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interview with Airhead & James Blake

interview with Airhead & James Blake

空気頭と愛の歌

──エアヘッド、ジェイムス・ブレイク、インタヴュー

   写真:Teppei Kishida   Jul 12,2013 UP

オートチューンやピッチ・シフトに関しては、メロディ的な要素として使う以外に求められるものはもはやないね。想像力をかき立てるものがそれ以上は何もないから、何か新しい要素が加わらない限りは自分としてはやり尽くしたかな、と。

■(笑)じゃあ、アルバムについて話を聞きたいんですけど。『オーヴァーグロウン』は前作よりもさらに、あなたのシンガーソングライターとしての側面が前に出た作品だと感じました。ただそれ以前に、いま思えばその布石のようにしてファイストやジョニ・ミッチェルのカヴァーを作品として発表されてますよね。そこでフィメール・シンガーのラヴ・ソングを選んでいたのはなぜなのでしょうか?

ジェイムス:女性っていうのはユニークな視点を持って音楽に取り組んでいくってところがあると思うんだけど、ただ、いまの音楽業界では残念なことに女性アーティストは注目を浴びるためにどうしてもやらなきゃいけないことがあって......もちろん、そういうことを訊いてるんじゃないってわかってるんだけど(笑)、いまちょっとふとそう思って。でも実際は、シンプルにポイントをついて曲を作るのが上手な女性ミュージシャンが多いと思うんだ。男性にはできないような──もしくは男性がそれをやるためには、意識的にある面を押さえつけないといけないようなところがあると思うんだけど、そうじゃない、女性のそういうユニークな視点が大好きなんだ。
 たとえばジョニ・ミッチェルの曲なんかは本当に的確だし、ファイストのコード使いだってすごく的確だ。ポップなんだけど、他の曲ではできないような的確な音使いで、そこに「タ、タ、タ、ターン」と僕には思いつかないようなメロディが入ってきたりして、すごく上手くまとめてるんだよね。僕もジョニの"ア・ケース・オブ・ユー"なんかはライヴでやってるんだけど、ジョニのほうがもっと端的にピアノを弾いていて、僕はもうちょっとあれこれ装飾をつけつつ弾いてるんだ。とにかく、そういう視点が好きなのかな。女性のラヴ・ソングが好きっていうよりは、彼女たちのあの2曲が好きで、それがなぜかと言うと、こういうことなんだろうな、と。

■なるほど。こういう質問をしたのは、僕も多くのひとと同じように、シングルの"CMYK"をはじめて聴いたときにすごく衝撃を受けたんですよ。それで当時は、あなたがシンガーとしての側面にこれほどフォーカスすると思っていなくて。もともと「歌う」っていう行為自体、あなたにとって自然なことだったんでしょうか?

ジェイムス:うん、自然なことだったね。というのは、"CMYK"とかサンプリングを多用した曲は別として、僕は基本的に曲を作るときは歌からはじめることが多くて。そもそも、このアルバムは他のひとのサンプリングをしたくなかったところから始まってるんだよ。それだったら自分のものを作ろう、ということで。クリエイティヴな側面で言っても、他のひとのサンプリングよりも自分の歌のほうが自由を得られるというか。
 あと、いまはサンプリングも多用されすぎていて、新しいことが逆になかなかできなくなってるんだ。僕にとってサンプリングの行為っていうのは、その瞬間を捉えるってことだから、自分が作りたいその瞬間のためのものとして使いたいんだよ。一般的なサンプリングのプロセスっていうのは、もう飽き飽きしちゃってて、何も楽しいと思えるところがないんだよね。アカイのサンプラーでもiPhoneでも、はっきり言ってサンプリングの技術っていうのは10年前とあんまり変わらなくて......速度がちょっと速くなったぐらいだね。だから、サンプリングを使って革新的なことはなかなかできなくなっている。自分が音楽をやっていて、他とは違う新しいことをやるってなると、自分のもので作っていく......それしかないんじゃないかな、と思っているよ。

■その、サンプリングに飽き飽きしているなかで、歌??演奏だけじゃなくて、自ら声を出して歌う、って方向に進んだのはどうしてなんでしょう?

ジェイムス:ファーストを作ったときはサンプリングにうんざりしていたわけじゃなくて、そのことにはっと気づいたのはここ最近のことなんだ。同じ作業を3年間もやってるじゃないかって。録音したものを断片的にカットしたりくっつけたりする作業がバカバカしくなっちゃって。ファースト・アルバムのころはまだその作業にワクワクしていたから、その興奮ぶりが伝わる内容にはなってると思うんだけど。わりとそのときの自分のブームっていうのがあるんだけど、すごく熱しやすく冷めやすいタイプで。

■ああ、そうなんですか。

ジェイムス:すぐ気が変わるところがあるんだよ。でもいまの自分としては、ヴォーカルをサンプリングして切り貼りした作業を考えただけで、窓から飛び降りたくなるよ。いまだったら、楽器がいろいろあるなかでロブとベンとのバンドで演奏して、その3人のシナジーみたいなものをレコーディングするほうが楽しいかな。

■あるいは、あなた自身の声にかけられたピッチ・エフェクトが減ったっていうのも??。

ジェイムス:うん、サンプリングと同じように、自分の声にエフェクトをかけるのも飽きてしまったんだ。世のなかっていうのはテクノロジーが好きで、たとえばiPhoneだってみんなが4Sにだんだん飽きはじめたころに5が出て、するとみんな、わっとそれに飛びつくよね。少ししか違いはないのに、それでも何百万人ってひとが興奮してそれを買ってる。新しいテクノロジーっていうのは新しい可能性を生み出すものだから、僕も「これからどういう音楽ができるんだろう」っていう想いから興奮して、やる気が出てくるところはたしかにある。新しい何かを使うってことは、暗闇のなか手探りで何かを作っていく興奮といっしょなんだ。
 エフェクトに関しては、たとえばリヴァーブだったらまた別の効果があって、特定の空間的なサウンドを生み出すことができる。使い方によっては宇宙からのサウンドみたいにもできる。ただ、オートチューンやピッチ・シフトに関しては、メロディ的な要素として使う以外に求められるものはもはやないね。想像力をかき立てるものがそれ以上は何もないから、何か新しい要素が加わらない限りは自分としてはやり尽くしたかな、と。

■では、そうやってバンド・スタイルで、よりストレートにヴォーカルを取るっていう方向に移っていったことと、作品のテーマが「愛」に向かって行ったこととは何か関係はあるんでしょうか。アルバムのテーマは「愛」だとお聞きしていますが。

ジェイムス:まず、愛がテーマになっているという最大の理由は恋に落ちたからなんだ。誰かを愛していなければ、愛についてはなかなか語れないからね。それまでは愛というものは経験したことがなかった。ファースト・アルバムはその、愛のない自分の人生について嘆いていたアルバムだった。だからファーストはすごく悲しげだし、作ったときの自分もぜんぜんハッピーな状態ではなかったし。
 今回のアルバムは......僕たちは遠距離恋愛なんだけど、彼女といっしょにいるときもふたりきりになれるような空間があんまりなかったんだ。だから、いろんなひとといっしょの空間に押し込められているっていう気持ちと、離れているときの心が引き裂かれるほどの寂しさ、その両極端の想いがこのアルバムには入っているんだよ。

■なるほど、すごくよくわかります。少ない言葉で歌うエモーショナルなラヴ・ソングが多かったので、ご自身の経験がダイレクトに反映されたのではないかと想像していました。ただ同時に、たとえばあなたが好きなジョニ・ミッチェルであるとか、クラシックなシンガーソングライターたちがやってきたように、「ジェイムス・ブレイクとしてのラヴ・ソング」というものに挑戦したかったところはありましたか?

ジェイムス:うん、それは絶対にそう。歌詞とか曲作りの面ではすごく簡単で、ぱっと思い浮かぶんだけど、そこから構成して曲として完成させていくプロセスのほうが難しい。というのは、やっぱりありきたりなラヴ・ソングにはしたくなかった。地雷がたくさん埋まってる原っぱみたいなものだよ(笑)。安易なトラップにはまらないようにして、オリジナルなものを作っていくのはすごく難しい。自分にとっては新しい試みだったから、いくつか地雷を踏んじゃったと思うんだけど。

■そんなことないですよ(笑)。すごくエモーショナルな美しいラヴ・ソング集だと思いました。

ジェイムス:ありがとう(笑)。

取材:野田努、木津毅(2013年7月12日)

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