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Home >  Interviews > interview with Nightmares on Wax (George Evelyn) - いま音楽を感じる喜び

interview with Nightmares on Wax (George Evelyn)

interview with Nightmares on Wax (George Evelyn)

いま音楽を感じる喜び

——ナイトメアズ・オン・ワックス、インタヴュー

序文・質問:野田努    通訳:坂本麻里子   Nov 19,2021 UP

この作品のために作った音楽は、パンデミック中ですら作業していたから、かなりの量になってね。それらの音源をすべて携帯に入れ、ビーチまで出かけてジョイントに火をつけ、聴いてみたんだ。で、思ったよ、「……これは2枚のアルバムだなって」って。

今作にはシャバカ・ハッチングスという強烈な個性を持ったジャズ・アーティストも参加しています。アルバムのなかに何を求めてシャバカ・ハッチングスを起用したのですか? あなたは彼のどんなところに惹かれたのでしょう?

GE:俺がシャバカの音楽と初めて出会ったのは、たぶん2017年だったんじゃないかな? で、あのときの俺は(目を丸くして)「……こりゃなんだ? いったいなんなんだ?!」みたいな反応で(笑)。文字通り彼の音楽、彼のやっているプロジェクトのすべて――とにかくそれらを全部知りたい! と思った。ほら、たまにいるだろ、「この人のことは何もかも知りたい!」とどうしようもなく思わされる、そういうミュージシャンが。俺はとにかく、彼についてもっと知りたいと思ったし、彼の音楽を聴けば聴くほどさらに知りたくなっていったわけ! 
 これは誓っていい、本当に心からそう信じているんだけど、俺たちは今まさに、「生ける伝説」を体験しているところだ、そう思う。ああいうミュージシャンが世のなかに登場することはまずめったにないし、しかも彼はまだ生きていて、しかも作品を発表し続けている最中なわけで、だからまあ、シャバカはすごいと思っているし、あるとき友人のスティーヴから「お前と彼がコラボレーションした図を想像してごらんよ、最高じゃないか?」と言われて、俺もそりゃアメイジングな思いつきだと思った。
 で、“3D Warrior”ってトラックの興味深い点は……あのトラックを、俺はまずウォルフガング・ハフナー、ドイツ人ジャズ・ドラマーである彼と一緒にはじめてね。これまで何度もコラボしてきた、仲のいい友人だ。で、俺はまずこの、ループのアイディアを彼に送り……いや、そうじゃなくて、まず俺たちはレコーディング・セッションをやったんだ。そのセッションの最後のあたりで、俺にあのループのアイディアが浮かんで、そこに付け足した。そしたらウォルフガングが「あ、そのループに合わせて演奏させてくれ、何かやらせてくれ」と言い出して、そうだなあ、それこそ10分くらい? あのループに合わせてひたすらプレイしていったっていう。俺も「うわっ、こりゃすごい!」と思ったけど、俺の手元にあったのはそれだけだったんだ。ところが、それから4ヶ月くらい経って、あれは……たしか2018年だったはずだな。うん、4ヶ月後に、俺は自分の地元のリーズで、長年の付き合いのキーボード・プレイヤー、そして若いベース奏者のアレックス・ビーンズとスタジオ入りして、そこで彼がベース・ラインとメロディを思いついた。ちょっとしたループ、ドラム、ベース・ラインができたわけ。
 それで俺は2019年10月にハイレ・シュプリームとフックアップして数日セッションをおこなって、その終わりあたりに彼が「そういえば、こんなビートがあるんだけど」と一種のトライバルなビート調な要素を持ち込んできて。彼はルーツがエチオピア系の人だし、そこで俺のイマジネーションもいろいろと広がって、ふたりで3Dリアリティについて話しているうちにあの、戦士についての歌詞を思いついた。そうやってヴォーカルができた、と。
 だから曲としての構造はなくて、いくつかの要素だけがそろっていたわけ。そしてシャバカとやったらどうか?という話が出てきて、「彼にやってもらいたいチューンはこれだ」と思った。となるとある程度の構造をクリエイトする必要があったし、自分でそれをやってね、あの作業はDJツアー先の、ホテルの一室でのことだったと思う(笑)。そうやってこしらえた音源をシャバカに送り、彼も「うん、すごく気に入った! たぶん何かやれると思う」と言ってくれて。そして11月にハイレ・シュプリームが俺のスタジオに再びやって来て、今度はそこで一緒に“Wonder”を書いた。シャバカにはどっちにせよ1月にスタジオに入ってもらう予定になっていたし、彼にその音源を送り「この歌、どう思う? 何かやれる?」と訊いてみた。彼の方も「これはいいね、自分にも何かやれると思う」という返事で、そこで俺は彼に「オーケイ。2曲ともやりたい?」と訊ねて、彼も「よし、試しにやってみよう」と返してくれて。で、あれは2020年1月15日、俺の50歳の誕生日のことだったけど、あの日俺はモルディヴにいてね。で、インボックスにあの2曲、シャバカが管楽器を演奏してくれた“Wonder”と“3D Warrior”の音源が届いて――あれはもう、これまで自分がもらったもののなかでも最高の誕生日プレゼントのひとつだった、みたいな(満面の笑顔)。

(笑)。

GE:で、さっき話した“3D Warrior”の原型であるループ&ドラムの10分半のヴァージョン、あれはいずれ、ヴァイナル盤として発表すると思う。あれについて思い出すのは、ここ(イビサの)スタジオであの音源に取り組んで……いやだから、10分半っていうのは、ひとつの楽曲をノンストップで演奏するにはかなり長い尺なわけだよね。俺たちもすっかり音楽に没入して我を忘れたし、午前4時くらいまでセッションを続けて、終わった頃には「あれ、自分はどこにいるんだ?」みたいな。ただ、あのトラック全体について驚異的な点のひとつは、あれが4つの異なる筋書きを経てレコーディングされたものだ、というところでね。だから、まずウォルフガング・ハフナー、そして地元リーズのミュージシャン、続いてハイレとのセッション、最後にシャバカがリモートでひとりで演奏を添えてくれた。それらをすべて組み合わせたわけだし、俺自身「こんなことが、どうやったら可能だったんだろう?」とすら思うよ、ほんと(笑)。ってのも、(バラバラに作っていったにも関わらず)参加した全員が同じ空間に一緒にいるフィーリングのある曲だからね。すごいな、と自分でも思うし、仮に、俺があらかじめこうなるように計画立ててやっていたとしたら――もっとも、それはやらずに流れに任せていったんだけど――きっと、自分にこの結果を生むことはできなかったんじゃないかな。
 これこそさっき話した「音楽が発生するのに任せて邪魔しない」の完璧な例だろうね、とにかくやってみよう、自然に任せよう、と。シャバカがこのアルバムに持ち込んでくれたものはとにかく……彼に参加してもらえて心から光栄だ――もちろん、今回参加してくれたミュージシャン全員に対しても本当にそう思っているけれども――彼は途方もないミュージシャンだし、まだコメット・イズ・カミングやサンズ・オブ・ケメット、シャバカ・アンド・ジ・アンセスターズ等を聴いたことのない人は、どうか、ぜひあれらのアルバムの世界に飛び込んでみて欲しい。素晴らしい音楽が鳴っているから。 

シャバカは政治的な演奏家でもありますよね? 今作にBLM(ブラック・ライヴズ・マター)からの影響はありますか?

GE:んー、いいや。というのも、俺はあのムーヴメント以前から、あれらの問題を考え、BLMと信じてきたから。あの物語でひとつ言えるのは、ああして様々な運動が起こり、少し経ったところで、俺も「もしかしたらこれは、歴史のなかの、何かが変わる瞬間なのかもしれない」と思うようになった。もしかしたらこれこそ、クソのような状況が終わりを告げて良い方向に向かっていく、その転換点かもしれない、たぶんその瞬間なんだろう、と。ただし、俺はまだ「たぶん」だと思うけどね。うん、俺はまだ「たぶんそうなんじゃないかな」と言うね。どうしてかと言えば、そこに至る道のりはまだ、本当に長いから。でも、俺は自分のレコードや音楽を「変化しつつあるコンシャスネス」と関連づけている、それは間違いない。肌の色は関係なしに、すべての人びとを集め一緒にするものとしてね。我々には人間の肌の色、見た目といった側面を乗り越えていく必要がある。それらを越えたところまで行って、本当に、お互いをブラザー&シスターとして眺めていかなくちゃ。誰だってみんな同じ空気を吸っているんだし、(苦笑)ほかの人よりも臭うクソをする奴もいるとはいえ、俺たちもみんな、クソはするんだからさ。アッハッハッハッハッ!

(笑)いきなり下卑た話になりましたね。

GE:ハッハッハッ。せっかくポエティックに答えはじめたってのに、回答の最後がヒドかったなぁ、アッハッハッハッ!

(笑)。また、Saultのアルバムからのインスピレーションもあるのではないでしょうか? 彼らが昨年出したアルバム『Untitled』と、どこかとても似たヴァイブレーションを感じたのですが。

GE:ああ、もちろん、Saultのことは知ってるよ。でも……んー、どうだろう? 俺たちのバックグラウンドがとても似たものであるのは知っているけどね。彼らはこの2年間でアルバムを3枚くらい出してるんじゃないっけ? いや、それとも最新作で4枚目なのかな? ともあれ、うーん(と笑顔まじりで考え込みつつ)、どうかなぁ〜、彼らの作品と俺の今作とに似たところはあるだろうか?……自分の口からはなんとも言えないね、とても答えにくい。その判断はリスナーのみんなにお任せするよ。というのも、俺は自分の音楽をそういう風に聴かないっていうか、これだけレコードとの間に距離がないと、客観的になれないんだ。でもまあ、Saultは大好きだし、それに俺はあらゆる音楽のファンであって。だからまあ、自分自身の音楽をほかの音楽と同じように聴くのはむずかしいんだ、自分に近過ぎるから。ただ、今回の作品はコラボレーションそしてそこにあるストーリーも含め、独自のユニークなものだと、俺はそう思ってる。

いまの俺は、こうして『Shout Out! To Freedom…』を作り終えて世に出して、本当に満足しているしハッピーなんだ。かつ、さて次は何をやろうか、とものすごくエキサイトしてもいる。で、これは自分のキャリアのなかで初のことなんだ(苦笑)、アルバムが出たばかりの段階で、すでに次のアルバムに取り組んでいるって状態は。

シャバカもそうですが、今回のアルバムにはジャズのフィーリングが注入されていますし、“3D Warrior”ではアフロなパーカッションがリズムを刻んでいます。ジャズやアフロという音楽は、主にヒップホップやソウル、ファンク、レゲエをミックスしてきたあなたにとって新たな挑戦だったのでしょうか?

GE:過去に出したレコードでも、ジャズ/アフロと軽く戯れたことはあったと思うけどね。たとえば『Smokers Delight』や『Feelin’ Good』といったアルバムを考えてもそうだし、それに前作『Shape the Future』ですら、間違いなくビッグ・バンド・ジャズのスタイルにトライしていたよね。けれども、今回のレコードはいままででもっともディープな作品だ、自分はそう感じている。うん、より深く入っていったね。さっきも話したように、大事なのは音楽を探究していく点にあるし、より深い領域に思い切って挑むことにある。たとえそのタイプの音楽をよく聴いて知ってはいても、実際にそれを作るのはまったく別の話であって。だから、俺は自分の限界を押し広げていけたらいいなと思っているし、プロダクション等々の面でもっと拡張したい。で、今回彼らのようなミュージシャン、そして素晴らしいアーティストたちと一緒に仕事できたことは、確実にその助けになってくれたと思う。

“GTP Call”における声、あれはグリーンティー・ペンだと思いますが、彼女は何を言っているのでしょう?

GE:(笑)あれは……俺たちが連絡を取り合ったのはパンデミック中のことでね、だからお互いにファン同士ではあるものの、実際に会ったことがなかった。というわけで電話をかけたけど取り損ねる、というすれちがいが何度かあって。携帯メールを送ったり、留守電メッセージを残したり……要するに、ちゃんと通話したことがなかったんだよ(笑)! もちろん、いまはもう彼女と話したことはあるけど、あの当時はお互いにミスりっぱなしで、実際に話したことがなかったっていう。で、たしかアリア(※GTPの本名)にヴォーカル・パートの一部をやり直ししてもらう必要があって、彼女はそれをやってくれた。その後で彼女がヴォイス・メッセージを送ってきてね、「その後どうなった? レコードの進展具合は? あのレコード、私もすごく気に入ってるんだけど」云々、問い合わせてきた。で、残されたそのメッセージを聞いて、俺は「これ、いただき。使わせてもらおう!」と思ったんだ(笑)。

(笑)なるほど。

GE:ハッハッハッハッハッ! あれは本当に、(インタールードとして「書かれた」ものではない)本物のメッセージ、とにかくとても正直な言葉だし、それだけではなく……聴き手をこのレコードにより近づけるものじゃないか、そう思ったんだ。要するに、リスナーもこのレコードの生まれたプロセスの一部になるような、そんな感覚を抱かせるんじゃないか、と。だってあれは、彼女があの曲の進行状況を確認しているって内容だからね(笑)。っていうか、あのメッセージをアルバムに入れたことすら、実は彼女はまだ知らないんだよなぁ、クハッハッハッハッ……

(笑)。そのグリーンティー・ペンやオシュン、ハイレ・シュプリームら客演は素晴らしいですが、あなたは彼らをどのようにして知るんですか? 世界のあちこちにちらばっている人びとですが、たとえばフェスでばったり行き会って知り合った、とか?

GE:いろいろだね。たとえばハイレ・シュプリームは、俺の友人の妻が、彼の歌のSpotify リンクを送ってきてくれて。あれは2019年8月のことだった。“Danjahrous”って曲を聴いたんだけど、途端に「こいつのことは探らなくちゃ」と思わされた(笑)。アメイジングなアーティストだと思ったんだよ、シャーデーやマーヴィン・ゲイのトーン、それにカーティス(・メイフィールド)も少し聴いて取れたからさ。自分が何を好きかは俺にはちゃんとわかっているし、「なんてこった、彼の声からそれらの要素を自分が引き出せたらどんなに素晴らしいだろう!」と思った。というわけで連絡先を突き止め、電話で話すことになって、そうしたら向こうも俺のファンだってことが判明してね。彼はブルックリン在住だと教えてくれて、こっちは「あ、っていうか俺、あと2週間後にブルックリンに行くんだけど」みたいな(笑)。そうしてブルックリンで彼と会い、一晩一緒につるんで、ご機嫌な一夜だった。で、俺は次の月、2019年10月に彼をイビサに呼んで5日間滞在してもらい、そこで8曲くらい共作したんだ。
 グリーンティー・ペンの場合は、彼女の“Ghost Town”っていう、イアーバッズ(Earbuds)がプロデュースしたあのトラックを聴いて、俺と友人との間で「彼女はすごい、一緒に何かやれたらクールだろうな」みたいなやり取りをしていたんだ。そうこうするうちにロックダウンが起きた、と。やっと彼女の連絡先を入手したわけだけど、さっきも話した電話のすれちがいが起きて、彼女から「うん、とにかくビート他の入ったフォルダか何かを送ってみて」って言われて、それで素材の入ったフォルダを送った。で、最初のラフなアイディアが戻ってきたんだけど、俺は「いや、君にはもっとマジにディープな歌を書いて欲しいんだ」と頼んでね。そもそも君と共演したかったのは、素晴らしい声の持ち主であるのはもちろんだけど、俺は君の歌詞の書き方が好きだしそこに惹かれているからだし、あの調子でやって欲しい、君はかなり深いテーマについて書いてるよね? と。というわけで彼女もやがて、あの“Wikid Satellites”を書いてこちらに返してくれたんだ。彼女も俺のファンでね、そこはコラボを進めるのに役立った(笑)。オシュンについて言えば、彼女たちとコラボしたいとずっと思ってきたんだ。かれこれ4年くらい追いかけていたよ。

そうなんですね!

GE:うん、なんとかフックアップしようとがんばっていたけど、なかなか軌道/タイミングが合わなくてね。やっとのことで彼女たちと話ができたのは2020年5月のことで、あの頃ちょうどジョージ・フロイド事件後の一連のデモ等が起きていて、それについて彼女たちと電話で話し合い、「(ロックダウン中のアメリカの)内側で起こっていることについて書いてくれないか」と言ったんだ。彼女たちはあの実に素晴らしい歌(“Breathe In”)を書いてくれたし、それからピップ・ミレット(“Isolated”)の場合は、彼女のマネージャーをちょっと知っていてね。マネージャーと「このプロジェクト向けにプロデューサーを探しているんだ」云々の話をしていて、そのうちに「彼女にうってつけの曲がある」と提案して、彼女に電話していろいろと話し合って。で、彼女はあの、ほかから切り離され、ひとりぼっちでいることについての非常に深い歌を作ってくれた。マーラTK(“Trillion”)、彼のことは知っていたし、俺はあのとき実際、ニュージーランドにいたんだ。あれはたしか2018年の終わり頃で、彼と一緒にウェリントンで共作&レコーディングをやった。だから知り合い方もいろいろなわけだけど……とくにいまのような時期は、色んなアーティストとコラボするのは興味深いと思う。というのも、俺はずっと信じてきたんだ――誰かとコネクトして何か一緒にやりたいと思い、それが(パチン、パチンと指をスナップさせながら)とんとん拍子で楽に進めば、それはきっと起きるべくして起きたコラボだったんだろう、と。
 過去数年で気づいたのは、コラボレーションが本当に美しい成果を生んでいるってことでね。我々は一種の「ゾーン」のなかにいる感じがするっていうか、俺たちはコネクトし、曲を書き、人びとと恊働することについて一種グローバルな考え方をしている。もう、自分の生きるコミュニティや近隣エリアの人びと、知り合いだけに限らないっていう。だって、俺は世界中の音楽を聴いているんだしね。うん、そこもあるんだろうな。先に出た「長きにわたり音楽作りへの関心をどう維持するのか?」という質問だけど、その答えには新たなアーティストを見つけ出すこと、彼らとコネクトし音楽的な冒険に一緒に乗り出すこと、そこもあると思う。

今回は、アルバムの曲数が15曲と多く、これは『Smokers Delight』以来の多さなのですが、しかしあのアルバムはほとんどがインストで、今作はほとんどが歌(ないしはラップ)があります。そう考えると、『Shout Out! To Freedom…』はここ20年のなかではもっとも特別な力が注がれているのかもしれませんね。あなた自身はどう思われますか? クリエイティヴ面での一種のターニング・ポイント的な作品でしょうか?

GE:ああ、確実にそうだと思う。というのも、今回の旅路で得たのは――この作品のために作った音楽は、パンデミック中ですら作業していたから、かなりの量になってね。それらの音源をすべて携帯に入れ、ビーチまで出かけてジョイントに火をつけ、聴いてみたんだ。で、思ったよ、「……これは2枚のアルバムだなって」って。

(笑)。

GE:(笑)俺としても驚いたし、オーライ、さて、どうしよう……と考えた。どの音源を2枚のどっちに入れるか、曲の居場所を見極めなくてはならなかったし、それ自体がひとつのちょっとした謎解きのようなものだった。でも、いまやこうして1枚まとまったわけだし、いままさにもう1枚に取り組んでいるところなんだ。それが『Shout Out! To Freedom…』パート2的なものになるのか、その正体は自分にもまだわからないけれども、とにかく取り組み続けているし、だからなんだ、俺がこの「バブル」というか、「フロー」と呼んでくてれもいいけど、そこから出ずにいるのは。とにかくこのクリエイティヴな状態にノって動き続けているところなんだ、何かが起こっているからね。それは流れ続けている。だから、間違いなく俺は以前以上にインスパイアされているけれども、いまは――アルバムを作るときというのは、最終段階に入ると、俺には手放すのが実にむずかしかったりするんだよ。いったん世に送り出してしまったらそれまで、だからね。ところがいまの俺は、こうして『Shout Out! To Freedom…』を作り終えて世に出して、本当に満足しているしハッピーなんだ。かつ、さて次は何をやろうか、とものすごくエキサイトしてもいる。で、これは自分のキャリアのなかで初のことなんだ(苦笑)、アルバムが出たばかりの段階で、すでに次のアルバムに取り組んでいるって状態は。こんなことは、いままで一度もなかった。で、俺としても「ワオ、こりゃすごいぞ、グレイト!」って感じだし(笑)、うん、いま、たしかにインスパイアされているところだね。

次作を楽しみにしています! 質問は以上です。素晴らしいアルバムですし、ファンも気に入るのは間違いないと思います。本日はお時間を割いていただき、本当にありがとうございました。

GE:応援、ありがとう。本当に、君たちには感謝しているよ。すごく、すごくありがたく思ってる。

了解です。どうぞ、お体にはお気をつけて。

GE:ああ、気をつけるよ。近いうちに、いつかまた日本に行ける日が来たらいいなと俺も思っているからさ!(と合掌する)

もちろんです、日本のファンも楽しみにしています。ありがとうございました!

GE:サンキュー&ビッグ・ラヴ! バーイ!

序文・質問:野田努(2021年11月19日)

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