。後半でユー・チェンたちが食事をしていた食堂のコックが火を出してしまい、危うく火事になりかけるシーンでもカメラは厨房に入らず、長々と白い壁を映し出して意識的に情報をカットしていく。これは最近でいえばネメシュ・ラースロー監督が『サウルの息子』(15)で誇張気味に採用した手法と近いものがある。『サウルの息子』はホロコーストに収容されたユダヤ人の視点でその世界を描くというもので、主役となる人間は写らないというものだったけれど、もう少しカメラを後方に引いて、登場人物の背後から写したのが、同監督による『サンセット』(18)だった。神の視点を排除したとしてもいいし、スマホの世界観で視界を切り取ったと考えてもいいけれど、この撮り方を群像劇に応用したのが『象は静かに座っている』という流れに見えてしょうがない(実際には『サンセット』の公開前に完成している)。人物の周囲をあまり映さないということは、周囲で起きていることが登場人物にどんな影響を及ばしているのかよく分からないということで、どの人の人生もとても不安なモードに包まれて感じられる(『サイタマノラッパー3』にも同様な手法が効果的に用いられていた)。そして、何かが起きるとすべてが突発的な出来事のような印象を持ちやすく、ユー・チェンの弟が階段から落ちたり、リー・ツォンシー演じるワン・ジンの飼っている犬がほかの犬に噛み付かれたりしても、すべてが終わってからでないと事態を把握することはできない。実際にも事件を「目撃する」人よりは、事故直後に現場を「見た」という人の方が多いように、ある意味、現実の把握の仕方は(映画的ではなく)現実に近いものになっている。

 登場人物は全員が過度に荒んでいて会話の多くは怒鳴り散らすだけ。ワン・ユーウェン演じるファン・リンと母親の会話がとくにヒドく、全体に子どもを持つ親たちの大人気なさは際立っている。このような家族をいくつか見せたあとで、ここにいては子どもの教育によくないといって文教地区に引っ越そうとする一家が映し出される。引っ越すためには祖父であるワン・ジンに老人ホームに入ってもらわねばならない。ワン・ジンは納得がいかず、その場から逃げるように犬を連れて散歩に出る。この辺りを見ていて、日本で起きた殺人事件について中国の人がツイッターでつぶやいていたことを思い出した。登戸でバスを待つ子どもたちの列に刃物で切りかかった男の事件があった頃だったと記憶しているけれど、そういったタイプの犯罪者は「まるで社会に復讐しているかのように見える」と、その人はつぶやいていた。池田小事件や秋葉原通り魔、相模原障害者施設殺傷事件なども話題に上がっていたかと思う。え、しかし、待てよ。中国にも刃物を持った男が小学校に乱入したというような事件は年に1~2回あるじゃないか。なのに、日本の事件だと「社会」との関係で起きたように見えるというのか。中国の事件についてはそうではないというのだろうか。また、登戸の事件があった時、ひきこもり差別はよくないという声が起きるほど日本のTV番組ではそのように「予備軍」についての議論が拡大していったけれど、僕が奇妙に思ったのは予備軍がいるということは、どうも全員が共有している前提なのである。誰ひとりとして「個人が起こした犯罪」とは思っていない(というか、中国の人がツイートしていたように「復讐されるような社会に住んでいる」という自覚があるということである)。文教地区に引っ越そうとしている一家が「その地区」を見限っていることはわかる。その時に、それが日本で「社会」と感じられるようなものが中国でも同じように意識されているかどうかが僕にはよくわからなかった。中国は個人主義だというし、一度だけ北京と大同を旅行した時に、そのようにも感じたこともあるのだけれど、『象は静かに座っている』に描かれている人たちが一様に荒んでいるのはもはや個人にはどうすることもできない範囲の問題なのか、それとも……

 最後に時間のことも。坂本龍一が「4時間近くと長い映画だが、無駄なショットがあった記憶はない」と本作にコメントを寄せている。僕も同感である。とんでもない構成力だし、テーマに合った長さだと思う。主には4人が主役のような動きをしていて、誰にでも感情移入できるし、誰にも感情移入しなくていい。KLFならぬセルロイド・リベラシオン・フロントが寄せた「ジョイ・ディヴィジョンの歌の執拗なベースラインのよう」という評価もなるほどだけれど、「パンクの身体化を忘れず、低下層の視点を写している」と結ばれると、ちょっと違和感が。『象は静かに座っている』は社会派というよりはもっと神話を映像化したものに思えたから。「この世界、ヘドが出る」と、人生に絶望しているセリフのオン・パレードは、だから、ある特定の社会や時代と不可分ではなく、ユビキタスな価値観として機能する。「ヘドが出る」からどうするのか。変えるのか。消えるのか。諦めるのか。死ぬのか。(以下、ネタバレ)長距離バスで満州里に向かうポン・ユーチャン演じるウェイ・ブーは同じように孫の手を引いて同じバスに乗りかけてやめたワン・ジンに「どこも同じだ。だから行く前に自分を騙すんだ」と諭される。ワン・ジンが孫を連れていることにもおそらくは意味があり、中国では子どもの将来を親が決めすぎるということがよく言われる。文教地区への引越しはまさに「孫」の将来をワン・ジンの息子夫婦が決めようとしているからで、孫娘は自分の意思でそこから逸脱しようとしている。息子夫婦が表しているものは経済成長であり、孫娘がそれを選択しなかったことによって、この作品には対立していない親子はひと組も出てこないという図式が出揃うことになった。引き裂かれている。この部分はまさにディヴィジョン(分断)である。ワン・ジンはブーに向かって、こう続ける。「お前はまだ期待してる。一番いい方法は、ここにいて向こう側を見ることだ。そこがより良い場所だと思え、だが行くな。行かないから、ここで生きることを学ぶ」と。ウェイ・ブーは、しかし、その言葉に納得しなかったのか、それとも納得した上でなのか、ワン・ジンたちにも一緒に行こうと誘い、4人を乗せてバスは満州里を目指して走り出す。彼らが目指しているのは象が静かに座っている場所である。象は一生を立ったまま過ごす動物で、「象が座っている」ということは、それは死を意味している。

 フー・ボー監督は本作品を完成したのち、自殺。29歳だった。
                                    

『象は静かに座っている』予告編

interview with Dego - ele-king

何もかもがトゥー・マッチだね。情報にしても、表現方法にしても、世間の評判だって誇張して伝えられることがある。そうしたものに対して自分の中からストレートに出てきた言葉がトゥー・マッチなんだ。

 ディーゴのニュー・アルバム『トゥー・マッチ』が、自身のレーベルの〈2000ブラック〉からリリースされた。その前のアルバム『ザ・モア・シングス・ステイ・ザ・セイム』から4年ぶりだが、2017年にはカイディ・テイタム(正確な発音ではテイサン)とのユニットであるディーゴ&カイディでアルバム『アズ・ソー・ウィ・ゴーウォン』をリリースしていて、ほかにもEPや12インチをいろいろ作るなど、ここ何年かのディーゴの活動は活発だ。ソロやディーゴ&カイディのほか、カイディ、アクワシ・メンサー、マット・ロードと組んだ『テイサン、メンサー、ロード&ランクス』(2012年)があり、ほかのアーティストの作品も出すなど、〈2000ブラック〉の運営も精力的におこなっている。かつての4ヒーロー時代にはドラムンベースの道を開拓し、その後ジャズやソウルなどさまざまな音楽を取り入れ、テクノやハウス、ヒップホップなどを融合してブロークンビーツの世界へと進んだのだが、そんなディーゴもいまや大ヴェテランの域に達している。4ヒーローの『パラレル・ユニヴァース』(1994年)は今年でリリースから25周年を迎え、そんなディーゴの時代を実体験していた人も年を取ってしまった。一方で、ロンドンからは常に新しいアーティストが登場し、いまはサウス・ロンドンのジャズが盛り上がっていたりする。かつては時代の最先端を走り、エレクトロニック・ミュージックの牽引者だったディーゴだが、現在の彼はどんなことを考え、音楽とどう向き合っているのだろうか? 『トゥー・マッチ』のリリース・ツアーで来日中のディーゴに、アルバムのことを中心にDJや最近の音楽、ロンドン・シーンのことなどを訊いた。

いまの若いアーティストたちは、どうも俺からすると自分のサウンドを磨いたり、進歩させたりすることに時間や労力をあまり割いているとは思えないんだ。

『トゥー・マッチ』はソロ・アルバムとしては『ザ・モア・シングス・ステイ・ザ・セイム』から4年ぶりですが、その間もディーゴ&カイディのアルバムや12インチやEPなどのリリースがありました。また〈2000ブラック〉の運営や今回のツアーのようなDJ活動などで充実していたと思いますが、改めて『トゥー・マッチ』をリリースしようと思い立ったきっかけは何でしょうか?

ディーゴ:アルバムというか曲作り自体はどんなときも常にやっているんだ。それが俺のライフスタイルだからね。アルバムは自分を表現するいちばんの方法だから、どのタイミングで出すかはずっと考えているんだ。今回はそれが十分に熟した機会だと思ったからリリースしたのさ。

いつ頃から制作に取りかかりましたか?

ディーゴ:去年の10月頃にはじめて、今年の1月までの3、4ヵ月で作ったよ。

あなたはたくさんの名義で活動をおこない、ディーゴ&カイディのようなコラボも多いのですが、そうした中でディーゴ名義での作品はどんな位置づけになりますか? もっともあなたらしさが出たプロジェクト、好きな音楽が表われたものということでしょうか?

ディーゴ:ソロは自分ですべてをコントロールできるから、単純に楽しいよね。自分らしくいられるプロジェクトで、好きなことを追求しているというのはそうだよ。でも、他人と一緒にやることも、お互いに刺激を与えて高め合っていけるから、ソロとは違う面白さがある。だからソロにしろ、コラボにしろ、自分にとってはどちらも大切なことなんだ。

アルバム・タイトルにもなっている『トゥー・マッチ』にはどんな意味が込められているのでしょうか? 個人的には情報などトゥー・マッチなことが多くて複雑な現代社会、そうした中で音楽もトゥー・マッチな方向に進みがちだけど、それらトゥー・マッチなものを捨ててシンプルに取り組んだアルバムではないかなという気がします。プロダクションも比較的にシンプルにしているようですし。

ディーゴ:何もかもがトゥー・マッチだね。情報にしても、表現方法にしても、世間の評判だって誇張して伝えられることがある。そうしたものに対して自分の中からストレートに出てきた言葉がトゥー・マッチなんだ。今回は特にシンプルに取り組んでいるというわけではないけど、今までのソロやコラボを振り返りながら今回はどうやっていこうかと考えて、ディーゴ&カイディとか4ヒーローとかをクロスオーヴァーさせて、どういった方法が自分にとって適しているかをいろいろと探りながら作っていったね。アルバムの最初はダウンテンポではじまって、それが中間でアップテンポに変わっていって、最後にまたダウンテンポに戻っていくという流れがシンプルに映っているのかもしれないけど。

『アズ・ソー・ウィ・ゴーウォン』はカイディの影響もあってか、レゲエやアフロ、カリビアンなどの色合いが出た曲が多く、またジャズ系ミュージシャンの参加もあってフュージョン風の作品も散見されたわけですが、『トゥー・マッチ』に関してはどんな色合いのアルバムになったと思いますか?

ディーゴ:『アズ・ソー・ウィ・ゴーウォン』は自分たちのルーツを映し出したものなんだ。俺やカイディにはジャマイカやカリビアンの血が流れていて、ロンドンで生まれ育ってきた。自分たちのルーツはどこにあって、アイデンティティは何なのか、そんなことを考えながら作ったアルバムなんだ。言わば俺たちのステイトメントなんだよ。『トゥー・マッチ』は俺のもっとパーソナルな部分がベースになっていて、自分自身への問いかけに対してナチュラルに出てきたサウンドなんだ。

いろいろなタイプの作品が収められていますが、個人的には“ア・ストロング・ムーヴ・フォー・トゥルース” “アイ・ドント・ワナ・ノウ” “ライフ・キャン・ビー・アンリアル”など女性シンガーをフィーチャーしたソウルフルなナンバーが印象的で、かつてのあなたのプロジェクトのシルエット・ブラウンに近いイメージかなと思ったのですが。

ディーゴ:俺自身はあまりそういったことを考えたことはなくて、自然に作った結果じゃないかな。まあ、ヒップホップやソウルのヴァイブスを注入していくというやり方は意識したから、シルエット・ブラウンでやっていたことが多少の影響はあるのかもしれないけど。

プロダクションにはカイディ・テイサン、アクワシ・メンサー、マット・ロードなど〈2000ブラック〉の仲間たちが参加していて、そうした点であなたの昨今のソロ作やディーゴ&カイディ、『テイサン、メンサー、ロード&ランクス』などとも繋がっていますが、ある意味で現在の〈2000ブラック〉を映し出したような作品でしょうか?

ディーゴ:〈2000ブラック〉の音をもっとも表現しているのが『テイサン、メンサー、ロード&ランクス』で、それに対して『トゥー・マッチ』は、さっきも言ったけどもっとパーソナルなものなんだ。だから両者には違いがある。

ということは、たとえば同じメンバーが参加していても、それが個人のソロ作か、コラボ作品か、単なるゲスト参加作かで内容も異なるということですか? 曲作りまでじっくり関わるのか、それともでき上がったトラックの上でキーボードとかのソロを演奏するとか、共演といってもいろいろありますが。

ディーゴ:それは曲によって全然変わってくるよね。誰が舵を取るかによって曲の方向性は変わる。『トゥー・マッチ』に関しては、アルバム全体の舵取りは俺がやっているわけだけど、カイディとは2曲くらい一緒にやっていて、その中においてはディーゴ&カイディに近いアプローチになっているかな。それを含めて最終的に1枚のアルバムに仕上げるのが俺の役割なんだけど。

シンガーではレディ・アルマ、シャーリーン・ヘクター、イヴァナ・サンティリなど2000年頃の昔から交流のある面々が参加し、また近年の作品でよく歌っているナディーン・チャールズほか、オベネワ、サリーナ・レア、サミーとヴァラエティに富んだ女性シンガーが参加しています。彼女たちはそれぞれの曲のタイプによって選んだのですか?

ディーゴ:うん、最初に曲を作って、それに合ったシンガーとコラボをするという流れだよ。サミーはここ2年くらいで知り合ったけど、だいたいのシンガーは〈2000ブラック〉を立ち上げた頃からの20年くらいの付き合いがあって、基本的に自分にとってのファミリーという感覚なんだ。そうした家族に対してはいろいろとサポートしてあげたいという気持ちは常にあって、だから今回のアルバムにフィーチャーしたりとか、〈2000ブラック〉のほかの作品に起用したりするわけさ。

この中でオベネワは〈2000ブラック〉からのブラックス&ブルースというプロジェクトにもフィーチャーするなど、最近とても注目しているシンガーのようですが。

ディーゴ:彼女は確かガーナ系の血筋で、世界的に見ればアンダーグラウンドな存在かもしれないけど、俺たちの地元では既にとても有名なシンガーになっているんだ。だから俺なんかがいまさらプッシュする必要もないけれどね(笑)。

4ヒーローを知っていて、いまもドラムンベースの曲を作ったりリミックスしてくれと頼むプロデューサーやレーベル関係者がいたりするけど、いまの俺はもう違うんだ。過去を振り返って懐かしむ暇はないんだ。

アルバムの前半はソウルフルなダウンテンポやブギー、ネオ・ソウルなどヴォーカル曲が並び、後半はジャジーなブロークンビーツやフュージョン・タッチのインスト曲が並ぶという構成になっていますが、これは意識的に作った流れなのですか?

ディーゴ:意識して曲の順番を決めたというわけではないけど、アルバム全体を見たとき、あまりデコボコにしないように気をつけて作っているから、似たような傾向の曲を前後にまとめたりとか、そうした流れというものができるんだろうね。

“オガワ・オカーサン・セッド・ジャスト・プレイ”というタイトルは日本にも馴染みの深いあなたならではですが、どんなエピソードから生まれた曲ですか?

ディーゴ:俺の日本人の友だちでオガワさんという人がいるんだけど、そのお母さんが琴をやっていたんだ。2年くらい前に琴をインターネットで買って、でもモノは届いたけれど思いつきで買ってしまったから、弾き方がわからない。そんなときにその友だちのお母さんのことが頭に浮かんで、彼女に琴の弾き方を尋ねてくれと頼んだんだ。そうしたらお母さん曰く、「いろいろ考えずに、ただ琴に触って弾けばいいのよ(just play)」ということだったんだよ(笑)。

ということは、後半にまるで琴のようなフレーズが出てくるなと思ったのですが、これはあなた自身で琴を演奏しているのですね? なんでまた琴を買ったのですか?

ディーゴ:うん、俺が弾いた琴の音だよ。俺は興味が沸いたら何でもやってみるんだ。ブラジル、ガーナ、ナイジェリアと、いろいろな国の民族楽器を試したことがあるよ。さっき言った「ジャスト・プレイ」という言葉も、最初はただ触って音を出すという行為が、音楽における初期衝動にも繋がっているんだなと、改めて教えてくれたと思うよ。

最近のDJではあなたや〈2000ブラック〉の曲以外ではどんなものをプレイしていますか? また最近のお気に入りのアーティストや好きな音楽にはどんなものがありますか?

ディーゴ:ここのところは1970年代や1980年代の古いレコードをたくさん買っているね。ジャズにソウルやファンクとか。今日もインタヴューの前にレコード屋に行って、7インチをいろいろ買ってきたところさ。DJではそういったレコードをかけるわけだけど、特にいま現在のお気に入りのアーティストは思いつかなくて、ひとりのアーティストでも曲によって好きだったり、そうでなかったりする。これまでの俺のキャリア全体では、マッドリブやジョシュ・ミラン、ルイ・ヴェガがフェイヴァリッツ・アーティストだと言えるかな。彼らの作るサウンドは素晴らしいし、そのプロダクションはいつも興味深いものだよ。いまの若いアーティストたちは、どうも俺からすると自分のサウンドを磨いたり、進歩させたりすることに時間や労力をあまり割いているとは思えないんだ。でも、中にはいいアーティストもいるかもしれないから、これからもいろいろと聴いていきたいとは思うけどね。

古いレコードだと、昔はロイ・エアーズとかマイゼル・ブラザーズのレコードとかをよくプレイしていたと思いますが、最近はどんなものを掘っていますか?

ディーゴ:いいレコードならなんでも買っているけど、ここ2年くらいはゴスペルにハマっているかな。

いま住んでいるのはロンドン市内でしたっけ? 最近は日本でもサウス・ロンドンのジャズ・シーンが注目を集めたりしていますが、あなたから見てロンドンのシーンはどんな感じでしょうか?

ディーゴ:俺はウェスト・ロンドンだけど、じつはサウス・ロンドンのことは好きじゃないんだ(笑)。まあ、個人的にサウス・ロンドンにはあまりいい思い出がないからなんだけど(笑)、音楽的にはいろいろと注目されていることはよく知っている。でも、メデイィアはサウス・ロンドンと括っていたりするけど、実際にはイーストに住んでいたり、ノース出身者がいたりするんだ。いまのサウス・ロンドンのジャズ・ムーヴメントに一役買っている〈ジャズ・リフレッシュド〉も、もともとウェスト・ロンドンでやってたパーティーからスタートしているからね。だから、サウス・ロンドンと限定するんじゃなくて、大きくロンドンとして見るべきだね。

そうした中で面白いと感じるアーティストはいますか?

ディーゴ:アシュリー・ヘンリーヌバイア・ガルシアココロコ、ユナイテッド・ヴァイブレーションズのウェイン・フランシスとユセフ・デイズ、ジュニア、エディ・ナッシュ、オマネとかかな。

逆にカマール・ウィリアムズとかテンダーロニアスとかは、あなたから大きな影響を受けているんじゃないかなと思うのですが。

ディーゴ:う~ん、そうかい? 俺はよくわかんないね(笑)。俺は自分は自分、人は人という考えだから、誰かの影響とかをあまり気にすることはないんだ。実際DJよりも制作活動がメインだから、人のレコードをあまりチェックする時間もないし。だから逆に俺が誰かに影響を与えたとか、そんなことは思ったりしないね。

ロンドンでは次々と新しいアーティスト、若い人たちが出てきていますが、一方であなたやカイディのようなヴェテランも息の長い活動をおこなっています。カイディ以外にも昔の仲間とセッションしたりすることはありますか? たとえばマーク・マックとかダズ・アイ・キューとか。

ディーゴ:いや、いま一緒にやっているのはカイディ、アクワシ、マットの3人だけで、ほかとは一切やっていない。マークもダズも全然やっていないね。

じゃあ、マークとの4ヒーローも今後の活動予定はないと?

ディーゴ:残念だけどないね(笑)。

そうですか……(笑)。いま4ヒーローの名前を出したのは、『パラレル・ユニヴァース』が今年でリリースから25周年を迎えたので、その話を訊こうかなと思ったからです。このアルバムについて何か思い出とか、当時のエピソードとかありますか?

ディーゴ:25周年? そうかい、知らなかったよ(笑)。うん、いいアルバムだったね(笑)。でも、それだけさ。正直なところ、当時の俺にはまだ未熟なところがあって、いまはプロデューサーとしてもっと成長している。だから確実にいまのサウンドの方が優れていると言える。あの当時の俺や4ヒーローを知っていて、いまもドラムンベースの曲を作ったりリミックスしてくれと頼むプロデューサーやレーベル関係者がいたりするけど、いまの俺はもう違うんだ。俺にとってはいまとこれからも成長していくことが大事で、過去を振り返って懐かしむ暇はないんだ。

なるほど、では最後に今後の活動や展望について教えてください。

ディーゴ:〈2000ブラック〉としては、カイディの新しい12インチがこれから後にすぐ出る予定だ。『トゥー・マッチ』に参加してくれたサミーのソロEPも出るし、テイサン、メンサー、ロード&ランクスのライヴ・アルバムも来年頭に出す予定だ。これは10年ほど前のスタジオ・ライヴ音源だよ。俺個人としてはシングルやEPの予定がいくつかあって、〈ネロリ〉からリリースすると思う。それとディーゴ&カイディでも新作をやると思うよ。

消費税廃止は本当に可能なのか? (3) - ele-king

消費税に替わる”財源”を考えよう。

 10月16日の予算委で共産党・大門みきし議員は、IMFの「世界経済が大きく後退する」とした報告を引用しながら、メルケル、マクロン、トランプ政権それぞれが、世界経済悪化に対して個人消費の底上げを図るべく数兆円規模の減税を予定していることを伝えた。そのうえで世界経済はリーマンショック並みの落ち込みが予測されており、日本の消費者マインドも実際に東日本震災並みに下落しているのだから、消費減税すべきだと主張した。(https://www.youtube.com/watch?v=FVXSiPt60aY


10/15 予算委 共産党・大門議員質疑より「消費者態度指数」

 10月4日のNHKの報道によると、米国の新聞も左右問わず日本の消費増税を批判しているようだ。

ウォールストリート・ジャーナル
「消費税率の引き上げは、日本の経済成長に再びブレーキをかけるリスクが大きい。日本の最大の課題は財政ではなく、需要の弱さで、消費税率を引き上げる必要はない」
ワシントンポスト
「消費税率を5%に引き上げた1997年と、8%に引き上げた2014年には景気が後退した。日本経済は去年の後半から減速していて、来年のオリンピックに向けた建設ブームによる需要も薄れている。需要の低迷による物価の下落が、成長のけん引役である投資を押し下げ、デフレからの脱却に向けた長年の努力が後退するおそれがある」
ニューヨーク・タイムズ
「成長懸念にかかわらず日本は消費税率引き上げ」「日本経済の牽引役として貢献する消費者に打撃を与えるだろう」
コロンビア大学・ヒュー・パトリック名誉教授
「消費税は直接、国民のポケットからお金を奪うものだ。日本政府が、財政支出を増やして増税の影響を緩和しなければ、世界経済はやや減速する可能性がある」「駆け込み需要が起きないほど、そもそも消費が弱くなっている可能性がある」

 日本の問題は財政赤字ではなく、需要(投資や消費)が減少していることで、その需要をさらにシュリンクさせる消費増税は悪手だということだ。そして、需要減少への対抗策は財政支出であるとしている。世界経済を減速させる一因となりかねないのがこの消費増税であり、世界にとって迷惑行為でしかないのだ。

 WSJやNYT、パトリック教授らに言われるまでもなく、「不景気時には財政出動」という話は当然のことで、中学校の公民の教科書にも書かれている常識だ。

「不景気のときは、道路工事などの公共事業をして、民間企業に入るお金を増やします。公共事業のほかにも、減税を行うことで、民間企業の持つお金を増やす場合もあります。
 (中略)
このように、政府が、公共事業の増減や、減税・増税などで、景気を調節することを財政政策(ざいせい せいさく)といいます」

出典:中学校 社会・公民

 景気の悪い時には、減税し、公共事業などに財政支出をするのが財政政策なのだ。日本政府には、中学校の教科書からお読みいただくことをお勧めする。


 前回コラムで、「需要の減少」が起こる悪循環をどう断ち切れば良いのかという課題に対して、反緊縮派は一つに「消費税廃止」を提案していることをお伝えした。加えて、二つ目の有効策がこの「財政出動」になる。これは消費税廃止で無くなった消費税収に替わる財源を得るため、また国民経済を後押しするための政策となる。減税と財政出動、上述した中学校の教科書通りの財政政策だ。

 「財政出動すると財源が減ってしまうのではないか」と思われる方もいるかもしれない。それも当然だろう。普通の人は、政府が何か税金などを貯めている金庫のようなものを持っていて、そこからお金を支出していると考えている。しかしその考えは誤りである。政府が支出すると、実体経済市場に通貨が創造されるので、支出することそれすなわち財源となることを意味する。政府が誰かに支払いをすると、新しい通貨がこの世に「無から生まれる」のだ。

 このことをMMTerは「万年筆マネー」や「スペンディング・ファースト(Spending First)」という概念をもって説明するが、少し複雑な仕組みなので我慢して以下を読み進めてもらいたい。

 信用創造(通貨を創造すること)には経路が2つある。一つは、金融機関によって保有される既発国債と交換する形で中央銀行が創造した貨幣(実体経済市場では使用不可能な準備預金)を元手にして、金融機関が一般企業や個人に貸し出すときに起こる。中央銀行が国債を買い入れることを「買いオペ」と言い、国債と交換する形で貨幣を増やすことを「量的金融緩和」と言うが、基本的には同じことを指している。何を言っているのかわからないという方は下記の「教えて!にちぎん」と「ニチギンマン」の説明も見てもらいたい。

国債買入オペは、日本銀行が行うオペレーション(公開市場操作)の一つであり、長期国債(利付国債)を買い入れることによって金融市場に資金を供給することです。
出典:日本銀行「教えて!にちぎん」より


出典:日本銀行「ニチギンマンのきんゆうせいさく」

 ニチギンマンは、日銀が国債を買い入れ、貨幣(準備預金)を銀行に供給し、金利を下げることにより「景気が活発になり、物価が安定する」と誇らしげに言っているが、実際は量的質的金融緩和を続けても、金融市場以外、つまり実体市場は活発になっていないばかりか、個人消費が落ち込み、需要が減少、逆にデフレ状況で物価が不安定化するような状態が続いている。

 これは企業や国民があまり消費も投資もできないから、銀行からお金を借りることもないし、信用創造(通貨創造)されないということが原因だ。銀行などの金融機関同士の決済にしか使うことができない準備預金のままでは実体市場では流通しえないのだ。このことが6年間続けた金融緩和の効果の薄さに繋がり、多くのエコノミストたちもやっとこの仕組みの綻びを理解し、指摘するようになった。金融市場の外にお金が出ないのだから、とにかく株屋だけがマネーゲームで儲けるばかりで、私たち庶民にはほとんど関係がない話だった。

 ちなみに信用創造とは、誰かが銀行から借金した時に通貨が創造される仕組みとなる。貨幣は、発行元である銀行がただペンで記帳するだけで生まれることから「万年筆マネー」と言われる(現在ではコンピューターで打ち込むだけなので「Key Stroke」とも表現される)が、かいつまんで言えば、お金の正体とは誰かの借金であり、貨幣とはその借金に対して発行された債務証書だということになる。また、通貨と貨幣の違いにも気をつけてもらいたい。貨幣は紙幣やコイン、また私たちが使えない準備預金などお金全般のことを指すが、通貨は私たちが使える紙幣やコイン、預金などのお金だけを指す。(参考:社会人の教科書「貨幣・通貨・紙幣の違い」

 そこで、信用創造のもう一方の経路が重要となる。政府支出(財政出動)を介した経路がそれだ。これは、政府の支出により生まれた銀行の預金を、一般企業が受け取るときに起こる。この場合は政府が企業に仕事を発注する形をとるので、必ず信用創造され、実体市場に通貨が生まれる。MMTの視点では、政府は国債や税収などの財源がなくても、支出するだけでお金を創造できるとし、このことをスペンディング・ファースト(最初に支出ありき)と呼んでいる。政府債務である国債は政府支出した後に発行され、民間銀行を介して中銀からファイナンスされるとしているため、支出が先なのだ。

 なにやらややこしい概念だと思われたかもしれないが、少し考えてみれば実感できるだろう。政府は毎年、税収がいくら集まるかわからないのに、予算を決定し、支出している。言い換えれば、財源などなくても支出できるということだ。だから「最初に支出ありき」なのだ。

「ここに人々が見落としているものがあります — 連邦政府の支出は”自己資金(Self-Financing)”だということです」
「政府が支出すると、支出そのものの副産物として新しいお金は創造されます」
「そして新しくできたドルは、誰かのバランスシート(貸借対照表)に追加されます」
出典:ステファニー・ケルトン ツイッターより

MMTは、政府の財政は家計や企業のそれとはまったくの別物だと主張している。
(中略)
主権を有する政府が、自らの通貨について支払い不能となることはあり得ない。自らの通貨による支払い期限が到来したら、政府は常にすべての支払いを行うことができるのである。
それどころか、政府が支出や貸出を行うことで通貨を創造するのであれば、政府が支出するために租税収入を必要としないのは明らかである。さらに言えば、納税者が通貨を使って租税を支払うのであれば、彼らが租税を支払えるようにするために、まず政府が支出しなければならない
出典:L.ランダル.レイ「MMT 現代貨幣理論入門」p39

 MMTの創設者の二人、先般来日を果たしたステファニー・ケルトン教授(NY州立大学)と、近日来日予定もあるランダル・レイ教授(バード・カレッジ)は、政府の財政の仕組みについてこのように簡素な形で語っている。このことは民間銀行からお金を借りる時に起こる信用創造の場合も同じだ。中野剛志氏(元・京都大学大学院准教授)は以下のように解説する。政府も銀行も「最初に支出ありき」なのだ。

実際には、銀行は、人々から集めたお金を元手にして、貸し出しを行っているのではありません。その反対に、貸し出しによって、預金という貨幣が創造されるのです。そして、借り手が債務を銀行に返済すると、預金通貨は消滅するのです。
(中略)
「銀行の貸し出しの段階で預金は創造される」のですから、銀行の貸し出しが、元手となる資金の量的な制約を受けるということはありません。
この点は資本主義経済の仕組みの根幹にかかわる話です。
出典:中野剛志「奇跡の経済教室」p98,p100

 MMTerの視点では、政府が支出したその後に、金利を調整する為に国債は発行されるとしているが、このような国債発行の視点は主流経済学の常識を覆す論理となり、賛否の分かれる騒動ともなっているわけだが、この騒動の一端は、以前に拙コラムでお伝えした西田議員と雨宮日銀副総裁の財金委員会でのやりとりで垣間見ることができる。政府支出を介した信用創造の仕組みについて実務的な詳細を知りたい方もぜひご覧いただきたい。
 参考:「黒船MMTと参議院選挙の行方



画像提供: @nonsuke38 氏

 長々と3回にもわたっていろんな話をしてきたが、これまでの話をまとめるとこうなる。政府には通貨発行権があって、過度なインフレにさえならなければ、いくらでも無からお金を作って国民経済のために支出できる。もちろん財政破綻などするわけがない。さらに、政府は自分でお金を作って支出できるのだから、税は財源ではない。税は主にインフレを抑える景気調整のためにある。だから、このような貨幣観を持つ反緊縮派にとっては、景気調整機能もない消費税を人々に課す理由がまったく理解できないというわけだ。

 加えて言うなら、日本においては「税は再分配のために徴収されている」とも言えない。下図のように、税による再分配効果はOECDで最低のミジンコレベルだ。「社会保障を支えるために税金が必要だ」と思い込んでいる人たちには、この事実もよく考えていただきたいと思う。


出典:内閣府 再分配効果の国際比較

 前述した「消費税に替わる財源は政府支出である」とした論理は、貨幣システムの会計的事実から導き出されている。「でも結局、それは借金ではないのか」と言う方もおられるだろう。その疑問に対する回答は次回、最終回につなげたい。

BS0 - ele-king

 ブリストルのサウンドとスピリットを伝えてきたBS0が、彼の地からサム・ビンガとライダー・シャフィークを迎え2年ぶりに開催。これにあわせ、2人は名古屋/金沢/東京/高知/沖縄/大阪を巡るツアーを敢行する。

 サム・ビンガとライダー・シャフィークは、一緒にそして個別に、現在の英国アンダーグラウンドで非常に重要な存在となっている。〈クリティカル・ミュージック〉での爆発的なダンスホール・コラボレーションで知られる2人のアーティストは、2012年以来さまざまなスタイルとテンポで共同作業を行っており、ロンドン〈ファブリック〉からクロアチア〈アウトルック〉まで、そして遠く離れたニュージーランド〈ノーザン・ベース〉で、共同のサウンドを獲得。

 サム・ビンガは、プロデューサーとしてヒューストンの伝説的なポール・ウォールとの「オール・キャップ」のダーティなサウス・ヒップホップから、ブリストルのカルトなレーベル〈ホットライン・レコーディングス〉でのマーカス・ヴィジョナリーとのUKファンキーのコラボレーションまで、多種多様なスタイルとサウンドを制作してきた。ロディガン、トドラT、DJターゲットなどのDJによる定期的なラジオ・プレイによって、DJとしての彼に対する世界的な需要も高まっており、南アメリカから中国まで、そしてその間のあらゆるところでヘッドライン・ショーが開催されている。

 ベースビンとダブプレートの世界を超えて、ライダー・シャフィークは、スポークンワードや、英国でさまざまな背景を持つ黒人として育った彼自身の人生経験を検証するパフォーマンス「アイ・デンティティ」など、幅広く豊かな表現で知名度を上げている。写真家と協力し、彼自身が根付いているコミュニティとの自然なつながりを活かし、ライダーはブラック・ブリティッシュ・ヘアスタイルの美しさ、多様性、繊細さ、およびそれらの自己アイデンティティとの関係を記録することを目的とした写真展「ロックス」も進行中。また、サム・ビンガがエンジニアリングとプロダクションで関わるポッドキャスト「i-MC」では、英国およびその他の国のMCやヴォーカリストとのインタヴューを行い、彼らの人生経験とそれらが音楽にどのように影響したかについて話し合っている。

 BS0プロジェクトとのコラボレーションによる今回の日本への初ツアーは、英国のサウンドシステム文化の音の伝統に根ざした幅広いサウンドとスタイルが導くことだろう。

Osunlade - ele-king

 プロデューサーであり、ミュージシャンであり、レーベル〈Yoruba〉の主宰者でもあるオスンラデが2年ぶりの来日を果たす。セントルイス出身のこのスピリチュアル・ハウスのヴェテランは、きっと最高にソウルフルでディープな一夜を演出してくれるにちがいない。11月9日は VENT へ。

ハウス界のメシア。
魂を揺さぶるディープ・ハウスの最高峰、 Osunlade

大人気のレーベル〈Yoruba Records〉を率い、アメリカのディープ・ハウス・シーンの最高峰に君臨する OsunladeOfficial が11月9日のVENTに初登場! 存在そのものがアートとも言える重鎮による2年ぶりとなる超待望の来日公演が決定!!

Osunlade ほど多彩なアーティストもなかなかいないだろう。ブラック・ミュージックの代表格であるブルースやジャズが生まれたセントルイスに生まれ育ち、幼少の頃から作曲に興味を持っていたという。17歳でハリウッドへ渡り、プロデューサーとしての才能を開花させてからは、メジャー・レーベルのもとで多くのヒット作を手掛けてきた。

やがてメジャーの音楽スタイルでの音楽制作は自分の音楽への情熱を弱めてしまうと感じ、一念発起してアーティストの道を選択。1999年に〈Yoruba Records〉を設立したのだ。一切の妥協がないディープでソウルフルな作品をコンスタントにリリースすることで Theo Parrish や Dixon をはじめ多くのトップDJたちにサポートされると、レーベルとともに Osunlade はアーティストとしても広く認知され、「ハウス界のメシア」と評されるようになった。

Osunlade の魂を反映したアフロ、スピリチュアル、ソウルフルなディープ・ハウス作品と、彼の繰り出す壮大なDJセットは、オーディエンスのエネルギーとヴァイブスと混ざり合いマジカルな一夜を創り上げるだろう!

- Osunlade -
DATE : 11/09 (SAT)
OPEN : 23:00
DOOR : ¥3,500 / FB discount : ¥3,000
ADVANCED TICKET : ¥2,500
https://jp.residentadvisor.net/events/1317046

=ROOM1=
Osunlade
Motoki a.k.a. Shame (Lose Yourself)
KITKUT (ON and ON)
Atsu (東風 / 三楽)

=ROOM2=
A.M.A. (ON and ON)
Tonydot (TANGLE)
KenNYstyle
Yuri Nagahori
Cozzy
MOMO.

VENT:https://vent-tokyo.net/schedule/osunlade/
Facebookイベントページ:https://jp.residentadvisor.net/events/1317046

※ VENT では、20歳未満の方や、写真付身分証明書をお持ちでない方のご入場はお断りさせて頂いております。ご来場の際は、必ず写真付身分証明書をお持ち下さいます様、宜しくお願い致します。尚、サンダル類でのご入場はお断りさせていただきます。予めご了承下さい。
※ Must be 20 or over with Photo ID to enter. Also, sandals are not accepted in any case. Thank you for your cooperation.

VENT PRESS
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■プロフィール

Osunlade はアートそのものを擬人化したかのような存在だ。彼の音楽は、調和、人生、知性が融合されたメロディーを作り出す。彼の出身はブルースやラグタイム、ジャズなどが生まれたミズーリ州のセントルイスだった。7歳でピアノに運命的に出会った。12歳の頃までには作曲に興味を持っていたという。その後に地元でバンドを結成し、いくつかの楽器も習い、作品に磨きをかけるために学んでいた。

17歳のときの1988年に初めてプロとしてハリウッドへ旅行した。コリオグラファーでパフォーマーでもある Toni “Mickey” Basil にすぐに目をかけられ、セサミ・ストリートなど子供向けテレビ番組を含むいくつかのプロジェクトの音楽担当を任された。彼女の後押しもありロサンゼルスへ移住し、その後の壮大な楽曲制作のキャリアが始まったのだ。数年後に初めてプロデュースしたアルバム作品は、当時はまだインディーだった〈Intersope〉からのものだった。Gerardo というアーティストの作品で、今では友人であり、彼は俳優、ダンサーとしても活躍している。“Rico Suave”というラテン・ポップ初期作とも言えるキャッチーなフレーズの曲を制作した。GQerardo は素晴らしい機会を得た直後に、数作のプラチナ・アルバムと4枚のゴールド・シングルをリリースしている。

その後数年間で20作を超える作品に関わってきたが、Osunlade は音楽ビジネスを学ぶことは、自分の音楽への情熱を弱めてしまうのではないかと考えるようになった。マス向けで供給から成り立つものの元で働くのはやめようと決意したのだ。精神的な癒やしを求め、自分の魂に誇りを持つことを望んでいると、Ifa を知ることになった。それはアフリカのヨルバ民族やアメリカの奴隷達から伝わった自然を元にするの文化的/宗教的な占いのようなものだ。

1999年に Osunlade は夢を叶えるために動き出した。〈Yoruba Records〉を立ち上げたのだ。世界で最も重要なレーベルのひとつと認識されており、魂を昇華させる音楽を作り出している。

レーベルが成長していくと Osunlade の人気も高まっていった。2001年にはデビュー・アルバム『Paradigm』を人気の〈Soul Jazz Records〉 label からリリースした。このアルバムはその年の最も売れたハウス・アルバムの1枚となり、彼は「ハウス界のメシア」と評されるようになった。多くのDJが彼の音楽をサポートし、今ではより多くの人々に聴かれるようになりついには、ミュージシャンであり、コンポーザーであり、プロデューサーであり、そしてアーティストとして認知されたのだ。

DJセット、リミックス、アルバムそして数枚のミックスCDをリリースし Osunlade の唯一無二のクオリティの作品は常に高い評判を得ている。

Osunlade の率いる〈Yoruba Records〉は1999年の最初のリリース以来ダンス・ミュージック・シーンを牽引している。Ifa の教えのもとに立ち上げ、ディープ・ハウスからソウルフルなハウスまで幅広い作品をリリースしてきた。常に素晴らしい作品を心がけ一切の妥協がない。ダンスは昔から重要なものであり、ジャズやソウル、オルタナなエレクトロニックも作品を手掛けてきた。シンプルに良い音楽の事を考え続け、〈Yoruba〉は時代の変化を乗り越えてきた。様々なスタイルのアーティストの作品をリリースしてきた。コンセプトとして精神的な結びつきを最も重要視している。エネルギーとヴァイブスに導かれて、それぞれのアーティストが情熱に従ってクラシックだが誠実な、魂を反映するかのような作品を作り続けている。300を超える作品をリリースし、人々の中にある境界線を広げようとしているのだ

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