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GROOVEBOY
GROOVEBOY EP3
UNKNOWN / US / 2011/7/21
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IFEEL STUDIO
MORGENGRUSS III
INTERNATIONAL FEEL / URY / 2011/7/22
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GROOVEBOY
GROOVEBOY EP3
UNKNOWN / US / 2011/7/21
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IFEEL STUDIO
MORGENGRUSS III
INTERNATIONAL FEEL / URY / 2011/7/22
»COMMENT GET MUSIC
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去る7/22~24日の3日間、クロアチアはペトルチャネ(Petrcane)にて開催された "Soundwave Festival Croatia 2011"に参加しました。
ペトルチャネはヨーロッパでも屈指の美しさを誇るビーチのひとつで、夏フェスの舞台としても近年急速に注目を集めはじめています。今年もSkreamやBengaなどが出演した"Outlook Festival"、Derrick Carterをヘッドライナーに迎えた"Electric Elephant"、そしてFrancois KやJoe Claussellなどを擁する"Stop Making Sense"など、複数のプロモーターが設備をシェアする形で、ここでダンスミュージックにフォーカスしたフェスティヴァルを開催しています。
これがクロアチアのペトルチャネ。美しい場所です。
今年で3年目を迎えた"Soundwave Croatia"はヘッドライナーにRoots Manuva、Little Dragon、Bonoboの3組を迎え、他にもZero 7、Floating Points,、Alexander Nut、Andreya Triana、Belleruche、Fatima、Funkineven、 Illum Sphere、Keb Darge、Smerins Anti Social Clubといったアーティストたちが出演。
真夏日となった初日、フェスの最初のハイライトとなったのは新生代の歌姫、Andreya Trianaのステージでした。同日の夜にBonoboのステージを控えていたこともあり、このステージではソロとしてアコースティック・セットを披露。ループステーションを駆使して自身の歌声をビルドアップさせていく手法でオーディエンスを湧かせながらも、その芳醇な歌声はそんなギミックさえも不要なのではと思わせるほどに、圧倒的な存在感を誇っていました。
僕は当日のヘッドライナーの直前に、メインステージにて演奏しました。
今回はヴァイオリンとチェロを迎えたトリオとして出演し、11月にUKの〈Tru Thoughts〉からリリースされるフル・アルバムからの曲を中心にしたセットを披露しました。日没のタイミングだったこともあり、大勢のオーディエンスを目前に、そしてサンセットビーチを背景に演奏するという、とても贅沢な時間を過ごしました。
アンカーソングのライヴ模様です。
そして初日のヘッドライナーを務めたのはBonobo。今年の4月のロンドン公演@KOKOでも僕はサポートを務めさせてもらったのですが、その後も長期に渡ってツアーを続けていたこともあってか、リードシンガーに先述のAndreya Trianaを迎えたバンドのアンサンブルはますます強靭なものになっていました。昨年のiTunes UKの「Electronic Music Album of the year」に選出された"Black Sands"がいかに多くの人に愛されているかを物語るように、文字通りの満員御礼となったメインステージは大盛況のうちに初日の幕を下ろしました。
素晴らしい演奏をするボノボのライヴ。
その後はFloating Points & Alexander Nuts率いる〈Eglo records〉クルーによるDJセットが、まだまだ遊び足りないオーディエンスを踊らせはじめ、会場は巨大なダンスフロアへと変貌。現在ロンドンのアンダーグラウンド・シーンでもっとも注目を集めているプロデューサーのひとりであるFloating Pointsによるオールドスクールなディスコを中心としたプレイからは、ジャズとベース・ミュージックをミックスした自身の音楽性のルーツのいち部を垣間見ることができます。いっぽう、〈Eglo records〉のオーナーであり、Rinse FMのパーソナリティも務めるAlexander Nutは、ダブステップからドラムンベースまで、深夜を回った避暑地のオーディエンスの期待に応えるプレイを披露し、サイドでMC務めていたFatimaとともに、その役割をしっかりとこなしていました。
2日目も天候に恵まれ、早い時間からビーチは多くの人で賑わっていました。またフェスティヴァルの目玉のひとつでもある、船上パーティにもたくさんの人が集まり、Illum Sphere率いるマンチェスターの人気パーティ/レーベルの〈Hoya:Hoya〉、BonoboとDJ Cheebaを擁する〈Soundcrash〉、そして先述の〈Eglo records〉などのボートに人気が集中しているようでした。いっぽう、会場ではDJ Formatの新プロジェクトThe Simonsound、Laura J Martin、Lazy Habits、Riot Jazzといったアーティストたちが各ステージを湧かせていました。
ライオット・ジャズです!
盛りあがるオーディエンス。
ボート・パーティも良いですよ。
日没後の夜21時、僕は3rdステージで今度はソロとして演奏しました。すぐ隣に立っているホテルからの苦情も考慮して、ここは他のステージと比べて音も小さく、オーディエンスにとってはちょうど良い休憩スポットとして機能しているようでした。前日よりもエレクトロニックな側面を強調したセットで臨んだんですが、開演直後から前日のライヴに居合わせたオーディエンスがどんどん集まって、メインステージにもひけをとらない盛り上がりを見せました。
2日目のメインステージのヘッドライナーを務めたのは、名門〈Peacefrog〉から3作目『Ritual Union』をリリースしたばかりのLittle Dragon。ヴォーカリストのYukimi Naganoは、同じくスウェーデン出身のクラブ・ジャズ・ユニット、Koopの作品でその個性的な歌声を披露しているほか、最近ではSBTRKTやGorillazの作品にもゲストとして迎えられる等、各方面から多大な注目を集めているシンガーのひとりです。そして彼女のメインプロジェクトでもあるこのLittle Dragonは、折衷したエレクトロニックでポップな音楽性でありながら、ライヴではインプロヴィゼーションを大幅に取り入れるなど、音源とはガラッと違ったアレンジで、新作からの曲群をたくさん披露していました。そのダイナミックでパワフルな演奏はもちろんのこと、Yukimi Naganoのちょっと不思議なステージ・パフォーマンスにオーディエンスの視線が釘付けになっているのがとても印象的でした。
ユキミ・ナガノの格好いいパフォーマンス!
3日目は残念ながら雨模様になってしまい、雨脚が強まった夕方にはメインステージの出演者を屋内のステージに移動させることに。ペトルチャネの安定した天候はここでフェスティヴァルを開催する大きな要因となっているだけに、この予想外の事態にプロモーター側も対応に追われている様子でした。僕は同日の夜のフライトでロンドンに戻ることになっていたため、残念ながらRoots Manuvaによるグランドフィナーレを見届けることはできなかったのですが、それは来年まで楽しみにとっておきたいと思います。
昔の話だが、ある女友だちから相談されたことがあった。彼女はいま言い寄られている男がいると、電話口で言った。その男のことは嫌いじゃないが、とくに好きでもないと彼女は打ち明けた。僕はそれで、彼女からいろいろとその男についての情報を仕入れた。そしてその男のレコード・コレクションについて突っ込んだところ、音楽の知識が豊富な彼女に対して男のほうのそれはあまりにも貧弱だということがわかった。「レゲエのレコードの1枚も持っていないような男とはつき合うなよ」というのがその晩の僕の結論だった。彼女はその言葉にものすごく納得した様子だった。そうね、ダブとロックステディの違いも満足にわからないような男じゃねと、彼女は言った。
故トニー・ウィルソン(〈ファクトリー〉レーベルの創設者にして映画『24アワー・パーティ・ピープル』の主人公)に有名な言葉がある。「人は僕になぜマンチェスターからは良いバンドが生まれるんだ? と訊いてくる。答えは簡単だ。マンチェスターのキッズは、他のどの都市のキッズよりも良いレコード・コレクションを持っているからだ」
僕にしてみたらこの発言は、UKの音楽シーン全体を言い当てているように思える。UKには他のどの国よりも良いレコード・コレクションを持っているキッズがいる(まあ、いまはデジタルの時代なのでレコード・コレクションではないのだが、しかしよく音楽を聴いているという点では昔と変わらない)。そうした"伝統"のなかで、とりわけUSのブラック・ミュージックとジャマイカ音楽のコレクションは、UKのポップ・ミュージックにおけるはっきりとした個性となっている。もう長いあいだそうなっている。これはもう、相変わらずの話だが、USのインディ・シーンが自国のブラック・ミュージックや距離的に近いジャマイカと繋がることはそうないが、より距離のあるUKにおいては、しかしより身近にインディ・シーンに影響を与えている。ジェームス・ブレイクにあってウォッシュト・アウトにないものは、USの主流のポップスであるR&Bからの影響である。ま、そういうわけで、トドラ・Tもまた、実にUKらしい魅力を持った作り手として僕はけっこう好きなのだ(JポップにもUSのブラック・ミュージックやジャマイカ音楽から影響されたというものがあるにあるが、おおよそ彼らの音楽には野太いベースもなければ唸るようなグルーヴもない、あるいはバカぎりぎりのファンキーさもない、見事に飼い慣らされているというか......)。
トドラ・Tを特徴づけているのは何よりもまずはレゲエだ。とにかくダンスホールであり、そしてヒップホップとR&B......というとグライムのように思われるかもしれないが、トドラ・Tの音楽はつねにポップで、そして明るい。あの陰気な国にしては珍しくドライで、あの工業都市シェフィールド出身にしてはやけにアッパーで、ときに笑える。2009年にリリースされた彼のデビュー・アルバム『スカンキー・スカンキー』は、当時は「ダンスホールにおけるマイク・スキナー」と形容されたもので、昨年来日したときにそのことを本人に言ったところ「なぜそんな風に呼ばれたのかわからない」とこぼしていたが、それはもう、そのアルバムがスカンクを捲きながらゲラゲラ笑っているような、スカンキーな内容だからに決まっている。トドラ・Tの音楽の魅力とは、つまり、聴きながら1点を見つめてしまうようなものではないのだ。
そういう意味では彼がルーツ・マヌーヴァから信頼され、また今回〈ニンジャ・・チューン〉に移籍したことも必然と言える。そして......彼のような根っからのパーティ野郎が、本当に20年ぶりのパーティの季節を迎えているUKにおいて新作を出したらどんなことになるか言うに及ばずだが......とにかくここにまた、時代が作らせたダンス・ポップのアルバムが誕生したわけだ。
『ウォッチ・ミー・ダンス』が主張しているのは、どう考えてもレイヴ・カルチャーである。ルーツ・マヌーヴァが吠えているタイトル曲の"ウォッチ・ミー・ダンス"のファンキーなグルーヴ(リミックス盤ではアンディ・ウェザオールがセイバーズ時代を彷彿させるダンス・ヴァージョンを披露)、ショーラ・アマをフィーチャーした"テイク・イット・バック"の1992年スタイルのレイヴ・ポップ......あるいは"クルーズ・コントロール"のブレイクビーツ・ハウスや"バッドマン・フルー"におけるどや顔のダンスホール・スタイル......イギリスっていう国は景気が良いときにはブリット・ポップで、景気が悪くなればそれに比例するかのようにダンス・カルチャーが燃えたぎるようである。まあ、デヴィッド・キャメロン首も保守党とはいえ、なにげに大麻好きをほのめかしているし、妻は入れ墨を入れているし......、よくわからん。
僕がもっとも好きなのはあざやかな赤色のカラー・ヴァイナルで先行リリースされた、ロイシン・マーフィーが歌っている"チェリー・ピッキング"。シンプルだがブリブリと唸るベースを前面に打ち出しながらレゲエのグルーヴを応用した、実にUKらしいキャッチーなシンセ・ポップである。ミズ・ダイナマイトが歌っている2曲----ラヴァーズ・ロック調のメロウな"ハウ・ビューティフル・イット・ウッド・ビー"とルーツ・レゲエ調の"フライ"も素晴らしい。『ウォッチ・ミー・ダンス』は確実にダンスのアルバムだが、良いレコード・コレクションに基づいた、サーヴィス満点の多彩な作品である。
ところで、冒頭に書いたエピソードだが、僕の友人は、同じようなシチュエーションで「ジミヘンを知らないような男とはつき合うなよ」と言ったそうである。もちろんこいうのはある種のたとえ話で、まあ、人それぞれ言い方があるのだろうけれど、音楽とは応援するフットボール・チームの選択と違ってある程度の「a way of life」を示すものなのだ。
なお、末筆ながら、最高に格好良かったフットボーラー、松田直樹選手のご冥福を祈りたい。
アシッド・ハウスの時代にもベテランが後からそのムーヴメントに乗り込んできたことはあった。キャバレ・ヴォルテールやコイルをはじめ、ジーザス&ザ・メリーチェインのメンバーまでもがダンスのムーヴメントへとアプローチした。それからおよそ20年後の現在、ニューヨークからマシンドラムがダブステップの"その後"にアクセスしている。
2010年の夏、トラヴィス・スチュワートはマシンドラム名義でグラスゴーの〈ラッキーミー〉からシングルを出すと、同時期にベルリンの〈ホットフラッシュ〉からセパルキュア名義(プレヴィーンとのプロジェクト)でもシングルを出している。〈ラッキーミー〉といえば、ジャックス・グリーン(Jacques Greene)という、ここ最近、耳の早いベース・ミュージック・リスナーにけっこう注目されているプロデューサーのひとりを擁するレーベルだが、マシンドラムは2010年には同レーベルからアルバムも発表している。セパルキュアとしての2枚目のシングルも2011年の初頭に〈ホットフラッシュ〉からリリースしているが、10年のキャリアを持つベテランの予期せぬ登場は、ベース・ミュージックのシーンが現在それだけの多様性を持っていることの証であり、このムーヴメントがさらにまた新しいリスナーや世代を巻き込んでいくことの予兆で、実に喜ばしいことだと僕には思える。
とはいえ、10年前のマシンドラムとはIDMとヒップホップの折衷主義的なアプローチの、当時はアブストラクト・ヒップホップと呼ばれた一群の、まあ要するにプレフューズ73のフォロワーで、そしてフォロワー以上のインパクトがあったわけではない。リリース元も〈Merck〉という、フロリダにある典型的なまでの〈ワープ〉フォロワー・レーベルだった......。
しかしながら、今年〈ワープ〉からリリースされたプレフューズ73の新作と昨年〈ラッキーミー〉から発表されたマシンドラムのどちらに興味があるのかと言われれば、僕のようなリスナーは〈ラッキーミー〉を指名するんじゃないだろうか。なにせリリース元が〈ラッキーミー〉だし、もちろんプレフューズ73のフォロワーに過ぎなかった人の音楽がベース・ミュージックとの邂逅によってどのように変容したのかも興味深い。マウント・キンビーのようなイノヴェイターが拡張した"その後"にIDMの入り込む余地が大いにあるのは事実だ。そしてマシンドラムは、実際の話、彼の器用なプログラミングと豊富な知識ないしはアンビエントのセンスによって、ベース・ミュージックに集まった多くの耳に衝撃を与えたのである。
『ルーム(s)』は〈ラッキーミー〉からの『メニー・フェイシズ』 に続いて発表されるマシンドラムの新しいアルバムで、リリース元は〈プラネット・ミュー〉。いま3度目のピークを迎えているこのレーベルからのリリースと いうこともあって、そしてもちろん内容的にも、『ルーム(s)』はさらにまた多くの耳を惹きつけるであろう作品である。ダブステップのドラム・パターンに心地よくハマっているヘッズ、それからフォー・テットやゴールド・パンダのエレクトロニック・コレクションに心酔するリスナーが同じ部屋にやって来たようなアルバムで、オープニング・トラックの"She Died There"がまさにそのことを象徴する1曲だ。これはブリアル・スタイルの2ステップのビートを用いながら、しかしミニマル・ハウスのドープなムードを絡ませることでダブステップとはどこか別の方角に動かしているという、そう、ブリアルとフォー・テットの共作の路線を行きながらそれを追い越そうとするトラックである。全体的に言えば、彼が好むところの複雑なビート・プラミングを披露してはいるものの、難しい音楽というわけではない。随所に流行のR&Bサンプルを巧みに使いながら、あくまでダブステップ以降のビートを強調するアルバム で、なんというか、彼のルックスからはなかなか思い浮かばないような、バカみたいな喩えで申し訳ないけれど「イケイケ」で「ノリノリ」な作品である。
豊富なドラム・パターンを持っているトラヴィス・スチュワートだが、『ルーム(s)』では出し惜しむことなく......というか、もう手が付けられないほどに勢いに乗っている。それは、ピアノ・ループが印象的な"Come1"のように、あくまでもエレガントに、そしてメロディアスに駆け上がっていく。"Come1"に関して言えば、お世辞抜きにクラウトロック(とくにカン)の銀河にもっとも接近したダブステップだと言えるのではないだろうか。
その他方では......チョップド・ヴォイスがはしゃぎまくっている"GBYE"や躁状態のIDM系のトラック"The Statue"のような曲は、トラヴィス・スチュワートが〈プラネット・ミュー〉というレーベルに抱いている思いのようなものが具現化した曲ではないかと思えるほど、ゼロ年代前半の〈プラネット・ミュー〉を思い出してしまうのである。まあ、しかしそういう細かいことよりも、僕が主張したいのは、エレクトロニック・ミュージックはいま面白いですよ、マジに......ということなのだ。
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BUSHMIND
『GOOD DAYS COMIN’』
GET MUSIC
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HIRATUKA DECODER
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ISEHARA KAIDO BOYS
3TRACKS CD-R(NOT FOR SALE)
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MANKIND CLASSICS ZINE -DJ HIKARU MIX-
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WD sounds×jo-G×michioshka PACK TEE SHIRTS
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PURE LIBERATE HI DISGUST VOL.1
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DJ FUNK ACE
DANGEROUS RAGGA MIX
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YAHIKO
KUCHIBILL
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PULLING TEETH
funerary
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sunouchi kemm
Harmonic Partials
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人が好むと好むざるとに関わらず、ジェームス・ブレイクのヒットによってダブステップの"それ以降"が揺れ動いている現在、もしこれから新しいジャンル名が生まれてさらにまた新しい10年がはじまるとしたら、そのエース候補ナンバー・ワンの座にいるのはロンドンのふたり組、マウント・キンビーだ......ということは満場一致の意見ではないだろうか。アルバム『クルックス&ラヴァーズ』は、たとえば僕には1998年のボーズ・オブ・カナダの登場を彷彿させるところがある。あれはテクノの"ネクスト"として、それこそレイ・ハラカミから大きく言えばアニマル・コレクティヴにまで繋げていったフシがある。それと似たように、シーンの脇道から登場しながら、しかし大きなインパクトを投げかけた『クルックス&ラヴァーズ』のあとに続く新しい道筋があるとしたら、いまそこにいるのは、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルやホリー・アザーないしはパンタ・デュ・プランスといった、そう、ロンドンの2ステップ・ビートとは無関係だった連中かもしれない。こうした予期せぬ他との接続やそれにともなう変容がムーヴメントを追いながら聴くことの面白さで、他にも、その呼称に関してはどうかと思うが、ウィッチ・ハウスにしてもブリアルの影響下に生まれているという話で、まあとにかくダブステップ以降は大きな変化の真っ直なか、さまざまなところで浸水が起きている......というわけだ。
本作「カーボネイティッド」はエース候補が久しぶりに発表するオリジナル作品で、僕もいつ聴けるのかと楽しみにしていた1枚だ。もっともこれはシングル盤で、オリジナルは3曲収録され、リミックスが3曲の計6曲が収録されている。
『クルックス&ラヴァーズ』のレヴューのなかには「ダブステップの大言壮語をアンビエントに接続させた作品」などとうまいことを書いている人がいたけれど、タイトル曲の"カーボネイティッド"は、その路線をさらにテクノの側へとハンドルを切った曲だ。4分しかないのが惜しいほど、美しいアンビエントとミニマルなビートによるシンプルな構成は完璧で、そのヌケのいい音は、あたかも溶け出した液体のように、手際よくテクノとIDMとダブステップのすき間に侵入する。そして途中から入るR&Bサンプルとエコーするビートによるピークが、やがて素晴らしい余韻を与える。"フラックス"は段階的に展開していくタイプの曲で、ベースラインが叫び声のループと絡みながら、そして曲はブレイクをはさんでグルーヴィーに活気づいていく。"ブレイヴス・コード"も素晴らしい曲だ。これはゆったりとしたダウンテンポで、澄み切ったグリッチ・サウンドとダブ、そして風のような音に控えめなベースライン、響き渡るハンドクラップ......新鮮なチルアウト・ビートが展開されている。まあ、とにかく見事というか、オリジナルの3曲すべてが魅力的だ。
リミックスは、ほとんど新人と呼べるようなふたりと、ひとりのダンスフロアの人気者が手掛けている。『クルックス&ラヴァーズ』に収録されていた曲"アドリアティック"(オリジナルはわずか1分半)のリミックスを手掛けるのはクラウス(Klaus)という人で、名前からしてドイツ人だろうか、減速したループによるアンビエントを展開している。ベースのドローンめいた響きを持続させながら、シンプルだが思い切ったヴァージョンとなっている。
"カーボネイティッド"のリミックスはふたつある。ひとつは昨年ジェームス・ブレイクと共作しているエアーヘッドで、単調なビートと気味の悪い音響のなか、途中でR&Bサンプルが挿入され、そして突然ギターが鳴り響くというやや奇をてらった展開の暗いトリップ・サウンドとなっている。曲の雰囲気はハウ・トゥ・ドレス・ウェルやホリー・アザーらと似ているが、なかなか凝った作りをしていて、今後の動向が注目されそうなひとりである。もうひとつはわが国でも人気のブリュッセルのテクノDJ、ピーター・ヴァン・ホーセンによるリミックスで、こちらはデトロイティシュなムードを用いながら、リズムをダンスフロアへと確実に動かしている。
この1年、多くのダブステッパーがやる気満々になってアルバムを発表しているなかで、「カーボネイティッド」は言葉数少なく、あくまでも謙虚な佇まいながら、しかし自分たちには明確に明日が見えていることを告げている。
「ケンイシイがデモテープのなかからすごい才能を見つけた」と、〈サブライム・レコード〉の山崎マナブから連絡をもらった。とにかくこんなことは初めてだから聴いて欲しいと言われ、そして聴いた。それから数週間後にレイ・ハラカミと電話で話した。初めての電話にしては長い会話だったことをとてもよく覚えている。あれはたしか1997年のことだったから、彼はあのとき26歳だったのか。
レイ・ハラカミは、まるで彗星だった。多くの耳がテクノ・シーンに変化を要求していた時代に突然のようにやって来たひとりだった。デビュー当時のハラカミの音楽は紛れもなくダンス・ミュージックのスタイルを用いているが、しかしそれは明け方まで続く快楽主義に限定されたものでもなかった。彼の音楽はダンス・ミュージックと括るには躊躇してしまうほど、魅力たっぷりのメロディやハーモニー、それから少しばかりユーモアの効いた展開というものがあった。初期の頃はデトロイティッシュなテクノ・ミュージックにおける新しい才能として紹介され、あるいはUKのプラッドやなんかともっとも近い感性を持っているという説明をされたものだったが、彼は最初から"ハラカミ音"とでも言うべき彼自身の音色やクセというものを持っていた。それは甘く、儚く、美しいトーンであり、そしてまた子供の玩具が奏でるようなブレイクビートに特徴づけられていた。
1999年のセカンド・アルバム『オパキュ(Opa*q )』は、あるひとつの時代のこの国のテクノ・シーンにおけるマスターピースだが、その翌年リリースされた「Blind/Swap EP」をふくめて、それはハラカミにとってテクノというひとつのムーヴメントなりスタイルを彼なりに意識していた最後の作品でもあった。2001年にリリースされた3枚目のアルバムとなる『レッド・カーブ』は、やりたいようにやったというか、彼がダンスフロアのムードにとらわれずに作った最初の野心作で、そして結果を言えば、もっとも大衆受けした4年後の『ラスト』への伏線となったアルバムであり、彼の音楽がポップのメインストリームに突き刺さる契機をもたらした作品でもあった。
レイ・ハラカミは取材でもよく喋る人だったが、酒を飲むとさらによく喋る人だった。彼と最後に会ったのは、取材で向井秀徳との対談をお願いしたときだったが、そのときも笹塚の居酒屋の座敷で、よく飲み、くだらない冗談を交えながらよく言葉を発していた。よく知られるように、彼は彼自身の気構えや反骨精神というものをしっかり持っていた人だったけれど、基本的にはおおらかな人だったというのが僕の印象だ。
彼の作品すべてに言えることだが、レイ・ハラカミの音楽にはバッド・ヴァイブというものがない。彼の代表作のひとつに"Joy"という曲があるように、レイ・ハラカミにとって喜びこそが音楽の原動力だったのではないかと思っている(それがゆえに彼は実験が目的と化したIDMと同一視されることを強固に拒んだ)。『レッド・カーブ』は彼が愛したロバート・ワイアットのように美しい作品だが、思い詰めた悲しみというものはない。彼の音楽は、いつ聴いても驚くほど澄み渡っている。そして、緻密なアレンジがされているというのに、ほろ酔い加減のアンビエントがあまりにも気持ちよさそうに小躍りしているようでもある。レイ・ハラカミ、レスト・イン・ピース。
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![]() STEREOCiTI Kawasaki Mojuba Underground |
シカゴ/デトロイト・フォロアー、ミニマル以降のモダン・ハウスのなかで、いま、世界中から注目を集めているDJ/プロデューサーがステレオシティの名義で知られている炭谷賢である。
東京を中心にDJとしてキャリアを積んできたステレオシティは、2008年にスペインの〈ディープ・エクスプローラー〉から「Citifunk EP」でデビューすると2009年にベルリンのドン・ウィリアムスが主宰する〈モジュバ〉からリリースされた「Early Light」が早くもスマッシュ・ヒット、ローレンスやダニエル・ベルのプレイリストにもあがったその野太いキックのディープ・ハウスは、発売から2年以上たったいまも国内各地にあるクラブやDJバーで鳴り響いている。こうしたことは、消費が早いクラブ・ミュージックのなかでは珍しいことだ。
今回〈モジュバ〉からリリースされたファースト・アルバム『Kawasaki』はステレオシティが生まれ育った街である川崎を走る列車のフィールド・レコーディングで幕を開ける。そしてシカゴ、デトロイトへの愛情のもとに作られた粗野で荒々しくも繊細なディープ・ハウスが続いていく。美しいサウンド・スケープをもったアルバムなら良く見かけるが、タイトル曲の"Kawasaki"も含め、しっかりとストーリーが展開されていくアルバムは近年では珍しい。
アルバムは3.11以前に作られたものであるが、職人的な細部へのこだわりで丹念に作りこまれた楽曲は時代性を超越する強度を持ったものだ。そしてこのご時勢に3枚組みのLPをリリースしたところにも意気込みを感じる。DJの腕もたしかなもので、自分と白石隆之さんとWHYでオーガナイズしているパーティ〈Sweet〉にもゲストで出演してもらった。
全盛期の〈MANIIAC LOVE〉はぶっ飛んでて面白かったよね。"SLOWMOTION"とかもハマってたよ。ハード・ハウスのパーティとかで、麻布の〈Mission〉とかもたまに連れてかれたけど、けっこう嫌いじゃなかった。
METAL:国内盤CDのライナーを執筆しているのは白石隆之さん。デトロイティッシュ・サウンドの日本人プロデューサーでは草分け的な存在ですよね。
STEREOCiTI:白石さんのことは、実はそんな昔から知ってたわけじゃなくて......実際に会う前に、白石さんの方からMyspaceでコンタクトしてくれたことがあったんだけど、実際に顔を合わせたのは去年。安田くん(WHY)が紹介してくれたんだよね? その頃、白石さんが長野の〈Human Race Nation〉から出したリミックス(G.I.O.N./Jack Frost - Takayuki Shiraishi Remix)がすごい好きで。それで白石さんのアルバム『SLOW SHOUTIN'』(2002年/Pickin' Mashroom)を買って聴いたら「2002年の時点でこんなことやってた人がいたんだ」ってびっくりして、すごく好きになって。で、それから自分のDJでも白石さんの曲を使ったり、LOOPの〈Sweet〉にDJで呼んでもらったりとか、交流ができていった感じ。
METAL:アルバムの話に入る前に、音楽的な背景を聞いておきたいんですけど。
STEREOCiTI:もともとブラック・ミュージックはジャズから入って。ジャズっていうのは、モダン・ジャズね。高1のとき、最初にコルトレーン聴いて、そこからずっとジャズ集めてて。ジャズ聴いて、なんだろ......音楽の「間」みたいなのを最初に意識したのかな。ギターでバンドもやってたよ。前に〈Deep Explorer〉からリリースした曲では、自分でギター弾いてる。今回のアルバムではギターは弾いてないけど、"A day"って曲でベースを弾いてる。
METAL:最初はレゲエのDJだったんですよね。
STEREOCiTI:そうそう(笑)。ボブ・マーリーが好きで。若いとき横浜で働いてた頃に、まわりの人種もレゲエが多くて、みんなヤーマン、ヤーマン言ってる感じで(笑)。そういうなかで育ってたから自然とレゲエが好きになって、ジャマイカの煙たい空気感とか、ダーティーでヤバい感じにも憧れたし、その流れでレゲエのDJをやりはじめた。ダンスホールね。その後もっとモダンなビートが好きになって、その流れとレゲエがうまくクロスオーヴァーした感じが面白くて。その直後にちょうどアシッド・ジャズのムーヴメントがあって乗っかって、その後トリップホップって流れ(笑)。それは学校(桑沢デザイン研究所)に通ってた頃だったんだけど、その頃学校の友だちなんかと六本木の〈Juice〉(現在はBullet'S)でイヴェントはじめたの。で、その頃、人を踊らせる究極はやっぱりハウスにあるんじゃないかと思って聴きはじめたんだよね。でもその頃はよくわからないからもうテキトー。ニューヨークもシカゴもUKもごちゃまぜで。それで、自分の好みを追っていったら、その頃の音ではテクノがそうで。それでデトロイトとか聴いて、DJでテクノをやってる頃に、〈MANIAC LOVE〉に入っていった感じ。
WHY:テクノを最初にいいと思ったのも「間」みたいな部分なんでしょうか?
STEREOCiTI:いやぁ、超踊れる、ぶっ飛べるみたいな。単純なところだよ、ほんと。
METAL:その頃の決定的な、強烈なパーティ体験ってあるんですか?
STEREOCiTI:全盛期の〈MANIIAC LOVE〉はぶっ飛んでて面白かったよね。"SLOWMOTION"とかもハマってたよ。ハード・ハウスのパーティとかで、麻布の〈Mission〉とかもたまに連れてかれたけど、けっこう嫌いじゃなかった。90年代の、ただれたパーティ感は面白いよね。初期のパーティ体験がずっと地下だったから、クラブ・ミュージックにはずっと地下のイメージ持ってる。
WHY:それで〈MANIIAC LOVE〉の"CYCLE"でハウスのDJをはじめた頃から、いまみたいなスタイルなんですか?
STEREOCiTI:デモテープ聴いてもらって「いいね」って言ってもらったのはハード・ミニマルなんだけど、実際"CYCLE"ではじめた頃は、いまで言うテック・ハウス。「テック・ハウス」って言葉大嫌いなんだけど(笑)。〈Prescription〉とか〈Guidance〉、〈KDJ〉とかが好きで。その頃のセットはディープ・ハウス......いまとあんまり変わらない感じのディープ・ハウスからスタートして、〈Paper Recordings〉とか〈Glasgow Underground〉みたいなUKっぽいっていうか、ちょっとグルーヴがあったまった感じで山崎さん(Sublime)かWADAさんに繋ぐ、という感じ。
WHY:ブースで照明をいじりながらWADAさんがDJやってる姿を見ていて、DJのやり方を覚えたって言う話でしたけど。
STEREOCiTI:やり方っていうか、クセね。WADAさんのクセはついた。 1曲1曲EQ全部違うし、出音をちゃんと聴くってところとかそうだし。ミックスの仕方は自分とはちょっと違うんだけど、テクノのミックスってこうやってやるんだ、っていうのは、全部やっぱりWADAさんから学んだかな。
METAL:僕の場合なんですけど、WADAさんのDJを近くて見てて、EQ以外で学んだのはディスコDJのメンタリティなんですよね。客もよく見てるし。
STEREOCiTI:わかるわかる、本当そう。エンターティナーというか、あれがDJだよね。
METAL:使ってるネタ自体は大ネタってほとんど使わないんだけど、場の雰囲気に合わせた踊らせ方をする。
STEREOCiTI:そうだね、それは本当に俺も学んだところ。場の流れを作るというか、場を見てるよね。好きな曲をかけるだけ、っていうようなDJいるからね、やっぱり。
WHY:その"CYCLE"時代や、TAKAMORI.Kさんとやってた"Better Days"の頃は、本名のSumitani名義でDJしてたんですよね。"STEREOCiTI"と名乗る経緯、由来は?
STEREOCiTI:10年ぐらい前にシカゴに1ヶ月ぐらい滞在してたの。シカゴに友だちが住んでて、そこに泊まってたんだけど、そのアパートメントの裏庭の壁にスプレーで「STEREO CITY」って書いてあって。アーティスト名はそこから来てる。で、その友だちの実家がデトロイトで。ちょうどサンクス・ギビング・デイの頃で、実家に帰るっていうからデトロイトまで一緒に車でついて行って。
METAL:シカゴ~デトロイト、どうでしたか?
STEREOCiTI:その友だちはドラマーで、彼の仲間たちがダウンタウンに住んでて、その連中がみんなトラック作ってたんだよね。やっぱりダウンタウンてもともと危なくて、人なんかあんまり住んでない......そこにしか住めない黒人しかいない場所だったんだけど、若いアーティストがどんどん引っ越してきて暮らし始めてる時期だったんだよね。だから結構白人も多かった。デトロイトでは、IBEX(Tony Ollivierra......Neil Ollivierra=The Detroit Escalator Companyの実弟)も一緒に遊んでた。後でこっちで会ったら覚えてなかったけど(笑)
METAL:リクルーズとかも同じ一派ですよね。
STEREOCiTI:リクルーズはあの辺の大学生で、たしかダウンタウンからはちょっと離れたところに住んでたんだよね。
METAL:デトロイトで「第二世代以降」と呼ばれる人たちとの交流があって、彼らがそこで作っていた音楽が、自分の核になってきた部分ってあるんでしょうか。
STEREOCiTI:全然ない。リクルーズは「この人すげえなぁ」と思って研究したところも実はあるんだけど......曲は好きなんだけど、ああいう白人っぽいグルーヴは、自分のやりたいところではなかったんだよね。それよりも、ハウスにしても黒人がやってるもの。当時だったらリック・ウェイドやケニー(・ディクソン)、セオ(・パリッシュ)、あの辺のもっさりしたハウスのグルーヴが好きで。ゴスペルっぽいハウスとか、エディ・フォークスとか。いまは逆にデトロイトのハウスよりもテクノのほうが好きなんだけど。
黒人のグルーヴが好きなんだよね。ファンクというか、ずれた感じ、粘ってる感じが好き。グルーヴに関しては、一時期ノー・ミルクと一緒にすごい研究してたんだよね。ここをこうズラすとこうなる、みたいな。ディスコとか聴いて、「なんでこのグルーヴが出るんだろう?」とか研究したよ。だから自分の曲もイーヴンっぽく聴こえても実はイーヴンじゃない。個人的な好みだけど、きっちりイーブンに貼っつけてるトラックとかは、聴いた瞬間ダメ。あとドラムマシンのイーヴンと、シーケンス・ソフトとかで置いたイーヴンは全然違うんだよね。ドラム組む時も、ドラムマシンのノリそのままで作りたい曲以外は、全部自分で細かく組んでグルーヴ作ってるから。そういう作業は好きかな。
10年ぐらい前にシカゴに1ヶ月ぐらい滞在してたの。シカゴに友だちが住んでて、そこに泊まってたんだけど、そのアパートメントの裏庭の壁にスプレーで「STEREO CITY」って書いてあって。アーティスト名はそこから来てる。で、その友だちの実家がデトロイトで。
![]() STEREOCiTI Kawasaki Mojuba Underground |
METAL:じゃあアルバムの話に入ると、ファースト・アルバムのタイトルに「川崎」という、自分の地元の名前をつけたのは?
STEREOCiTI:ジャケにこんなでっかく「川崎」とかなってるから、そこをすごく押してるみたいになってるけど......最初このデザインが出てきたときはびっくりして(笑)。
METAL:自分のデザインじゃないんですか?
STEREOCiTI:違う違う。これは〈モジュバ〉のトーマス(Don Williams)のデザイン。「漢字はやだ」って言ったんだけど、「ヨーロッパでウケるから我慢しろ」って(笑)。だからジャケットの漢字バーン! に関してはホントは不本意なんだけど、タイトルを"kawasaki"にしたのにはそれなりの経緯や意味があって。なんだろう、自分の生まれ育ってきた場所や、昔から来た部分を、すごい引きずってる時期に作ったのね、アルバムの曲群を。作ってる途中で気付いたんだけど、地元に置いてきちゃったものっていうか、心残りもけっこうあったりして。すごい地元が嫌いで。ろくな街じゃないから。何もないし、文化もないし、良いところ何にもないから(笑)。早く出たいと思ってたんだけど、作った曲を後から見ると、どうしても「川崎」が色濃く出てしまっていたんだよね。
WHY:川崎が色濃く出ている部分って、どういうところなんですか?
STEREOCiTI:それは超個人的なところだから、実際に川崎っぽいかっていうとわからない。多感な時期を過ごした中で染みついた、拭えないものってことだね。それが、自然に吐き出されたビーツやメロディとかに表れていると思って。だから「これはちょっと、1回ケリをつけないとな」みたいに思って、そこでアルバムのタイトルを考えたときに自然と「川崎」って出てきた。「地元に恩返ししたい」とか「地元が好きだから/嫌いだから」とかじゃなくて、ただ自分の作品にそれがすごい出ちゃってたから、"kawasaki"っていうタイトルがいちばん自然にハマったっていうか。
METAL:川崎で生まれ育った自分が作った音楽だから"kawasaki"だっていうことですか?
STEREOCiTI:うん、本当にそんな感じ。アルバムタイトルに"kawasaki"ってつけることで、自分の中で収拾つかなかったいろんなものをうまくまとめられる感じがしたのね。だからタイトルはぶっちゃけ後付けで、川崎をイメージして作ったアルバムってことでは全然ないんだよね。だけど、さっきも言った川崎......それまでの自分ってことだけど、それが色濃く出すぎていたから、そこに収拾をつけたくて。例えばアルバム最後の"Day By Day"なんかはいちばん最近に作った曲なんだけど、この辺は自分で聴くと、ノスタルジックな感じがないというか、古い曲とはけっこう違ってて。
METAL:1曲目は、電車の音から始まりますよね。
STEREOCiTI:あれは貨物列車の音で、実家の近所の踏切で録音したの。南武線の浜川崎支線っていう、二両編成の路線があるのわかるかな? 一時間に一本しかない電車なんだけど、そこを貨物列車が一緒に走ってるのね。京浜工業地帯に貨物線が引き込まれてて、向こうで積んで、また出てきて、って、常に貨物が行き来していて。そのそばに住んでたから、地元にいるときは毎日毎日あの音を聞いてた。
METAL:で、電車の音にポエトリーが乗ってきますよね。どんな内容なんですか?
STEREOCiTI:川崎ってこんな街だよ、っていう。"This Town, it's Empty"っていう節があるんだけど、空っぽの街だよっていう。まぁ空っぽで何もないけど、子どもはどこでも同じように笑ってるし......っていうようなこと。だけどそれをみんなに知ってもらおうとは思ってなくて。自分で込められればよかったから、声を加工して、外人でも聞き取れないようにして。単純にイントロをつくりたかった、っていうのもあるし。
WHY:1970~80年代の川崎には公害訴訟とかありましたけど、子どもの頃は、公害問題も深刻だったんですか?
STEREOCiTI:いちばん深刻な時期は過ぎてたんだけど、ぜん息の子どもはまわりにいっぱいいたし。常に鉄粉が飛んでるから。空は毎晩真っ赤だしね。だから、日本鋼管(NKK。現・JFEエンジニアリング)で働いてる人のための町っていうか。経済においては、すごく重要な街ではあると思うんだよね。ただ日本の歪み......いま出ている放射能もそうだけど、公害問題ってのが、川崎にはもっと前からいまと同じようにあって。もっと辿ると戦争時代も、負けてるのに勝ってるぞ、って国がウソついててさ、ずっと同じだよね。
METAL:そういう視点は昔から持ってたんですか?
STEREOCiTI:昔は対して考えてなかったけど、単純に、大人になったらいろいろ考えるよね。
METAL:反原発デモにも参加してますよね。
STEREOCiTI:最近なかなか参加できないんだけど、やめちゃダメだよね。国に対してモノを言える機会ってそんなにないから、それをやめちゃいけないよね。効果もあると思ってる。やっぱり言っていかないと......日本人ってけっこう「言ってもしょうがない」って感じで、日本の腐った部分は変わんねえや、って諦めてる部分も多いと思うんだけどね。自分もそうだったし。でも発していかないとはじまらないからね。
WHY:アルバムは3.11の前にはできてたんですか。
STEREOCiTI:できてたね。
WHY:8曲目の"Downstream"って曲名、辞書で引いたら「使用済み核燃料の処理工程」という意味なんですけど、じゃあこれは偶然なんですね。
STEREOCiTI:ホント? それはちょっと、予言じゃない(笑)?
METAL:いやでも、あの曲の「闇」は僕も気になってましたよ(笑)。
STEREOCiTI:あれ、いちばんライヴ感っていうか、ノリで作った曲だよ(笑)。いちばんフロア向けっぽいかなと思ってるんだけど。"Downstream"ってのは、単純に水が川を流れていくようなイメージで。比較的最近作った曲なんだ。さっきも言ったように、アルバムの最後のほうはもう「川崎」からだんだん離れて、収束に向かってきたところなんだよね。今の気分に近い曲なんだ。ノスタルジックでもないし、メロディアスでもないし、もっと違う方向に向かってる。この曲でサンプリングしてるボイスはジム・モリソンなんだけど、これまた全然原発とは関係ないよね(笑)。
METAL:これ、ドアーズなんですか。
STEREOCiTI:うん。"An American Prayer"の最後の曲(An American Prayer/The End-Albinoni: Adagio)。オリジナルにレコーディングしたもの以外のボイスものは全部サンプリング。ネタ集みたいのはいっさい使ってなくて、サンプリングするってのは一応ポリシー。
METAL:デトロイト・エスカレーター・カンパニーの『Soundtrack[313]』が好きだっていう話があったじゃないですか。デトロイトのフィールド・レコーディングで作られたアルバム。
STEREOCiTI:あれはすごく好きだし、かなり影響を受けてるかもしれない(笑)。サウンド的にもだし、コンセプトとか、フィールドレコーディングの部分の印象とか。あれがダンス・ミュージックかというとまた微妙なところだけどね。俺の中でのデトロイトのイメージはあんな感じ。実際に行って感じた印象と近いね。
METAL:で、2曲目の"Expanses"からアルバム本編に入るわけですが、楽曲の構成は、基本的にはミニマル・テクノですよね。ハットの入り方にしろ、曲の展開にしろ。グルーヴはハウスと言ってもいいのかもしれないけど。同時に、サウンドスケープにはラリー・ハードに通じるような繊細的な部分もあって。そのふたつが核にあるのかな、と感じていたんですけど。
STEREOCiTI:ミニマル・テクノはあまり意識して作ったことないんだけど......逆にテクノ作りたいけどできない(笑)。自分が好きで聴いてて「こういうのやりたいな」って思ったのと、自分のやりたいように作ったら出てきた曲がまったく違ったのね。昔のムーディーマンみたいなざっくりしたのが作りたいのに、自分で作ってみたら音数も少なくて緻密な感じのものになってたり。だから「自分がやるのはこうじゃないんだな」って思った感じかな。
METAL:じゃあ、曲を作っていく工程で、今回のアルバムのような作風になった感じなんですか。
STEREOCiTI:いや、志向としては初めから。本当は初めからフロアで超機能するトラックとか作りたかったんだけど、うまく形にならなくて。で、生っぽい音を使ったりとか、自分で弾いた楽器と合わせて作ったりとかして、ようやく曲が完成するようになってきて。その辺が〈Deep Explorer〉から出したような曲だね。初期の曲はもっと生っぽいっていうか、ゆるいんだけど、本当はもっとエレクトロニックなのがやりたかった。で、だんだんその術を覚えてきたというか、作り方がわかってきて、いまみたいな作風になってきたって感じかな。
WHY:曲を作りはじめてから、楽曲が〈Deep Explorer〉からリリースされるまで、10年ぐらいのあいだがあるわけですよね。
STEREOCiTI:うん、ずっと曲作ってたけど、全然完成に至らなくて。なんでかっていうと、自分がいいと思う音楽のところまで、自分の曲を持っていくことができなかったから。
WHY:その10年のあいだ、どういう思いで曲を作り続けてたんですか。
STEREOCiTI:なかなか完成しないから「どうしたもんかな」ってずっと思ってて。いろんな人から「とりあえず完成させればいいんだよ」って言われたりしたけど、自分でいいと思わなかったら発表できないから、どこにも送ったこともないし。自分がさ、いろんな音楽を聴いてきて、いいと思う音楽と大したことねえなって思う音楽の差があって、自分のなかで「いい」っていうレヴェルまでいかない限り、自分で出す意味ないわけでしょ。中途半端で出す意味もないし。それなりにいろいろ聴いてきたわけだから、自分でやる以上は、自分のなかでOKを出せるレヴェルに行き着くまでは外には出せないな、っていう。でも微妙なラインで、「これどうなのかな? まぁ、いいと思うんだけどな」みたいなところで外に出し始めて、引っかかってくれたのが〈Deep Explorer〉やラス・ガブリエルで、「あ、これでいいんだ」みたいな。
METAL:まぁ、評価っていうのは、わからないですよね。
STEREOCiTI:音楽なんて、人に聴かせてナンボだから。自分だけのエゴで成り立ってるもんじゃないから、人の評価っていうのは大事なことだけど、自分のなかで、人に聴かせるだけのOKを出せない限りは外に出せないというか。そこまでに時間がかかったっていうことなんだよね。
METAL:自分の思うとおりに機材を使いこなせるまでにも、それなりの時間がかかりますよね。
STEREOCiTI:それもあるよね。まぁいまでも全部なんて使いこなせないんだけどね。
METAL:レイ・ハラカミさんなんかは、ひとつのソフトを、自分の身体として考えているっていう。
STEREOCiTI:そういうのはすごいと思う。ダンサーの表現みたい。
METAL:そう考えると、打ち込みと楽器演奏って、まったく変わらないんですよね。
STEREOCiTI:うん、それは変わらないと思う。自分の音楽ってディープ・ハウスみたいな感じでやってるけど、結局やってることはブルースだと思ってる。それを生っぽい、RAWな部分を前面に打ち出すんだったら生楽器やればいいわけなんだけど、もうちょっとロジカルなというか、構築的な部分でのブルースをやりたくて。あんまり機械的でもないし、かと言って生っぽくもないのがいいというか。1曲1曲に、必ず生っぽいっていうかライヴ感は残してる。一発で全部出して混ぜてって作るタイプではないから、そういう意味でのライヴ感はないんだけど、人間っぽさをどうしても入れないと気が済まないっていうか。フレーズ一発でも、そこに自分のソウルが投影されない限りは、いい曲できても「誰かの曲みたいだな」とか「かっこいいけど、なんか違うな」ってのは全部消しちゃうし。
METAL:アルバム聴いていても、曲自体にいっさい妥協がないですね。
STEREOCiTI:妥協はいっさいない。それは言い切れる。好かれる好かれないは別として、自分のなかでOK出せるところまではいってる曲しか出してないからね。本当にすごいなって思うアーティストがいっぱいいて、そこまではいけてないけど。生で弾いて表現できるのが理想なんで、そっちもこれからもっとやっていきたいし。
[[SplitPage]]川崎ってこんな街だよ、っていう。"This Town, it's Empty"っていう節があるんだけど、空っぽの街だよっていう。まぁ空っぽで何もないけど、子どもはどこでも同じように笑ってるし......っていうようなこと。
METAL:ブルースだと誰が好きなんですか。
STEREOCiTI:俺、ジミヘン好きなんだけど、もっとルーツ的なところでいうと、Tボーン・ウォーカーとか、ハウリング・ウルフとか......。
METAL:ロバート・ジョンソンは?
STEREOCiTI:ロバート・ジョンソンはねえ、好きなんだけど、自分の気持ちとはちょっと違うというか。ドラッギーだよね、あの人。アルバムを聴いてると、すごく暗ーいところに持ってかれる。やっぱり悪魔的というか(笑)。
WHY:その、闇に吸い込まれる感じって、賢さん(STEREOCiTI)の作品やDJの特徴だと思うんですけどね。アルバムでは"Expanses"が象徴してると思うんですけど......「心に影を落とす」っていう表現ありますけど、そういう感じでふっと暗くなる感覚って、世に溢れてる「ディープ・サウンド」のなかでも独特というか。さっき「ブルース」って言葉が出てきて、あぁ、あの暗さはブルースだったのか、って思ったんですよ。
METAL:これは白石さんの言葉なんですけど「闇の暗さの種類の違い」ってのがあって......。
STEREOCiTI:あ、それわかる。俺ね、モノ作るときとか、DJもなんだけど、「満たされない部分」ってのをすごい意識してて。その「足りない部分」をどう表現するかっていうのが自分も好きみたい。いっぽうではけっこう打算的な部分もあって、DJするときもそうなんだけど「人の記憶にどれだけ訴えるか」ってのをすごい意識してるんだけどね。
METAL:打算的ってことかわかりませんけど、アルバムのなかだと"A day"はすごくきれいな曲で、ローレンスが賢さんの曲を気に入ってるっていう理由が、これ聴くとすごくわかる感じしますね。
STEREOCiTI:これは代々木公園の曲なの(笑)。ちょうどあの辺住んでた頃に作った曲。昼間をイメージしてる曲ってあんまりないんだけど。映像的な音楽ってすごい好きだから、どうしても映像と絡めたくなるっていうか。例えば"Hotel Maroc"は、以前行ったモロッコの、華やかな表面の裏の、現地のベルベル人の私生活の土っぽいイメージで作った曲だし、"Klass"は、Naoki Shinoharaがやってる"klass"っていうパーティをイメージして作った曲。そんな風に、映像的なイメージから作ってる曲は多い。アルバム全体を通しての映像ってのは意識してないんだけどね。並べて気持ちのいい感じにしただけで。ただ最初の"kawasaki"と、最後の""Day By Day"は、全体の収拾をつけるために、イントロとアウトロで合わせて作ってる。やっぱりアルバムとして通して聴けるアルバムが好きで。アルバムとして成り立っていてすごい好きなのが、KDJの1stだったり、トータスの『TNT』とか。アルバムを通してひとつの世界観があるのを作りたかったんだよね。
METAL:白石さんなんかもまさにそういうタイプで、世界観、コンセプトの構築から入って、流れをつくって、っていうタイプですよね。
STEREOCiTI:俺はその逆。デザイナーだからかもしれないけど、元からある曲をどうはめていくか、どううまくまとめるかで映像やストーリーを作ったり、全体の辻褄を合わせていく感じなんだよね。まぁでも、深層に、芯に確実に流れている部分があるからまとめられるんだけどね。ホントにバラバラの曲たちではないからね。やっぱり自分で何百回も、死ぬほど同じ曲を聴きながら作ってて、それでもやっぱりいいな、何回聴いてもいいな、と思う曲だけを残してきたわけだから。
METAL:でもほんと、サウンド的、デザイン的な部分で取りざたされる作品は近年でもいろいろあるけど、こうしてコンセプトを立てて、しっかりストーリーテイリングされた作品ってのは、最近では珍しい種類のアルバムだと思うんですよ。
STEREOCiTI:そう言ってもらえるのも、自分がそういう映像的な部分が好きだし、ストーリーを作るのが好きだから、うまくデザインしてまとめただけで。さっき「打算的」って言ったのはそういう意味。
METAL:まぁでも、自身にとってもひとつのモニュメントというか、区切りというか。
STEREOCiTI:そうだね。いままでは後ろを見過ぎていたというか、これまでの精算に時間がかかっていたわけで。きちんと精算できたのかはわからないけど、一応の区切りにはしたいなぁと思っていて。
METAL:じゃあここから先は、まったく新しいことをはじめようと思ってる?
STEREOCiTI:そんなに理想があるわけでもないし、新しいことをやるぞ! みたいな気分ではないんだけど、単純に変わるだろうな、とは思ってる。
METAL:(唐突に、同席していたSTEREOCiTI夫人に対して)ステレオさんの曲は好きですか?
夫人:好きです。
STEREOCiTI:彼女のために音楽をやってるっていうのもあるから。アルバムのね、盤の内側にエッチングで文字が掘ってあるじゃない? 実はここにメッセージが入っていて。A面にしか入れてないし、これは言わなきゃ誰も気付かないと思うんだけどね。
[[SplitPage]]シーンを育てるっていう意識がクラブ側に薄いから人任せ......オーガナイザー任せ、外タレ任せになってるのをすごく強く感じる。そこは皆が協力して、いちばん変えていかなきゃいけないところだなぁと思ってて。
METAL:6月には、ベルリンとスウェーデンでDJしてきたんですよね。そのことも聞きたいんですけど。
STEREOCiTI:前回のベルリンは〈Panorama Bar〉だったけど、今回は〈Berghain〉の〈Garten〉でやった。夏だけ開ける野外スペースね。こっちでDon Williamsとやることが決まったんで、他にどこかヨーロッパでできないかな、と思っていろいろメールしてたら、前から好きだったスウェーデンの〈Aniara〉(レーベル)の連中が一緒にやろうって言ってくれて。街のなかのちょっとした森みたいなところで、彼らはそこで毎週のように野外パーティやってて。自分らでサウンドシステム持ち込んで、ビール買ってきて、告知してってスタイルで。その日も400人ぐらい集まったんだけど、それはすごい面白かったな。すごい雰囲気がよくて。彼らはドラッグもやらないからお酒だけで、ダーティーな感じはなくて、喧嘩もなくてピースフルで。最後のゴミ拾いまでクタクタになりながら一緒にやって。そういうの一緒にできたのがすごく。ノリも合ったし。
ベルリンは2回目だけどとくにイエー! っていう感じじゃなくて、地元じゃないけど落ち着く場所みたいな感じだね。前に行ったときとは自分のDJの傾向も変わってきてる部分もあるんだけど、楽しくできたかな。前とは違って夏で、あったかいし、外だし、みんなゆるくて、ゴロゴロしてる人もいるし、コンテナのダンスフロアの中の人はガッツリ踊ってるし。今回は期間が短かったからあんまりいろんな場所は行けなかったんだけど、前よりも面白かった。ベルリンに対しては特別な感情はいまはなくて、すごい自然にすーっと入ってくる感じ。東京と全然似てないんだけど、すごく馴染むよね。電車はずっと走ってるしさ、俺らみたいな人にとってはパラダイスだよ。
METAL:ヨーロッパのパーティが東京と決定的に違う部分ってあるんですか。
STEREOCiTI:あのねぇ......(長考)。スウェーデンでいちばん感じたんだけど、ゲストを呼んだときのもてなし方が全然違う。めちゃめちゃもてなしてくれるっていうか、行った経験がある人はわかると思うんだけど、アーティストに対するリスペクトが全然違う。すっごいナイス。とにかく喜ばせようとしてくれるっていうか、メシにカネ払わせるな、とか。日本でももちろんあるけど、呼んだアーティストに対して、そこまでちゃんとアテンドしてる人ってなかなかいないな、って気がするんだけどね。逆に、気遣いが足りなかったような話の方をよく聞くからね。まぁでも、俺のまわりの人たちはそんなことないか。
客の反応やパーティの雰囲気的にはそんなに変わらないと思うんだよね。ベルリンの連中に言うと「いや、日本とドイツは全然違う。ドイツの客は、キックが四つ打つのをずっときれいに続けてあげないとすぐ離れていっちゃう」とか言うけど......。
METAL:日本のDJのレヴェルって、別に低くないと思うんですけど。
STEREOCiTI:日本のレヴェルはね、高い! ドイツの連中がそうやって言うのも、俺は「いや、そうじゃないよ」ってすごい感じて。オーディエンスは本当に、おんなじなんだよ。ただDJが上手いか下手かなだけで。グルーヴちょっと変えてあげたりとか、展開つくってあげても、しっかりやればついてくるんだよ。日本に来る海外のアーティストがよく「日本人は耳がよくて、広くて、ノリもよくて」って言うじゃない? そうではないと思うんだよね。やっぱりそいつの腕次第だし。俺は、オーディエンスを見て「違わないな」ってすごく感じて。向こうが逆にシビアな部分もあって、オーガナイザー側は、〈Panorama Bar〉でもどこでも、遠くでずっと、客の動きも含めて見てるんだよね。それで良くないと、もう呼んでくれない。そういうシビアな部分はビジネス的にも確立されてるから、日本よりも勝負していかないとダメだろうなってのはある。でもオーディエンス側は全然変わらないよ。どっちも好きで聴きに行って踊ってる奴らなわけだから。
METAL:日本人のDJやトラックメーカーで、とくに注目してる人とかいるんですか。
STEREOCiTI:うーん......ひとり名前を出すといっぱい挙げなきゃいけなくなるからなぁ(笑)。誰だろうなぁ。みんないいからなぁ......。日本といえば、最近思うんだけど、クラブの看板パーティとかレジデントDJとか、クラブ側がDJが育てていくシーンってのがないじゃない? DJも決まった人を取っかえひっかえでさ。昔は「タテ枠」ってのがあって、金曜日は必ずこのパーティで、このDJで、ってのがあったんだけど。〈MANIAC LOVE〉の"CYCLE"にしてもそうだし。
METAL:箱やパーティが増えすぎたんですかね。
STEREOCiTI:やっぱり客が減って、クラブ側の経営自体が変わって、レジデントを育てる余裕がなくなったのかな。お抱えのパーティを持つよりも、いろんな客を入れて増やしていきたい、という発想が台頭したんだろうけど、クラブがいままさにやんなきゃいけないことは、レジデントを持つことだと思うんだよね。そうしないともう、客も離れてきてるし、単価も高いし、アーティストもどんどん日本から離れていってるし。シーンを育てるっていう意識がクラブ側に薄いから人任せ......オーガナイザー任せ、外タレ任せになってるのをすごく強く感じる。そこは皆が協力して、いちばん変えていかなきゃいけないところだなぁと思ってて。
METAL:僕も、震災後に〈eleven〉でIsolee、Adaとのパーティが流れて、その時にキヒラ(ナオキ)さん、RYOSUKEさん、KABUTOさん、YAMADA(theGIANT)さんを集めてパーティーやったんです。腕はこれでちゃんと入るような状態に持ってかないと、この先ないよねって。
STEREOCiTI:そうでしょ。外タレに頼り切ってるけど、曲がよくてもDJはそんな良くない人も多いわけでさ、日本人のほうがよっぽどいいんだし。日本人って輸入モノ好きだし、外タレだと人入るけど......って言ってもそんなに入んないけどね。でもドメスティックいいなってのはみんな気付いてるわけで。そこをもっとやっていかないと、先がないんですよ。やっぱり。クラブを、ある意味90年代みたいに戻していくというか、人を集めていくには値段も下げなきゃいけないし、DJのレベルも上げていかなきゃいけないし、クラブ側の意識ももちろん変えなきゃいけないし。それでこそオーディエンスがついてくるものだから。「オーディエンスが離れていっちゃった」ってそのせいだけにするものではなくて。怖いけど変えていかないといけない時期だと思うんだよね。
ヨーロッパと同じことを日本もできるか、と言ったらそう単純な話ではないんだけど、やっぱり向こうは、エントランス・フィーは全部オーガナイザー側に返ってくるわけ。クラブ側はバーの収益だけで運営している。そういうシステムじゃないと、DJにはまずお金が入らないよね。DJにお金が入らないと、プロが育たないわけ。競争率が低いからレヴェルも上がらないよね。個々人はレヴェル高いのにいまひとつ勢いが出ないっていうのは、出てこれる場所がないからだよね。数ばっかり増えて、プロフェッショナルの意識が育たない。それがすごい致命的で。
METAL:DJっていうのは、本質的に必要経費がかかりますからね。もちろん、好きでやってるのが前提としてあるんですけど......。
STEREOCiTI:本当にそうで、そこにクラブが頼りすぎてる。もうちょっとアーティストが出てこれるシステムができないと。ギャラが1万、2万じゃどうにもなんないでしょ。でもやっぱりクラブ側も大変で、儲けが出てないからしょうがないんだけど。エントランスのフィーをDJ側に頼るんであれば、クラブ側はバーを工夫してもっと儲けようとかあってもいいけど、そういうの出てこないでしょ。もうちょっと切羽詰っていいと思うし。DJ側もDJ側でさ、もっと意識を高めてかないといけないと思うけどね。いままでのシステムがクラブシーンに定着しちゃってるから......。
METAL:経済市場の動きによって、そうならざるを得なかった部分もありますよね。
STEREOCiTI:そうそう、いちど保守的になっちゃったから、そこからなかなか抜け出せない。ひとつ思ってるのはさ、地方にいろんないいDJがいて、シーンもあるんだけど、彼らを東京に呼ぶのって難しいじゃない? 東京のDJが地方に出て行くことはあるんだけど、向こうの人をこっちに呼ぶシステムがあまりにもなくて、俺はそれをやりたいんだけど。やっぱり小箱とか中箱とかだとフィーの返りが少なくて、交通費とかギャランティーを出すのが、東京はすごい難しいんだよね。例えば〈LOOP〉の"SWEET"ぐらいの規模のパーティでもっと呼べればいいと思うんだけど。クラブはあまりお金を出せないし、こっちにも返りがないからお金を出せないし。それはやっぱり悪循環だし、日本全体が盛り上がっていかないよね。そこは何とかしたいな。
WHY:「『これぐらい集客が見込める』という裏づけがないから、地方からのゲストDJにはお金を出せない。外タレなら出せるかもしれないけど」という言い分ですよね。
STEREOCiTI:だってそれはさ、シーンがその人を紹介していかないと、人が入るようにならないわけでしょ。最初から入るわけないんだから。地価が高いっていうけど、もし地価が下がったらクラブがフィー下げるかっていうと、日本人の性格的にどうかなって思うけどね。
WHY:ベルリンはともかく、他の大都市と比べて東京の地価がそこまで突出して高いわけじゃないですもんね。
STEREOCiTI:そうそう。どこもそんなに安くないんだよね。それでも回してるからさ。じゃあ東京もお客を増やすためにはどうしたらいいかってことだよね。クラブ離れが激しい中で。野外ばっかりじゃん。まぁ夜中に遊ぶってこと自体がみんな......。
METAL:そこは僕強く言いたいんですけど、クラブで遊んでたほうが若くいられるんじゃないかと(笑)。
STEREOCiTI:夜遊びはたしかに老化防止になるね(笑)。俺もそう思う。
METAL:透さん、アゲイシさん、WADAさん、みんな若いですよね。DJやり続けてると、ああいうオヤジになれるって(笑)。
[[SplitPage]]俺、人の反応はもちろん見るけど、「あ、ノリ悪いからこっち行こうかな」っていうのはまずやらないし、そこで変えちゃうのは合わせすぎっていうか、それは違うと思っていて。
![]() STEREOCiTI Kawasaki Mojuba Underground |
WHY:話を戻すと、賢さんが自分でやってるパーティは〈KOARA〉の":::Release:::"だったり、〈OATH〉の"日本オシロサービス"だったり、エントランスフリーの箱が中心だというのは、現行のシーンの問題点を改善するための動きであるわけですか。
STEREOCiTI:そうだね。週末にパーティをやるのは大変だし、お金かかかるし、ってのもあるけど、みんなからもお金を多くとらないでパーティやりたいっていうのがある。自分らのまわりにいるいいDJ、トップのDJたちを、どれだけお金かけずに提示できるかっていうのがひとつのテーマで。それによってクラブ側も影響を受けてくれて、エントランスでそんなにお金とれないなっていう風潮になってくれたら、っていう希望があるんだよね。〈Room〉の"moved"も、本当はエントランスで1500円とればいいんだけど、1000円でやってる。だから上がりが少なくて、やっぱりなかなか地方のゲストを呼べないんだよね。"moved"は一緒にやってるmaakoが転勤でいなくなっちゃうから一旦休むんだけど、"moved"はせっかく育ててきたいいパーティだから、maakoが戻ってくるまでひとりでやっていこうかな、っていうのも実は考えてる。
METAL:ご自身の、DJとしての話も聞きたいんですよね。
STEREOCiTI:自分のDJを何なんだろうって考えるときはあるんだけど、自分でわかるのは......。
METAL:まぁDJって、その場その場ですよね。
STEREOCiTI:基本はそうだよ、もちろん。だけど自分の好みで選曲して持っていくわけで、その選ぶ作業は自分の世界なわけだよね。俺、「現場の雰囲気に合わせてどうこう......」っていうのは、ぶっちゃけ関係ないと思ってて。単純にそのとき、現場にパーッと入った空気感で組み立てていけばいいと思うんだ。俺、人の反応はもちろん見るけど、「あ、ノリ悪いからこっち行こうかな」っていうのはまずやらないし、そこで変えちゃうのは合わせすぎっていうか、それは違うと思っていて。何ていうかな......DJも人対人だから、自分のエゴを出しすぎちゃいけないんだけど、自分のエゴなしでは成り立たないよね。そのバランスがすごく難しいんだけど。
METAL:レコードを選ぶ段階も場のひとつというか。
STEREOCiTI:そうだね。その段階で想像してるわけでしょ。この場面ではこれを持ってって、こういう感じでいけばいいんじゃないかな、とか。そこを現場で崩しちゃうのは違うなと思っていて。流れ的に組んでいくのはもちろん現場だし、現場の空気で変わりはするしそこが醍醐味なんだけど。だから適当にレコードを詰めて持っていくってことはまずしないしね。俺、DJの前は1週間ぐらいかけて選曲するし。
WHY:さっきアルバムの話で出た「人の記憶に訴えかける」っていう部分、改めて聞きたいんですけど。
STEREOCiTI:それはすごいあって。計算してやってるっていうか「ここでこうすればみんな好きなんじゃないの?」みたいなのはDJみんなあると思うんだけど、そこをわかりやすく出していく部分はすごいあるかな。結局、打算的なんだよね。あんまわかりづらい感じにはしないというか。俺、自分ですごいDJわかりやすいなと思うしね。
METAL:そこ、悩みませんか? 自分のキャラが明確になってくると、自分に飽きてくる部分ってのがあって。でも人を引きつけていこうとするときに、他人から見た自分の個性ってのはどうしても意識する部分ってあるじゃないですか。
STEREOCiTI:俺は単純に、そのときの気分で変わるのね。自分のなかですぐ飽きるから、自分に正直にやっていっても、飽きないようにできるってのは自分の強みかもしれないね。あと、自分のDJは、他の人のDJよりブレがあると思っていて。ブレというか振り幅ね。その時の気分で凄い変えてくるから。なんか意表をつきたくなる、みんなが思ってないところに行きたくなるっていうのはすごいあるんだよね。
METAL:たしかに、"SWEET"に初めて出てもらったときも、あそこまでピッチを落としてくるとは思ってなくて。ああいう「ディープなハウス」っていう括りでやってるパーティで、いちばんピッチが遅いときにいちばん盛り上がるっていうのは面白かったですね。
STEREOCiTI:あれもさ、ただ遅くすればカッコいいと思ってやったわけじゃなくて、それでなおかつ盛り上げるつもりで行ったから。BPMは関係ないんだよ、ってところをやりたかったんだよね。それにあのときは白石さんの曲を中核にして組み立てたから。そのときそのとき、自分のなかでテーマを置いていくんだよね。自分のなかで楽しまないとつまんないから。DJも表現として楽しみたいっていう部分があって。
METAL:そういえば震災後は、すぐにDJに戻れたんでしたっけ。
STEREOCiTI:DJは、1週間ぐらいしてから〈Combine〉でストリーミングしたの。それはすごく評判よくて、みんな「癒された」とか言ってくれて。
METAL:僕らの場合、約1週間後の3.19に初めて、一緒に"SWEET"やってたSCANDALって奴のパーティでやったんですよ。そのときに「不安のなかで踊ること」っていうのが相当重要だったと感じたんです。
STEREOCiTI:それはすごい感じた。
METAL:ダンス・ミュージックだったり、芸術の本来的な意味合いがしっかりわかったというか。普段のクラブで「エロス」っていうものは感じるけど、タナトス、死っていうのを初めて意識したときに、「ダンス」っていうのがこんなにも重要なものとして認識できた時間は、いままでの日本になかったと思うんですよ。デトロイトやニューヨークのスタイルは僕ら模倣してきたけど、そういう場所にあった死生観......例えばデトロイトだったら友だちが撃たれて亡くなるだとか......。
STEREOCiTI:ニューヨークやシカゴにもHIV問題があったわけで。
METAL:そうそう。アメリカにはつねにそういう形で「死」が間近にあったんですが、日本人は初めてそこをしっかり認識できたというか。
STEREOCiTI:たしかに。そういうときに「生」の楽しみをより実感できたというか、本当にそれを求めたっていうのはあるよね。音楽でともに涙を流すというような。基本的に現場主義だから、それまでストリーミングにはあんまり興味なかったんだけど、震災後に「いま自分ができることをやりたいな」と思ったときにストリーミングがあって、初めてやってみよう、と。そこでストリーミングに対する意識が変わった。あれはやって良かったな。ある程度自分に影響力が出てきて、それをわかった上でやったから。自分のエゴとかいうことではなくて、何かできることを考えた時にね。
WHY:震災の影響で、オーガナイズしていたパーティも流れましたよね。
STEREOCiTI:まぁでも、それはしょうがないと思ってる。たまに起こるんだよ、こういうことって。生きてると。ていうか、まだ「3.11」は終わってないし。
WHY:じゃ最後に"kawasaki後"というか、最近のフェイヴァリット・レコードをいくつか挙げてもらえればと。
STEREOCiTI:夏っぽいので5枚選んだんだけどね。うち2枚は、エドガー・フローゼ(Tangerine Dream)。こっちはブラジルかどこかの映画のサントラ。観てないけどすごい下らなそうな映画だよね(笑)。今度、〈Jazzy Sport〉から出すミックスCDに入れてるのがこの辺で。Interiorsは知ってる? これ細野晴臣さんプロデュースで、メンバーの野中英紀さんっていう人が、後に細野さんとフレンド・オブ・アースっていうユニットをはじめるんだけど。結構、マルチプレーヤーが好きなんだよね。この鈴木良雄さんもベーシストだけど、打ち込みからピアノからベースから、全部ひとりでやってて。
METAL:やっぱりシンセには魅力を感じるんですか。
STEREOCiTI:そうだね。ジャズとシンセの融合とか凄い好きだし。
METAL:やっぱり、シンセの魅力がテクノの魅力っていう部分ってありますよね。
STEREOCiTI:うん、それは絶対そうでしょ。打ち込みの部分が好きだから、今ここにいるわけで。この清水靖晃さんもそうだね。全部自分で打ち込んで、弾いて。この"案山子"っていうアルバムも夏がテーマみたいで、"セミ取りの日 "とか"海の上から"とか、ジブリっぽくていいよね。......全然黒くないセレクトだよね(笑)。まぁ、もともと黒いものに影響を受けてる人たちではあるんだけど。本当に黒くてグルーヴィンなところには、いまはちょっと飽きちゃってるんだよね。そこから派生した、より自分と近いものに今は寄ってる感じ。
METAL:やっぱり、日本的な情緒感みたいな部分は絶対にあるんでしょうね。
STEREOCiTI:うん、それは歳とればとるほど出てきた。感じざるを得ないし、それを拒否しなくなってきた。自分のなかで受け入れられるようになってきたかな。