「Nothing」と一致するもの

Phobophobes - ele-king

 2010年代後半に興ったサウス・ロンドン・シーンにはふたつの道がある。ひとつはシェイムゴート・ガールなど広く一般的に知られた道で、そこから派生し現在のサウス・ロンドン・シーンと呼ばれているものができあがった。もうひとつの道はその祖ファット・ホワイト・ファミリーからの影響を色濃く残したバンドたちが選んだ道だ。暗く、しっとりとした色気があって、危険な匂いのするそれ、ミートラッフルやワームダッシャーのようなファット・ホワイト・ファミリーの同志とも言えるような年長のバンドから闇鍋を囲む魔女の集団のようなマドンナトロンまで直轄の〈Trashmouth Records〉のバンドはもちろん、ヨークシャーの若きワーキング・メンズ・クラブはシェフィールドに駆けつけてファット・ホワイト・ファミリーの教えを仰ぎ、素晴らしいデビュー・アルバムを作りあげそして噛みつく牙を磨き上げた。クラッシュ・パピーズ(Krush Puppies)もこの流れの中におそらく含まれているだろうし、ホンキーズ(Honkies)なんかもきっとそう、プレゴブリンは言わずもがな、元バット‐バイクのジョシュ・ロフティンが結成したティーニャ(Tiña)もこの流れに入るのかもしれない。

 そしてそう、フォボフォブス(Phobophobes)はもちろんだ。音を聞いてもらえば一発でわかる、ここにはファット・ホワイト・ファミリーの匂いが染みついていると。ぼんやりとしたランプの灯、薄暗く煙の充満する地下室に入った瞬間に感じる匂い、そもそもなんでこんなところにやってきたのか? そう後悔してももう遅い、逃れられない運命のようにダウナービートの渦の中に飲まれていく。ファット・ホワイト・ファミリーの、特に 3rd アルバム『Serfs Up!』のゆったりとした陶酔感のある曲たちをかみ砕いて消化して血肉となったそれ、1st アルバムからファット・ホワイト印の音楽を奏でていたがこの 2nd アルバムはその純度があがってヤバさを感じる空気の濃度が一気にあがった。チンピラとギャングの違いと言うか一目見てこいつはただ者ではないとわかる感じだ。余裕すら感じられる。

 漆黒の世界へいざなうオルガンの音、低くささやくような歌声、“Hollow Body Boy” (この曲はプレゴブリンのジェシカ・ウィンターとの共作でもある)で幕を開け、2曲目の “Blind Muscle” で軽快に進むかと思えばそうではなく益々深みにはまり込み、3曲目の “Moustache Mike” に入るあたりでもうどっぷりと浸かり込んでいる。ゆったりとしたビートは気持ちをせき立てることなく、鳴り響くオルガンの音色と歪んだギターの音が空気を作る。そこにスリルはなく、危険な世界に生きているのが当たり前といった感じの緊張感があるのと同時にまたリラックスもしているという雰囲気。小粋なジョークが飛ばされて、その後に銃声が鳴り響くようなギャング映画のあの雰囲気だ。“I Mean It All” は喪失感を優しい響きで包みこみ映画終盤に流れていそうな匂いを醸し出している。タイトル・トラックの “Modern Medicine” も同様に素晴らしく、諦め達観したようなヴォーカルとオルガンの音が突き抜けた悲しみを癒やすような効果を発揮している。ファット・ホワイト・ファミリーはもちろん、時折クランプスやイギー・ポップの姿も見え隠れする。そこに目新しさはないのかもしれないけれど、極上の雰囲気にどっぷり浸かれるだけの質がある。

 ファット・ホワイト・ファミリーの初代ドラマーであるダン・ライオンズが初期のメンバー(現在は脱退)、その同志たるミートラッフルのオルガン奏者クリス OC が参加しファット・ホワイト・ファミリー本隊やゴート・ガールと練習スタジオを共にする、その出自からもフォボフォブスがどのようなバンドかわかるが、この 2nd アルバムを聞いているとここに漂う空気こそ伝統的に受け継がれてきたロンドンのアンダーグラウンドの空気なのではないかという気がしてくる。パブに通い詰める人から人へ年月を重ね代を経て伝わっていったような物語、いまを生きそして唄うヴォーカルのジェイミー・バードルフ・テイラーの歌声はしかしどこか失われてしまった過去を思わせノスタルジックに響く。かつて素晴らしかったものがいまはもうそうではない、それを自分は知っている、アルバム全体にそんな喪失感と哀愁が漂っている。

 シェイムやソーリー、ブラック・ミディブラック・カントリー・ニューロード、最新の音楽を取り入れて貪欲に変化するバンドに対して、フォボフォブスはどこか不器用にそれに抗う。品行方正のメインストリートから離れたような薄暗い裏道、危険が漂うアンダーグラウンドの匂い、こうした音楽がずっと残り続けているからこそ厚みが生まれる。何代にも渡りその血を更新してきたサラブレッドの歴史のように、シーンは枝分かれし広がっていき、そして再びどこかでクロスする。フォボフォブスは60年代から続くブリティッシュの伝統を受け継いでアンダーグラウンドの空気を未来へと運ぶ。残り続けているからこその特色がいつか色濃くなって顔を出す。フォボフォブスのこの 2nd アルバムには節々に刻まれた歴史のロマンが詰まっている。音楽やポップ・カルチャーは受け継がれ枝分かれし変化しながら続いていく、だからこそきっと素晴らしいのだ。

WWW & WWW X - ele-king

 さまざまなライヴ、パーティ、イヴェントを開催してきた渋谷のヴェニュー、WWW および WWW X が「センキョ割」を実施することを発表している。来る衆院選で投票を済ませた方限定で、ドリンクチケットを配布するとのこと。期日前投票も対象で、また、実施期間外の公演のチケットを持っている場合でも対応してくれるそうだ。
 飲食店などが投票へ行った人びとになんらかの割引を実施するのは海外ではよくおこなわれていることだが、これまで日本の音楽業界でも故・飯島直樹氏のレコード・ショップ「Disc Shop Zero」などが取り入れてきた。規模の大きい WWW および WWW X の今回の決断は、まさに英断と言えるだろう。
 ちなみに、先週末にはコムアイをはじめ、俳優などの著名人14名が投票を呼びかける動画「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」がユーチューブで公開されている。ようやく日本でもアーティストなどによる態度表明が定着していきつつある。
 第49回衆議院議員総選挙の投票日は10月31日(日)、期日前投票は10月20日(水)~10月30日(土)。

2021年 第49回衆議院総選挙での「センキョ割」実施について

WWW、WWW Xでは衆議院総選挙の投票証明をお持ちの方へ、「センキョ割」としてドリンクチケットをプレゼントします。

[投票日]
2021年10月31日(日)

[センキョ割 実施期間]
2021年10月20日(水)〜11月7日(日)

[センキョ割 参加方法]
・お一人様一回まで参加可能です。
・「投票証明」として投票済証、もしくは投票所の看板前でご自身(or学生証や免許証などのID)を撮影した写真をお持ちください。
・期日前投票も対象となります。
・実施期間中の公演チケットをお持ちでない方も、WWW、WWW X受付にて対応いたします。
・ドリンクチケットは2022年2月末まで有効です。有効期間内にWWW、WWW Xで行われる公演にてご利用頂けます。
 
[ご来場の際の注意事項]
・公演の開場時間付近は、お客様誘導のため対応ができかねる場合がございます。事前にWWW HPにてスケジュールをご確認の上、開場時間を避けたご来場をお願い致します。
・10/26(火)、11/1(月)は休館日となります。
・必ずマスクをご着用の上、ご来場をお願い致します。公演へ参加される方は、WWWの「新型コロナウィルス感染拡大予防に関する注意事項」のご確認と遵守をお願い致します。

WWW:03-5458-7685
WWW X:03-5458-7688

※当社は一般社団法人選挙割協会の規則を遵守しております。特定政党、候補者を応援する形で拡散などする行為を固く禁じます。

DELAY X TAKUMA - ele-king

 なんとなんと、モダン・クラシカルとエクスペリメンタルあるいはアンビエントを自由に往復する音楽家・渡邊琢磨の楽曲をダブ・テクノの騎手ヴラディスラヴ・ディレイがリミックスするというのは、良いニュースです。しかもただのリミックスではありません。最新作『ラストアフターヌーン』に収録の2曲を1曲に再構築するという、これが2ヴァージョン(つまり4曲が2曲に再構築されている)、かなりの迫力ある音響に仕上がっています。デジタル配信は11月5日、来年の1月にはUKの〈Constructive〉から12インチとしてリリースされる。
 野党も共闘していることだし、音楽もジャンルの壁を越えています……なんてね。

Delay x Takuma
Constructive
※ヴァイナルは2022年1月7日発売

Autechre × Humanoid - ele-king

 11月19日に『Chiastic Slide』と『LP5』がヴァイナルでリイシューされることになっているオウテカ。彼らがヒューマノイドのレイヴ・アンセムをリミックスしている。
 より正確を期せば、ヒューマノイドが1988年に発表した “Stakker Humanoid” を本人がアップデイトした “sT8818r” という2019年の曲があり、今回オウテカがリミックスしたのは後者のほう。12月3日にベルギーの〈De:tuned〉からリリースされるEP「sT8818r Humanoid」に収録される。
 ヒューマイノドは、後にフューチャー・サウンド・オブ・ロンドンを結成するブライアン・ドーガンズによるプロジェクトで、〈Rephlex〉からも編集盤が出ている。“Stakker Humanoid” は多くのひとから愛され続けているレイヴ・アンセムだ(88年当時UKのシングル・チャートで17位をマーク、その後何度もリイシューされている)。
 なお「sT8818r Humanoid」にはオウテカのリミックス以外にも、原曲 “Stakker Humanoid” のリマスター・ヴァージョンと、ルーク・ヴァイバートおよびマイク・ドレッドそれぞれによる “sT8818r” のリミックスが収録される。アートワークはデザイナーズ・リパブリックのイアン・アンダーソン。すぐになくなりそうなので、早めに予約しておこう。
 しかし、こういう盤が出るということは、もしかしたらイギリスの一部の人びとはレイヴ・モードなのかもしれない。感染者数はえらいことになっているものの、日常的な検査は続いており、死者数が増えないようなら政府はこのまま行くようだ。もうバンドはがんがんツアーに出ているし、なんだか日本とはえらい違いですな……
 いまや「レイヴ」という言葉はいろんなところで目にするようになっているが、実際に90年代のイギリスでなにが起きていたのかを知るためにも、ぜひ『レイヴ・カルチャー』を手にとっていただけると嬉しい。

Moritz Von Oswald Trio - ele-king

 よく音楽は時間芸術だと言われる。が、音楽は空間芸術でもある。たとえばJポップには「Aメロ→Bメロ→サビ」の定型を保守した曲が多いけれど、音楽の魅力は展開=物語のみにあるわけではない。その対極にあるのが反復による音楽で、それは時間を宙づりにする。音は物語ではなく「場」になる。

 ミニマル・テクノの巨匠、モーリッツ・フォン・オズワルドひさびさのフルレングスがリリースされた。アルバムとしては4年ぶり、トリオとしては6年ぶりの新作だ。『Dissent』は、長いキャリアを誇るヴェテランの新作として申し分のないクオリティを具えた1枚に仕上がっている。ミニマル・テクノが生まれてから30年を経たいまとなっては大きな驚きはないかもしれないが、しかし若さだけでは創出できないだろう、素晴らしいサウンドがここでは鳴り響いている。

 オズワルドの音楽のキャリアは、1980年代に活躍したノイエ・ドイチェ・ヴェレを代表するバンドのひとつ、パレ・シャンブルグの後期メンバーとしてはじまっている。ホルガー・ヒラーとトーマス・フェルマンというふたりの個性が率いたそのバンドが、当初の前衛的サウンドからダンスへと移行した時期だった。
 けれどもオズワルドの名がテクノ・シーンにおいて大きな意味をもって記憶されるようになるのは、彼がベルリンでレコード店「ハードワックス」を営み、レアグルーヴとレゲエの研究家でもあったマーク・エルネストゥスと出会い、ベーシック・チャンネル(BC)を始動させてからだ。いや、正確に言えば、BCがシーンに衝撃を与えた初期の重要曲 “Phylyps Trak” をリリースした時点においても、オズワルドの名はまだ知られていない。というのも、デトロイトのURに多大な影響を受けたふたりは、当初は正体を明かさず徹底した匿名主義を貫き、取材もいっさい受けなかったからだ(編集長によれば、90年代なかばにUKのダンス系メディアがオズワルドの写真をすっぱぬいて、そのころになってようやく、どうやらメンバーに元パレ・シャンブルグのオズワルドがいるらしいと情報が広まっていったそうだ)。
 BCは、ジェフ・ミルズと双璧をなすミニマル・テクノのパイオニアだ。ミルズよりもさらに抽象的なそのサウンドは、当時としては革命的だった。ゆえに大量のフォロワーを生んでいるが、たとえばポールヴラディスラフ・ディレイはBCがいなければ登場できなかっただろう。

 革命を成し遂げたオズワルドとエルネストゥスは、90年代半ばになるとラウンド・ワン(~ラウンド・ファイヴ)名義でハウスにチャレンジ、90年代後半から00年代前半にかけてはリズム&サウンドを名乗り、よりレゲエ/ダブに寄ったアプローチを探求していく……が、やがてふたりは異なる道を歩むことになる。リズムを求めアフリカへと向かったエルネトゥスに対し、オズワルドはミニマル・テクノの可能性をさらに追求していった。
 その最初の成果たるモーリッツ・フォン・オズワルド・トリオ(以下MvOT)のアルバム『Vertical Ascent』が送り出されたのは、2009年のことである。MvOTからはその後『Horizontal Structures』(2011)、『Fetch』(2012)と立て続けに2枚のアルバムが送り出されているが、ほぼ同時期、彼はデトロイト・テクノの創始者ホアン・アトキンスとのスリリングなコラボ作品も発表している。2015年にはMvOTにトニー・アレンを招いて『Sounding Lines』をリリース、エレクトロニクスとアフロビートとの見事な邂逅は記憶に新しいところだ。
 ほかにもカール・クレイグとの『ReComposed』(2008)やノルウェイのジャズ・トランペッター、ニルス・ペッター・モルヴェルとの『1/1』(2013)、キルギスタンの民族音楽グループ Ordo Sakhna との共作(2017)など、クラシック音楽にジャズに民族音楽にと、00年代以降オズワルドの関心の幅はどんどん広がっているわけだが、そのすべてに通底しているのは、ミニマル・テクノはいかに拡張できるのかという発想である。新作『Dissent』も例外ではない。

 今回、オズワルド以外のメンバーは総入れ替えとなっている。ひとりは10年代エレクトロニック・ミュージックの重要な担い手たる、ローレル・ヘイロー。本作ではキーボードを任され、メロディの部分を担当している。もうひとりはドイツのジャズ・ドラマー、ハインリヒ・ケッベリンク。〈ECM〉からリリースを重ねるピアニスト、ジュリア・ハルスマンのクァルテット/トリオで活躍する人物だ。オズワルドによるダブ処理やシンセ、総合的なディレクションが本作の核をなしているのはもちろんなのだけれど、ヘイローの奏でる上品な旋律とケッベリンクによる生のドラムがこれまでのMvOTにはなかった新鮮な表情と、親しみやすさをもたらしている。
 たとえば “Chapter 2” で、からからと心地よく鳴るパーカッションにユニゾン的に重ねられるオルガン。あるいは “Chapter 4” や “Chapter 8”、“Chapter 9” などで聞かれるジャジーな和音~旋律は、MvOTの新機軸と言えるだろう(かつてニルス・ペッター・モルヴェルがトランペットで果たしていた役割を引き継いでいるとも解釈できる)。
 ドラムも聴きどころで、生楽器の躍動がヴィヴィッドなセッション感を演出している。とはいえ、おそらくオズワルドによって巧みにコントロールされているのだろう、けっして「ドラムでござい!」と暴れまわっているわけではない。前回のトニー・アレンしかり、オズワルドは凄腕のドラマーのプレイをある種の「機材」として扱うことで、自身のミニマリズムを更新しようと実験しているのかもしれない。
 かつてなくヴァラエティに富んでいるところも本作の特徴だ。前景に構える鍵盤&ドラムと、遠くでかさかさと音を立てるパーカッションとの絶妙な距離感を楽しませてくれる “Chapter 3” はアンビエント・テクノだし、具体音を活用した “Chapter 7” やナイヤビンギを想起させる “Chapter 10” なども興味深い。前半は抽象的ないしは落ち着いたムードの曲が並んでいるが、後半は4つ打ちも登場、アルバムはどんどん盛り上がりを見せていく。もっとも印象的なのはディープ・ハウスの “Chapter 5” だろう。おなじ昂揚はラストの “Epilogue” でも味わうことができる。

 アルバムを通してオズワルドは、未知の他者によるプレイをまさに制御することによって、自身のミニマリズムを堅守しつつ、そこに新たな命を吹き込もうと奮闘しているのだ。ミニマル・テクノは、はたしてどこまで進むことができるのか? その回答がこのアルバムには示されている。ヴェテランの気概にあふれる1枚だ。

interview with Lucy Railton - ele-king

 今春、イギリスのレーベル〈SN Variations〉から、本稿でご紹介するチェリスト/作曲家のルーシー・レイルトン(Lucy Railton)と、ピアニスト・オルガニストのキット・ダウンズ(Kit Downes)による作品集成『Subaerial』が送られてきた。アルバム1曲目“Down to the Plains”の中程、どこからともなく聴こえてくる木魚のようなパルス、篝火のように揺らめくパイプオルガンの音、ノンビブラートのチェロが直線的に描き出す蜃気楼、そして録音が行われたアイスランドのスカールホルト大聖堂に漂う気配がこちらの日常に浸透してくる。その圧倒的な聴覚体験に大きな衝撃を受けた。

 ルーシー・レイルトンの〈Modern Love 〉からリリースされたファースト・アルバム『Paradise 94』(2018)は、当時のドローン、エクスペリメンタル・ミュージックを軽く越境していくような革新的な内容であると同時に、音楽的な価値や枠組みに留まらないダイナミックな日常生活の音のようでもあった(アッセンブリッジな音楽ともいえるだろうか?)。その独自の方向性を持ちつつ多義的なコンポジションは、その後の諸作でより鮮明化していくが、前述の新作『Subaerial』では盟友キット・ダウンズとともに未知の音空間に一気に突き進んだように思われる。絶えず変化し動き続ける音楽家、ルーシー・レイルトンに話を伺った。

私には素晴らしい先生がいました。その先生はとても反抗的で、クラシック音楽の威信をあまり気にしない人だったので、その先生に就きたいと思いました。というのも、私はすでにクラシック音楽に対して陳腐で嫌な印象を持っていて、何か別のことをしたかったので。

ロンドンの王立音楽院に入学する以前、どのようにして音楽やチェロと出会ったのでしょうか。

ルーシー・レイルトン(LR):私はとても音楽的な家系に生まれたので、子供のころから音楽に囲まれていました。胎内では母の歌声や、父のオーケストラや合唱団のリハーサルを聞いていたと思います。父は指揮者で教育者でもありました。母はソプラノ歌手でした。父は教会でオルガンを弾いていたのですが、その楽器には幼い頃から大変な衝撃を受けてきました。私は、7歳くらいになるとすぐにチェロを弾きはじめました。その道一筋ではありましたが、子供の頃はいろいろな音楽を聴いていて、地元で行われる即興演奏のライヴにも行っていました。即興演奏やジャズは、私がクラシック以外で最初に影響を受けた音楽だと思います。そこから現代音楽や電子音楽に引かれ、ロンドンで本格的に勉強を開始しました。

王立音楽院在籍時印象に残っている、あるいは影響を受けた授業、先生はいましたか?

LR:英国王立音楽院では、特別だれかに影響を受けたことはありませんでしたが、私には素晴らしい先生がいました。その先生はとても反抗的で、クラシック音楽の威信をあまり気にしない人だったので、その先生に就きたいと思いました。というのも、私はすでにクラシック音楽に対して陳腐で嫌な印象を持っていて、何か別のことをしたかったので。その先生は、私に即興演奏や作曲することを勧めてくれて、練習の場も設けてくれたので感謝しています。
 それから、ニューイングランド音楽院(米ボストン市)で1年間学んだときは、幸運にもアンソニー・コールマンと、ターニャ・カルマノビッチというふたりの素晴らしい音楽家に教わることができました。彼らは私のクラシックに対する愛情を打ち破り、表現の自由とはどのようなものかを教えてくれました。同院にはほかにも、ロスコー・ミッチェルのような刺激的なアーティストが来訪しました。彼はたった1日の指導とリハーサルだけで、ひとつの音楽の道を歩む必要はないことを気づかせてくれました。私はその時点でオーケストラの団員になるつもりはなく、オーディションのためにドヴォルザークのチェロ協奏曲を学ぶ必要もありませんでした。創造的であること、そしてチェリストであることは、オーケストラの団員になるよりも遥かに大きな意味があることを理解しました。これはその当時の重要な気づきでした。

私は、チェロに加えて新しい音の素材を探していたのですが、それらのとても混沌としたシンセは、私が作りたい音楽にとって必要十分で甚大なものだと感じました。自分の好みが固まったところで、すべてのものを織り交ぜる準備ができました。

ジャズや即興演奏に触れる稀有な機会のなかで、クラシック以外の音楽に開眼されていったとのことですが、電子音楽やエレクトロニクスをご自身の表現や作品制作に取り入れるようになった経緯も教えていただけますか。

LR:それは本当に流動的な移行でした。まず、ルイジ・ノーノの『Prometeo』(ルーシーは同作の演奏をロンドンシンフォニエッタとの共演で行っている)のような電子音響作品や、クセナキスのチェロ独奏曲のような作品に、演奏の解釈者として関わりましたが、その間、実に多くの音楽的な変遷を遂げていきました。それは、私がロンドンのシーンで行なっていたノイズやエレクトロニック・ミュージシャンとの即興演奏、キット・ダウンズとの演奏、そしてアクラム・カーンの作品(「Gnosis」)におけるミュージシャンとの即興演奏に近いものです。インドのクラシック音楽のアンサンブルである「Gnosis」のツアーに参加した際、即興演奏の別の側面を見せてもらいましたが、それは実験とは無縁で、すべてはつながりと献身に関連していました。
 また20代の頃は、自分でイベントや音楽祭を企画していたので、自然と実験的な音楽への興味を持つようになりました。そういった経過のなかで、何らかの形で私の音楽に影響を与えてくれた人びとと出会いました。とくに2013年から14年にかけては多くの電子音楽家に出会いました。ことピーター・ジノヴィフとラッセル・ハズウェルとのコラボレーションでは、即興と変容が仕事をする上で主要な部分を占めていて、そういった要素を自分で管理することがとても自然なことだと感じ、いくつかのモジュールを購入して、シンセを使った作業を開始しました。
 それから、Paul Smithsmithに誘われてサリー大学のMoog Labに行き、Moog 55を使ってみたり、EMSストックホルムに行ってそれらの楽器(Serge/Blucha)を使ってみたりしました。
 私は、チェロに加えて新しい音の素材を探していたのですが、それらのとても混沌としたシンセは、私が作りたい音楽にとって必要十分で甚大なものだと感じました。自分の好みが固まったところで、すべてのものを織り交ぜる準備ができました。私のアイデンティティのすべてを、何とかしてまとめ上げようとしたのが『Paradise 94』だったと思います。

テクノロジーや電子音と、ご自身の演奏や音楽とのあいだに親和性があると考えるようになったのはなぜでしょうか。あるいは、違和感を前提としているのでしょうか。

LR:これらの要素を融合させることには確かに苦労しますし、まだ適切なバランスを見つけたとは言えません。チェロのようなアコースティック楽器をアンプリファイして増幅することは少々乱暴です。しかし、スタジオでは編集したりミックスしたり、あらゆる種類のソフトウェアやシンセを使ってチェロをプッシュしたりすることができて、それはとても楽しいです。ライヴの際、チェロをエレクトロニック・セットのなかのひとつの音源として使いたいと思っていますが、それをほかのすべての音と調和させるのは難しいですね。
 なぜなら、私がチェロを弾いているのを観客が見ると、生楽器と電子音のパートを瞬時に分離してしまい、ソロ・ヴォイスだと思ってしまうことがあるのです。また(チェロが)背景のノイズや音の壁になってしまうこともあり、観客だけではなく私自身も混乱してしまうことがあるのです。スタジオレコーディングでは何でもできますが、ライヴでの体験はまだ難しいです。

そして2018年に、〈Modern Love〉から鮮烈なソロ・デビュー・アルバム『Paradise 94』をリリースされます。先ほど、ご自身のアイデンティティのすべてをまとめ上げようとしたのが本作であるとお伺いしましたが、本作の多義的なテクスチュアや音色は、生楽器と電子音によるコンポジションと、そのコンテクストに静かな革命をもたらしていると思います。本作における音楽的なコンセプト、アイディアは何だったのでしょうか?

LR:私は、ミュージシャンとしてさまざまなことに関わってきた経験から多くのことを学んだと感じていました。『Paradise 94』を作りはじめるまでは、自分の音楽を作ったことがなかったので、いろいろな意味で自分の神経を試すようなものでした。私は初めて自分の声を発表しましたが、それは当然、自分が影響を受けてきたものや興味のあるものを取り入れたアルバムです。自分の表現欲求と興味を持っている音の世界に導かれるように、このふたつの要素を中心にすべてを進めていったと思います。素材や少ないリソースから何ができるかを試していましたが、このアルバムはその記録です。

‘Paradise 94’

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それぞれの楽曲は、別々の時期に制作されたものですか? また制作過程について教えてください。

LR:はい。完成までに約3年かかりました。終着点のない、ゆっくりとした登山のようなものでした。私は期限を決めずに作業をしていました。時間をかけて、気分的にも適切な時にだけ作業していましたし、その時期は、ロンドンとベルリンを頻繁に行き来していました。ロンドンではフリーランスのミュージシャンとして活動していましたが、ベルリンでは自分の仕事に専念するようになりました。その為このアルバムは、さまざまな場所や状況と段階で制作されたので、多くの点で焦点が定まっていませんでした。だからこそ、ヴァラエティに富んだレコードになっているのかもしれません。私はこの点はとても気に入っています。

本アルバムには、巻上公一さんが、“Drainpipe(排水管?)”で参加されてますね。巻上さんとはどのようにして知り合ったのですか?(私事ですが、巻上さんがコンダクトしたジョン・ゾーンの『コブラ』に参加したことがあります)

LR:巻上さんとは、日本のツアー中に出会いました。彼の芸術性には刺激を受けましたし、とても楽しい時間を過ごすことができました。実際にはアルバムのなかでは、あまり実質的なパートではなかったのですが、巻上さんとロンドンで一緒にパフォーマンスをしたとき、彼は’drainpipe’を演奏したのですが、それはとても特別なものでした。彼のエネルギーが、その時の私に語りかけてきました。当時の私は、レコーディングのためにいろいろな音を集めて準備していたのですが、巻上さんが親切に彼の音を提供してくれました。それは今も、素材の網目のなかに埋め込まれ、彼のインスピレーション記憶として存在しています。彼のパフォーマンスは、私のライブにも影響を与えてくれました。彼は素晴らしいアーティストです。

あらゆる点で。私は音楽業界に近づくことよりも、創造性に焦点を当て、自分と同じ価値観を共有できる人々と時間を過ごすことが重要だと感じています。私が音楽をやる理由はそこ(業界)にはありません。

2020年には多くの作品をリリースしています。はじめに、ピーター・ジノヴィエフとのコラボレーション作品『RFG - Inventions for Cello and Computer』についてお伺いします。あなたとピーターはLCMFで出会って、コラボレーションのアイディアについて話し合いました。それから、あなたの即興演奏を録音したり、ピーターがエレクトロニクスを組み立てたりしながら、一緒に作品を作り上げていきました。このプロセスから生まれた作品をライブパフォーマンスでおこなう際、そこに即興の余地はあるのでしょうか?

LR:『RFG - Inventions for Cello and Computer』における演奏は、固定された素材と自由なパーツの混在から成る奇妙なものです。そのため、ライヴで演奏するのは難しく、チャレンジングな部分があります。ピーターのエレクトロニクスは固定されているので、私は彼と正確に(演奏を)調整しなければならないので(その指標として)時計を使います。もちろん時計は融通が効かないので、更にストレスがたまります。このように苦労はしますが、これもパフォーマンスの一部であり、意図的なものです。私は作曲時に固定した素材を使って即興で演奏していますが、時には素材から完全に逃れて「扇動者」、「反逆者」、「表現力豊かなリリシスト」のように振る舞います。また、電子音のパートと正確に調整する際には、通常の楽譜を使用することもありますし、例えば、ピーターのパートとデュエットすることもあれば、微分音で調律された音のシステムを演奏することもあります。本作の演奏方法は、既知のものとかけ離れていることが多いので、ガイドが必要になります。それはなければ即興演奏をすることになりますが、(作品には)即興ができる場所と禁止されている場所がありました。

一般的にピーター・ジノヴィエフは、EMS Synthiなどのシンセサイザーを開発した先駆者と言われていますが、このコラボレーションにおいてピーターは、実機のシンセサイザーではなく、主にコンピュータを使用したのでしょうか?

LR:はい。実はピーターはアナログシンセで音楽を作っていたわけではないのです。もちろん、彼がアナログシンセを開発した功績は称えられています。しかし作曲家としては、伝統的なアナログ・シンセはあまり使っておらず、所有もしていませんでした。『RFG - Inventions for Cello and Computer』では、彼の2010年以降の他の作品と同様、コンピュータの技術やソフトウェアを利用しています。彼は常に私の録音を素材としていたので、作品のなかで聞こえるものはすべてチェロから来ています。彼がおこなった主な作業は、Kontaktやさまざまなプラグインを使って音を変換し、電子音のスコアをつくることでした。彼はソフトウェアの発展に魅了され、コンピュータ技術の進歩に驚嘆し魅了されていました。それと同時に彼は、人間と楽器(私やチェロ)がコミュニケーションをとるための新しい方法を常に模索していました。ですから、私たちの実験の多くは、コンピュータによる認識、特にピッチ、リズム、ジェスチャーに関するものでした。

同年、オリヴィエ・メシアンの『Louange à l'Éternité de Jésus』がリリースされましたが、このレコードの販売収益を、国連難民局のCovid-19 AppealとThe Grenfell Foundationに均等に分配されています。10年前に録音された音が、この激動の時代に明確な目的を持ってリリースされたことに感銘を受けました。

LR:LR:これは、私が24歳の時の演奏で、家族の友人が偶然コンサートを録音してくれたのですが、そのときの観客の様子や経験から、ずっと大切にしてきたものです。それが録音自体にどう反映されているかはわかりませんが、その演奏の記憶はとても強く残っています。そのことについては、ここで少し書きました
 当時の私は、自分が癒される音楽を人と共有したいと思っていましたが、この曲はまさにそれでした。最初は友人や家族と共有していましたが、その後、リリースすることに意味があると気づきました。その収益を、Covid-19救済を支援していた団体に寄付しました。そのようにしてくれた〈Modern Love〉(マンチェスターのレコードショップ’Pelicanneck’=後の’Boomkat’のスタッフによって設立された英レーべル)にはとても感謝しています。

INA GRMとの関係とアルバム「Forma」の制作経緯について教えてください。

LR:彼らは若い世代の作曲家と仕事をすることに興味を持っており、2019年にINA GRMとReimagine Europereimagine europeから(作品制作の)依頼を受けました。私はすでにミュージック・コンクレートや電子音楽に興味と経験を持っていたので、GRMのアクースモニウム(フランスの電子音楽家、フランソワ・ベイルによって作られた音響システム)のために作曲するには良い機会でした。この作品を初演した日には54台のスピーカーがあったと思います。私は主にチェロの録音、SergeのシンセサイザーとGRMのプラグインを使って作業しました。ただ、マルチチャンネルの作品を作ったのはこれが初めてでしたし、非常に多くのことを学びました。この作品が(音の)空間化の旅の始まりになりました。GRMのチームは、信じられないほど協力的で寛大です。作曲からプレゼンテーションまで、チームが一緒になって新しい作品制作を行います。私はこれまでとても孤独な経験を通してレコードを作ってきましたが、それらと(本作は)全く違いました。「Forma」(GRM Portraitsより、2020年リリース)では、とてもエキサイティングでチャレンジングな時間を過ごし、この作品を通して自分の音楽に新しい形をもたらしたと感じました。

'Forma'

Editions Mego · Lucy Railton 'Forma' (excerpt) (SPGRM 002)

今年の初めに、Boomkat Documenting Soundシリーズの『5 S-Bahn』がレコードでリリースされました。Boomkatのレヴューによると、ロックダウン下にご自宅の近所で録音されたそうですね。このアルバムに収められたサウンドスケープを聴いていると、あなたの作品は音楽的な価値や枠組みから逃れて、よりダイナミックな日常生活の音に近づいているように思えます。パンデミック以降、日常生活はもちろんですが、音楽制作に変化はありましたか?

LR:そうですね。あらゆる点で。私は音楽業界に近づくことよりも、創造性に焦点を当て、自分と同じ価値観を共有できる人びとと時間を過ごすことが重要だと感じています。私が音楽をやる理由はそこ(業界)にはありません。私は、業界の人びとがいかに自分の成功を求めて、互いに競い合っているかに気づきました。これまで音楽制作においても社会生活においても、彼らの期待や要求に気を取られ過ぎていました。いまでは、自分の価値観や芸術的な方向性をより強く感じていますし、それは1年以上にわたって家やスタジオで充実した時間を過ごしたからです。自分の方向性が明確になり、それを認めてくれる人やプロジェクトに惹かれるようになりました。ですから、今の私の音楽作りは、よりパーソナルなものに自然となってきています。来年には変わるかもしれませんが、それは誰にもわかりません。

新作『Subaerial』についてお伺いします。キット・ダウンズと一緒に演奏するようになったきっかけを教えてください。

LR:キットと私は、2008年にロンドンに留学して以来の知り合いで、長い付き合いになります。主に彼のグループで演奏していましたが、他の人とも一緒に演奏していました。『Subaerial』は、チェロとオルガンを使ったデュオとしては初めてのプロジェクトです。この作品は私たちにとても合っています。私は、ジャズクラブでチェロを弾くのはあまり好きではありませんでした。というのも音が悪いのが普通で、特にチェロの場合、私は音質に敏感です。オルガンのある教会やコンサートホールで演奏するようになってから、突然快適になり、アンプリファイの問題も解消され、表現力を発揮できるようになりました。
 教会では、音に空気感も温かみもあり、空間や時間の使い方もまったく違うものになります。このアイディアに辿り着くまで13年かかってしまいましたが、待った甲斐がありました。このアルバムは、私たちにとって素晴らしい着地点だと思います。私たちはお互いに多くの経験をしてきたので、自分たちの音楽のなかに身を置き、一緒に形成している色や形に耳を傾ける時間を持つことができます。チェロがリードしているように思えるかもしれませんが、実際にはそんなことはなく、私は部屋のなかの音に反応しているだけなのです。
 キットは最高の音楽家ですから、彼がやっていることからインスピレーションを得ることも多くありますが、私たちはすべてにおいてとても平等な役割を担っています。お互いが、非常に敬意を持って深く耳を傾けることができるコラボレーションに感謝しています。

Lucy Railton & Kit Downes Down ‘Subaerial’

このアルバムは、アイスランドのスカールホルト大聖堂で録音されたものです。あなたとキットは、なぜこの大聖堂をレコーディングに選んだのでしょうか? また、レコーディングの期間はどのくらいだったのでしょうか?

LR:車を借りて、海岸沿いの小さなチャペルからレイキャビックのカトリック教会まで、いくつかの教会をまわりました。実際にはすべての教会で録音してみましたが、スカールホルトでは最も時間をかけて録音しました、というのも場所、音響、空間の色が適切だったからです(太陽の光でステイングラスの赤と青の色が内部の壁に投影されることがよくありました)。だから、私たちは快適で自由な気分で、一週間を過ごしました。しかし、アルバムに収録されている音楽は、ある朝、数時間かけて録音したものを42分に編集したものです。

このアルバムは、基本的に即興演奏だと聞いています。レコーディングを始める前に、あなたとキットは何かコンセプトやアイデア、方向性を考えていましたか?

LR:いえ、私たちはただ何かをつかまえたかったのです。新曲を作るつもりではありましたが、しばらく一緒に演奏していなかったので、その演奏のなかで再開を楽しみました。また、ピアノではなくオルガンを使った作業は、私たちデュオにとってまったく新しい経験だったので、「音を知る」ことが多く、その探究心がこのアルバムに強く反映されていると思います。なので、ある意味では、新しい音を求めるということ自体がコンセプトでしたが、音楽を作ることは常に、未来への探求、そして発見だと思います。

今後の予定を教えてください。

LR:実はまだ手探りの状態で、先が見えない不安もあります。しかし、パンデミックが教えてくれたのは、このような状況でも問題ないということ、そして期待値を下げることです。「大きな」プロジェクトも控えていますが、最近は最終的なゴールのことをあまり考えないようにしています。その代わり、もっと時間をかけて物事をより有機的に感じ取るようにしています。なぜなら、そのポイントに向かう旅路が最も重要だからです。たとえすべての予定がキャンセルになったり、何かがうまくいかなかったとしても、創造の過程にはすでに多くの価値があり、それはすべて集められ、失われることはありません。

Lucy Railton & Kit Downes
タイトル:Subaerial
レーベル:SN Variations (SN9)
リリース:2021年8月13日
フォーマット:Vinyl, CD, FLAC, WAV, MP3

ルーシー・レイルトン/Lucy Railton
ベルリンとロンドンを拠点に活動するチェリスト、作曲家、サウンドアーティスト。イギリスとアメリカでクラシック音楽を学んだ後、即興演奏や現代音楽、電子音楽に重点を置き、Kali Malone、Peter Zinovieff、Beatrice Dillonほか多岐に渡るコラボレーションを行っている。また、Alvin Lucier、Pauline Oliverosなどの作品を紹介するプロジェクトにも参加している。2018年以降、Modern Love、Editions Mego/GRM Portraits、PAN、Takuroku等から自身名義のアルバムをリリースし、約50のリリース(ECM、Shelter Press、Ftarri、Sacred Realism、WeJazz、Plaist)に客演している。https://lucyrailton.com/

Lucrecia Dalt & Aaron Dilloway - ele-king

ノイズを無視するとかえって邪魔になる。耳を澄ますと、その魅力がわかる。 
 ——ジョン・ケージ『サイレンス』(柿沼敏江 訳)


 アーロン・ディロウェイなるアーティストは、今日日のノイズ好きにとってはほとんどカリスマのひとりなのだが、ふだんはノイズを聴かないリスナーのなかにもファンは多くいる。昔から過剰に多作なノイズ界において、ディロウェイのアルバムはたびたび広く注目され、海外のメディアでも積極的に紹介されている。『モダンな道化師(Modern Jester)』(2012)や『ダジャレ名簿(The Gag File)』(2017)といった代表作の題名からも匂うように、そこには「狂気」とともに「笑い」が含まれていることがその理由のひとつであろうと、ぼくはにらんでいる。『ダジャレ名簿』のアルバム・スリーヴは腹話術で使う人形のバストショットだったが、見方によってはある種気味の悪さがあり、別の見方によっては滑稽でもあり、さらにまた別の見方では可愛くもある。こうしたアンビヴァレンスは、ディロウェイ作品の魅力であり、彼のノイズの本質を代弁していると言えるだろう。

 ミシガン州デトロイト郊外の町ブライトンで生まれ育ったディロウェイにとってのもっとも初期の影響は、少年時代に出会ったバットホール・サーファーズだ。子供だったこともありバンド名からしてゲラゲラ笑ったそうだが(but holeにはケツの穴、いやな奴などといった意味がある)、これがパンクってもんだと教えられた彼にとって、あとから聴いたセックス・ピストルズは、ただただ凡庸なロックにしか聴こえなかった。
 ディロウェイの影響でもうひとつ大きかったのは、キャバレー・ヴォルテールの『ザ・ヴォイス・オブ・アメリカ』だ。テープ・コラージュ(高尚に言えばミュジーク・コンクレート)という、彼の創作におけるもっとも主軸となる手法を彼はこのアルバムによって知った。で、それをもって、1998年にミシガン州デトロイト郊外の町アナーバー(デストロイ・オール・モンスターズの故郷)にて、インダストリアル・ノイズ・バンド、ウルフ・アイズを結成、ディロウェイ自身のレーベル〈Hanson〉からデビューする。とは言うものの、ディロウェイは、ウルフ・アイズがゼロ年代半ばに大手インディの〈サブ・ポップ〉からアルバムを出すくらいにまでになってしまうと、プロモーションなどが面倒でバンドを去る。以来彼は、コラボ作こそ多くあれど、基本的にはソロ・アーティストとして活動を続けている。
 ディロウェイはかつて、イギリスのFACTマグの依頼でDJミックスを作成したことがある。選曲はすべてビートルズやらストーンズやらボウイやらといった超有名どころの、ただしコピー・バンドの演奏を集め、エディットし、そこに不快で奇妙なノイズをミックスしたものだった。安倍晋三ではないが自分たちサークルの正統性を振りかざし、その外部を批判ばかりしている人たちを舐めきっているかのようなノイズ、いかにもディロウェイらしいキッチュなものへの愛情、いかがわしさへの関心は、有名ロック・バンドのライヴ映像の海賊版VHSへの偏愛にも言える。いささかアイロニカルとはいえ、ディロウェイの創作にはメタな視点があり、彼の諧謔性はキャプテン・ビーフハートやザ・レジデンツにも通じている。奇怪なその音響、サウンドプロダクションに関して言えば、AFXの牧歌的ではない側面が(も)好きなリスナーにも推薦したい。
 
 コミカルで、よく見ると不気味なスリーヴアートをあしらったディロウェイの新作は、〈Rvng Intl.〉からの作品で知られる、現在はベルリン在住の電子音楽家、ルクレシア・ダルトとの共作『ルーシー&アーロン』、これがじつに良かった。考えてみれば、男女のデュオという点では前回レヴューしたマリサ&ウィリアムと同じで、ふたりの個性が合流することでマジックが生まれているという点もまた同じ、音楽性は著しく違っているけれどね。なにしろこちらはディロウェイのバカバカしいテープ・ループ、不快なミニマリズム、ダルトの妖しい声と幻想的なシンセサイザーによるシュールで魅惑的なガラクタというか呪文というか。しかもユーモアと恐怖が交錯する『ルーシー&アーロン』には、曲によってはグルーヴもあり、所々ぼくにはファンキーに聴こえたりもする。ひとつの感情に凝り固まらない、安易にディストピアでもない、こうした毒の入った笑える音楽は、自分の正気を保つためにもいま必要なのだ。
 現在はオハイオ州オバーリンで暮らしているディロウェイは、ダルトとは数年前のツアー中に知り合っている。お互いを賞賛し合っているふたりはアルバムを作ることを決め、その多くはNYで録音されている。残りの作業はそれぞれの自宅、ベルリンとオバーリンで終えたそうだ。なお、ディロウェイはこの10月末、ジョン・ケージの作品を蒐集し、整理し、広める非営利団体「ジョン・ケージ・トラスト」からの招待を受けてケージの12台のレコーダーを使用したテープ音楽作品「Rozart mix」をディロウェイなりの解釈で演奏することになっている。また、キム・ゴードンとビル・ネイスによるプロジェクト、Body/Headにディロウェイが参加した作品『Body/ Dilloway/Head』も直にリリースされる。
 
 

Abstract Mindstate - ele-king

 今夏に Kanye West が立ち上げたレーベル、〈YZY SND〉(=Yeezy Sound)の第一弾アーティストとして登場した、Olskool Ice-Gre と E.P. da Hellcat という男女デュオによるヒップホップ・グループ、Abstract Mindstate。実は2001年に 1st アルバム『We Paid Let Us In!』でデビューしており、さらに何枚かのシングルやミックステープを発表するものの、2000年代半ばにはすでにグループとしての活動を停止していた。知る人ぞ知るというよりも、実際はシカゴ以外ではほぼ無名の存在の彼らだが、『We Paid Let Us In!』にもプロデューサーとして参加していた Kanye West の提案により、約15年ぶりに本作『Dreams Still Inspire』にて復活することとなった。

 プロデュースも Kanye West が全曲手がけているのだが、ほぼ同じタイミングでリリースされた Kanye West の最新作『Donda』とのサウンド面での違いにまずは驚かされる。サンプリングを軸としたノスタルジックなプロダクションは2000年代半ばにリリースされた Kanye West の最初の2作『The College Dropout』、『Late Registration』を彷彿させるものだが、過去に作られた楽曲を引っ張り出してきたわけではなく、全て Kanye West が新たに制作したビートが使用されているという。アルバム・タイトルからも伝わってくるように、Olskool Ice-Gre と E.P. da Hellcat のスタイルはストレートなコンシャス・ラップで、イントロ的な一曲目 “Salutations” から長いブランクを経て復活した自らの状況をポジティヴに捉えたリリックが展開されている。例えるならば Kanye West もプロデューサーとして参加していた『Be』の頃の Common とも非常に近い匂いというか、40代以上のヒップホップ・リスナーであればあの時代のシカゴ・ヒップホップの空気感を思い出す人も少なくないだろう。

 ある意味、いまのヒップホップのトレンドとは全く逆行している作品でもあるわけで、アメリカでの評価は高くないというか、一部ではむしろ酷評すらされており、Spotify での再生回数も『Donda』の1000分の1以下だ。筆者自身も古臭さを感じないわけではないが、このアルバムにはどうしても惹かれてしまっている部分があるのは否めない。“I Feel Good” のようにシンプルに鳴り響くドラム・サウンドと2MCの安定感あるラップの組み合わせは純粋に格好良いし、先行シングルともなった “A Wise Tale” の多少説教臭いような内容のリリックも、声ネタを巧みに用いた Kanye West ならではのセンスの効いたトラックによって、良い意味でポップに仕上がっている。

 Abstract Mindstate を新レーベルの第一弾アーティストとして選んだのは、単なる Kanye West の気まぐれなのかもしれないが、いまなお革新的なヒップホップ・サウンドに取り組み続けている彼のルーツを改めて再確認するという意味でも、非常に興味深い作品だ。

Marisa Anderson / William Tyler - ele-king

 ジョン・フェイヒィも影響を受けたというエリザベス・コットンを聴いて、マリサ・アンダーソンはギターにはいろんなチューニング法があることを知った。この、19世紀末生まれの黒人女性フォーク・ブルース歌手のオープンチューニングとその独特なフィンガーピッキング(左利きのコットンは親指でメロディを弾いて残りの指でベースを弾いた)による古典的名曲のひとつ、“Freight Train”でアンダーソンは練習を重ねた。ちなみにコットンの死から26年後の2013年には、アンダーソンはリスペクトを込めてコットンとのスプリット7インチ盤を出している。
 マリサ・アンダーソンの卓越したギター演奏の多くはゴスペルとブルース起源に集約されるかもしれない。が、それがすべてというわけではない。ブルース・ミュージシャンとは異なるオープンチューニングを発明したUKのデイヴィ・グレアムもまた彼女のヒーローのひとりだ。フォークからはじまった彼の音楽がやがてジャズやグローバル・ミュージック(アイルランド、アラブとインド)ともリンクしたように、1本のギター演奏によって描ける音世界はじつに広漠であることを彼女は知っている。初期作品こそブルースが色濃いものの、〈スリル・ジョッキー〉に移籍してからの2018年の『Cloud Corner』や昨年のジョン・ホワイト(ダーティ・スリーのドラマー)との共作ではもっと遠くを歩いているし、自由奔放なアンダーソンの音楽には、行ったことがないところを歩いているときに感じる景色が開けていくような感覚がある。ぼくは彼女の音楽のそんなところが好きなのだ。

 1970年サンフランシスコ生まれのマリサ・アンダーソンの生い立ちでぼくが興味深く思うのは、彼女が19歳のときに大陸横断平和行進に興味を持ったことだ。昨年の『Wire』の記事によれば、のちに彼女は、NYからスタートし、ラスベガス郊外のネバダ核実験場まで歩く行進に参加したという(いったい何ヶ月かかったのだろう)。そう考えるとアンダーソンがウィリアム・テイラー(1979年生まれ)との共作『失われた未来(Lost Futures)』における重要なインスピレーションとしてマーク・フィッシャーの名を挙げていることも充分にうなずける。
 失われた未来──フィッシャーは未来を描けず過去の郷愁に依存する現在をそのように呼んだわけだが、これは先進国全般に見られるひとつの傾向で、いわく「未来の不在は何か別のものに偽装される」。それは音楽商品に即して考えるとわかりやすい。すぐに結果が求められる新自由主義の社会では、新しいことへのチャレンジよりもかつて成功したものの模倣のほうが自然と(あるいは無意識のうちに)促される。とはいえ、欧米のインディ・シーンがそうした閉塞感を打破しようとする意欲を失っていないことは、昨今のUKの若手インディ・ロック・バンド(フォンテインズDCからブラック・ミディまで)を見ていてもわかることで、我々が住んでいる世界のことを伝えようとするマリサ・アンダーソンとウィリアム・テイラーとの共作もまたこの硬直した現在からの解放をもくろんでいるというわけだ。

 ふたりはともにギタリストで、ギター1本で自分のソロ作品の多くを作ってきた人たちではあるけれど、当たり前の話、その演奏表現においてはそれぞれの特徴がある。変則チューニングとフィンガーピッキングを活かし、よりフリーキーな演奏をするアンダーソン、アメリカーナを土台とし、ときにはアンビエントな領域にまで達するテイラー。曲のなかにおける互いの個性は、控えめながら各々の表情を出しているようだ。たとえば表題曲“失われた未来(Lost Futures)”の出だしはアンダーソンだろうし、途中から耳に入ってくるアルペジオはテイラーだろう。“生命と死者(Life And Casualty)”という曲は、美しくシンプルにはじまり、ジャズの即興演奏のように曲が崩れては戻っていく。それから、本作にはギター以外の弦楽器(シタール、ダルシマーなど)の演奏もミックスされている。ゆえに“天国についてのニュース”にはじまり、“水に憑かれて”で終わる『失われた未来』は、テーマこそ重いが、楽曲の音色は豊かで、総じてメロディックな作品になっている。メロディにはアメリカ文化の多様性があり、曲全体からは先述したように、景色が開かれていく感覚がある。それはすこぶる心地よい。

 なお、本作には、“雨に祈る(Pray For Rain)”と“水に憑かれて(Haunted By Water)”といった曲名があるが、これは昨年のポートランドにおける気候変動による山火事(煙で太陽が覆われたほど数日間にわたって延焼し、結果、ロサンジェルスと同じ面積が焼失した)が大いに関係していると察する。今年に入ってもオレゴン州では強烈な熱波と強風から来る大きな山火事が繰り返されている。本作における「失われた未来」には、環境破壊によって失われつつあるものへの言及も含まれているに違いない。

P-VINE & PRKS9 Presents The Nexxxt - ele-king

 レーベル〈Pヴァイン〉とメディア「PRKS9(パークスナイン)」がタッグを組んだ。両者の共同監修によるヒップホップのコンピレーション『The Nexxxt』が本日デジタル限定でリリースされている。タイトルどおり、ヒップホップの次世代を担うアーティストにフォーカスした内容で、〈Pヴァイン〉と「PRKS9」それぞれが選出した計9組が参加。ヒップホップの未来を担う新たな才能たちに注目だ。

P-VINEとメディアプラットフォーム、PRKS9が監修するネクストブレイカーにフォーカスしたコンピレーション『The
Nexxxt』がデジタル限定で本日リリース!

 設立45周年を迎えたレーベル〈P-VINE〉と日本のHIPHOPを中心とするメディアプラットフォーム〈PRKS9〉(パークスナイン)が監修し、お届けするネクストブレイカーなヒップホップ系アクトにフォーカスしたデジタル限定のコンピレーション『The Nexxxt』が本日リリース!
 本作は、P-VINEとPRKS9がそれぞれの視点で「これからブレイクが期待される」アーティストをセレクションした全9曲。PRKS9サイドから嚩、p°niKaとの3人組のフィメール・クルー〈Dr. Anon〉に所属しながらソロとしてもSoundCloudを中心に活動している〈e5〉(エゴ)、7月にリリースしたデビューアルバム『@neverleafout』も話題なコインランドリー生活を送る〈vo僕〉(ボーボク)、名古屋出身のDJ/プロデューサー〈329〉とのジャンルを横断するhyperなコラボ曲を提供した東京出身のラッパー〈AOTO〉(アオト)、自身の留置所体験を記録したnote等で唯一無二な表明を続け、ファーストEP「PISS」のリリースで注目を集めたスカム・ミューズ〈Yoyou〉(ヨユウ)の4組が参加。P-VINEサイドからはS名義でkillaのBLAISEらと結成したクルー〈BSTA〉でも活動し、改名後に本格的なソロ活動をスタートさせた〈STILL I DIE〉(エス・ティル・アイ・ダイ)、15歳の頃からマイクを握り始めて地元福岡は天神親富孝通りを中心に活動し、所属するクルー〈WAVEMENT〉の活動でも注目を集めている〈Evil Zuum〉(イーヴィル・ズーム)、沖縄を拠点に活動し、2021年4月に公開された"HUSTLERz RESPECT"のミュージック・ビデオがすでに26万強の再生数を記録して各所で話題となっている〈UUUU〉(ユーフォー)、MASS-HOLE関連作品への参加でも知られ、全曲NAGMATICビートのEP「M.D.A.S.T ep」のリリースも話題な信州長野の〈MIYA DA STRAIGHT〉(ミヤ・ダ・ストレート)、東京・品川区出身のクルー〈Flat Line Classics〉としても活動し、昨年ソロEP「Get Busy」も発表したオーセンティックなラッパー〈BIG FAF〉(ビッグ・ファフ)の5組が参加。また、アートワークはSATOHの各作品、AOTOの"midrunner feat. Lingna"などでも知られるShun Mayamaが手掛けている。
 多様化していく「ヒップホップ」というジャンルを体現するかのように独自の手法/価値観で音楽をクリエイトしている全9組をピックアップした本コンピレーション。もし気になるアーティスト/楽曲に出会ったなら他のリリース作品も是非ディグって欲しい。

[作品情報]
タイトル: P-VINE & PRKS9 Presents The Nexxxt
レーベル:P-VINE, Inc.
配信開始日: 2021年10月14日(木)
仕様:デジタル
Stream/Download:
https://p-vine.lnk.to/BuzCrK

[TRACKLIST]
1. e5 / KUNOICHI (Prod by KidOcean)
2. vo僕 / The Black Dog (Prod by immortal)
3. Yoyou / Newtype (Prod by Efeewma)
4. AOTOx329 / 808 landing on water (Prod by 329)
5. S TILL I DIE / weakness (Prod by EPIK BEATS)
6. Evil Zuum / Do Better (Prod by QICKDUMP)
7. UUUU / Pusherman (Prod by MRK a.k.a DJ MORIKI)
8. MIYA DA STRAIGHT / yukiyama dojo (randy young savage remix) feat. Eftra, MAC ASS TIGER, BOMB WALKER (Prod by MASS-HOLE)
9. BIG FAF / We Can Do This (Prod by Sart)

【PRKS9】
PRKS9は2020年9月に始動した、国内HIPHOPの新たなハブチャンネル。若手のMVを公募し、PRKS9チャンネルから纏めて公開するMVを広めるためのサブミッション機能を持ちつつ、リリース等のニュース記事掲載、インタビューの実施、MVを始めとした映像制作も請け負う。主要アーティストの情報をカバーすることはもちろん、まだ音源数も少ない、これから来る有望アーティストをいち早く掘り起こすことでも定評がある。

HP:https://prks9.com
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