「Nothing」と一致するもの

Floating Points × Pharoah Sanders - ele-king

 驚くなかれ。いや、むしろ大いに驚きたまえ。フローティング・ポインツファラオ・サンダースによる共作が3月26日にリリースされる。
 かたや2010年代エレクトロニック・ミュージックのキイパーソンのひとり、かたやスピリチュアル・ジャズの生ける伝説──レーベルがデヴィッド・バーン主宰の〈Luaka Bop〉というのもさらなる驚きで、演奏にはイギリスを代表するオーケストラ、ロンドン交響楽団も参加。いったいどんな音楽が生み出されているのやら……。2020年前半の目玉となりそうな大型コラボ、心して待とう。

驚愕としか言いようがない最高の顔合わせ!! エレクトロニック・ミュージック・シーンのトップに君臨する FLOATING POINTS とスピリチュアル・ジャズ界の生ける伝説 PHAROAH SANDERS が相見えた注目のアルバム『Promises』が3/26(金)にリリース決定!

自ら立ち上げた〈Eglo Records〉、〈Pluto〉や〈Ninja Tune〉、〈Planet Mu〉といった名門レーベルからのリリースでもその名を轟かせるプロデューサーのフローティング・ポインツことサム・シェパード。前作『Crush』が英誌ピッチフォークで Best New Music を獲得、さらに神経科学の博士号までをも持つエレクトロニック・ミュージック・シーンにおける天才アーティストが、なんとジョン・コルトレーンの後継者にしてスピリチュアル・ジャズ界を代表するサックス奏者ファラオ・サンダースと共に作り上げた噂のニュー・アルバムが、トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンが主宰する〈Luaka Bop〉から遂に登場! ロンドン交響楽団による美しい演奏に、フローティング・ポインツによる繊細な電子音、そしてファラオ・サンダースによる深いサックスの音色が交錯する、全9曲、46分にも及ぶ壮大な組曲が展開された圧巻の内容! さらにアートワークは米タイム誌による「世界で最も影響力のある100人」にも2020年に選出されたエチオピア出身の現代アーティスト、ジュリー・メレツが手掛けた全てにおいてこだわり抜かれた芸術的極上盤!

Floating Points, Pharoah Sanders & The London Symphony Orchestra – Promises (Album Teaser)
https://youtu.be/iqFwIxkhT4s

【アルバム詳細】
FLOATING POINTS, PHAROAH SANDERS & THE LONDON SYMPHONY ORCHESTRA
『Promises』

フローティング・ポインツ、ファラオ・サンダース&ザ・ロンドン・シンフォニー・オーケストラ
『プロミセス』

発売日:3月26日(金)
価格:¥2,400+税
品番:PCD-94026

【Track List】
1. Movement 1
2. Movement 2
3. Movement 3
4. Movement 4
5. Movement 5
6. Movement 6
7. Movement 7
8. Movement 8
9. Movement 9

IR::Indigenous Resistance Sankara Future Dub Resurgence - ele-king

 自分はつくづくアナキストじゃないなよなと思うのは自転車に乗っているときである。サイクリストにとって日本の道路は極めてアナーキーだ。いや、もう、左を走っていれば対向からがしがし来るし、歩道を電動自転車がひゅーっと走っていく。こうしたことは、しかも子供を乗せながら日常化しているし、警察だって複数で歩道を走っている。アナキストになれない自分は、秩序を守らない自転車と遭遇する度に苛ついてしまうのだ。休日の、車両一方通行の商店街とかとんでもないことになっている。ま、かくいうぼくも臨機応変にズルはしますがね。ただ、踏切で待っているあいだ、自信満々に右側で待機するのは止めて欲しいよなぁ。
 
 “アナキスト・アフリカ”とは、最新のダブ・ポエトリーであり、ダブとアフロ・エレクトロニカの結合であり、アフリカ史には反王族/反中央集権的な人びとも存在したことを説き、アフリカを再定義しようとするウガンダのアンダーグラウンドから届いたメッセージだ。サンカラ・フューチャー・ダブ・リソージェンスなる当地のミュージシャンによる録音で、『Anarchist Africa』は昨年10月、そして最新作の『Rising Up For The Dub World Within』はこの2月にリリースされたばかり。
 アフリカ大陸の中央にどかっとAマークの入ったヴィジュアルの『Anarchist Africa』は、Bandcampの説明を読むと、昼間は整備士や溶接工が仕事で使っている防音などないガレージにて、午前4時から録音したという。マイクはなく、ドラムループとヴォーカルの録音には携帯電話が使用されている(だが、音の空間は素晴らしく、決してローファイではない)。そして、冷たいウガンダの夜の空気の音や日常生活の気配もそこには含まれているという。うん、たしかにそんなヴァイブレーションを感じる。

 じつを言うとこの“アナキスト・アフリカ”は、remix編集長時代に同じ釜のメシを食った春日正信なる男から教えてもらったばかりで、ぼくもすべて把握しているわけではないのだが、とりあえず、いまわかっていることを記しておこう。
 アーティスト名の最初に記されている〈IR〉とは「indigenous resistance(先住民レジスタンス)」のことで、エレキングの別冊『ブラック・パワーに捧ぐ』に掲載したURのマイク・バンクスとコーネリアス・ハリスの取材のなかで、今日のポジティヴな動きのひとつとしてふたりが話している。事実として、URとIRとの繋がりはいまにはじまった話ではなく、その関係は10年以上前に遡ることができる。とはいえ、IRの音楽のキーワードはテクノではなく“ダブ”で、IRはそれを「アフリカと先住民の連合創造への美的および音楽的感性、哲学的志向、活動家の参加を指す包括的で拡大された言葉」として解釈し、用いている。
 〈Dub Reality〉なるレーベルはジャマイカ生まれでカナダに住んでいたPatrick Andradeなる人物が主宰している。彼は90年代から音楽活動をしているようだが、IRとしての活動は00年代後半からはじまっている。2010年に『Dubversive』というアルバムを出しており、ここにはマイク・バンクスほか、なんとエイドリアン・シャーウッド、Fun-Da-Mental、エイジアン・ダブ・ファウンデーションらも参加している。音楽的にみてIRのユニークなところはアフロ・パーカッションとダブとテクノを混合させている点にあるが、それは彼らのネットワークにも表れていると言えよう。

 今回取り上げている2枚のアルバムは、IRクルーのなかのウガンダのサンカラ・フューチャー・ダブ・リソージェンス(SFDR)による作品になる。ぼくはSFDRが何者で、何人から成るプロジェクトなのかまったく知らない。ぼくには彼らの素性に関する情報らしい情報がない。だが、こんなにも狂った情報時代だ、これはこれで有り難い話かもしれない。それよりも音とメッセージを受け取ってくれと、そういうことなのだろう。ちなみに2枚のアルバムの冒頭は、同じ曲“アナキスト・アフリカ”である(そう、2回聴けと!)。
 手がかりはある。ぼくにはまず、デトロイトのURが30年前からやってきたことが、いまこうしてアフリカと繫がっていることが嬉しい驚きだった。しかもダブという音楽/スタイル/発想が、こんな形で更新されたことにも興味をそそられる。先住民レジスタンスは、ADFやON-Uともリンクしているぐらいだ、マイノリティの反乱ということがそのすべてではないだろう。BLMと同じように、この世界の根底にあるものを覆そうとしているのかもしれない。まあ、とにかく、ノイズやドローンでさえグルーヴィーにうねる、テクノ譲りのフリーケンシー、そして凄まじい低音を有したベーシック・チャンネルのアフロ・ヴァージョンのごとき彼らの音をまずは聴いてみてください。いまウガンダのアンダーグラウンドでは何かがはじまっている。

Carpainter - ele-king

 精力的にリリースをつづけるレーベル〈TREKKIE TRAX〉から新情報。カーペインターが新作EP「Yamanote Disko Klub」を2月12日にリリースしている。最高に気持ちの上がる表題曲を筆頭に、とにかくダンサブルなトラックがずらり。ラッパーのなかむらみなみをフィーチャーした “YATAI” では、なんと、彼女が幼少のころから慣れ親しんできたという和太鼓をプレイしている。なかなか外で踊れないこのご時勢、このEPを鳴らしながら部屋をクラブにしてしまおう。

Carpainter が90年代の東京発ファンキーテクノを昇華したニューEP「Yamanote Disko Klub」をリリース!

日本を代表するダンスミュージックレーベル〈TREKKIE TRAX〉を主宰し、数々のレーベルからリリースを行う Carpainter が自身にこれまで多大なる影響を与えてきた90年代〜00年代のファンキーテクノに懐古し、更に現代風にアップデートを重ねたEP「Carpainter - Yamanote Disko Klub」が2021年2月12日にリリースされる。

ハードハウスやジャパニーズテクノなどを基にした東京の喧騒感を思わせる表題曲 “Yamanote Disko Klub” を筆頭に、パーカッションが特徴的なハードテクノ、トライバルテクノ計6曲を収録。
祭り囃子が持つグルーヴをテクノに昇華したダンストラック “YATAI” では〈TREKKIE TRAX〉とも関係の深いラッパー「なかむらみなみ」が幼少期から慣れ親しんで居た和太鼓を実際に演奏し、Carpainter がそれらのサウンドを録音・編集し制作した一曲となっている。

また本作のリリースパーティーをデイタイムで2月27日に渋谷Dimensionで開催されるので、気になる方は是非足を運んで頂きたい。

リリース情報

アーティスト名:Carpainter (カーペインター)
作品タイトル:Yamanote Disko Klub (ヤマノテ ディスコ クラブ)
発売日:2021年2月12日(金)
フォーマット:デジタル販売 / ストリーミング
レーベル:TREKKIE TRAX

曲目:
1. Yamanote Disko Klub
2. Route 246
3. Coyote Time
4. YATAI
5. Do Not Clatter
6. Golazoooo

https://smarturl.it/Carpainter-YDC

 UKのレーベル、〈BBE〉がプロデューサー/DJを主役にして立ち上げたアルバム・シリーズ「The Beat Generation」。Madlib による『WLIB AM: King Of The Wigflip』まで通算11作がリリースされたこの人気シリーズの第一弾を飾ったのが、2001年に Jay Dee aka J Dilla 名義で発表された『Welcome 2 Detroit』であり、数々のヒップホップ・クラシックを残してきた故 J Dilla にとって初のソロ・アルバムとなった作品だ。そんな歴史的アルバムである『Welcome 2 Detroit』の20周年を祝ってリリースされたのが、本作『Welcome 2 Detroit - The 20th Anniversary Edition』である。

 90年代半ばから2000年前後にかけて Jay Dee 時代の彼は実に様々なプロジェクトに参加していた。Pharcyde や De La Soul など様々なアーティストのプロデュースを手がけ、その後、Q-Tip、Ali Shaheed と結成したプロダクション・チーム「The Ummah」や、The Roots の Questlove を中心としたヒップホップ/ソウル・コレクティヴ「Soulquarians」の一員としても活動。さらに自らのグループである Slum Village としてもアルバムをリリースしている。そんな多忙な状況の中、〈BBE〉の指名を受けて制作したのがこの『Welcome 2 Detroit』だ。タイトルが示している通り、彼の地元であるデトロイトのヒップホップ・シーンおよびデトロイト・サウンドのショウケースであり、J Dilla 自身のルーツを辿る作品でもある。


J-Dilla exclusive pictures by Paul Hampartsoumian

 Slum Village ではプロデューサー兼MCとして活動していた J Dilla だが、本作では自身のラップに加えて仲間であるデトロイトのラッパーを多数フィーチャー。J Dilla の脱退と同タイミングで Slum Village のメンバーとなる Elzhi など、世間的にはまだまだ知名度の低かった彼らの存在をヒップホップ・シーンに知らしめた。バウンシーなトラックに乗った Frank-N-Dank によるデトロイト賛歌 “Pause” や、シンプルなビートの質感が最高に気持ち良い “It's Like That” での Hodge Podge (Big Tone)と Lacks (のちの Ta'Raah)によるマイクリレーなど、J Dilla とデトロイトMCたちとの相性の良さは本当に素晴らしく、様々なタイプのトラックとラップの掛け算を堪能できる。タイトル通り Phat Kat の紹介曲である “Feat. Phat Kat” の印象的なサンプル・フレーズは、のちに Q-Tip が “Renaissance Rap” で再利用したり、本作にも参加している Karriem Riggins が自らの曲 “J Dilla the Greatest” で引用するなど、このアルバムの裏クラシック的な一曲と言えよう。

 本作には非ラップ曲やインスト曲もいくつか含まれており、それらが前述した「J Dilla 自身のルーツを辿る」曲だ。中でも至極の一曲と言えるのが、Donald Byrd の同名曲をカヴァーした “Think Twice” だろう。幼い頃からジャズを聞いて育ったという J Dilla だが、ここでは Mizell ブラザーズがプロデュースしたダンサブルなジャズ・チューンの原曲をジャズ+R&Bのテイストでアレンジし、ヴォーカルも自ら担当している。驚くのは、この曲がほぼ生楽器による演奏でレコーディングされているということだ。キーボードとトランペットを担当した Dwele と共に、この曲で J Dilla はドラム、ベース、ピアノ、パーカッションなどを演奏している。サンプリングの達人というイメージの強い J Dilla が、一方で楽器も使って曲作りをしていたことはいまでは広く知られているが、おそらく本作でもサンプリングに生楽器を重ねる手法が多数用いられている。そういった手法でトラックを作っていたヒップホップ・プロデューサーは、このアルバムがリリースされた2001年の時点では非常に稀だったはずで、そういう意味で本作は非常に前衛的な作品であった。『The 20th Anniversary Edition』収録の “Think Twice (DJ Muro’s KG Mix)” は、そんな J Dilla に対するリスペクト溢れるリミックスで、聞き手の心に深く染み込んでくる素晴らしい仕上がりだ。

 “Brazilian Groove (EWF)”も同様に生楽器を主体に作られているが、タイトルが示す通り Earth, Wind & Fire からインスパイアされ、名曲 “Brazilian Rhyme” のコーラスが引用されている。これは、J Dilla のルーツのひとつに70年代のソウル/R&Bがあることの証だ。そして、生楽器の使用と言う意味ではジャズボッサ曲 “Rico Suave Bossa Nova” も “Think Twice” と並ぶ最重要曲のひとつ。この曲は一部、既存の曲からフレーズの引用はあるものの、ほぼ J Dilla のオリジナル曲と言って差し支えないだろう。Pharcyde “Runnnin'” を筆頭に、早くからブラジル音楽をサンプリング・ネタとして取り入れてきたことでも知られる J Dilla であるが、自らの演奏でこれほど完成度の高い曲を作り上げることには恐れ入る。さらに、今回の『The 20th Anniversary Edition』には、ブラジル音楽の本家 Azymuth によるこの曲のカヴァーが収録されており、ブラジル音楽とヒップホップを強く結びつける非常に意義深い一曲だ。ちなみにこのカヴァー・ヴァージョンには、ドキュメンタリー映画『Brasilintime』を手がけたフォトグラファーの B+ と Eric Coleman がプロデューサーとしてクレジットされており、彼らがカヴァーを企画したと思われる。

 もうひとつ、最後に取り上げたいのが、Kraftwerk “Trans Europe Express” の J Dilla 流カヴァーとも言える “B.B.E. (Big Booty Express)” で、様々なシンセサイザーの電子音が飛び交う曲調は本作の中でも非常に異色である。ここで表現されているのはデトロイト・テクノからの影響だ。タイトルはストリップ・クラブの常連であった J Dilla らしいノリで付けられているが、遅めのBPMで、デトロイト・テクノにヒップホップのフレイヴァを加えたハイブリッドな仕上がりは実に中毒性が高い。非常に特殊な一曲ではあるものの、これもまたこの時代の J Dilla だからこそ作り上げることのできた一曲だろう。

 J Dilla は本作がリリースされた5年後に亡くなっている。その後も『Donuts』をはじめ様々な作品がリリースされているが、本作のように様々な要素が入り混じった作品はひとつも作られていない。もし、いまも彼が生きていて『Welcome 2 Detroit』の第二弾を作ったらどんな作品になっていただろうか? そんなことを想像しながら、この『The 20th Anniversary Edition』をさらに聴き込んでみたい。

文:大前至

アーティスト名: J DILLA
タイトル: WELCOME 2 DETROIT - THE 20TH ANNIVERSARY EDITION [7INCH × 12枚組 BOXSET]

バスタ・ライムスが名付けたという J・ディラ名義でリリースされた本作、彼の出身地デトロイトをリプリゼントすべくゲスト・ラッパー陣は全て地元のアーティストで固めており、フランクンダンクからエルジー、ファット・キャットが参加し、J・ディラがデトロイトで聴いて育ったクラフトワーク、アフリカン、ジャズ・ファンク/ボサノヴァ、そしてもちろんブーム・バップに至るあらゆる音楽をディラ流に仕上げたクラシックがズラリ……! 全てデジタル・リマスタリングを施し、さらにこのアルバムのセッション中にJ・ディラのプライベート・テープに残された未発表音源やアウト・テイクを追加収録、そして日本が誇るキング・オブ・ディギン、Muro による “Think Twice” のリミックス、クラシック “Rico Suave Bossa Nova” のアジムスによるカヴァーなどを収めた全46曲の脅威のヴォリュームで送るボックスセット! アンプ・フィドラーやマ・デュークスなど参加アーティストのインタビューなどを収録したブックレット(英語)も付属。

label: BBE
genre: HIPHOP
format: 7INCH × 12枚組 BOXSET
cat no.: BBEBG001SLP
barcode: 0195497389094
発売日: 2021.2.5
税抜卸価格: (オープン価格)

Tracklist:

Disc 01
A1. Y’all Ain’t Ready
A2. Think Twice (faded)
B1. Y’all Ain’t Ready (Instrumental)
B2. Think Twice (Instrumental ? faded)

Disc 02
C1. The Clapper feat. Blu
C2. Shake It Down
D1. The Clapper (Instrumental)
D2. Shake It Down (Instrumental)

Disc 03
E1. Come Get It feat. Elzhi (edit)
F1. Come Get It (Instrumental ? edit)

Disc 04
G1. Pause feat Frank ‘n’ Dank
G2. B.B.E. ? Big Booty Express
H1. Pause (Instrumental)
H2. B.B.E. ? Big Booty Express (Instrumental)

Disc 05
I1. Beej-N-Dem Pt.2 feat. Beej
J1. Beej-N-Dem Pt.2 (Instrumental)

Disc 06
K1. Brazilian Groove
K2. It’s Like That (Edit) feat. Hodge Podge, Lacks
L1. Brazilian Groove EWF (Instrumental)
L2. It’s Like That (Instrumental)

Disc 07
M1. Give It Up
N1. Give It Up (Instrumental)

Disc 08
O1. Rico Suave Bossa Nova
P1. Azymuth ? Rico Suave Bossa Nova (Vinyl Edit) ? Azymuth

Disc 09
Q1. Feat. Phat Kat
R1. Feat. Phat Kat (Instrumental)

Disc 10
S1. African Rhythms
S2. One
T1. African Rhythms (Instrumental)
T2. One (Instrumental)

Disc 11
U1. It’s Like That (Alternate Version)
U2. Beej-N-Dem (og) feat. Beej

Disc 12
V1. African Rhythms (No Drums)
V2. Brazilian Groove EWF (No Drums, No Vocal)
V3. Give It Up (Acapella)
W1. Think Twice (DJ Muro’s KG Mix)
X1. Think Twice (DJ Muro’s KG Mix Instrumental)

R.I.P. Milford Graves - ele-king

 ジャズ・ドラマーのミルフォード・グレイヴスが去る2月12日、難病の心疾患のために亡くなった。没年79歳。
 グレイヴスは、フリー・ジャズにおいてもっとも際立ったドラマーだったのだろう。ぼくよりもひと世代上の、音楽(ことジャズ)に特別な思いを馳せている人たちはほとんどみんなグレイヴスが好きだった。間章や竹田賢一のような人たちの文章を読んでいたし、ぼくは松岡正剛さんからも話をされたことがあった。そう、だから1993年のたしか初夏だったと記憶している。土取利行が企画したライヴ公演に行かない理由はなかった。
 もうひとつぼくには特別な理由があった。その年、ぼくは20代最後の1年を、大袈裟に言えば24時間テクノを聴いているような生活を送っていた。隔月で海外に行くような生活だったし、雨だろうが雪だろうが毎週末をクラブで過ごし、文字通り、寝る間も惜しんで聴いていたのではないだろうか。石野卓球との『テクノボン』もこの年に上梓している。そんな時期に、メトロノーミックなリズムでなくてもグルーヴを創出できるドラマーの生演奏(しかも日本におけるその深い共鳴者、土取利行と共演)を体験することは、極めて重要なことのように思えたし、その勘は大いに当たった。
 踊っているのか踊らされているのかという、たあいもない話である。だが、当時のぼくにはゆゆしき問題だった。ぼくは踊りたかったが、踊らされたくはなかった。しかし踊らされることは、実は気持ち良かったりもするから困るのだ。4/4のキックドラムは楽に乗れる。ぼくはどう考えてもその楽なほうが好きな人間だが、そればかりでも不安になるという面倒くさい人間だったりもする。
 心臓の鼓動は3拍子だと言ったのはグレイヴスだったと記憶しているのだけれど、いやしかし彼のドラミングは、数値で記述されるとは思えない。が、それはたしかに鼓動=生命の根源的なエネルギーの噴出に違いなかった。彼の全身から醸成されるあまりにもあまりに多彩なリズム(アフリカ、インド、ラテンなど世界中のリズムの複合体)と音色、そしてその超越的な演奏にはただただ圧倒されたが、ぼくは彼の演奏から聴こえる喜びの律動にひどく感銘を覚えたのだった。ライヴの最後には客席にいた子供をステージに上げて、いっしょに演奏し、ともすれば見せ物的になりかねない超絶テクニックなど使わずとも表現できるうる領域を見せつつの、なかばワークショップめいた微笑ましい幕引きだったと記憶している。ライヴが終わって外に出ると、ぼくのなかにも堪らない嬉しさがこみ上げてきたものだった。
 
 ジャズ・ドラマーとしては、アルバート・アイラーの『Love Cry』をはじめポール・ブレイのカルテットでの演奏、日本では初来日時の演奏(高木元輝、阿部薫、近藤等則、土方利行との共演)を収めた『Meditation Among Us』もよく知られるところだ。ソニー・モーガンとの共演でもっとも評価の高い初期の記録『Percussion Ensemble』、中古が高騰しなかなか聴けなかった『Bäbi』といったアルバムもいまでは手頃な価格のCDで聴けるので、他に類をみない彼の演奏をいつかぜひ体験してほしい。
 また、ブラック・ミュージックについの名誉教授でもあり、ハーブ学者、鍼灸師でもあったグレイヴスは、音楽の医学的な効果に関する研究者、こと心臓の研究者でもあった。不整脈治療のための音楽の有効性を提唱し、奨学金を獲得すると実験装置を購入、自宅の地下室で心拍研究を続けていたという。また、ここ10年ほどは、アーケストラのマーシャル・アレン、ジョン・ゾーン、ビル・ラズウェル、ルー・リードなどとも共演している。

野田努



 せんだってDOMMUNEのアルバート・アイラーにまつわる番組で細田成嗣さんがESPレーベルを代表する音楽家をあげよ、と怜悧な声音で問うものでとっさにアイラーだとかえしたが、ESPはむろんアイラーだけではなかった。1960年代、ことに64年のジャズの十月革命以降のフリージャズの隆盛期を側面からささえたレーベル「ESP Disks」にはオーネットもサン・ラーもいれば、ポール・ブレイもファラオ・サンダースも、ファッグスやゴッズなどジャズならざるをものももぐりこんでいたし、パティ・ウォーターズやジュゼッピ・ローガンら、モーダルからフリーへいたるジャズ史観そのものをチャラにしそうな面々も名をつらねており、その総体が放つ多様で多元的、どこかナゾめいてときに神秘的なムードこそかのレーベルの持ち味だった。
 フリーとは演奏における形式の自由であるばかりか、それを陶冶した歴史のとらえなおしでもあったが、他方には拘束を解かれた身体や感性がもたらす実存の重みがあり、換言すれば前衛の命題ともいえる複数の要素のつなひきが1960年代なかごろのジャズの、ひいてはこの時期のESPのテンションの正体だった。なかでも1941年にニューヨークはクイーンズのジャマイカ地区に生まれ、ラテンをふりだしにジャズにたどりついき、アイラー(『Love Cry』)やポール・ブレイ(65年の『Barrage』にはマーシャル・アレンも参加)のグループからマイケル・マントラーとカーラ・ブレイのジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ、ここしばらくではジョン・ゾーンやビル・ラズウェルらダウンタウン派との仕事も記憶にあたらしいミルフォード・グレイヴスのドラミングは属人的な身体性を競い合った往時にあって、その微分的な律動と流麗な語法で異彩をはなっていた。
 注目をあつめたのは1964~65年だから20代なかば。60年代初頭にジョン・チカイとラズウェル・ラッド、ルイス・ウォレルと組んだニューヨーク・アート・カルテットがESPから同名作を出した。グループのアンサンブルの中心はチカイとラッドの2管の絡みだったが、グレイヴスのプレイはともすればもったりしがちなESPの仲間たちの諸作ともちがうシャープな印象を本作にもたらしている。リロイ・ジョーンズも自作詩「Black Dada Nihilismus」の朗誦で客演した64年の『New York Art Quartet』はその名のとおりアートの前衛としてのフリーを志向していたはずだが、グレイヴスはやはり64年に参加したジュゼッピ・ローガンの五重奏団ではアート・カルテットと真逆の呪術的な音響空間を種々雑多なリズムと音色でかもしだしてもいる。ESPに2作をのこしたのち、行方をくらまし2000年代後半に復帰するまでながらく消息をたっていたローガンの異教的な存在感が説得力をもちえたのもグレイヴスのリズムに負うところ大だった。なんとなればアイラーらフリージャズ第2世代にあって汎アフリカニズムとも異なる非西欧的なリズム志向はサン・ラーをのぞけばほとんど類例がなかった。アフロフューチャーリズムを転倒させるかのごときグレイヴスの古代主義こそ、シカゴ派をさきがけ即興の領野を拡張するものであり、その萌芽は60年代前半に芽吹き70年代に実をむすびはじめる。間章の半夏舎の招きで1977年夏に来日したおり、高木元輝、阿部薫、近藤等則と土取利行らと吹き込んだ『Meditation Among Us』はその記録であり、どちらかといえば舞台のひとだったグレイヴスの脂ののりきった時機をとらえた録音物としても貴重である。レコードのライナーノーツで間章はグレイヴスの弁をひきながらスポンティニティないしスポンティニアスなる語を鍵概念風にもちいているが、それすなわち演奏という関係のポリティクスにおける非主導性を意味し、間の視線はすでにジャズからインプロヴィゼーションに移行していたのはライナーノーツの前半で注目する音楽家としてグレイヴスとともにスティーヴ・レイシーとデレク・ベイリーをあげているのでもわかる。77年の東京でグレイヴスは欧米の新潮流の伝導役を担うとともに演奏の場では関係を励起する触媒でありつづけた、そのあり方は間が指摘するとおり、マックス・ローチともエルヴィン・ジョーンズともサニー・マレイともちがうドラマー像を提起する。
 幾多のドラマーとグレイヴスを分かつポイントこそ、間にとってのスポンティニティだが、その具体像を私なりに敷衍すると、グレイヴスのスタイルにはアイラーの諸作で耳にするサニー・マレイのパルスビートの定量的で水平的なあり方と対照的な志向性をもつといえばいいだろうか。リズムキープでもノンビートの即興でも、グレイヴスの演奏には線的で垂直的な傾向があり、自在にグルーヴをつむぐ場面であっても、腐心するのはリズムの連なりよりも一音としての一打である。一打への深い洞察が一音ごとの差異となり、一打ごとの微細な、しかし根源的な落差は時間軸に沿った演奏行為においてかぎりない抑揚(ダイナミズム)に転化する。グレイヴスにかかれば、スネアもタブラもティンバレスもパンディロもトーキングドラムも、ピアノのような楽器であっても、すべてからく打面にふれ音が鳴る構造物にすぎず、そのような探求と実践のはてに、時々刻々鼓動を刻みつづける身体が浮かび上がるのはなかば必然であった。
 2018年グレイヴスは心アミロイドーシスの診断とともに余命半年の宣告を受けたという。その2年後の2020年、闘病の模様を伝える記事を執筆した「New York Times」の記者は心臓の鼓動を研究してきた彼の身にふりかかった運命を、皮肉とみるひともいるかもしれないとひかえめな筆致で記している。それにたいしてグレイヴスは「挑むべきものは私の裡にある」と述べている、私はその声を耳にしたわけでないが、おそらく悲壮感とはちがう響きだっただろう。そのかいあってミルフォード・グレイヴスの不屈のハートはさらに半年ものあいだビートを刻みつづけたのである。(了)

松村正人

R.I.P. Chick Corea - ele-king

 1970年代から現在に至るジャズの歴史を変えた重要なピアニスト、チック・コリアが2月9日に癌で亡くなった。1941年6月12日生まれで、享年79歳だった。彼のフェイスブックによると非常に珍しい種類の癌を患っており、それが死因となってしまった。日本とも交流が深かったチックの死はニュースでもいち早く報じられ、たびたび共演してきた上原ひろみ氏や小曽根真氏らがメッセージを寄せている。いつ頃癌を発症したのかは定かではないが、最後まで元気に演奏活動や制作活動を行なっていて、2019年にクリスチャン・マクブライドとブライアン・ブレイドによるトリロジーで来日公演も果たした。実は死去後の2021年もアメリカやヨーロッパではツアーも組まれていて、最後の最後まで演奏することを諦めていなかったようである。小曽根氏によると、彼の60歳とチックの80歳を祝うツアーも計画していたそうだ。

 訃報のニュースの中でチック・コリアは、「ハービー・ハンコックやキース・ジャレットと並ぶ20世紀を代表するピアニスト」、「グラミー賞を23回受賞」といった文句で紹介されている。幅広い年代に渡って活躍し、現在も多大な影響力を持っていたチックは、聴く人にとってさまざまな思い出があり、好きなアルバム、好きな時代も異なるだろう。そうした中でもやはり輝いているのは、1970年代初頭にリターン・トゥ・フォーエヴァー(以下RTF)を結成し、その後のクロスオーヴァーやフュージョンというジャズの新たなタームをもたらした頃ではないだろうか。アコースティック・ピアノとエレクトリック・ピアノの両翼をもってジャズの世界で羽ばたき、ロックなど異種ジャンルとも融合していった点では同時期のハービー・ハンコックとも共鳴しており、1970年代のチックはジャズの冒険者であり、それまでのジャズの価値観を覆す存在であった。
 スペイン系のアメリカ人で、ジャズ・トランペッターだった父親の影響で幼少から英才教育を受け、同時にクラシックも学んでハーモニーなどの音楽理論を身につけてきたチックだが、自由に自己のアイデンティティを表現できるということでジャズの道を選んだ。ラテンからハード・バップまで演奏していたチックの転機は、1968年のマイルス・デイヴィスのグループへの加入で、前任者のハービーに代わって『イン・ア・サイレント・ウェイ』(1969年)、『ビッチェズ・ブリュー』(1970年)という歴史的作品にも参加している。このグループでマイルスはチックにフェンダー・ローズを弾くように指示しており、その後のチックの活動の道筋をつけた。
 また1970年にマイルス・グループを脱退した後は、デイヴ・ホランドらとのサークルでフリー・ジャズなど前衛的な手法も試みており、クラシックからラテン、ハード・バップ、エレクトリック・ジャズ、そしてフリー・ジャズに至る幅広い音楽性を身につけたことが、後のフュージョン時代の自由な表現力へと繋がっていった。

 そして1971年、スタンリー・クラーク、ジョー・ファレル、アイアート・モレイラ、フローラ・プリムとRTFを結成。ソロ名義ではあるが『リターン・トゥ・フォーエヴァー』(1972年)がグループの実質的デビュー作で、マイルスともハービーとも違う新たなジャズを見せる。エレクトリックな仕様ではあるがアコースティックな味わいも融合した独特の清涼感溢れる作風、テクニカルな中にも抒情性を湛えたヒューマンな演奏は、1960年代のジャズが持っていたエモーショナルで熱量が高く、ある種の混沌とした空気を一変させ、1970年代の新しいジャズの到来を告げた。表題曲や “ラ・フィエスタ” におけるスペイシーでマジカルな音の洪水が流れ出す光景は圧巻であり、一方で “ホワット・ゲーム・シャル・ウィ・プレイ・トゥデイ” でのラブリーで素朴な味わいも印象に残る。そして “ラ・フィエスタ” に見られるチックのルーツであるスパニッシュ~ラテン風味、アイアートやフローラ・プリンらによるブラジル的アクセントもグループの持ち味で、ジャズとさまざまな音楽的要素の融合であるフュージョンという方向性を示したと言える。このように演奏だけでなく、作曲やアレンジ、コンセプト・メイクなどにまたがるプロデューサー感覚は、ハービーと同じくマイルスのもとで身につけたものであり、1970年代のジャズを語る上で欠くことのできない資質でもあった。

 1973年に発表した『ライト・アズ・ア・フェザー』はグループの最高傑作に位置付けられる作品で、“アランフェス協奏曲” のフレーズを用いた “スペイン”、フローラもソロで取り上げる “500マイルズ・ハイ” やブラジリアン調の “キャプテン・マーヴェル” など、チックの代名詞的な作品が並ぶ。中でもフローラが歌う “ユー・アー・エヴリシング” の幻想的な中から優美に飛翔していく、夢と悦びと希望に満ちた演奏は筆舌に尽くしがたいものがある。
 アルバム発表後はアイアートとフローラが脱退し、その後メンバー・チェンジを経てレニー・ホワイト、ビル・コナーズが参加したRTF第2期を迎える。チック、スタンリー、ビル、レニーのラインナップで『ヒム・オブ・ザ・セヴンス・ギャラクシー(第7銀河の賛歌)』(1973年)を発表。グループとしてはジャズ・ロック化が進み、ダイナミックでパワフルな表現力が増す一方、チック本来のメロディアスで官能的な表現も兼ね備えた演奏となっている。次作『ホエア・ハヴ・アイ・ノウン・ユー(銀河の輝映)』(1974年)ではビルに代わってアル・ディ・メオラが参加し、彼の12弦ギターを用いた洗練された演奏がグループの売りのひとつとなる。テクニカル面でも最高を極めた時期であり、続く『ノー・ミステリー』(1975年)でグラミー賞のベスト・ジャズ・インストゥルメンタル・パフォーマンス部門を受賞。名実ともに世界のジャズ/フュージョン界を代表するバンドとなった彼らは『ロマンティック・ウォリアー(浪漫の騎士)』(1976年)を発表。RTF史上もっともテクニカルなプレイが披露されるアルバムであり、プログレ的とも言える作風はジャズ界のみならずロック界にもセンセーションを巻き起こした。

 この第2期のメンバーはグループ活動と並行してソロ活動もおこなっており、チックは『ザ・レプラコーン(妖精)』(1975年)を発表。のちに夫人となるゲイル・モランはじめ、生涯の盟友であるスティーヴ・ガッドも参加し、“ルッキング・アット・ザ・ワールド” や “ソフト・アンド・ジェントル” などジャズ・ファンのみならず、広く一般の音楽ファンにアピールするポップな側面も見せる。こうしたいい意味での大衆性やポピュラリティもチックの魅力のひとつで、多くのファンから愛された所以でもある。
 その後RTFはさらなるメンバー・チェンジがあり、そしてチック、スタンリー、ゲイル、ジェリー・ブラウン、そして再加入のジョー・ファレルの形で『ミュージックマジック』(1977年)を発表。この第3期はよりファンキーな方向性となっており、最終的にライヴ・アルバムの『ザ・コンプリート・コンサート』(1977年)をもってグループは解散する。後に再結成されているが、1970年代におけるRTFの活動は幕を閉じた。その後チックはソロ活動からビッグ・バンド、さまざまなアーティストとの共演やコラボなど幅広い活動をおこない、おのおのアコースティック・ピアノとエレクトリック・ピアノを使い分け、ときに併用している。作風も正統的なジャズからクラシック、ときにラテンやサンバ、ときにジャズ・ファンクやプログレと幅広く手掛け、晩年まで精力的な活動を続けていたが、私個人ではRTF第1期の活動がもっとも鮮烈に印象に残る。

 チックは最終的に自分の死期を悟って受け容れていたようで、フェイスブックに生前最後となるメッセージを残している。それをもってこの追悼文を終えたい。「私と旅を共にし、音楽の火を明るくともし続けることに協力してくれたすべての人に感謝したい。私の願いは、演奏や制作、パフォーマンスなどをしたいという気持ちがある人には、それをしてほしいということ。自分のためでなくとも、ほかの人々のために。世界にはもっとアーティストが必要だというだけでなく、単に本当に楽しいものなのだから」。

Chihei Hatakeyama - ele-king

 日本のアンビエント界を牽引するひとり、畠山地平が4月7日に新作『Late Spring』をリリースする。レーベルはUKの〈Gearbox〉で、これまでビンカー・ゴールディング&モーゼス・ボイドサラシー・コルワルドゥワイト・トリブルチミニョなど、ジャズ寄りの作品を多く手がけてきたところだ。同レーベルが初めて送り出す日本人アーティストが畠山というのはじつに興味深い。ふだんは仕事の早い畠山が今回はだいぶ時間をかけたそうで、その面でも注目すべき1枚といえよう。来たれ、春。

●日本のアンビエント/ドローン・ミュージック・シーンを牽引する畠山地平、英〈Gearbox Records〉からの第一弾作品をリリース!

●ファースト・シングル「Sound of Air」のアニメーション・ビデオも公開中!

国内外のレーベルから現在にいたるまで多数の作品を発表し、日本を代表するアンビエント/ドローン・ミュージック・シーンを牽引する存在となったChihei Hatakeyamaこと畠山地平。 Spotifyの2017年「海外で最も再生された国内アーティスト」ではトップ10にランクインするなど、これまでも海外での人気が高かった彼が、4月7日(水)にイギリスの〈Gearbox Records〉からの第一弾作品となるアルバム『Late Spring』を日本先行発売する。

〈Gearbox Records〉初の日本人アーティストとなったChihei Hatakeyamaの新作は、一連の豊かで傑出した出会いを通して、共有された旅の経験を穏やかに展開していく。大聖堂のオルガンを思わせる1曲目 “Breaking Dawn” の鳴り響く水中の反響から、アルバムを締めくくる “Twilight Sea” の巧妙なドリフトに至るまで、レコードは緻密で美しいメロディが詰まった傑作に仕上がっている。広がっていくシンセサイザーのサウンド、そして光り輝くスローモーションのギターに引き寄せられ、それが時折現れる音響要素と結びつく。その様は、まるで人工血液のように機械の脈を流れるコンピューター・コードを想起させる。

1949年の映画でタイトルを共有している日本の映画監督小津安二郎の作品に示されている通り、 風景の循環運動の美しさと日常生活の下に横たわる季節の変化に触発されて、『Late Spring』は古い映画の印象を投影している。円運動のコンセプトは、畠山がデイヴィッド・リンチ監督の『ツイン・ピークス The Return』を観ていた時に思いついたという。

通常は仕事が早い方だというが、今回の作品は自身のキャリアの中で最も時間のかかった作品の 一枚だったとか。2018年に始まった制作作業は、作品が完成した2020年まで続いた。彼は、ギターとシンセの再生と録音に新しいアンプとマイクのセットアップを使用して、自身の演奏へのア プローチを再検討した。メロディとトーンを単純化するために、彼はトラックごとに1種類の楽器 のみを使用し、1つはシンセのみ、もう1つはエレキ・ギターのみを使用したという。

早速本日配信開始となったファースト・シングル「Sound of Air」のアニメーション・ビデオが公開された。

「Sound of Air」のアニメーション・ビデオはこちら

畠山いわく、“Sound of Air” は、ストラトキャスターの音色を活かした楽曲で、フェンダーのギター・アンプを使って収録。4月に録音した曲で、ギター演奏のインプロヴィゼーションでループを作り、編集したもの。Mel9という特殊なギター・エフェクトを使ってメインのギターの背後にあるストリングスのような音色を作った。爽やかな春の空気をイメージしているという。

世界に先駆けて日本先行発売されるアルバム 『レイト・スプリング』に期待が高まる。

[リリース情報]
アーティスト名: Chihei Hatakeyama (畠山地平)
タイトル名: Late Spring (レイト・スプリング)
発売日: 2021年4月7日(金)
レーベル: Gearbox Records
品番: GB1565CDOBI (CD) / GB1565OBI (LP)

※特別仕様盤特典:日本先行発売、ライナーノーツ付き

[トラックリスト]
01. Breaking Dawn
02. Rain Funeral
03. Butterfly's Dream
04. Sound of Air
05. Sound of Air II
06. Spica
07. Thunder Ringing in the Distance
08. Memory in the Screen
09. Butterfly's Dream II
10. Long Shadows
11. Twilight Sea

アルバム『Late Spring』予約受付中!
https://orcd.co/latespring

シングル「Sound of Air」配信中!
https://orcd.co/soundofair


【バイオグラフィー】

Chihei Hatakeyamaとして2006年に前衛音楽専門レーベルとして定評のあるアメリカの〈Kranky〉より、ファースト・アルバムをリリース。以後、オーストラリア〈Room40〉、ルクセンブルク〈Own Records〉、イギリス〈Under The Spire〉、〈hibernate〉、日本〈Home Normal〉など、国内外のレーベルから現在にいたるまで多数の作品を発表し、ライヴ・ツアーも行なっている。デジタルとアナログの機材を駆使したサウンドが構築する、美しいアンビエント・ドローン作品を特徴としており、主に海外での人気が高く、Spotifyの2017年「海外で最も再生された国内アーティスト」ではトップ10にランクインした。独自の楽曲制作の他、映画などにも楽曲を提供している。ソロ以外では伊達伯欣とのエレクトロ・アコースティック・デュオOpitope、ヴォーカリスト佐立努とのユニットLuis Nanookでとしてアルバムをリリースしている。加えて、世界的に支持される日本の電子音楽家ASUNAやアンビエント・アーティストHakobune等ともコラボレーション・アルバムを発表している。2021年4月、イギリス〈Gearbox Records〉からの第一弾リリースとなるアルバム『Late Spring』を発売。

shotahirama - ele-king

 2019年末にリリースされた『Rough House』で突如ヒップホップに目覚めたグリッチ・プロデューサーの平間翔太。同作は配信限定だったけれど、ひさびさにCDアルバムの登場だ。前回が『Maybe Baby』なので、ほぼ4年ぶりということになる。レーベルは京都の〈SHRINE.JP〉。トラックリストを眺めると、程よい尺の曲が10曲並んでいる。『Rough House』に続き、今回もアルバムらしいアルバムに仕上がっているようだ(そして、プレヴュー音源を聴く限り、今回もヒップホップ作品の模様)。現在、収録曲 “FIRE IN WHICH YOU BURN” のかっこいいMVが公開中です。これを見ながら発売を待ちましょう。


ノイズ・グリッチプロデューサーからビートメイカーへと生まれ変わったshotahiramaが4年ぶりのCDアルバム!

2010年代に自身が主宰するレーベル〈SIGNAL DADA〉より『Nice Doll To Talk』、『Post Punk』など先鋭的な作品を立て続けに発表してきたshotahiramaが、2017年の『Maybe Baby』以来となるCD作品をリリース! 本作『GET A LOAD OF ME』は彼が近年試みている(ターンテーブルを楽器として用いる発想に端を発した)サンプリング・ビート集の最新版といった仕上がりだ。加えて本作では新たな試みとして、全てのトラックがElektron社のドラムシンセ/シーケンサーであるMACHINEDRUMによる一発録音のライブレコーディングによって制作されている。このタイトな制作手法により『GET A LOAD OF ME』には彼の作品が常に携えていたラフで身軽な佇まいが、新たな魅力として顕在化している。

アーティスト:shotahirama
タイトル:GET A LOAD OF ME
発売日:2021年3月19日
品番:SRSW-491
フォーマット:CD
レーベル:SHRINE.JP

トラックリスト:
01. THE WHOLE NINE YARDS (3:03)
02. GET A LOAD OF ME (4:03)
03. FIRE IN WHICH YOU BURN (4:14)
04. SKINZ (3:45)
05. FEEL THE HIGH (3:38)
06. TEARS (5:37)
07. KIDS (4:26)
08. KEEP IT IN THE STREET (3:16)
09. FRIGHT NIGHTS (5:06)
10. TIME TO SHINE (4:12)

https://studiowarp.jp/shrine/srsw-491-shotahirama%E3%80%8Eget-a-load-of-me%E3%80%8F/

Amazon
Tower Records
HMV


プロフィール

ニューヨーク出身の音楽家、shotahirama(平間翔太)。中原昌也、evalaといった音楽家がコメントを寄せる。畠中実(ICC主任学芸員)による記事「デジタルのダダイスト、パンク以後の電子音楽」をはじめ、VICEマガジンや音楽ライターの三田格などによって多くのメディアで紹介される。Oval、Kangding Ray、Mark Fell等のジャパンツアーに出演。代表作にCDアルバム『post punk』や4枚組CDボックス『Surf』などがある。

Mars89 - ele-king

 新たな夜明け──発売日は、あの日からぴったり10年後の2021年3月11日。「幾千もの粉塵から成っているのでないとしたら塵とは何か」……オフィシャルのインフォに記された文章もなにやら意味深だ。サイトへ飛ぶと、VRを駆使したヴィジュアルが展開されている。やはり、なにかしらコンセプトがあるにちがいない。昨年は映画『破壊の日』の劇判を手がけたり、変わらず精力的な活動をつづけている東京のDJ、Mars89が新作をドロップする。レーベルは、これまでも彼の作品を送り出してきたブリストルの〈Bokeh Versions〉。これは要チェックだ。

https://bokeh.tech/

Mars89
New Dawn

Bokeh Versions
2021年3月11日リリース

1. Magnetic Ghosts
2. In The Shed
3. Grotesque Reflections
4. Nocturnal Animals
5. Body Collapse
6. New Dawn

Chee Shimizu+miku-mari - ele-king

 DJや選曲家、著述家として活躍のChee Shimizu、このたび音楽作品をリリースしました。ギタリストmiku-mariとのコラボレーション作品で、Lovefingersが主宰する〈ESP Institute〉(GroundやYoung Marco、Cos/Mesなどのリリースで知られる)からのリリース。タイトルは「Reconstructions」、15分強、12分強のトラックが2曲収録されている。そしてこれ、かなり良いです。70年代のイーノ風の間と空間があって、とても良い時間を過ごせます。ジャケもいいすね!

Chee Shimizu + miku-mari / Reconstructions

 2000年代、Chee ShimizuはDr. Nishimura(当時Cisco Recordsのハウス・ミュージック・バイヤー)と共に、東京のアンタッチャブルなDJチームDiscossessionを率いていた。このユニットのバランスを取っていたのは、スコットランド出身の若かりし頃のJonny Nash(後にSombrero GalaxyやGaussian Curveを結成、Melody As Truthを主宰しアンビエント作家として活躍中)と、ギターの名手でありタトゥーアーティストでもある故Zeckyだった。東京のシーンでマルチな才能を発揮していたDiscossessionは、瀧見憲司主宰のCrue-Lから2枚のEPをリリースし、個人でも様々なミックスをリリースしており、その全てが永遠のカルト的な地位を築いている。CheeがLovefingersに提供したミックス「Denshi-Meiso」(2006)と「Follow My Dream」(2007)、そして東京郊外の八王子にあるHiFiラウンジSHeLTeRでの伝説的な「リスニング・セッション」は、後に彼のフォロワーに「オーガニック・ミュージック」または「オブスキュア・サウンド」として知られるようになる基礎を築いた。『Obscure Sound』は、彼の嗜好を詳細に記録したレコード・ガイドブックで、それ以来、同業者や若い世代のレコード・ディグのバイブルのような存在となっている。
 2009年のESP Instituteレーベル発足時、Lovefingersのコンピレーション・アルバム『Concentration Vol 1』にはCheeによる2曲のエディットが収録された。その後のリリースに向けたアペリティフとしてLovefingersに提供された神話的なオリジナル・トラックは、「Golden Age」と「Dekmantel 061」にデモとして収録されただけで、現在も正式なリリースには至っていない。その後Cheeは古いロープから新しいものを作ることはなく、提供されたのは、東京のギタリストmiku-mariとのコラボレーション作品である。
 ふたりは東京のForest Limitで不定期に開催されている実験的なオーディオ/ビジュアル・イベント「Sacrifice」で頻繁にコラボレーションを行っており、2018年には日本唯一のアンビエント・フェスティヴァル「Camp Off-Tone」への出演を依頼されたことをきっかけに、Cheeはmiku-mariとともにハイブリッドな即興パフォーマンス・ユニットに発展させようと試みた。Cheeは4台のCDJを使って様々なパーカッションのサンプルやフィールドレ・コーディング音源をコラージュし、ウィンドチャイムやアンデスのチャチャを生演奏で加え、miku-mariはギター・コントロールのシンセサイザー、様々なサウンド・アプリケーション、日本のアンビエント作曲家吉村弘が考案した円筒形の音具「Sound Tube」、チベタン・ベルやピラミッド・クリスタルなどによるライブ要素を組み合わせた。このパフォーマンスのためのリハーサルは、フェスティヴァルに先立ってForest Limitで2時間以上にわたり行われ、すべてのパートがマルチトラックとして録音された。その音源を編集したものが、この「Reconstructions」である。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798 799 800 801 802 803 804 805 806 807 808 809 810 811 812 813 814 815 816 817 818 819 820 821 822 823 824 825 826 827 828 829 830 831 832 833 834 835 836 837 838 839 840 841 842 843 844 845 846 847 848 849 850 851 852 853 854 855 856 857 858 859 860 861 862 863 864 865 866 867 868 869 870 871 872 873 874 875 876 877 878 879 880 881 882 883 884 885 886 887 888 889 890 891 892 893 894 895 896 897 898 899 900 901 902 903 904 905 906 907 908 909 910 911 912 913 914 915 916 917 918 919 920 921 922 923 924 925 926 927 928 929 930 931 932 933 934 935 936 937 938 939 940 941 942 943 944 945 946 947 948 949 950 951 952 953 954 955 956 957 958 959 960 961 962 963 964 965 966 967 968 969 970 971 972