「Nothing」と一致するもの

Chandeliers - ele-king

 この作品には蒸留されたノスタルジーがある、と言うのはメンバーのクリス・カリスである。それも「特定のアーティストのスタイルにではなく、音楽がもっとシンプルでミステリアスなものだった時代へのノスタルジー」である、と。

 筆者からすればこれは不正確な表現であるように思われる。音楽自体がシンプルさとミステリーとを喪失したのではない。音楽の聴き方からそれが失われたのだ。というか、そう述べる本人が、かつて音楽とのあいだに感じていた直接性――ピュアネスとあえて言い換えてもいい――を手放してしまったという苦い自覚に打たれているのではないか。問題は音楽の変質にではなく体験の変質にある。「ノスタルジー」だと言い切る背景には実際のところそのくらいメタな認識が忍び込んでいるように思う。そして、だからこそこのアルバムはつめたいファンクネスの裏側になんとも哀切なエモーションをたくしこんでいる。

 2008年の『ザ・スラッシュ』を記憶する方もいるかもしれない。シカゴの4人組、シャンデリアズの4枚めとなるフル・アルバムがリリースされた。カンやクラフトワークを思わせるクラウトロック志向に、〈イタリアンズ・ドゥー・イット・ベター〉などに通じるレトロで艶っぽいシンセ・ポップ、プリンスを彷彿させるシックなファンク・チューンはときにリキッド・リキッドのタイトなビート感覚に交差し、エイフェックス・ツインやケトルを思わせる叙情的なIDMがそこに浮遊感を与える。テクニカルである上にリスナーとしてもディープな体験を持つことがよくうかがわれ、2010年前後のモードにも敏感、ひと言で言って優秀なポップ作品だ。

 しかし今作をいいと思うのは、素直な感情表現がうまくなったように感じることだ。それは音楽的な技術でなされるものではない。わきの甘さというか、思考や感性などもっと総合的な部分で少し幅が生まれていて、エモーションと音楽とのよい距離が取れているように思う。『ザ・スラッシュ』にあったメランコリックなムードをテクニックで固めることなく、自然でかつ音と密接したかたちで表現している。その意味で"エンクレイヴス"をとても美しいと感じた。一方でアルバムを華やかに彩るのは"ニュー・タイムス"のビビッドで大胆なシンセづかいやダンスを踏み抜くようなビート、また"ル・コラージュ"や"ドメイン・オブ・ワンダー"のレトロかつ近未来的(死語だそうだ)なセンスの方である。どれもがなかなか隙を見せないが、その整い方や完成度にはとても気持ちのよいものがある。心を研ぎ澄ませることで音や方法を磨いていったというよりは、技術を洗練させるなかで新しく情緒が整えられていったのかもしれない。

 「いまの音楽は何を使ってどのように組み立てたかがすぐにわかってしまう」から好ましくないと語るクリスだが、それはシャンデリアズも例外ではないはずだ。もはやアナログな方法によっても、おそらくクリスの言う種類のミステリーは確保できない。『ファウンディング・ファーザーズ(建国の父祖)』とはおそらくそうしたミスティックな要素にまみれた根源への、あきらめ混じりの思慕である。何をどう組み立てて国(/音)が成り立つのか、それは明らかにはなりきらない種類のダイナミズムを持った問いである。音楽をそうした部分でとらえていた自らへの、そして表向きには「かつての偉大な音楽」への憧れや願いを織り込んだきわめてエモーショナルな作品である。

Chart - DISC SHOP ZERO 2012.11 - ele-king

この1年くらいで、所謂"ポスト・ダブステップ"を超越し「新入荷した時点ではどうにも説明できない」
サウンドが増えてきています。今回はそんなレコードの代表格を10枚紹介します。コメントにキーワードをちりばめたので、それらも要チェックで。

FIS - Duckdive EP (Samurai Horo)
ドラムンベースのレーベルとして知られるSamurai Musicのサブ・レーベルから、ニュージーランドのプロデューサー。何処に向かおうとしているのかさえわからないエクスペリメンタルな3曲と、トライバルなミニマル・ドラムンベースの4。このレーベルは全て要チェック。

ENA - Purported / Whereabouts (7even Recordings)
海外の精鋭たちとリンクしながら、リリース毎に「何処へ向かっているんだ?」度を上げている日本人Enaの最新作。今回も間違いありません!

AIRHEAD - Pyramid Lake (R&S)
James Blakeグループのギタリストとしても知られるプロデューサーの最新シングル。"ポスト"なダブステップよりも更に先、「ここからどこへ向かうんだ??」と思わずにいられない作品が数多く出始めてきた昨今のなかでも、本作はポップなセンスとその破壊力で群を抜いていると思います。

PANGAEA - Hex / Fatalist (Hemlock)
Ramadanman、Ben UFOと共にHessle Audioを運営するPangaeaによる、UntoldのHemlockからのシングル。両レーベルのキレキレの部分が露出したような(してしまった?!)「ヤバいよね~」としか言えない2曲。先日リリースのアルバムも素晴らしいです。

EGOLESS - Before/After EP (LoDubs)
クロアチアのプロデューサー2作目。前作に続くヴィンテージなキラー・ダブ1、ジャジーなブロークンビーツ2、そしてコロンブスの卵的なダブ・ガラージ3と、やっぱりヤバい!!!!

A MADE UP SOUND - Take The Plunge (A Made Up Sound)
2562別名義。1は、昨年末のHessle Audio日本ツアーでPangaeaがプレイし、そのクレイジーなビートにフロアも盛り上がった曲。ヒプノな感触もありつつ、ビートの根っこにはザックリした感じがしっかりあるのが◎。

STICKMAN - The Verge (Mindset)
マンチェスターのIndigoが運営するMindsetからの新鋭。ここ数年、ポスト~な流れからベース・ミュージックを追ってきた方々には、今まで「ヤバい!」と盛り上がってきた要素の多くがサラリとここで溶け合わされているという風に感じるんじゃないかと思います。レーベル他作はもちろん、Indigoも要注目。

VERSA - Shadow Movement (On The Edge)
そのIndigoやSynkroもリリースするマンチェスターのOn The Edgeから。ガラージを抜きに抜いたようなミニマルなテック・サウンドに、ザラザラとした上モノがBurialというよりはRhythm & Sound的に響く1ほかダブ好きテック派に大推薦の3曲。

CHAMPION - Crystal Meth / Speed (Butterz)
Blackdownが"Eskifunk"と名付ける、グライムとUKファンキーの突然変異体。全ての音がリズムとなって飛び回ります。

MORPHY & THE UNTOUCHABLES / FLATLINERS - Tread This Land / Raw Fi Dub (45Seven)
dBridgeのExitと、Boddika(Instra:mental)によるNonplusを中心としたAutonomicなど、ハーフステップのドラムンベースがここ数年面白いことになっていますが、その中でジャマイカ流のダブワイズに焦点を当てた新レーベルがこの45seven。ここから新しい流れが生まれるはず。

How To Dress Well - ele-king

こういう音楽が存在する 文:北中正和

E王 How To Dress Well
Total Loss

Weird World/ホステス

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 人間、元気なときは、出かけて他の人と接触するのが苦にならない。たとえひとりで過ごすとしても、前向きな気分でいられる。しかしときには、そうでないことだってある。そんなときは、出かけて人に会う気も起こらないし、何かを思い浮かべようとしても、考えが悪いほうに転がりやすい。
 『トータル・ロス』は、どちらかといえば、後者の気分にフィットしやすいアルバムではないだろうか。浮かない気分や冴えない考えのすきまにしみこんできて、痛みをわかちあい、凝った心を静かにほぐしてくれる音楽。
 ヴォーカルにはR&B的なファルセットの影響が感じられるが、"ラニング・バック"を除けば、一般的なR&Bとちがって、サウンドにビートやリズミカルなグルーヴがそれほど重視されているわけではない。曲はアンビエント的というか、ゆっくりと東の空が白んでいく様子を眺めているような穏やかな起伏をともなって進むように構成されている。サウンドはときには未来的で、ときには室内楽的。歌はメロディ重視で、"オーシャン・フロア・フォー・イヴニング"あたりでは、歌声が古い賛美歌めいて聴こえる部分もある。
 この種の音楽の歌は「こんなにかわいそうな私」「こんなに美しいぼく」の肯定のスパイラルに陥りがちだが、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルの歌には人に向かって語りかけてくるところがある。トム・クレルのヴォーカルにも、感情を強調するのではなく、そっと取り出して置いて眺めているようなニュアンスがある。ぼくはこういう音楽が好きだが、いつも聴いていられるかというと、そうではない。しかしたとえ聴かなくても、こういう音楽が存在することを知っていることによって回避できるストレスがあることはまちがいないと思う。


文:北中正和

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性の揺らぎのR&B 文:木津 毅

E王 How To Dress Well
Total Loss

Weird World/ホステス

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 昨年の爆音映画祭の目玉、『THIS IS IT』の爆音上映を観に行くべきだったとつくづく後悔している。この世を去ったことによってスクリーンのなかで生き生きと華麗に踊ることを許されたマイケルが、立体的な音を手に入れたときに文字通り飛び出してくる様を目撃できたはずである。通常の上映を観た僕の記憶には、モニターで音を聴くのに慣れないマイケルが「いつも生の音を聴くように言われていたから」と説明するときの悲しい横顔があるばかりだ。マイケルの幽霊はしかしスクリーンのなかで踊り続け、時折そこから飛び出してくる。これからもそうだろう。

 ブリアルがR&Bの亡霊たちを呼び覚ました後、それらは後続のアーティストが生み出す様々な音にも憑依していったが、ノイズやドローンを出自とするハウ・トゥ・ドレス・ウェルのゴーストリーなR&Bはそれらと地続きでありながらも、ポップスへの関心を他のアーティストよりもちらつかせていたために新種の奇形として生み出されていた。彼、トム・クレルの新作『トータル・ロス』はそのポップス趣味をより前に出した作品になっており、得意のアトモスフェリックな音作りになっている"ランニング・バック"などはマイケル・ジャクソンの亡霊が漂っているようだ。
 ......が、たまげたのは続く"&イット・ワズ・U"である。指を鳴らす音がリズムを刻めば、ファルセットでクレルが妙に明るいメロディをシンコペートさせる。ダークウェイヴの霧は晴れている。そこに入ってくる、簡素なストンプ・ビート......下手したら、マライア・キャリーの生霊も取り憑いているのではないか。僕は思わず、必要以上にこのトラックばかりをリピートする......かつてMTVで「ヘビーローテーション」と呼ばれた行為のように。何しろクレルはここでダンスしているのである。それはフロアでのダンスでも、もちろん祭の踊りでもない。ステージの上でのダンスであり、80年代末から90年代半ばのMTVのPVのなかのそれである。
 とはいえ、『トータル・ロス』がクレルによるポップス解釈に終始しているかといえばそんなことはない。とくに前半に顕著なダークなその音には、たしかに彼が通ってきた場所の痕跡が残されているからだ。けれども『ラヴ・リメインズ』で過剰にまぶされていたノイズや音の割れは消えている。本作においてもっともストレートな成果は"コールド・ナイツ"のような、より音がクリアにゴージャスになった、ムーディなトラックに見て取るべきだろう。病的なモチーフも彼らしい??「きみの幽霊を連れて帰って一緒に休めば/君をもっと運命的存在にできる」。あるいは、前作の暗さが穏やかに消えていくことを印象づける"トーキング・トゥ・ユー"のとろけるようなトーチ・ソング以降の流れ、"シー・イット・ライト"の壮大な聖歌そして"オーシャン・フロア・フォー・エヴリシング"のアンビエント・ポップのスウィートな響きは、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルのことをもはやウィッチ・ハウスなどといったタームでは説明できない領域にいることを鮮やかに証明している。『ラヴ・リメインズ』はホリー・アザー『ウィズ・U』の横に並べられただろう。が、本作と『ヘルド』の間にはかつてよりも微妙な距離が生じている。そんななか、"&イット・ワズ・ユー"は本作では......クレルのトラックでは、異色だと見なすのが妥当なのだろう。

 だが、アルバムを貫いているのはまさにハウ・トゥ・ドレス・ウェル、「華麗な着飾り方」という感覚であるように思う。去勢されたようなファルセット・ヴォイスと、セクシャリティの所在が曖昧なラヴ・ソング。"&イット・ワズ・ユー"で歌う相手は、フランク・オーシャンのそれと同じく「ボーイ」である。"トーキング・トゥ・ユー"で血管が切れそうな高音で歌うとき、人称は女性のものを借りている(「あなたは私を誰よりも愛してくれたわ、ぼうや」)。ただ、オーシャンのラヴ・ソングが切実な告白であったのに対し、クレルのそれはどこか衣装を借りてきているようなのである。ここにあるのは、クイアな感性である。クレルはジャネット・ジャクソンのバラッド"アゲイン"のカヴァーも披露しているが、それはアントニー・ハガティがビヨンセの"クレイジー・イン・ラヴ"をカヴァーするのと......は少し違うかもしれないが、ジェームズ・ブレイクがジョニ・ミッチェルを歌うのや、オーウェン・パレットがライヴで好んで(それこそ)マライア・キャリーの"ファンタジー"を演奏するのと、もしくはパフューム・ジーニアスが新しいヴィデオでアメフトのユニフォームとハイヒールを同時に身に着けているのと、そう遠くない振る舞いではないかと感じるられるのだ。そこにあるのは、男性性が消えていくことへの抗いがたい快感だ。
 ハウ・トゥ・ドレス・ウェルはここで、喉仏を失った男として恐ろしく感傷的なバラッドを歌い上げ、セクシャリティの非常にマージナルな地点へと肉薄している。なんて奇妙にねじれた、そして魅惑的なラヴ・ソング集なんだろう。自由と呼ばれるものの定義はさまざまだろうが、いち部の感性の鋭い男性アーティストは、自らに内在する性の揺らぎにそのヒントがあるのではないかと探っているように見える......これまでよりも、それは自然なやり方でなされている。そしてその鍵はいま、間違いなくR&Bにある。


僕らがエレグラに行く理由 - ele-king

竹内:エレクトラグライド2012〉、いよいよ開催がせまって参りました。とりあえず、木津さんのお目当ては?

木津:今年で言うと、アンドリュー・ウェザオールとコード9の親父ズかな。

竹内:それは見た目的な話ですか?(笑)

木津:それも込みで(笑)。ウェザオールはヒゲ生やして圧倒的にセクシーになったから......。トゥナイトも超楽しみ。竹内くんは?

竹内:僕はフライング・ロータスです。あとは電気(グルーヴ)。

木津:おお! すごくいいエレグラ参加者だ! ちょっと先にそっちの話からしよう。そもそも、竹内くんはエレグラ初めて?

竹内:初めてです。というか、この規模の会場でダンス音楽を聴くこと自体、初めてです(笑)。

木津:そうか、じゃあ2009年の〈ワープ〉20周年のイベントのときも行ってないってことやんね?

竹内:あのときはさすがに盛り上がりを感じていて、記念コンピレーションを買って家で聴いていました(笑)。LCDの"ダフト・パンク・イズ・プレイング・アット・マイ・ハウス"を地で行っている人間なわけです。

木津:へええ! じゃあ、今年参加するのはどうして?

竹内:カジュアルに言うと、今年からライヴをわりと見るようになって、「ライヴっていいもんだなあ」と素直に思えるようになったから、くらいのものなんですけど(笑)。クラブ音楽って、「この曲がどうしても聴きたい」っていうような目的性からは離れているわけですよね。つながった時間のまとまりを享受するという。それがこの規模になったときにどうなるのか、単純に興味があります。

木津:なるほど。じゃあ僕の話をすると、エレグラには何回も行っておりまして、フジロックのときに発表があったんだけど、すんなり「お! 行こう」という感じで。いま関西に住んでいて、ある程度ダンス・ミュージック好きだったら、オールナイト自体が貴重なので。

竹内:そうなると、多少、政治性を帯びる可能性もある?

木津:うん、今年はやっぱり少しはね。でも、みんな基本的には楽しみたいだけですよ。今年も大阪でも開催するし、みんなすごく楽しみにしていると思う。

竹内:なるほど。僕のことを言うと、「地方の因縁から離れて、誰も自分を知らない空間に逃避したい」というのがあります。暗い(笑)。

木津:いやあ、好き勝手に楽しめばいいんですよ!(笑) 以前も書いたけど、僕のオールナイト体験で、いちばん強烈だったのがオウテカのライヴで。

竹内:あらためて教えてください。

木津:フロントがLFOで最高に盛り上がった後、電気が全部消えて、真っ暗闇のなかであのビートの応酬っていう。

竹内:おお(笑)。

木津:あれは凄まじかった。で、2005年のエレグラでオウテカがやったときは、大きい会場だからそこまで真っ暗にはできないんだけど、彼らのことを全然知らなかったひともけっこう衝撃を受けたと思う。

竹内:なるほど。

木津:この規模のイベントの醍醐味はそういうところなんじゃないかな。

竹内:未知との遭遇ということですか?

木津:うん。〈ソナー〉のときに、スクエアプッシャーが観てみたいという、クラブに行ったことのない2こ下の男子を連れて行ったんだけど、アフリカ・ハイテックをすごく好きになってた。

竹内:いい話ですねー。

木津:電気だけを目当てで来たひとが、コード9にやられる可能性だってあるだろうしね。

竹内:ところで、ゼロ年代の後半にエレグラは沈黙を強いられたわけですよね。内部的な事情はともかく、この期間になにか文化事情的な意味はあると思いますか?

木津:うーん。まあ理由はいろいろあるんだろうけど、ダンス・アクトに大物が目立たなくなったということはあるのかなあ。だって、いつまでもアンダーワールドに頼るのもねえ。

竹内:その話は重要な気がします。当時の現実的でシニカルな若者は、本当はダンス・ミュージックを聴きたくても、たぶん「こんな単純な4/4に乗れるか!」とか思っていたんじゃないでしょうか。まあ、僕の話ですけど(笑)。

木津:ほお。

竹内:そこでいうと、やはりダブステップは大きいのかも。

木津:ダンス・ミュージックの本質がアンダーグラウンドに潜ったってこと?

竹内:快楽が形骸化した一面はあるのでは、みたいな感じです。

木津:なるほど。

竹内:その反発はジューク/フットワークにまでもつれ込むのだと思っていて。ダンス・ミュージックが新しいステップを踏むには、ある種のアングラにならざるを得なかったのかなあ、みたいな。

木津:まあ、〈ワープ〉の第一世代が完全にクラシックになったタイミングでもあるよね。だから、今年はフライング・ロータスがいちばんの顔になっているのはいいことじゃない?

竹内:ですね。そこでいうと、今回フライング・ロータス(〈ワープ〉の新たな顔役)とコード9(〈ハイパーダブ〉代表)が来るのは大きい。ハドソン・モホークとルナイスが組んだトゥナイトもですね。

木津:フォー・テットも最近、かなりフロア・ミュージックになってるしねえ。

竹内:出所はエレクトロニカですもんね。それでいうと、ロータスはヒップホップですよ。やはり、どこかのタイミングでダンスへの再接近があったと。フォー・テットもブリアルとやっていますね。あれは凄まじかった。

木津:うん。わりと最近ライヴ観たときはかなりダンサブルだったよ。とまあ、今年は本当に「ダンス」のあり方が多様でいいと思う。

竹内:ですよね。これまでの話とまったく逆をたどれば、クラブのオリジナル世代からしたらダンスと呼びたくないようなものまで、もしかしたら入っているかもしれない。

木津:そっか。でも、DJクラッシュやDJケンタロウのようなベテランもいるし。

竹内:ですね。年長組で言うと、木津さんはアンドリュー・ウェザオール? ファック・ボタンズのセカンドで名前を聴きましたね。

木津:うん、ソロではロカビリーをやったりするんだけど、DJのときはしっかりハウスのときがけっこう多いかな。あとオールドスクールのエレクトロ。でも、新しい音もけっこうかけるのかなあ。

竹内:どうでしょうかね。僕はやっぱり、電気が観てみたい。ライヴの間くらい、馬鹿になるのが目標なので(笑)。

木津:はっはっは。このラインアップに電気がいるのは、けっこう面白いよね。ある意味、いちばん浮いてる。

竹内:ですよね。それだけ、信頼が厚いと?

木津:そうなのかな。いちばん、変な感じになりそうやけど(笑)。

竹内:楽しみです(笑)。あと、視覚を活かしたアーティストが何組かいますね。

木津:それで言うと、まずはアモン・トビンでしょう! 前作の『アイサム』のときのフィールド・レコーディングのコンセプトを、ライヴで具現化したものになる......らしい。この前のDVD作品もすごく評判だけど、ライヴだとパワー・アップするでしょう。これが観たいので、僕は大阪から幕張に行きます(笑)。映像ものはクリス・カニンガムのときもすごく盛り上がったけど、大きいイベントならではやね。スクエアプッシャーは〈ソナー〉のときにLEDヴィジョンを使ってたんだけど、今回はそれに加えてベースもプレイするとか。

竹内:ほお。それはフィジカルな。

木津:スクエアプッシャー最近、妙に元気やんね。ライヴに燃えてる。

竹内:オービタルは?

木津:僕は、2004年でいったん活動やめるっていうからその年の〈WIRE〉に観に行ったよ! 往復青春18きっぷで(笑)。

竹内:愛だ!(笑)

木津:だから、最近ふつうに再活動しててちょっと納得がいかない(笑)。でも、あの大らかなテクノは大バコに映えるでしょうな。

竹内:他のイベントとの差別化って、どんなところにあるんでしょう?

木津:エレグラは〈ワープ〉周辺がとくに好きなひとに訴えるような作りになっている気がするなー。いち時期、LCDとか!!!とかも出てたんだけど、そういう意味ではインディ・ロック好きにもちょっと寄ってるし。普段クラブ・ミュージックは聴かないけどフライング・ロータスは聴くってひともけっこういるんじゃない?

竹内:ですね。どんなプレイ・セットになるのかなあ。

木津:前回観たときは生ベースがあったりで、かなりグルーヴィーだった。

竹内:アルバムからいくと、また今回は違った雰囲気かもしれないですね。

木津:もうちょっとチルな感じなのかなあ。でも、そのときはドラゴンボールのコスプレで「カメハメハー!」って言ってたよ(笑)。

竹内:うわああ(笑)。

木津:いやいや、でも今回の顔なのは間違いないでしょう!

竹内:でしょう!

木津:でも、2ステージに分かれてこれだけアクトが揃ってると、ほんとにそれぞれ好きに楽しめそうやね。

竹内:ですね。「しばらくクラブから遠ざかってたけど、さすがに今回のエレグラは行くかなあ」なんて声も聞きました。

木津:おお、いいことですなあ。それは特定のアクト目当てで?

竹内:というより、ダンス・ミュージックに再燃の兆しを認めている感じかもしれません。

木津:お! でもたしかにそういう説得力のあるラインアップですよ。

竹内:どんと来いと(笑)! 「僕がエレグラに行った理由」を、みんなでぜひ語り合いましょう!

木津:そうやね。じゃあ、最後にお互いイチオシを挙げときましょうか。僕はウェザオールとコード9......としつこく言いたいところだけど、アモン・トビンとTNGHTで。

竹内:僕はいろいろあるけど、フォー・テットで。ゼロ年代インディ以降の代表格が見つけたダンス・ミュージックを生で聴いてみたい。彼のキャリアの軌跡って、いまの若いリスナーが通った道ともかなり近い気がするんですよね。

木津:うん、フォー・テットのいまのモードは、シーンのモードだと思うよ。それはともかく、飲まされすぎないようにしないと、僕はトイレが近いので......。〈ソナー〉のときも、ひたすら飲まされ続けたからなあー。

竹内:ははは、今回は各自楽しみましょう(笑)。

木津:そうやね(笑)。

竹内:願わくは、レポのことなんて気にしないで......。馬鹿になりましょう!(笑)


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Orbital / Wonky

2000年のエレクトラグライドでヘッドライナーを、翌年のフジロックでもホワイト・ステージの大トリをつとめるなど日本でも絶大な支持を得てきた「テクノ四天王」オービタル。2004年の『Blue Album』発表時に活動休止を宣言して以降、シーンへのカム・バック作となる2012年の通算8作目。

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TNGHT / TNGHT

〈ワープ〉の新世代を象徴するアンファン・テリブル、ハドソン・モホークが盟友ルナイスと組んだコラボレーション・プロジェクト、トゥナイトの5曲入りEP。それぞれのレーベル〈ワープ〉と〈ラッキーミー〉からリリースされた2012年作だ。ミニマルかつエクストリームなウォンキー良盤。

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Flying Lotus / Until the Quiet Comes

『コズモグランマ』から2年。マシューデイヴィッドやマーティン、ライアット、ジェレマイア・ジェイなど、〈ブレインフィーダー〉レーベルにおける活動もますます興味深いものとなっているなかで発表され、自身が「神秘的事象、夢、眠り、子守唄のコラージュ」と呼ぶ本年重要作。

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Squarepusher / Ufabulum

〈ワープ〉を代表し、エレクトロニック・ミュージックにとどまらず広範な影響を与えてきたトム・ジェンキンソンが「最近あらためてピュアなエレクトロニック・ミュージックのことを考え始めたんだ。とてもメロディックで、とても攻撃的なものをね」と語る2012年作。

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Four Tet / Pink

ポストロックを代表するフリッジのギタリストであり、最近ではフォークトロニカとダンス・ミュージックとを鮮やかに縫い合わせているかに見えるフォー・テットことキエラン・ヘブデンの最新作。60分を超える大作である反面、フロアに映えるようなダンス・ナンバーも増えている。

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Amon Tobin / ISAM

フィールド・レコーディングを駆使して構築され、気鋭の若手アーティスト、テッサ・ファーマーとのコラボレーションによって完成したキャリア集大成とも言える大作。自然や生命の繊細さと大胆さを洗練されたテクニックと鋭敏な感性でとらえた美しくも挑戦的な2011年作。

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The Asphodells(Andrew Weatherall) / Ruled By Passion, Destroyed By Lust

25年にわたって第一線での存在感を保ちつづけてきたプロデューサー、アンドリュー・ウェザオールの最新プロジェクト、ジ・アスフォデルスのデビュー作。ヨーロッパで頭角を現し、名門クラブでのDJプレイで活躍するティモシー・J・フェアプレイとのコンビで編まれたエレクトロニック回帰作。

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Kode9 & The Spaceape / Memories of The Future

ブリアルの発掘を機に世界的なインディ・レーベルへと成長し、狭義のダブステップの境界を超えて刺激的な作品を発掘しつづけている〈ハイパーダブ〉の主宰者、コード9。 本作はブリアルの処女作と並ぶ、レーベル最重要作品のひとつ。

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https://www.electraglide.info/

Chart JET SET 2012.11.05 - ele-king

Shop Chart


1

Robert Glasper Experiment - Black Radio Recovered: The Remix Ep (Blue Note)
大ヒット作『Black Radio』収録曲を素晴らしいメンツがリミックスした限定盤!リミキサーには9th WonderやPete Rock, ?uestlove, Georgia Anne Muldrowが参加し、さらに自身もセルフ・リミックスした全6曲入りEp! J DillaトリビュートのB-3は本盤オンリー。

2

Poolside - Pacific Standard Time (Poolside Sounds)
Future Classicからの『Do You Believe』が大ヒットとなったL.a.のニュー・ディスコ・デュオによるファースト・アルバム!!

3

Joe Bataan - Ordinary Guy Jazzanova Rework / (Sonar Kollektiv)
Ltj X-perienceによるカヴァーもヒットしたラテン・ソウル・クラシックを絶品メロウ・グルーヴに。プロモの時点で話題となっていた1曲が遂にリリース!

4

Kindness - That's Alright (Female Energy)
説明不要の1st.アルバムから、彼のセンスを見せ付ける大傑作曲がカット!!B面のBbcライヴ・ヴァージョンは、さらにソリッドでクールな80'sファンク全開の必聴音源です。

5

Flume - Sleepless (Future Classic)
オージー・インディ・ディスコの牙城、Future Classicからの新提案。シドニーのエレクトロニカ・クリエイター、Flumeの初ヴァイナル・リリース!!ダウンロード・コード封入。

6

Jesse Boykins lll & Melo-x - Zulu Guru (Ninja Tune)
2012年Sonarsound Tokyoで初来日を果たした大注目シンガー=Jesse Boykins lllと、ニューヨーク出身のMc/Dj/プロデューサーMelo-xのタッグ・アルバムが、Ninja Tuneよりリリース!

7

Kota Motomura - Sun (King Kung Foo)
Cos/MesやMutronといった日本人アクトによるリリースでも注目を集めるベルギー"King Kung Foo"の最新作、東京を拠点に活動するKota Motomuraによる話題のEpが遂にリリース!!

8

Resonators - The Constant (Wah Wah 45s)
好調なペースでシングルをリリースしていたロンドン産ダブ~レゲエ大本命バンドが、遂にニュー・アルバムをドロップです!!

9

Dub Is A Weapon - From The Vaults (Jump Up)
Usネオ・スカ・シーンの顔役Slackersのメンバーで結成され、神様Lee Perryと共に全米ツアーをまわったことでも知られる全世界大注目のダブ・バンド。待望の最新作!!

10

New Mastersounds - Out On The Faultline (One Note)
フジロックでも熱いステージを繰り広げた、現在のファンク・シーンのトップに立つNew Mastersounds。最高傑作と言っても過言ではない強力な新作が登場!!

insect taboo - ele-king

 オレはおもすごく太っ腹で大胆な男なのだ
 会社でビラまきしたら 家に電話がかかってきた
 「あんたの息子さんはアカです」と
 母さん落ち着き騒がず オイラにこういった
 「おまえの思った通りにやればいい」
 オレはおもすごく太っ腹で大胆な男なのだ」
想い出波止場 "太っ腹(玉砕ワルツ)"

 わたしは歌詞の引用を、干支がひとまわりするあいだに1回ないし2回することになっているが、虫博士率いるインセクト・タブーの『ソンギズム』を聴いて、この歌が自然に口をついたのはおそるべきことであった。想い出波止場の"太っ腹(玉砕ワルツ)"は「会社でビラまき」とあるから組合活動のことである。組合自体はアカでもなんでもない。ところが、労働者の正当な権利を主張する行為が、傍目(共同体に内在する監視の目)にはアカくうつる。赤い血をわけた家族はいわれなき批難にかぶりをふるが、そうしてみても、その否定は思考を経ない肯定を元にしているから否定ではなく思考停止である。というか、気まずい。「おまえの思った通りにやればいい」のウラには「おまえがアカであってもなくても、母さんは信じる」がある。団らんの場である茶の間でそんなこといわれようものなら空気はとたんに「3B金八」的な重さと湿り気を帯びてしまい、思想の立ち位置を意味していたはずの「アカ」はなぜかあらゆる中二病的ワードの代入可能な自意識の変数となり空転しはじめた。
 これはいたたまれない。
 オレが尾崎豊なら「盗んだバイクで走り出す」か「夜の校舎 窓ガラス 壊してまわ」ってまわることころだったが、残念ながらオレは尾崎ではない。だからオレは"太っ腹(玉砕ワルツ)"でその状況にドン・キホーテとして向き合うことで、問題を別の次元にズラすのだが、『水中JOE』がリリースされた90年代を雌伏し、その20年後にファースト・アルバムをリリースした虫博士=インセクト・タブーの手にかかると尾崎的自意識は「盗んだ校舎でバイクの窓を割る」("ブライハモドキ")へ、さらに位相がズレる。ハナからメタだった『ドン・キホーテ』はここで、すでに後編へ、さらにこみいった書く/書かれる、読む/読まれる関係に入っていくように見えるが、インセクト・タブーはその中間にある贋作『ドン・キホーテ』といったほうがしっくりくる。失礼ないい方かもしれないが。
 たとえば、例にあげた"ブライハモドキ"のエスニックな哀愁は、タイトルの通り、船戸与一的なデラシネ感、つまり団塊の世代の自意識(妄想)をパロディ化したように思えるが、サビで連呼する「ボヘミアン」は無頼派ワナビーの憧憬というより葛城ユキである。葛城ユキも団塊の世代だから問題ないにしても、かように、このアルバムは1曲のなかにいくつもの引用と隠喩と批評と象徴と笑いとかすかな怒りが輻輳した補助線が放射状の罅のごとく走っている。しかも音楽と言葉の両面にわたって。

 一人でもレーニン
 二人でもレーニン
 トリオを組んでもレーニン
 四人囃子もレーニン
 ゴレンジャーもレーニン
 ろくろっ首だよレーニン
 七人の侍レーニンさ
 つぼ八の店長レーニン
 坂本九は上向くレーニン
 十月十日で生まれるレーニン
 11PMの司会レーニンさ 
 12人の怒れるレーニン
 13階段昇ったレーニン
 14歳のチキンがレーニン
 15、16、17とわたしの青春レーニンだった
 18歳未満はレーニン
 19歳の地図にはレーニン
 24の瞳はレーニン
 80年代はレーガン

 彼方から無数のレーニンが
 縦一列に並んでジェンカ
 食料問題解決さ
 世界の人口レーニン

 笑っている君たちもレーニンさ 
 かく言う俺はホーチミン
"レーニン数え歌"

 オラは思わず1曲の歌詞の全文を書き出してしまっただが、トラップの多くは左翼言語であり、(「若い連中」というのもなんだが、まあとにかくヤングなひとびとと)笑いどころを共有していないことが前提になっているから、いきおいそれは場ちがいとなり、くすぶってくる。わかられていない状況が誘う笑いは苦笑か失笑である。そして音楽における笑いは言葉と音楽とパフォーマンスの主従関係において、音楽であろうとすればするほど、屈折せざるをえない。ボーイズものではこうはならない。インセクト・タブーはポルカ、カントリー、レゲエ、演歌、ボサノバ、ロックとポップス、そこらへんのあらゆる音楽を嚥下しようと試みる、形式的にはボーイズものといえなくもないが、クレイジーでもドリフでも、ポカスカジャンであっても、こと軽音楽の分野においては洒脱なツウ好みに流れがちな音楽を彼らは厳しくソウカツする。HOSEの宇波拓、作曲家でありヴォイス・パフォーマーである足立智美、コントラバスの即興における新世代の旗頭である河崎純、ビルやmmmの(バンドの)メンバーでもある下田温泉の四人の演奏がソンガーを自称する虫博士に、寄り添うような遠巻きにするような絶妙な距離をとるが、全体が一体となって誘導するコント~演劇的な空間(閉鎖)性はない。くりかえすが補助線は放射状である。いささか自虐的ではあるが、皮肉めいてはいない。「上から」の語りが説教か自分語りになる時代では、自己言及を抑圧し、その反動で前のめりになり、周回遅れで先頭に躍り出るしかない。虫博士はきっと、飲み会ではぐれていくひとだ。少人数の席ならかならずや本領を発揮するにちがいない。サシ飲みではむろんのこと相手が試される。わたしは何をいいたいか、もはやわからなくなったが、資料には、虫博士と古くからつきあいのある映画監督の古澤健氏が博士を評して、「同時代の音楽(※空手バカボン)を聴いて育ったんだな、と初期のころから他人とは思えないセンスに驚きと共感をもって聴いています」とコメントを寄せている。空手バカボンは、有頂天のケラと筋肉少女帯の大槻モヨコ(ケンヂ)、ベースで幼なじみの内田雄一郎のユニットである。人生のころの石野卓球が共感を抱いたグループであり、つまりナゴムの一面なのだが、80年代末のナゴムを追って、90年代のサブカルチャー(悪趣味とかモンドとか)を通過するとこうなるのは、同世代としてイヤんなるほどわかる。私はだから虫博士を支持するのではなく、『SONGISM』は記号とその列挙、それを乗せる音楽が村社会内での終わらない相互孫引き(=近親相姦)に反旗を翻すからでもなく、これが虫の目で見るインセクト・タブーだからである。虫の目は複眼だから像はひとつに結ばれない。村社会はおろか人間社会に属していないのでそもそもポップの定義が通用しない。ゆえに偏った言葉を雑多な回路で放出できる。須川才蔵氏のライナーノーツによれば、1997年の結成直後、インセクト・タブーは「音楽的には素っ頓狂なアナルコ・パンク」だったようだ。初のアルバム『SONGISM』はパンク色は減退したが、その目はまったく曇ってはいない。むしろ私はジャケをツラツラ眺めながら、"SONGISM"のタイトルが象徴するハードコア魂に思いあたったときに戦慄さえおぼえた、いろんな意味で。

■ライヴ情報

2012年11月18日(日)
Live & Bar Shibuya 7th Floor
UNKNOWNMIX presents
insect taboo 1st CDアルバム『SONGISM』発売記念ライブ
《ムシ・ロック・フェスティバル》

open 18:00 start 18:30
前売¥2000/当日¥2500(ともにdrink代別¥500)

出演:insect taboo / core of bells / mmm

(問)HEADZ Tel : 03-3770-5721 www.faderbyheadz.com

The Orb featuring Lee Scratch Perry - ele-king

 出自は、リー・スクラッチ・ペリーがダブでジ・オーブがテクノだが、基本的にはレゲエ・アルバムじゃないものをめざしたらしく、ジ・オーブが基本的なトラックを作り、リー・ペリーはヴォーカル/トースティングでの参加。ダブの鍵を握るミキシングは、ジ・オーブが担当した。
 それでもリー・ペリーを意識したからか、ジ・オーブにしては、ドロっとした音色のダブのサウンドが目立つ。遠心分離器にかけられて大気圏外に飛んで行きそうなそのダブのサウンドを、建築的なテクノのリズムでつなぎとめた感じとでもいうか、以前からダブの影響を受けていたジ・オーブだが、正直言って、ここまでダブ的な音を作るとは予想していなかった。

 レゲエ・アルバムでないものをめざしたとはいえ、たとえば"マン・イン・ザ・ムーン"のようにレゲエ的なベース・ラインがはっきり出てくる曲があったり、ザ・クラッシュもカヴァーした"ポリスとこそ泥"のようなレゲエ・クラシックを再演していたりする。
 また、ギター、ベース、ドラムのそれぞれのリズム、あるいはいずれかの組み合わせなど、細部を見ると、レゲエ色が濃厚に残っている。どの曲がわからないが、スタジオ・セッション中にリー・ペリーの指示したベース・ラインを使った曲もあるそうだ。

 それにリー・ペリーの語りや声質自体がレゲエ/ダブならではのアクセントや声色を持っている。ミニマルなリズムとアンビエントなサウンドにはじまり、続いてアフリカ風の打楽器が入ってくる"コンゴ"のように、レゲエから遠い曲ですら、彼の声が入ってくると空気が一変する。この曲の前の短い曲"アッシズ"に使われているモロッコのゲンブリ(ベースのように聴こえる楽器)ともども、ジャマイカの文化がアフリカとつながっていることを、ヨーロッパを介して確認することになるあたりは、このアルバムの顔合わせの妙というものだろう。

 ダブ・アーティストとしてのリー・スクラッチ・ペリーの作品では70年代の『スーパー・エイプ』が有名だが、リー・ペリーがコンソールを楽器のように扱って、踊りながらミキシングする姿はきっともう見られないのだろうな。
 とはいえ今回のアルバムでジ・オーブが用意した音楽的な要素やサウンドは『スーパー・エイプ』のころより多彩で、ダブもはるばる遠くまで来たものだ。ぼくにはクラブに足を運ぶ体力は残っていないが、しかるべき環境で大音量で聴いてみたい誘惑にかられずにいられない。

Tame Impala - ele-king

 彼らのはじめてのEPが出たころ、クリスタル・アントラーズやオール・ザ・セインツなど〈タッチ・アンド・ゴー〉の最後を飾ったアーティストたちも同じようなヴィンテージ・サイケを展開し、ウッデン・シップスのデビュー作のリリースによってドゥンエンらへの関心も再度高まりつつあったところへ、南アフリカからブラック・ジャックスが出てきてカオッシーなエネルギーを吹き込むなど、スペーシーなジャム・バンドやガレージ・サイケの系統は、ちょっとした盛り上がりをみせていた。

 エレクトロなイメージが定着していた〈モジュラー〉が、テイム・インパラのような音をリリースするというめぐりあわせにも時代の見えざる手を感じ、すくなからずときめきもした。あのEP『テイム・インパラ』の薄いスリーヴを手にしながら「キタな」とか「零サイケと呼ぼう」とか「13thリヴァイヴァルとかもこい」などと思っていたのが懐かしい......もはやくるもこないもない、5年を経て、いよいよあらゆる音楽が横一列に並んで享受されるようになり、リヴァイヴァルの意味など漂白されてしまったように見える。特定のものが蒸し返される背景には、時代を支える無意識ではなくて個人的な動機が存在するだけだ。「古いモノから新しいモノを創り出すのは僕らの世代にとって重要な要素だよ」と言うのはマシューデイヴィッドだが、リヴァイヴァルの連鎖で終わった先の10年を考えるときにこの言葉は重い。「どの」ムーヴメントを蒸し返すかは本質的な問題ではなく、そこから新しいものを引き出すことに焦点を当てた発言である。あとは空気を読まずに好きなものをやりつづけるか、読みに読んで流行ゲームを組織するか、どちらを好むかという選択の問題が残るだけだ。前者に与えられるチャンスが相対的に肥大した現在は、もしかすると音楽にとってはいい時代なのかもしれない。

 ともあれ、べつにわざわざ彼らを「ガレージサイケ・リヴァイヴァリスト」と呼ぶでもないなという状況の出来において、ようやく彼らの「セイム・インパラ(いつも同じじゃん? という彼らの楽曲への揶揄)」は、その一貫したフィーリングをあるがまま楽しみ、評価できるものになった。冒頭では13thフロア・エレベーターズやウッデン・シップスを引き合いに出したものの、そうした際限なきジャムの酩酊感よりは、ゾンビーズや『サージェント・ペパーズ~』などの英国的な翳りやソフトなサウンド・センス、またポップスとしての洗練に彼らの妙味があることが、いまではより見えやすくなっている。サイケデリックな音楽性を減速せずにポップスへと落とし込むことに長けたデイヴ・フリッドマンが前作に引き続きミックスを担当、あのにぶく爆ぜるような生々しすぎないローファイ感は、"アポカリプス・ドリームス"や"キープ・オン・ライイング"などの物憂げでしっとりとした、いかにも彼ららしい歌メロをクールに引き立てている。"エンドアズ・トワ"のヴァニラ・ファッジ的なオルガンの展開も現代性を帯びて聴こえる。"デザイア・ビー・デザイア・ゴー"を長らく愛してきた筆者にとって、そして多くのファンにとって、こうした曲はいずれもあらたな愛聴トラックとして記憶されることになるだろう。彼の音作りは、ダイナミックにファズを聴かせる"マインド・ミスチーフ"においても生きてくる。ラフすぎない、なんともシックなファズ(という形容矛盾をスマートに成立させるところもにくい)が、ベースのファンキーなグルーヴを個性的にドライヴさせていく。

 一方で、発展形としてはぜひとも"ナッシング・ザット・ハズ・ハプンド""サンズ・カミング・アップ"を挙げたい。前者で聴かれるアナログ・シンセには彼らなりの冒険があったはずだ。ケトルの、あるいはエイフェックス・ツインの叙情性とヴァニラ・ファッジやドアーズのハモンド・オルガンが交差するような、スリルある1曲。彼らの引き気味なスウィングもばっちりときまっている。酩酊ではなく叙情へとサイケデリアを操作する、本作のなかでももっとも果敢な姿勢を感じさせる名曲である。そして終曲のワルツにおいて強調されるアップライト・ピアノの質感、そしてジョン・レノンを彷彿させる節回し、ラフに挿入されたフィールド・レコーディング、ぐるぐると左右の耳を巡回するようなリヴァーブには、あきらかにノスタルジーとは異質の過去への飛翔がある。

こんにちは、マシューデイヴィッド! - ele-king

 アメリカ、ロサンゼルスを代表する非営利ネットラジオ局、ご存じ〈dublab〉の日本ブランチdublab.jpが、MatthewdavidとAnenonを招聘しての楽しいイヴェントを開催!

 「はじめはアンビエント・サイケのカセットを作ろうと思っていた」......のちに〈ダブラブ〉を通して本格始動した〈リーヴィング・レコーズ〉の立ち上げに際して、マシューデイヴィッドは創設メンバーのジェシリカ・モリエッティと長い時間をかけてサウンドのキュレーションを行ったという。ほぼ全リリースに及ぶというマスタリング作業を通じて、彼はズブズブに夢見心地なサウンドを確立し、鮮やかなレーベル・イメージを提示した。いまそれは時代と切り結びながらより広いリスナー層へと波及しつつある。彼の周辺にはサン・アローなど刺激的なアーティストも多く、現在のLAのもっともおもしろい部分を体現する存在としても今回の初来日は貴重であり、学ぶところは多いはずだ。一方のアネノンは〈ダブラブ〉のDJとしても活躍する新鋭プロデューサー。サックスとピアノが印象的なEP『Acquiescence』につづき、アルバム『Inner Hue』をリリースして間もない新鋭であり、やはりLAのエレクトロニックなシーンとの関わりが深い。
 詳細は明らかになっていないが、この企画ではマシューによる音楽制作についてのワークショップもあるという! 企画自体が彼らの来日公演であるという以上の性格を持った複合的なカルチャー・イヴェントであり、その他のワークショップや上映会等を含んだ意欲的なものだ。ライヴとあわせて楽しみたい。

LAからは、dublabに深く関わる2アーティスト、MatthewdavidとAnenonを招聘します。
Matthewdavidは、Flying Lotus率いるBrainfeederに所属し(アルバム『Outmind』をリリース)、LAでいま最も神秘的なレーベルといっていいLeaving Recordsを主宰しています。
Anenonは2011年のRed Bull Music Academyにも招待されたアカデミックなキャリアをバックボーンに持つプロデューサーで、レーベルNonprojectsを主宰しています。
日本からは、今年LAに赴きdublabにもライヴ出演したBUN/Fumitake Tamura、dublabでエソテリックなDJミックスを配信しているShhhhhというdublab.jpの核となるアーティストに、ワールドワイド に活動するChihei Hatakeyamaを迎えます。

また、当イヴェントは単にライヴやDJのみならず、子供のためのワークショップの開催や、dublabが制作した映像作品の上映など、複合的 な催 しとなります。開催場所となる東京芝浦の新しいコミュニティ・スペースSHIBAURA HOUSEにもぜひご注目ください。

詳細→ https://www.shibaurahouse.jp/event/dublab-jp1/

■dublab.jp & SHIBAURA HOUSE present
"Future Roots" feat. Matthewdavid & Anenon


Matthewdavid


Anenon

■日時
2012.12.9(日)
13:00~
WORKSHOP for children
14:30~
WORKSHOP feat Matthewdavid
16:00~20:30
Live:
Matthewdavid
Anenon
Bun / Fumitake Tamura
Chihei Hatakeyama

DJ:
Shhhhh

■場所
SHIBAURA HOUSE/ 1F, 5F
東京都港区芝浦3-15-4

■料金
1500円(出入り自由、中学生以下無料、ワークショップ参加の場合:2000円)

主催:dublab.jp(https://dublab.jp)/ SHIBAURA HOUSE
協賛:Sound & Recording Magazine
サウンドシステム:Forestlimit
協力:PowerShovel,Ltd

*子供のワークショップには、必ず保護者の方が同伴の上、参加ください。保護者1名に付きワークショップ参加料金は2000円となります (16時以降の音楽イヴェントも入場いただけます)。申込フォームは詳細が決まり次第用意します。

vol.41:「サンディ」の憂鬱 - ele-king

 大型ハリケーン「サンディ」の襲来で、現在北東部沿岸は厳戒態勢下にある。オバマ大統領が対策のため選挙集会出席をやめてワシントンに戻るなど、大統領選にすら影響が出ている状況だ。NYでは10月28日(日)の夜7時、ハリケーン・サンディ(別名フランケン・ストーム)接近のため、公共交通機関がいっせいにストップした。NYの公共交通機関(MTA)の歴史のなかで、全面ストップというのは、2回めらしい(1回めはハリケーン・アイリーン)。いままでにない非常事態なのである。

https://alert.mta.info/

 思えば、1999年にNYに移って以来、2001年の9.11、2003年のNY大停電、2011年のハリケーン・アイリーンなど、著者はいくどとなく大きな災禍に遭遇している。(日本では1995年の阪神大震災を経験した。)そして今年は、アメリカ史上最悪の台風と言われるハリケーン・サンディに遭遇しているというわけだ。ただいま通過真っただなか。

 それに応じ、10月28日(日)のお昼からニューヨーカーの戦争がはじまった。お店ははやく閉まり、グロセリーストアで、食料、水、懐中電灯などの非常用の買いだめがはじまり、水際に住む人たちに避難勧告が出される。予定されていたショーもほとんどがキャンセル(スワンズ@バワリーボール・ルームとシック・アルプス@ニッティング・ファクトリーは敢行)。スワンズは、2ディズで10月29日(月)の正午ぐらいまで、「今日もショーを行う」としていたのだが、会場のミュージックホールより正式に延期が発表された。知るかぎり、今日10月29日(月)のショーはすべてキャンセルになっている。


ストームにも関わらず、ニッティング・ファクトリーで演奏したシック・アルプス
写真は前日の公演@ラン・ティー・ハウスの模様

 10月28日(日)、交通手段のなくなったニューヨーカーたちは、7時前に大挙して家へと移動しはじめた。去年のアイリーンの折も、お風呂に水をためたり、ろうそくを買いだめしたり、地下に住んでいる人は階上へ避難するなど、想像される緊急事態に備えて行動したが、思ったほどの被害はなかった(少なくとも著者のまわりは)。が、今回のサンディは、CNNや『ニューヨーク・タイムズ』で情報のアップデートがつぎつぎと流され、日本領事館も緊急本部を設置し、避難警告を呼びかけている。10月29日(月)の朝10時の時点で、すでにレヴェルはアイリーン並み(まだサンディは上陸していない)、バッティー・パークは浸水し、ロッカウェイ・ビーチは、波が大変なことになっている。


ロッカウェイ・ビーチの波の様子

https://www.huffingtonpost.com/
https://news.yahoo.com/

 コンエディソンは、コンエディソンの歴史以来最悪のストームで、ローワー・マンハッタン、ブルックリン、クイーンズの浸水エリアで、電気をストップすると発表(家の電話がすでに止まっているエリアも)。さらに、ホーランド・トンネル(ダウンタウンとニュージャージーを結ぶトンネル)やヒュー・ケリー・トンネル(ダウンタウンとブルックリンを結ぶ)をクローズ。ブルームバーグ市長は、明日火曜日も引きつづき、学校、銀行、郵便局などの公立機関を休みにすると発表した。いまのところ、公共交通機関の復旧の見込みは立っていない。

https://www.nyc.gov/html/oem/html/home/home.shtml

 電気が止まると、インターネットもない、電話もつながらない、ライトもない、家に閉じこもってサンディが過ぎるのを待つしかないのだが、史上最悪のストームは、これからどんな脅威をもたらすのか。現在NY時間10月29日(月)午後4時、サンディが上陸するのは今日の夜といわれている。窓の外では、雨が激しく降り、ヒュー~~~~ン! という突風の音が聞こえ、木々が激しく揺れている。いつもは人がたくさん歩いているストリートには、誰もいない。家から出られないストレスと、開き直りが交差し、淡々と家事をこなしているのだろう。情報も徐々にとだえてきた。次のアップデートができることを祈って。


著者宅の窓より。すべてのお店がクローズ

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