Home > Columns > ネオアコ・ディフィニティヴ!- ──いまだからこそつづりたい“neo acoustic list”
岡村詩野、大藤桂、与田太郎、ブレイディみかこ、三田格 May 23,2014 UP
大藤桂
「素敵ジャケ」縛り! 20枚の愛すべきアートワーク
レコードのジャケットがたくさん掲載されているようなディスク・ガイド本のたぐいは、ジャンル関係なしに大好きです。それぞれの年代やジャンルによって異なる発色やフォントなどを見ながら、「なぜこのジャケにしたんだろう」などとあれこれ考えるのが好きです。なかでも80年代から90年代のネオアコ独特の、ナイーヴで小洒落て、粋なジャケはとくに愛おしい。今回は「素敵ジャケ」というテーマで、長く愛でたくなるような人物モチーフのレコードを選んでみました。
■〈コンパクト・オーガニゼイション〉の歌姫の一人ヴァーナ・リントのこのジャケットは色合い、構図もパーフェクト(1)。裏ジャケも高飛車な表情が何とも言えない可愛さ(2)。トット・テイラー主宰の〈コンパクト・オーガニゼイション〉。アート・ワークにはレーベル・カラーに合ったキッチュなものが多い。
■ブルーボーイは〈サラ〉の看板バンドであり、ネオアコ名盤との誉れ高い作品の一つ。〈サラ〉はリリース・アーティストの音にマッチした淡い色合いのジャケが特徴的(3)。ブルーボーイは他作品のジャケットも秀逸なものが多く、収集欲を掻き立てられる(4)。ポール・ウェラーが「キープ・オン・バーニング」をテーマに立ち上げた〈レスポンド〉より2作品をチョイス(5、6)。リリース作にはモッズ・フィーリング溢れていて、ジャケットもスタイリッシュ。カンパニー・スリーヴ仕様のものもあり、こういったところからも60’sからの影響がチラホラ窺える。
■次にネオアコ老舗レーベルの〈エル〉より10インチ・シリーズから2作品(7、8)。〈エル〉はマーデン・ヒルのジャケットからも醸し出されていますが、デカダンな雰囲気のものや、アンソニー・アドヴァースやバッド・ドリーム・ファンシー・ドレスのようなキュートな中にも上品さを兼ね備えたジャケットが音によく似合う。
■さてここからガーリー・ジャケ6連発(9、10、11、12、13、14)。本人がモチーフになっているのはディー・ウォーカーのみですが、それぞれのアーティストのジャケットへのこだわりや愛、気概が感じられる仕上がりになっている。
■つづいてはカップル・ジャケ2作品(15、16)。北欧系のアーティストのジャケはよいものが多い気がするのは勝手な持論(ギャングウェイはデンマーク)。最後はチルドレン物の4作品(17、18、19、20)。ジャケットとサウンドの関係を強く意識したのはベン・ワットの『ノース・マリン・ドライヴ』かもしれない。アコースティック・ギターから紡ぎ出されるシンプルなメロディに、そこはかとない、ひんやりとした空気感。あまりにもこのジャケットに合い過ぎている。この名盤をもって素敵ジャケット紹介の最後を締めくくりたい。
素敵なジャケットというきっかけでネオアコの世界に興味を持っていただけたら幸いです。また、今回はアナログでしかリリースされていないものをあえて多数選んでみました。「ジャケ買い」なんて言葉があるくらいだから、所有欲を刺激されつつレコードを買うきっかけとしていただけたらさらに嬉しく思います。