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田我流

Hip Hop

田我流

Ride On Time

Mary Joy

Tower HMV Amazon iTunes

大前至   May 08,2019 UP

 stillichimiya の一員としても活躍する田我流のソロとしては実に7年ぶりとなる待望のサード・アルバム。前作『B級映画のように2』リリース以降も、バンド・プロジェクトである“田我流とカイザーソゼ”名義でのアルバム・リリースや、ヒップホップを中心とした数々のアーティストやプロデューサーの作品にゲスト出演を果たしたり、さらにライヴ活動も精力的に続けてきたことで、この7年間の彼に対する評価は常に上昇を続けている。その彼の魅力はリリックから滲み出てくる等身大の人間臭さや、その裏にあるユーモアの部分だけではない。常に真っ直ぐ芯を通しながらも、時にはやんちゃに振る舞ったかと思えば、しっかりと男としての色気すらも漂わせる。声の良さやラッパーとしての存在感の強さはもちろんのこと、ヒップホップとしての新しさもあれば、どこかオールドスクールなフレイヴァも匂わせ、山梨県を拠点に活動していることも、彼にとってはハンデどころか大きなプラスになっている。日本人ラッパーとして、これほどまでに全方位的な要素を備えている人物は他に見当たらず、本作『Ride On Time』は、そんな田我流の魅力が十二分に詰まった傑作だ。

 今回のアルバムでまず特筆すべきは、“Falcon a.k.a. Never Ending One Loop”名義で田我流自身が実質的にメイン・プロデューサーを務めているところだろう。これまで Falcon としてはビートCDや僅かなプロデュース作を発表してきただけであったが、本作ではその自らのサウンドによって見事にアルバム全体のカラーを作り上げている。さらに田我流にとっても代表曲である“ゆれる”を手がけた EVISBEATS を筆頭に、DJ UPPERCUT、Automatic (ゆるふわギャング)、VaVa、KM、ジュークのビートメイカーである Ace-up といった、実に幅広いメンツをプロデューサーとして揃え、この鉄壁な布陣によって作品として強度はさらに増している。これらの色彩豊かなサウンドに対して、田我流自身のラップも実にバラエティ豊かなスタイルを繰り広げており、“Vaporwave”のように敢えて今っぽいスタイルを取り入れたり、あるいは“Cola”のように歌を披露してみたり、自らの新しい引き出しを次々と広げている。もちろん、同時にタイトル曲“Ride On Time”や盟友、EVISBEATS との“Changes”のような彼自身の王道とも言えるスタイルも健在だ。

 フィーチャリングに関しては C.O.S.A. (“Wave”)とシンガーの NTsKi (“Anywhere”)とふたりのみであるが、いずれもゲストのカラーもしっかり反映された見事な出来で、さらにスキット“Small Talk From KB”での KILLER-BONG の存在感も絶妙なアクセントになっている。他にもイントロ明けの田我流節が全開な“Hustle”での鮮やかな疾走感であったり、ファースト・アルバム『作品集 JUST』からの続編である“Back In The Day 2”でのネタ使いも含めた良い意味でのイナタさや、素直に苦悩をリリックに綴った“Deep Soul”など、全ての曲が聞きどころと言えるほど、隙間なくアルバム全体に魅力が溢れている。頭から最後まで、じっくりと何度も何度も噛み締めてほしい作品だ。

大前至