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interview with tofubeats

interview with tofubeats

インターネットの憂鬱

──トーフビーツ、インタヴュー

取材:野田努    写真:小原泰広   May 23,2017 UP

UKガラージやシカゴ・ハウスが好きなのは、なんだかんだ言いながらあの気合い……気合いって言い方だと陳腐になるんで嫌なんですけど(笑)。でもぼくが好きな曲は気合いが入っていると思うんですよね。


tofubeats
FANTASY CLUB

ワーナー

J-POPDeep HouseBassTechno

Amazon

■すごい時代だよね……では次の質問、『FANTASY CLUB』という言葉を選んだのはなんででしょうか?

TB:昔からこの言葉が好きなんです。ライナーでも書いたことなんですけど、最初に好きになったシカゴ・ハウスがPierre's Fantasy Clubの“Dream Girl”なんですよ。

■いいね(笑)! 曲の出だしのリズムなんか、たしかにシカゴ・ハウスっぽい。ベースラインも良いし。

TB:“Dream Girl”を聴いてシカゴ・ハウスを知ったくらい。高校時代かな、知り合いの家に泊めてもらったことがあったんですけど、そこでTRAXのコンピを初めて聴いたんです。すごくいいなと思って、とくにDJピエールが。昔やった連載のタイトルに「Fantasy Club」って付けたほどです(笑)。たしかにアルバムのコンセプトに“ポスト・トゥルース”という言葉はあったんですが、“トゥルース”って言葉を使いたくなかったんです。

■楽曲的には、今回のアルバムのなかではいちばんだよね、“FANTASY CLUB”が。ありていに言えば、ディープ・ハウスだよね。Jポップ的なオリエンタリズムに依拠する必要もない、すごく良い曲……で、またそのタイトルも……実はリアリズムについて歌いながらも『FANTASY CLUB』なわけで、そこにも含みがあるというか。面白いタイトルだよ。

TB:そう、イエス、だけどノー(笑)。

■だから今回は、トーフビーツのシカゴ・ハウス愛を思い切り出しているんだけど、ただそれだけでもなく、聴き手に考えさせるアルバムだよね。

TB:“FANTASY”という言葉はにもそれがあるんですよね。あとは誤解を招く言い方ですが、リスナーを楽させちゃいけないというか。

■なるほど。まあ……いくら音楽に政治を持ちこむことが嫌いなトーフビーツであっても、これだけ世のなかでいろんなことがあったらね。いよいよ(政治性を)出してきたかと(笑)。

TB:いやいや(笑)。……でも今回アルバムを作っていて、政治に関してはマジでうっかりしそうになりましたね。“SHOPPINGMALL”で止めておかないと、みたいな。

■そうなの(笑)!

TB:本当にちょっと政治に入りかけて、でもそれは絶対に入れたらアカンと思って、まあ止めておきましたけど。

■これはいつか決壊するときが来るぞ!

(一同笑)

TB:だからこれ以上治安が悪くならないで欲しい!

■それか!

TB:頑張りきれなかったんですよね。気づかないでいいという言い方とかもそうなんですよね。

■いいじゃないですか、ぜんぶ自分でコントロールできちゃうような、悩んでいない表現者なんか面白くないですよ。とにかく、内面ではせめぎ合いがあったんだね。

TB:あったんです。だいたい、日本の音楽を見ていてこの先絶対に良くなっていくぞ、という予感がしなくなってきているんです。

■未来が見えないと?

TB:自分の回りの人たちはすごく頑張っているんです。セイホーさんとかすごいし……、セイホーさんからは「詳しく聴いてからもう一回言うけど、極端なアルバムを作ったね」みたいな話をされましたね。本当は極端である必要はないのに、そういうのは身を滅ぼす気もする、みたいな話にもなったりして(笑)。

■落ちた?

TB:それはないですけど(笑)。

■バランスは失ってないじゃないですか……アルバムは、1~2曲目こそ不安定さ見せるけど、3曲目“LONLEY NIGHTS”のポップスで持ち直すじゃない?

TB:あれはね……ヤング・JUJUがすごくポップに立ち回ってくれましたね。あれはマジで役割をまっとうしてくれたなと思います。

■8曲目“WHAT YOU GOT”も面白いよ。日本人が一周回って外側からJポップをやる感じ、歌メロとかさ(笑)。

TB:そう言ってもらえると良いんですけど……でもなんとこう、作っている側も前向きになれないっていうか、そういう現実もあると思うし。

■いまはいろんなことが同時に起こりはじめているよね? たとえば7インチ・シングルとカセットテープって、ぼくは一時のファッションで消えると思ったんだよね。しかし、海外はとくにそうなんだけど、新しいレーベルや若い世代であればあるほどカセットテープや7インチ・シングルを作っていっている。彼らはそれを目的とはしていないけど、そういうこと自体がスポティファイやYoutubeだけでいいのかということに対する批評性を持っているよね……まあ、自分もスポティファイは加入しているしさ(笑)。

TB:ぼくはアップル・ミュージックもスポティファイも両方入っていますもん(笑)。ただ、音楽をやっている人がいまの世相を映してないのはなんかおかしくないか、とはめっちゃ思っていて。10年前と同じようなものがあるのって日本だけじゃないですか。まあ世界でもあるけど……。

■トーフビーツやセイホー君の世代がいるじゃないか。

TB:いるんですけど、まだ台頭していないというか。これからなのかもしれないですけど。

■〈PC Music〉とか、あの辺りはどうなの?

TB:一緒にスタジオに入ったことがあるんですよ。彼らは確信犯で、インテリ、って感じの人たちで。ぼくは……ほら、シカゴ・ハウスの気持ちの入った曲が好きなんで。とりあえずドラム・マシンを鳴らして「ああー、テンション上がってきた!」みたいな。

■音楽はやっぱりパッションだと?

TB:ぼくは基本そう思うんで。UKガラージやシカゴ・ハウスが好きなのは、なんだかんだ言いながらあの気合い……気合いって言い方だと陳腐になるんで嫌なんですけど(笑)。でもぼくが好きな曲は気合いが入っていると思うんですよね。

■米澤慎太朗みたいなヤツとかね?

TB:シンタ君? そうです。ガリガリやのに気合いとかいうね。いいですね。

■トーフビーツは若くしにデビューしたけど、いま名前が出たシンタ君とか、ほかにも京都のトヨム君とか、同じ世代が頭角を出してきているじゃないですか。

TB:シンタ君もトヨム君も同い年じゃないかな。トヨム君はずっとやっていたのを知っていたんで嬉しかったですね。

■トーフビーツはデビューが早いからベテランみたいに見えるけど、実はまだ20代半ばちょっとで、若いんですね(笑)。

TB:なんだかんだで10年目くらいなんでね(笑)。だからモヤっとするのかもしれないですけど……、とはいえ、新しいものが出てきたぞって本当に思いたい、みたいなのがあって。セイホーさんはめっちゃそこを意識している。あの人がすごいのは、曲を聴いていて5秒後にどうなるのかわかんないんですよ。そういう感じはすごいと思うし、あんなふざけた感じのキャラしてますけど、ちゃんとやんないとできないんですよね。

■よく聴いているってこと? 

TB:いや、「お前らこれ知らないだろ」系はいまはネットがあるんで通用しないですよ。

■いや、レコード店でしかわからない情報はまだあるし。

TB:でもそれをカッコいいねと言ってくれる人はもういないから。

■それはネットを過信している子たちでしょ。たとえば、〈OS XXX〉とか、レコード店に行かないと目に入らないでしょ。しかもレーベルのネーミングは面白いし。それでアシッド・ハウスとか言っているんだけど。DJプレイステーションとかさ(笑)。

TB:レイヴっぽいハウスみたいな。

■そうそう、レイヴっぽい(笑)。若いんですよ。だから確実に新しい世代は出て来ているんだよね。日本でも『レトリカ』みたいなメディアも出てきているじゃない?

TB:野田さんから見ると「ようやく形になってきたぞ」みたいな(笑)。

■そういうこと。スケプタとトマド君が並列されているあの感じは、ネットのフラットな世界とは違うよね。いまはネットでだいたいの情報は入手できるし部屋にいるだけでもある程度の文章は書けてしまうんだけど、『レトリカ』は直に取材して、話を聞いて書いている。彼らからはなにかを再定義しようとするパッションは感じた。インターネット世代でありながら紙メディアを作り、しかもバーコードは偽物……あのフェイクさも新しいよね。

TB:『レトリカ』の登場はぼくも久々にテンション上がったっすね。

■そういうときに『FANTASY CLUB』という素晴らしいアルバムを作って、ある意味タイムリーじゃないですか。

TB:うん、自分でもけっこう区切りになりそうな気がしていますけどね。さっきも話に出たけど、FANTASYと言いながらリアリティある音楽だと思っているんで。

■うん、そうそう。トーフビーツがようやく出てきたという感じ。

TB:残り少ない社会性を発揮したいな、というのもあるんで(笑)。

(一同笑)

取材:野田努(2017年5月23日)

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