「Nothing」と一致するもの

Rob Mazurek - Exploding Star Orchestra - ele-king

 今年出たジェフ・パーカーの『Suite for Max Brown』でも顔をのぞかせていたけれど、90年代からガスター・デル・ソルやトータスジム・オルークステレオラブらの諸作に参加し、トータスのジェフ・パーカーとはシカゴ・アンダーグラウンド・トリオ~クァルテットやアイソトープ217を組んで、ポストロックとリンクする活動をつづけてきたジャズ・コルネット奏者のロブ・マズレクが新たなアルバムをリリースする。先行公開中の下記 “A Wrinkle in Time Sets Concentric Circles Reeling” を聴けばわかるように、いまなお刺戟的なジャズに挑戦しつづけているようなので、ぜひチェックを。発売は12月16日。

Rob Mazurek - Exploding Star Orchestra
Dimensional Stardust

ジェフ・パーカーやジョン・ハーンドン、チャド・テイラーらシカゴ音響派時代の朋友から、〈Blue Note〉より鮮烈なデビューを飾った新鋭ジョエル・ロスまで参加の、ジャズ・コルネット奏者ロブ・マズレク率いるエクスプローディング・スター・オーケストラ待望の新作!!
ハードバップからポストロックまでをプレイしてきたロブ・マズレクが到達した、前衛ジャズと現代クラシックも入り交じる壮大な音世界!! 日本限定盤ハイレゾCD「MQA-CD」仕様、ボーナストラックを加えてリリース!!

Official HP : https://www.ringstokyo.com/robmazurek

間違いなく、このアルバムはロブ・マズレクのキャリアの集大成であり、今も前進を続ける彼と仲間たちが生み出した驚くべき新作だ。シカゴ・アンダーグラウンド(デュオ、トリオ、カルテット、オーケストラ)、アイソトープ217°、サンパウロ・アンダーグラウンド、そして、このエクスプローディング・スター・オーケストラへと結実した軌跡が鮮やかに刻まれている。アルバムの何れの断片も美しい。(原 雅明 rings プロデューサー)

アーティスト : Rob Mazurek - Exploding Star Orchestra (ロブ・マズレク・エクスプローディング・スター・オーケストラ)
タイトル : Dimensional Stardust (ディメンショナル・スターダスト)
発売日 : 2020/12/16
価格 : 2,800円+税
レーベル/品番 : rings (RINC69)
フォーマット : MQA-CD (日本企画限定盤)
バーコード : 4988044060678

* MQA-CDとは?
通常のプレーヤーで再生できるCDでありながら、MQAフォーマット対応機器で再生することにより、元となっているマスター・クオリティのハイレゾ音源をお楽しみいただけるCDです。

Rob Mazurek (director, composer, piccolo trumpet, electronic renderings, modular synth)
Damon Locks (voice, electronics, texts)
Nicole Mitchell (flutes)
Macie Stewart (violins)
Tomeka Reid (cellos)
Joel Ross (vibraphone)
Jeff Parker (guitar)
Jaimie Branch (trumpet)
Angelica Sanchez (acoustic piano, electric piano)
Ingebrigt Håker Flaten (bass)
Chad Taylor (drums, percussion)
Mikel Patrick Avery (drums, percussion)
John Herndon (drum machines)

Tracklist :
01. Sun Core Tet (Parable 99)
02. A Wrinkle In Time Sets Concentric Circles Reeling
03. Galaxy 1000
04. The Careening Prism Within (Parable 43)
05. Abstract Dark Energy (Parable 9)
06. Parable of Inclusion
07. Dimensional Stardust (Parable 33)
08. Minerals Bionic Stereo
09. Parable 3000 (We All Come From Somewhere Else)
10. Autumn Pleiades
+BONUS TRACK 追加予定

BudaMunk & TSuggs - ele-king

 ビートメーカー/プロデューサーとして様々なアーティストの楽曲を手掛ける一方で、Sick Team の一員としての活動や mabanua とのユニット=Green Butter、Fitz Ambrose とのユニット=BudaBrose、さらに Joe Styles、Aaron Choulai、ISSUGI、ILL SUGI など様々なアーティストとのコラボレーション作品を生み出してきた BudaMunk。ソロでもビート・アルバムだけでなく、ヴァラエティに富んだメンツをゲストに迎えた作品も展開しているのだが、2018年にリリースされたソロ・アルバム『Movin' Scent』の収録曲 “Froaura” にて美しい鍵盤のメロディを響かせていたのが、今回のコラボレーターであるジャズ・ピアニストの Tony Suggs こと TSuggs だ。

 80年以上の歴史を誇る名門ジャズ・バンド、Count Basie Orchestra の5代目ピアノ・プレーヤーを務め、故 Roy Hargrove が率いていたR&B/ヒップホップ・プロジェクト=The RH Factor のアルバム『Hard Groove』にもオルガンで参加するなど、USジャズ・シーンのコアな部分に身を置いていたのがその経歴からも伺える。2000年代のアンダーグラウンド・ヒップホップをルーツに持ちながら、実に数多くの作品を発表してきた BudaMunk であるが、今回の TSuggs とのプロジェクトは、彼にとっても最もジャズのカラーが強い作品であることは間違いない。曲のキモとなっているビートの部分は BudaMunk が手がけているので、曲の芯の部分にあるのはもちろんヒップホップなのだが、曲によってはジャジーなヒップホップというよりも、ヒップホップ・テイストが濃厚なジャズと表現したほうが相応しいようにも思う。

 そんな本作のヒップホップとジャズとの絶妙なバランス感を象徴するのが一曲目の “Mergers and Acquisitions” だろう。DJ YUZE によるアブストラクトなスクラッチに、ジャズ、R&B、ヒップホップなど様々なジャンルのアーティストと共演するギタリストの吉田サトシが参加し、緊張感のある絡みが展開しながら、TSuggs によるキーボード(主にローズ・ピアノ?)によって実に美しく透明な空気感が曲全体を覆う。続く “Convinced” に参加しているのが、TSuggs と同様に Roy Hargrove とも繋がりのあるベーシストの Amen Saleem で、BudaMunkによるビートとキーボード、ベースとのトリオによるライヴ感あるセッションはまさしくジャズそのものだ。他にもベーシストの日野 "JINO" 賢二が参加した “Half on a Baby”、トランペット奏者の Patriq Moody が参加した “Kozmic Question” など、ゲスト参加曲での躍動感溢れるグルーヴ感は実に面白く、ヴォーカル曲では Iman Omari が参加した “Good Vibes” は間違いなく本作の目玉となる極上の一曲だろう。その一方で、BudaMunk と TSuggs が一対一で対峙するミニマルな構成の楽曲での、ビートとキーボードのみが作り出すグルーヴはやはり格別で、永遠に聴き続けていられるような圧倒的な心地良さを与えてくれる。ゲスト参加したアーティストも交えながら、本作の魅力をぜひライヴでも再現してほしいと思う。


Lucrecia Dalt - ele-king

 ブルックリンの〈RVNG INTL〉から出た独ベルリン在住(出身は南米コロンビア)のアーティスト、ルクレシア・ダルトの新作『No Era Sólida』がリリースされた。

 ダルトは哲学や映画、神話、テクノロジーなどから影響を受けたエクスペリメンタルなエレクトロニック・ミュージックを制作しているアーティストだ。00年代に用いていたルクレシア名義やサウンド・オブ・ルクレシア名義の頃(00年代)は、歌詞と曲に重点を置いたポップな作風だったが、次第にその作風は変化し、2018年に〈RVNG INTL〉より発表した『Anticlines』では儚い声と幽玄な音響によるエクスペリメンタル(実験的)な音響音楽を展開し高い評価を獲得した。ちなみにダルトは、あの F.S. ブラムや元ウルフ・アイズのアーロン・ディロウェイとの共演・共作でも知られている。

 本作『No Era Sólida』は、架空の存在である「リア」と接触し、その変化を描くことがコンセプトのアルバムだ。「リア」がダルト自身のドッペルゲンガーであるか否かはさておき、自己と他者がやがて一体化していくかのごときサウンドであることに違いはない。聴き込んでいくにつれリスナーである私たちも「あちら」と「こちら」、「あなた」と「わたし」の境界線が溶け合うようなムードを味わうことになるのである。真夜中の濃厚な空気の中に溶け合っていくようなダークなサウンドスケープは前作『Anticlines』(2018)ですでに確立していたが、本作では架空の人物「リア」との遭遇と対話というコンセプトによって、一種の音響劇(?)のような一貫性が生まれたことで、ダルト特有の幽玄なサウンドスケープがいっそう際立って聴こえてくる。

 ダルトの「声」は電子音と同じように無機質に無感情に発せられるが、ときにヴォーカル的、もしくはポエトリー・リーディング的、あるいはヴォイス・パフォーマンス的と曲中でトーンを絶妙に変化させる。アルバム冒頭の1曲目 “Disuelta” から4曲目 “Ser Boca” までのあいだでも「声」は自在に変化を遂げており、幽玄な音響の中に溶け込みつつも、しかし静かに自己を主張していく。くわえて真夜中の木々のざわめきのような電子音もモダンなミュジーク・コンクレートとして見事な出来栄えである(楽曲の一部はフランスのGRMで制作された)。音響もまた声と同じように不穏な夜の世界に立ちこめる空気のようなムードを放っている。

 このような「声と音響」の生成と変化は、本作のコンセプトである「リア」との対話を表現する重要な要素のはず。じっさいアルバムを通して音響世界は微かに変化をしつつ、9分55秒に及ぶアルバム最終曲(日本盤ではボーナストラックが1曲追加) “No Era Sólida” においては幽霊のごときヴォーカル/ヴォイスとサウンドが統合され、「リア」と「わたし」が融解していくような感覚にとらわれた。私は、“No Era Sólida” が不意に途切れるように終わったとき、まるでこれまでの音楽がすべて空気の中に消失していったような感覚を覚えた。「何を聴いたのか」「ここにどんな音が具体的にあったのか」など、アルバムの44分にわたる音響をすべて忘却してしまったような感覚である。音と音が統合された果てに、ついに記憶を喪失したかのような聴取体験とでもいうべきか。

 そう、本作『No Era Sólida』は、音楽の生成と消失の場に立ち会ったような不穏にしてダークな音響作品なのである。現代のエクスペリメンタル・ミュージックにおいても、ひときわ異彩を放つ傑作といえよう。

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーは、僕がニューエイジのテープにかなりハマっていたことからはじまった。ああいうテープにはシンセサイザー音楽が山ほど使われているから。しばらくの間、あの手のテープに中毒したかなりのジャンキーだった。それくらい貪欲だったんだよ、自分に見つけられる限りのあらゆるシンセ音源を手に入れるぞ、みたいな。


Oneohtrix Point Never
Magic Oneohtrix Point Never

Warp/ビート

ConceptronicaHypnagogic PopAvant Pop

 この10年、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー (OPN)がぼくたちの耳と、そんでときには頭を楽しませてくれたことは事実である。なんの異論もない。ele-kingのweb版がはじまった2010年から毎年のようにOPN絡みの作品があーだこーだと紹介されている。まるでストーカーだ。紙エレキングの創刊号(2010年末刊行)では、日本では初となるダニエル・ロパティンのインタヴューも掲載しているが、これはまだ『Replica』すらリリースされる前のことで、ビートインクがOPNを配給/プロモーションするようになる3年も前の話。そう、もう10年前かぁ(はぁ〜)。
 その取材においてロパティンは名前の由来についてこう答えている。「歯医者に行くとよく耳にする“ボストンのひっきりなしにソフト・ロックをかける”ラジオ局、Magic 106.7(マジック・ワン・オー・シックス・セヴン)からとったシャレ。歯を削られる音とソフト・ロックがOPNというプロジェクトのインスピレーションになった
 なるほど! 「歯を削られる音」がノイズになったのかと『Returnal』の謎が解けた気になったのは、取材者の三田格だけではなかった……。

 チャック・パーソンの『Eccojams Vol.1』のことは長いあいだ知らなかった。OPNの初期作品に垣間見れるニューエイジめいた音色や展開の由来に関してもわからないままだった。今回ロパティンは、そのあたりのことを惜しみなく喋ってくれている。ぼくの関心ごとのひとつには、彼がニューエイジについていかように考えているのかというのがあった。このインタヴューでようやくそれを知ることができて嬉しい。

 OPNが新作出るんだけど、好き? なんてことを20代前半のリスナーに訊いたりしたら、「集大成なんですよね」などと言われた。ネット界のコピペ仕様の情報伝達は本当にヤバイ。「違うよ、集大成なんかではないよ」とぼくは無防備な若者にちょっと偉そうに言ってやった。が、OPNのある一面が拡張された作品ではあるんだろうね。
 最初期の名義をアルバム・タイトルとした新作『Magic Oneohtrix Point Never』は、Covid-19によるロックダウン下においてきわめて内省的になったダニエル・ロパティンが自分はどこからやって来たのかと、つまりはOPNの起源を思い出しながら作ったアルバムだ。ここに歯医者のノイズはない。かつてあったドローンもない。アルバムは架空のラジオ番組を装っている。合間に喋りを入れながら、17の断片()によって構成されている。いかがわしいほどキラキラした音色、そしてニューエイジめいた音楽/ソフト・ロックめいた曲(じつはそのどちらでもない曲)が流れる。ようこそOPNのシュールな世界へ。
 アルバムには近年の諸作のように、他者(ゲスト)がいる。何気に豪華だ。ザ・ウィークエンド、アルカ、キャロライン・ポラチェック(元チェアリフト)、ラッパーのNolanberollin、サンフランシスコのNate Boyce。『R Plus Seven』以降の彼なりのポップ路線は守られつつ、彼なりにエンターテイメントしている。奇妙だけれど心地良い。アートワークがまた今回もかなりセンスが良い。フィジカルでは特殊印刷が施されているリッチな作りです。
 インタヴューは2回に分けて掲載します。アルバム発売は来週30日なので、この1週間は本番に向けての予習ということで。まずはインタヴューその1、〈ニューエイジ編〉のはじまりはじまり。

僕はもともと、とてもプライヴェートで閉じたタイプの人間だった。ただ、そうは言っても、「他との繫がりを感じるのは自分は好きじゃない」ということではなくて、とにかく僕からすれば、ラジオを聴くのはいつだってこう、特別な、ほとんどもうスピリチュアルな類いの、とても私的な世界との繫がり方だった。

今年の春夏にかけてコロナ禍のなかで制作されたアルバムになりますが、いま世界で起きていることをあなたなりに考えたと思います。まずはそのあたりから話しませんか。

DL:ああ、うん。

この状況に直面し、あなたは何をどう考えたのか。

DL:うん……そうだね、正直、自分が生産的になる図はあんまり想像していなかった、みたいな。というのもニューヨークで自主隔離がはじまったときは非常にきつかったからね、僕のいたエリアは状況が本当にひどかった。だからほんと……ひたすら自宅に留まり、ただただ待機し、毎日さまざまな統計を眺める以外には何もやることがなかった。で、当時の僕は友人のはじめたラジオ番組をよく聴いていてね、Elara FMっていうんだけど(訳注:サフディ兄弟の制作会社がはじめたネット・ラジオ。OPNも4月にこのラジオ向けに「Depressive Danny’s Witches Borscht Vol.1」なるミックスを発表している)。それがいつしか、とてもいい手段になっていったというかな、他との接触をもつという意味で。
 あの頃は他の人たち会うことができなかったし、何がどうなっているのか誰もわかっていなくて、とにかくみんなものすごく怖がっていた。けれどもあのラジオがよかったのは、自分の知らなかった人や誰も名前を聞いたことのないような連中の作ったさまざまなミックスを耳にすることができたことでね。それに自分の知人たちもあれ向けにミックスをやっていたし……それらを聴いてるうちに、とにかくこう、あのラジオが存在してくれることへの深い感謝の念が湧いたっていうか? だから、あれが存在していなかったら、他者とのコネクションをもつのは不可能だったわけで。で、たとえば他の手段として映画を観ようとしたこともあったけど、頭がおかしくなりそうというか、とてもじゃないけど観てられない、みたいな。登場人物がお互いにタッチする場面だとか──

(苦笑)たしかに。

DL:(笑)映画のなかでみんなが集まって楽しそうに過ごしていたり。とにかく無理、映画を観ているのが耐えられなかったし、そのせいでラジオをよく聴いていたんだ。で、そうするうちにワンオートリックス・ポイント・ネヴァーという名義の由来やこのプロジェクトの起源といったことを考えはじめるようになった。ガキだった頃の自分はラジオをエアチェックしてDJミックステープを作っていたよな、云々。昔の僕はカセット・デッキとテープで、一時停止ボタンを使ってミックスをやっていたんだよ。何か自分の気に入ったものが聞こえてきたら一時停止ボタンを解除して録音し、それが終わったら一時停止、自分の好きなものがはじまったらまた録音開始……という具合に。
 こうして話すとケッタイに聞こえるけど、当時の僕はそういう、好きなラジオ局を次々に流してサーフしていく、みたいなちょっとしたミックステープ的なものを作っていたんだ。で、そういったことは常に自分のイマジネーションの一部だったっていうのかな──
 僕はもともと、プライヴェートでは閉じたタイプの人間だった。そうは言っても、「他との繫がりを感じるのは自分は好きじゃない」ということではまったくなくて、ただ、とにかく……僕からすれば、ラジオを聴くのはいつだってこう、特別な、ほとんどもうスピリチュアルな類いのそれと言ってもいいくらい、とても私的な世界との繫がり方だった。
 で、考えたんだよね、そういったことを念頭に置いて試しに音楽を作ってみる甲斐はあるんじゃないか、自分にやれるかどうかやってみたらどうだろう? と。でも、なかなかうまく噛み合わなくて、長くかかってね。というのも僕は自宅で、ベッドの脇で(苦笑)レコーディングしていたし……それもまたワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの起源を思い出させてくれたんだけどね、「自分はずっとこういうことをやってきたんだよな」って。

なるほど。

DL:それにもうひとつ……そろそろセルフ・タイトルのレコードを作る時期かもなっていう思いもあって。そんなわけでやがて物事もクリックし出していったし、僕は戻ったんだ──だから、いったんニューヨークのロックダウン状況が少し落ち着いたところでニューヨークを抜け出して、このプロジェクト(=OPN)をスタートさせたときに僕が暮らしていた街に帰って。で、あそこでこのレコードを仕上げたっていう。だからこのレコードにはいわゆる、パーソナルな特性みたいなものが備わっているんじゃないかと思う。そうは言いつつ、それはまあコロナとの関わりという、広い意味での話だろうけれども。

ある意味「作るはずのものではなかった」作品とも言えそうですね? わたしたちが直面しているコロナ禍の特殊な状況の産物、偶然生まれた作品とでもいうか。

DL:その通り。まさにその通りだよ。自分じゃそこまでうまく言い表せないな(苦笑)! 

(苦笑)。

DL:(笑)いやマジに、君が僕のアメリカ向けの取材を受けるべきだよ。だっていまの表現の方が、僕がグダグダ説明するよりもずっと短くて簡潔だしさ。

(笑)いやいや、あなたご自身の口から聞くのが大事なんですから。

DL:フフフッ!

家から出られないという特殊な事態はともかく、新作の作り方は、いままでの作品とどこが違っていましたか? お話を聞くと、あなたはある意味今回ご自分のルーツを再び訪れたようですが、でも──

DL:そう。だから、戻ろうとはしても、やはり過去に戻るのは無理だっていう。そう、ほんとその通りだよ(苦笑)……戻ってはみたものの、そこで気づかされるんだ、やっぱり自分も昔とは違う人間になっているんだな、と。

それに、あなたご自身のスキルも昔よりあがっているでしょうし。

DL:うんうん、実際、以前よりも自分でエンジニアをやるのがうまくなったし。そこもトラック作りの際の興味深い点だったんだよな、というのも僕はとても……スタジオで他のエンジニア相手に作業する云々の状況にすごく楽に対応できるようになったというか、それにすっかり慣れてきていた。ところがそこにこのコロナのあれこれが起きたわけで、うん、基本的に今回は(テクニカルな側面の)ほとんどを自分でこなしたね。だからその意味ではかつての自分の状況に少し似ているけれども、うん、やっぱり気づくものなんだよ、あの頃からずいぶん時間も経ったし、いまの自分の興味やテイストも昔とは違うんだな、ということに。

僕はどういうわけか自分の内面を探る行為に駆り立てられたし、そうなったのは自分の外側の現実ゆえだった、だろうね。だから乖離してはいないんだ。外部で何が起きているかの反動として、そこから目を背けることになった、と。

今回は数多くのコラボレーターが参加していますし、そこもかつてのあなたとは違いますよね。

DL:ノー、ノー(笑)! それはない。あの頃はドロップボックスも存在しなかったし、いまのように誰かに携帯でメッセージを送って音楽のステムをやり取りし合うだとか、そういったことは当時まったくできなかった。うん、だから今回は、他者とのコラボレートが大いに可能だった、一緒に何かを作っていくのがエレクトロニックな面でやりやすかった、ということだね……。(苦笑)しかも、今回は誰もが手に入って参加可能だったから! それくらい、みんな何もやることがなかったっていう(笑)。

(笑)たしかに。今年本当にコラボ型のアルバムが多く出ているのも、理由のひとつはそこじゃないかと思います。

DL:みんなヒマを持て余してる。

それはそれで、生産的になれていいのかもしれません。

DL:うん。

それに、ミュージシャンの多くは大抵他とは隔たりがあるというか。バンドで活動していれば別でしょうが、ソロ・アクトの場合は自宅で作曲したり音楽を作るケースが多いでしょうし、もともと「世界から自主隔離している」タイプの人は多いと思います。

DL:フフフフッ……そうだね、音楽人はどっちにせよ隔離されてるっていう(苦笑)。

どんな音楽もその時代を反映するものですが、しかし作者がどこまでそれを意識するかは人それぞれです。無意識にやっている人もいれば、意識的な人もいる。

DL:うん。

で、今作においてあなたは「時代性」や「社会」をどのくらい意識されましたか?

DL:んー、それは誰だって常に意識しているものだと思う。っていうか、意識せずにそうしている、というか。人びとの思考というのは、自分たちが把握しているつもりでいる以上に、もっと本当は深いものだと僕は思う。だから、「あなたは時代や社会について考えていましたか?」と訊かれたら、それは自分でもわからないけれども、自分は何か感じていたか? と言えば、その答えはイエス。だって、僕たちみんな何かを感じているわけだしね。
 何もわざわざ居住まいを正して意識的に何か作ろうとしたとは思わないし……要するに、「セルフ・タイトルのレコードを作りたい」という自分の欲、それ以外にこれといって開始点はなかったよ。とにかく思いついただけだしね、「常に自分の心を動かしてきた色々なもの、それらを探ってみるタイミングだ」と。
 だから、自分の外側で起きている現実のあれこれ、それに対するリアクションみたいなものとして作ったという面はそれほどないと自分では思っている。かと言って、「そうではない」とも言い切れないし……まあ、これを説明するいちばん適当な言い方は、僕はどういうわけか自分の内面を探る行為に駆り立てられたし、そうなったのは自分の外側の現実ゆえだった、だろうね。だから乖離してはいないんだ。外部で何が起きているかの反動として、そこから目を背けることになった、と。で、それは興味深いことだよ。精神分析医に尋ねた方がいいのかもなぁ(苦笑)、「どうしてこうなるんだ?」ってさ。

(笑)。

DL:ただ、自分にはわからない。自分としては、今回のレコードがいまの時代に強く、直接的に影響されているという感覚はないし……というのも、非常に内面的なレコードだからね。とてもパーソナルな類いのレコードだと思っている。ただ、こうして自分がそれを耳にすることになったのは、やはり時代のせいである、と。

なるほど。でも今年のアメリカはこれまで、政治的に非常に緊張した状況が続いてきました。「政治」といったものをどのくらい意識されましたか? 潜在意識のレヴェルでもなんらかの影響があるのではないかと思いますが。

DL:ああうん、色んなことが耳に入ってくるのからは逃れようがない。もちろんそうだ。ほら、だからなんだよ、そのせいでいっそう後押しされるというか……自分みたいな人間にとって……だから、僕は根本的に政治的な人間だし、自分のことをポリティカルな人間として理解している。ただ、かといってそれは自分が「政治」に興味があるという意味ではない、と。
 僕は常にある意味シニカルに構えていて、政治の場面で、人びとやメディア等々の何もかもを通じて日常的に展開されていくさまざまなメッセージに対しても、とても用心深く接している。僕はいつだってとてもシニカルなんだよ、というのもあれって何らかの取り引きのような感じがするし、それ以外の別の効用を備えているんじゃないか?  と感じるから。それらはダイレクトなメッセージではなく、操作されたメッセージであって、そのメッセージを理解しようとするように自分は強要されている、そんな気がするんだ。どうしてそれが自分の目に入ってくるのかを理解しようと強要されている気がする。ということは、自分は非常に居心地の悪いポジションに置かれたってことだし──というのも、僕はいつもとてもシニカルに構えているから。で、まさしくそれなんだよね。
 僕だって多くのアメリカ人たちとなんら変わりはなくて、幻想からすっかり覚めてしまっているんだよ。政府に対しての……そして国そのものという感覚に対してすら幻滅しているし、バラバラに分断された場所のようで、もはや国という風にすら感じない。しかも、その感覚が長く続いているっていう。そこには憂慮させられるね。だから、普通の人びとが僕みたいになってしまった──というか、人びとはそうなってしまっていると僕は思っているけど──それはやばい時代だってことだよ。というのも、なんらかの形で「自分も関わっているんだ」と感じるべきだし、自分が暮らしているのはどんな場所でそこでは何が起きているのか、それらを理解しようという意欲を掻き立てられるべきだから。
 そんなわけで、自分にとってのこの過去数ヶ月間というのは、項目リストをチェックしていたというか、「自分にちゃんとわかっているのは何か」という一種の目録みたいなもの作って過ごしていたという部分もあったんだ、そうやってもうちょっと……(政治や社会と)関わろうとしたっていう。だけど、やったことがなかったからね。それをやるのをこれまでの人生でほぼ避けてきたわけじゃない、自分の周辺に存在する、シニシズムとして感知してきたあれこれのせいで? だから一夜にして突然変化するはずがないし(苦笑)、それこそ基本的に、筋肉を新たに一から鍛えていかなくちゃならない、みたいな。そういうやり方で世界と関わるように努めなければならないってことだし、実践するのはすごく難しいことだよ。

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自分としては、今回のレコードがいまの時代に強く、直接的に影響されているという感覚はないし……というのも、非常に内面的なレコードだからね。とてもパーソナルな類いのレコードだと思っている。ただ、こうして自分がそれを耳にすることになったのは、やはり時代のせいである、と。


Oneohtrix Point Never
Magic Oneohtrix Point Never

Warp/ビート

ConceptronicaHypnagogic PopAvant Pop

本作向けのバイオによれば、自己啓発/自助のマントラが含まれているそうで──

DL:(笑)ああ、うん。

ということは『Magic Oneohtrix Point Never』は、自己啓発系ニューエイジのカセットテープから作ったサウンド・コラージュを使っているのかな? と。

DL:うん、やったやった。

それはどんな思いで使ったんですか? どうして今回のミックスのなかにそうした要素を含めたいと思ったんでしょう。

DL:それは……

それはたとえば、それらの自己啓発の主張のなかには、感心するものや感化されるものがあったから? 「このテープを聴くとモチヴェーションがあがるな!」と思ったとか(笑)?

DL:ノー、ノー、それはない(笑)。だから、常々感じてきたんだよ……自分はそれ以上に、その手のカセットテープの持つ人工遺物、ジャンクとしての側面に興味を惹かれてきたな、と。というのも、あの手のテープってまず、「こういう効果があります」の能書き通りになったためしがないわけでしょ?

ハハハッ!

DL:で、それって僕からすれば、まさに完璧なるアメリカのジャンクっぽい遺物だ、みたいな。というわけで、そうした類いのテープを利用すること、それらをサンプリングするのって、自分からすればほとんどもうアメリカの質感(テクスチャー)を使うことに近いわけ。だから、こうした「このテープを聴けば、あなたはこれこれこういう風に治癒されます」という発想とか、「一種のマントラを繰り返しつぶやけば癒される」だとか──そういうのってもう、下手したらスネーク・オイル(訳注:19世紀のアメリカで流行した、薬の行商人がカーニヴァル他でヘビの油と偽って売った鉱物油ベースのいんちきな万能薬。転じてほらのこと)と変わりないよね(苦笑)?

(笑)たしかに。

DL:僕にはそれってとても滑稽に思えるし、それに……だから、(苦笑)僕のメンタル・ヘルスは良好ではなかったってこと! おかげで人びとがやる色んなこと、コースだの各種セラピーについて考えはじめてしまった。だけどその手のセラピー効果のあるものって、僕からすると常に……んー、なんというか……ある種の質感を伴うもので……(苦笑)だから、あの手のあれこれって僕にはずっとインチキくさい感じがしてきたんだ。ペテンだろ、と。

(笑)。

DL:クハハハハッ! だからそこは好きなんだと思う。ところがそれとともに、自分のしばらくやっていたのもある意味そういうことだったわけじゃない? だから、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーは、僕があの手のニューエイジのテープの数々にかなりハマっていたことからはじまった、みたいな。というのもああいうテープにはシンセサイザー音楽が山ほど使われているから。本当に大好きだったし、しばらくの間、あの手のテープに中毒したかなりのジャンキーだった。それくらい貪欲だったんだよ、自分に見つけられる限りのあらゆるシンセ音源を手に入れるぞ、みたいな。それで掘りはじめたわけだけど、しばらくして主な有名どころは片っ端から聴いてしまったところで、突然「もっと、もっと」という強烈なニーズが生じて、手遅れな中毒患者みたいなものだよ。で、遂にはハイを求めて、胡散臭い裏手の路地にたむろするドラッグの売人を探しに出るようになる、と。

(爆笑)はっはっはっはっ!

DL:(笑)いかがわしいドラッグをあさるくらいまで落ちるわけ。まさにジャンクだよ(※麻薬を意味するスラングのジャンクと、文字通りジャンク=クズのような低俗なシンセ音楽をひっかけた比喩)。ほんと、ジャンクな音楽ね。

なるほど。そうしたニューエイジ音楽の質感やサウンド、そして奇妙なアメリカ文化の一片でもある面がお好きなようですが、そこにこめられた自己改良や自助といった類いの啓発メッセージは信じていない、と。

DL:そうだね。

全部くだらないたわごと、ですか。

DL:まあ、たわごとではあるけれども、「いい」たわごとなんだよ。ってのも、自分はそれを使って何かをやれるから。それこそプラスティック素材のように、それを用いてあまりくだらなく感じないものへと作り変えていくことができる。僕にはそれを何かしらパーソナルなものにしていくことができるし、だから結局のところは──実はそれにしても、とてもセラピー効果があるんだと思う。もっとも、それ(啓発メッセージやマントラetc)そのものが効果を発しているから、ではないけどね。

ええ、もちろん。

DL:うん。だから、そうすることで僕も何かに取り組むことになるわけで……自分には変えることができるし……そうだな、とことんシニカルなことって、とにかく「こんなのしょうもないたわごとだ! テレビを観てた方がマシだ」と決めつけて、まったく相手にしないってことじゃないかな? ──そうは言いつつ、自分もそれはやってるんだけどさ(苦笑)。ただし、ただし……自分にとっては、それっていい開始地点になる何かだ、みたいな。くだらないことではあるけど、本当だと思える何かのとっかかりにもなるもの、という。

それらジャンクを、いわばあなたは改めて作り変え、リサイクルしている、と。

DL:そう。

僕は常にある意味シニカルに構えていて、政治の場面で、人びとやメディア等々の何もかもを通じて日常的に展開されていくさまざまなメッセージに対しても、とても用心深く接している。僕はいつだってとてもシニカルなんだよ。

ニューエイジとは歴史的にいえば、大雑把に言って、60年代から急速に拡大した物質社会/近代社会への反動的な宗教運動ないしそれにリンクするスピリチュアリズム〜自己啓発を指すわけですが、あなたは自分の音楽に「new age」とタグ付けされることをどう思いますか? 

DL:んー、思うにまあ……もしも僕がニューエイジと看做されるとしたら、他のれっきとしたニューエイジの作曲家たちは相当に「侮辱された」と感じるんじゃないかと。たとえばニューエイジ音楽を讃える授賞式に僕が出席し同じテーブルについていたとしたら、彼らはおそらく「お前は我々をクズだと思ってる奴じゃないか!」と非難するだろうね。
僕の音楽をそうやってニューエイジと比較するのはあまりいい方法だとは思わないけれども──ただ、イエス、さっきも話したように「文化の遺物」としてのニューエイジ音楽に自分はたしかに興味がある。それにもうひとつ、ああいうレコーディング音源のいくつかには形式の面で非常にインスピレーションを掻き立てられることがあって、そこは否定のしようがない。素直に、あれらは本当に、本当に素晴らしいよ。で、思うに、そこから自分が得る知恵というのは……音楽はとてもゆっくりしたペースのものになっていいし(苦笑)、またとても静かになってもいいものであり……かつ、音楽はいわゆる「歌」という形式から外れたところでも成り立てるものだ、と。というか、歌のフォルムをとらなくてたって聴き手を強く集中させることができるし……実際、聴き手の精神(psych)の多くを映し出す、それこそ鏡みたいなものになり得る。そうやって、聴き手が自身の精神と関わるための手段として、音楽が自らを提示しているっていう。
冗談抜きのシリアスなレヴェルでは、僕はたしかにニューエイジ音楽は興味深いフォーマットだ、本当にそう思っているんだよ。で、そのフォーマットで僕が何をしようとしているかと言えば、それはとにかく、僕自身の精神を鏡に相対させ、自らに正直になろうとすることであって……だから、僕は別に他の人びとの役に立つように、彼らが彼ら自身をそこに映し出せるために音楽を作ってはいないんだ。だからその意味で、僕は相当に、もっとずっと利己的だってこと。自分自身だけを反映する、そういうものとして僕は音楽を作っている。だからだと思うよ、(苦笑)たくさんの人間が「どうして?」って頭をかきむしるのは。で、僕としては、「あなたが僕の音楽を通じて僕の精神のなかに入っていきたくなければ、当然ですよね、仕方ありません」としか(笑)。

ある意味、そこはどう誤解されようがかまわないというか、あなたの音楽を「新手のニューエイジ」と誤解し誤解釈する人がいても、それはそれであなたはその誤解を楽しんでいる、みたいな?

DL:まあ、そんなとこかな、それでもオーケイ。うん、自分はそれでもかまわない。だから、僕は何もそうやって誰かを混乱させようとしているわけじゃないんだよ。ただ、たとえば「リラックスするための音楽」としてニューエイジを聴こうとするだとか……っていうか、僕の音楽を聴いてもあんまり聴き手のためにならない、リラクゼーションにならないと思うんだけど(苦笑)。

(苦笑)あんまりその効果はないですよね。

DL:……僕はいつだってこう、リラックスした状態を転覆し揺さぶろうとする傾向があるから。それは僕が自分の精神状態に正直であろうとしているからだし、それだけのことであって。だからその意味でニューエイジ音楽ではないんだよ、ああした実際的な効用はない音楽だしね。ただ、ニューエイジ音楽にとても強く影響されてはいる、と。というのも、僕は自分自身を見つめるために、ニューエイジ音楽の慣用句のいくつかを使っているから。またそれらを用いて、音楽を見つめてもいるんだ。そしてノイズやヴァイオレンスをはじめとする音楽を構成しているもろもろ、それらを見つめてもいる。

後半戦(その2)に続く。(予告:ヴェイパーウェイヴについての彼の考えを喋りまくってます

Oliver Coates - ele-king

 スライムといえば日本ではザコキャラの代名詞だけれど、こんなに凶暴でそして、悲しげな顔をしたスライムは見たことがない。
 正統なクラシック音楽を修めたエリート中のエリートでありながら、スクエアプッシャーやオウテカを敬愛するチェリスト、相棒の音を躊躇なく加工し、むしろ典型的な弦のイメージから遠ざけることを心がけ、大胆にひずませることもいとわないオリヴァー・コーツは、いま、だれも到達したことのない山頂に立っている。クラシカルとエレクトロニカとの幸福な結合を実現した『Shelley's On Zenn-la』から2年、ジョン・ルーサー・アダムズとの共作を経て届けられた新作『Skins n Slime』が、あまりにも圧倒的かつ独創的なサウンドを誇っているのだ。
 タイトルに冠された「スライム」とは、ディストーションとコーラスのエフェクツペダルを用いて彼がつくりあげた、チェロのテクスチャーを指している。さらに「肌」まで付け足すくらいだから、今回コーツは音の触感になみなみならぬ情熱を注いでいるのだろう。まさにスライムこそが本作の鍵を握っているわけだ。

 アルバムの前半は、5つのパートからなる組曲 “Caregiver” によって構成されている(「介護者」なる曲名からは一瞬パンデミックを連想してしまったけれど、本作は昨年12月の時点ですでに完成していたそうなので無関係)。ミニマルな弦の反復からはじまる “part 1” は、低音のドローンがしっかりと曲に重量感を与えているところがポイントで、この工夫がビートを持たないアルバム全体にくっきりした輪郭を与えている。
 最初のハイライトは “part 2” で訪れる。弦であると同時に電子音でもあるような、器楽曲であると同時に騒音でもあるような、驚くべき未知のディストーション。いったいどうやったらチェロでこんな音を生成できるのだろう? 比較的素朴に弦の響きを聞かせる “part 3” と “part 4” をはさんで、“part 5” でもエフェクトがめざましい活躍を見せている。現界するシューゲイズ的サイケデリア。だが注意しなければならない。これはギターではなく、チェロなのだ。
 先行シングルとして公開された7曲目の “Butoh baby” において、かのスライムは悲しみを爆発させている。主旋律の音色もだいぶおかしなことになっているが、地を這う低音の濁り具合はただただ圧巻というほかない。つづく “Reunification 2018” もすさまじい。これまたシューゲイズ的なノイズに覆われているが、繰り返そう。ギターではない。チェロだ。
 その後アルバムは高音にフォーカスした “Still Life” やティム・ヘッカー風の寂寥を携えた “Honey” を経て、マリブーを迎えた “Soaring X” で静かに幕を下ろす。こういうクラシカルに寄った曲もいい。しかしやはり本作を他と分かつ最大の特徴は、チェロに施された強烈なエフェクトだろう。

 新作のリリースに先がけて公開された『Fact mix』が、序盤はアンビエントで固められているにもかかわらず、途中からマイ・ブラッディ・ヴァレンタインやザ・ジーザス・アンド・メリー・チェインを招き入れ、おなじ空間系ペダルを採用していると思しきザ・キュアーやコクトー・ツインズ(やディーン・ブラント)の曲をはさみつつ、最後はブラックメタルで〆るという謎の構成をとっていたので、はてこれにはどのような意図が? と頭を抱えていたのだけれど、今回フルでアルバムを聴いてみてわかった。『Skins n Slime』は、かつてエレクトリック・ギターが繰り広げた音響的冒険を、チェロで探究しようと試みたアルバムなのだ。
 ただし本作は、夢見心地なムードや浮遊感のたぐいは搭載していない。スライムはどこまでも悲しみと向き合っている。そこがいまの時代とマッチしていて、とても今日的だと思う。

Wool & The Pants - ele-king

 先日は限定でアルバムのカセットテープ版まで出たWool & The Pants。英『Wire』誌でも評価されるなど、じょじょに国際的に認知されていっているようです。まあ、あのサウンドなので、当然といえば当然ですかね。
 で、じつは9月にNTSラジオでミックスを披露しているんですが、これがかなり格好いい内容なので、ぜひ共有させてください。ちゃんとECDからはじまってます。未聴の方、どうぞ!

https://www.nts.live/shows/guests/episodes/wool-and-the-pants-16th-september-2020

interview with Meitei - ele-king


冥丁
古風

KITCHEN. LABEL / インパートメント

ElectronicaAmbient

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 劣化したテープの触感はビビオを想起させる。じっさい、ビビオの音楽はすべて聴いているという。リズミカルにばちばちと火の粉を散らすクラックル・ノイズは、他方で、ベリアルを彷彿させもする。そこへ乱入してくる、くすんだ古の女性の歌声と「和」の雰囲気──。なるほど、たしかにこれは斬新なアプローチかもしれない。当人としてはとくにノスタルジーを意識しているわけではないそうなのだけれど、すくなくともサウンド面で「過去」が重要なテーマになっているのはまちがいない。
 広島在住のプロデューサー、冥丁のニュー・アルバム『古風』は「失われた日本」をテーマにしている。時代のばらつきこそあれ、“万葉”、“花魁”、“貞奴”、“縁日” と、曲名からもそのコンセプトは明確だ。といっても、彼が「日本」を題材にするのは今回が初めてではない。海外で評価された前々作『怪談』(2018年)や前作『小町』(2019年)もそうだった。そもそも「冥丁」じたいが、「日本の古い文化」を追求するためにはじまったプロジェクトだという。
 日々ニュースをチェックしていると、日本は完全に「後進国」になったんだなと痛感せざるをえないような事件ばかりが報道されている。そんなご時勢に叫ばれるのが無根拠な「日本すごい」「日本美しい」といった感情論であるのは、まあ、お約束ではあるけれど、どうも冥丁のコンセプトはその種の日本賛美とは一線を画しているようだ。「もっと日本に誇りを持つことができる活動をしたい」と、一見愛国主義的ともとられかねない発言もあるが、たぶんそれは「クールジャパン」のような政策とはちがった観点から、あらためて「日本」を描きなおしてみたいと、そういうニュアンスなのだろう。
 サンプリング~フィールド・レコーディングを駆使し、独特のざらついたエレクトロニカ~アンビエントを響かせる冥丁、彼の追い求める「過去」の「日本」とは、ではいったいどのようなものなのか? メール・インタヴューを試みた。

本だけではなく、料理人の作る料理、そしてその空間、香り、上質な素材で作られた洋服に袖を通すときなどに、音楽の用途のインスピレーションが湧き上がるんですよね。

まだあまりプロフィールも知られていないと思いますので、バイオ的なことからお伺いしたく思います。音楽をやりはじめたのはいつごろで、そのきっかけはなんでしたか?

冥丁:エレクトリック・ギターを21歳のときに購入しました。そこからはギターをプレイすることに夢中でした。きっかけはジョン・フルシアンテの『Niandra LaDes and Usually Just a T-Shirt』。ただそのときにはまだ本格的な作曲はしていませんでした。
 本格的に作曲しはじめたのは25歳くらいからだったと思います。テープMTRを使っての作曲からスタートして音楽の面白さを知りました。PCでの作曲は便利すぎると感じたので、最初の入門編としてはテープの4トラックMTRが望ましいと感じました。でもだんだんとそれが24トラックの真空管内臓のデジタルMTRになり、28歳くらいから Cubase で制作をするようになりました。

冥丁さんの音楽は、大枠では「アンビエント」や「エレクトロニカ」、「フィールド・レコーディング」といったことばで分類することができるかと思いますが、どのような音楽/音楽家に影響を受けてきたのでしょう?

冥丁:音楽をするきっかけをくれたのはジョンと、当時付き合っていた彼女でした。でも影響を受けたアーティストとなると、絞ることが難しいです。単純に聴いているアーティストにダイレクトに影響を受けているかどうかは僕自身わからない。
 最近は BTS の “Your eyes tell” を100回聴きました。いつも気に入った楽曲は100回聴きます。なので同じような音楽ばかりを年間通して聴いているような感じかもしれません。ジョン・ケイジの “In a Landscape”、“Dream” も100回聴きしていますね。
 いろいろなミュージシャン、アーティストの音楽を普段から聴くことはあるのですが、聴いている音楽と作っている音楽はいまのところ違いますね。自分が音楽を作るときに、音楽からインスピレーションを得ることはほとんどないと思います。
 昨日広島の蔦屋書店で本を見ていたのですが、とてもインスピレーションを受けました。そういう場所で、いろいろな情報を目の当たりにすると、もっとこういう音楽が世の中にはあるべきだと思い付くんです。本だけではなく、料理人の作る料理、そしてその空間、香り、上質な素材で作られた洋服に袖を通すときなどに、音楽の用途のインスピレーションが湧き上がるんですよね。理由なくして音楽は生み出せないと僕は考えています。理由が湧き上がってから、それに向けて音楽を作るタイプです。
 考えてみたら、いつも作品のアイデアを音楽ではない環境から受け続けてきました。僕は本質的にミュージシャンでもアーティストでもないと思っています。だからプロデューサーかな? と思っています。音楽を作ること以外の音楽との関わり方に興味がありませんでした。だからクラブ、ライブハウスに行きたいと思ったことがなく、冥丁のおかげで、そのような場所に行くチャンスをもらいました。僕にとってそれは大きな経験になりました。

「冥丁」というアーティスト名の由来は? 「酩酊」は関係ありますか?

冥丁:「酩酊」と関係はないですね。「冥」の漢字は人びとが見落としている闇のなかの存在を再編していく意味を表しています。「丁」は「使い、奉公する人」の意味を表しています。「冥丁」は人びとが見過ごしてきた真実を音楽で現代に新たな印象値のクリエイトとして表現するブランドです。希望のある未来を見出したいと言う意味を込めています。

「日本の古い文化」を活動のテーマにしようと思ったのはなぜ?

冥丁:僕自身が日本を知りたかった、そして日本人としての表現を世界に発信したいと思ったからです。以前専門学校時代にフランス人の先生にお世話になっていました。彼女から言われた言葉をいまも覚えています。「君は日本人なのに、なぜ日本の要素を作品に入れることに積極的ではないのですか?」
 この文章だけ見ると、伝えづらい意味があるので、補足します。彼女はたぶん現代の日本人が普通に表現する日本という概念自体が、日本のテンプレート化された虚像にすぎないような印象であると思っていたのだと思います。現代の日本文化はそのような流れのなかにあるとも僕は思います
 いまはその意味がわかります。日本にはたくさんの音楽がありますが、同じような文脈で語られる音楽が多い印象を感じました。それは僕が日本人だから、きっとそう思うんです。ルーツ・ミュージック、特定のシーンの音楽、東京の音楽(*)など、文脈通りに一様に音楽が作られている日本文化のあり方が疑問でした。一連の流れができあがっている。でもその外でも音楽はきっと作れる可能性があるにもかかわらず、それに誰も希望を持っていません。「外」とは、音楽を好きな人たちの外を意味しています。本当の外です。
 そう考えたときから、自分が納得のいく作品ができるまでは音楽関係の人たちと一切関係を持たないことに決めました。7年間の間、ひとりで音楽を作り続けました。京都にその間住んでいましたが、新しい友人も作らないようにしました。なので府外の人が時々、京都に来て僕に会うだけで、僕は京都で孤独に生活をしていました。爽やかな孤独がそこにはありました。もう一生そのような時間を持つことはできないでしょう。
 そのときの僕は、そのような状況において自分自身がどのような音楽を作るのか楽しみでした。環境が最も大切な要因だと思っていました。そういう環境のなかで、「失われた日本」というテーマに出会いました。きっかけは本屋さんで偶然小泉八雲の怪談のリイシューを発見したのがはじまりでした。これを音訳する義務があると直感したんです。「Lost Japanese mood」というフレーズが浮かびました。そこで周りを見たときに、そのような音楽を作る人びとは誰もいなかったということに気が付きました。誰もしていないことをしないと、自分自身が次の人生の次元に進めないと思ったんです。
 実際、でもどうして日本人は日本の遺産を表現しないのか疑問に感じたことをいまでも覚えています。いまも感じていますし(文化の継承はありますが)。音楽を作る理由と意味がなければ、音楽を創造する理由が見当たらないように感じました。このときに、そのような隠れた自分の深い意識のあり方を発見したと思います。
 それから制作が進むにつれて、もっと日本に誇りを持つことができる活動をしたいと感じるようになりました。でもそれは最近ですね。日本にはたくさんの興味深いテーマがあります。そういうものを音で印象値化するようなプロセスにとてもワクワクしています。
 東京の音楽、音楽史の音楽を作るような人材は潤沢に揃っていますが、歴史の文脈とは違う文脈で、それでいて日本にフォーカスした音楽を作っている人がいなかった。それを残念に感じました。そういう人がいないということが、現代の日本社会の閉塞感を表していると突きつけられたような気がしました。
 『古風』を作りながら学んだことですが、こんなに昔と比べて自由に色々なモノを作れる環境にいるのにもかかわらず、現代人は同じような場所にみんなで寄り添って生きている。そこに未来の希望の光が僕には見えませんでした。自分が目指すのは日本の印象値をアイコニックでユニークな表現として仕上げ世界中に届けることなんです。そこに希望を感じます。そのための最初のステップとして「失われた日本」をテーマにした作品の制作に突入しました。

*編註:冥丁の補足によれば、どんな場所に住んでいてもおなじような音がつくられ、それが「東京」に集約されているように映る昨今の状況のことだそう。「東京であろうが、なかろうが、作られた土地感が出ないのが現代の音楽で、それは結局東京からアウトプットされるような文化の構造があると思います」と彼は指摘する。


photo: Yuri Nanasaki

文脈通りに一様に音楽が作られている日本文化のあり方が疑問でした。一連の流れができあがっている。でもその外でも音楽はきっと作れる可能性があるにもかかわらず、それに誰も希望を持っていません。「外」とは、音楽を好きな人たちの外を意味しています。

お住まいは広島ですよね。広島という地はご自身の音楽に影響を与えていると思いますか?

冥丁:特に意識して影響を受けている面はないと思います。おそらく引っ越しすると、影響を受けていたことに自然と気がつくと思います。
 以前住んでいた京都については、住みながらにして影響を受け続けていることに気がつくほどでした。学びが多い孤独な街でした。人生で最も影響を受けた街、場所だと思います。
 また住みたいです。そこでアルバム一枚作りたいですね。

2018年の『怪談』が『ピッチフォーク』で評価され、翌年『小町』もレヴューが掲載されました。そのときはどんな心境でしたか?

冥丁:『ピッチフォーク』を知らなかったので、実感がありませんでした。冥丁関係者がみんな喜んでいたので、それで僕も嬉しくなりました。チームで喜びを分かち合えたことが最高でした。国籍の枠を越えて、みんなで仕事できるのは最高です。そう感じました。

新作『古風』をシンガポールのレーベルから出すことになった経緯は?

冥丁:僕のNYの友人(ジェフ)が〈KITCHEN. LABEL〉のリックスを紹介してくれたんです。そこからリックスと連絡を取るようになりました。〈KITCHEN. LABEL〉の存在は知っていました。特に美しいアートワークの作品群には、以前から憧れのようなものを抱いていました。『古風』ができあがって、どのレーベルからリリースするかを慎重に考えました。色々なオファーがありました。NYの僕の友人は冥丁の世界観を理解し、最もパフォーマンスを向上してくれるレーベルと一緒にいるべきだとアドヴァイスをくれました。
 実際まだ音楽業界の知識、そしてノリを知らないので(いまも)、〈Metron Records〉のジャックや〈Evening Chants〉のナイジェルなどに相談しながら考えていました。丁度そのときにNYの友人が僕に〈KITCHEN. LABEL〉を提案してくれました。彼はリックスを知っていたので、すぐに連絡をしてくれました。そこからリックスもすぐに返事をくれて、今回のリリースに向けて新しいチームで動きはじめました。一年前です。そのときは冥丁の世界観とリックスのデザイン、そして〈KITCHEN. LABEL〉のアートワークが合体したらと考えているとワクワクしました。絶対うまくいくと確信していました。
 結果的にそれは美しいデザインのパッケージになったと思います。世界各国の色々な人たちから良いレヴューをもらっています。『古風』のリリースのおかげで、日本人の方々からの声も最近ようやく聞くことができるようになりました。とても気に入っているアルバム。世界中のみんなに推薦したいです!

サウンド面で『怪談』(2018)→『小町』(2019)は連続性があるように感じられますが、『古風』は少しスタイルが変わった印象があります。『怪談』『小町』が「静」だとすると、『古風』は「騒」になったように感じました。声のサンプルが多いからか、あるいはポップな “花魁I” やインダストリアルな “少年” のような曲があるからもしれませんが、このサウンド面での変化はアルバムのテーマと連動しているのでしょうか?

冥丁:もちろんです。いつもテーマに準じて音楽を作るのが冥丁の活動で重要なことだと認識しています。テーマがあるおかげで、なぜ自分が音楽を作る必要性があるのか(もう十分に世の中には音楽が溢れているので、これ以上に同じようなタグ付けで済まされるような音楽を作りたくないと思っています。なので作るのであれば他にはないような音楽でないといけないと思います)を、再確認することができます。
 『怪談』と『小町』が似ているのは、『怪談』の制作時に『小町』のトラック(「夜分EP」)をサンプリングしていたからです。『怪談』のなかで “池” (「夜分」、『小町』収録)は “骨董” になっています。時系列を話すと「夜分EP」からはじまり、『怪談』を作り、『古風』に進むことになりました。「夜分EP」の “池” や “波” などの4トラックが後に『小町』(“Kawanabe Kyosai” などの『小町』のもう半分のトラックは『怪談』の制作時に並行して作っていました)に収録されることになりました。なので、『古風』の前に作っていたアルバムは『怪談』だったんです。『怪談』制作中に日本の古いヴィジュアル・イメージによく出くわしていました。それでそのときから、次のサウンドの想像をよく頭のなかで巡らしていました。『小町』はしっとりとしたムード、『怪談』はコミカルで実験的なサウンド、『古風』はさらにそこに感情的な要素が相まって仕上がったような感覚を持っています。
 それに加え、古い日本のヴィジュアル・イメージからどのようなサウンドの質感が適切か厳格に選びました。「夜分」(『小町』)のときは京都の嵐山(宇多野エリア)に行って夜の大気を知ろうとしました。『怪談』は小泉八雲の怪談からはじまり、水木しげるなど、その周辺へとイメージを拡げ、音に仕上げました。厳密に言えばもっと様々なものに影響を受けていますが。
 そして『古風』はそのようなイメージから、江戸、明治、大正、昭和(歴史上の人物、当時の日常風景など、時代の香り)のムードの音訳、それに加え新たな音楽性の挑戦欲も相まって、以前のサウンドとは違うものになりました。そのような音の世界観を僕自身も肯定できたので嬉しかったです。

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世間の意識に自分の自意識を立て、反応した結果として作品を作る人が大勢います。でもそれは健康的な社会とは言えず、病的な状況だと僕は感じています。そこに未来の希望はないです。

ピアノなどの新たにクリエイトした音と、過去のサンプル音源をおなじひとつの曲にするときに苦労した点や注意したことがあれば教えてください。


冥丁
古風

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冥丁:単純な、ただのミックス・サウンドにさせないことが重要ですね。タイミングなど、音と音の被り具合のバランスなど、とても細かくチェックしています。サウンドコラージュは生演奏で到達できない想像上の世界のムードを作りあげます。ピアノのサウンドは僕のオリジナルですが、今回はサンプリングした30’sの音素材をたくさん使いました。それらを掛け合わせるときに本当に苦労しました。どれくらい音にヒビを入れるか? そしてどれくらい耳障りな音にしておくべきか? 反対にどれくらい繊細に音の「ぬめり」を出すか? ぬめりと言っても伝わりづらいかもしれませんが、舌触りみたいな感覚です。特にエレクトロピアノの音にはそのような視点で臨みました。
 音楽史のなかでの音楽的なバランスという概念を重視せずに、音楽を作ることに最後まで戸惑っていました。なぜなら僕が知っている音楽はもっと綺麗で、既存の要素が多いものでしたから。自分の壁を破ることが大変でした。自分のなかの常識をいつも越えたいです。それは斬新さと言われる印象かもしれませんし、「型破り」ではなく、「形無し」だとも思われる可能性もあります。
 ひとつの概念の扉を閉じるということは、もうひとつの概念の扉を開けることになると思っています。概念の扉を開けるときは新たな常識を肯定する勇気が必要です。ただ物事の差異を選び分けるという知性とは違う次元の挑戦だと言えます。勇気と情熱なんです。熱量で勝負したい。その熱さというものが『古風』の音楽をより感情的で、激しい音のぶつかり合う瞬間をプロデュースするに至らせてくれたと感じています。
 もしそれがなければピアノとサンプリングの単純な古い音と新しい音のミックスで終わっていたと思います。そのようなサウンドでは『古風』とは言えないと思いました。熱さが『古風に』は必要だと思いました。現代の日本にも。

古い音源を用いているからかと思いますが、本作ではかなり多くクラックル・ノイズが鳴っています。たまたま入ってしまったというより、リズムに合わせて効果的に用いられているように感じたのですが、これは意図的なものですよね?

冥丁:そうです。

ザ・ケアテイカーベリアル、あるいはビビオは聴きますか?

冥丁:ビビオについては全ての音楽を知っていると思います。ビビオの音楽に自然と影響を受けていると思います。ザ・ケアテイカー、ベリアルについては最近知りました。海外の人たちから僕の音楽(『古風』)と彼らの音楽スタイルには共通点があると言われています。


photo: Saki Nakao

テーマとは僕らにとって希望なんです。希望を持っているとは、結果的にテーマに基づいて人生を生きるということだと僕は考えます。どんな希望を描いているかが現代の音楽制作で最も大切なことです。

「日本の古い文化」といっても、たとえば今回は「万葉」(平安以前)から「花魁」(江戸以降)、「川上音二郎と貞奴」(明治~大正)まで、かなり幅があります。ざっくり「日本の古い文化」ということで一緒くたにすることに、抵抗はありませんでしたか?

冥丁:もちろん抵抗がありました。正直にいうと貞奴さんだけでアルバムを作る方が本当は良いと思います。本心でそう思います。そして『花魁勝山』というアルバムも通しで作ってみたかったです。実際勝山(花魁)についてはたくさんトラックを作りました。そのなかからセレクトしてアルバムに収録させて頂きました。吉原遊郭のサウンドトラックも作ってみたいですね。
 僕自身の希望を言えば、たとえば、菌類研究の南方熊楠の生涯、そして宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の音訳作品など、それぞれのアルバムを作って行きたいくらいですが、冥丁はそれにOKを出してくれませんでした。なぜかと言うと、それはあまりにも膨大な時間がかかりますし、冥丁は僕にとってビジネスなので、そのような永遠と続くような作業は僕自身の人生に負荷がかかり過ぎると感じました。
 これはプロデューサー目線ですが、現代の日本に必要なテーマ性のある音楽をもっとたくさん作っていく必要がある。なので個人的に興味のある人物を掘り下げたくとも、他にも次の挑戦が控えているので、妥協しなければいけない部分があります。
 もし冥丁がパトロンを持つことができれば、僕はもっと歴史のワン・シーンにじっくり腰を据えて音楽アルバムを作って、それをみんなでシェアしたいと思います。そのような状況にならない限り、そこまでの制作時間を捻出することは不可能です。精神的、身体的、そして財政的にもリソースがないので。諦めてはいません。いまは保留です。
 たぶん映画監督の人たちと同じような心境かもしれません。彼らはたくさんの企画を持っていますが、そのなかから実際制作に移ることができるのは、ごく僅かなものらしいです。もっと冥丁は色々なジャンルの人たちと新しい音楽の仕事について話し合い、音楽の未来を模索していかなければいけないのかもしれません。いまは広島なのでそういった話ができる人たちとの出会いを十分に持つことはできませんが……コロナ期でもありますし。でもポジティヴです。

“女房” や “花魁” は虐げられた女性たちを描くという観点の曲のようですが、サンプルされた音声は意味がわからないようになっているため、ただ音のノスタルジックな部分だけを聴かれて、逆の意味にとられる可能性もありますよね。「女房」がなんでもやってくれた時代、和服を着た「花魁」がいた時代、つまり「男性にとっての “古き良き” 時代」へのノスタルジー、というふうに。そこはどう思われますか?

冥丁:作り終わった後に僕も同じ質問を自分自身にしました。当然出てくる問いかけのひとつですよね。その質問に対しての納得のいく答えになるかどうか分かりませんが……男性目線の作品であることを冥丁は意識しています。ノスタルジーを故意に表現したいとは思っていませんが、そういうことは現代で尊いことだと感じています。
 その点について説明すると、ノスタルジーの視点を最後まで持たずに僕は『古風』の制作を終えました。ただ目の前だけを見て、走り切りました。作り終えて一年ほど経ったときに、いま受けている質問と同じような問いかけを思いつきました。なぜそれを思いついたのかというと、一般的(一般論)な地点に立ってみたからでした。そこには繊細な現代社会の意識が網のように張り巡らされているようでした。男性目線の回答なのでは? というアンサーも自分自身のなかに見つかりました。でもそのときに、僕はそれで良いと思いました。冥丁は男性ですから。逆に男性目線の作品になっていないと不健康です。
 世の中がより繊細で複雑になるなかで、より一層閉塞的な意識の網が社会を包囲していると僕は思います。その状況下で、世間の意識に自分の自意識を立て、反応した結果として作品を作る人が大勢います。でもそれは健康的な社会とは言えず、病的な状況だと僕は感じています。そこに未来の希望はないです。
 僕が今回『古風』の制作(冥丁の活動)で学んだことがあります。それは一般的な文脈上の事例、見聞を参考にして、そこに意識を向けるのではなく、体圧、体感、つまり肌感覚を通じて時代の文脈では語りきれない点から、作品をプロデュースし、現代の文脈のなかに提出することが大切だと感じました。
 多くの日本人は生真面目にも正解というテンプレートを日常的に必要としているように感じます。音楽はそれが顕著です。既存のジャンルを頭のなかでタグ付けしてハイブリッドな音楽を作っている人が多いからです。それは計算して作る音楽で、それが正解ではありません。そもそも音楽に正解はないと思います。音楽以外のことでもそうです。
 たとえばひとつの目線を通して、世の中をみます。そうすると違う場所でも、同じように自分の目線で世の中を見る人がいます。賛同されたり、反対されたりします。世界(人間社会)とはそういうコンセプトなんです。それが悪くもないし、良くもないです。ここにも正解はない。僕らの世界は、そういう正解の決してないコンセプトの次元で存在しているということです。だから人間はテーマ(人生の意義)を持って生きているのです。
 つまりテーマとは僕らにとって希望なんです。希望を持っているとは、結果的にテーマに基づいて人生を生きるということだと僕は考えます。『古風』は冥丁のテーマに基づいて作られたアルバムです。アルバムは僕にとって希望なんです(だからこの僕の示す希望に対して意見が違う人も少なくからず存在すると考えることができます。世の中そういうコンセプトですから)。
 僕がこのアルバム『古風』で見た世界は過去の私たちの先祖たちが感じた粗野な感情の塊なんです。生々しい音が鳴り、汗をかき、熱風の吹き荒れた世界なんです。なので今作が男性目線のノスタルジーであるということは健全なことだと僕は感じます。それでいいのです。僕が仮に男性目線で作品を描くことに疑問を持ってしまったならば、冥丁に希望はないです。それだと、ただの音の塊を丁寧に作っているだけに過ぎないですね。なぜならば、いまや音楽なんて誰でも手軽に作ることができます。だからこそ、どんな希望を描いているかが現代の音楽制作で最も大切なことです。他の分野でもそうですけどね。

できることならタイムスリップして想像上の過去の日本、「LOST JAPAN」に暮らしたいですか?

冥丁:暮らしてみたいかもしれません。でも強くそれを望みません。2020年が好きですし、この時代はとても良い時代です。

今回の『古風』で「LOST JAPANESE MOOD」3部作が完結します。次はまったく日本とは関係ないテーマになる可能性があるのでしょうか? たとえば次は古代ギリシャをテーマにしたり、はたまたラテン音楽にフォーカスしたり。

冥丁:冥丁ではいつも日本の音楽を作ることがコンセプトとしてあるので、日本を描き続けたいです。その先に何があるのか知りたいです。冒険のような。
 その他にも冥丁を通じて仕事をしています。たとえば舞台、ファッション業界、リミックス、特定の環境下で使用するための音楽などの制作をしています。先日は広島のLOGというホテルのための夜のライヴセットとアンビエントを用意しました。それは現在リリースしている音楽とはスタイルの違うものです(定期的に開催する予定ですので、皆さんにも足を運んでもらえたらと思います)。今後も冥丁のベーシック・ライン(Japanese mood)に加えて様々な音をプロデュースしていきたいと思っています。
 でも将来日本以外の国の音楽をもし作っていたらと考えると、その未来も面白いですね。
 ありがとうございます。

Richard Spaven & Sandunes - ele-king

 現在のサウス・ロンドン勢が注目を集める以前、2010年代前半頃より既にUK発の新世代ジャズ・ドラマーとしていち早く脚光を浴びていたリチャード・スペイヴン。UKではザ・シネマティック・オーケストラや4ヒーロー、インコグニートの演奏に参加し、USではホセ・ジェイムスからフライング・ロータスなどとも共演してきたことにより世間へアピールする機会に恵まれ、またヒップホップにダブステップやドラムンベースなど、クラブ・サウンドを取り入れた演奏によりジャズ以外の分野からも支持を集めていった。現在はモーゼス・ボイドゴーゴー・ペンギンのロブ・ターナーなど、そうしたジャズとクラブ・サウンドを繋ぐようなドラマーもいろいろいるが、そうした先陣を切ったのがリチャード・スペイヴンとも言える。

 ジェイムスズージョーダン・ラカイ、ステュアート・マッカラム、フリドラインなどいろいろなアーティストの作品に参加し、アルファ・ミストと44th・ムーヴというユニットを結成する一方、自身のソロ作品では2010年に処女EPの「スペイヴンズ・ファイヴ」を〈ジャズ・リフレッシュド〉からリリースし、その後ファースト・アルバムの『ホール・アザー』(2014年)以下、『ザ・セルフ』(2017年)、『リアル・タイム』(2018年)と発表してきている。『ザ・セルフ』では盟友のギタリストであるステュアート・マッカラムほか、ジョーダン・ラカイ、ジェイムスズー、クリス・バワーズ、クリーヴランド・ワトキスらが参加し、ファラオ・サンダースからキング・ブリット、フォーテックに至るカヴァーも手掛けるなど、ジャズからクラブ・サウンドに通じるリチャード・スペイヴンならではの世界を見せてくれた。『リアル・タイム』も同じくステュアート・マッカラムと組んだバンドで、数曲でジョーダン・ラカイのヴォーカルをフィーチャーしていた。このアルバムのプロデューサーはドイツのドラムンベース・プロデューサーとして知られるフレデリック・ロビンソンで、マスタリングはバグズ・イン・ジ・アティックのメンバーでディーゴとの共演など、主にブロークンビーツ方面で知られたマット・ロードが手掛けるなど、一般的なジャズとは異なる人脈がブレーンを固める異色作であると同時に、リチャード・スペイヴンというミュージシャンのジャズとクラブ・サウンドの境界にある立ち位置をよく示した作品と言えるだろう。その『リアル・タイム』から2年ぶりの新作となるのが『スペイヴン×サンデューンズ』である。

 このアルバムはタイトルが示すように、サンデューンズという女性ピアニストとのコラボレーションとなっている。サンデューンズは本名をサナヤ・アルデシールといい、インドのムンバイ出身で現在はロンドンを拠点にインド、ヨーロッパ、アメリカとワールドワイドに活動している。ボノボのオープニング・アクトを務め、プリティ・ライツのツアー・サポートをおこない、ジョージ・フィッツジェラルドのアルバム制作に参加するなど、エレクトロニック・ミュージック系での活動が多い。〈!K7〉から今年5月に「スペア・サム・タイム」というEPをリリースしているが、『スペイヴン×サンデューンズ』もその〈!K7〉からのリリースとなる。サウンデューンズはピアノやシンセ、キーボード全般を扱い、それ以外にゲストも参加しない完全にふたりだけのコラボとなっている。リチャード・スペイヴンはドラマーであると同時にエレクトロニクス機材を扱うビートメイカーでもあり、本作においてはそうした彼のビートメイカー/プロデューサー的側面が強く表れたと言えるだろう。過去にジェイムスズーとおこなった共演に近い形態の作品集だ。

 小鳥のさえずりのSEを交えたオープニングの “イン・リーディネス” はアンビエント・テクノ系の作品で、全体的にテクノの影響が強い作品集となっている点はドイツの〈!K7〉らしい。こうしたテクノ的な色合いに生ドラムを有機的に融合したのが “ツリー・オブ・ライフ” という曲で、スペイヴンの独壇場とも言える世界だ。ドラムンベースのビートをさらに細かく分解し、それに人力でディレイを掛けたようなテクニックには恐れ入る。“イヴリン” でのコズミックな音響空間にこだまするミニマルなビートから、次第にインプロヴィゼイションを交えた立体的で複雑なドラミングへと展開するのも巧みで、エレクトロニクスとジャズの即興演奏を見事に操っている。“キャント・セイ・ザット・トゥ・ユー” に見られるように、サンデューンズのキーボードは非常に抒情的で、ときにインド音楽を思わせるような独特の旋律を奏でる場面もある。“リトル・シップス” や “サステイン” における瞑想的なサウンドは、明らかにインド音楽からの影響と言えよう。アリス・コルトレーンやファラオ・サンダースがインド音楽を取り入れた演奏をおこなったように、古来ジャズとインド音楽は相性がいいものだ。『スペイヴン×サンデューンズ』はそれを現代的な手法で解釈したもののひとつとも言える。


Planet Mu's 25th anniversary - ele-king

 マイク・パラディナスが主宰するエレクトロニック・ミュージック・レーベル〈Planet Mu〉が創立25周年を記念してコンピレーションを出します。いや、すばらしい、おめでとうございます。
 マイク・パラディナスは、90年代初頭のエイフェックス・ツインの衝撃があって以降に登場した才能でした。そう、リチャードが〈Rephlex〉なる自分のプラットフォーム的レーベルをはじめて、そこからデビューしたのがマイク(μ-Ziq)で、彼の最初のアルバムそして2枚目は当時はまさにAFXに次ぐ衝撃だったのです(アンドリュー・ウェザールもその年の自分のベストに挙げておりました)。本当にあれは素晴らしかったなぁ。そしてマイクはいろんな名義を使い分けながら現在にいたるまで作品を出し続けています(今年もTusken Rider名義でアルバムを出しています)。1995年からはじめた自分のレーベル〈Planet Mu〉も当初はほとんど自分の作品ばかりでした。それがゼロ年代あたりからいろんなアーティストの作品も出すようになり(COM.Aの兄であるジョセフ・ナッシングの作品も出してましたね)、で、2008年のダブステップ系の名コンピレーション『Warrior Dubz』以降はFalty DLや初期のFloating Points、そしてシカゴのフットワークを世界に知らしめた名コンピレーション『Bangs & Works』を出したりしています。ちょうど10年前にインタヴューもしていました
 〈Planet Mu〉は、日本に支部がないためプロモーションされてませんが、ここ最近も本当に良い作品/挑戦的な作品を出しているんです。昨年はRian Treanor、今年で言えばまずはSpeaker Musicですよね。East Manもありました。しかしこうしてリンクを見ていると、書いているのは三田格さんばかりじゃないですか。いかん、もっとたくさんの人に聴いてもらわねば!
 マイクが本当にそう思ったのか、定かではありませんが、最近のレーベルの魅力をパッケージしたコンピレーション『Planet Mu 25』が出ます。エクスクルーシヴが7曲あり、そのうち1曲はBasic RhythmによるDJ Nateの曲のリミックスです。

 リリースは12月4日、デジタルとCDの両方で発売。なお、オウテカやエイフェックス、スクエアプッシャーとはまた違った活動を続けているマイクの最新インタヴューは、紙エレキングの年末号に掲載されるでしょう。乞うご期待。

Tracklist:
01 East Man & Streema - Know Like Dat
02 RP Boo - Finally Here (ft. Afiya)
03 Konx-om-Pax - Rez (Skee Mask Remix)
04 Ital Tek - Deadhead
05 Gábor Lázár - Source
06 DJ Nate - Get Off Me (Betta Get Back) (Basic Rhythm Remix)
07 Ripatti - Flowers
08 Speaker Music - Techno Is A Liberation Technology (ft. AceMo)
09 Jana Rush - Mynd Fuc
10 Rian Treanor - Closed Curve
11 Bogdan Raczynski - tteosintae
12 RUI HO - Hikari
13 FARWARMTH - Shadows In The Air
14 Meemo Comma - Tif’eret
15 Eomac - All The Rabbits In The Tiergarten

さよひめぼう - ele-king

 インターネット上を拠点に活動、これまでアメリカの〈PLUS100〉や〈BusinessCasual〉といったヴェイパーウェイヴ系のレーベルからリリースを重ね、〈Maltine〉にもEPを残すトラックメイカー、さよひめぼうが初の全国流通盤を送り出す。
 ブレイクビーツが暴れまわったり謎めいた声ネタが飛び交ったりしているが、全体的にはじけんばかりのキャッチーさに包まれている。不思議なハイブリッド感を楽しもう。


さよひめぼうの新アルバム『ALIEN GALAXY MAIL』本日10/21CD発売&配信/ストリーミングも開始!

●2016年6月14日アトランタの名門Vaporwaveレーベル〈PLUS100 Records〉、2017年4月21日米国のインターネットレーベル〈BusinessCasual〉よりアルバムをカセット・デジタルで発表し、2019年には〈Maltine Records〉からEP「深圳DIVA」をリリース。その独創的な音楽性が国内でも話題を振りまきつつあるトラックメイカー=さよひめぼうの新アルバム『ALIEN GALAXY MAIL』が本日10/21に発売!

●今作はライヴテイクの勢いを大きく反映させ、今までのベッドルーム・ミュージック的なアプローチから、踊る事を主軸に置いたダンスミュージックへと進化した一作となる。国内・海外で注目を集める横浜育ちのビートメーカー ΔKTR がプロデュース。マスタリングを ISSUGI や仙人掌、KID FRESINO、JJJ、C.O.S.A. らの作品への参加でも知られるプロデューサー/ビートメーカーの Aru-2 が施し、アルバムデザインは tofubeats のアートワークや、PUMA とのコラボレーションなど、インディーズからメジャーレーベルまで幅広い分野にアートワークを提供し、様々な企業、ブランドとのコラボレーションでプロダクトを展開している GraphersRock が担当した。

●GraphersRock のアルバム・アートワークを元に、たすけてセンター街が監督・編集したトレイラー動画や、imai (group_inou)、パソコン音楽クラブ、長谷川白紙、ぷにぷに電機、SEKITOVA、tomad、John Zobele (Business Casual)、R23X (Plus100、NEOGAIAPHANTASY)からのコメントも是非合わせてチェックしてください。

[AppleMusic, iTunes, Spotify など各配信/販売リンクはこちら]
https://smarturl.it/SAYOHIMEBOU

[アルバム・トレイラー映像はこちら]
さよひめぼう - “ALIEN GALAXY MAIL” Trailer
https://youtu.be/ek42B2LzMiE

2050年、新たな氷河期に突入後、
人類の大半はアジア大陸上に浮かぶ巨大コロニーに移住。
そこで暮らす中国人中学生猫娘は、
エンジニアの祖父からY2Kを経て改良・使用し続けた旧型Windowsパソコンを受け継いだ。
その娘のパソコンにある日、宇宙人からメールが受信される。
その内容は高速監視システムで探知され、瞬く間に全世界へ流出して大問題となった。

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[各推薦コメントはこちら(順不同)]

初めてさよひめぼうさんの曲を聴いた時はバックグラウンドが全然見えなくて、本当に宇宙人かと疑いました。

今作はそんなさよひめぼうさんが地球で活動を始めて、あらゆるトラックメイカーと共演する事で言語を習得し、最強バイリンガルになったような印象を受けました。

さよひめぼうさんは地球年齢だと僕より先輩にあたるのですが、「今が一番楽しい」と仰られていて、とても感動しました。
また共演してフロアをめちゃくちゃにしましょう!
特大リスペクト!!!!!

imai (group_inou)

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とにもかくにもリリースおめでとうございます! パソコン音楽クラブの企画で初ライヴを拝ませてもらってからはや3年、当時のVaporwave meets IDM的なカオスの連打から深圳DIVAあたりでの言語感覚の獲得によるポップな狂いと、そこに込めたインスピレーション元への私的な敬愛を同時に覗き見ることができる面白いアルバムでした。毎作ごとに恐る恐る拝聴させていただいております。今後とも油断も隙もならない音楽を楽しみにしています!

SEKITOVA

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蛍光色のエイリアンと毒ミッキーが融合・分裂し続けるトリップの中で、縦横無尽に跳ね回るのは、過剰なまでにケミカルな音の塊。背後から迫ってくる音響生命体は、おしゃべりのようにアーメンブレイクのスネアを打ち出し続けている。このコミュニケーションの成立しない銀河に、人間の出る幕は勿論ない。

柴田(パソコン音楽クラブ)

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さよひめぼうさんは、その初ライブが僕の所属するパソコン音楽クラブ企画の小さなイベントだったと思います。
その日、それまでにさよひめぼうさんの音楽を聞いたことのある人は少なかったと思いますが、様々な音楽の影響を感じさせつつも誰にも真似できない唯一無二の圧倒的なサウンドを聴き、そこに居合わせた全員がこれはとんでもないことになるんじゃないか、と物凄いワクワク感を感じたのを覚えています。それ以降も要所要所でご一緒し、僕はいつもその音楽に圧倒され続けてきました。
そんなさよひめぼうさんが今作ついに全国流通盤を出されるとのことで、本当に嬉しいです。
今作は当初からのIDM・ブレイクコア的ビートの持つ疾走感を引き継ぎつつも、声ネタや音選びなどから、過去作に比べてよりキャッチーな印象を感じました。しかしながら不思議な位相感や浮遊感のある調性など、抜群のオリジナリティは健在です。初めてさよひめぼうさんの音楽を聴く人に寄り添いつつも、体験したことのない聴了感を感じさせてくれる作品だと思います。

西山(パソコン音楽クラブ)

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我々の記憶から発音体までの距離をサンプリングしてしまうような唯一無二としか言いようがない音像/
常に音楽的構造を維持していながらも、“伝統的”な小節単位の進行ではない、予測不可能な、天上からの走り書きみたいな展開/
唐突に挿入される異分脈の和音の濁り、きみょうな転回形、グリッド外のリズム、異なる分割のリズム/
まるで中世音楽のような雰囲気すら感じさせるような旋法性や声部の独立性/
宇宙の全てを射程に捉え予言するような、鮮烈で恐ろしい記名性/
最新にして最大の美しくよごれた幻影!

長谷川白紙

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さよひめぼうさんはコラボレーションの際、いつもそのCuteで過激な音色を動力に、わたしの声を異次元に連れていってくれます。
 頂いたトラックを聞けば極彩色の世界感が嬉しくて「どこ~~~!?」と叫びたくなりそうなほど、魅力的なエンジンをお持ちの宇宙船です。
 そんなさよひめぼうさんがアルバムをリリース! ということで、先だって聴かせていただいたのですが、やっぱり「どこ~~~!?」でありつつも、流体のような滑らかさと硬質でパワフルなビートを更に洗練させておいでで、さらなるアップデートに眩暈がするほどです。
 きっとこのアルバムをお聞きの皆さんを最高の銀河に連れていってくれるでしょう。
 ヤバいとこまで届きそう……。

ぷにぷに電機

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はじめて聴いた時これは「テクノ」だと思った、そして泣いた。
ここではない未知なる惑星の思い出が走馬灯のように脳内を彩る。
2020年、宇宙への旅。さあ、最悪なこの地球から飛び出そう。

tomad (Maltine Records)

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"Another exciting release from SAYOHIMEBOU, featuring their signature blend of glitchy vaporwave.
Surprising and fun as always."

John Zobele (Business Casual Owner)

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Sayohimebou’s latest high-energy, auto-tuned, chopped-up masterwork pushes plunderphonic music to another level—it will blow your mind!

Sayohimebou is back in full force deconstructing techno, breakbeat, IDM, and plunderphonics through the lens of internet music.

Alien Galaxy Mail will make you rethink what dancing in a club could and should be.

This is an amazing blend of breakbeats, bubbling synths, warped samples, and bass lines that will get you moving… truly unique music.

Sayohimebou’s latest work is like putting hardcore techno, drum & bass, and vaporwave—with a pinch of gabber—into the blender and then microwaving the results. Incredible.

R23X (Plus100, NEOGAIAPHANTASY)

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アーティスト:さよひめぼう
タイトル:ALIEN GALAXY MAIL
品番:PCD-20429
定価:¥2,000+税
発売日:2020年10月21日

Tracklist:
01. 拝啓 聖 猫娘
02. NEO ICE AGE
03. GALAXY MAIL
04. Runway
05. ON-GAKU
06. Camouflage i-Land
07. Spam Trap (ハニーポット)
08. Summer Skate Link
09. AFRICA Mickey Museum
10. 1998-2050 (Memphis)

https://smarturl.it/SAYOHIMEBOU

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[プロフィール]
さよひめぼう
主にインターネットを活動の拠点とする、ミュータントFutureダンスミュージック製造工場!? 米国〈PLUS100〉〈BusinessCasual〉など、Vaporwave~Experimental系レーベルから多数アルバムをリリース。日本では〈NewMasterpiece〉からカセットテープを限定販売。2019年には〈Maltine Records〉からEP「深圳DIVA」リリース。
https://twitter.com/sayohimebou

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