「Nothing」と一致するもの

 NYの最近の音楽の話題といえば……、LCDサウンドシステムの再結成だろうか。6月にできた大会場、ブルックリン・スティールでこけら落とし、6日間連続ショーを敢行。夏はあらゆるフェスティヴァルに出演、秋には北アメリカツアー、12月にはブルックリン・スティールで10日間連続のショーを追加。
 えー、それから……Jay-Zがショッキングなパーソナル・アルバムを出し、1枚も売らないうちに(ストリームのみ)プレミアムになり、ビヨンセが待望の双子を出産し、Rケリーがセクシャル・ハラスメントで訴えられ……いやいや音楽メディアを賑わせるのは、ここブルックリンのインディ・バンドのはず。活きの良いバンドが集まり、ぴちぴちしながらシーンを形成していることを、知っているだろうか。同じ日にあった 〈Out in the Street〉フェスティヴァルよりも、ラインナップの濃い、現在のブルックリンを代表するバンドが集まったショーは、アルファヴィルという、ブッシュウィックのレストランで。リル・ヨッティを知らなくても、彼らは知っていたほうが良い。(https://www.alphavillebk.com/)


 最初は、元the MenのBen GreenbergのプロジェクトのHubble。
https://www.facebook.com/pg/missionhubble/

 彼はユニフォーム(https://www.unifuckingform.com/)というとハードコア・バンドもやっていて(sacred bonesから作品をリリース)、ハーヴェイ・ミルクなどのヘヴィーな音楽に影響されている。アヴァンギャルドなフィンガー・タッピング・ギターのなかに、メタル、パンク、ブルース的要素を取り入れた、実験的音楽が紡がれる。体がホワーンと上がる、ダウンタウンのミニマリズムとブルックリンの攻撃的要素が交わる。


 ブルックリンの女子4人組のウィーピング・アイコンは、みんなロングヘアで、見た目がほとんど同じで、ローファイなウォー・ペイントという印象。ダークで、サイケで唸るようなパンクなチューンを、実験的にかき鳴らしし、最後にはキーボード(コンピュータの)を引っ張りだし、ガチャガチャ打ちつつ、轟く音を残した。(https://www.facebook.com/weepingiconbk/


 そしてクール過ぎる、男前バンドのバンバラの後が、今夜のメイン、サックス・ドライヴィン・バンドのピル。ニューEP「Aggressive Advertising」は、パーケット・コートのメンバーのレーベル、ドゥル・トゥールからのリリース。
 リディア・ランチやティーンエイジ・ジーサス・アンド・ザ・ジャークスなどのノーウエイヴ、ポストパンク組に分類されがちだが、サーフ・ロックからフリー・ジャズまでを網羅し、フェミニズム、政治、抗議などについて歌う。サックスを中心に、鋭く攻撃的な音がリボンのようにあちこちに飛び回り、感情を掻き立てられるのだが、歌い方は至って冷静。ちょい艶やかなダウンタウン・ボーイズともいえる。ステージでのエネルギーの放ち方が半端なく、オーディエンスもそれをがっちり受け止める。客層は若く、ゲイが多い、いかにもブルックリンな感じ。最近は、ディアハンター、ゲリラ・トス、サン・ウォッチャーズ、ウッズなどなど、サックスを取り入れるバンドが多いのは、たまたまの偶然なのだろうか。
https://www.facebook.com/PILLTHEBAND/

 会場もバンドに優しく、バーテンダーはみんなバンドマンで(ホンヂュラスのヴォーカルもいた)、オーナーもバンドを見て盛り上がっている。ドリンクは、12種類ほどのドラフトビール他フルバーで、フードはハンバーガー、ナゲット、マック・アンド・チーズなど豊富。ショーが終わった後もみんなナゲットを摘みながら長々とハングアウト。そして、そのまま別のバーに流れ、朝まで飲み……と、まあ、そこでとんでもないアイディアが生まれるというわけなのだ。

Yoko Sawai
7/17/2017

Alan Vega - ele-king

 歌謡曲の致命傷は本当の意味でのニヒリズムがないことだと言ったのは寺山修司だが、間章がニューヨークでスーサイドのライヴに涙したとき、アラン・ヴェガには“本当の意味でのニヒリズム”しかなかったのだろう。まあ、なにせ自殺者である。彼が昨年の7月16日に78歳で(自殺ではなく)眠りながら死んだとき、42歳にして最初のソロ・アルバムを発表し、身の毛もよだつほど天才的なまでに空回りしたロカビリーを歌った、他に類を見ない、圧倒的に特異なるこのアーティストの追悼文を書かなければ、書かなければ、書かなければ……と思いながら自分も病に伏してしまい、そして秋になったとき、ま、アラン・ヴェガほど感傷的な追悼文が似合わない人もいまいと自分勝手に納得することにした。
 ……にしても、考えてみれば、マーティン・レヴとのエレクトロニック・ミニマル・ロカビリー・ノイズ・バンド、スーサイドのフロントマンとして、マックス・カンサス・シティで“ロケットUSA”を歌っていたのが1976年だから、ヴェガはこのときすでに30代も後半どころか40手前。1938年生まれの彼はブルース・スプリングスティーンよりも11歳年上で、イギー・ポップより9歳も、ルー・リードより4歳も、ジョン・レノンより2歳も上なのだ。
 
 本作『IT』はヴェガの最後の(11枚目の)ソロ・アルバムである。web上の記事を散見するところでは、2010年から2016年にかけて妻のLiz Lamereの協力のもとで録音されたそうだ。2012年、脳卒中で倒れたというヴェガだが、晩年は病苦に耐えながらの日々だったようで、彼もまた自らの死を予期しながらこのアルバムを録音していたのだろう。もっともここには、デヴィッド・ボウイともレナード・コーエンとも著しく異なるヴィジョンが描かれている。それはひとことで言えば「怒り」だ。彼の魂は平和に着地するどころか、狂暴で、挑発的で、激しく、そしてわめき散らしている。

 “DTM”とは“Dead To Me(俺に死を)”の意味だそうで、そうなるとこれはたしかに自分の死を意識して作られた曲になる。すさまじいノイズも、スーサイドのアップデート版と言ってしまえばそれまでだが、70過ぎの老人の、この期に及んでの怒れるノイズ──まったく驚嘆に値する。“Screaming Jesus”なる曲では、電子ノイズをバックにアメリカを糾弾し、叫び続けているのだが、そうした政治性以前の、我らがアドレッセンスの問題として、思いだそう──かつて音楽にとって大切だったのは、夜も眠らぬむき出しの魂と、空しさと、烈火のごときパッションだったことを。

 言うまでもなく、アラン・ヴェガは(そのときすでにいい歳でありながら)パンク・ロックの始祖のひとりであり、シンセ・ポップにおけるマイルストーンである。彼はもともとヴィジュアル・アーティストで、ヴェガが70年代にマンハッタンに開いたアート・ギャラリーは、当時のNYのパワフルなアンダーグラウンド・シーン(NYドールズ、テレヴィジョン、ブロンディなど)とリンクした。そのあたりは宇川直宏を彷彿させる彼だが、ギャラリーを通じてマーティン・レヴと知り合い、スーサイドを始動させた。突然変異的なブルース・ヴォーカルと極度にミニマルなエレクトロニック・サウンドをあり得ない姿で融合させた歴史的な1stとディスコ・パンクの青写真となった2ndを発表すると、ヴェガはロカビリーを基調にした美しくも空しいソロ・アルバムをリリースする。それは、ロカビリー全盛の夢の時代へのニヒリズムすなわちアンチ・アメリカン・ドリームの記録であり、彼の超越的なアンチ・アメリカン・ドリーム・バラード“ドリーム・ベイビー・ドリーム”はブルース・スプリングスティーンにもカヴァーされている。とはいえ、90年代以降のヴェガは、スーサイド再評価にかなうほどの作品を作れなかったかもしれない……が、本作『IT』によって、ボウイともコーエンともまた別の、これはこれでじつに強い意思による、なんとも凄みのある“最後”を見せつけたのである。

Adam Rudolph's Moving Pictures - ele-king

 2000年代以降のクラブ・サウンドやエレクトロニック・ミュージックを中心に聴くような人にとって、アダム・ルドルフの名はビルド・アン・アークやヒュー・ヴァイブレーショナルなど、カルロス・ニーニョの関連プロジェクトで知ったケースが多いだろう。しかし、それよりはるか以前から長いキャリアを持つルドルフは、もともとシカゴのフリー・ジャズ・シーンやワールド・ミュージック畑で活躍してきたパーカッション奏者で、アメリカにおけるアフリカ音楽のパイオニア的存在のひとりである。1955年生まれの彼は、1974年にデトロイトの〈ストラタ・レコーズ〉から発表されたマラウィのアルバムが初めてのレコーディング参加作となり、それ以降はドン・チェリー、AACM、ファラオ・サンダース、ハービー・ハンコック、ビル・ラズウェルなど数多くのビッグ・ネームとの共演があるが、中でもマルチ・リード奏者の巨星ユゼフ・ラティーフとのコラボレーションが名高い。1970年代後半よりガーナやガンビアなどアフリカに移住し、グナワなど現地の音楽を学んでいたルドルフだが、同じくアメリカからアフリカに移住して演奏活動や音楽教育をしていたラティーフとの交流が生まれ、1988年よりラティーフが亡くなる2013年までコラボレーションを行ない、14枚もの共作アルバムを録音している(カルロス・ニーニョ、AACM出身のハミッド・ドレイクと組んだヒュー・ヴァイブレーショナルでも、ユゼフ・ラティーフをフィーチャーしたアルバム『ユニヴァーサル・マザー』を残している)。

 ムーヴィング・ピクチャーズはルドルフのメイン・プロジェクトのひとつで、1992年に初レコーディングをおこなって以来、今回の新作『グレアー・オブ・ザ・タイガー』を含めて7枚のアルバムをリリースしている(『グレアー・オブ・ザ・タイガー』のリリース元の〈メタ・レコーズ〉は、ラティーフとの共作はじめルドルフの作品を数多く発表してきたレーベルである)。作品によってムーヴィング・ピクチャーズのレコーディング・メンバーは変わっているが、『グレアー・オブ・ザ・タイガー』ではサックスやフルートのラルフ・ジョーンズ(彼もビルド・アン・アークに参加していた)、ギターやエレクトロニクスのケン・ウェッセルといった常連メンバーに加え、ヒュー・ヴァイブレーショナルで一緒だったドラマー&パーカッション奏者のハミッド・ドレイク、かつて〈ブルーノート〉から『ダーク・グルーヴズ,ミスティカル・リズムズ』という優れたアルバムをリリースしていたキーボード奏者のジェイムズ・ハートが参加している。土着的で民族色の強いルドルフの作品の中にあって、新作『グレアー・オブ・ザ・タイガー』はアーバンなファンク色が濃いものとなっている。エレキ・ベースやエレピなどの楽器構成、いつもより多目のエレクトロニクスの導入がそうしたサウンド形成の要因となっており、それとルドルフの多彩なパーカッション群、ドレイクのドラミング&パーカッション・プレイの絡みが本作の醍醐味である。

 13分を超す大作となった表題曲は、ジャンベなどのアフリカン・パーカッションが生み出すプリミティヴなリズムのうねりと、コズミックなキーボード群、シャープなホーン・アンサンブルなどが一体となったジャズ・ファンク。ソリッドなギター、ミステリアスなフルートなどによるシリアスなイメージの“シレスキュー”とともに、かつてのエレクトリック・マイルスを想起させる作品だ。一方、“エクスタティサイズド”はラテン色の強いナンバーで、ムーヴィング・ピクチャーズの開始時からずっと一緒にやってきたラルフ・ジョーンズのサックスが活躍する(この曲でもそうだが、彼は多種のサックス、フルート、クラリネットを多重録音し、ホーン・アンサンブルとして完成させる手法をとっている)。表題曲やジャズ・ロックの“ローテーションズ”がエレクトリック・マイルス、マハヴィシュヌ・オーケストラなどを彷彿とさせるのに対し、こちらはキップ・ハンラハンのディープ・ルンバに通じる作品だ。“レーラ”から12分超えの“ワンダーリングス”へと繋がる2曲は、アルバム中でももっとも神秘性を感じさせるパート。ずっと瞑想的な流れで進み、“ワンダーリングス”の後半でダイナミックなリズムが爆発するという展開だが、ジェイムズ・ハートの『ダーク・グルーヴズ,ミスティカル・リズムズ』にもこうしたスピリチュアルな音楽性が流れており、彼の参加が本作に果たす役割を物語る。カマシ・ワシントンのようなタイプとは異なるが、本作もまたもうひとつの現代のスピリチュアル・ジャズと言える作品だ。

interview with Subarashika - ele-king

 はっぴいえんどに端を発する日本語ロックの遺伝子を受け継いだ音楽。すばらしかのファーストEP「灰になろう」をはじめて聴いた時、まず思ったのはそんなことだ。洗練されたシティ・ポップのエッセンスと泥臭いグルーヴが共存する音楽は、never young beachやYogee New Wavesらと共振しながら、ひとつのムーヴメントの新たな旗手となり得ることを予感させた。


すばらしか - 灰になろう
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 すばらしかは2015年末に結成されたバンドだ。都内を中心にライヴ活動を続け、2017年2月に自主製作盤「灰になろう」を発売すると、プレスされた200枚はたちまちソールド・アウト。このたびその音源に再度マスタリングを施し、カヴァー曲やライヴ音源の新曲を加えたものがリリースされる。

 それにともない、今回はメンバーの福田喜充、加藤寛之、中嶋優樹の3人と、サポートの林祐輔にインタヴューをおこなった。結成の経緯やこれまでの音楽遍歴を聞く中で見えてきたのは、シャイネスと大胆さが共存する彼らの人間性、そして冒頭に記したような感想は必ずしも当たりではない、ということだ。

 彼らの音楽を形作ったのは日本語ロックとの邂逅ではなく、ローリング・ストーンズやザ・バンドといったレジェンドからの影響を、自分たちにもっとも身近な日本語で消化しようとしたことだった。つまり、彼らは「日本語ロック」を経由することなくして、その潮流があるインディ・ロック・シーンの前線へと躍り出たのだ。

 こうした背景があるからこそ、ベースの加藤はシーンに目を配りながらも「はっぴいえんどに影響を受けたバンドには興味がない」と、カテゴライズされることから距離を置く。自分たちのオリジナリティを「本当の意味で日本語ロックができていること」と胸を張れる。迎合しないスタイルに、時代の方が味方している。

 このインタヴューはバンド史上初のインタヴューとなった。高い演奏技術、卓抜したソング・ライティング、角度をつけながらも突き刺さる歌詞。すばらしかは往年のロック・ファンを魅了しながら、若い音楽ファンも取り込んでいくだろう。はじめて語られる言葉を、ぜひ新作を聴きながら読んでみてほしい。

日本のインディ・シーンに興味がないんですよ。対バンやって見ることになったバンドでも、本当に意味わかんないバンドが多い。 (加藤)

プロフィールには2015年末に結成とありますが、バンドのなりたちを詳しく教えてください。

加藤寛之(以下、加藤):15年の11月にはじめてスタジオに入って、12月に初ライヴをしたんですよ。21日か、22日だったかな。当時サポートで入ってくれていた、ガースー(菅澤捷太郎)がやっているBullsxxtというバンドの企画でライヴをしたのが最初です。その時はキーボードの林を抜いた3人体制でした。

福田喜充(以下、福田):自分はそれより前から今とは別のメンバーで音楽はずっとやってて。大学のジャズ研究会の先輩と組んで、その時から今ある曲も演奏してたんですけど、ドラムの人がロサンゼルスに行くことになったんで、またバンドを組み直して……。すばらしかになるまでに10回くらいバンドを組み直してます。

ふたりが出会ったのはいつでしょう?

加藤:僕と喜充は大学の同級生なんです。お互いの共通の知り合いとしてまずガースーがいて、彼は喜充のいたジャズ研と、僕が所属していた現代音楽研究会のどっちにも入っていたので、それでつないでくれた。ある日大学の中庭にガースーや何人かの人が集まってたから、近寄ったらその中に喜充もいて、ギターを弾いてたんですよ。そこではじめて話したんだったかな。そこから交流がはじまって、色々と話す中で喜充が曲を作ってることを知った。その時に“灰になろう”を歌ってくれたんだけど、冒頭30秒聴いただけで「これすごくいい曲だな」と思った。

福田:その頃は違う人とバンドやってたんですけどね。ヴォーカルは別の人で、自分はギターだけ弾いていたけど、たまたまその日は自分で歌ってた。

加藤:その時からライヴはやってたんだっけ?

福田:いや、ライヴ活動はしてなかったな。で、それから自分がまた新しいバンドを組もうと思った時に加藤の存在を思い出して。加藤を誘って、なかじ(中嶋優樹)を誘ってはじまりました。

中嶋さんはどういう経緯でバンドに加入したんですか?

加藤:「ドラムはなかじがいい」って喜充が言ったんだよね。

福田:なかじとは幼馴染なんですよ。小学校の時から一緒で、高校ではバンドもやってました。

高校の時はどんな音楽をやってたんですか?

福田:この前久しぶりに高校の時の音源聴いたよね。車の中で。

中嶋優樹(以下、中嶋):まあ……ロックンロールって感じですね。

(一同笑)

中嶋:今より全然ロックンロール。

演奏していた曲はオリジナルですか?

中嶋:オリジナルとカヴァーで半々くらいかな。

福田:カヴァーは村八分とか、ローリング・ストーンズの“ミッドナイト・ランブラー”とか。村八分がけっこう多かったよね。

中嶋:新宿JAMでね。

サポートの林さんはどういった経緯でバンドを手伝うようになったのでしょう。

福田:林とは、自分が何度もバンドを組み直していたうちのひとつで一緒にやっているんです。

林祐輔(以下、林):そうだね。

加藤:喜充が「やっぱりキーボード入れたい」って言って、最初はWanna-Gonnaってバンドの古口くんが手伝ってくれていたんですよ。でも、古口くんは自分のバンドや他のバンドのサポートもあってなかなか忙しい。でも、林は暇そうだったので……(笑)

林:それでスタジオ入って、なんだかんだ定着してますね。

福田さんはバンドを何度も組み直していたそうですが、その間に音楽性も変わっていったんですか?

福田:基本的には変わっていないです。でも、前はもっとごりごりのブルースばかりやってましたね。すばらしかになったあたりからいろんなタイプの曲をやるようになりました。

加藤:すばらしかを組む前からある曲も多いよね。

福田:“灰になろう”と“嘘と言え”は2015年くらいに作ったかな。“地獄が待っている”はそのもう少しあと。でも特に人前で演奏することはほとんどなかったです。

意味を込めずにそれっぽいことを言うというか。デヴィッド・ボウイが何かで「適当なことを言っておけば意味は聴く人が考えてくれる」と言っていて。自分はその考えでやってます。 (福田)

皆さんどんな音楽を聴いてきたんでしょうか?

福田:親が音楽好きで、小さい頃から家や車の中でビートルズやスティーヴィー・ワンダー、YMOとかがよく流れていました。その中でもずっと聴いているのはストーンズとボブ・マーリー。それとは別に自分からはじめて好きになったバンドはTHE BLUE HEARTS。小2の時、MTVで“夢”って曲のライヴ映像が流れてて、それでハマりました。そこから色々とロックを聴くようになって、ちょっとしたらギターをはじめて。だからロックとブルースが自分のルーツにあると思います。

加藤:僕も親が音楽好きで、スティーヴィー・ワンダーとかザ・ビーチ・ボーイズとかは家でずっと流れてました。あと、母親がちょっと変わってて、アート・リンゼイとか、彼がやってるジャズ・グループのラウンジ・リザーズをよく流してました。それはめっちゃ覚えてます。

ポップな曲と前衛的な音楽と、両方が身近にあったんですね。

加藤:でも小さい頃はポップな曲ばっかり好きでした。ザ・ビーチ・ボーイズの“Wouldn't It Be Nice”って有名な曲あるじゃないですか。超ポップでめっちゃいい曲だなと思って、小学校の時よく聴いてたんですけど、後半のコーラス・パートはなんか気持ち悪くて嫌いだったんですよ。だから前半だけ聴いて、途中で切ってました(笑)。それから中学・高校生の頃から色々な音楽を聴くようになるんですが、渋谷系にハマっていた時期にたまたまこの曲を聴き返したら、あんなに気持ち悪かったコーラス・パートがすごく良く聴こえて。それからソフトロックとかも聴くようになりました。

中嶋さんはどうでしょう?

中嶋:喜充が持ってきたTHE BLUE HEARTSのカセットテープかな。

福田:俺が貸したんだっけ?

中嶋:いや、学校に持ってきた。で、置いてあったラジカセでそれを聴いてハマって。一緒にTHE HIGH-LOWSのライヴ行ったんだよね。

福田:そうだ!(笑) なかじがTHE HIGH-LOWSのチケット取ってて、それで一緒に行くことになって。初めて見たライヴがそれでしたね。その時まだ小学5年生で、ふたりとも親同伴で(笑)。

中嶋:それからハードロックを聴いたり、一通りのジャンルは聴きましたね。ルーツになってるのはハイロウズと、あとはザ・フーかな。

ドラムをやりはじめたのはいつからですか?

中嶋:小5の時ですね。家の倉庫に父親が買ったゴミみたいなドラムがあったんで、それを叩いてました。

福田:TAMA(星野楽器)から出てるYOSHIKIモデルだっけ。

中嶋:いや、高橋幸宏モデルらしい。

なるほど(笑)。ということは親も音楽好き?

中嶋:なんかYMOしか流れてなかったですね。ずっとYMOしか流さないんで、気持ち悪かった。ぴこぴこしてるなー、みたいな。

林さんはどんな音楽を聴いてきました?

林:僕は母親が元プロで、バンドをやっていて。バンド名が「SCANDAL」って言うんですけど(笑)。

加藤:メジャー・デビューもしたんだよね。

林:クリエイションの竹田和夫さんのプロデュースでメジャー・デビューしたんですが、売れなかった(笑)。だから小さい頃から家ではよく音楽が流れてました。キャロル・キングとか、ビリー・プレストンとか。中学の時はL'Arc~en~Cielとか、当時の学生が聴いてるようなものを聴いていて、高校くらいでビートルズを聴きはじめました。そこからドアーズ、ザ・バンドあたりを聴くのと並行して、友達の影響でウルフルズにハマって、サム・クックとかの黒人系アーティストも聴くようになっていきました。

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はっぴいえんどは好きですけど、そこから影響を受けたバンドとかは、別に興味がないんですよね。 (加藤)

全員の話を聞くと、洋楽のレジェンド的なアーティストからの影響が強いんですね。

加藤:はっぴいえんどとかも聴いてましたよ。だけどあくまで数ある音楽の一部で、超好きってわけではないです。

福田:洋楽のほうが影響を受けてますね。世界広いじゃないですか。

加藤:そのうちの日本の、格好良い音楽って感じです。

日本とか海外とか、そこにボーダーはないってことですね。じゃあ、自分たちの音楽をやる上で一番強く影響を受けたバンドを挙げるなら?

加藤:なんだろう……ザ・バンド?

福田:いや、これといったのはないと思う。僕のその日の気分でやりたい内容がまったく変わってくるので。ザ・バンドの気分だったらそれっぽくやりたくなるけど、次の日はファンカデリック、その次はレゲエとか、ころころ変わるんですよ。

中嶋:こっちも色々やらされるから疲れるよね。

(笑)。作曲は福田さんですよね。そこにも気分が反映される?

福田:というか、気分しかないって感じです。

作詞はどうですか? 誰か影響を受けた人とか。

福田:一番はハイロウズかなあ。ヒロトとマーシーの詞には影響を受けてますね。

ああ、わかる気がします。現実主義的だけど、熱さもあるというか。

福田:でも意味よりは雰囲気的なノリ、面白さを重視してます。意味を込めずにそれっぽいことを言うというか。デヴィッド・ボウイが何かで「適当なことを言っておけば意味は聴く人が考えてくれる」と言っていて。自分はその考えでやってます。

加藤:適当ばっかりじゃなくて、意図的に狙ってる部分もけっこうあると思うけどね。僕は今回のアルバムについてはどの曲の歌詞もすごく好きですね。

アレンジはどうしているんでしょう。

加藤:喜充は曲作る時にオケも浮かんでることが多いんでしょ。

福田:リズムありきで考えたりとか、外側から作っていくことが多いんですよ。

加藤:そのイメージをまず喜充から聞いて、それをスタジオで実際に試してみて、という進め方。アレンジが変わらないこともあれば、大きく変わることもあります。

今回、アレンジが大きく変わった曲はありました?

福田:1曲目の“大雨のメロディ”は最初シャッフルビートだったんですよ。それこそビーチ・ボーイズの“Wouldn't It Be Nice”に、ザ・ロネッツのメロディを乗せて、軽快なポップ・ナンバーにしたいと思っていたんですけど、途中からオアシスの“Supersonic”みたいにしようってなって。それでああなりました。

加藤:逆に“紗のかかった白黒”とか“嘘と言え”、“灰になろう”は最初のイメージ通りの曲かな。

今回リリースされる「灰になろう」の全国流通盤にはショーケンこと萩原健一の“お元気ですか”のカヴァーも入っています。これは誰の発案なんでしょう?


すばらしか - 灰になろう
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Indie Rock

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福田:それは僕ですね。親の影響もあるんですけど、ショーケンは昔からずっと聴いていて。“お元気ですか”は最近知った曲なんですけど、バンドでやったらハマりそうだなと思いながら半年くらいやろうと言えずにいたので、このタイミングでやってみようと思って、今に至ります。

すばらしかの楽曲と並んでも違和感がなくて、馴染んでますよね。だけど同時に、オリジナルの曲とは違う時代の空気感があったりもして。あの曲があることですばらしかが2010年代のバンドなんだってことがくっきり浮かび上がる気がしました。同世代のアーティストでは、どんな音楽を聴いてますか?

福田:ツイン・ピークスとか、レモン・ツイッグスとか。あと同世代ではないけど、同じ時代のバンドとしてはアラバマ・シェイクスも。日本だとよく対バンするバンドのみんなの音源ですかね。

加藤:よく対バンしているCar10とかJAPPERS、suueat.とかは聴きますね。あと、SaToAもすごく好きです。

福田:でも、あんまりインディ界隈ですごく聴いてるバンドっていないかなあ。

中嶋:俺は最近、海外だとレモン・ツイッグスとか聴くかなー。国内だとSaToAとか、加藤や喜充が教えてくれた友達のバンドが好きです。

加藤:あんまり共感できるバンドはいないかもしれない。日本のインディ・シーンに興味がないんですよ。対バンやって見ることになったバンドでも、本当に意味わかんないバンドが多い。きっと音楽の趣味やルーツも違うんだろうなって思うんですよ。

中嶋:でも話してみると意外と同じ音楽聴いてることあるよね。

加藤:そのパターンね(笑)。すっごい不思議だよね。

すばらしかの音楽って、もちろんストーンズとかのエッセンスもあるけど、日本語ロックの流れを汲んでるように聴こえると思うんですよ。最近ははっぴいえんどからの影響を感じさせるバンドも多いけど、彼らの音楽についてはどう思いますか?

加藤:ジャンルとして括られる分にはそうなのかなと思うんですけど、やっぱりはっぴいえんどやシュガーベイブは多々ある聴いているものの中の一部でしかなくて。はっぴいえんどは好きですけど、そこから影響を受けたバンドとかは、別に興味がないんですよね。この前思ったのは、僕ははっぴいえんどのメンバーと趣味が似てるんじゃないかな、ということ。彼らと同時代にいたら仲良くなれたんじゃないかと思うけど、そのはっぴいえんどから影響を受けた人たち、には別に興味が湧かないです。

「わざわざこいつら聴く?」みたいなバンドがすごく多いと思うんですよ。完全に同じことやってるだけで、それやってて面白いのかなって。 (福田)

同時代の音楽について言うと、加藤さんは自身のTumblrで「無駄な音の広がりと変な低音の作り込みで綺麗に見せかけた、最近のやたらキラキラした音のバンドばかり聴いていても、人生において何の発展性もないと思います」と書いています。同時代のバンドにあまり興味がないのは、そのこととも繋がっている?

加藤:僕、音質がきらきらしたハイファイな今の音楽って聴けないんですよね。iPhoneで流したり、YouTubeで聞き流す分にはいいんですけど、イヤホンでじっくり聴くことができないんです。あれは単純にそういう意味で言ったんですけど、まあ深夜に書いたってこともあるので、そういうものだと思ってもらえれば。

福田:もともと「灰になろう」の自主盤は大学のスタジオに機材を持ち込んで録音して、自分でミックスしたんですよ。あれはそこから派生しての発言でもあるよね。自分も録音には慣れてなかったから、いわゆる良い音で録れているわけではなくて。

加藤:でも全員が納得する出来になったと思います。Tumblrにも書いてますけど、綺麗な音だけが良い音じゃないんで。

録音のローファイな質感は、バンドの方向性を補強する良い結果になったと思います。でも、加藤さんの文章からは音質の話以上に今の音楽に対する批評性というか、反骨心が宿ってると感じましたが。

加藤:うーん、僕は自分たちの音楽にはオリジナリティがあると思っているし、やるからにはオリジナリティがないと意味がないと思うんですよね。でも、今のバンドって誰かがやったことの模倣やいいとこ取りばっかりで、それが感じられないものも多い。そういうの、めっちゃつまんないなって思うんですよ。反骨心っていうか、僕はただ自分の音楽がそうならなくて良かったなって思ってます。価値観はなかなか変わらないから、一度ダサい感じで音楽をやっちゃうと、一生ダサいまま生きていかないといけない。僕はそうならなくてラッキーだなと思います。

福田:加藤がいちばん今の音楽シーンに対してもいろんなことを思ってると思います。俺はそこまで思ってないですよ。

加藤:(笑)。喜充は優しいんだよね。

じゃあ、自分たちのオリジナリティってなんだと思いますか?

加藤:本当の意味で、日本語でロックができてることですかね。オリジナリティって言葉にできないものだと思うけど、客観的に見たらこういうバンドっていないと思いますよ。

福田:なるべくいろんなタイプの曲をやりたいとは思ってます。僕が好きなタイプの曲は全部やりたい。それを自分たちの日本語で、オリジナルとして出すことが個性なのかなと思います。日本語で歌うことには林も相当こだわって、オリジナリティを重視してるよね。

林:そうだね。こだわってるというか、英語でやる意味がよくわからない。母国語でやるほうがしっかり表現ができると思うから。

加藤:いわゆるザ・日本語ロックンロール・バンドみたいな人たちいるじゃないですか。個人的にはチバユウスケと浅井健一が生み出してしまった功罪だと思ってるんですけど(笑)。そういう人ってロックであろうとするんですよね。ファンク・バンドの人たちもアティテュードからファンク・バンドをやろうとする。そういうのって真面目だなっていうか、誰かにやれって言われてるみたいだなと思う。

福田:「わざわざこいつら聴く?」みたいなバンドがすごく多いと思うんですよ。完全に同じことやってるだけで、それやってて面白いのかなって。でも、自分はどうしてもどこかふざけたい、スパイスを加えたいと思うところがあるから、それが個性に繋がってるんじゃないかとは思いますね。

バンドっていうスタイル自体がなかなか新しいものを生み出しにくい段階に来ているんじゃないかと思うこともあるんですが、すばらしかはそうは思わない?

福田:バンドに限らず音楽自体ネタは尽きてるんじゃないですかね。今から完全に新しいことができるとは思わないけど、才能次第でブレンドすることはできる。それで面白い音楽がやれたらいいなと思います。

今の自分たちにはその音楽ができていると思う?

福田:思います。これからも、そういう風に自分のやりたい音楽ができていればなんでもいいです。

CDがリリースされて、これからどうしたいという展望はありますか?

加藤:まず、素直に大勢の人に聴いてほしいですね。

中嶋:俺は今後については何も考えてない。やりたいことがなくなったらやめるだろうし。

福田:このバンドがいつまであるかも全然わからないです。だからやりたいことができるようにこれからも頑張って続けていきたいですね。今、音楽以外でやりたいこともないんで。

Loke Rahbek - ele-king

 コペンハーゲン出身、1989年生まれのローク・ラーベクは、レーベル〈ポッシュ・アイソレーション〉の主宰者であり、同レーベルからアルバムをリリースするエクスペリメンタル・ノイズ・ユニット、クロアチアン・アモール、ボディ・スカルプチャーズ、 ダミアン・ドゥブロヴニクのメンバーでもある。さらにはブルックリンのインディ・レーベル〈セイクリッド・ボーンズ〉からリリースしているエレクトロ・ポップ・ユニット、ラスト・フォー・ユースのメンバーとしても知られており、まさに現在のユース・サウンドを象徴する重要人物といえよう。
 そのローク・ラーベクがソロ・アルバムを、ウィーンのエクスペリメンタル・ミュージック・レーベルの老舗〈エディションズ・メゴ〉から発表した。自身の名義が刻印されたアルバムは、2015年にピュース・マリーとの共演作『ザ・フィーメール・フォーム』を〈ポッシュ・アイソレーション〉からリリースしているが、単独でのソロ・アルバムは『シティ・オブ・ウーマン』が(公式には)初である。彼に目を付けた点は、さすが長年にわたってエクスペリメンタル・ミュージック界の先端的キューレーションをおこなってきたこのレーベルならではの審美眼ともいるし、自身のソロ・アルバムを〈ポッシュ・アイソレーション〉からのリリースにしなかったあたりにローク・ラーベクのセンスの良さを感じたりもする(まあ、このへんは結局、すべて繋がっているともいえるから一概にはいえないだろうが)。

 それしても『シティ・オブ・ウーマン』は素晴らしい。現代的なモダン・ノイズ・アルバムでありながら、ノスタルジックな音楽の記憶の欠片が散りばめられているような音楽性で、イマジネーションが強く刺激される。ハードなノイズ、ノスタルジックなピアノなどの楽器音、消えかけた刹那の絶叫のような声の残滓、強く、しかし怠惰に打ち付けられる打撃音。その音のどれにも「血の匂い」がするのだ。不穏でもある。官能的でもある。構築と衝動が高密度に結晶しているとでもいうべきか。〈ポッシュ・アイソレーション〉のノイズ・アルバムがそうであるように、この作品にも繊細な知性と衝動性が同時に共存しているのだ。
 アルバムはA面に4曲、B面に5曲、計9曲が収録されている。時間にして33分ほどだが、ノイズ/ミュージックは聴き手の時間感覚を失調させるものだから、実時間と音響作品の密度は(それほど)関係はない。ちなみにマスタリングはお馴染みのラッシャッド・ベッカーが手掛けており、録音作品としての品質をさらに上げている。
 硬質なノイズによって始まる1曲め“ライク・ア・スティル・プール”のサウンド・レイヤーは、まるで波のように聴き手を本作の音響空間へと連れていく。音の波へと意識をダイブされた後は、2曲め“フェルメンテッド”で、深海を漂う意識/記憶のように静謐な音響空間の海に浸ることになるだろう。ここでは断片的なピアノの戦慄が鳴り、微かな環境音や楽器音が淡く交錯する。3曲め“シティ・オブ・ウーマン”は、ティム・ヘッカー以降の最先端アンビエント・ノイズ・ドローンが展開される。持続音をダイナミックに、繊細に変化させ、そこにノイズや変形したヴォイスのような細やかなサウンドを重ねていく。とてもドラマチックなアンビエント/ドローンだ。このトラックこそアルバム前半のクライマックスである。

 4曲め“ア・メス・オブ・ラブ”は、何かをカウントするような音と、それとまったく関係ない静謐な持続音がレイヤーされ、やがてエレクトリック・ギターのようなコードと聖歌隊のように澄んだアンビエンスが交錯する。トラックの音響全体にどこか「非同期的」な感覚があり、坂本龍一の新作『アシンク』と共通するようなムードがある(これは興味深い偶然だ)。
 そんな非同期的なムードのままアルバムA面は終わり、B面1曲め(5曲め)“パーム”になる。この曲は後半のオープニングを飾るに相応しい不穏なトラックだ。続く“イン・パイルズ・オブ・マガジンズ”では不規則な打撃音と硬いノイズ、衝動的に打たれるキックの音などがまたも非同期的にレイヤーされていく。楽曲は後半になるに従いノイジーになり、何か深い呼吸音のような音、過剰にエディットされた環境音のようなサウンドたちが不穏なムードを演出する。そして僅か50秒程度のインタールード的な“ア・ワード・ア・デイ”は、美しく静かなピアノ曲。短い曲だがアルバムを聴き終わると、この50秒間の音楽/音響の印象が強く残るのが不思議だ。その僅かな休息を挟んで、アルバムはラスト2曲“スウィムウェア”と“テイク・プレジャー・イン・ハビッツ”へと至る。硬く、過激で、硬質で、メタリック。まさにサウンド・オブ・ノイズ。そんなノイズの快楽に酔いしれているうちに、あっという間にアルバムは終わる。

 同時期に〈ポッシュ・アイソレーション〉からリリースされた ローク・ラーベクとクリスチャン・スタッドスゴーアのユニット、ダミアン・ドゥブロヴニクの新作『グレート・メニイ・アローズ』(こちらも傑作)を聴いても分かるのだが、 ローク・ラーベク、〈ポッシュ・アイソレーション〉らコペンハーゲンのニュー・エクスペリメンタル・ノイズ・サウンドには、どこかアンビエント化したブラックメタルかのごときアトモスフィアを強く感じる。それは『シティ・オブ・ウーマン』でも同様だ。

 崩壊しつつある「世界」への不満・不穏と、ロマンティックな「美」への憧れと衝動の交錯。欧米中心の世界が壊れていく21世紀初頭のユース・ノイズには、確かに、反抗的で、しかし美を強く希求するエモーショナル/ロマンティックな意志が強く刻印されている。だが、私などは、そこに、不思議と、まったく音楽性が正反対であるにも関わらず、どこか80年代のネオ・アコースティックな音楽と同様の匂いを感じとってしまうのだが、どうだろうか? そこにこそ彼ら特有の血の匂いの本質が隠されているように思えてならない……。

1 はじめにドラムありき - ele-king

 ある事情から、ドラムを叩くのではなくて、ドラムのことを書かないといけないことになって、つまりドラムのことを考えないといけなくなったら、少しドラムが上手くなった気がする。
 これは意外なことだった。当たり前と言えば当たり前だけど、僕は書いている最中、つまり考えている最中、ドラムを叩く時間が少なくなっていることと、文章が全くものにならないことへのストレスに苛まれているだけだ、と思っていたのに、ドラムセットの前に座ると不思議と力が抜けて、クリアしたいと思っていたことや、今まで気付かなかったことができるようになっていたりする。時間を置くことによって、知らず知らずのうちについていた変な癖が自然となくなるということもあると思うが、考えること、それから、聴くことがこんなにも影響するのか、わかっていたつもりだが再確認させられた。

 今までは、仮説を立ててそれを実践していくということが多かった。どんな仮説か大雑把に言うと、自分の平坦なリズムも、育った環境から鑑みると致し方ないこととし、ドラムを叩く前にパーカッションを叩きリズムの成り立ちに少しでも触れた後、ドラムに孵化させれば、ワールドワイドなリズムの感覚と、嫌でも付きまとう日本らしさが、ちょうどいいところに落とし込まれて、ちょっと違うドラマーになれるのではないか、と言ったところだ。10代の終わりから20代をフルに使っての実践の成果は当たらずとも遠からずといったところで、結果から言うと、いろんな打楽器をやってきてよかったけど、そんなに固く考えなくてもいいんじゃないか、というところ。そこまで、やっと来た。それは、これまでの否定ではなくて、段階だ。考えなくても、平坦でありきたりのドラムはもう叩けなくなった。それは嬉しいことだけど、それだけのことだ。これも仮説というか、妄想に近いが、やっと海外かどこかの子供くらいにはなった、といった感じ。J-POPのことなんて忘れ去ってしまいたかった。
 そう思い返してみたものの、やっぱり今までだって聴くことに重きを置いていた。機材と同じ程には……いや、機材なんて学生時代に一生懸命集めたからバンドでもなんとかなったようなもので、レコードばかりに僅かのお金をはたいて来た。レコードはなかなかどうして、いい。アイデアが、逡巡の傷跡が、その時にしかなかったものが、密かに刻まれている。そのことを思ったら、自分なんて音楽に隠れてしまわないといけない。どうせ顔を出すときは出す。

 所謂ドラマーとしての基礎を飛ばしてきてしまったので、少しは迷惑かけないようにしていかないといけないし、そこはそれこそ考えることでクリアしていかないといけないのだが、まだこんなことばかり思っている。最近は、USインディーのドラムが面白い。リズムの間が豊かで平坦ではないことはもちろん、アイデアが詰まっていて、聴いていて面白い。ステラ・モズガワ嬢、ジャスティン・サリヴァン、いいリラックス具合にシンプルに音楽を昇華させるようなアイデア、ジェイ・ベルロウズ、自由自在、断トツな実力を凌駕する湧き出るアイデア、やや、挙げるとキリがないのだが、リズムが大切にされている上でのアイデアという感じで面白い。ジョン・フェイヒーのリズムへの意志が伏流水のように上がってきたかのような浪漫も感じる。フリート・フォクシーズの新譜なんて音楽がドンと提示されまくっていて楽器のことなんて一回聴いただけでは覚えていません(A,B面でお腹いっぱい。長く聴いていくことが出来そう、というか必要……)。ハットがなくて、他の楽器がキープしているような、理に適った形のアレンジも多くて、聴きやすいし、かといって物足りなくない。
 そういう音楽に触れていると創作欲求を刺激される。これからは仮説じゃなくて、実験だ。仮説を元にやったことは考え過ぎなくてよくなったから、考えるウエイトを少しアイデアに移すことができる。岡田のソロ・アルバムがもうすぐ出るはずだが、彼は僕のドラムのことをよく知っている上で、アイデアを投げてきたり、引き出させたりする作業が面白かった。僕には浮かばないこれをやらせたらどうなるかとか、こういう曲では僕はどうやるだろうかとか、「いままでやってきたことを全部忘れて」なんて言われて叩いた曲もあった。「やってやろうじゃないか」と奮闘するも、そこそこのところ以上は意識しても簡単に消えるものでもない。そこもバレていたのかどうか、まぁいいや。

 今までやってきたことを止めるわけではない。まだ「どこかの子供」レベルだ。大分に拠点を移してからは、地元のアフリカンチームの練習に参加して、ジェンベやドゥンドゥンを叩くのが毎週の楽しみになっている。アフリカ帰りの大ちゃんに刺激ビンビン、できないとすごく悔しくて、質問攻めを食らわせるのが毎回だけど、とにかく楽しい。向こうも楽しそうだ。
 忘れるということは、覚えること以上に難しい。やっと、忘れることじゃなくて覚える段階に来たような気がしている。

電気グルーヴ - ele-king

 滅多にないことだけれど、電気グルーヴに興味を持ちはじめた人からどのアルバムがお勧めかを聞かれることが時々あって、嬉しい反面なかなか回答に困る。ライブの定番曲が入っているアレか、ヒット曲が収録されたアレか、ナンセンスな魅力が濃縮されたアレや、聴きやすいベスト盤のアレ、ジャケで選ぶとアレだし、いっそ初期から聴くならアレとか、いやいや企画ものアレこそお家芸じゃないか、とアルバムの数だけこちらも思い入れもあるわけで、どの部分を知ってもらいたいかという手がかりを探しながら、尚且つ誰よりもベストなチョイスをしたいという陳腐な使命感まで出てきて、頭はどんどんこんがらがっていく。

 ならば逆に何を勧めても良いはずで、いまなら一番新しいアルバムの「TROPICAL LOVE」を迷わず差し出すことにする。前作「人間と動物」から4年ぶりとはいえ、その間の状態の良さは1昨年に公開された映画「DENKI GROOVE THE MOVIE?」と、昨年のフジロック・フェスティバルでのクロージングアクト、そして石野卓球のソロでもしっかり確認できているし、トレンドに構わずいっちばん面白い音楽を作るようになってからの電気グルーヴは強い。

 アルバムの蓋を開けると、ピエール瀧の歌唱の裏で無駄にかっこいいkenkenのベースと動物の鳴き声が飛び交う「ど」が付くほど電気グルーヴ感丸出しの“人間大統領”や、ファンにお馴染みのまりんの声がサンプリングされたシュールな“東京チンギスハーン”など、はじまりこそ破壊力のある電気グルーヴのままで進んでいくけれど、聴いていくうちにいつしか新しいエレクトロニックな楽園に迷い込んでいく。それは艶々とした手触りのいいジャケットのようにエキゾチックな感触。清々しいほどリスナーの内面に全く響いてこない歌詞、なのに不思議と口ずさみたくなるようなメロディ。とくにじわじわとアシッドな余韻を残して消えていく4曲目“プエルトリコのひとりっ子”から軽めのブレイクビーツが堪らない“柿の木坂”、ベースラインを活かした“Fallin' Down”、インスト曲の“ユーフォリック”へと続く流れは、その名の通りに違う場所へと導いてくれる。

 そして何と言っても素晴らしいのがタイトル曲の“トロピカル・ラヴ”で、チル・アウトなムードを漂わせたイントロから始まる南国テクノ・ポップのマイルドな中毒性に、脳がじわじわ蝕まれるよう。とある雑誌のアルバム発売時の特集で、グアムの海で満面の笑みを浮かべた水着姿の半裸の中年男性こと電気グルーヴの2人のはしゃいだ写真の上に

「GOサイン NOサイン 曖昧なサイン 始まりの気配? トロピカル・ラヴ…」

 と、歌詞の一部が添えられたページがあって、それを見たとき、わ、これこそ電気グルーヴがやろうとしていることそのものなのではないだろうかと感心してしまった。一見触れただけではわからない、冗談と本気の境目をなくした、ポップで特殊なもの。スチャダラパーのBOSEは“今夜はブギーバック”の制作について「クオリティと契約の両方の責任を取った」と話していたけれど、電気グルーヴも“シャングリラ”で同じことをやり遂げたはずで、その後も大衆性を失わず、20年後のいまもこんなにフラットで心地よい曲に謎のエッセンスを注入して、カラオケ文化の廃れない日本にまだ落とし続けていることを思うと、さらに心を打たれる。

 アルバムの終盤には夏木マリのヴォーカルとスパニッシュ・ギターが効いた大人っぽいハウスを披露し、そのまま美しくフェードアウトするのかと思いきや、最後に何とも不気味な曲をじんわり置いていく。「トラックは良いけど……」という気休めが通用しないほど言葉と音が密着して背後にこびりつき、なぜいま自分はエフェクトのかかったガマガエルの歌を聴いているのだろうか……? と湧き上がる疑問をどこにぶつけていいのかわからず終い。さっきまでの気持ちのいい流れを無かったことにするかのように終わるのが恐ろしくて、結局また始めからリピートしてしまう。“Stand By You”。齢50にしてこの言語センス。電気はリスナーを突き離さず、むしろ道連れにする。優しいんだか優しくないんだか。

 7月26日には「TROPICAL LOVE」のインスト盤「TROPICAL LOVE LIGHTS」が発売されるとのこと。今年の電気は豊作らしい。ダンス・ミュージックとお茶の間のあいだの何も無かった場所に何年も畑を耕し続け、出来た土壌にいろんな種を蒔き、産地不明の謎の肥料を与えて、そこにたくさん実った奇妙な色の果実を、ここが一番美味いと私達はありがたく食べ続けている。きっともぎたてが一番美味しいはずだから、誰かに少し分けてあげようか。見えないくらい小さな文字で「毒入り注意」と添えて。

〈The Trilogy Tapes〉 - ele-king

 スケシンさんがデザインを手掛けるC.Eといえば、日本のクラバー御用達のブランドですが、ロンドンのWill Bankheadが主催するレーベル〈The Trilogy Tapes〉とも親交が厚く、これまでに何回もパーティを企画しています。その流れでC.Eのショップにはミックステープなども置いてあるわけですが、つい昨日から、「TTT MOUSE T」という名前のロングスリーブTシャツも売られているようです。C.Eのショップだけ((ウェブでの販売はなし)での販売だそうで、好きな人は早めに行かないとすぐに売り切れちゃいますよ~。
問い合わせ:C.E 03-6712-6688 www.cavempt.com

Washed Out - ele-king

 2000年代から2010年代に切り替わるころ、音楽シーンにトレンド・ワードとして登場したチルウェイヴ。ネオ・サイケやバレアリック感覚に包まれたドリーム・ポップ~シューゲイズ・サウンドというのがその実態で、トロ・イ・モアやネオン・インディアンなどと共に、筆頭アーティストにウォッシュト・アウトことアーネスト・グリーンがいた。〈メキシカン・サマー〉から発表したデビューEP「ライフ・オブ・レジャー」(2009年)、〈サブ・ポップ〉からのファースト・アルバム『ウィジン&ウィズアウト』(2010年)など、「サマー・オブ・ラヴ」や「セカンド・サマー・オブ・ラヴ」の2010年代版とでも言うようなピースフルでメランコリックなムードのそのサウンドは、当時のチルウェイヴ・ムーヴメントを体感するのにピッタリな、まさに入門書的なアルバムと言えるだろう。〈ワイアード・ワールド〉から発表したセカンド・アルバム『パラコズム』(2013年)は、『ライフ・オブ・レジャー』や『ウィジン&ウィズアウト』の世界をより享楽的で開放的なものへ向かわせ、それまでのベッドルーム・サウンドがフェス向けのダイナミックなものへと進化していた。ところで、この頃になるとチルウェイヴという言葉にかつての勢いはなくなり、ブームは過ぎたという見方をするメディアも少なくなかった(もっとも、勝手に名付けて盛り上げていたのはそのメディアなのだが)。だが、アーネスト・グリーンはそうした周りの反応はどこ吹く風といった具合で、いたってマイペースに自分の音楽を貪欲に広げていった。彼自身は周囲の評判には惑わされないタイプで、当時のインタヴューを読むと、「フランク・オーシャンやプールサイドなどの新しいサウンドも面白いけど、ヴァン・モリソンの『アストラル・ウィークス』など昔のレコードから影響されるところも大きいし、メロトロンなど古い時代の楽器や機材を使って『パラコズム』を作った」と述べている。

 チルウェイヴのアーティストたちは季節で言えば夏のイメージで、ウォッシュト・アウトも『ウィジン&ウィズアウト』や『パラコズム』を夏シーズンに合わせてリリースしていた。そして、『パラコズム』から4年ぶりとなるこの夏に、新作の『ミスター・メロウ』を発表した。アルバム・タイトルはウォッシュト・アウトらしいけれど、驚いたのは今回のリリース元が〈ストーンズ・スロウ〉に変わったこと。両者にはこれまで接点らしい接点もなく、〈ストーンズ・スロウ〉もこの手のサウンドに強いイメージがなかったのだが(あえて挙げれば、ステップキッズあたりに共通するムードがあるか)、この新たな結びつきによってウォッシュト・アウトのサウンドはまたひとつ前進したようだ。たとえば、それは制作方法の変化にも表われている。『ライフ・オブ・レジャー』や『ウィジン&ウィズアウト』の頃はサンプリング中心の、まさしくベッドルーム・スタジオで作った宅録サウンドだったが、『パラコズム』では生演奏を中心として、前述のようにメロトロンなど凝った楽器・機材も用いていた。『ミスター・メロウ』はその両者のプロセスの良いところを混ぜたもので、サンプリングした素材を発展させてメロディを構築し、そこに新たな楽器演奏や歌を加えてより高度な作品へと編曲しているところが見受けられる。その好例が“ハード・トゥ・セイ・グッドバイ”で、この曲の下敷きとなっているのはイタリアのジャズ・ミュージシャンで作曲家のアメデオ・トマッシによる1970年のサントラ『トーマス』。最近リイシューされたようだが、よほどのサントラ・マニアでないと知らないような超レア盤で、そんなところからサンプリングしてくるあたり、グリーンが実にたくさんの幅広い昔の音楽を聴いているかがわかる。そして、それをハウス・ビートと結び付けて発展させているわけだが、『ミスター・メロウ』はいつも以上にダンス性や享楽性が前面に出てきている。ラウンジ・ジャズをスペイシーで多幸感に満ちたハウス・サウンドへと変換した“ゲット・ロスト”がその典型で、こうした方向性はジェイミー・エックス・エックスの『イン・カラー』やザ・エックス・エックスの『アイ・シー・ユー』と同じベクトルを持つ。レイドバックしたメロウ・ファンクの“バーン・アウト・ブルース”、セルジオ・メンデス&ブラジル66のようなボサ・ロックを取り入れた“フローティング・バイ”では、レトロな音楽や楽器演奏を意図的に素材にしているわけだが、そうした点で一旦は生演奏に傾倒した後、改めてサンプリング・ミュージックの面白さや可能性に気がついたアルバムではないだろうか。

Mount Kimbie - ele-king

 ポスト・ダブステップの臨界点を突破した『Crooks & Lovers』から7年、〈Warp〉へと移籍してポスト・ポスト・ダブステップを探究した『Cold Spring Fault Less Youth』から4年……ようやくである。ドミニク・メイカーとカイ・カンポスからなるデュオ、マウント・キンビーが3枚めのアルバムをリリースする。その新作には、かつてマウント・キンビーのライヴ・メンバーであったジェイムス・ブレイクも参加している。00年代末期、マウント・キンビーもジェイムス・ブレイクもそれぞれに固有の方法で、それまでのダブステップを過去のものにしてしまったわけだが、ときの流れは恐ろしいもので、それからもう8年の月日が過ぎ去っている。それはつまり、かつて彼らの音楽に衝撃を受けたティーンネイジャーたちが、新しい音楽の作り手へと成長を遂げているということだ。そんな“いま”マウント・キンビーは、いったいどんなサウンドを届けてくれるのか。リリースは9月8日。

label: BEAT RECORDS / WARP RECORDS
artist: Mount Kimbie
title: Love What Survives

release date: 2017/09/08 ON SALE
BRC-553 ¥2,200(+税)
国内盤特典:ボーナス・トラック追加収録/解説・歌詞対訳付き

label: BEAT RECORDS
artist: yahyel
title: Iron

release date: 2017.06.23 FRI ON SALE

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