「Nothing」と一致するもの

Beach House - ele-king

 河出書房新社から刊行される『ゼロ年代の音楽』における150枚のディスク・レヴューで、最初入れておいて、あとから「やっぱいいか」と削除してしまったのがボルチモアの男女デュオによるビーチ・ハウスのデビュー・アルバムだった(男はアメリカ人、女はフランス人)。そしてこの3枚目のアルバムを聴いて、「あー、入れておけば良かったな~」と後悔した。結論から言えば『ティーン・ドリーム』はここ数年のエレクトロニカ系ポップスにおいてはダントツに洗練されている。10年代に入って最初に心底気に入ったのがこのアルバムだ。この魅力にはとても逆らえない......そんな感じだ。

 正直言って、ビーチ・ハウスのような「無垢」で「潔癖性」の高いエレクトロニカ・サウンドに関しては(彼らは前作までは、日本ではお馴染みの時代遅れのエレクトロニカ・レーベル〈カーパーク〉から作品を出している)、二木信ではないが抵抗感のあるほうである。猥雑さを排除することで輝きを引き出そうとするそのやり方が、どうにも嘘くさく思ってしまう。早い話、お上品なだけじゃないかと思ってしまうのだ。だいたい若い頃はダッフルコートを着たガキがボサノバを聴いているだけで腹が立ったものだった......というのは嘘だが、とにかくこれは自分の育ちの悪さが関わっているのだろう。リアリズムの観点から言えば、僕にはなかなか遠くに感じられる音楽が多々あるのだ(さすがに年齢を重ねながら、そうした偏見はだいぶなくなったけれどね~)。

 そんな偏屈な人間が聴いても、ビーチ・ハウスには魅力があった。それは彼らの音楽が、物憂げさ、陰鬱さ、および失意......のような「負性」を心地よく響かせるという力を持っているからである。ダウナーだがラヴリーなのだ。彼らが表現するのは晴れ渡った青空ではなく霧のかかった曇り空であり、輝く太陽でも深夜でもなく黄昏の美しさなのだ。カラフルな田園ではなく、憂鬱な田園なのだ。

 ビーチ・ハウスは、90年代のテクノ~エレクトロニカの持つユーフォリアを我がモノにしたゼロ年代USインディのひとつであるという説明もできる。デビュー・アルバムも前作の『デヴォーション』も、そうしたモダン・ポップの文脈においては秀逸な作品に違いないが、しかし何か決定的なものが欠けている。僕のような門外漢が居ても立ってもいられなくなって、そこに強引に立ち入ってしまうのほどの魔力はまだない。そこへいくと『ティーン・ドリーム』は1年でここまで成長するものなのかと驚くほど、すべてにおいて研磨され、非の打ち所のないアルバムとなっている。極端に喩えるなら、グリズリー・ベアが"サンデー・モーニング"をカヴァーしたようなアルバムだ。僕はすっかり虜になっている。

 ギターの簡潔なアルペジオからキックの音に導かれて蜃気楼の世界に突入する1曲目の"ジブラ"、メロウなダウンテンポの傑作"シルヴァー・ソウル"、そしてまるでビートルズがハウスを取り入れたような"ウォーク・イン・ザ・パーク"(アルバムのベスト・トラックのひとつ)......簡素なピアノとヴェルヴェッツ流ポップスの"ユースト・トゥ・ビー"も良いし、キャッチーな"ラヴァー・オブ・マイン"や"ベター・タイムス"のような曲にさえも黄昏の感覚が横溢している。

 すでに何十回とこのアルバムを聴いているけれど、聴く度に夢の世界に飛ぶ。現実をすっかり忘れ、ひとりで夢に浸る。90年代で言えばエールのようなものか。とにかく、これはモダン・ドリーム・ポップの傑作である。

プログラム:
●第1部・・・・15:00-17:00 『音楽の為の場』
-講師:岸野雄一、磯辺涼、原雅明、松村正人、三田格
●第2部・・・・17:30-19:30 『音楽講座主任講師・公開会議』
-講師:岸野雄一、菊地成孔、高山博、横川理彦、大谷能生

講義テーマ:
本年度1月いっぱいをもって、映画美学校のある歴史的な建造物、片倉ビルが取り壊されることとなった(学校自体は移転して継続)。そこで、最後にその場所を使って緊急座談会を開催することとなった。議題は、"場"という言葉を、単なるハコ物ではなく、『人や音楽が交通するためのシステム/インフラ』として広義にとらえ、ゼロ年代から次の10年にむけてどのようなモデルがあり得るかを模索する。

第1部では、紙媒体、ライブの現場、海外シーン等々、さまざまな"場"に対し深い造詣を持つゲスト講師とともに、これからの場の在り方を考えていく。
第2部では、音楽講座という場を多いに支えて頂いている主任講師陣が一同に会し、岸野雄一(a.k.a校長) 仕切りのもと、公開サミットを実施する。

参加方法:
メールでの事前予約を行って下さい。
先着20名様、23日(土)17:00まで受付いたします。
件名を『24日聴講希望』とし、氏名・性別を明記の上、下記までご連絡下さい。
music@eigabigakkou.com

※受講料は無料です。
※映画美学校音楽美学講座卒業生および在校生は予約の必要はありません。

【聴講時の注意】
座席は先着順となります。
満席となった場合、ロビーに設置されたモニターを通しての聴講となります。
あらかじめご了承下さい。
映画美学校・音楽美学講座・情報サイト
https://egbk.sakura.ne.jp/xoops/html/

[Drum & Bass / Dubstep] by Tetsuji Tanaka - ele-king

1 Sub Focus / Could This Be Real[Drum&Bass RMX]/Triple X | Ram

 昨年のハイライトとも言うべきファースト・アルバム『Sub Focus』によってエクストリーム・レイヴ・ドラムンベースの確固たる地位を確立、それを不動のものにしたのがサブ・フォーカスである。そのもっとも待望されていたリリースによってドラムンベース界に新たな核が生まれたというわけだ。もっとも、プロデューサー・デビューから6年もの年月を費やして発表となったファースト・アルバムは、彼の類まれなる才能から考えると少々遅かった感は否めないのだが。
 彼の起源は2003年〈Ram〉のサブ・レーベル〈Frequency〉から発表された「Down The Drain/Hotline」である。当時のトラック・メイキングはまだ未成熟かつ方向性が定まっていない、ごく平凡なサイバー・ドラムンベースだった。もちろんその当時は、現在のようなスター・プロデューサーとしての確約はないに等しい存在として扱われている。彼に転機が訪れたのは、そう、2005年。その年のアンセム・ザ・イヤーとなったばかりではなく、2000年代を代表するトラック"X-Ray"の発表である。
 ドラムンベース界のみならず、その恍惚感溢れるトランシーレイブな作風で世界中のダンスフロアを掌握、稀に見るビッグ・アンセムとなった。その後、水を得た魚の如く立て続けに"Airplane"、"Frozen Solid"などの"ロック"チューンを発表。そして彼の地位を不動のものにした決定的なリリースがプロディジー"Smack My Bitch Up"のSub Focus RMXだった。そのリミックスはまるで新旧レイブ・サウンド伝道師の世代交代のようで、ドラムンベースをより多方面に押し上げてもいる。そしてその後の活躍は言わずと知れている。いまや名実ともにドラムンベース界のトップ・プロデューサーに君臨するのだ。
 さて、彼のファースト・アルバムからシングル・カットが待望されていた2曲がついにリリースされた。アルバムに収録された"Could This Be Real"のオリジナルは、現在のクラブ・シーンを席巻しているトレンド、エレクトロ・タッチから触発されたフロア直系のアーバン・ブレイクスだったが、シングル・カットのためにドラムンベース・リミックスへと自身でリワーク。ハーフ・ステップさながらのビート・プロダクションに流麗なレイヴ感漂うエレピを注入し、ハイブリッドでソフィスティケートされたシンフォニック・レイヴ・サウンドへと昇華させている。
 "Triple X"に話を移そう。これはまさに"X-Ray"の続編、誰もが待ち望んだ真のレイヴ・ミュージック、即ちこれがエクストリーム・レイヴをもっとも体現したトランシー・フロア・サイバーの最高傑作と呼ぶに相応しい。今後この作品はダンスフロアで皆を待ち続けることとなるであろう。

2.  Disaszt, Camo & krooked / Together[DC Breaks RMX]/Synthetic | Mainflame

 オーストリア、ウィーン発の新鋭レーべル〈Mainflame〉からレーベルのフロントマン、ディザスト(Disaszt)と若手ナンバ-1の呼び声が高いケーモ&クルックト(Damo & krooked)のサイバー・スプリット! "Together"では〈Viper〉、〈Frequency〉などシーンのトップ・レーベルのリリースからMINISTORY OF SOUND主宰DATAなどメジャーのリミックス・ワークなども手掛けるDJサムライ & DJクリプティックのエレクトロ・サイバー・ユニット、DC・ブレイクス(DC Breaks)が担当。レーベル・カラーであるカッティング・エッジでエレクトリックなサイバー感を継承しつつ、よりシンプルに交感し合う各々のサンプル群と、そして女性ヴォーカルが絶え間なくフォローするエレクトロ・ニューロ・ファンクとなっている。昨年からドラムンベースの新しいトレンドとして定着しつつあるエレクトロ・ドラムンベースだが、今作はまさにそれを体現している。まったく"いまこの瞬間の"ダンスフロア・シンフォニーで、レーベルのシンボル的トラックである。
 ケーモ&クルックト"Synthetic"は、〈Mainflame〉からもうすぐ発売されるファースト・アルバム、『Above The Beyond』の前編的トラックとなった。エレクトロ・ドラムンベースの若手急先鋒ケーモ&クルックトだが、今年はさらなる飛躍を期待されるだろう。彼らはすでにDJフレッシュ(DJ Fresh))、アダムF(Adam F)の〈Breakbeat Kaos〉から「Can't Get Enough/Without You」、ロンドン・エレクトリシティ率いる〈Hospital〉から「Climax/Reincarnation」、フューチャー・バウンドの〈Viper〉から「Cliffhanger/Feel Your Pulse」など、多数リリースが控えており、今後最注目のアーティストである。筆者が現在提唱しているエレクトロ・ドラムンベースが、ケーモ&クルックトやショックワン、フェスタなどによって閃光の如く輝き続けるムーヴメントになることを望んでいる。

 

3. Danny Byrd Feat Liquid / Sweet Harmony/Jungle Mix | Hospital

 ザリーフ&ダニーバード(Zarif & Danny Byrd)、"California"で昨年、最高のプロデュース・センスをまた見せつけたダニーバード! ハイコントラストとともに〈Hospital〉の制作理念をもっとも体現しているひとりであり、彼の高揚感溢れるキャッチーな作風はいまや誰にも真似できない、まさにダニーバード・サウンドとして定着している、キャリア10年以上の〈Hospital〉所属のベテラン・プロデューサーだ。
 筆者もDJのとき、必ずと言っていいほどお世話になっている。とくに昨年のザリーフとの共作やファースト・アルバムでのFT.ブルックスブラザーズ"Gold Rush"など......彼の作品をプレイするとき、いつも決まって、自身が中盤の窮地に陥っているケースが大半だ。なぜかと言えば......それだけ個の作品のみであらゆる場面を乗り切る力を持っている唯一のトラック、それがダニーバードの音楽だからである。彼には作品を出すたび毎回脱帽し、尊敬の念を抱き続けている。レコードを置き、針を落とすだけの偉大なキラー・トラックを量産し続けているのだから!
 そして今作"Sweet Harmony"は、初期のレイヴ感溢れるエレピ、FT.リキッドのソウルフルなヴォーカルを効果的に配した遊び心満載のキャッチーなフロアトラックとなった。原点回帰したかのような初期作風感漂うサンプル使いにダニーバードの懐の深さを再認識させられた。もちろんこれもフロアで爆発的人気を得るだろう。
 B面"Jungle Mix"は、ここ最近のダニーバードお気に入り(?)"Shock Out"でも垣間みれたおなじみのオルタナティヴ・プロダクションである。彼特有の変則アーメン・ビートにキャッチーなギミック・サンプルで否応無しにフロアをロックする、正真正銘のパーティ・チューンだ。90年代中期頃、一世を風靡した"Smokers Inc"や"Joker"のエッセンスが多分に感じられ、古き良きジャングル文化が彼によって現代に甦ったと言えよう。
 さらに本年度はダニーバード・フォースカミング・リリースで、みんなが待ち望んでいるあの曲"Paperphase"が〈Breakbeat Kaos〉からついにリリース。あのエレクトロ・ドラムンベース最強兄弟、FT.ブルックス・ブラザーズがまたタックを組み、懐かしのフレンチ・ディスコを思い起こさせるフィルター・ハウス・ドラムンベースに仕上がっている。
 まだリリース前だが、2010年のアンセム・ザ・イヤーをこれで決まりだ。

Animal Collective - ele-king

 これはちと古い。2009年の11月にリリースされた、「秋は優しく」なる題名の5曲入りのシングルで、その年のアルバム『メリーウェザー・ポスト・パヴィリオン』がUKではナショナル・チャートの26位にまでランクされた動物集団の勢いを感じる作品となった。1曲目の"グレイズ"は......陽気なフォークダンスである。どう考えてもストロボライトを浴びながら踊るというものではない。男女がスキップしながら手を取り合って踊っている姿が目に浮かぶ。

 ちょうどのこの原稿を書いている少し前には、彼らの2003年の『キャンプファイヤー・ソング』が再発されている。僕はこのCDは、『サング・トングス』を聴いたときに素早く探し回り、『ヒア・カム・ジ・インディアン』とともに買っている。60年代半ばのビーチ・ボーイズのアルバムに『パーティ!』というビートルズの曲のアコギによるカヴァー集があって、それはまるで学校の教室でクラスメートを集めながらワイワイがやがや、ビートルズの歌を歌って盛りあがっているような作品なのだけれど、『キャンプファイヤー・ソングス』はいわばそのアシッド・ヴァージョン。僕は......勝手ながらD・リゼルギン酸ジエチルアミドに浸りながらギターをかき鳴らす青年たちを夢想した。そうでなければ、あの1曲目の狂おしい不明瞭さに関して、他にいったいどんな説明が可能なのだろう。そして僕は、ストレートにそれを"キャンプファイヤー・ソングス"と言い切ってしまった動物集団のセンスに興味を抱いた。

 ちょうどこの頃は、文化のたこつぼ現象なる言葉が流行っていて、とにかく小宇宙ばかりが連なってばかりで面白くないと、そんなことが巷で言われていた。たしかに音楽のシーンでも90年代的なレイヴ・カルチャーはすっかり細分化され、互いに交わる兆しもなかった。そんな時期に、アニマル・コレクティヴはまさに小宇宙の司祭になろうとしていた。『キャンプファイヤー・ソングス』は、どう考えてもわずか数10人の音楽だ。しかし、コミュニティは小規模になったかもしれないけれど、親密性は高まっているのではないかとも思うのだ。ただ無闇に人の数だけ多ければ良いってものではない。そう考えれば、僕は日本のSFP周辺の連中の大きくなることへの警戒心と自律した小宇宙への欲望と、この時期のアニマル・コレクティヴの心地よい閉塞性は似ているようにも思えるのだ。

 アニマル・コレクティヴの"フォール・ビー・カインド"は、『メリーウェザー・ポスト・パヴィリオン』がそうであったように、『キャンプファイヤー・ソングス』の頃の閉塞感はない。良くも悪くも彼らはポップ・バンドとして商業的にも成功しつつあるし、その世界も広がりを見せている。シングルの2曲目の"ホワット・ウドゥ・アイ・ウォント? スカイ"がそれを如実に物語っている。グレイトフル・デッドの曲をサンプリングしているこの曲は、動物集団にとっておそらく最初の、わかりやすいポップ・ソングだ。

 "オン・ア・ハイウェイ"は、ダビーなエレクトロニクスと彼らのコーラスによるメランコリア。最後の"アイ・シンク・アイ・キャン"はクラウトロックのダークな引用で、陰鬱なエレクトロニクスと動物たちのコーラスとの協奏曲だ。
 「フォール・ビー・カインド」は『メリーウェザー・ポスト・パヴィリオン』の延長線上にある。パンダ・ベアの最初のソロ作品が好きな人は『キャンプファイヤー・ソングス』の再発を買ったほうがいいだろう。しかし、彼らの陽気なサイケデリアを楽しみにたいなら、このシングルも悪くはない。

V.A - ele-king

 私は反省こめて書きますが、ジャンク~スカム・リヴァイヴァルとしての「関西ゼロ世代」を強調するあまり、その背景のポスト・ニューウェイヴ、つまり80年代インディ・カルチャー(とその発展型である90年代オルタナティヴ)と彼らの断絶をうまく描いてこなかった。ペンペンズや砂十島NANIやオオルタイチは90年代と00年代のグラデーションのなかでは多彩であったせいでかえって、私は彼らの逸脱へむかう気持ちを既視感に引き寄せたところはなくはなかったが、真保☆タイディスコの『住mばsyo着るmの絡まって』を去年聴いたときアンダーグラウンドのそのまた下に走る活断層がはっきりとズレたことをさとったのだった。私は音楽の素養をいいたいんじゃない。彼女がタイから持ち帰ったという非西洋的な快楽のベクトルは、DJ~トースティング(?)を通して不可逆的に彼女の身体に流れこんだグルーヴは彼女の身体性を変容させていて、Jポップ~クラブの押韻と言葉と歌のメロディを書き換え90年代までと切断するポップ・ソングを作りあげることに資しているとファーストを聴いて考えたのです。10年前までは文化人類学の残り香があった音楽の輸入形態も10年後にようやく路傍に晒されたというか、バイリ・ファンキでもクンビアでもアジアのクラブ・カルチャーでも、アーティストとリスナーの間を直接行き来する音楽は批評のハイアラーキーになじみがたく、自然発生的な解釈(曲解、誤解)はローカリティさえ攪乱する、ニコ動的な個人レベルの加工貿易の観をていしている。この10年の音楽のトレンドは欧米のメディア主導型のラベリングと、局所地的ですらないマイ・ブームの集積のようなベクトルが併走した年代で、これに勝手知った「タコツボ化」などといういい方で目を瞑るわけにはいかない。赤瀬川源平じゃないが、ツボの内側に張られたラベルが反転して宇宙を包むことだって、考えようによってはあるわけで、音楽は意外にスリリングだ、という現状を〈クマル〉のレーベル・コンピであるこのアルバムは伝えてくる。これに先だった真保☆タイディスコの旦那のシャブシャブの『SONOFX』はどこか遠くを見つめたくなる、幻の名盤解放同盟のいい方を借りれば「いい湯加減」の、グライムに異文化コミュニケーションのフィルターがかかったような快(怪)作だったが、有象無象が集った『クマル・エキスポ・2010』では状況はいっそう錯綜している。デ・デ・マウスへのアンサーともとれる『SONOFX』収録のフィルタード・バラッド "Katatsumiru"の真保☆タイディスコによるアップリフティングなリミックスをはじめ(私の五歳の娘は一度聴いてこの曲を憶えました)、このなかでは比較的名の知れた参加者だろうシャブシャブとオオルタイチのオバケジャーとか、ほかにもneco眠るのバイオマン、ガルペプシとシャブシャブによるガルシャブはリズムコンシャスである意味クールなトラックを披露したかとおもえば、京都シーンからはスズメンバが参戦し、スズメンバのMU-TONはシャブシャブとのパンパス・エスカルゴスなるユニットに増殖していく。真保☆タイディスコはラキラキ、ニジベンテンなど複数のユニット名を使いわけているが、フリクションのレックの非正統的な後継と目されるべき(ホントかよー)リズムから帰納されたヴォーカル・トラック(ドイツ語あり)はダブ・ステップの影をチラつかせながら、野田努よれば「女性の時代」だった00年代の殿(しんがり)をつとめるようにもみえ、総体的にはシャープな1枚になった。

Chart by DISC SHOP ZERO 2010.01 - ele-king

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1

G.RINA

G.RINA MELODY & RIDDIM #1: mashed pieces MELODY & RIDDIM / 日本 / 2009.12.25 »COMMENT GET MUSIC
シンガーでありプロデューサー、トラックメーカー、DJでもあるG.RINA自身が立ち上げたレーベルの第1弾。ダブステップの名曲の数々をレゲエでいうリディムと捉え、そこに自作のメロディを乗せたストリートアルバム的内容。アイデアの斬新さだけに頼ることの全くない、オリジナルと別の輝きを持った楽曲としての完成度の高さに、彼女の多面的才能の豊かさを改めて実感。G.RINA流の新しいリズム&ブルーズの萌芽。

2

LIGHTNING HEAD

LIGHTNING HEAD TRAFFIC JAM / NOW I DELIVER (VERSION) / 2009.12.11 »COMMENT GET MUSIC
元ROCKERS HI-FI、BIGGABUSHとしても知られるLIGHTNING HEADの7インチ限定300枚。A面はSTEPHEN MARLEYのヒットをファンキー・レゲエ・ブレイクビーツにカヴァー。トロンボーンのトボケ味なリフ、途中ではアフロなノリも出てくる最高の仕上り。B面はR.HI-FIの名曲リミックス。ゆったりしたムードのオリジナルを、L.HEAD印のダンスホール・ビートで料理。

3

DISTANCE / PINCH

DISTANCE / PINCH CLOCKWORK / ONE BLOOD, ONE SOURCE (REMIX) TECTONIC /イギリス / 2009.12.11 »COMMENT GET MUSIC
B面の盟友PINCHが07年に発表した名作『UNDERWATER DANCEHALL』収録曲のリミックスが特に素晴らしい。ラスタ・シンガーRUDEY LEEを迎えた曲で、RHYTHM & SOUND~BURIAL MIXラインとは全く別の方向からディープなダブへとリミックス。サブ・ベースの歌うようなラインとドラムの感触の対比、そしてその空間にハメられる。

4

SOOM T

SOOM T DIRTY MONEY E.P. JAHTARI / ドイツ / 2009.12.03 »COMMENT GET MUSIC
驚くべき多方面からの支持を受けつつ、いよいよ2月に初来日を果たすDISRUPTとSOOM TのコラボEP。「アンタのキタナイ金なんて要らないわよ!」というサビが印象的なタイトル曲は、この夏に引っ張りダコだった各地フェスやクラブでも大人気だったという曲。ファズが掛かったようなビット・レートの低いダブ・ビートと、SOOM Tの独特な声で繰り出される、歌うようなトースティングが不思議と絶妙な相性。

5

UNTOLD

UNTOLD FLEXIBLE BRAiNMATH / イギリス / 2009.12.15 »COMMENT GET MUSIC
個人的には2009年にその動向/サウンドが最も気になったプロデューサーのひとりUNTOLDの新曲が、ZOMBYやSBTRKTなどもリリースするBRAiNMATHから限定でリリース。もはやUNTOLD印と言える、ヒプノで骨折気味のビートが生む不思議なトライバル感を、真空度高めにグルーヴさせた曲。80年代終わりから90年代頭の実験的ハウス?テクノにも通じる感触。

6

ECHO_TM feat. ECHO RANKS

ECHO_TM feat. ECHO RANKS SKYLARKING KANU KANU / ポーランド / 2009.12.27 »COMMENT GET MUSIC
現在エジプトはカイロ在住のHATTI VATTIが立ち上げたレーベル第1弾、限定300枚。ポーランドのプロデューサーECHO_TMによる、ニュールーツ系レゲエの作品で知られるシンガーECHO RANKSを迎えたディープな音像のミニマル?テック・ダブ。RHYTHM & SOUND?BURIAL MIX直系ではあるけれど、よりレゲエ寄りになっている微妙な感じが◎。裏のリミックスはドイツのBIODUB。

7

KALBATA

KALBATA OH GOSH / KARL BUTTER BOTANIKA / イスラエル / 2009.12.27 »COMMENT GET MUSIC
WARRIOR QUEENを迎えたSOUL JAZZからのシングルが大人気だったイスラエルのダブステッパーKALBATAの最新シングル。エレクトロな感触が前面に出つつのダンスホール・ビートのA面は、クドゥロや高速のMCが乗るグライムとも相性が良さそう。B面ではさらにエレクトロ感を増し"テッキーな"というのとはまた違うテクノな感触のトライバル・グルーヴを聴かせてくれる。

8

MJ COLE feat. SEROCEE

MJ COLE feat. SEROCEE AO PROLIFIC / イギリス / 2009.12.27 »COMMENT GET MUSIC
2ステップで有名なMJ COLEによるUKファンキー。TODDLA Tとも組むMC、SEROCEEのレゲエ・ベースのフロウが洗練されたトライバル・ビートを野蛮にグルーヴさせるオリジナル、ベースが上昇を繰り返す自身のリミックスも良いが、そこにカーニヴァルなムードも加わって01?02年のレゲエ味ブレイクビーツが大盛り上りだった時代の感触も思い出させてくれるZED BIASによるリミックスが楽しい。

9

ION DRIVER

ION DRIVER WHAT SITUATION RICOCHET / イギリス / 2009.12.27 »COMMENT GET MUSIC
「レイヴ後のモハーヴェ砂漠で日の出の音を録音したら」なんて資料にはありましたが、そうイメージすると妙にハマる5曲入。トライバルだったりサイケなチルアウトだったりゲットー・ベースなグルーヴもありつつの、ディープでプログレッシヴなテッキー・ビーツ。これも"ダブステップ以降"のひとつの形を示す重要な1枚となりそう。

10

JOKER

JOKER CITY HOOPER / OUTPUT 1-2 TECTONIC / イギリス / 2009.12.27 »COMMENT GET MUSIC
メジャー・アーティストのリミックスを手がけるなど、そのサウンドもすっかりトレードマークとなった新世代JOKER待望の新曲は地元ブリストルのTECTONICから。スロウでへヴィなグライム?R&B風トラックに、お得意のロボティックなシンセが歌うA面。B面は、このレーベルらしいディープさも出たトラックで、中盤以降のリズムの変化も◎。爆音で聴けば、この音の解像度にやられること間違いなし。

Charts by JAPONICA 2010.01 - ele-king

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1

AMAZIAH

AMAZIAH SLOWLY CLAREMONT 56/UK / 2010/1/4 »COMMENT GET MUSIC
大人気CLAREMONT 56の人気コンピ"ORIGINALS"最新第4弾に収録されていたスローモーなロッキン・ディスコの大傑作、AMAZIAH"SLOWLY"を片面一曲仕様で収録した限定10インチが入荷!全世界300枚、しかも国内ではジャポニカ独占少量入荷というレア化必至のアイテムです!これは見逃せませんよ!

2

MARK E

MARK E WHITE SKYWAY UNDER THE SHADE/UK / 2010/1/14 »COMMENT GET MUSIC
MARK E新作!A面収録の"WHITE SKYWAY"は持前のへヴィなビートとグイグイと持っていかれる抜群のビルドアップ感を兼ね添えたスペイシーなビートダウン・トラックを披露!相変わらずいいとこ取りなウワネタ・サンプルのミニマル感もばっちりです!B面にはこちらもスペイシーなジャジーなリフに包まれながら進行する高揚感がたまらないディープ・ハウス・トラック"NOCTURN"を収録!

3

KINGDOM☆AFROCKS

KINGDOM☆AFROCKS イチカバチカーノ JAPONICA/JPN / 2009/12/20 »COMMENT GET MUSIC
ライブハウス/クラブに野外フェスまで数多くのイベントに出演、その熱いライブパフォーマンスが全国のダンスミュージック・フリークスの間で注目を集め、あのアフロ界の重鎮トニー・アレンも太鼓判を押す日本最強アフロバンド、キングダム☆アフロックス待望のファースト・シングル!今年リリースされたファースト・アルバムが日本全国、海外でも話題を呼んでいるBASED ON KYOTOのプロデューサーDAICHIによるリミックスも収録!

4

COFFEE & CIGARETTES BAND

COFFEE & CIGARETTES BAND ELECTRIC ROOTS 001 ELECTRIC ROOTS/JPN / 2009/12/24 »COMMENT GET MUSIC
BIRDSは定番ブレイク"EDWIN BIRDSONG/RAPPER DAPPER SNAPPER"をベース・サンプルに、小気味良いリズムで進行するドラムが重なりあうブレイクビーツ~ニュー・ディスコ・トラック!ヘヴィ・ドラムに 80'Sなヴォイス/シンセ・サンプルを随所に入れつつ巧みなドラムの抜き差しで展開をつけるヒップホップ・トラック"HEAVY SWING"、ビートダウン・マナーなビート構築にウワネタ・ループがハマる全方位対応型クロスオーヴァー・トラック"JAMS"と、どれも隅々までC&C BANDの細かい拘りが行き届いた全3トラック収録!

5

V.A.

V.A. TTJ EDITS #26 TTJ/FRA / 2009/12/25 »COMMENT GET MUSIC
RICHARD VILLALOBOSが2006年にPLAYHOUSEよりリリースした37分超えの長編大作クラシック"FIZHEUER ZIEHEUER"の元ネタを天才TODD TERJEがリエディット。乾いたパーカッションとフリーキーなフォーン、トランペットが織り成すオリエンタルな世界観を、原曲の雰囲気を壊すことなく相変わらずの抜群のセンスで展開させています。これは何が何でも押さえておきたい!

6

UNKNOWN

UNKNOWN ANGOLA -/FRA / 2010/1/11 »COMMENT GET MUSIC
ヒットを連発する"DAI"シリーズより、またも強力な一枚が到着しました!CARLCRAIGのリミックスが大きな話題を集めたCESARIA EVORAの大名曲"ANGOLA"を大胆使用!今でも耳にするエスニック/アフロの傑作ディープ・ハウスを使用し見事にダンサンブルなトライバル・ハウスに仕上げた傑作トラックです!今回も間違いなく話題となりそうですよ!

7

SETENTA

SETENTA APARIENCIAS HOT CASA/NL / 2010/1/14 »COMMENT GET MUSIC
パリのラテン・ディスコ・ファンク・バンドSETENTAによるクロスオーヴァー・サウンド全開の最高すぎる7inch!ラテン/ブラジリアンなジャズ・ファンク~ディスコ風味の"APARIENCIAS"はギターやエレピ、パーカッションによるトロピカルな味付けいい塩梅な爽快グッド・ナンバー!B面には疾走感溢れるパーカッシヴ・ビート、ラテン~アフロ・ヴォーカルとが爽快感を際立てるラテン・ジャズファンク・ディスコ"SONRISA"を収録でこちらもかなりいい出来です!

8

SCOTT FERGUSON

SCOTT FERGUSON EVOLUTION OF A REVOLUTIONARY EP FERRISPARK/US / 2010/1/11 »COMMENT GET MUSIC
デトロイト近郊ハイランドパークを拠点に、マニアックなディープ・ハウス作品をリリースしてきた人気を集めてきたベテランSCOTT FERGUSONの新作が到着!GIL SCOTT-HERON"THE REVOLUTION WILL NOT BE TELEVISED"のアジテーションを使用し、エモーショナルな漆黒のアーバン・ディープ・ハウスを展開!大推薦ビート・ダウン!

9

SLOW MOTION REPLAY

SLOW MOTION REPLAY THINK BETTER / RAGGED MUSTANG SOUL SOURCE/JPN / 2009/12/15 »COMMENT GET MUSIC
THE CHAMP×"THINK TWICE"とベタに大ネタを組み合わせながらもイナタさや違和感が全くなく逆に洗練されたタイトなグルーヴを織り成す超絶マッシュアップ・ブレイクスに仕上がった"THINK BETTER"!そしてB面にはアフロ・ジャズ傑作"CURTIS AMY/MUSTANG"を下敷きにし、ラグドなビートにグルーヴィなジャズ・アンサンブルで迫るジャジー・ブレイクビーツ"RUGGED MUSTANG"を収録!

10

KEZ YM

KEZ YM BUTTERFLY EP YORE / GER / 2009/12/14 »COMMENT GET MUSIC
KEZ YM新作!!THEOやKDJにも通じるスペイシーなシンセ・コードに黒光りした声ネタを被せたデトロイティッシュ・ディープハウス"BRIDGE TO BRIDGE"やピッチダウン・ハウス・トラック"LOW TIDE"等収録ですが、中でもやっぱりレアグルーヴ感に重点を置いた生な質感が最高すぎるブレイクビーツ・ハウス"BUTTERFLY"がとび抜けてます!!日本人離れしたこの黒い感覚やばいです。

Shop Chart


1

MARK E

MARK E Mark E Works 2005-2009 MERC / UK / 2010/1/6 »COMMENT GET MUSIC
RE-EDIT、NU DISCO、BEATDOWN。2000年代の潮流となった新しいHOUSEの形が産んだ、天才プロデューサーMARK Eのベスト盤にして1STアルバム。JISCO、RUNNING BACK、GOLF CHANNELやCREATIVE USEからの覆面プロジェクトの音源まで収録した「BEST」の名に恥ない選曲。低音のグルーヴが毎回素晴らしく、個人的にも彼の作品はオススメです!!!

2

RYO MURAKAMI

RYO MURAKAMI Lost It EP PANRECORDS / GER / 2009/12/26 »COMMENT GET MUSIC
今、日本人MINIMAL│TECHNOプロデューサーの中で、一番脂が乗っている男といえば、このRYO MURAKAMI!!! 練られた上で配置されたであろう、モダンなシンセと音ネタ使いのバランスはベテランの域。ヴァイナルならではの硬質でメタリックなリズムと相まってフロアでは相当鳴ります。LEROSA(OSTGUT、APNEA)REMIXを収録し、こちらもっ絶妙なテンションでGOOD!!!!

3

JPLS

JPLS Depths MINUS / CAN / 2009/12/19 »COMMENT GET MUSIC
RICHIE HAWTINのアナザーサイド、PLASTIKMAN直系、「DEEP FROM DARK」スタイル全開のアルバム!! 軽快なリズムが利いたトラックを多くリリースするMINUSの中で、最も異質。ノリのいい、ミニマル・テクノからは相当離れた暗すぎる質感を施されたトラック群が並ぶ作品。隣室から蹴られない程度に音量を上げて、焼酎でも飲みながら、暗い部屋で聴くのにオススメです。

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VILLALOBOS

VILLALOBOS Contempt PLAYHOUSE / GER / 2009/12/22 »COMMENT GET MUSIC
VILLALOBOSのPLAYHOUSEからのリリース作が一挙再発!!! この機会に全部買っとくのがコレクターとしてのマナーなんでしょうが、個人的にはコレをPUSH!! ヴァイナルの端から端まで目一杯溝を使い、繰り返しの美学を刻み込んだ15分ver.と22分ver.を収録。オリジナル・リリースは、LADOMAT2000から'95年(!)。早すぎです。どうかしてます。

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SPACE RANGERS

SPACE RANGERS Keep On Movin' EDWIN BERG / US / 2009/12/28 »COMMENT GET MUSIC
「D-Train / Keep On」と、「New Jersey Connection / Love Don't Come Easy」をRE-EDIT!名曲D-Train"Keep On"のDUB VERSIONの流麗なピアノ部分からの展開はオリジナルでは3分弱しかないのでたいてい2枚使いが主流ですが、これは見事なEDITで使い勝手のいい1枚です!

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MARIO BASANOV

MARIO BASANOV Apres 4 FUTURE CLASSIC. / AUS / 200912/26 »COMMENT GET MUSIC
リトアニアの新鋭クリエイター、Mario Basanovによる傑作です!!オリジナルは朝方に似合うドリーミーシンセポップ。それをEskimoからの2枚のシングルが大ヒットしたDowntown Party Networkがリミックス!ドリーミーな世界観全開の仕上がり!

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SOCIAL DISCO CLUB

SOCIAL DISCO CLUB Acid Town HANDS OF TIME / UK / 2010/1/12 »COMMENT GET MUSIC
ポルトガルのSOCIAL DISCO CLUBのNEW!!LIPS"FUNKY TOWN"使い?というよりEDITという趣ですが、これが見事な仕上がり!ACID HOUSEなボトムに印象的なシンセを見事に合わせ、決して上げネタとしての使用ではなく、ぐいぐいと引っ張っていくという感じの構成がお見事!

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V.A.(MANMADE SCIENCE FT. JOHN THROWER,SOULPHICTION,PHLEGMATIC...)

V.A.(MANMADE SCIENCE FT. JOHN THROWER, SOULPHICTION, PHLEGMATIC...) Motorsoul Vol. 1 PHILPOT / GER / 2009/12/26 »COMMENT GET MUSIC
「ポスト」デトロイト、ディープハウスのレーベルとして、ここ数年注目を集めるドイツのレーベルPHILPOTが2005年にリリースしたコンピレーションのデッドストックを発見!!!! 説明不要SOULPHICTIONや、その変名JACKMATE、MANMADE SCIENCE、ベテランTODD SINESやMOLEなど実力者のみが集う良質のアンダーグラウンド・ハウスコンピレーション!!!

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DJ QU

DJ QU Party People Clap DECONSTRUCT MUSIC / US / 2009/12/14 »COMMENT GET MUSIC
NY地下シーン「台風の目」的存在のLEVON VINCETが運営するDECONSTRUCTからの、絶品インダストリアル・ハウス。DJ QUによるTRACKをLEVON VINCET、JUS ED等がREMIXしたWパック。全トラックの硬派っぷりに惚れ惚れしますが、ANTHONY PARADSOLE & FRED P による、"沼系ACID HOUSE" REMIXがイイ!!!

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YOUANDME

YOUANDME Ornaments Symphony ORNAMENTS / GER / 2009/12/15 »COMMENT GET MUSIC
未だ詳細不明ながら、マニアを中心に信頼の広がりを見せる「ORNAMENTS」が初のCDをリリース。YOUANDMEよる、レーベル音源をMIXしたオムニバスといった体裁ながら、渋くダブ要素と硬質なインダストリアルなサウンド・メイキングでまとめられたクールな楽曲郡は、家で聴いても、何ら損なわれることはないです。限定333枚のスチール缶ケース。お見逃し無く。

[Techno] #2 by Metal - ele-king

 あけましておめでとうございます。相も変わらず労働とクラブ徘徊の生活を送っています。どうか今年もよろしくお願いします!
 ちなみに昨年の大晦日から新年はTHE KLO(BE-WAVE)→DJ NAMIDA(BE-WAVE)→中原昌也(BONOBO)→DJ WADA(SOUNDBAR+)→MIXMASTER MORRIS(SOUNDBAR+)といった流れでした。良い幕開けです。遅ればせながら野田さんに勧められ、ディスクユニオン限定のヘア・スタイリスティックスを買いました。ジョン・ケージを越えてます。恐れ入りました。
 さて、クラブ中毒者およびヴァイナル中毒者のためのテクノ系の12インチ、クリスマスから新年もリリースは好調で、いくつも面白いものが出ています。

1 Acid Pauli / Nymbiotic/Symbiotic | Smaul(GER)

90'Sのジャーマン・テクノを象徴するような無機質なレイヴ・サウンドを〈ディスコ・B〉(ミュンヘンの老舗のテクノ・レーベル)からリリースしていたマルタン・グレッシュマンことアシッド・ポールが、こんどは自身のレーベル〈スマウル〉からのリリース。作風はがらりと変わってソフトでシンプルなハウスを響かせている。
  A面はガムランを基調に、蛙の声や水音など自然音を巧みに取り込んだ個性的な響きのトラック。B面では哀愁をおびたストリングスのサンプルを使った落ち着いたディープ・ハウスが中盤のブレイクからプログレ調に変化していく珍妙なトラックを展開する。アイディアとネタ一発だが、それがまさに今日的な"リエディット"の形。そしてこれがまたフロアでは効力を発揮する。

2 Acid Pauli / Marvin / The Real Sidne | Bootleg

ちょっと古いけど、こいつも是非紹介したい。先にも挙げたアシッド・ポールの一作前のリリース。クラブで聴いている人も多いと思うが、マービン・ゲイの"ホワッツ・ゴーイング・オン"のヴォーカルがそのまま使用された、まるでシルクのように滑らかなディープ・ハウスだ。DJにとってはとても使いやすく、ヴォーカル・パートが入ってくるタイミングが遅いので前の曲からゆっくりとミックスすることができる。
  現場でかけてみると面白いのが、大ネタにもかかわらず歓声があがるような盛り上がりではなく、ほかほかした良い空気が流れるところです。曲のスピードを変えても音程がぶれない、サンプラーの機能向上がもたらした奇跡の1枚。もちろんヴァイナル・オンリーです。

3 Anthony Collins / Away From Home | Mule Electronic(JPN)

フランスの〈フリークン・チック〉に代表される新しいタイプのシカゴ・ハウス勢のなかで、目覚ましい活躍を見せているのがこのアンソニー・コリンズだ。DJあるいはダンス・マニアのあいだでいまいちばん信頼されているトラックメイカーのひとりでもある。
  A面ではレーベルのカラーに合わせてミニマルを意識したのか、彼の得意技であるシカゴ経由のディスコ・テイストは影を潜め、中低域の音の運びが上手いダビーで深みのあるテック・ハウスを展開している。B面ではピアノとシンセとホーンのからみが絶妙な、ジャジーなフィーリングのディープ・ハウスを展開する。ブラック・ミュージックとしてのハウスを求めている人にはドンピシャな音でもある。明るすぎず、綺麗すぎず、ほど良い塩梅です。

4 Telefon Tel Aviv / Immolate Yourself Remixies | Bpitch Control(GER)

トータスのジョン・マッケンタイアによるレーベル〈ヘフティ〉からオールドスクールなエレクトロを基調に数々の傑作を放ってきたテレフォン・テル・アビブのアルバムからのカットで、これはそのリミックス集。レーベルはベルリンのエレン・アリエン率いる〈ビッチ・コントロール〉から。豪華な面子がそろったお買い得盤である。
  A1はレーベルが期待を寄せる新人トーマス・ムラーによるダークなエレクトロを基調にした金属的な質感のアシッド・ハウス。おかずのパーカッションがいまのフロアの気分を象徴している。
  B1は人気の女性ミニマルDJ、ミス・フィッツによる原曲のヴォーカルを活かしたダビーなミニマル・ハウス。現在のミニマル・シーンを代表する〈パーロン〉からリリースされた前作の延長上で、よりシンプルに音の運びを意識したトラックに仕上がっている。この人の作る曲は、サンプルにエフェクトをかけたものが基調で、安易といえば安易なのだが、いまのDJならではのネタ感が良い。今回も毎度おなじみのブラック・ジャズからのサンプル使いだ。
  B2はベルグハインの人気DJ、ベン・クロックによるソフトでグルーヴィーなテック・ハウス。ハード・テクノに傾倒していた作風から見事なシフト・チェンジ。ただ体の動かし方にはテクノを感じる。後半に入ってくる多幸感のあるシンセがトランシーで心地よい。

5 Bauhaus / Bauhaus O1 | Bauhaus(GER)

ドイツの歴史的に有名な美術学校「バウハウス」の名前がホワイト版にスタンプされただけの、アート志向のハウス。アーティストは不明。音は、太いキックとザラついたハット、中高域のノイズで引っ張るインダストリアルな質感のハード・ミニマル。レディオ・スレイヴに代表される90年代テイストのテクノをモチーフにしている。いわば懐古主義的なトラックとも言えるだろう。ネーミング、楽曲、スタイル、すべてが現在のテクノを支配する"ミニマリズム"の美学に基づかれている。

6 Deepbass & Roman Toletski / Dark Beat(Remixies) | Dark Beat(UK)

UKの新しいレーベル〈ダーク・ビート〉よりストイックなハード・テクノが登場。A面はUKテクノ・シーンのベテラン、マーク・ブルームによるリミックス。ハットの抜き差しとホワイト・ノイズで引っ張り、後半には覚醒的なシンセが展開する、ほどよく走ったミニマル・テクノ。うすら遠くに聴こえる女性の声の入れ方にセンスの良さを感じる。
B面は、グラスゴーの〈ソーマ〉で活躍するパーシー・エックスによるエディット・セレクト名義でのリミックス。"The Orb Theory"という意味深なタイトルが付けられている。パーカッションを主体としたグルーヴィーなミニマル・テクノで、ジェフ・ミルズのように裏と表が入れ替わる繊細なトラック。マーク・ブルームといい、トム・ミドルトンといい、UKではベテラン勢を中心にテクノがふたたび盛り上がってきている。

7 Gary Beck / Over To You | Bek Audio(UK)

こちらはグラスゴーの新鋭ゲイリー・べックが自身で立ち上げた〈べック・オーディオ〉からの新譜。A面は中高域のフランジャーのかかったホワイト・ノイズで淡々と引っ張るミニマル・テクノ。
  B面は原曲とほぼ同じ構成でノイズを強調したエディット・セレクトによるリミックス。人気のプログレッシヴ・ハウスDJ、ロコ・ダイスのトラックのように柔軟なグルーヴながら、ハードにもソフトにも使える1枚で、まさにDJフレンドリー。基本的に展開の少ない地味な曲だが、聴かせ方次第ではDJのピークタイムにも使えまる。次世代も負けてはいない。

8 Gaspard De La Vega & Jenius / Beauty On Water Ep | Perplex Recordings(GER)

ドイツのテック・ハウスレーベル〈アワー・ヴィジョン・レコーズ〉などで活躍する新鋭ギャスパー・デ・ラ・ベガ&ジー二アスによる新作が〈パープレックス〉よりリリースされた。
  予定調和なデトロイティッシュ・テクノを聴かせるA1、B2はおいといて、B1のゆったりしたパーカッションにセクシーな女性ヴォーカルが絡むダブ・ハウスが面白い。ディレイによるダブ処理で音の"トビ"が強調されている。大箱でかかったら、スモークがバッチリはまりそうなイメージの曲だ。大げさで、ばかばかしくって、落差があるところが良い。先鋭的な試みや繊細構成はないものの、大箱でプレイされるために作られたプログレッシブ・ハウスのタフさが充分に滲み出ているクラブ・トラックだと言える。立体的で体感的な音楽。

9 NSI / Eitherway | NSP(GER)

NSIとは、テクノ・ファンにはサン・エレクトロニックの名前で古くから知られるベルリンのベテラン、マックス・ローダーバウアー、そしてリカルド・ヴィラロボスとのプロジェクト、オド・マシンをはじめ、ジーク・ウーバー・ディー・ゾンネ(Sieg Uber Die Sonne)のメンバーとしても活動するトビアス・フロイントによるユニット名である。NSIは2005年から活動をはじめ、すでに4枚のシングル、2007年には〈サッコ〉からは1枚のアルバムを発表している。
  本シングルは全編生楽器の演奏を中心に繰り広げられ、それをエレクトロニクスによって加工した音響的なツール集とうい体裁をとっている。ルチアーノの〈カデンツァ〉からリリースされたシングルではミニマル・ハウスのフォーマットを借用していたが、ここではどこまでも実験的でダンスを目的としたクラブ・ツールは1曲もない。かろうじてB1が曲として機能している程度だ。フリー・フォームなクラウト・ロック・バンド、ファウストを想起させる。新しいフル・アルバムが早く聴きたい。

10 Jacques Palminger / Tuedeldub Remixe | Pudel Produkte(GER)

これは酷いジャケット。プードル犬が糞を垂れている。ハンブルグのパフォーマーンス集団スタジオ・ブラウンのメンバーとして活躍するジャックス・パルミンガーのニュー・シングルだ。『鳥屋の梯子と人生はそも短くて糞まみれ―ドイツ民衆文化再考(アラン・ダンデス)平凡社』を参照しよう。
  新しいドイツのテック・ハウスを模索する〈パープレックス〉よりによると、ドイツ人にはスカトロジーを題材としたジョークを好む傾向があり、プードル犬が糞を垂れるモチーフも昔から頻繁に使われているそうだ。それはこの盤は、まさにドイツ人らしいユーモアの妙例なのだろう。
  A1は原曲のポエトリーを活かしたシャックルトンによるリミックスで、装飾はそぎ落とされ、ベースとドラム最小限のシンセという骨格だけで聴かせるダブステップ。ベースの抜き差しが、まるでダブの始祖キング・タビーを彷彿させる。
  A2はローレンスによる多幸感溢れるダウンテンポ・トラック。まるで元日の空のように美しく澄みきった穏やかさが魅力だ。B1はヘイ・O・ハンセンによるアシッド感のあるディレイがかったブロークンビーツ。B3はピーター・プレストによるメランコリックなピアノのメロディが印象的なエレクトロニカ。B2、B4はヴォーカルのみの短いスキット。現在のドイツの風俗が凝縮されているだけでなく、サウンド的にもとてもクオリティが高いリミックス集となっている。

 やっぱいいわ、いい。まったく目新しくはない。変わらないと言えば変わらない。すでに知っている人はよーく知っている、いかにもデリック・メイのミックスなんだけど、あらためて聴いてやっぱいい。とくに最初の入り方がかっこよすぎ。3曲目までのミックスが本当にうまいんだよな~。キックの入れ方とか、わかってるけど、そこで「ぐぃっ」って持っていかれる。少々強引だが、みんなこれにやられるんだ。未来的でエレガントな響きがあって、力強いキックが聴こえる。ハウスの恍惚とファンクの美学、そしてオーガズムへの飽くなき追求が「これでもか!」と言わんばかりに展開される。

 先日僕は青山のCAYでやっている〈ギャラリー〉に踊りに行ったが、DJたちはみんなレコードを使っていた。いまでは貴重だが、そこには疑いようのない人間味がある。デリック・メイのこのミックスも、コンピュータで正確にピッチ合わせをするこのご時世においてはいくぶん荒っぽいが、そこが良いのだ。微妙にずれているところとか、EQとか、いかにも"生"だ。もちろん"生"はクラブで体験するものだが、デリック・メイにとって公式の2枚目のミックスCDなんだから楽しみに待とう。タイトルは『Heart Beat Presents Mixed By Derrick May(TRANSMAT from DETROIT)× Air(DAIKANYAMA TOKYO)』だそうです。(......な、なんなんだ、この長さは!)。

 発売は1月20日予定です!

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