ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Cornelius ──コーネリアスがアンビエント・アルバムをリリース、活動30周年記念ライヴも
  2. interview with Larry Heard 社会にはつねに問題がある、だから私は音楽に美を吹き込む | ラリー・ハード、来日直前インタヴュー
  3. Ryuichi Sakamoto | Opus -
  4. まだ名前のない、日本のポスト・クラウド・ラップの現在地 -
  5. Li Yilei - NONAGE / 垂髫 | リー・イーレイ
  6. Larry Heard ——シカゴ・ディープ・ハウスの伝説、ラリー・ハード13年ぶりに来日
  7. interview with Lias Saoudi(Fat White Family) ロックンロールにもはや文化的な生命力はない。中流階級のガキが繰り広げる仮装大会だ。 | リアス・サウディ(ファット・ホワイト・ファミリー)、インタヴュー
  8. interview with Martin Terefe (London Brew) 『ビッチェズ・ブリュー』50周年を祝福するセッション | シャバカ・ハッチングス、ヌバイア・ガルシアら12名による白熱の再解釈
  9. The Jesus And Mary Chain - Glasgow Eyes | ジーザス・アンド・メリー・チェイン
  10. interview with Shabaka シャバカ・ハッチングス、フルートと尺八に活路を開く
  11. Free Soul ──コンピ・シリーズ30周年を記念し30種類のTシャツが発売
  12. Overmono ——UKダンス・シーンの真打ち、オーヴァーモノがついにデビュー・アルバムをリリース
  13. Columns 4月のジャズ Jazz in April 2024
  14. interview with Julia_Holter 私は人間を信じているし、様々な音楽に耳を傾ける潜在能力を持っていると信じている  | ジュリア・ホルター、インタヴュー
  15. Beyoncé - Cowboy Carter | ビヨンセ
  16. 壊れかけのテープレコーダーズ - 楽園から遠く離れて | HALF-BROKEN TAPERECORDS
  17. ソルトバーン -
  18. interview with Keiji Haino 灰野敬二 インタヴュー抜粋シリーズ 第2回
  19. interview with Mount Kimbie ロック・バンドになったマウント・キンビーが踏み出す新たな一歩
  20. tofubeats ──ハウスに振り切ったEP「NOBODY」がリリース

Home >  Reviews >  Live Reviews > HYPERDUB EPISODE 1- featuring KODE9 | KING MIDAS SOU…

HYPERDUB EPISODE 1

HYPERDUB EPISODE 1

featuring KODE9 | KING MIDAS SOUND | DVA | HYPE WILLIAMS(Dean Blunt and Inga Copeland)

@代官山UNIT

2012 Jun 8

野田 努   Jun 11,2012 UP
E王

 会場に到着したのは11時半。ハイプ・ウィリアムスは12時からはじまるという。クラブの入口やロビーでは、素晴らしいことに、ビートインクのスタッフが自主的に風営法改訂の署名活動をしている(自筆でないと効力がないことをまだ知らない人も多いので、郵送が面倒なら、こういう場で署名するのが良いですよ)。入口でくばっていた先着数百名枚のプレゼントCDも合っという間になくなったほど客足は早い! 僕の予想では、やはり、ファンはハイプ・ウィリアムスがどんなものなのか見たかったのだろう。

 12時になってライヴ・ステージの扉が開くと、ほんの10分ほどでフロアは埋まった。すでに妖しいテクノ・ループがこだましている。ステージには異常なほどスモークがたかれ、前後不覚でメンバーの姿は見えない。白い煙のなかを強烈なライトが四方から点滅する。ループは重なり、途中で声がミックスされる。男女の声だから連中がマイクを握っているのだろうか......。いつの間にかライヴがはじまっていた(会場には三毛猫ホームレスのモチロン君もいましたね)。
 ハンパじゃない量のスモークと網膜を容赦なく攻撃するライトのなか、ただ呆然と立ち尽くしているオーディエンスに向けて、脳を揺さぶるようなループ、そしてナレーション、そして歌、そして身体を震わせる超低音、後半からけたたましくなりはじめるドラミング。
 かれこれ何十年もライヴを見てきているけれど、今回のハイプ・ウィリアムスほどすさまじい「トリップ・サウンド」を経験したことは記憶にない。強いて近いニュアンスのライヴを言うならヘア・スタイリスティックスだろうか......、が、しかし、ハイプ・ウィリアムスは異次元からぶっ飛んできたように、あまりにもドラッギーで、言葉が出ないほど陶酔的なのである。ラジカルなまでにドリーミーなのだ。サイケデリックなのだ。誰もその場から離れなかった、離れられなかった......。
 しかし......もし、ライヴ開始から40分後ぐらいに、まったくなーんにも知らずに、このトリップ・ミュージックが響くど真んなかに入ってきてしまったら、そうとうショックを受けるだろう。ここはどこ? 何が起きたの? みんなおかしくなってしまったの? ......そう、みんなおかしくなってしまった。
 この壮絶なライヴで僕は充分だった。この続きは竹内正太郎のレポートに譲ろう。

野田 努