ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Isayahh Wuddha - urban brew (review)
  2. Devils Of Moko - One (review)
  3. DJ HOLIDAY aka 今里 ──最高にクールな初期レゲエのミックスCDをリリース (news)
  4. interview with Trickfinger (John Frusciante) ジョン・フルシアンテ、テクノを語りまくる (interviews)
  5. Piezo - Perdu (review)
  6. Chari Chari - We hear the last decades dreaming (review)
  7. Arca - KiCk i (review)
  8. Jun Togawa──戸川純がまさかのユーチューバーになった! (news)
  9. Columns Yves Tumor いま話題のアーティスト、イヴ・トゥモアとは何者か? (columns)
  10. DJ HOLIDAY ──SFPの今里が送るラヴァーズ・ロックやレゲエやダブの数々 (news)
  11. Hiroshi Yoshimura ──入手困難だった吉村弘の1986年作『Green』がリイシュー (news)
  12. 校了しました ──『別冊ele-king ブラック・パワーに捧ぐ』&『ゲーム音楽ディスクガイド2』 (news)
  13. ISSUGI ──最新作『GEMZ』より新たなMVが公開 (news)
  14. 今里(SFP) (chart)
  15. Dominic J Marshall - Nomad’s Land (review)
  16. interview with AbuQadim Haqq 語り継がれるドレクシア物語 (interviews)
  17. STONE ISLAND ──人気のイタリア・ブランド〈ストーンアイランド〉が音楽シーンに参入 (news)
  18. Oscar Jerome ──オスカー・ジェローム、UKジャズ・シーン気鋭のギタリストがデビュー・アルバムを完成 (news)
  19. The Beneficiaries - The Crystal City Is Alive (review)
  20. Julianna Barwick - Healing Is A Miracle (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Natalie Slade- Control

Natalie Slade

Broken BeatNeo SoulR&B

Natalie Slade

Control

Eglo/Pヴァイン

Amazon

小川充   Jul 28,2020 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 フローティング・ポインツやヘンリー・ウーなどエレクトロニックなダンス・サウンドをリリースする一方で、ファティマのようなオーガニック・ソウルもリリースする〈イーグロ〉。今度〈イーグロ〉から新たに登場したナタリー・スレイドは、そのファティマの路線を引き継ぐようなシンガー・ソングライターである。彼女はオーストラリアのシドニー出身で、ヒップホップ系のプロデューサーであるレイ・ライアンと一緒にフランコというユニットを組んでいる。いわゆるヒップホップ・ソウル、エレクトロ・ソウルをやっていて、昨年は〈ロウ・キー・ソース〉というレーベルからEPリリースしている。そのほかスティーヴ・スペイセックが〈イーグロ〉からリリースした『ナチュラル・サイ・ファイ』(2018年)にも参加していて、そうした縁で今回のソロ・デビュー・アルバム『コントロール』のリリースに繋がったようだ。

 アルバム・プロデュースはハイエイタス・カイヨーテ(編注:コーネリアスのリミキサーとしても知られる)のキーボード奏者のサイモン・マーヴィンが手掛けていて、その同僚であるベーシストのポール・ベンダーも楽曲によって参加している。ハイエイタス・カイヨーテ自体はここのところずっと作品のリリースがないが、昨年サイモンとポールはセオ・パリッシュと共演して12インチを出したほか、その12インチでも一緒にやっていたマルチ・プレイヤーのサイレントジェイの作品にも参加して、それがジャイルス・ピーターソンによるオーストラリアのアーティストを集めたコンピ『サニー・サイド・アップ』に収録されるなど、ほかでの活動もいろいろやっている。サイモンやポールにとって『コントロール』は、そうした課外活動の一環と言えるだろう。
 ハイエイタス・カイヨーテのネイ・パームとナタリー・スレイドを比較すると、オペラ調のエキセントリックな歌も披露するネイに対して、ナタリーはよりストレートなソウル・シンガーとしての資質を持っていて、“ヒューミディティ”のようなしっとりと落ち着いた歌声が魅力となっている。サイモンのプロダクションはそうしたナタリーの歌の魅力を引き出すもので、様々な音楽性が結びついたハイエイタス・カイヨーテでのプロダクションのなかでもソウル寄りに振ったものとなっている。

 とは言ってもいろいろなタイプのトラックが並び、ヴァリエーションの豊かさを感じさせる点はさすがだ。たとえばギミ・ヤ・ラヴ”はドラムンベース調のリズムで、“コントロール”はヴードゥー調のアフリカン・リズムにブロークンビーツを混ぜたようなもの。そして“クラウド・カヴァー”をはじめ、オーガニックなサウンドとエレクトリックなサウンドを巧みに融合したプロダクションが敷かれ、そのあたりはファティマやスティーヴ・スペイセックの作品にも共通する〈イーグロ〉のカラーと言える。“ラヴ・ライト”はポール・ベンダーの方がメイン・プロデューサーとなった楽曲で、ネオ・ソウルとジャズの結びつきはハイエイタス・カイヨーテの世界を受け継ぐもの。フォーキー・ソウルとでも言うべき“レター・トゥ・マイセルフ”は、アコースティックな質感の強いポールの演奏も聴きどころだ。

 そして、やはりナタリーの歌声は非常に魅力的だ。“アイ・ウォント・クライ”はソウル・シンガーの歌い方に沿いつつ、ところどころでジャズ・シンガー的なスキャットも織り交ぜている。ジャズ・ファンクとソウルの中間的な“カラー”ではディープなフィーリングを見事に発散している。
 一方、同じディープさに彩られた“ゼア・イズ・ライト・イン・エヴリシング”では、幻想的でスピリチュアルなムードを表現する歌声を聴かせる。この曲ではサイモンの演奏するピアノも楽曲の美しさにピッタリとマッチしている。アフター・アワーズ調の“サンデー・モーニング”は、往年のロイ・エアーズや彼が手掛けたランプを彷彿とさせるメロウ・ソウル。かつてロイ・エアーズが見出したシルヴィア・ストリップリンのような存在、そんな可能性を秘めたシンガーがナタリー・スレイドだ。

小川充