「Nothing」と一致するもの

Thomas Fehlmann × The Field × Burnt Friedman - ele-king

 これはすごい。UNITを拠点に展開してきた《UBIK》が新たなイベントを始動します。名付けて《LIVE IN CONCERT》。記念すべき第1回は、驚くなかれ、トーマス・フェルマン、ザ・フィールド、バーント・フリードマンの共演です。エレクトロニック・ミュージックの巨星たちが一堂に会するこの夜、見逃す理由がありません。11月2日の金曜は代官山 UNIT で決まりですね。

ubik presents
LIVE IN CONCERT
featuring
THOMAS FEHLMANN (KOMPAKT)
THE FIELD (KOMPAKT)
BURNT FRIEDMAN (NONPLACE / RISQUE)
produced by UNIT / root & branch

都内屈指のライヴ・ヴェニューである代官山UNITを拠点とするエレクトロニック・ミュージック・イベント《UBIK》が提起する新たなライヴ・イベントがスタート、その名もずばり《LIVE IN CONCERT》。記念すべき第一回目の出演者は、伝説のニューウェイヴ・バンド Palais Schaumburg からキャリアをスタート、盟友 Moritz von Oswald とデトロイト~ベルリンの架け橋としてベルリン・テクノ・シーンの礎を築き、The Orb の頭脳として数々のマスターピースを生み出したマエストロ Thomas Fehlmann が8年振りとなるソロ・ライヴで日本へ帰還。シューゲイズ・テクノと称されメロディアスでオーガニックなサウンドはロック・ファンからも熱烈に支持され、EUダンス・ミュージック・シーンの屋台骨を支える〈KOMPAKT〉を代表するアーティスト The Field は、Live A/V Set で参戦。Thomas Fehlmann は『Los Lagos』、The Field は『Infinite Moment』と共にニュー・アルバムを引っ提げての来日です。更に、Atom™ との Flanger、CAN の伝説的ドラマー Jaki Liebezeit との Secret Rhythms など様々なアーティストとのコラボレーションで常に斬新かつ独特なサウンドでエレクトリック・ミュージックをアップデイトする鬼才 Burtn Friedman が、昨年の来日でも大好評だった 7ch サラウンド・ライヴを披露します。以上3アーティストが出演する《LIVE IN CONCERT》は、数多のエレクトロニック・ミュージック・イベントに一石を投じる正に試金石となることでしょう、お楽しみ下さい!

11.2 fri 東京 代官山 UNIT
Open 18:30 Start 19:30
¥4,000 (Advance) 別途1ドリンク制
Information: 03-5459-8631 (UNIT) www.unit-tokyo.com
Ticket Outlets (Now on Sale): PIA (131-608), LAWSON (74473), e+ (eplus.jp), diskunion CLUB MUSIC SHOP (渋谷, 新宿, 下北沢), diskunion 吉祥寺, TECHNIQUE, JET SET TOKYO, clubberia, RA Japan and UNIT

【関連公演】
11.4 sun 大阪 心斎橋 CONPASS
Live: THOMAS FEHLMANN (KOMPAKT), THE FIELD (KOMPAKT)
*BURNT FRIEDMAN (NONPLACE, RISQUE) の出演はございません。
DJ: Dr.masher (Mashpotato Records)
Open / Start 18:00
¥3,500 (Advance) 別途1ドリンク制
Information: 06-6243-1666 (CONPASS) www.conpass.jp
Ticket Outlets (Now on Sale): PIA, LAWSON, e+ (eplus.jp)
メール予約: mailticket@conpass.jp に件名11/4予約にてフルネーム・枚数を送信

THOMAS FEHLMANN (KOMPAKT)
スイス生まれ。1979年にドイツのハンブルグで Holger Hiller や Moritz von Oswald と共に伝説のニューウェイヴ・バンド Palais Schaumburg を結成。バンド解散後、ソロ活動を開始。盟友 Moritz von Oswald とのプロジェクト 2MB、3MB でデトロイト・テクノのオリジネーター Blake Baxter や Eddie Fowlkes や Juan Atkins と邂逅、デトロイト~ベルリンの架け橋としてベルリン・テクノ・シーンの礎を築いた。その後、The Orb の長年のコラボレーション・メンバーとして積極的にリリースに関わる。ソロ作品は伝説のテクノ・レーベル〈R&S〉などからリリースを重ね、2002年に〈KOMPAKT〉から『Visions Of Blah』、2004年に〈Plug Research〉から 『Lowflow』、2007年に〈KOMPAKT〉に帰還して『Honigpumpe』、ベルリンのドキュメンタリーTV番組『24h Berlin』のサウンド・トラックを担当、そこに書き下ろされた作品を中心に編纂された『Gute Luft』を2010年にリリースした。2018年4月にデトロイト・テクノの雄 Terrence Dixon とのコラボ・アルバム『We Take It From Here』を名門〈Tresor〉からアナログのみでリリース。そして、満を持して8年ぶりとなるソロ・アルバム『Los Lagos』を本年9月にリリースした。彼の真骨頂と言える重厚でダビーなテクノ作品“Löwenzahnzimmer”からヒプノティックなトリッキー・テクノ“Window”、マックス・ローダーバウアーをフィーチャーした90年代テクノを彷彿とさせるユニークな“Tempelhof”などデビューから30年以上を経ても彼のテクノ・ミュージックへの探求心が冴えまくる、全テクノ・ファン注目のニュー・アルバムとなっている。アーティスト活動のみならず、Thomas Fehlmann がドイツのクラブ・シーンに貢献した功績は非常に大きい。

THE FIELD (KOMPAKT)
〈KOMPAKT〉を代表するアーティスト、The Field。2007年にリリースされたファースト・アルバム『From Here We Go Sublime』が Pitchfork で9.0の高評価を獲得、同年のベスト・テクノ・アルバムとして世界中で高い評価を獲得した。そのサウンドは〈KOMPAKT〉らしいミニマルなビートにメロディアスでオーガニックなシンセ・サウンド、細かくフリップされたボイス・サンプルを多用しテクノ・シーンでも異彩を放つ彼独特のサウンドで世界中の音楽ファンを魅了している。2009年にセカンド・アルバム『Yesterday & Today』をリリース、バトルスのドラマー、ジョン・スタニアーが参加、前作以上に生楽器を取り入れオーガニックでメロディアスなサウンドを展開、より幅が広がった進化した内容となっている。2011年10月にサード・アルバム『Looping State Of Mind』を発表、翌2012年にはフジロックへ初参戦し深夜のレッドマーキーで壮大なライヴを披露しオーディエンスを熱狂させた。2013年、デビュー・アルバム以降7年間続いたバンド・スタイルでのライヴ活動に終止符を打ち、ベルリンの自宅スタジオでファースト・アルバム以来の初となるソロ・プロジェクトとなる4作目のアルバム『Cupid 's Head』を完成させ話題を集め、Pitchfork では BEST NEW MUSIC に選出された。その後も Battles, Junior Boys, Tame Impala 等のリミックスを手掛け、インディ・ロック・シーンでも注目を集める。2016年4月に5作目となる最新作『The Follower』をリリース。そして、本年9月通算6作目のフル・アルバム『Infinite Moment』をリリースしたばかりである。本作品はユーフォリックな多幸感に満ち溢れ、リスナーのイマジネーションを掻き立てるこれまでで最も幻想的な印象の作品に仕上がっている。

BURNT FRIEDMAN (NONPLACE / RISQUE)
ドイツを拠点に約40年に渡るキャリアを誇る Burnt Friedman。カッセルの美術大学で自由芸術を専門に学び、卒業後80年代後半には音楽の道へ傾倒。常に斬新かつ独特なサウンドでエレクトリック・ミュージックをアップデイトしてきた鬼才である。これまで自身名義の作品の他、Atom™ との Flanger、Steve Jansen、David Sylvian との Nine Horses、そして昨年残念ながら急逝した CAN の伝説的ドラマー、Jaki Liebezeit とのSecret Rhythms など様々なアーティストとのコラボレーションも行なってきている。特に2000年に始まり Jaki が亡くなるまで続いた Secret Rhythms でのコラボレーションは、西洋音楽の伝統的なフォーマットや音楽的イディオムから離れ、様々な国の古くからのダンス音楽や儀式音楽に学び新たなフォームを開拓してきた。その試みは今回 Festival de Frue で初来日となるイランの伝統打楽器トンバク/ダフの奏者、Mohammad Reza Mortazavi とのユニット、YEK などに継承され、現在に続く Burnt の音楽的探求の礎となっている。2016年には2000年より続く自身のレーベル〈Nonplace〉とは別に新レーベル〈Risque〉を立ち上げヒプノティックなダブ・トラックを収録したEP「Masque/Peluche」を発表。昨年は1993年から2011年までのレア音源をコンパイルし、その活動初期からの独自性をあらためて提示した『The Pastle』をフランスの〈Latency Recodings〉より、また David Solomun と Antony West の著作からインスピレーションを得たという6曲入りEP「Dead Saints Chronicles」がカナダの〈MARIONETTE〉からリリースと、その創作意欲は止まる事を知らない。


ネットは政治を動かせるのか……?

アラブの春、香港雨傘運動、オキュパイ・ウォールストリート……、21世紀になって世界の注目を集めた政治運動の多くはSNSがその盛り上がりに大きく影響したことでも知られています。
ところがそのほとんどが、当初の勢いを維持することができずに終わってしまったように見えるのはいったいなぜなのか。

本書ではプログラマーであり社会学者であり、世界中を飛び回るアクティビストでもある著者が、ネットやテクノロジーと現代の政治運動についての結びつきを様々な角度で調査し分析しています。

自身の経験や取材を通した様々な政治運動の生き生きとした姿、そしてフェイスブックやツイッターをはじめとしたソーシャルメディアの特性を分析することで明らかにされる拡散力とそれを妨害する力。その多くは驚くほど日本にもそのまま当てはまります。

ネット時代において政治を動かす力とはどのようなものなのか。ジャーナリスティックな読み物としての面白さと、現代日本にとっても重要なヒントを併せ持った一冊です。

■プロフィール
ゼイナップ・トゥフェックチー(著)
テクノ社会学者(Techno-sociologist)、著述家、学者、プログラマー。非常勤オピニオンライターとして「ニューヨーク・タイムズ」紙などに寄稿。ノースカロライナ大学情報図書館学准教授。ハーバード大学バークマン・センター准教員(faculty associate)。テクノロジーが社会に及ぼす影響について研究を行う。

毛利嘉孝(監修)
東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授。専門は社会学・文化研究。特に音楽や現代美術、メディアなど現代文化と都市空間の編成やポピュラー文化をテーマに批評活動を行う。最近は路上演劇の演出も手がける。主著に『ストリートの思想』(日本放送出版協会、2009年)、『文化=政治』(月曜社、2003年)、『増補 ポピュラー音楽と資本主義』(せりか書房、2012年)。共編著に『アフターミュージッキング: 実践する音楽』(東京藝術大学出版会、2017年)など。

中林敦子(訳)
大阪大学文学部卒、カリフォルニア州立大学大学院・言語学MA。フリーランス翻訳者として、主に医療、製薬、医療機器、化粧品の分野で、企業HPやパンフレット、学会資料などの実務翻訳。市役所で外国籍市民の生活相談を受けている。好きなものは、フィリピンのスイーツ「ブコ・サラダ」と、東大寺法華堂の不空羂索観音と、ハリネズミと、民主主義。


■目次

はじめに
序章
第一部 運動を作り出す
 第一章  ネットワーク化された人々
 第二章  検閲と注目
 第三章  リーダー不在をリードする
 第四章  運動の文化第八章  シグナルの力と力へのシグナル

第二部  抗議者たちのツール
 第五章  テクノロジーと人々
 第六章  プラットフォームとアルゴリズム
 第七章  名前と結びつき
第三部  抗議の後に
 第八章  シグナルの力と力へのシグナル
 第九章  政府の逆襲
おわりに
緒言
解説(毛利嘉孝)
注釈


Baths / Geotic - ele-king

 ナイス・タイミングです。11月12日発売の『別冊ele-king』最新号では、今年設立10周年を迎え勢いに乗っているフライング・ロータス~〈ブレインフィーダー〉を特集しているのですが、LAビートについても大きくページを割いています。そのフライローとの共作経験もあるバス(Baths)ことウィル・ウィーセンフェルド、彼が2010年に〈アンチコン〉から放った夢見心地で清涼な『Cerulean』は、LAビートを代表する名盤のひとつです。バスの歩みに関しては下記にまとめてありますので、ぜひご一読を。

https://www.ele-king.net/columns/003914/

 さて、そのウィルは他方でジオティック(Geotic)名義でも活動していて、そちらでも『Sunset Mountain』などの良作を残しているのですが、そんな彼がこの10月、来日公演を開催します。しかも贅沢なことに、バスとジオティック双方の名義での公演です。
 バス名義のほうは、昨年リリースの最新作『Romaplasm』を引っさげたツアーで、東京(10/22@WWW)と大阪(10/25@Socore)を回ります。ジオティック名義のほうは、ダンスとアンビエントを織り交ぜたセットになるそうで、こちらは東京(10/23@CIRCUS Tokyo)のみの公演。現在、10/17発売の新作『Traversa』から収録曲“Gondolier”のMVが公開中ですので、合わせてチェックしておきましょう。

LAが誇る稀代のビートメイカー Baths、
東京・大阪での来日公演が2018年10月開催!!

ポップ・ミュージックの新たな可能性を拡張した最新作『Romaplasm』を携えた最新鋭の演奏セットを披露!

インディ・ロック~ヒップホップ・リスナーまで巻き込んだ、いまなお色褪せない大傑作ファースト・アルバム『Cerulean』。
大病を患いその果てで見事なまでのアーティストとしての成長を成し遂げ、その年多数のメディアから年間ベストに挙げられたセカンド・アルバム『Obsidian』。
「絶対に自分に対して不誠実であってはならない」という創作活動における信条のもと、ポップ・ミュージックの新たな可能性を拡張したサード・アルバム『Romaplasm』。

その創り出すビートがいま最も話題を呼ぶビートメイカー Baths。
誰しもが惹き付けられる躍動感溢れるライヴ・パフォーマンスは必見!!

https://www.youtube.com/watch?v=fcIdpIUClfA

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Tugboat Records presents Baths Live in JAPAN 2018

■2018/10/22 (月) 渋谷 WWW

【時間】OPEN 19:00 / START 19:30
【レーベル割価格】 ¥4,300 (ドリンク代別) *限定100枚 (9/13正午~)
https://goo.gl/forms/McdPioHT9vFL6BbB2
【前売り価格】 ¥4,800 (ドリンク代別)
【各プレイガイド】Pコード:130-011 / Lコード:70460 / e+ / WWW店頭 (9/17 10:00~)

https://www.tugboatrecords.jp/category/event

■2018/10/25 (木) 大阪 Socore Factory
【時間】OPEN 19:00 / START 19:30
【レーベル割価格】 ¥4,000 (ドリンク代別) *限定50枚 (9/13正午~)
https://goo.gl/forms/McdPioHT9vFL6BbB2
【前売り価格】 ¥4,500 (ドリンク代別)
【各プレイガイド】e+ のみ (9/17~)

主催/企画制作:Tugboat Records Inc.

●Baths プロフィール
LA在住、Will Wiesenfeld こと Baths。音楽キャリアのスタートは、両親にピアノ教室に入れてもらった4歳まで遡る。13歳の頃には、既にMIDIキーボードでレコーディングをするようになっていた。あるとき、Björk の音楽に出会い衝撃を受けた彼は直ぐにヴィオラ、コントラバスそしてギターを習得し、新たな独自性を開花させていった。ファースト・アルバム『Cerulean』はインディ・ロック~ヒップホップ・リスナーまで巻き込み多くの話題を呼んだ。 大病を患いその果てで見事なまでの成長を成し遂げ、その年多数のメディアから年間ベストに挙げられたセカンド・アルバム『Obsidian』。ポップ・ミュージックの新たな可能性を拡張したサード・アルバム『Romaplasm』。その創り出すビートがいま最も話題を呼ぶビートメイカー Baths による待望のジャパンツアーが2018年10月に開催!

●リリース情報

作品詳細:https://www.tugboatrecords.jp/6423
アーティスト:Baths (バス)
タイトル:Romaplasm (ロマプラズム)

tracklist
01. Yeoman
02. Extrasolar
03. Abscond
04. Human Bog
05. Adam Copies
06. Lev
07. I Form
08. Out
09. Superstructure
10. Wilt
11. Coitus
12. Broadback

・発売日:2017年11月15日
・価格:¥2,200+tax
・発売元:Tugboat Records Inc.
・品番:TUGR-043
・歌詞/解説/対訳付き

LA在住、Will Wiesenfeld が、Bathsとともに活動する別名義のプロジェクト=Geotic。

10/17日本先行リリースのセカンド・スタジオ・アルバム『Traversa』を引っ提げ、10/23 (火) CIRCUS Tokyo にて公演決定!!

Geotic 名義によるダンス・セットとアンビエント・セットを織り交ぜた初披露の貴重なライヴ・セット
(Baths公演でのセットとGeotic公演でのセットは異なります。)

セカンド・スタジオ・アルバム収録曲“Gondolier”のMVも公開!

怒りや裏切りといった感情を連想させた後、雰囲気が一変し、語り手と主人公が夜に人知れず駆け落ちするストーリーは圧巻。稀代のビートメイカー、Will Wiesenfeld にしか生み出せない創造性溢れるサウンドは必聴!

Gondolier
https://www.youtube.com/watch?v=XlzleWMYkEw

アルバムに寄せたアーティストのコメント
「良い旅を経験すると、自分の“脳”を望む通りの場所に辿り着かせることができる。このアルバム全体に共通するインスピレーションは、そのときに湧き上がった感覚から生まれたんだ。本当に最初から、音楽は僕にとって何よりも、(そんな旅のように)どこかへ導いてくれるほど魅力的なものだった。あらゆる形態のメディアにさらされるなかで、僕は絶えず日常生活では味わえない違った何かを感じられるものに引き寄せられるんだ」
――Will Wiesenfeld

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Tugboat Records presents Geotic Live in Japan 2018

■10/23 (火) CIRCUS Tokyo

【時間】OPEN 19:00 / START 19:30
【レーベル割価格】¥3,500 (ドリンク代別) *限定50枚 (9/19 20:00~)
https://goo.gl/forms/lCgKeopvmrrjs7543
【前売り価格】 ¥4,000 (ドリンク代別)
【各プレイガイド】Pコード:129991 / Lコード:71470 / e+ (9/19 20:00~)

https://www.tugboatrecords.jp/category/event

●Geotic プロフィール
LA在住、Will Wiesenfeld が、Bathsとともに活動する別名義のプロジェクト。前作に引続き Tycho を擁する〈Ghostly International〉、そして日本は〈Tugboat〉よりリリース。
「Bathsはアクティヴなリスニングで、Geoticはパッシヴなリスニングである」──Baths、そして Geotic こと、Will Wiesenfeld は、自身のふたつのプロジェクトに対してこのように語る。

●リリース情報
アーティスト:Geotic (ジオティック)
タイトル:Traversa (トラヴェルサ)

tracklist
01. Knapsack
02. Swiss Bicycle
03. Harbor Drive
04. Aerostat
05. Town Square
06. Terraformer
07. Gondolier
08. Maglev

・発売日:2018/10/17 (水)
・価格:¥2,000+tax
・発売元:Tugboat Records Inc.
・品番:TUGR-080
・解説/対訳付き

tofubeats - ele-king

 揺れている。やはりそれは地震によって引き起こされたことなのだろう。3・11以降、具体性を欠くものや実現可能性の低いものにたいする侮蔑がはびこっている。対案なき批判は一考の価値なしという風潮は完全にそうだし、批判する側も「投票に行きましょう」とか、具体的なことを強調せざるをえなくなってきている。明確な効果が見込めることに注力したくなる気持ちもわからなくはないけれど、それはようするに見返りを求めるということであり、つまりはビジネスの論理、資本の論理によってすべてが覆いつくされかけているということである。直接的には何をも解決しないだろう妄想や夢を語ること、それは想像力そのものにほかならないが、それが今日ほど困難になった時代はかつてなかったのではないか。
 映画『寝ても覚めても』が舞台を3・11以降に設定し、仙台という場所に重要な役割を与えることによってえぐりだしたのは、そのような想像力の縮減というリアリティである。同作では東出昌大がひとり二役を演じているが、そのふたりは現実的なものと夢想的なもの、実現可能性の高いものとそうではないもの、具体的に解決可能なものと不可能なものとの対立を体現している。その二項のなかで前者を選びとらざるをえないということ、それこそが『寝ても覚めても』の描きだす現代日本のリアリティだろう。

 メジャーからは4作目となる tofubeats の新作『RUN』は、その序盤をJポップのマナーに則った曲で固めている。まずはグライミーな表題曲でがつんとインパクトを与えつつ、すぐさまスキットを挟みこみ、『電影少女』の主題歌となった“ふめつのこころ”やポップなハウス・チューンの“MOONLIGHT”へと繋いでいく。広汎な層にたいする訴求を怠らないこと。この流れには、前作『FANTASY CLUB』が思うように「普通のユーザー」のもとへ届かなかったことの反省が表れているといえるだろう。
 けれどもクラブ・ミュージックのリスナーにとってエキサイティングなのは、そのあとに続くインストゥルメンタルの曲たちだ。tofubeats はかねてよりハウスを大きなインスパイア源としてきたが、『RUN』にはとりわけその影響が色濃くにじみ出ている。彼のDJピエール好きな側面がよく表れた“YOU MAKE ME ACID”、“RETURN TO SENDER”、“BULLET TRN”の3曲は、フィット・オブ・ボディリトン&カー=ロウ、あるいはアゲインスト・オール・ロジックなどと同様、オールドスクールなハウスの亡霊たちに憑依されることでいまのアンダーグラウンドのトレンドとの接点を確保している。Jポップのフィールドにおいてこれほどアシッドを響かせる作品はかなり珍しいんじゃないだろうか。なかでも“RETURN TO SENDER”はブー・ウィリアムスの甘くせつない“Summer Love”を彷彿させ、2分を過ぎたころにはいやでも涙腺がゆるんでくる。
 それらに続く8曲目の“NEWTOWN”は、しかし、そのような昂揚を抑制しつつ物憂げなムードを呼びこんでいる。自身が育った環境でありまたかつてのステージネームでもある「ニュータウン」なる言葉を冠したこの曲は、ようするに tofubeats のアイデンティティを強調しているわけだけれど、ふたたびヴォーカルを招き入れることでかつて政治経済的な意志によって創出されたオールドなタウンを「新しい街」として解釈しなおしている。それは過去のハウスをリサイクルする彼のスタイルそのものでもあり、間違いなく本作のハイライトのひとつだろう。
 その後アルバムはポリリズムの実験が試みられる“SOMETIMES”を経由して、ふたたびJポップのマナーへと立ち戻っていくが、そこでようやく本作全体を貫くテーマが明らかになる。10曲目“DEAD WAX”では驚くべきことに、彼の代名詞ともいえるオートチューンが影を潜めている。繰り返される「自分だけがいる」という言葉。あふれ出るロンリネス。ここでリスナーは冒頭のタイトルトラック“RUN”に同じ情感が忍ばせられていたことを思い出す。最初のヴァースの終盤、一瞬だけオートチューンが解除されたかのように聞こえるヴォーカル。そこで歌われる「たった一人走る時」というフレーズ。

 なぜ tofubeats の新作は『RUN』と題されているのか。「走る」とはいったい何を意味しているのか。一度でも長距離を走ったことのある者ならばわかるだろう、それは前へ進むことでもなければ過去を振り切ることでもない。ランナーはつねに、ひとりである。走るとはすなわち、孤独を引き受けることにほかならない。まさにそれこそがこの『RUN』の主題なのだ。それは本作が tofubeats にとって初めてのゲスト不在のアルバムであることによっても明かされている。
 とはいえそれはこのアルバムが閉じていることを意味しない。本作には『電影少女』や『寝ても覚めても』のタイアップ曲が含まれており、それは創作に外部の意向が関与していることを示唆している。その関わりのなかで出会った人たちからの影響もあっただろう。あるいは彼が制作中に読んでいたといういくつかの本もまた大きな役割を果たしているにちがいない。重要なのは、それら他者からもたらされる霊感や着想を整理し、吸収し、昇華するにあたって、tofubeats がひとりにならなければならなかったという事実だ。音楽は表現である。ゆえにそれは、想像力の問題と直結している。すなわち、不可能な夢の断片をつかむためには、孤独になる必要があったということだ。

 オートチューンと地声。歌とインストゥルメンタル。Jポップとアシッド・ハウス。それらのあいだで tofubeats は揺れている。あるいは、政治的になりたくないと思いながらも、他方で世相を映し出さなければと考えてしまう逡巡。その姿はまるで『寝ても覚めても』で麦と亮平とのあいだを往き来する朝子のようではないか。
 映画の終盤、朝子は山をバックに疾走する。目の前を男が逃げていく。朝子は孤独だ。不可能な夢を追い求めたがゆえに「クズ」呼ばわりされた朝子、そんな彼女が生きられる地平を探るかのように、この『RUN』は分裂を隠さない。他者と関わりながらも、孤独であろうと努めること。夢と現実のあいだで引き裂かれ、具体的なものへと引っ張られながらも、想像力への信頼を失わないこと。それこそが、前作で「ポスト・トゥルース」という時事的なテーマを掲げていた tofubeats がいま、あえてこのアルバムで実践していることなのではないだろうか。

Little Dragon - ele-king

 これは火が点きそうな予感がひしひし。かつてサブトラクトゴリラズ作品への客演で注目を浴びたシンガー、ユキミ・ナガノ(ケレラも彼女から影響を受けています)を擁するスウェーデンはヨーテボリのシンセ・ポップ・バンド、リトル・ドラゴンがなんと〈Ninja Tune〉と契約、11月9日に新作EPをリリースします。UKでも大人気の彼ら、最近ではバッドバッドノットグッドとの共作“Tried”がBBCなどでよくとりあげられていますが、このたび公開された新曲“Lover Chanting”もダブテクノ風の装飾を効果的に利用したポップな仕上がり。早く全曲聴きたい!

Little Dragon
北欧スウェーデン発のエレクトロ・バンド
リトル・ドラゴンが〈Ninja Tune〉と電撃契約し
11月に新作『Lover Chanting』をリリース!
タイトルトラックが本日解禁!

北欧スウェーデン発の人気エレクトロ・バンド、リトル・ドラゴンが〈Ninja Tune〉と電撃契約し、11月に新作EPをリリースすることを発表した。今回の発表に合わせてタイトルトラック「Lover Chanting」がリリースされている。

Little Dragon - Lover Chanting
https://found.ee/9tFu

日系スウェーデン人のフロントウーマン、ユキミ・ナガノ率いるリトル・ドラゴンは、1996年に結成され、これまでに5作のアルバムをリリース、アメリカやイギリスでも成功を収め、アメリカのダンス・チャートでは直近の3作が連続でトップ5入りを記録。2014年の『Nabuma Rubberband』はグラミー賞にもノミネートされている。

またコラボレーションにも積極的なリトル・ドラゴンは、ゴリラズやサブトラクト、ケイトラナダ、フルームなどのヒット作品に参加し、最近では、カナダのジャズ/ヒップホップ・カルテット、バッドバッドノットグッドとのコラボ曲「Tried」をリリースし、ラッパーのヴィック・メンサと共に、ファレルの弟子格として知られるプロデューサー・デュオ、クリスチャン・リッチの楽曲にフィーチャーされたことも話題となった。

BADBADNOTGOOD & Little Dragon - Tried
https://youtu.be/MREJtWbQ6Bw

Christian Rich -DRIPPING SUMMERS (Feat. Little Dragon & Vic Mensa)
https://soundcloud.com/christianrich/christian-rich-dripping-summers-feat-little-dragon-vic-mensa

リトル・ドラゴン最新作『Lover Chanting』は11月9日にデジタル先行でリリースされたのち、同月中にアナログ盤でもリリースされる予定。

label: Beat Records / Ninja Tune
artist: Little Dragon
title: Lover Chanting EP

release date: 2018.11.09 FRI ON SALE

[Tracklisting]
1. Lover Chanting
2. In My House
3. Timothy
4. Lover Chanting (Edit)

故川勝正幸渾身のあの幻の勝新図鑑が間もなく本当に君臨!

めくる度にめくるめく 脳内麻薬が出まくる 痛快・合法的ドラッグの書!
斬りまくり殴りまくり翔びまくり愛しまくり笑いまくり歌いまくる勝新太郎。
『座頭市』、『悪名』、『兵隊やくざ』から鬼レアな映画ポスター、ロビーカード、レコード等お宝図版をめいっぱい収録!

2003年に出版されるも諸事情?により廃刊、現在入手困難でバカ高い値で取引されている勝新の永遠なる決定的図鑑が目出度く復刊!! しかも微料に安くなって、故勝新太郎関係者各位の熱い協力の下、遂に再び陽の目を見ることに。

勝新が突然入れられた “別荘” で描いた「仏陀が見えた部屋」、デニス・ホッパーによる序文「宇宙船因果号の邂逅」があり、勝新ディナーショーの魅力を語りつくした、横山剣(クレージーケンバンド)による「モミアゲハンサムワールド」や、漫画家やまだないと氏による絵と文「ろくでなしの男」、勝新フィギュアの制作者である高杉涼氏の談話、また、かつての「オリーブ少女」にはたまらない仲瀬朝子氏による『悪名』シリーズはかわいいなどの素敵な文章に、勝新映画のビジュアルが盛りだくさん!


Banksy - ele-king

 バンクシー、格好良すぎ。去る金曜日、ロンドンにておこなわれたサザビーズのオークション会場にて、出品された「風船と少女(Girl With Balloon)」が約104万ポンド(約1億5000万円)の値で落札、それは過去バンクシー作品に付けられた最高額と並ぶ値段だったそうですけれど、その直後、額縁にあらかじめ仕掛けられていたシュレッダーによって作品がばらばらに断ち切られるという出来事が発生しました。100万ポンドを燃やしたザ・KLFの逆パターン?

 翌日、バンクシーはインスタにその様子を捉えた動画を投稿、それによるとシュレッダーはすでに数年前から仕込まれていたらしく、「破壊」行為そのものがバンクシー自らの意図によるものと判明しました。これはオークションに対する明確なアンチの表明ではありますが、それによってかえって裁断された絵画の価値が上がるという指摘もあるようで、もしかしたら今度は切り裂かれた断片がふたたびオークションに出品されるという事態もありえるのかもしれません。バンクシーの次の一手が気になります。

https://www.instagram.com/p/BomXijJhArX/

Riton & Kah-Lo - ele-king

 ナイジェリアといえば国外に出るとしたら、これまではイギリスと相場が決まっていたし、実際、世界最大のナイジェリアン・コミュニティはいまだイギリスにあり、ここからディジー・ラスカルやスケプタといった移民二世のビッグMCが出て来たことはよく知られている。ところが新たなトレンドを求めて方向性を変えたメジャー・レイザーの最新ミックス・テープ『Afrobeats』にフィーチャーされていたラッパーやプロデューサーの出身地を調べてみると圧倒的にナイジェリア出身者が多く、かつてジャマイカからイギリスへと渡っていたレゲエやダンスホールのMCたちが90年代以降はジャマイカからアメリカへと目的地を変えたことと同じことが現在のナイジェリアにも起きつつあることがよくわかる。そうしたナイジェリアのMCたちがアメリカで制作したラップ・アルバムを聴いてみると、ところどころでナイジェリアや汎アフリカ的な表現も挟まれているものの、やはりアメリカン・マナーに染まってしまうケースが大半で、目先が大きく変わっているのでなければ、だったらリル・ウェインやカレンシーの新作を聴いた方が……と僕などは思ってしまう。スーサイド・ボーイズとかね。
 クラインと同じくイギリスのクラブ・ミュージックに進路を定めたナイジェリア育ちのカー~ローことファリダ・セリキはそして、これまでにリトンことヘンリー・スミッソンと組んだ2枚のシングルでごく短期間に頭角を現し、早くも昨年のグラミー賞でベスト・ダンス・レコーディングスにノミネートされている。TVドラマ『13の理由』のプロデュースやSNSからの撤退で何かと話題のセレーナ・ゴメスが早くも「Back To You」のリミキサーに起用しているので、メジャーでの知名度も急速に高まり、もはや爆発寸前だろうというタイミングでアルバムもリリースされた。

 これまでリトン名義でしかアルバムをリリースしてこなかったスミッソンも今回は名義をリトン&カー~ローとしている。リトンは99年にデビューした古参のプロデューサーで、〈グランド・セントラル〉からのデビュー・アルバム『Beats Du Jour』では穏やかなダウンテンポ、キュアーをカヴァーした“Killing An Arab”ですぐにもエレクトロクラッシュに移行し、2008年にはアイネ・クライネ・ナハト・ムジークの名義でクラウトロックとハウスをクロスオーヴァーさせたアルバムを、以後はわかりやすいことにレーベルも〈エド・バンガー〉に移り、2010年代に入ってからはベース・ミュージックを取り入れたEP「Bad Guy Riri」やヴォーカルにメレカをフィーチャーした“ Inside My Head”で完全に迷走状態に入ったかに見えた。その直後にツイッターで知り合ったのが(同時期にニューヨークに住んでいた)カー~ローだったという。“Habib”など現在に通じる曲もなくはなかったスミッソンがカー~ローをフィーチャーした“Rinse & Repeat”はアフロビートを取り入れているわけでもないのに、微妙にテンポをずらす彼女の歌い方だけで、それまでとは驚くほどグルーヴ感の異なる曲となり、まさかのグラミー賞ノミネートへ突き進んでいく。続く“Betta Riddim”のプロダクションは明らかに彼女の歌い方を生かす方向に変化し、以後もtqdやフィット・オブ・ボディといった80Sガラージ・リヴァイヴァルと歩を揃えた“Money”からイナー・シティ“グッド・ライフ”をループさせた“Fasta”などスミッソンの作風も15年目にして一気に固まり、いままであるようでなかったヒップ・ハウスのアルバムに仕上がっていく。

 アルバム・タイトルはおそらくゼノフォビア(移民嫌悪)を念頭に置いた上で、「外国人の気分」を表すスワヒリ語のようで、カー~ローの歌詞も「覇気のある人はいないのか」と繰り返す“Ginger”やニューヨークやロンドンでの生活とナイジェリアでの暮らしを比較した“Immigration”などシンプルなものが多い。「みんな、お金が欲しい」とか「(未成年の)女の子も楽しみたい、飲みたい、フェイクI.D.を持って行こう」とか。そう、ラゴスのパーティ・カルチャーを曲に反映させるためにナイジェリアからゲストを何人か招いた曲もあり、ガヤガヤとした感じで曲は進む。カー~ローはすでにリトンとのプロジェクトとは別にハイチ出身のマイケル・ブラントとも“Spice”をリリースしている。ペース早いです。ちなみに彼女の声のせいか、多くの曲はどうしてもケロ・ケロ・ボニトを思わせるものがあり、妙な懐かしさもあるのだけれど、実際のケロ・ケロは新作となる3作目でパンク・ギターを全開にし、いわばパワー・ポップ路線を突き進んでいる。

Low - ele-king

 ひとつの否定では足りない。そういうことだろうか。ふつう「二重否定」というと打ち消しを重ねることによって肯定に転じる意味で用いられるが、しかし、ミネソタ出身のヴェテラン・バンド、ロウの12作目のアルバム『ダブル・ネガティヴ』はあらゆる肯定的な感情を拒絶するかのように、重く、冷たく、じつにゆっくりと下のほうへ沈んでいく。慌てて過去作を聴き返してみたが、やはりここまでの透徹したダークさには至っていない。結成25年にして、ロウの暗黒は臨界点に達してしまった。すでにバンド史上もっともチャレンジングな作品として称賛を集めている。

 スロウコア、サッドコアの始祖と知られるロウだが、本作はロック・アクトの領域をゆうにはみ出し、比較としてウィリアム・バシンスキ、ミカ・ヴァイニオ、トマス・クーナーといった名前と並べられている。音の要素は恐ろしくミニマルで、ごく少ないドローン音の上にいくらか甘いメロディが重ねられ、もしくはノイズに埋めつくされていく。インダストリアルを思わせるリズムの打音が物悲しい調べを導いてくるばかりの“Dancing And Blood”はアンディ・ストットのトラックのようで、ビージーズ風のディスコ歌謡がどんよりとしたアンビエントの音響のなかに消えていく“Fly”はティム・ヘッカーの作風を思わせる。サッドコアの精神はまさにその「コア」を保ったまま、音を更新して解像度を上げている。

 前作『ワンズ・アンド・シックシーズ』に引き続きボン・イヴェール周りのBJバートンがプロデュースを務めているのだが、前作からの連続性よりも細かいノイズやヴォイスの細かいエフェクト処理などに『22、ア・ミリオン』以降を嗅ぎ取ることができる。通底しているのはデジタルによるザラついた質感であり、オーガニックな音がそうでないものとぶつかり合い消耗するような感覚である。重たいものを引きずるようなループにすさまじく音の割れた声が乗る“Tempest”、メランコリックなメロディがエフェクト・ヴォイスの断片とフィードバック・ノイズの海に飲みこまれていく“Always Trying To Work It Out”と、彼らが長年培ってきたダウナーながらもスウィートな旋律や透き通ったファルセット・ヴォーカルはあるのだが、それらはほとんど痛めつけられるように執拗に、微細に加工される。生の感情を曝け出すことを恐れるように、拒絶するように。緊張感が絶えることのない“The Son, The Sun”のドローンを通過したあとのアンビエント・フォーク“Dancing And Fire”のみが生音の柔らかさを前面に出しており、ここでアルバムはそれまでとのコントラストゆえある種壮絶な美しさを見せる。が、“Poor Sucker”で再びザリザリとした肌触りへと音を変え、“Rome (Always In The Dark)”では重苦しいビートと叫びに似た悲痛なヴォーカルが切り刻まれる。簡単に聴き手を慰めない。クロージングの“Disarray”の透き通っていたはずのコーラスもまた、意図的に汚されている。だが、だからこそいまの耳に染み入るものがある。

 このヘヴィなアンビエント/ドローン・アルバムはトランプ・エラの精神そのものだと評されているが、しかし、トランプなどという具体的かつわかりやすいモチーフに回収されることはない。ひどく抽象的で、ひどく不定形の憂鬱。アルバムにはAlwaysという単語が3度も曲タイトルで出てくるが、「いつも上がっている」というのは反語に違いないし、「いつだって上手くいくように頑張っている」というのはすなわち「いつも上手くいかない」ということであり、“Rome (Always in the Dark)”が言うように、わたしたちはいつも真っ暗闇にいることを思い出させてくれる。メランコリーが聴き手の期待する癒しに呼応するようにあらかじめ準備された音楽が溢れるなかで、『ダブル・ネガティヴ』はそれすらも否定するように意図的に心地よさに違和感を挿しこみ、すっかり常態(Always)となったこの時代の形のない悲しみを見事に描き出す。無理をして肯定に転じなくてもいい。ここには否定に否定を重ね続ける、ぞっとするが奇妙な安らぎがある。

Maisha - ele-king

 まあちょっとざっくり言うと、2018年は『We Out Here』からはじまった。ロンドンのアンダーグラウンドからUKジャズの新しい波がやって来て、スピリチュアル・ジャズにアフロビートをたたき込み、クラブ・カルチャーと隣接しながらシーンに喜びと恍惚をもたらしたと。
 いろんなミュージシャンの名前を覚えた。シャバカ・ハッチングスをはじめ、モーゼス・ボイド、ジョー・アモン・ジョーンズ、テンダーロニアス……それから女性サックス奏者のヌビア・ガルシアも。
 『We Out Here』は、マイシャの曲からはじまる。ドラマーのジェイク・ロングが率いるこのグループは、いまの“UKジャズ”のひとつの型を表している代表。要するに、アリス・コルトレーンとファラオ・サンダースからの影響をアフロビートと混ぜること。グループでサックスを吹いているのはヌビア・ガルシア。マルチ・カルチュアルで、男女混合というスタイルにも“いま”を感じる。
 で、そうしたお約束ごと的前説を経て、しかしもっとも重要なことを言うと、場所。抑圧だらけの世界からは隔離された場所。だって場所がなければひとは迷ってしまう。マイシャのデビュー・アルバムは11月9日にジャイルス・ピーターソンの〈ブラウンズウッド〉(日本盤はビート)からリリースされる。タイトルは『There Is A Place』。ぼくたちには“場所”がある。

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