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interview with Shin Sasakubo + Dai Fujikura

interview with Shin Sasakubo + Dai Fujikura

未知なる音のごちそう

──笹久保伸+藤倉大、インタヴュー

細田成嗣    Oct 28,2014 UP

苦手なものには惹かれます。苦手な曲とか。(藤倉)

■現代音楽の流れをブーレーズ的な前衛音楽とケージ的な実験音楽に分ける考え方ってあるじゃないですか。藤倉さんはブーレーズからの影響のほうが強いと思いますが、笹久保さんが即興的に重ねた音だとか、偶発的に紛れ込んだ響きっていうのは、やはりぜんぶ統括しようとする感じで制作していったんですか?

藤倉:ある意味まったくコントロールできないものを使っていても、最終的には僕がコントロールできるわけですよね。ゴダールの映画みたいな感じで。あれは即興させてんのか知らないですけど、ぜんぶ自由とは言えない中で、でも編集は彼がやる。それとちょっと似ているのかもしれません。ただ、苦手なものには惹かれます。苦手な曲とか。ジョン・ケージも好きになろうとしていて。僕には「苦手な曲を好きになろう月間」っていうのがあるんですよ。その中でジョン・ケージもいくつかやりまして、まぁ、まだ完璧に大好きってわけじゃないですけど。

■藤倉さんの音楽に対する思想がケージのそれと対立するのではなくて、苦手ということですか?

藤倉:そうですね、対立するということもあるのですが、音楽的にちょっと苦手な部分がありますね。あったんですけど、でも好きになろうと努力して、いくつかちょっと好きにはなってきましたね。「苦手な曲を好きになろう月間」はこれからも続けていこうと思います。

■いまは何を克服しようとされていますか?

藤倉:いまはブルックナー。やっと好きになれたんですよ。あとハイドンとかシューベルトも僕は苦手なので、それもいつか克服したいなと。好きな音楽はもともと好きだからほっといてもいいじゃないですか。でも嫌いなものは僕の問題であって、その音楽の問題じゃないことが多いので、とくにケージみたいに古典になると。そしてその音楽を聴いて発見することは必ずあるはずですし。でも日本で妙にケージを持ち上げる風潮は嫌だなって思いますけどね。
 あと、ポップスで、みんながそうだとは言いませんが、たいして知らないのにシュトックハウゼンとかケージに影響を受けたっていう人いるじゃないですか。そういうふうに見栄を張るためじゃなくて、苦手な作曲家を好きになろうとしています。一昨年ケージの生誕100年祭があったんですけど、そこで僕、曲を書いているんですよ。BBCプロムスから委嘱されて。そのときにケージの本もいろいろ読んだりして、前よりも好きになりましたね。だから自分が快適じゃない状況に持っていこうっていうのが僕にはあるんだと思います。わざと苦手な状況で曲作りしたいなって。それもあってコラボレーションですよ。一人でもできるのに。

■自分の世界を崩すというか、押し広げるというか、いわばノイズのような存在として笹久保さんがいると。

藤倉:そうですね。あと学ぶことですね。本を読んで学ぶことももちろんありますけど、音楽から学ぶのがいちばん早いですからね。

■偶然性を音楽に取り入れるということと、即興的に音楽を演奏することのちがいはなんだと思われますか?

藤倉:……練習しなくていい。

笹久保:(笑)

藤倉:即興は練習しなくていい。でも偶然性っていっても、ケージ的な偶然ってマイクのフィードバックとかですから。本当の事故的なものをぜんぶ取り入れるものだと思うので。ぜんぜんちがうものだと思いますね。ただ僕はそういうのも好きになってきています。そういう音楽を作りたいかどうかはわかんないですけど。

実演するつもりじゃなかったんですよね。実演なんてできるわけないですし。(笹久保)

■録音物は基本的には必然的でしかありませんが、ライヴには必ず偶然的な要素が介入してきますよね。それは音楽にとって良いものだと思いますか?

笹久保:良いものというか、絶対にそうなりますよね。

藤倉:間違いがない演奏を聴きにきているお客さんがいるわけでもないと思うんですよ。間違いがあってもすごい迫力のあるオーケストラのコンサートを聴きたい人も多いでしょうし。そういう意味で言うと、ライヴで演奏されたクラシック音楽の録音物をリリースすべきかどうかというのは、議論が分かれるところだと思います。ラジオ放送はいいですよ。記録ですから。でも作品として出すっていうのはどうなんでしょうね。スタジオ録音と生の演奏だと、演奏者としては目指すものがちがうと思うんですよ。だからライヴでの演奏を繰り返し聴かれるっていうのはどうなんでしょう、まぁわかんないですけどね。

■今日これからお二人の初ライヴがあるわけですが、それが録音されて世に出されたとしたら、それは目指しているものとちがうということですか?
藤倉:ぜんぜんちがいますよね。

笹久保:そうですね。

■ちなみに今日のライヴはどのようなものにしようと思っていますか?

藤倉:僕たちもわからない、聴いてないから。

笹久保:実演するつもりじゃなかったんですよね。実演なんてできるわけないですし。藤倉さんが僕の音楽をバラバラにして繋げているわけじゃないですか。もうパズルみたいなもんですよ。僕の音ではありますけど、弾けるわけないじゃないですか、そんなの(笑)。それをちゃんと弾くとしたら、紙に書いて同じように弾くしかないですけど、アルバムと同じことをやることに意味はないですから。だからパフォーマンスでやるときは、藤倉さんが素材として作り上げたバッキング・トラックを使いながら、二人で実際に演奏する、っていう感じですかね。

藤倉:まぁ、どうなるかわかんないよね。だって知らないもんこの人、会ったばっかりだから(笑)。

笹久保:僕も知らないですよ、昨日会ったばっかりなんですから(笑)。

■今後もコラボレーションしていく予定はありますか?

藤倉:そうやって訊かれると、もう、作んなきゃって感じですよね(笑)。でも何か作るんじゃないですかね。

笹久保:作りますよ。

取材:細田成嗣   写真:小原泰広(2014年10月28日)

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Profile

細田成嗣/Narushi Hosoda細田成嗣/Narushi Hosoda
1989年生まれ。ライター/音楽批評。編著に『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(カンパニー社、2021年)、主な論考に「即興音楽の新しい波 ──触れてみるための、あるいは考えはじめるためのディスク・ガイド」(ele-king ウェブ版、2017年)、「来たるべき「非在の音」に向けて──特殊音楽考、アジアン・ミーティング・フェスティバルでの体験から」(ASIAN MUSIC NETWORK、2018年)など。2018年5月より国分寺M’sにて「ポスト・インプロヴィゼーションの地平を探る」と題したイベント・シリーズを企画/開催。

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