「Nothing」と一致するもの

Twin Sister - ele-king

 これはもう......チルウェイヴというよりもステレオラブである。クラウス・ディンガーのドラミングをさらにライトにして、コクトー・ツインズめいたギターが煌めいているなか、女は息を吹きかけるように歌っている。1曲目の"ジ・アザー・サイド・オブ・ユア・フェイス"はクラウトロックのドリーム・ポップ・ヴァージョンだ。お洒落だが、イージーではない。そして2曲目の"レディ・デイドリーム"を聴きながら、昼の1時になると缶ビールを手にしてしまう自分がいる、というわけだ。この猛暑を楽しむには、このぐらいのことをしなければ......。まるでこんな気持ちを先回りするように、"レディ・デイドリーム"は涼しい水の音で終わっていく。ロング・アイランド出身のブルックリンの4人組はなかなかツボをわかっている。
 "ミルク&ハニー"はどう聴いてもビョークからの影響だ......が、曲の展開にはステレオラブ的な軽快さがあり、音は窓の外の眩しい光に溶け込んで、聴き惚れているうちに思わず冷蔵庫に手が伸びてしまう。いかんいかん。大人のソーダ水だからといってもほどほどにしないとな......。
 問題は"オール・アラウンド・アンド・アウェイ・ウィ・ゴー"だ。これをチルウェイヴと呼ばず何と言おうか。この曲はディスコビートに乗ったフレンチ・ポップであり、キラキラとしたキッチュな夢想である。続く"ギャラクシー・プラトー"は、バンドの音楽的野心を示すドローン/アンビエントの曲で、1970年代初頭のクラスターに接近する。最後の曲"フェノメノンズ"もまたチルウェイヴィな曲だが、洗練されていて、このバンドの底力を感じる......そしてその前に、大人のサイダーをもう1本手にしている自分がいる、というわけだ。無理もない。この素晴らしい天気になんともドリーミーな音楽、そして夏のあいだ自分はひとりだ。
 ツイン・シスターに限らず、おおよそUSインディ・シーンは夢から醒めようとしない。キャンディ・クロウズのアルバムには早くもポスト・アニマル・コレクティヴの予兆を感じる。まどろみのなかで新しい場面が着々と用意されているようである。
 
 ツイン・シスターのこれはまだミニ・アルバムだ。ウォッシュト・アウトと同様に、というか、その他多くのUSインディと同様に、ヴァイナルが先行発売されて、デジタルはパスワードでダウンロードするという仕組みだ。この形態は、この1~2年でゆっくりだがUSインディ・シーンで拡大している(日本では誰が、どこがそれを先にやるのだろう)。
 アルバムのなかにはインサートが1枚あるが、そこには家のなかのカラフルな部屋の写真がいくつかデザインされている。そのあたりの感覚は、僕にとって今年のベストな1枚、ビーチ・ハウスの3枚目とも近いと言えば近いのかもしれない、が、ツイン・シスターのほうがポップでファッショナブルである。より多くの人間がアプローチできるのはこちらのほうかもしれない。ヴァンパイア・ウィークエンドは数年後に中古屋に出回るだろうけれど、ツイン・シスターは......、まあ、微妙なラインだろう。逆に言えばそれだけポップということで、そしてこの手のベッドルーム・ポップは今後もっとたくさん出てくるのだろう。

[Techno] #5 by Metal - ele-king

1. El Rakkas / Extreamely Cheap & Effective Ep | Dub Square (UK)


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 エル・ラッカスは、オーストリアの第二の都市ガーツよりエレクトロニカ、ダブステップをもとにリリースを重ねているアーティストです。先ごろではUS西海岸の〈ロー・ダブス〉からリリースした「Sence Of Disease」でも、レゲエやハウスとミックス可能なダブステップを展開していました。音もきれいで使いやすい曲です。
 〈ダブ・スクエア〉はオーストリアのヴィエンナを拠点にネット・ラジオを母体に活動するレーベルで、DJ IZCと女性アーティストであるCA.TTER等が中心になり、デトロイト・テクノから影響された一捻りあるエレクトロやダブステップをリリースしています。今回届いたシングルはエレクトロニカ、もしくはテクノ側からのアプローチのトラックで、極限までそぎ落とされたミニマル・ハウスを下敷きに、キックを裏打ちにし、リズムに変化をつけたトラックです。ポスト・ミニマルと同時にポスト・ダブステップのひとつの方向を提示したシャックルトンの「3EPS」、あるいは2562のアルバムで知られる〈マルチヴァース〉からミニマル・テクノをリリースするオクトーバーの作品にも通じるアイデアがあり、本当に最小限の音でリズムの揺らぎを追求した曲です。リミックスはカールステン・ニコライ率いる〈ラスター・ノートン〉や、ノルウェーから変態的なディスコのリリースで知られる〈セックス・タグ・マニア〉等、エレクトロニカのフィールドからエクスペリメンタルなトラックを発表しているF・ポマッスルが手がけ、低音が強調され力強い倍音が広がる音響的なダブ・ヴァージョンはどくどくと波打つような独特の響きを持っています。サイン波で作られた冷たいハットもアクセントになり、とても緊張感があるトラックに仕上がっています。ミニマルで言えば、インクセックやジェイ・ヘイズの〈コンテクステラー〉からのシングルに近い雰囲気です。DJをしていると前後の曲のバランス感が気になります。テクノに比べダブステップには音圧が高く、低音が強い曲が多いので選盤には注意が必要です。このシングルは線は細く音楽的な深みには欠けているものの、ミニマル・ハウスの側から音圧やバランスを変えずにリズムに変化をつけることができます。ミニマルのDJでダブステップに興味がある人はこの辺のレコードをセットの中に組み込んでみてはいかがでしょうか。ミニマルとダブステップのあいだを「キープ」しながら繋ぐことができる貴重なDJツールです。

2. Oriol / Coconut Coast | Planet Mu (UK)


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 これはいままでになかった新しい組み合わせの音楽です。ダヴステップやエレクトロを通過した新しい感覚のディスコです。スペインのバルセロナ出身のオリオールはロンドンのブロークン・ビーツのシーンより頭角を現し、いまでは売れっ子プロデューサーとして活躍するフローティング・ポインツに見初められた逸材で、ミュー・ジックを筆頭にUKエレクトロニカの礎を築いた〈プラネット・ミュー〉が期待をこめて送り出した新人でもあります。ガラージとエレクトロニカ、ダブステップをベースに、70'sのソウルやディスコ、フュージョンからのメロディーを取り入れ、わかりやすく現在の音に消化しています。コズミックで美しく広がるシンセはブリストル産のダブステップのような寂しげで内向的なメランコリーではなく、UKのものには珍しくポップで明るい和やかなメロディを奏でています。例えるならイアン・オブライエン+フェイズ・アクション+フォーテットと言ったところでしょうか。ヴォーカル・プロダクションも90'SのUSディープ・ハウスを彷彿させるハイレヴェルな出来です。リミキサーには〈ランプ・レコーディング〉や〈ラッシュ・アワー〉からグライムやダブステップをリリースするファルシィ・DL、〈プラネット・ミュー〉のオーナーでもあるミュー・ジックことマイク・パラディナスの変名プロジェクトであるジェイク・スラセンジャー、〈パンチ・ドランク〉からのリリースでも知られ相棒のブラックレスと共に〈ブランテッド・ロボッツ〉を運営するショート・スタッフが起用され、幅広いリスナーに向けられたシングルです。
 なかでもジェイク・スラセンジャーのリミックスは秀逸で、原曲の良さを素直に拡大しバレアリックで壮大なシンセが軽やかなビートとともに宙を舞うとても美しい曲に仕上がっています。ミュー・ジックを含めた彼のキャリアのなかでも屈指の名曲と言えるのではないでしょうか。ダブステップを契機としたUKアンダーグランドの掘り起こし作業のなかから面白い動きが起こりつつあります。いまのフロアの状況だから言えるのかもしれませんが、テクノは4つ打ちのキックとハウスフィーリングの快楽性に甘えすぎていたようです。ジ・オーブやブラック・ドックなど90'sのテクノは様々なアイデアにあふれていました。イーブンキックから失われた開放感的をとりもどすためには、異なるリズムの組み合わせとタメが必要なのです。ミニマルのバランス感覚を捨て去れば新しいものが見えてくるかもしれません。

3. D Bridge / Zx81 Remixies | Fat City (UK)


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 アンダーグランドのヒップホップを中心に独自のセレクトで知られるマンチェスターのレコードショップ兼ディストリビューターである〈ファット・シティ〉からリリースされたコンピレーション「Produsers No.2」からカットされた限定のリミックス盤です。原曲はポスト・ダブステップ/ドラムンベースをリードするロンドンのD・ブリッジによるもので、エフェクトがかかったアコーディオンが中毒的に響く、ファットで味わい深い低速のブロークン・ビーツで7インチのシングルでカットされていたものです。
 D・ブリッジはUKソウル/R&Bのプロデューサーであるスティーブ・スペイセックの実弟で自ら〈イグジット・レコーディング〉を主宰し、ヒップ・ホップからダブステップまで幅広くUKアンダーグラウンドの音楽を紹介しています。先日リリースされた〈ファブリック〉からのミックスCDでもダブステップとドラムンベースを見事にミックスしロンドンのいまをしっかりと伝えていました。今回のリミックス盤ではモーリッツとともに〈ハード・ワックス〉のマスタリング・エンジニアとしてベルリンから素晴らしいダブ・プレートを送り出すシェドと、〈ヘッスル・オーディオ〉を主宰し〈AUS〉や〈アップル・パイプス〉などからUKガラージ、ダブステップ、さらにはミニマル・ハウスまでリリースするラマダンマンが起用され、それぞれ趣の違ったリミックスを聞かせています。シェドのリミックスは、原曲とほぼ同じ音を加工し、もっさりしたキックに地を這うように力強いサブベースとシャリっとしたハットのシンプルなテクノを主体に、中域で継続して響くのアナログノイズとデトロイティッシュなシンセの和音が絡み合う、ダブと言うよりもドローンに近い壮大な音饗世界を創りあげています。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインをカール・クレイグがリミックスしたらこんな感じになるのかもしれません。とにかく一服せずとも地底に引きずり込まれるような、ベルリンのミニマルの魅力を充分に伝えるずば抜けた音響のトラックに仕上がっています。
 いっぽうラマダンマンのリミックスは、原曲を倍速にし、UKファンキーをベースにジャスティン・マーチンやスウィッチのようなフィジェット・ハウスをかけ合わせた面白いグルーヴのトラックです。リズムはファンキーな曲ですがロスカのような軽さではなく、使っている音色のせいかクールな面持ちです。DJのミックスに上手くはまればいいアクセントになりそうな曲ですが、冒頭のグルーヴが取りづらいのでDJとしては腕が試されるレコードかもしれません。それにしても両面ともに素晴らしいマスタリングが施された12インチです。限定盤なのでお早めに。

Chart by TRASMUNDO - ele-king

Shop Chart


1

やけのはら『THIS NIGHT IS STILL YOUNG』

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2

UG KAWANAMI『SK8 ROCK』

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3

S.L.A.C.K.『Swes Swes Cheap』

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4

UG KAWANAMI『SK8 ROCK』

PIT GOb×DJ MUNARI 『REBORN』 »COMMENT GET MUSIC

5

LUVRAW&BTB『ヨコハマ・シティ・ブリーズ』

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6

『ZOOTED CENTRAL PARK』

TONOSAPIENS(CIAZOO) 『ZOOTED CENTRAL PARK』 »COMMENT GET MUSIC

7

KRBT『gumblar shock vol.1』

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8

COMPUMA『-SLOWDOWN IN YOUR SIDE-DISCONSOLATE SUMMER』

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9

『7TRAX』

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10

WATTER(SBB)

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Candy Claws - ele-king

 喜多郎も住んでいる米コロラド州から若き8人組による2作目(かな?)。アルバム・スリーヴからも推測できるように最初から最後までロジャー&ハマースタインを思わせる50年代風シネマ・ミュージックで貫徹され、どこをとっても甘ったるいことこの上ない。エールのようなそこはかとない厭世観もなく、エレクトロニクスを控えめにしたジェントル・ピープルの生演奏ヴァージョンとでも(マイ・スペースのリストにはアイザック・アシモフにカール・セーガン、ボブ・トンプスンにブライアン・ウイルスンの名前も散見)。

 とにかく100%夢見心地。そうとしかいえない。リチャード・M・ケッチャムの絵本か何かをイメージしたものだそうで、「知られざる暮らし」を表現しようとしたものだという。おそらくはこんな場所や生活があればいいなあとか......そういうことで、アメリカの現状からすれば逃避以外のものでもない。ただし、完成度は高いので音楽的には逃げ切っているといえる。別名義ではパンクなどもやっているらしいので(ケイヴ・ウーマン、ファイアー・ブリーサー、グレート・ルーム・ヴィクトリアン、サワー・ボーイ・ビターガールなど)、これだけを聴いて呆れた若者たちだということも適わないというか。

 考えてみれば、ゼロ年代は、対テロ戦争に監視社会、移民の暴動に大恐慌や大量失業と続いた最悪の10年だったので、反対にこれだけ桃源郷に対する思いが強く出てくることは自然だし、最悪を描写することだけがポップ・ミュージックではないともいえる(そのような気持ち=向上心があることを「動物化」に対する「人間」といい、それを食い物にしているのが江原とか勝間とか)。それこそ「シャングリ-ラ」というのもそうやって1933年にジェイムズ・ヒルトンが創作した概念で、世界大戦から逃れたくて生み出されたものだったわけだし。いまとなっては、♪夢でキス、キス、キス~とかになってますけれどー。

 ヴァン・ダイク・パークスやウォール・オブ・サウンドなど細野晴臣が参照し続けたサウンドをベース3割り増しで再現しつつ、ノスタリジック一辺倒にならない手際も実にお見事。甘ったるい音の処理はケヴィン・シールズがア・クワイエット・リボルーションのプロデュースを手掛けたパターンを思い出す。『裏』ではなく、『アンビエント・ミュージック 1969-2009』に2010年の項を追加するとしたら、間違いなくこのアルバムがエントリーです。

Essential Logic - ele-king

 ザ・スリッツザ・レインコーツのオリジナル・メンバーだったパロマ・ロメロは真摯なキリスト教徒になり、そしてエックス・レイ・スペックスとエッセンシャル・ロジックのオリジナル・メンバーだったローラ・ロジックの名前で知られるスーザン・ウィットピーはハレ・クリシュナに入信した。ともに80年代に生まれ変わっている。こうした事実からなにかを導き出したい......というわけではない。アリ・アップはジャマイカに移住し、テッサ・ポリットはヘロイン中毒者になり克服した。『ザ・フラワーズ・オブ・ロマンス』のジャケに写ったジャネット・リーはおよそ10年後にザ・ストロークスを見出した。当たり前の話だが、彼女たちにもいろいろあったのだ。

 ジョン・ライドンがザ・レインコーツと並んでパンクを別次元に押し上げた功績者として評価したのが、エックス・レイ・スペックスである。ソマリア系移民の娘であるポリー・スタイリーンが率いたそのパワフルなパンク・バンドのサックス奏者となったローラ・ロジックは、しかし早々とバンドを抜けると、ザ・ストラングラーズの『ブラック・アンド・ホワイト』に参加して得た金を持って、1978年、自分のバンド、エッセンシャル・ロジックのデビュー・シングル「アエロソル・バーンズ」を録音する。バンドはその翌年には〈ラフ・トレード〉からデビュー・アルバム『ビート・リズム・ニュース』をリリースしているが、同じ時期にロジックはザ・レインコーツのデビュー・アルバム、あるいはレッド・クレイオラでもサックスを吹いている。

 エッセンシャル・ロジックは典型的な――という形容はその理念からして矛盾しているが――ポスト・パンク・バンドで、そのことは高名な批評家グリール・マーカスをして「これ以上ないほど完璧」と言われたローラ・ロジックという名前からもうかがえる。パンクの「理屈じゃないんだ」という姿勢に対して彼女ははっきりと自らの名前で「理屈(ロジック)だ」と主張したのだから。そういう意味ではジョン・ラインドンが示唆したように、パンクをパンクという"型"にはめなかった彼女たちのほうがパンクだったと言える。そして"型"にはまらなかったからこそ、彼女たちは短命に終わったのだ。エッセンシャル・ロジックも1枚のアルバムと数枚のシングル、そしてローラ・ロジック名義での1枚のアルバムと1枚のシングルのみを残して終わっている。アイデアの底が付いたら終わりというのが、当時の流儀でもあった。ちなみにいまでも僕が当時のレコードとして持っているのは『ビート・リズム・ニュース』(1979年)と12インチ・シングルの「ウェイク・アップ」(1979年)、それからローラ・ロジック名義の『ペジグリー・チャーム』(1982年)の3枚で、それらはローラ・ロジックの音楽を象徴するように文字が踊っているっているようなタイポグラフィーが描かれている。これらのデザインはいましげしげと眺めても格好いい。

 『ファンファーレ・イン・ザ・ガーデン』は〈キル・ロック・スター〉からの編集盤で、このレーベルは最近、ザ・レインコーツやデルタ5、クリネックスといったポスト・パンク時代の女性が中心にいたバンドの編集盤を相次いで出している。『ファンファーレ・イン・ザ・ガーデン』はCDで2枚組で、1枚目はエッセンシャル・ロジックの軌跡、もう1枚のほうではローラ・ロジック名義での音源が聴ける。1枚目のエッセンシャル・ロジック時代の音源のほうが、いま聴いても新鮮なのは言うまでもない。

 「私たちには愛し合っている暇が与えられていないのよ」と両義的な不満を歌うロジックは、曲のなかを自由にステップを踏んで動き回り、力強くサックスを吹いている。彼女の厚みのある声、そして(ジャズではなく)大道芸のようなサックスがゆっくりと3拍子を刻みながら展開して、後半にはハチャメチャなパーティのように錯乱していく"アルバート"という曲が僕はとくに好きだったが、いちばん最初に覚えたのは〈ラフ・トレード〉の最初のコンピレーションに収録されていた"アエロソル・バーンズ"だった。それはもっとも激しい曲で、誰にも捕まえられない素早さで彼女は動いている。『ファンファーレ・イン・ザ・ガーデン』にも1曲目に収録されている。

 グリール・マーカスの記した素晴らしいライナーによれば、「ごく少数の人間にしか聞かれなくても、自分には聞こえる自分自身の声があるということを、たくさんの人が発見した時期」のなかのこれはひとつの歴史だという。マーカスの言葉もまた、ポスト・パンクとは何だったのかを的確に捉えていると言えよう。
 

 蛇足というか補足:サイモン・レイノルズの『ポストパンク・ジェネレーション』についての原稿ザ・レインコーツの記事のなかで、〈ラフ・トレード〉の理想主義について触れたが、ことの顛末について書き忘れている。〈ラフ・トレード〉の「50:50」契約は、プライマル・スクリームと〈クリエイション〉の90年代前半まで存在し、イギリスのインディ・ロックにおける良心的な契約としてアーティスト側からは望まれていたが、結局のところ続かなかった。〈ミュート〉におけるデペッシュ・モード、〈ファクトリー〉におけるニュー・オーダーのように、売れて多額の報酬を得たバンドは活動のペースが落ちていく。アーティスト側にとってはそれでいいが、レーベル側は4年のうちの数ヶ月だけ運営していればいいというものではない「50:50」契約ではレーベルの長期的運営が困難だったという話である。要するに、パーセンテージの問題ではなく、気持ちの問題だった!

砂原良徳 - ele-king

 前作の『ラヴビート』が発表されたときに自分はまだ17歳の高校生だったこともあって、作品の背景にあるコンセプトだったり、そこから浮かび上がってくる問題意識のことは、ほとんど気にしていなかった。親の庇護のもとで毎日のほほんとレコードを聴いて暮らしていた僕にとっては、環境問題だとか、世界の調和がとれなくなっているとかそういったことは、まぁ頭では「大変なことだなぁー」とは思ってはいたけど、やっぱりそれほど切迫したものとしては感じられずにいた。

 それよりも、理屈なんか抜きにして一聴しただけでも彼のものだとわかる、その音世界の完全な虜になっていた。スネアの音の密度、フィルターコントロールによって定められるシンセの重心、ダビーな空間の広がり......。それらのどれをとっても決して過不足のない、まさしく「良い塩梅」とでも言いたくなるそのサウンドコントロールは実に見事だったし、ジャンルやスタイルを越えた普遍的な部分の"音"そのものに自分の色を強く打ち出すその姿勢は素直にかっこいいと思った。自分が知っているどんな作り手よりも音楽に誠実で、借り物ではない「自分の言葉」を持った語り部。当時の僕にとって砂原良徳は、そんなひとつの理想像を体現している存在だった。

 それから実に9年のときが経った。時代はディケイドをひとつ跨ぎ、僕も20代を折り返した。もちろん、親元はとうに離れて、社会の1ピースとして日々の暮らしにヒーヒー言っている......。そんななかで届けられた久々の新作は、聴いた瞬間思わず冷や汗が出た。それと同時に、クラフトワークを初めて聴いたときのホアン・アトキンスさながら「凍てついた」。なぜなら今回はそのサウンドから、彼の問題意識をはっきりと切実なものとして感じ取ることができたからだ。それは僕が大人になったからなのか、はたまた、この9年のあいだに社会はより深刻なフェーズに遷移しつつあるからなのか? どちらにせよ、今回の砂原良徳のサウンドはいままでにも増して鬼気迫る、張り詰めた空気を纏っているように思えた。

 前作のウォーミーなパッドサウンドと、どこかラグジュアリーにすら思えるゆったりとしたビートで構成されたその音世界からは、どこか浮世離れした粋人の余裕のようなものが感じられた。しかし今作は、全体のサウンドキャラクターとしては『ラヴビート』からの世界感を引き継いではいるが、前作以上に音数はそぎ落とされ音像はドライになっている。そして、全体的に丸い音が多かった前作に比べ、ビットクラッシャーで加工したようなローファイで歪んだサウンドが頻出するのが印象的だ。とくにその傾向は、2曲目に収録されている表題曲"サブリミナル"で顕著に現れている。

 この音を聴いて、同時に思い出したものがある。それは、ジョン・カーペンターが80年代の終わりに撮った映画『ゼイリブ』だ。この作品には世界の真実の姿が見えるサングラスが登場する。このサングラスをかけると、街のビルボードに掲げられている煌びやかな広告は「服従せよ」とか「考えるな」とか「眠っていろ」とかいったメッセージに変化して見える。さらにはマスメディアや権力の側にいる人間はすっかり宇宙人とすりかわっていることがわかってしまうのだ。人々は、自分の意思で生きていると当たり前に信じながらも、知らず知らずの間に洗脳され、奴隷化されていたのだ。

 影の黒幕宇宙人が実際に居るかどうかはいまは置いておくとして、こと無意識とか無自覚のうちに自分の感覚がマスにチューニングされていると感じることは多々ある。SNS→Twitter以降のここ最近はとくにそうだ。自分の言葉で文章を書き、ポストしているつもりでいても、気がつくとTwitterのタイムラインは足並み揃えて同じような言い回しや言葉遣いがズラりと並んでいてドキッとすることがある。本来の自分の言葉は、どこかの誰かが作った記号と定型句の集合に置き換わっている。まぁ、ある種の共同体の中に埋もれる心地よさもたしかに分からないこともない。しかしいっぽうで、今の社会はそういった共感することの心地よさに捕らわれすぎ、自分の考えや感情をよりイージーなところに落とし込みがちではないか? とも思う。

 音楽にしたってそうだ。所謂ヒットチャートに上ってくるようなポピュラー・ミュージックのたいはんが紋切り型のラヴ・ソングを歌うか、もしくは無責任に他人の人生を応援するかしなくなって久しい。そもそも歌詞にしたってアレンジにしたって、直接的で説明過多なものが多い気がする。例えば夏の暑さを表現するとして、レゲエ・アレンジをかました上に、サビで実際に「暑いぜー♪」と歌っちゃうような音楽ってのも、笑いごとじゃなく数多く存在する。そこまで来るとその音楽にはもはやイマジネーションが介入する余地は無いし、そもそも全部喋っちゃうんだったら音楽でそのテーマを表現する意味があるの? といったところだ。より多くの共感を得るためのマーケティングの上で音楽が作られ、そしてより多くの物に共感するために大衆は自らの感性をイージーな側にチューニングする。そこには、アンダーグラウンド・レジスタンスが言うところの「プログラマーたち」のような存在を感じる。そして、それに対抗しうるのは、イマジネーションに他ならない。

 そして今作は「無意識」への警鐘と同時に、イマジネーションを喚起させることに重点を置いたサウンドメイクがされている。もちろん、直接的で野暮な表現などせずに、だ。例えば4曲目の"キャパシティ"は、増加する人口に対する地球のキャパシティのバランスが崩れはじめているということをテーマにした曲だ。この曲の、アタックが遅い(音の出始めは音量が小さいが段々音量が上がっていく)シンセパッドが徐々にそのレイヤーの枚数を増やして幾重にも重なり合っていく展開は、限界に向かいながらも増大していく地球人口を連想させ美しくもスリリングだ。

 今作を通して感じたのは、現実の世のなかの何かと戦おうとする砂原良徳の姿勢だ。問題提起という域すら、もはや越えているかもしれない。半年以内には、ついに久々のアルバムも出るという! 最近だと過去のシングルの寄せ集めとリミックス・ワークが数曲、あとは申し訳程度の書き下ろしなんていうアルバムを平気でリリースするアーティストも少なくないが、そこは「なんとなく」では絶対に作品を発表しない彼のことだ。いま、このタイミングでどうしても砂原良徳が声をあげねばならないことがあるのだろう。こちらもイマジネーションを鍛えて、しっかり受け止める準備をしておかなければならない。

今里(SFP) - ele-king

Chart


1
One -Law xSPER - 7/2,BED
素晴らしかったっす。

2
TRIO MOCOTTO - OS ORIXAS
MUSIC FROM MY GIRLFRIEND'S CONSOLE STEREO

3
DJ PK - TEKNO BOMBING
震えた。

4
SKUNKHEADS - 7/10,WARP
スタジアムとかで聴きたいです。

5
CE$ - STEAL DA ROAD
色々と面白い。

6
BISON - 7/10,WARP
明け方最高でした。

7
HIRAGEN - CASTE
みんな聴いた方が良いと思います。

8
PIT-GOb - REBORN
後半が壮絶すぎる。名作!

9
DEAD FUCKIN NNINJA - 7/10,WARP
ありがとうございました。

10
KWG - prove-zine

interview with the telephones - ele-king


the telephones
We Love Telephones!!!

EMIミュージックジャパン

Amazon

 海外の新しいムーヴメントから意匠をかっぱらって、それを邦楽のリスナーにアジャストするように意訳、あるいは超訳して音を届けるバンド。いつの時代にもそんなバンドはいて、多くの場合は、洋楽系のリスナーから遠巻きに白い目で見られたりもしてきた。しかし、the telephonesはそんなステレオタイプな洋楽系邦楽バンドの枠組から外れて、新たなムーヴメントをこの国のシーンで巻き起こそうとする強い意志を前面に押し出してきた上昇志向の強いバンドだ。メジャーから2枚目のフルアルバムとなる『We Love Telephones!!!』は、そんなthe telephonesにとって正念場とも言える作品である。
 彼らが過去に参照してきたニュー・レイヴやディスコ・パンクといったムーヴメントは、ここ数年で跡形もなく消え去ってしまった。同時に、the telephonesをめぐる状況は次第に熱を帯びていき、同世代のバンドとのイヴェントである〈KINGS〉や、精力的なツアー、フェス出演などを通して、彼らは新しいタイプのロックリスナーを開拓することに成功してきた。その背景には、かつてはこの国の若いリスナーの間でも機能していた、「洋楽に影響を受けた邦楽と出会う→その元にある洋楽を辿っていく」というリスナーの行動原理が働かなくなってしまったことの、幸福な副産物とでも呼ぶべき追い風があったかもしれない。いずれにせよ、the telephonesが現在の邦楽ロックのフロントラインに立っているのは事実だ。"あざとさ"を捨てた丸腰状態のままバンドの本質と向き合ったニュー・アルバム『We Love Telephones』をたずさえて、彼らはここからどこへ向かっていこうとしているのか? フロントマンの石毛 輝を中心に、本音を交わしてきた。

要はいわゆるニュー・レイヴとかディスコ・パンクっていう流れのなかでやってた僕らが、それが終わったなかで何をやるのかっていうのがすごく大事なことだと思ってたんだけど、そこで開き直ってみたら意外にいい作品ができなって思って。

まず今年の3月にナカコーのプロデュースによる「A.B.C.D.e.p.」をリリースして、4月に初のセルフプロデュースによる「Oh My Telephones!!!e.p.」をリリースして、今回のアルバム『We Love Telephones!!!』に至るわけですけど、この流れのなかで、the telephonesの音楽はどんどん解放されていったように思います。

石毛(VOX/GUITAR/SYNTHESIZER):曲としては全部同時に作ってたんですよね。「A.B.C.D.e.p.」と「Oh My Telephones!!!」用の曲が10何曲かあって、そこからナカコーさんといっしょに選曲していって、これはナカコーさんにやってもらう、これは自分たちでやるっていう感じで分けていって。

じゃあ、ナカコーにある程度たくさんの曲を聴いてもらった上で、どの曲だったらいっしょにやると面白いかっていう判断からピックアップしていったのを最初にかたちにしたのが、「A.B.C.D.e.p.」ってことですか?

石毛:そうです。ずっとナカコーさんのファンだったから、純粋に「どれが好きなのかなぁ?」って訊きたい気持ちもあって。まだその時点ではこのアルバムの曲全部はまだ出揃ってなかったんですけど、たとえば"I'll Be There"(『We Love Telephones!!!』収録)なんかはその時点でもうあった曲で、「この曲やりたいな」ってナカコーさんが言ってて。

「A.B.C.D.e.p.」の時点で、アルバム『We Love Telephones!!!』までの構想はかなり明確にあったんですね。

石毛:そうですね。その時点でアルバムの設計図はあったら、全部が同時進行です。the telephonesのやることは、つねに「確信犯だ」って言われたいんですよね。

そういう意味では、ナカコーから「盗めるものは盗んでやろう」っていう意図もそこにはあったりした?

石毛:あぁ、それはもう、もちろんありましたよ。去年アルバム『DANCE FLOOR MONSTERS』でメジャー・デビューして、あれはある意味、僕らの勢いだけをパッケージした、いちばん濃い部分だけを絞って出したようなアルバムだったんで、その次に出す作品は、本来の自分たち――もともといろんなタイプの音楽をやりたかったバンドだったから――勢いだけじゃないものがやりたいなと思って。やっぱりiLLの作品を聴いたらわかるけど、ナカコーさんの作品って音がすごくいいじゃないですか。シンセもたくさん使ってるし。だから、これまでの自分たちの作品では作れなかった音像が、ナカコーさんだったたちゃんと作れるんじゃないかなと思って。で、もちろんその過程で、いただける技術は盗んじゃおうと思って(笑)。

その意図を隠すこともなく?

石毛:そうそう。もちろん、僕も隠さずに「教えてください!」って言うし、ナカコーさんも隠さない、ものすごくオープンな人だから。音楽に限らず、あまり詳しいことは言えないけど(笑)、いろんな動画とかもすぐに焼いてくれたりとか。the telephonesのレコーディング以外でもiLLの現場に行かせてもらって、機材をどうやって使うのか、音をどう作るのかとかも教えてもらって。しっかり盗みましたね。まぁ、盗みきれてないとは思うんですけど、いままでわかんなかったことがわかったのは大きかった。ものすごい勉強になりましたね。

それは、その次の段階として、「Oh My Telephones!!!」と、『We Love Telephones!!!』収録曲における初のセルフ・プロデュースというチャレンジを見据えてのこと?

石毛:もちろんそれもありますけど、それをそのままナカコーさんからの影響でやったらあまり意味もないと思ってて。あくまでセルフ・プロデュースでやる上での助言というか、アドヴァイザー的な存在として考えてました。あんまりそこに頼っちゃうと、自分たちでやる意味がなくなってしまうから。でもまぁ、ぶっちゃけ、録り終わった後にいっかい聴いてもらって、「大丈夫ですかね?」って相談はさせてもらいましたけど(笑)。

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まぁ、タナソーっていうか、そのへんのメディアの人たちやリスナーも含むすべてに対して。でも、そういうネガティヴな感情もつねに持っていたいというか、それがなきゃダメなんですよね。

あらためて、この『We Love Telephones!!!』をどういう作品にしたいと思ってたのかについて、メンバー全員に訊いていきたいんですけど。

岡本(SYNTHESIZER/COWBELL/CHORUS):まず最初に石毛が曲を持ってきて、それをスタジオで流してっていう作業をこの5年間ずっとやってきた中で、今回はこれまで以上にとにかく曲がいいなっていう印象があって。だから、今まで結構作品ごとにコンセプトがガチガチにあったんですけど、今回は自由に、いい曲はいい曲でどんどん入れていくみたいな感覚でみんなで作っていった感覚ですね。

松本(DRUMS):もちろんそれぞれの曲にはテーマとかもあるんですけど、それを前面に出していくんじゃなくて、まず音楽として楽しくやれたらなって思ったんで。自分たちのスタイルで演奏していったら、それは自然に自分たちだけの音楽になっていくんだなって。それは、作っててそう思ったというより、作品が完成してみて気づかされたことですけど。

前作の『DANCE FLOOR MONSTERS』はリスナーが求めているところに思いっきり直球を投げた作品だと思うんですけど、そういう意味では、今回は思いっきり自分たちのやりたいものをやりきったってこと?

岡本:そうですね。自分たちがもともともっていたいろんな音楽的な要素を、ただ好きなように表現するっていう、なんだか簡易な話になっちゃいますけど、そういうことだと思うんです。やってみたい音楽っていうのは本当にたくさんあって、たしかに『DANCE FLOOR MONSTERS』みたいなアッパーで単純に踊れるロックっていう部分も僕らのなかにあったものだけど、今作みたいにいろんなサウンドやメロディが混在している方が、より自分たちらしい作品って言えるんじゃないかと思います。

長島(BASS/CHORUS):たぶん、『DANCE FLOOR MONSTERS』のツアーをやってたときに、「ここでもっとこういう曲があったら良かったのにね」っていうことを石毛が言っていて、もしかしたら今作はその欠けたピースを埋めていくものっていうか、いままでライヴやってきてもっとこういうのもやりたいっていう思いが、今回の楽曲たちが繋がったんじゃないかなって思います。だから、今回はプレイしてて楽しい曲が多いし、いい意味で力を抜いてできたんですね。作っていく作業の段階から。みんな楽曲がすごく気に入ってたら、逆にすげぇ気合い入れて作らなきゃっていうよりかは、「おぉー! この曲いいね!」っていう感じで、みんなでワイワイやってるうちにできていったような感じです。

これまでとは違ったタイプの曲が生まれてきた、その背景にあったのはどういう思いだったんですか?

石毛:さっき宇野さんが言った通り、『DANCE FLOOR MONSTERS』は求められている場所に思いっきりボールを投げた作品だったので、次も勢いだけで作ったら完全にこのバンドは終わるなぁって思ってたんですよ。じゃあ、もともとこのバンドでやりたかったことって何だったんだ?ってことに立ち返った作品をこのセカンドでやろうと思って。具体的には、the telephonesってインチキディスコって自分たちで言ってきたバンドだけど、ちょっとずつ、もうちょっと濃いダンス・ミュージックの要素も入れていこうかなって。でも、同時にポップであること、勢いのあることっていのもthe telephonesの音楽の重要な部分だから、そこに関してはギリギリのところまで詰めていきましたけど。作品を作っていくなかで、迷いがどんどん消えていった感覚がありましたね。

インディーズ時代のアルバム『JAPAN』は、当時のニュー・レイヴをはじめとする同時代の洋楽とリンクするようなサウンドを無邪気に出していた作品で、『DANCE FLOOR MONSTERS』はメジャーというステージで自分たちがそのタイミングで切れる最も有効なカードを切った作品だったと思うんですけど。

石毛:そうですね。だから、今回は『JAPAN』を作ってた頃の衝動に近いものがあったんですけど、当然、あの頃よりも洗練されてるし、当時は知らないことが多すぎたから。単純に、いま考えるともっと合理的にできるだろってことを悪戦苦闘しながらやったっていう、そういう楽しさが当時はあったんですけど。今回はその頃の無邪気な気持ちのまま、格段にクオリティが上がったものを作れたかなって。それと、あの頃と違って、いまはもう洋楽との同時代性っていうのは、僕はもうぶっちゃけ全然気にしてなくて。というのも、いまは日本でも、自分のまわりにものすごくカッコいいバンドが増えてきて、洋楽に対して変な劣等感を感じなくなってるっていうか。いまの日本の20代でバンドをやってる連中のなかにも、こんなカルチャーがあるんだよっていうのをちゃんと示したほうがカッコイイんじゃないかって思って。迷いが消えたっていうのはそこかもしれないですね。ほんとに胸を張って「日本のバンドです!」って言えるようになった気がする。

なるほど。それといま、同時代性って言えるほどの音楽性だけでくくれるシーンみたいなものって、海外のロックバンドのなかにもないですよね。いいバンドって、もう、個々がそれぞれ勝手にオリジナルなことをやってるっていう状況で。それはイギリスに限らず、ブルックリン周辺のバンドもそうだし。精神性で繋がってる部分はあるのかもしれないけど。

石毛:うんうん。それはほんとにそうだなぁと思って。だから、要はいわゆるニュー・レイヴとかディスコ・パンクっていう流れのなかでやってた僕らが、それが終わったなかで何をやるのかっていうのがすごく大事なことだと思ってたんだけど、そこで開き直ってみたら意外にいい作品ができなって思って。開き直ったっていうのが、いちばん気持ち的にでかいですね。もうパクらなくていいやっていう(笑)。

でも、かつてthe telephonesにニュー・レイヴやディスコ・パンクってレッテルが貼られたことは、the telephonesの音楽に対していちぶのリスナーにいろんな先入観を与えることにもなったけど、逆にそこをうまく利用してきたって部分もありますよね。

石毛:うん。それはもちろん自覚してますし、否定するつもりはないです。みんなで蛍光カラーのパーカーを着たりしてね(笑)。

自分が初めてthe telephonesのライヴを見たのは2年前の2008年でしたけど、そのときに印象的だったのは、他の日本のギター・ロックのバンドのライヴに集まってるオーディエンスとは、全然違うオーディエンスの層をつかんでるんだなってことで。ちゃんと新しい現場を作ってることを実感したんですね。

石毛:いわゆるTシャツとデニムでタオルを首に巻いてるようなロック・キッズ以外の人が、ライヴハウスにたくさんいたっていうことですよね?

そうそう。かわいくてオシャレな子がライヴハウスにいる! っていう(笑)。

石毛:2008年はそういうムーヴメントを小さいながらも作れて、すごく駆け上がっていった実感を持てた年でしたね。普段は全然音楽を聴かないような若い子達に、そういう文化を少しでも伝えられたっていう実感があった。でも、そんなのはすぐ終わるとも思ったんで。次はどうしようってことばかり考えてましたね。

そして、メジャーに行くという選択をしたわけですよね。

石毛:うん。そこでとりあえずファッションとしてのニュー・レイヴは捨てようと思って、みんな思い思いの格好をしはじめたんですよね。僕はヒッピー崩れみたいな格好をして髪が伸ばしっぱなしになって、ノブちゃん(岡本)はゲイみたくなって、(長島)涼平は可愛くなって、(松本)誠治くんはラーメン屋みたいになった(笑)。

一同:あははははは!

石毛:ファッションに縛られるバンドじゃマズイだろっていうのと同時に、メジャーシーンでこのまま何年やれるのかっていう不安と期待があって。せっかくだからそこでシーンをひっかきまわすと同時に、ムーヴメントを作れたらいいなって思って。日本独自のシーンっていうのをすごく意識するようになりましたね。その前後に、KINGSというイベントも軌道に乗るようになって。

興味深いのは、the telephonesを遠目で見ていたような人たちにとっては、「ロックで踊る」っていう〈KINGS〉ってイヴェントのコンセプトって、ニュー・レイヴやディスコ・パンクの延長として見られてた感が強いけど、いっしょに〈KINGS〉をやっているTHE BAWDIESも言ってましたけど、実はそこには90年代末の〈AIR JAM〉がひとつの理想形にあるんですよね。

石毛:うん。時代が時代なら、それこそ〈AIR JAM〉にいたようなキッズたちを、いまの僕たちは巻き込んでるのかもしれないですしね。僕らのライヴでダイヴとかモッシュが多いのも、きっとその時代の名残だと思うし。でも、自分としてはやっぱり、もっとライヴハウスとクラブの現場が――ここでいう現場っていうのはロック系パーティのことだったりするんですけど――混ざって欲しいって思うんですよね。だから、自分も大きなロックフェスとかに出たときに、ステージから「現場に行け!」って言うんですよ。まるで、ワールドカップのデンマーク戦に勝った後の長谷部みたいに(笑)。

「Jリーグにも足を運んでください!」みたいな?(笑)

石毛:まぁ、そこまではカッコよくないかもしれないけど(笑)、言わなくてもいいのにどうしても言ってしまう。それは、もっと音楽を自由に楽しめる現場を作りたいからなんですよね。〈AIR JAM〉の世代の人たちがモッシュとダイブというのを文化として定着させたわけですけど、僕らの世代はそういう立ノリじゃなくてもっと横ノリの、踊るっていう文化をロックのオーディエンスに広げられないかなって。そうしたら、時代と時代が分断して横軸しかないような日本のロックシーンにも、ちゃんと縦軸のようなものができるのかなって思ってて。

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たとえば僕は高校を途中で辞めて死ぬほど退屈だったんですけど、唯一音楽だけはほんとに好きだったからライヴハウスで働き続けて、なんとかここまで生きてきたっていう、本当に音楽に救われたっていう実感を持ってるんですけど。

たとえば、これはele-kingだから敢えて訊きますけど、the telephonesが歌ってるダンスフロアと、ele-kingの読者がイメージするダンスフロアっていうのは、違うものじゃないですか。

石毛:たぶん、真逆ですね。

それによって偏見を持たれるのは不本意なことだったりします?

石毛:うーん......。でも、どっちの現場も健全だし、そんなに違うとは思わないんですよね。ドラッグもないし。だから、どっちもあってよくて、それが混ざるのが一番いいと思うんですけど......なかなか水と油だから、どうなんでしょうね。その架け橋的なバンドになればいいなぁとは常々思ってるんですけど。

今作『We Love Telephones!!!』はいきなり「I Hate DISCOOOOOOO!!!」という怒りを表明した曲で始まるわけですが。この怒りの矛先はいまの音楽シーンに対して? それとも、社会全体に対して?

石毛:全部ですね。たまにすべてのものが嫌いになることあるんですけど、「I Hate DISCOOOOOOO!!!」の"僕を打ちのめしたとこで何の意味がある?""自分じゃできないくせに"というラインは、完全に田中宗一郎に言ってます(笑)。

(笑)。

石毛:まぁ、タナソーっていうか、そのへんのメディアの人たちやリスナーも含むすべてに対して。でも、そういうネガティヴな感情もつねに持っていたいというか、それがなきゃダメなんですよね。すごく充実して幸せを手に入れると不安になっちゃって、これは全部嘘なんじゃないかと思うような人間なんで。

いろんな批判もあるんだろうけど、言ってみればthe telephonesって、最初から隙だらけのバンドだと思うんですよ。

石毛:そうそう。ツッコミどころがいっぱいある。こんなに隙だらけなんだから、打ちのめしたところで何の得もないよって言いたい(笑)。

打ちのめされても、ヘラヘラ笑いながらまた立ち上がってくるような、そういうタフさを持っているバンドだと思うんですけどね。だから標的になりやすいのかな?

石毛:そうですね。そういう部分はタフになったような気がしますね。

もともとthe telephonesはメディア主導ではなく、現場から火のついたバンドだっていう、そこの自負もあるんじゃないですか?

石毛:それもありますけど、現場から生まれた僕らも、結局はメディア主導のフェスにのっかってるっていう現状もありますからね。それは僕らだけじゃなくて、他のバンドもそうですけど。別にそれが悪いって言いたいわけじゃないけど、もっと〈AIR JAM〉がやったみたいに、自分たちだけで磁場を作れるんじゃないかって思いはあるんですよね。せっかくここまで状況を作ってきたんだから、ついてきてくれるオーディエンスもいるんじゃないかって。そろそろ何かを仕掛けていかなくちゃなって。20代のうちになにかデカいことをやりたいなって思ってます。

そういうthe telephonesの持ってるカウンター意識って、あまりファンのあいだにも伝わってないような気もするんですけど。

石毛:表現の根本には、いつもラヴがありますからね。すごく理想主義的な部分が大きいから。僕たちって尖ろうとしても、結局は4人の人間性に部分で、どうしてもラヴとかピースな感じになるんですよ。

今作『We Love Telephones!!!』も、曲によっては"HATE"とか"DIE"とかっていうネガティブなフレーズも耳に残りますけど、基本的にはすごくラヴとピースな作品ですよね。

石毛:そうです。基本的にthe telephonesのテーマは愛と自由だと自分は思ってます。

愛と自由をこの2010年の日本で歌う意味は、どこにあると思います?

石毛:いま、バンドであんまり愛を歌うバンドっていないと思うんですよね。個人的な内面の葛藤とか、そんなのばかりが幅を利かせていて。自分もそんなにすげぇ考え込んだ上で、「愛と自由」だって思ってるわけじゃないから、ちょっと答えづらいんですけど......やっぱり、まだバンド・シーンは終わってないっていう希望の火をつけたかったっていうのがあって。これから音楽をプレイする若い子にも、音楽でもメシは食えるよっていうのを伝えたいのがある。いまってなんとなく、日本の音楽シーン全体が、メインストリームもアンダーグランドも、どんどんコアなものになっている気がするんですよね。

CDを買うという行為そのものが、マニアックな行為になってきてますからね。

石毛:でも、そんな時代でも普通の人がバンドをやってもいいんだよ、選ばれた人しか音楽をやっちゃいけないわけじゃなくて、普通の人間でもバンドはできるんだよっていうのを証明するバンドになりたいんですよ。それが結局は、愛と自由に繋がってるんじゃないかな。だから、いまの世界が退屈で死んじゃうよっていうような人たちに自分たちの音楽を届けたい。この気持ちが正確に届くかどうかわかんないですけど、たとえば僕は高校を途中で辞めて死ぬほど退屈だったんですけど、唯一音楽だけはほんとに好きだったからライヴハウスで働き続けて、なんとかここまで生きてきたっていう、本当に音楽に救われたっていう実感を持ってるんですけど。だからいま、学校も仕事も行かずに時間を持て余してるスーパーニートみたいな人がいたら、別に僕らの音楽じゃなくてもいいんだけど、誰かの音楽を聴いてそれに救われるような体験をしてくれればいいなって。まぁ、それが自分たちの音楽だったらいちばん嬉しいんだけど。

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だからね、ele-kingを読んでるような音楽をすごくよく知ってるような人たちに、「やっぱthe telephonesってクソだね」って言わせちゃうくらいの、そういうバンドになっていきたいですね。それでも、「あの曲はいいよね」みたいな。

いまのtelephonesの現場には、ニートっぽい子はたくさんいる?

石毛:いや、全然いない。リア充ばっかだと思う。2ちゃんねるのスレッドとかも大して書き込みもないし(笑)。だからもうちょっと腐ってる奴らがいてもいいなって思うんですけど、逆に言うと、もう腐ってる奴らが聴きたいとは思わない音楽になっちゃったのかもしれないですね。それはたぶん、これまでの僕らのやり方があざとすぎたのかもしれない。でも、そのへんの連中に嫌われてもいっかいちゃんと上に行く必要があったと思うし、まだまだ上に行きたいところはあるんで。それが一段落したら、もういちどそこらへんにいる人たちに問いかけたいって気持ちは強いですね。

自分で自分のことを「あざとかった」って言うのはそれだけ客観視できてるってことだと思いますけど、あざとさっていうのは、どこかでツケを払う必要があると思うんですよ。そういう意味で、今回の作品はそのツケを払ったような、丸裸の作品になってるのかもしれないですね。

石毛:なってるのかな? 基本的にはツケを払ったつもりではいるんだけど、もっといいツケの払い方もあると思うんですよね。これまで誤解させたきたところをどうやって解いていくか、それは難しいことなんですよね。でも、バンドが上に行くにはそういうこともしなきゃいけない。音楽がカッコよければ売れるっていう時代はやっぱり終わったと思うんで、自分たちがいいと思う音楽をどうやって広げていくか、あらゆる手段を講じるしかないと思うんですよ。で、そういうことに対して自分は積極的な人間だから、何でもやっていこうと思ってます、いまは。それが度を超えると、精神的にはつらくなったりもするんですけど。

それは、別にこれまでのリスナーを裏切ってきたとか、裏で舌を出していたとか、そういうことじゃなくて、自分たちの音楽を限定した形でしか伝えてこなかったことに対するしんどさですよね?

石毛:そうですね......あぁ、そうかもしれない。うん、そうですよ! そうだわ!

一同:あはははははは!!

石毛:そういう意味で、今回の作品でようやく解放されたのかもしれない。いや、完全に腑に落ちたました(笑)。だからね、ele-kingを読んでるような音楽をすごくよく知ってるような人たちに、「やっぱthe telephonesってクソだね」って言わせちゃうくらいの、そういうバンドになっていきたいですね。それでも、「あの曲はいいよね」みたいな。たぶん、全曲好きになるのは難しいだろうけど、「the telephonesクソだけど、この曲だけはいいよね」っていう、それぐらいの耳のあるリスナーといっしょに走っていきたいですね。つねに時代と同期しながら新しいことをやっていきたいし、なるべくならその最先端を走りたい。基本的に人を引っ張ることは嫌いだけど、いまは引っ張ってもいいよって気分、なんでも背負ってもいいよって気分なんで。いろいろ背負うかわりに、先を走らせてくれっていう感じですね(笑)。

Baths - ele-king

 涼味がある。ウォッシュト・アウトネオン・インディアンが実際にはより多く暑気を感じさせるのに対して、バスは涼しい。それどころか、時折は耳のうしろにあてられたかみそりのようにひやりとする。

 デイデラス人脈のビート・メイカー、バス。本名をウィル・ウィーゼンフェルドという弱冠21歳の俊英は、ポスト・フィータスというなめたような名義で今年1月に初めてのアルバムをリリースしている。本作はデイデラスの薦めもあったようで、〈アンチコン〉からリリースとなったバス名義でのファースト・アルバムだ。時流に外れずグローファイ/チルウェイヴ的な文脈をとらえた、非常にリリカルなIDM。しかし吃りのはげしいビートや、込み入ったエディットのなされたサンプリング音には、前掲アーティストのレイジーな感覚とは対照的な攻撃性があると言わずにいられない。
 やんちゃな音という意味でない。むしろひたすら内向的でドリーミーだ。が、ベッドルームから出てやるものかという雰囲気がある。あるいはかなり尖った音楽的な探求がある。なるほどこのあたりが〈アンチコン〉なのだろう。モラトリアムな空間で純粋過剰にスピード培養されたビート・センス......心地よいサウンドの裏側には、そうしたかすかな薄気味悪さが貼り付いている。ピアノ、ヴィオラ、ギターなど何でもこなすマルチな才能といい、ある種の豊かさがある。あまり学校にも行かず好きなことにだけ没頭してきたのではないだろうか......そんなことさえ想わせる音楽だ。パッション・ピットをうんと気難しくして、ケトルやデイデラス、フライング・ロータスを交け合わせたと言えば近いかもしれない。

 『セルリアン』は、グリーグの宗教的合唱曲を思わせるようなほの明るい和声でもって幕を開ける。絡みあうファルセットには厳かな雰囲気がある。おもむろに打ち鳴らされるキック。もつれたようなリズムはバスがバスたるゆえんだと言いたい。実際のところ、バスを聴くというのはこのリズムを聴くということに相違ないと思われるのだから。コミカルな効果音を交えて、天からシャワーのように降ってくる多幸感。これはアニマル・コレクティヴを筆頭とし、ドードースやル・ループやジャンク・カルチャー、トロ・イ・モアらに表象される、まどろみの2000年代サイケデリアをくぐった音だ。
 あるいはルシアーノの"セレスシャル"。教会的なコーラスのイメージは、ダーティー・プロジェクターズやジュリアナ・バーウィックなどに通じる。調性音楽へのこうした再帰的なまなざしは、トライバル・ブームと裏表の関係にあるのだろう。マイ・スペースではトップにアップされているトラックで、本作のハイライトのひとつである。ウェブ・マガジン『ユアーズ・トゥルーリー』や『ピッチフォーク』では、これをプレイするバスの姿をヴィデオで観ることができる。トトロ型のトートバッグでスタジオに入る様子には、誰もが「やっぱりオタクだったか」とつぶやかずにいられないだろう。

 感触の似たトラックとしては"アミナルズ"。クリア・トーンのギターを用いた、エコー・タイムの長いリフがじつに涼しい。音のひとつひとつが氷の粒のようだ。子どものヴォイス・サンプリングが挟まれ、やはりおもむろにドラム・パートがはじまる。この曲ではベースもよく跳ね、歌っていて、甘く切ないメランコリアをうまく醸している。叙情のインフレーションが止まらない。かつ、最終的にはアブストラクトなビートに支配される。作品中でも出色の出来ではないだろうか。このトラックに説得されてアルバムを購入する方も多いだろう。デイデラスとケトルを軸に取った座標、その第一象限をギターとトイ・ピアノが金属的に駆け回る。

 "マキシマリスト"や"ホール"などは、ヒップホップのビート・メイキングという色合いが濃い。いずれもゆったりとした拍を刻みながら中盤ではっとするようなテーマが鮮やかに展開される。"インドアジー"はそうしたイヴォルヴィングなテーマだけを抽出したような曲で、ハイパーな子守唄といった佇まい。"レイン・スメル"のビターな味わいもアルバム全体に奥行きを与えていて、好ましい。シンプルなシークエンスに濡れたようなピアノが映える美しいトラックで、雨の音や鳥のさえずりが外界のノイズとともに挿入されている。本当に心の繊毛をひとつひとつ刺激してくるような、デリケートなメロディ感覚を備えた人物だと感心してしまう。
 
 「どうでもいい」という念仏を唱える坊主がちまたでウケていると聞く。人間関係において、または社会生活を営む上で、うまくいかないような事態が出来した折に「どうでもいい」と唱えて納得せよといった教えらしい。これがウケるのはよくわかる。ウォッシュト・アウトの投げやりさやネオン・インディアンに感じる現実軽視は、これと同じレイヤーに属した感覚だと思うが、どうだろう。問題の解決どころか問題点の特定すら複雑すぎてままならない成熟社会においては、それもひとつのマナーであるように思われる。が、あくまで引きこもって爪を研ぎつづけるというバスのような存在には、退却と反撃が同居したような奇妙なエッジがある。それはそれでオルタナティヴなヒーロー像が宿っているようで、頼もしい。

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Lloyd Miller & The Heliocentrics

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