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interview with Grimes

interview with Grimes

宅録女子からの一撃!

――グライムス、ロング・インタヴュー

橋元優歩    通訳:伴野由里子   Jun 06,2012 UP

私はハードコアのノイジーなシーンにずっといたわけで、そこではポップ・ミュージックをやるほうが過激だと思われていた。だからグライムスとしてダークなモチーフを持ち続けることで、そっちのコミュニティにも支持されたいという思いもある。

パンダベアからの影響を語っておられますが、彼の音楽には明るさと暗さのどちらを感じますか? また彼の音楽を現実逃避的とする意見をどう思われますか?

クレア:私がパンダベアをはじめアニマル・コレクティヴの音楽に惹かれる理由は、もの凄くメランコリックでありながら昂揚感もあるというところで、私の音楽にもそういう部分がたくさんあると思うの。ものすごくダークで韻鬱だったかと思うと、ものすごく恍惚として、そのふたつが共存している。アニマル・コレクティヴのそういう部分にいつも惹かれていたの。明るいだけでも暗いだけでもなく、その両方が凝縮されていて、生々しく感情に訴えてくる。
 パンダベアからは技術的な部分でもすごく影響を受けているわ。彼が使うテクニックを私もよく使う。音楽を作り始めた頃、アニマル・コレクティヴとパンダベアに完全にのめり込んでいたから。彼らのループの使い方とか、彼らの機材の使い方とか。自分もアニマル・コレクティヴと同じ機材を使って音楽の作り方のノウハウを覚えていったの。

あなた自身が「ゴス・ポップ」と発言されていたこともありますが、〈4AD〉からリリースされてどのように感じますか? 〈4AD〉の音楽にはむかしからシンパシーがあったのですか?

クレア:〈4AD〉は昔から好きなレーベルだったわ。今回契約したのも何かすごくしっくりきたから。彼らはメジャーじゃないからインディならではの創作の自由があるし、でも彼らの場合はインディーでも大きな組織があるから、より多くの人に自分の音楽を届けることができる。たとえば注目されたアーティストが出てきても、〈ベガーズ〉傘下ということで、膨大な注文にも対応ができる。小さなレーベルでは対応し切れない。〈アルブツス〉から〈4AD〉に今回移った最大の理由がそれ。
 〈アルブツス〉ではすべてのメール注文に対して手作業ですべて対応していた。手書きで購入者の住所を書いて、CDを入れて、郵便局に持っていって発送する、という。それでは手に負えなくなってしまって、より大きなレーベルが必要だったの。で、実際彼らは私の自由にやらせてくれるし、レーベルの歴史も素晴らしい。過去の名作もそうだけど、見事に再生を果たしたのも素晴らしいと思う。新しい〈4AD〉はピュリティ・リングやグライムスもいて正にいまの音楽を発信していて、長い歴史ありながら先進的なレーベルであり続けるのはすごくカッコいいと思う。

モントリオールの音楽シーンについて教えてください。いちばん盛んなのはエレクトロニック・ミュージックですか? また、あなたのようにアートとクロスするようなパフォーマーや、ひとりで個性的な表現を追求するアーティストはたくさんいるのでか?

クレア:モントリオールはすごくエレクトロニック・ミュージックが盛んで、パフォーマンスを売りにしているアーティストもすごく多いわ。斬新で先進的なものはロフト・シーンから出てきているわ。敷居やジャンル分けのないライヴで、だいたい真夜中過ぎに始まって、みんな酔っぱらって、ものすごく盛り上がるの。みんな人と違うことをやるんだけど、不思議なことにすごくポップでもあるの。エレクトロニック・ミュージックだったりダンス・ミュージックももちろん盛んなんだけど、ノイズ・ミュージックの伝統もあって、その両者を組み合わせる人が多いわ。グライムスもそう。つねに新しい音色を追求するし、私に音楽を教えてくれたミュージシャンたちもみんな自分でエフェクターを作ったり、電気回路を歪めたり、楽器を発明したりしていたわ。だからポップ・ミュージックなんだけど、他の要素と融合させて実験的でもあるの。

社会生活のなかでグレたり不良になったりしたことはないのですか? ご自分のことは優等生と不良ではどちらだと思いますか。

クレア:優等生では絶対にないわね。高校2、3年と大学1、2年はちゃんと勉強して成績も良かったんだけど、その前までは成績も悪かったし素行も悪かったわ。いつも親に反抗していて、家を追い出されてたわ。でも大学に行きたいと思ってそこから持ち直したの。で、大学に無事入って、2年くらい真面目に勉強したんだけど......。
 なんか、自分が好きじゃないことをやらなきゃいけないのが無理なのよね。音楽をはじめてからも、成功する前の2年くらい、好きじゃない仕事をするくらいなら、空腹や寒さにも耐えるほうがましだって思っていた。信念のためだったら、快適な生活を犠牲にしてもいいと思うの。9時5時の仕事をするくらいなら暖房費が払えなくて凍えたほうがましだって思うの。学校も同じで、途中から私の創造性を掻き立てるものが何もないと感じたし、特に共感できる人も大学にはいなかった。学校に行けることはぜいたくだし、素晴らしいことだと思うんだけど、そこまでありがたさを感じることができなかった。いつかまた戻りたいとは思うけど、100%確信した時じゃないと駄目だと思っているわ。

音源をカセットテープでリリースするのはなぜですか?

クレア:昔はそれがいちばん安かったからよ。最近でも続けているのは、カセットテープというフォーマットが気に入っているから。ほら、簡単に飛ばしたりとかできないでしょ。最近はみんな落ち着きのない音楽の聴き方をするから曲が埋もれてしまいやすい。聴いて15秒でピンと来なかっ聴き続けないといけない。そこがいいの。

ディオンとのEPをリリースしている〈ヒッポス・イン・タンクス〉はあなたにとってどのようなレーベルですか?

クレア: 〈ヒッポス・イン・タンクス〉は大好きよ。いまいちばん好きなバンドのゲートキーパーも〈ヒッポス・イン・タンクス〉に所属しているわ。ディオンは数年前に彼らと契約したんだと思うけど、彼はすごく仲のいい友だちで、昔からずっと一緒にテープを出そうって話してたの。カナダだとDIY的に2組のアーティストが片面ずつ担当してスプリット・テープを作って出すってよくあるのよね。で、彼とは私がまともに音楽を作るようになる前からいつか一緒にやろうって話をしてたの。で、彼と「じゃあ、やろうっか」ってことになって、〈ヒッポス・イン・タンクス〉が「ぜひリリースしたい」って言ってくれて、気付いたら予算とか組まれていて、すっかり大事になっていたの。冗談かと最初思ったわ(笑)。

バンドやグループを結成してアルバム制作をしたいとは思いますか?

クレア:いいえ。

ずっとひとりでやっていこうと思っている?

クレア:ええ、そうよ。

次のアルバムについて考えておられるイメージがあれば教えてください。

クレア:いまもうレコーディングしているところよ

今作『ヴィジョンズ』とはまったく違うものですか。

クレア:違うけど、似てる部分もある。ポップ色はきちんと残したいと思っているわ。グライムスは私にとってポップ・プロジェクトだからこれからもポップ・ミュージックを作っていくつもりよ。よりハイ・ファイなものにしたいと思っているの。プロダクションをしっかりしたものにしたい。新しいヴォーカル・インターフェイスを入手したばかりだから、超クリアで手前にヴォーカルを持ってきたいと思っている。オーヴァーダブを減らして、ストレートなヴォーカルを前面に持ってくるイメージよ。そして凄くミニマルなもの。インダストリアル・ミュージックにいますごくハマっているの。だから、ヘヴィなドラムスとヴォーカルを中心としたものを考えているわ。

※6月29日発売予定の『ele-king vol.6』は宅録女子特集!

エレクトロニック・レディランド~テクノ女性上位時代~
グライムスが表紙を飾ります! ジュリアナ・バーウィックにローレル・ヘイロー、マリア・ミネルヴァ、スリープ∞オーヴァーなどなど気鋭の女子インタヴューをヴォリューミーに盛り込み、喪女音楽を模索する対談、女子と音楽をめぐるコラム、関連ディスク・ガイドなどなど、インディ・シーンの先端を走る女性たちの姿を浮き彫りにする、エレクトロニック・ミュージック・ファン~インディ・ロック・ファン必携の内容!!

取材:橋元優歩(2012年6月06日)

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