「Nothing」と一致するもの

Bushmind(Seminishukei) - ele-king

https://soundcloud.com/bushmind
https://www.facebook.com/bushmind
https://seminishukei.shop-pro.jp/
https://wdsounds.com/

Nipshit of 2012(順不同)


1
King 104 / Margarita

2
Lil Mercy & Mamimumemosu / 20mamimume12

3
Hoodies / Dogbite

4
Campanelra & Toshi Mamushi / K.B.P

5
D.U.O / Wish Wash

6
Bes & DJ One-Law / U Can't See Me

7
Owl Beats feat.Yuksta-Ill / Time Less

8
Rhyda feat.piz? / Yah Yah Yah

9
Tonosapiens feat.Rockasen / SquAll

10
Fla$hbackS / Gladiator

「REPUBLIC」 - ele-king

 2012年12月1日。日本のオーディオ・ヴィジュアル・イヴェントのパイオニア「REPUBLIC」が遂に終焉を迎える。書籍「映像作家100人」とのコラボレーションなどでも多くの話題を呼んだ本イヴェントが初回開催された2007年5月から5年の月日を経て、多くの映像作家や、ミュージシャン、DJ、VJといったアーテイストに「音と映像」の新しい関係を提示してきた。そんな「REPUBLIC」も10回目で遂に最終回となりフィナーレを迎える。

 そんな、最終回となる今回は、もっともフラットで自由な表現に溢れており、ホームグランドである「WOMB」のDAY TIMEでの開催となる。

 出演陣も豪華で、「bonobos」や「OGRE YOU ASSHOLE」、「ハイスノナサ」、「ATATA」などのバンド勢に、今年最も話題を呼んだMCでもある「田我流」、ネクストブレイクを期待される「転校生」、巷で話題のガールズラッパーのニューカマー「泉まくら」などのフレッシュな面々も揃える。
 さらに、sasakure.UK、TeddyLoid、okadada、DJ WILDPARTYなどネットから新しい音楽カルチャーを発信する面々に、骨太のビートを生み出すトラックメーカーの「Fragment」、「Himuro Yoshiteru」、「SUNNOVA」に、「dot i/o (a.k.a. mito from clammbon)」、「aus」といったジャパニーズ・エレクトロニカの雄と「DUB-Russell」、「metome」、「Avec Avec」、「Seiho」などの新世代のエレクトロニカ・シーン牽引するアーテイストが一挙に渋谷に集結する。

 また、映像面も「伊藤ガビン」や「原田大三郎」などのレジェンドとともにVimeoでの映像が海外でも高い評価を受ける「yusukeshibata + daiheishibata」、「吉田恭之」、「Kezzardrix」。そして、日本を代表するメデイア・アーテイストの「exonemo」と「FREEDOM」で一躍世にその名を知らしめた「神風動画」に気鋭のデザイン・チームの「TYMOTE」、「FREEDOMMUNE」や「TOWER RECORDOMMUNE」のヴィジュアルを手がけた「yasudatakahiro」など新旧のTOPヴィジュアル・クリエイターが最後の宴に映像で花を添える。

 そして、その豪華面々がこの日にしか見れない極上のオーディオヴィジュアル・ショーケースを準備。また、前回好評を博した各フロアの映像演出もさらにスケールアップ。プロジェクターと液晶モニターを大量に特設で用意し、「WOMB」の全フロアを余すところなく映像で包み込む。もちろん長時間にわたる開催にあたってのホスピタリティとしてFOODもご用意。


2012年12/01(Sat)
REPUBLIC VOL.10~THE FINAL~
@WOMB
13:30-21:30(予定)
当日¥4,500 / 前売り¥3,500 ※ドリンク代別途

【SOUND ACT× VJ】
bonobos × TYMOTE
OGRE YOU ASSHOLE × TBA
okadada × exonemo with 渋家 (VideoBomber set)
ジェイムス下地 × 神風動画
dot i/o (a.k.a. mito from clammbon) × Kezzardrix
Daizaburo Harada -Audio Visual Set-
田我流 × スタジオ石×SNEEK PIXX
sasakure.UK × まさたかP
ATATA ×伊藤ガビン+hysysk+matt fargo
aus × TAKCOM
ハイスイノナサ × 大西景太
DUB-Russell×(yusukeshibata+daiheishibata)
転校生 × 大橋史(metromoon)
TeddyLoid × COTOBUKI
Avec Avec × 超常現象 [水野健一郎. 水野貴信 (神風動画). 安達亨 (AC部). 板倉俊介 (AC部)]
DJ WILDPARTY × SUPERPOSITION
Fragment × ogaooooo
shhhhh × 最後の手段
泉まくら × 大島智子
Inner Science × Takuma Nakata
Yaporigami × yasudatakahiro
Hiroaki OBA - Machine Live - × らくださん
metome × 吉田恭之
Himuro Yoshiteru × maxilla
Seiho (Day Tripeer Records, +MUS, Sugar's Campaign)× 子犬+UKYO Inaba
munnrai(TYMOTE/ALT) × leno
hiroyuki arakawa × Shinji Inamoto
Free Babyronia × NOISE ELEMENT
Licaxxx × DEJAMAIS

【SOUND ACT】
SECRET GUEST LIVE!!!
SUNNOVA
MASTERLINK
i-sakurai with passione Team B
specialswitch
Narifumi Ueno ( Ourhouse / Arabesque )
neonao(futago traxx)
M'OSAWA
SHIGAMIKI
MAYU
motoki
iYAMA(konnekt, MESS)

【VJ】
BENZNE by VMTT
VideoNiks
blok m
アサヒ
VJ PLUM

【映像装飾】
S.E.E.D

【プロジェクション コーディネート】
岸本智也

【FOOD】
浅草橋天才算数塾
錦糸町izakaya渦

【ORGANAIZED BY】
ishizawa(sonicjam Inc.)

2012/12/01(SAT)渋谷WOMBにて終焉を迎える「映像と音の共和国」を見逃すな!!

https://republic.jpn.org/

Schoolboy Q - ele-king

 USヒップホップ・シーンでは現在、ケンドリック・ラマーのメジャー・デビュー作『good kid, m.A.A.d city』が大きな話題を呼び、日本のラップ・ファンのあいだでもずいぶん騒がれているが、同じくブラック・ヒッピーのラッパーであるスクールボーイ・Qのセカンド・アルバム『ハビッツ&コントラディクションズ』も面白い。この作品のいちばんの魅力は、スクールボーイ・Qの、ダークではあるが、自嘲気味でとぼけた感じのするギャングスタ・スタイルのラップではないだろうか。

 スクールボーイ・Qことクインシー・マシュー・ハンリーは1986年、在ドイツの米軍基地に生れている。幼少期に母親とLAに移り住み、特別に貧しくも豊かでもない環境で育ったという。優等生でもあったが、12歳で地元のギャング、52フーヴァー・クリップスに加入する。日本のヒップホップ・サイト『YAPPARI HIPHOP』が『Complex』のインタヴュー記事を翻訳しているが、それに拠れば、スクールボーイ・Qがギャング業をもっとも活発にやっていたのは16歳から、逮捕されて刑務所に送り込まれる21歳頃までの間で、クラックやウィード、オキシコドン塩酸塩(医療用麻薬製剤)などを売って稼いでいたという。本格的にラップに情熱を傾けはじめたのも21歳の頃からだった。

 その後、2008年にインディ・レーベル〈トップ・ドウグ・エンターテイメント〉に加わったスクールボーイ・Qは、2009年にはケンドリック・ラマー、ジェイ・ロック、アブ・ソウルとともにブラック・ヒッピーを結成する。その間に、ミックステープを2枚発表、11年には配信限定のデビュー作『SetBacks』をリリースして頭角を現す。このデビュー作の発表はギャングを辞めてから4ヶ月後のことだった。ブラック・ヒッピーはギャングスタ・ラップのパイオニアの、同じくLAを代表するN.W.A.の再来であるという見方もあるが、スクールボーイ・Q自身は、ノートリアスB.I.G.とナズと50セントからもっとも強く影響されたと語っている。

 『ハビッツ&コントラディクションズ』の歌詞の対訳を読むと、ドラッグやセックス、暴力やビッチといったギャングスタ・ラップにお決まりのワードやトピックがずらりと並んでいる。 "レイモンド 1969"という曲名はレイモンド・ワシントンという人物が1969年にベイビー・アヴェニューズ(のちのクリップス)というギャングを結成した史実からきている。ベイビー・アヴェニューズは、結成当初こそブラック・パンサーのスタイルを継承して、自己防衛の信条を示すために黒い革ジャケットを着ていたというが、やがて血なまぐさい抗争をくり広げるようになる。スクールボーイ・Qが育ったのはそういった歴史と背景のある街で、"レイモンド 1969"では、「ここは恐怖で包囲されてんだ/死の臭いが立ち込める」とラップしている。さらに、冗談か本気か、「俺がギャングスタ・スタイルを戻しに来たのさ」("セクスティング")と意気込んでもいる。

 とはいうものの、セックス・ソングにしろ、セルフ・ボースティング(自慢話)ものにしろ、バイオレンスものにしろ、ラップのフロウから、スクールボーイ・Qのコミカルで、多彩な表情がみえる。凄んでみたり、好き者っぷりをひけらかしたりしているが、二枚目というよりは三枚目のノリで、それが面白い。英語が理解できれば、ブラック・ユーモアをもっと楽しめるのだろう。アブ・ソウルとぶりぶりのゲットー・ベース風のトラックに乗って、「ヤバイ、クスリが切れそうだぜ」だの「エクスタシーをキメてる女はイクのが早い」だの......ここに書くのを遠慮したくなるようなナスティーなラップをハイテンションで連発していく"ドラッギーズ・ウィット・ホーズ・アゲイン"は、要はボンクラ・アンセムである。ケンドリック・ラマーをゲストに迎えた"ブレスド"では唯一前向きで信心深いライミングをしているものの......、『ハビッツ&コントラディクションズ』(=常習と矛盾)というのはなかなか気が利いたタイトルだと思う。

 サウンド・プロダクションに、ポスト・ダブステップをはじめとするUKのクラブ/エレクトロニック・ミュージックやトラップ・ミュージックからの影響がうかがえるのもこの作品の魅力だ。『SetBacks』や『good kid, m.A.A.d city』のソウルフルでオーガニックなプロダクションとは対照的である。一曲目の"サクリレジアス"からして四つ打ちではじまるし、ジェネイ・アイコのセクシーなヴォーカルをフィーチャーした"セックス・ドライヴ"もUKのクラブ系のインディ・レーベルが出してそうな音だ。RZAを彷彿させる"レイモンド 1969"の陰鬱なトラックでは、ポーティスヘッドの"カウボーイズ"がサンプリングされている。そうかと思えば、マリーナ・ショウが歌う官能的なソウル・ミュージック"フィール・ライク・メイキン・ラヴ" をループさせ、ドム・ケネディとカレンシーとともにねっとりとフロウしていたりもする。

 2012年1月14日に配信限定で発表された作品のCD盤である今作に、エイサップ・ロッキーとコラボレーションした"Hands on the Wheel"が収録されなかったのは残念だが、日本盤にはボーナス・トラックが二曲入っている。ケンドリック・ラマーの新作とおなじく、同時代のUSのラップ・ミュージックを聴いているワクワク感が堪らなくいい。

 ロンドンとパリは列車で結ばれている。ユーロスターで所用2時間。時差が1時間なので往路は3時間、復路は1時間という幻惑を誘うタイムラグ。しかも海底を抜ける。その途方もなさに、果たしてパリに無事辿りつけるのかという幼児なみの不安が頭をよぎる。住んでいるロンドンの自宅で予約はウェブ上で済ませる。当日、無事に起床することができた。出国手続きを終え、無事列車にも乗れた。なんてことはない。新幹線のような快適な乗り心地。いつの間にか海を越えていた。地上を走っている時間のほうが長い。フランスののどかな田園風景を走り抜ける。と、パリのターミナル駅に着く。最初の驚きは、駅舎の壁面に途切れることなく続くグラフィティ。その後、5日間の滞在でパリはロンドンをしのぐグラフィティの街だと知る。

 ウェブ・マガジン『ピッチフォーク』のフェスティヴァルがパリで開催されるというのでチケットをとった。ジェームズ・ブレイク、ファクトリー・フロア、アニマル・コレクティヴ、ジェシー・ウェア、ラスティー......と話題のアーティストばかり。7月にシカゴで開催された同フェスティヴァルの様子をウェブで見ていたので即決だった。正直、ちょっとパリにも行きたい気持ちもあったし、フェスティヴァルでパリジェンヌがどんな風に狂気するのか見てみたかった。  同じ歴史を感じさせる都市とはいえパリは明らかにロンドンよりも落ち着いた街だ。そして悦ばしいことに食べ物が美味しい。いずれもロンドンがうるさ過ぎ、食べ物が不味い、とも言える。フランス語ができればパリは日本人にとって住みやすい街なんじゃないか。とはいえ、たった数日の滞在では計り知れない。街中にグラフィティが溢れかえっている。この意味するところは何だろう。アートの街だから許容されている? 確かにお金を出しても惜しくない立派な作品にストリートで出合ったりする。そして、スリの腕は世界一だから気をつけるよう散々言われた。しかもよく考えると、2005年にこの街では暴動が起きている。表面的に落ち着いているように見えても、他の欧州各国と同様に煮えたぎるものがある? でも、いち早く左派政権になったし、この落ち着きは余裕をしめしているのか......。などと色々と頭の中を駆け巡った。だけど街中を歩く人びとがオシャレで似合っていて、ただただ魅了され雑念もふっ飛ぶ。たった2時間の移動でロンドンとパリでここまで違うのか、と当然のことかもしれないが改めて驚く(ロンドンのコモン・ピープルは必ずしもオシャレじゃないから)。

 会場はパリの北東部に位置する〈Grande halle de la Villette〉。大きな倉庫を改造したのか、ちょうどサッカー・コートぐらいの広さで天井がやたら高いホール。フランスで『ピッチフォーク』が扱うようなオルタナティヴなロックやダンス・ミュージックがどこまで人気があるのか知らない。しかも、ほとんどが英語圏のアーティスト。ピークでも会場の6割ぐらいしか埋まらなかったので、すごく人気がある訳ではなさそう。でも、その分、会場のなかに逃げ場があって過しやすかった。耳にイギリス英語が飛び込んでくる。とくに2日目はイギリス人が多かった。結局、僕のようにユーロスターでロンドンから来たオーディエンスが多数いる印象。

 パリに着き、ホテルにチェックインしてから会場に入った。言葉が通じないので終止緊張していたせいか、疲れが出てボーとアルーナジョージなんかチェックしていたアーティストも遠巻きに見る。ティンバランドとミッシー・エリオットの出会いがいまのロンドンで実現されたら、と評されるこの異色ユニット。アルーナの愛くるしい佇まいが微笑ましかった。
 さて、いまはとにかくフジ・ロックでのライヴも終え話題になっているファクトリー・フロアに備えよう。アルコール片手にリラックスして会場を歩き回った。ロンドンのラフ・トレードが大きな物販ブースを出している。オフィシャルのバックをここで買う。片隅でジュエリーや靴なんかのハンドメイドの作品を扱ったフリー・マーケットも開かれている。オシャレ! いちいち立ち止まって見てしまう。そうこうしているうちにファクトリー・フロアだ。終止ストイックに展開するミニマリズム。退廃美はスロッピング・グリッスルのそれに近いが、さらに渇いている。この渇きは諦念に近いのか......。打ち鳴らされる音の粒の快楽に酔いしれる。どうしようもない寄る辺なさに身をゆだねる。恍惚とする......。
 その後、バンクーバーを拠点にするJapandroidsという謎のふたり組のロックバンドを見てポカンとしたり、The xx やSBTRKTのレーベル〈Young Turks〉からリリースのあるJohn Talabotで身体をほぐしたりしながら、ジェームズ・ブレイクに備えた。
 パリのジェームズ・ブレイクは都市のもつ気高さに演出され、いっそう高貴なものに映った。ヨーロッパを覆っているであろう無力感を一歩進めて絶望に至り、そこからの救済を希求しているような...、というと大袈裟? 不安定なトラックと彼の中性的な声が心の襞に分け入ってくる。見たことのない世界を見せてくれそうな予感に包まれる。
 午前1時頃、この日のヘッドライン、フランスのポスト・ロック・バンド、M83のやたらとテンションの高いライヴを横目にホテルに向かう。

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 2日目。午後5時開始。遅い朝に貴重なパリの1日を怠惰に過す。ルーブル美術館の近くにあるビルごとアーティストのスクワットになっている59 RIVOLIというスペースに行く。たくさんのアーティストの制作現場になっていて展示も無数にある。どれも個性的で目を惹く。街中で見かけたグラフィティと同じアーティストの作品もあった。1999年にはじまったスペースらしい。ヨーロッパではスクワットが違法ではない国がある。ちなみにイギリスでは2ヶ月前に住むことが違法になった。が、不思議なことに空いている建造物を一時使用することは違法になっておらず、まだスクワット・パーティなんかがある。
 少し遅れて午後6時頃開場についた。その日は目的がたくさんあった。まずはジェシー・ウェア。彼女を最初に見たのは5月にKOKOロンドンであったベンガのリリース・パーティだった。日本では考えられないが、ロンドンではダブ・ステップでモッシュが起る。DJも応酬してアオりにアオる。この日もそうだった。そんな、どちらかというと男くさい匂いが漂うパーティで、ジェシー・ウェアが登場すると変わった。たった1曲歌っただけなのに会場がしっとりとした雰囲気に包まれた。その後、ずっと気になっていたらジョーカーやSBTRKTと楽曲制作をしている歌手だと判った。ニュー・アルバムが発売される頃には、レコード屋のみならず駅の掲示板などにもポスターが貼られ、ちょっと盛上っていた。新作『DEVOTION』はイギリスのエレクトロニック・ミュージック・シーンを背景にしながら、しかし耳ざわりのよいソウル作品だ。ブロー・ステップのように過激/過剰に行きがちなシーンに淡々と距離をとっているとも言えるし、ただ自分の好きな音楽を黙々と追求しているだけにも見える。最近ではディスクロージャーと絡むなど趣味のよさ、立ち位置のうまさを印象づける。僕は新作をどう聞いたかと言うと、決して雰囲気がよいとは言えない不景気のロンドンで、ゆらぐことのないイギリスのアーティストとしての誇りのようなものを感じた。エイミー・ワインハウスは......あまりにもいまのイギリスの雰囲気を暴きだし過ぎている、と感じることもあるから。「DEVOTION=献身」が彼女を育んだミュージック・シーンに対するものであったら、それは素晴らしいことじゃないか。

 可愛い言葉づかいのジェシー・ウェア。肩の荷を下ろし一曲終わるたびに何やら語りだす。可愛い。歌いはじめると一気にオーラを身にまとう。特に凝った演出もなかったがその分、歌に集中できた。まだキャリアが始まったばかりのアーティストにありがちな衒ったところもなく純粋な歌がそこにあった。ジーンとする。
 続いてワイルド・ナッシング。80年代風、イギリスのギーター・ポップ・サウンドは日本人にとって聞きやすいがもはや"カルト"と評されている。ジャック・テイタム──実質、彼ひとりのバンドみたい──が、アメリカ人なのも共感できる。シンセも相俟ってキラキラしたギター・サウンドを、他国の過去の音に想いを馳せながら作っている感じ。わかる。新作『ノクターン』を愛聴していたのでライヴも楽しめた。なんだかんだいっても現代の解像度の高いサウンドとフェスの大音響の効果は心地よく、快感だった。

 ピッチフォーク・ミュージック・フェスティヴァルは個性派ぞろいのフェスティヴァルで、まったくノー・チェックでも意外なアーティストに巡り合う。例えばザ・トーレスト・マン・オン・アース。ボン・イーヴェルのツアーのフロント・アクトを務め知られるようになったというスウェーデンのアーティストだ。ボン・イーヴェルやベン・ハワードなんかの極楽系フォーク・サウンド。だけど、どこかボブ・ディランぽい。まとめると、現代スウェーデンのボブ・ディラン兼ボン・イーヴィル、その名もザ・トーレスト・マン・オン・アース。謎だが、謎めいた魅力があった。次に、初めて知ったけど欧米では結構知られているらしいロビンも強烈なシンガーだった。エレクトロニック・サウンドにのせ歌われるポップ・ソング。彼女独特のコケティッシュな魅力に溢れたステージ。どこか振り付けが80年代のアイドルっぽい。どうしても日本のアイドルを思い出してしまうステージをパリで、しかもピッチフォークのイベントで目撃するという倒錯感がすごかった。

 2日目のヘッド・ライナーはアニマル・コレクティヴ。新作『センティピード・ヘルツ』がこれまでの作品と一変していたので、ライヴはどうかと興味深く観た。新作の楽曲中心に進んでいく。リズムとサンプリングのおもちゃ箱をひっくり返したような躁状態が続く。サイケデリックなデコが虹色に怪しく明滅するステージのうえでたんたんと演奏したり機材をいじっている。変拍子や過剰なサウンド・エフェクトを駆使しながら不可思議な物語を感じるステージ。終盤は、これまでのアニコレのイメージどおりアシッドにフォークに展開し陶酔する。深夜2時近く、この日のパリの夜は時空が捩じれたまま深けていった。

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 さて3日目だ。またも遅い朝。昼食にパリに在住していたレゲエ・ライターの鈴木孝弥さんに教えてもらったアフリカ料理を食しに出向く。パリの南に位置する大通りブルヴァール・バルベス周辺はアフリカ人の街。その北側にあるセネガル料理屋シェ・アイダ。しかし...一向に見つからない。しばらく漂う。パリのアフリカ人街はヨーロッパ大陸に突然アフリカへの入口が出現したかのようで軽く混乱する。結局、見つからない。たぶん閉店したのだろう。何度か鈴木孝弥さんがこの店のメニューをお手本にして創った料理を東京で食して期待が膨らんでいたので、泣く。そのあと、ロンドンからの友人と落ち合い3日目のフェスティヴァル会場に向かう。

 この日、まずはプリティ・リングという4AD所属のユニットに度肝を抜かれる。声だけでなく佇まいもビヨークっぽいメガン・ジェームズと、均整のとれた体つきなのにラップトップに向かってひたすらヘッドバンギングするコリン・ロディックの男女二人組。クリック系のサウンドに浮遊感ただよう歌声。聴いているだけでひたすら気持ちいい。小さい体のメガンが時おりドラを打ち響かせるのでハッとし、ニヤっとする。
 3日目だけオール・ナイトだったのでお客さんも若く、オシャレ。ロンドナーだったら無造作にアーティストTシャツなんかで済ますところ、やっぱりパリッ子は違う。マフラーの巻き方や靴の合わせ方ひとつ違う。もしかして日本のクラバーに近いのかもしれないが、まあ、なんというか絵になる。パリッ子のファッションに憧れても、絶対に真似できない。さすが本場、なんて常套句を思わず心の中でつぶやく。ロンドナーよりも踊らないけれど、踊る姿が美しい。見惚れる。そして、この人たちのなかで踊っている自分はなんてオシャレなんだ、なんて自己満足。
 さて、このフェスティヴァルで一番楽しみにしていたグレズリー・ベアーだ。新作『シールズ』はバンド・サウンドの完成度と、楽曲としての先進性が同居する近年では希有な作品として聴いていた。これがいわゆるロックなのかどうかもはやわからないが、ロック編成の音楽の可能性みたいなものさえ感じていた。
 いたってクールに進んでいくステージ。サウンドに対して忠実でストイックな印象さえ受ける。しかし、だからこそ時おりサイケデリックに、またゴシックに展開するとき、音の渦に吸いこまれる。アンサンブルに酔い痴れ、コーラスワークの虜になる。
 しかしハイライトはグレズリー・ベアーではなかった。演奏が終わると、間断なくデェスクロージャーがはじまる。ピンとした空気が暴発して一気にパーティ・ムードへ。まだ20歳そこそこの兄弟のデュオ。"Tenderly"のようなUKガラージから、"Latch"のようなハウスまで気の利いたグルーヴが会場全体を覆う。うまい......と油断していたらジェシー・ウェア"ランニング"のリミックスが投下される。まるでドナ・サマーを初めてクラブで聴いたときみたいに、我知らず全身で踊っていた。

夜は長かった。トータル・エノーモス・エクスティンクト・ダイナソーズの変態的なエレクトロ・ポップに嵌ったと思ったら、グラスゴー出身のラスティーのDJセットにも終止引き込まれ、何度も雄叫びをあげる。このとき、客席前線の熱狂度はすごくて、オシャレなパリジェンヌが乱舞。なんというか、世界中どこにいっても変わらない。結局は、そういうことだ。

Chart JET SET 2012.11.27 - ele-king

Chart


1

三田格 / 野田努 - Techno Definitive 1963-2013 (P-vine)
およそ全250 ページ・カラー、テクノの名盤600枚以上のアートワークを掲載。各年代毎、最重要アルバムと最重要シングルを選びながら、エレクトロニック・ミュージックの歴史も読み取れます。

2

Atoms For Peace - Default (Xl)
Modeselektor率いる50weaponsからのデビュー12"は数分で完売。1st.アルバム『Amok』から、最前線Ukベースを消化した話題沸騰トラックが先行カットされました!!

3

Ame - Erkki (Rush Hour)
Kristian Beyer & Frank Wiedemannからなる"Innervisions"お馴染みの才人デュオAmeによる新作12"。"Running Back"主宰のGerd Jansonが監修したコンピ・アルバム『Music For Autobahns』の冒頭を飾る話題作が先行12"カットにて限定リリース!!

4

Juk Juk - When I Feel / Wars (Nommos)
Four Tetに見出され、主宰レーベルTextからデビューを飾った謎の新鋭Juk Juk。過去2作も爆裂ヒットした自主レーベルNommosからの第3弾12"が遂に登場しました!!

5

Poolside - Harvest Moon / When Am I Going To Make A Living (Poolside Music)
A面は『Pacific Standard Time』収録のNeil Young大傑作カヴァー。そしてB面はネット上で大人気を博していたSade名曲のメロウ・ディスコ・リエディット!!

6

Letherette - Featurette (Ninja Tune)
ご存じFloating Points率いるEgloのオフシュートHo_tepからデビューを飾ったUkベース・ディスコ人気デュオLetheretteが名門Ninja Tuneへと電撃移籍して放つハウスDjも直撃の1枚です!!

7

Slugabed - Wake Up (Ninja Tune)
お馴染みNinjaの天才Slugabed。名曲"Sex"を収めたアルバム『Time Team』に続いて、淡雪の如く舞う美麗シンセをまとったフィメール・ヴォーカル・ベース・ポップ歴史的傑作を完成です!!

8

Auntie Flo - Rituals (Mule Musiq)
チリアン・ミニマル新鋭Alejandro Pazのリリースでも注目を集めるHuntleys & Palmersの代表格Auntie Flo。傑作1st.『Future Rhythm Machine』に続く新作がなんとMule Musiqから登場です!!

9

Luciano - Rise Of Angels (Cadenza)
Mirko Loko Remixを収録、世界各地のフロアを盛り上げた"Rise Of Angels"が遂にシングル化!!

10

Miracles Club - U & Me / Ocean Song (Cutters)
エクスペリメンタル通過後のインディ・シンセ・ハウスの先駆者、Miracles Club。通算4枚目、Cut Copy主宰Cuttersからは2枚目となる12インチ!!

ICHI-LOW (Caribbean Dandy) - ele-king

偶数月第二月曜@The ROOM、奇数月第四火曜@虎子食堂等々のレギュラーでCaribbean Dandyはプレイ中。その他個人活動はTwitterの@ICHILOWをチェックしてください。

X'mas間近で毎年ヘビロテのアルバムの中からベスト10


1
JOHN HOLT - Happy Xmas (War Is Over) - Trojan

2
JOHN HOLT - Last Christmas - Trojan

3
JOHN HOLT - A Spaceman Came Travelling - Trojan

4
JOHN HOLT - Santa Clause Is Coming To Town - Trojan

5
JOHN HOLT - White Christmas - Trojan

6
JOHN HOLT - Blue Christmas - Trojan

7
JOHN HOLT - I Believe In Father Christmas - Trojan

8
JOHN HOLT - Auld Lang Syne - Trojan

9
JOHN HOLT - Lonely This Christmas - Trojan

10
JOHN HOLT - My Oh My - Trojan

Cero - ele-king

 街中がひっくり返ったような、東北地方の変わり果てた港町。その破壊のイメージが未だに私を離さない。比喩でもなんでもない、街は失われてしまった......と同時に、その街の記憶を持つ人びともまた、あるいは失われてしまったのだと思うと、奇妙な戦慄があった。完結してしまった喪失というものは、語り手を持たないものなのだと。
 私たちが放り込まれた「以後」の世界は、完結していない喪失が進行と回復を繰り返しているようなややこしい場所だ。もちろん、死や別れは最初から私たちの人生のオプションだし、その意味では何も変わっていないという言い方もできるだろう。だが、やはり、多くの人が見る世界の在り方が大きく書き換えられたのは間違いないと思う。
 その点、セロもたしかに、変わった。少なくとも、この新作『My Lost City』は、東京をもう以前とは違う(あるいは失われた)街と呼ぶことで生まれている。だが、ここには喪失を直視したことによって生じ得る重苦しさの類は、いっさいない。彼らは祝祭を継続する道を選んだのだ。いわば、現実に対する非服従としてのポップ・ミュージックを奏でている。喪失と、祝祭を、同時に引き受けることによって、それは高らかに鳴っている。
 
 "大停電の夜に"が持った奇妙な予見性、そして、『WORLD RECORD』(2011)がそれと同時に持った同時代的な切迫感との乖離。そのギャップが彼らを苦しめていたことを、私は知らなかった。「でも、その時、村上春樹が『海辺のカフカ』で「想像の世界においても、人は責任を負わなければならない」というようなことを書いていたなって、頭をよぎったんです。(https://www.kakubarhythm.com/special/mylostcity/)」――そう、セロは、より強力な物語を立ち上げることで、虚構の作り手としての責任を引き受けたのだろう。
 より大きな現実には、より大きな虚構を。"水平線のバラード"のア・カペラで導入され、以降、賑やかに、カラフルに、48分が目まぐるしく展開していく。何かヘヴィなものを振り切るように、ある種の切実さを持って、『My Lost City』は明確に祝祭性を志向する。現実からもっともっと遠く離れて。悲観や感傷ではなく、さらに大きな、情熱的なファンファーレで、「以後」の世界に生きる人びとを迎え入れている。

 音楽としてのスケールも遥かに大きくなっているように思う。はっぴいえんど、鈴木恵一、ジャズ、ファンク、合唱、テクノ、キューバ音楽......打楽器にしても、金管にしても、鍵盤打楽器にしても、1曲のなかでも目まぐるしくシャッフルされ、特に演劇仕立てのプログレッシブ・ポップな展開を見せる"船上パーティー"は中盤のハイライトとなる。
 また、セロ a.k.a. Contemporary Exotica Rock Orchestraというネーミングは実に的確で、チェンバー・フォーク的な緻密さと、ストリート・バンド的な豪快さを兼ね備えたムードがあり、何より、『My Lost City』からはたくさんの人の気配がする。スティールパンやトランペットで参加しているMC.sirafu、ドラムス、サックスで参加しているあだち麗三郎らは事実上のバンド・メンバーのようで、演奏のクレジットは賑やかなことになっている。
 そう、音楽を作ることがあまりにも簡単になったこの時代に、数分のポップ・ソングのために数十人が集まっている。その光景を想像するだけでも感動的である。ルー・リードのクラシック"A Walk on the Wild Side"(1972)をトロピカル・サイケ・ポップにリアレンジしたような"cloud nine"、合唱に包まれながら、幽霊船に乗って暗闇の中を突き進む"Contemporary Tokyo Cruise"、そしてアルバム本編の実質的なエンディングを飾る"さん!"の底なしの多幸感には、私は小沢健二を感じた。

 しかし『My Lost City』は、そこで終わらない(終わっていれば、いわゆる出来過ぎた「名盤」である)。"わたしのすがた"で、物語の主人公は現実の東京に戻っている。虚構の旅を終え、CDと文庫本でぐちゃぐちゃになった狭い部屋で、現実に思いを馳せる彼は、『My Lost City』を聴き終えたあなたそのものだ。そこで何を思う? 音楽で盛り上がったところで、「この街」は変わらない。そうした無力感とも取れる感情を吐き出し、『My Lost City』は、エレクトロニックな閉塞感とともに、ある意味では汚い終わり方をする。
 ポップ・ミュージックが多くの人を熱狂的にアップリフトさせる時代は終わったし、その不可能性に逆に陶酔するというシニシズムの時代も終わったのだと思うが、それを自覚した上で、個人以上/社会未満としての都市(シティー)の気分や気配を、そのまま音楽にしてしまうことを、セロは諦めていない。それでも、"わたしのすがた"が生まれなくてはならなかった(あるいは録音されなければならなかった)理由を考えると、なんともアンビヴァレントな気持ちになる、、、。

 少し話を変えよう。『My Lost City』が持つ意味について。筆者は昨年、「スモール・ミュージック」という言葉でこの国のあまり売れていない(だが素晴らしいと思える)音楽を形容したけれども、これは、かつて本誌編集長がロバート・クリストガウを引用する形で紹介した「セミ・ポップ」という概念とは少し違う。細分化に対して下位層に潜るのではなく、そこがどれほど狭い場所であれ、堂々とポップの可能性にベットする音楽――『ピッチフォーク』の表記に倣えばスモール・ポップ――の時代は、欧米ではアーケード・ファイアの『Funeral』(2004)で始まっているが、『My Lost City』はつまり、この国のインディ・ポップにおける始まりのはじまりである。
 また、地球儀を軽くスピンするようなその豊かな音楽性を踏まえれば、『Illinois』(2005)前後のスフィアン・スティーヴンスに対する「風街」からの回答とも言えるし、あるいは、90年代に『LIFE』があったのなら、私たちの時代にはこれがある、『My Lost City』はそういう作品だ。奇跡のようなポップの現象はもう、このさき生まれ得ないのだろう。だが、奇跡をともに願える仲間を、セロは見つけたようだ。それもまた、小さな奇跡なのではないだろうか。「いかないで、光よ/わたしたちはここにいます」("Contemporary Tokyo Cruise")――この祝祭は、きっと徒花ではないし、ひとりの天才が作り上げた孤城でもない。枯死していく風景の中に浮かび上がる、輝かしい宴の虚像。この時代を笑顔で生きようとする人びとに捧げられた、巨大な祈りとしての音楽が、ここにある。

TECHNO definitive 1963 - 2013 - ele-king

20世紀初頭の記憶から21世紀にかけての電子音楽の歴史を追う、計700枚以上のディスクを紹介するテクノ決定版。
現代音楽、ミュージック・コンクレート、イージー・リスニング、サイケデリック、クラウトロック、ダブ、ディスコ、シンセ・ポップ、ノイズ、インダストリアル、ヒップホップ、アシッド・ハウス、デトロイト・テクノ、レイヴ、ジャングル、ミニマル、ジャーマン・トランス、IDM、グリッチ、ブレイクコア、グライム、ダブステップ、ジューク…およそ100年にもおよぶエレクトロニック・ミュージックの軌跡。

interview with LOVE ME TENDER - ele-king

夜目が覚めて自分が最悪な人間だと思ったとき
思い出して欲しい
街は下水道やサーカスのように面白い場所だということを
ルー・リード"コニー・アイランド・ベイビー"


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 街を歩くのは楽しい。とくに夜更けから朝方にかけては。僕にiPodはいらない。頭のなかにはたくさんの音楽が鳴っているから。
 ラヴ・ミー・テンダーのデビュー・アルバム『スウィート』が完成した。彼らは正真正銘のシティ・ポップス・バンドだ。彼らの先行シングル「トワイライト」は、本当の意味での今日の渋谷の道玄坂の裏側の世界が描かれているが、アルバム『スウィート』はそれをさらに発展させている。ドリーミーでダンサブルなソフト・ロックをバックに、ロマンティックな週末の夜の片隅の出来事の断片、休日のドライヴ、そしてビルの谷間に輝く朝日を描いている。
 ラヴ・ミー・テンダーは、ドラムを叩きながら歌を歌っているMAKIを中心に、サブカル界隈では賞賛とディスのリツイートを浴びている鍵盤担当の高木荘太、ふだんはDJをやっているサックスのACKKY、ベースのTEPPEI、ギターのARATAの5人から成る。彼らは、渋谷......といってもあんまりおしゃれ感のない裏通りの、そのまた裏通りの雑居ビルのなかにあるDJバーを拠点に登場した。クラブ・カルチャーは、いまや欧米でも、ホーム・パーティやウェアハウス・パーティといったアンダーグラウンドな広がりを見せている。より、地下に潜伏しながら堂々と音楽をやっているという、逆説的な態度を示している。ラヴ・ミー・テンダーの本質もそこにある。

いや、もう、ルー・リードの"ワイルドサイドを歩け"の感じじゃないですか。(高木壮太)

"メスカリーター"からはじまっているのが良いと思ったんですよね。〈メスカリート〉という場所は、まあ、知る人ぞ知る秘密の場所であり続けたわけじゃないですか。それがこう、明るみにでることはどうだったんでしょう?

壮太:いや、もう、ルー・リードの"ワイルドサイドを歩け"の感じじゃないですか。

ハハハハ。もう、カミングアウト、カミングアウト(笑)! まあ、それはともかく、この10年というのは、クラブ・カルチャーがかたやアゲハのようなビッグ・クラブにになって、その片方でDJバーのようなものが増えていった10年だと思うんですけど、 ラヴ・ミー・テンダーはそういう、増えていったDJバー文化から出ていったバンドなんだろうなと思ったんですね。そういう意味で、"メスカリーター"からはじまるのはもっともだなと思いました。

壮太:いやー、僕も最初、"メスカリーター"といったときはびっくりしましたよ。いまさらなんか語ることがあるのかって。

マキ:はははは。

壮太:どうなんですか、ラヴ・ミー・テンダー=〈メスカリート〉になっているんですか? お抱えバンドのように。

いや、それはもうそうでしょう。モータウンにおけるファンク・ブラザーズみたいなものでしょう。

マキ:他にもバンド、いますけどね。

壮太:他にもいるけど......、俺たちなの?

マキ:そうなっちゃいましたね。

壮太:だったら光栄です。すごいバンドいっぱいいるのに。

マキ:ニビルブラザースでもミシマでもない。

壮太:〈メスカリート〉の名前を汚さないようにしないと。

マキ:汚さないように。先輩に怒られないようにね。

そこは意識しているんですか?

テッペイ:レペゼン・メスカってことですか?

そう。

テッペイ:そこは俺、逆ですけどね。

まったくない?

テッペイ:むしろあれを壊したいですね。もう最近はメスカって言わないようにしてますからね。

堂々と歌っているじゃない(笑)!

テッペイ:いや、前に若い子から、友だちに「メスカ行こうかな」って言ったら「危ないから行かないほうがいいよ」と言われたと聞いたこともあって、もう絶対に言いたくない。悪いほうにとらえられている。

マキ:ホントにね。

なおさら、そこは良いほうに解釈してもらわないとですよね。世間の評判を覆しましょうよ。

壮太:浄化作業ですよ!

アッキーはもう長年DJをやってるわけですが、DJバー文化についてどう思ってますか?

アッキー:それはね、耳が肥えている人、10人ぐらいの前でやることじゃないですか。すごいうるさ型の人たちの前で、がっつり10時間とかやる、みんな訓練をしているんで(笑)。そういうDJカルチャーはそれ以前まではなかったかもしれないですね。

奥渋谷だけじゃなく、下北沢にもあるし、いろいろありますよね。けっこう名前のあるDJが、10人や20人でいっぱいになってしまうような空間でDJをやっていますよね。

アッキー:あれもう、うるさ型の人たちの前で、どれだけ濃いものを聞かせられるかっていうことだと思います。

マキ:修行だよね。

アッキー:朝3時以降とか、狂っちゃいますからね。それでも自分は淡々とやらなきゃいけない。

マキ:時空がゆがむ瞬間というんですか。

アッキー:解像度の上がり具合が、朝3時以降、クラブとはちょっと違う。クラブはだいたい5時や6時で閉まってしまうけど、DJバーは昼までやったりするじゃないですか。

たしかにね(笑)。

マキ:そこからさらにどん欲な人だけが残るっていうか。

アッキー:だからそれを毎晩マキちゃんとかが見てたから。

壮太:渋谷で一番遅くまで開いてる店。

アッキー:やっぱり、僕はDJバーに聴きに行くのが好きですね。

アラタ:たんに年齢層が、そのひとたちが高くなってきてるっていうのもあるんじゃないですか。

それも一理あるけど、だけどクラブはクラブでやっぱりたくさんできてて、そっちが好きなひとはやっぱりそっちに行ってたから。かたや、それとは違ったベクトルでもって、DJバーがたくさんできたなあと思って。

壮太:たとえば、ひばりが丘なんかにもDJバーが2軒あるんだけれども、そこはDJブースがインテリアになってるらしいんですよね。でも、DJバーといっていい流行ってる小バコは昔からあったでしょう。2丁目の〈ブギー・ボーイ〉とか。吉祥寺の〈ハッスル〉とか。

2丁目の〈ブギー・ボーイ〉って懐かしいねえ。

壮太:店にキースへリングがいてビール奢ったらTシャツに絵を描いてくれた。

ゲイ・ディスコですよね。

アッキー:新宿だったじゃない、文化的に。でもいまは、東京のなかでも吉祥寺、渋谷、って分散してきてて。

このあいだ三茶がすごいって聞いたよ。

アッキー:三茶もあって。そういう広がりっていうのはここ10年なんじゃないですか。で、地域性によってノリがぜんぜん違うんですよね。それが不思議、なんか(笑)。

壮太:昔何かだった店がああなってるの? 昔の若者はどこで溜まってたの? DJバーに来てる若者は。

アッキー:いや俺クラブだったからわかんない。DJバーとか行ったことなかったから、昔。

テッペイ:小バコなんじゃないの。10年前から、〈グラスルーツ〉に似たような店がいっぱいできたような感じがする。

アラタ:ああ、〈グラスルーツ〉ね。

壮太:〈グラスルーツ〉も最初ヒカルくんが回して誰もいない、客もいないって感じだったけど、平日でもみんな店にちょこちょこ行くようになって、超盛り上がるようになって。その後に三茶のバーもできたしさ、みんな繋がってたじゃない。〈グラス〉と三茶ってとくに。で、それのチルドレンな感じでしょ。

アラタ:〈フラワー〉とか関係ないじゃん、でも。あそここの間14周年で。〈グラス〉が15周年で。

壮太:そうだね。

〈フラワー〉って何?

アラタ:三茶の重要なバーなんですけど。六本木のとは違って。

ああ、聞いたことある。

アラタ:ポンタ秀一とかもよく来るらしくって。

テッペイ:〈グラス〉とか三茶で言うと初期の〈DUNE〉じゃん。小バコで盛り上がるみたいな。

メンバーのみんなは、どちらかというとDJバー的な密室的な、濃い空間が好きで。

アラタ:おしゃべりが好きっていうのがあるかもしれないですね。

マキ:おしゃべりですね、みんな。

テッペイ:テクノとかハウスとか、昔のクラブとかだと住み分けがあったかもしれないけど、DJバーだとハードコアのTシャツ着てテクノで踊るとか、そういうのを見て「お、カテゴライズされてなくて超おもしれー」と思って。デカいレイヴ行くよりも、そっちのほうが早いんですよ。ひとが集まってるから。

なるほどね。いま地方にもほんと増えているよね。それはあるシーンを形成しつつあるのかなという感じがするんですけど。でも、今回のアルバムの1曲目を"メスカリーター"にしたのはなんでなんですか?

アラタ:チルドレン・オブ・メスカリートとしての誇りじゃないですかね。

宣言というか。

壮太:いや単純に曲調なんじゃないの(笑)?

はははは。

壮太:メッセージ性なんかないでしょ(笑)。

マキ:あれはすごくわたしの気持ちが入っていて。

テッペイ:ライヴでもいつも1曲目でやっていて。

マキ:そう、なんか1曲目ぽい感じがして。

壮太:曲はデモ・テープの並びの通りなんですよ。デモ・テープに耳が慣れちゃったから、もうこれでいいや、みたいな。計算してないですね、この順は。

"ロマンティックあげるよ"がボーナス・トラックみたいな。

マキ:みたいな扱い。

壮太:俺はずっと反対してた、最後まで。

マキ:ははは、外圧が(笑)。

こうやって意見が分かれたとき、誰がまとめるんですか?

アッキー:まとまんないですね。まとまんないままぐちゃぐちゃーと進行していく。それが面白いんじゃないですか(笑)?

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時空がゆがむ瞬間というんですか。(マキ)
解像度の上がり具合が、朝3時以降、クラブとはちょっと違う。クラブはだいたい5時や6時で閉まってしまうけど、DJバーは昼までやったりするじゃないですか。(アッキー)


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神泉とか、その辺が曲のなかで舞台になってるじゃないですか。これはマキちゃん個人のものなのか、それともバンドで共有しているものなんですか?

マキ:バンドでも共有してるとは思いますけど、わたしはすごく濃い感じであの街にいたんで(笑)。どうしてもそういうワードが出ちゃいますけどね。

奥渋谷系とかって書いてるけど、実際は――。

壮太:神泉ですからね。渋谷じゃないですからね。

まあそうですよね。あの辺で、〈メスカリート〉やラヴ・ミー・テンダーの影響で何か生まれたりしたんですか?

マキ:何にも生まれていない。

ははははは、砂漠として(笑)。

壮太:巨大すぎて。ブラック・ホールだから。

マキ:ちょっとヘッドショップとかで、"マリフレ"がかかるぐらい。

一同:はははははは!

マキ:みんなにサンプルをこうやって渡してたから。

壮太:富裕層が朝3時ぐらいに物凄く狂ってるのを見てびっくりしたんですけどね。

アラタ:あと道玄坂が観光地化してるよね。

テッペイ:あそこ日光みたいじゃん、もう。

アラタ:黒人の人たちがタクシーのバンパーの上に乗って跳ねてたり、酔った白人のスーツの人たちが「俺は大使館職員なんじゃー」っつって警察官に絡んでたりするのを見たりすると、「敗戦国だなー」と思って。

はははははは!

テッペイ:たぶんまだ見れてない部分がいっぱいあると思う。うちらはたぶん、けっこうピースですよ。あんまり暴力とかなくて。もっと怖い部分とかあると思うし。

いやいや、でもみなさんじゅうぶん見てらっしゃるんじゃないですか。これはオフレコだけど、それこそ小林とかがさ、得体の知れないカラオケ・バーから悪酔いした客を引き連れてきて、緊張感が走ったり。

壮太:それはピースのほうですね。

テッペイ:アリのほうですね。

でもわけわかんないじゃない(笑)。

マキ:わけはわかんないですけど、受け入れてねじ伏せるみたいな感じで、けっこうピース。まとまりますね。あんまり暴力とかはね、3年に1回ぐらいしかないよね。

テッペイ:最近はさ、だって合法系はみんな暴力に行くじゃん。

まあその話は後でしようかなと思ってたんですけどね。でもバーってお互いの距離感が近い分だけ、いい面もあるけど、逆に言うと、それこそ一見さんという言葉があるように、入りづらいっていうのがあるじゃない?

壮太:どうしてもね、バーはそうじゃないですか。常連はお互いの悩みごとや弱点を知ってて仲良くなれるんじゃないですか。一回そういうイニシエーションを経ないと、常連にはなれませんね。入りづらいと言えば入りづらいですよ。俺も〈メスカリート〉とか絶対ひとりじゃ行けないですよ。

テッペイ:みんな一見さんじゃん、最初は。

アッキー:いやでも、誰かに連れて来られるんじゃない?

マキ:わたしも誰かに連れて来られて、すごい勢いでバーンってドア開けたのが最初なんですよ、やっぱり。すごいベロベロで。もう2回目場所も覚えてない、みたいな。

じゃあマキちゃんも偶然入った?

マキ:そうですね。その前にほかの〈メスカ〉のパーティでまあいろいろ出会って。

壮太:俺もコバに「中途半端な店があるから行こう」って言われて。

(一同笑)

アッキー:海の家からずっと繋がってるんだよね。

マキ:わたしも海のパーティが最初。

アッキー:そのときぐらいから、だんだんこういうゆるいサークルというか、いまの仲間ができていった感じがする。

壮太:〈スプートニク〉ができる前に、あの場所でパーティやってたから。2000年ぐらいの話なんですけど。

そうなんだ。誰が主催してやってたの?

壮太:コバがやってたのかな。

アッキー:でももう〈スプートニク〉なんじゃない? それって。たぶんそれの流れだよ。

でも、音楽をやるっていうのは、ある意味バーとは逆ですよね。もうちょっと不特定多数に投げかけるものじゃないですか。バーの閉鎖感とバンドとの開放感と、っていうのはどうなんでしょうね。

壮太:でもバーはあくまでも使い勝手のいい部室として使ってるから。

ははははは。

テッペイ:いや、むしろ逆ですよ。それを変えたくて、いま帯でDJ入れてるんですよ。同軸にしたくて。いままでギャップがありすぎたから。

アッキー:それ〈火曜メスカ〉でしょ?

テッペイ:そう〈火曜メスカ〉の話。ほかの曜日は知らないけど。

〈火曜メスカ〉って?

アラタ:火曜だけ俺らが〈メスカ〉を開けてるんですよ。いま俺とテッペイなんですけど。まあ部室状態で。

テッペイ:1時とかに開けてたから、「それヤバい」っつって、せめて午前の前から開けるようにして。23時とかに開けて、DJもふたりぐらい呼んで、実験的にやってます。

壮太:社会性を持たせたくないってこと?

はははは。

マキ:社会性って(笑)。

だいたい僕の世代だとバーって「ぼったくりバー」っていうイメージがあるからね。中途半端に行ったらヤバいっていう。

マキ:たしかに、いくらかわかんないし。

バンドがデビューしたのが去年ですよね。で、お店を中心にしてみんながいて。この10年に街っていうのはどういう風に様変わりしたと思いますか? 

マキ:変わったのかなあ......。

あんまり思わない?

マキ:自分も変わっちゃってるから(笑)。

いや(笑)。だってさ、昔はさ、平気で公園通りの雑居ビルに個人商店が作れたわけだけど。

マキ:たしかに。自分も10年でだんだん奥のほうに移動してるかもしれないですね、行動範囲が。

壮太:駅の近くとかチェーン店しかないわけですよね。で、駅から離れるにつれて個人商店が増えていくっていう構造なわけでしょ、繁華街って。

その離れる距離がどんどん広がってるよね。

壮太:奥に行けば行くほどディープになるという。どこでもそうなんじゃないかな。新宿でも池袋でも。駅前は和民とかケンタッキー・フライドチキンとか、なんかそういうのばかりで。奥のほうに行くとだんだん変なバーが出てくる。

アッキー:でも職質の回数は増えたよね。

マキ:奥のほうは増えたよね。

壮太:〈エイジア〉の通りは渋谷署のボーナス・ステージですよ。

はははははは!

壮太:マリオの地下の面みたいな。コインざくざくの面。

マキ:あそこは防犯カメラがないから。ラブホ街って、だからおまわりさんがすごい多いの。

壮太:なるほど。

アッキー:スケボーで街を移動できなくなりましたね。

そういう意味で言うと、街から猥雑なものをどんどん排除しようっていうのがこの10年であったと思うんですけど。たぶん〈メスカ〉なんかはそういう砦となって(笑)、ふんばっているんだろうなと。

マキ:でも不思議だよね。何にも起こらないっていうか。

壮太:〈エイジア〉の通りみたいなプラスイオンがガンガン出てるとこに行くと、ちょっともう。そういうときはBunkamuraの入り口に行って、Bunkamura見ながらタバコ吸って、「俺はスノッブ、俺はスノッブ」って思う。

一同:ははははは!

プラスイオンって(笑)。去年『トワイライト』を出して面白いリアクションはありましたか? 

壮太:ぜんぜん知らないライヴ・オファーが増えましたね。全部アウェーで。

テッペイ:夜が合うって言われる、ツイッターとか見てる感じだと。

いや、そりゃそうでしょうね。

テッペイ:いや、昔「海が似合う」とか言われてたんで。

アッキー:ええー、そんなことないでしょ。

マキ:そんな時代あったの?

テッペイ:実際海とかでやってたじゃん。新島とか。

アッキー:知らないバンドと対バンすると、びっくりする。

アラタ:でも、クラブの夜中でバンドがうちらしかいなくて、DJとかじゃなくて、たとえば〈新世界〉とかで夕方から夜にいると、知らない客層がいて、それはすごい新鮮。

ああー。〈新世界〉のお客さんなんかはどうです? けっこう受け入れられてる?

アラタ:世代が近いのか、意外とMCがウケる(笑)。あともっと若い世代もいて。

マキ:若いよね。

アラタ:呼ばれて行くと、意外と対バンで面白いのがいたりとか。

アッキー:イン・ジャパン(Inn Japan)とやったときとか、面白かったですね。

イン・ジャパンって?

アッキー:高円寺の〈クラブライナー〉っていうけっこうちっちゃいライヴハウスがあって、イン・ジャパンって言うバンドがいて。

アラタ:サブカル臭が強い感じ。

壮太:メタ・ヘヴィメタ・バンドですね。

※小林=コバ(渋谷で汚い遊びをしている人でこの人を知らなければモグリ)

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何にも生まれていない。(マキ)
巨大すぎて。ブラック・ホールだから。(高木壮太)
ちょっとヘッドショップとかで、"マリフレ"がかかるぐらい。(マキ)


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自分たちよりも若い世代のリアクションなんかはどうでした?

壮太:ほとんど若いですよ、どこ行っても。

テッペイ:うーん、でもウケるのサブカル系ばっかっすね、なんか。

(笑)。

テッペイ:ほかに見るものがないからこっちを見てくれてる、みたいな。〈メスカ〉といっしょだな。メンヘラの最終砦みたいになってるという。

アラタ:だからジャズトロニカにいるような綺麗なお姉さんはいないよね。

テッペイ:そう、いない(笑)。

アラタ:客層が羨ましい、ほんとに。

テッペイ:一瞬かわいい子だとしても、なんかここ(手首)に巻いてたりとかする感じでしょ(笑)? だから勘繰っちゃうよね、全員。

アッキー:OLが買わないってこと?

アラタ:OLはジャズトロニカ。

でも、これだけ危うい言葉を使ってたら、それはやむを得ないというか。それは敢えてわかっててやってるでしょう?

アッキー:わかっててやってるところも、個人的にはありますよね、やっぱり。

それは手ごたえとして、伝わるものなの?

アッキー:伝わってるとは思うんですけど、誤解してるひとが多くて。

どういう風に?

アッキー:壮太くんの人格イコールうちのバンドみたいな。

はははははは!

アラタ:それは違うっていう。

壮太以外:それは違う!

アッキー:でもそれを考えると、壮太くんはいまサブカルの砦なんじゃないかっていう。それは違うって言ってますけどね。

テッペイ:かあちゃんから「あんたのバンドのひと、ドラッグの話しかしないけど」とか言われて。

壮太:(爆笑)

えっ、そんなこと言われたの!?

テッペイ:それ親父の還暦祝いのときで。

でもお母さんがそこまでわかるってすごいよね!

テッペイ:だからラヴ・ミー・テンダーで検索すると、壮太くんのツイッターが出てくるらしくて。ツイッターのやり方までは知らないと思うんだけど、見れるのは見れるじゃないですか。そのせいで、じいちゃん家住めなくなったからなあ......。

アラタ:ははははは! そうなの(笑)!?

テッペイ:だってオッケーが出て、その次の日いきなりダメになったから。

アラタ:でも壮太くんの荷物は置いてあるっていう。

壮太:知らないっすよ。

テッペイ:そうやって情報を得るのが、いまはいろんな入り口があるじゃないですか。そうなっちゃうのはしょうがないんですよね。それはそれで面白いんですけどね。そういう広がり方をしていて。

そこでどのぐらい伝わるかっていうのは難しい話だなとは思うんですけど。

壮太:いちばん反響があったのはele-kingですよ。でもあれ音楽の話してないですけど(笑)。結局だから怖いもの見たさとかそういう感じで(笑)。

いや、そんなことないですよ(笑)。「コード進行が好きで」とか「細野さんが大好きで」とか、ちゃんと話してるよ。

マキ:ちょっとだけありましたね。

壮太:それがちょっとしかないからそこが映えるんですよ(笑)。

いやいや。めちゃくちゃ音楽の話してたよ。

壮太:ひひひひ。

でも普通、アレじゃないですか? ここまであからさまにドラッグねたを表現するっていうのはさ。ほかにそういうバンドがいないからでしょう?

テッペイ:いや意識してないですよ(笑)。

壮太:今回はしませんよ。もう卒業しました。

アラタ:うちのバンドは合法ドラッグ・覚醒剤は禁止ですから。

マキ:はい、そうですね。悪いものはちょっとやめていこうか。

なるほどね。シングルほど直球な言い回しはしてませんが。でも今回は控えめながらも、相変わらずそのスタンスは貫いてるなっていうふうに思ったんですけど。

テッペイ:曲もそうですね。ぜんぶなんかこう、中和した感じですね。たぶん、いままでよりも。

あくまでもラヴ・ミー・テンダーの確固たる主題なわけでしょう?

アラタ:いや、ぜんぜんそんなことは......(笑)。

マキ:ないですよね。

テッペイ:でもわかんないよね。次のテーマはもしかしたら子どものことばっかりになっちゃうかもしれない。

マキ:そうなっちゃうかもしれない。いやでも、出産こそドラッグかもしれないんで。

ああ、それはほんとにそうらしいよ。

マキ:それを期待してる。気持ちいいならやってやる! みたいな。

男性陣:(爆笑)

その前に究極の痛みを乗り越えての気持ちよさらしいですけどね。

テッペイ:デトックス(笑)。

マキ:デトックスで(笑)。

壮太くんみたいな、肝の据わったひとはともかくとして――。

壮太:いや、肝据わってないですよ。

ははははは。

壮太:俺ここ3年でうろたえてる姿を見られてるんで。

テッペイ:それ女関係だけでしょ? 女関係以外はすげー肝座ってますよ(笑)。

はははは(笑)。自分たちより下の世代からどういうリアクションがあったの?

アラタ:あるのかなあ......?

テッペイ:ライヴのあとにブログを書いてたのがあって、たぶん若いやつだと思うんだけど、そこには「演奏はすごい良かったけど、怖かった」って。

はははははは。

テッペイ:たぶん免疫がないひとから見たら、見た目どうこうじゃなくてオーラみたいなのがダメみたいで。だからそういうひとは次ライヴ来ないのかなあと思っちゃって。演奏はいいんだけど、うーんみたいな、そういうのはあるのかなって。

壮太:わかるわかる、でも。怖いって言われるよ。ただ年がいってるからじゃないの?

テッペイ:うん、それもあると思う。

それはどういう意味なんだろうね。

壮太:感情移入ができない。

マキ:ふふふふふ。

昔で言うと、スピード・グルー&シンキというかね。

テッペイ:免疫がないものに接すると、さいしょパーって来るじゃないですか。わーって。そのあとにそれを好きになるか嫌いになるかは、そのひと次第だと思うけど。

アラタ:つけ胸毛じゃなくて、つけリストカットみたいにしたほうがいいかもしれない、うちらは。

壮太:くくくく。

あとはパロディもあるわけでしょう? それを嗤うっていう。

アッキー:根本的にユーモアっていうのはすごくあるかもしれないですね。シリアスというよりは、なんちゃって感は。

なんちゃって感はすごくあるよね。だってHBでやってるマキちゃんと、ぜんぜん別なわけだから。こんなにメンバーに個性の強い方が集まっていて、レコーディングはうまくいったんですか?

壮太:いきました。

マキ:はい。でも出前がちょっとね。

テッペイ:壮太くんがピザがいいって言い張って、ほかのひとが違うっていう。

そこでもめるんだ(笑)?

アッキー:マキちゃん魚ダメだから寿司もダメだし。

マキ:出前問題がけっこう大変でしたね。

前に2枚を出したことによって、自分たちで自信を得たことはあったんでしょうか?

テッペイ:技術的なことですけど、3作ともエンジニアが違ったので、いままでのふたりも良かったんですけど、メリット・デメリットがあったから、今回それぞれ自分の楽器に関しては録りやすくなったと思うけど。自分の音をこうしたほうがいいっていうのがわかったんで、そこは早かったと思う。

マキ:もともと時間もないし、そういう意味ではけっこうどんどんどんどん進めていけましたけどね。

アッキー:やっぱ週1でリハーサルに入ってたのは良かったと思ってますけどね。週1で、4時間。

マキ:部活っぽく。

歌詞はどうなんですか? 

マキ:そうですね。日々の生活のなかではっと思いついたことを書きとめて。

"リバウンド"も。

マキ:まあそうですね。

テッペイ:あれはもう"DIET"のアンサー・ソングを作ろうっつって。

ああ、なるほどね。"ムードウーマン"とかね、いいですね。これムードマンへの返答として(笑)。

テッペイ:まったく意味ないです(笑)。ムーディだからじゃないですか。

壮太:俺の作った映画にムードウーマンって出てくるの。架空の人物。

マキ:そうそう、あれに出てくる。

ラヴ・ミー・テンダーを面白がってくれればいいなと思うんで、怖がられたっていうのはちょっと残念だなと思って。

マキ:あと怒られたりとか。

怒られるっていうのは何なんですか?

アラタ:どこのイヴェント行っても「こんなのめんどくさいよねー」とか言いながら、結局最後まで残って飲んでて。スタッフからしたら「早く帰んねーかなこいつら」みたいな(笑)。もうベロベロになってて。

アッキー:電気がバーッとついて「早く出てってください」っていう(笑)。

マキ:「いつまで飲むつもりなんですか」みたいなね、多いよね。どこでも。

テッペイ:楽屋で怒られたこともあったもんね。ステージで弾き語りか何かやってて、「静かにしてください」って。楽屋でうちらで盛り上がってて、声が全部なかに漏れてたみたいで(笑)。

アラタ:でもそれはお店の問題で。

テッペイ:ねえ?

アラタ:それを「静かにしろ」っていうのはおかしいでしょう。

マキ:いや、迷惑でしょ(笑)。

ははははは。

アラタ:〈FEVER〉の楽屋は最高ですね。

もうちょっと軋轢を起こすのかなって思ったんですよ、僕は。日本は冗談が通じないじゃないですか。冗談を、わりと真顔で怒ったりとか、笑ったら怒ったりとか。

マキ:怒られてますね。

テッペイ:いやあ、一番コアな部分は突かないようにしたいですよね。壮太くんがやりそうだけど。

なるほどね。壮太くんはそれを狙ってるでしょう?

テッペイ:壮太くんはうまくやってるけど、でも俺らがストッパーの役ですよね。たまにそれをぶっ刺しすぎてるから、「そこはやべえ」っつって(笑)。

壮太:デモの映像を使ったPVとか、すごい叩かれましたね。

マキ:そう、叩かれましたね。炎上しちゃって。

テッペイ:違法のモデルガンを3丁持ってて。しかも道玄坂の交番の前で撮ってたから(笑)。

だははははは。

アラタ:それデモじゃないじゃん。

マキ:それは"メスカリーター"だ。

そういうのは、バンド内では「しょうがないねー」っていう感じですか。

マキ:(笑)まあいっかー、みたいな。

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わけはわかんないですけど、受け入れてねじ伏せるみたいな感じで、けっこうピース。まとまりますね。あんまり暴力とかはね、3年に1回ぐらいしかないよね。(マキ)
最近はさ、だって合法系はみんな暴力に行くじゃん。(テッペイ)


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自分たちがやろうとしてることと、世のなかとの距離を改めて感じたところはあるのかな?

壮太:ライヴハウスとかでやりづらいですね。

ほう。なんでですか?

壮太:昔から嫌いなんですよ、ライヴハウスが。システム自体が。

それは音響的な問題?

壮太:いや音響的な問題じゃなくて。だってお金払って行かないでしょう、ライヴハウスに。「今日ライヴでも観ようかな」って。自分の知り合いのバンドが出てるなら行くようなもんで。本来は「ちょっと音楽でも聴きながらビール飲みてえな」ぐらいの感じなのに。

アラタ:アメリカとかね。

マキ:うん、そういう風に入りたい。

壮太:そうじゃなくて、なんか貸しスペースみたいになってるから。

テッペイ:客も下手したら入れ替え制みたいになってるもんね。

壮太:興味ないときのお客さんって、エレベーターの階数表示見てるみたいな表情でそのバンド見てるじゃないですか。「耳栓しろよ」っていう。ああいうのイヤですね。

クラブは雑多なひとが集まるから、そこはホントにライヴハウスとの違いだよね。

壮太:そうなんですよ。お客さんと一緒の高さでやって、俺たちが演奏してるときもお客さんがバラバラの方向向いて踊ってるみたいな状況のときが一番好きなんだけど。

マキ:うんうん。

ラヴ・ミー・テンダーにとって、もっともコアにあるものというか、中核を成すものは何だと思いますか?

アッキー:マキちゃんじゃないですか、やっぱり。

ほう......いやそれこのあいだも言ってましたよね。じゃあマキちゃんの次は?

テッペイ:最初はアフター・スクール感、放課後の感じって言ってたよね。

壮太:自分たちでもわからない。話し合ったこともないし。

「こういうことを歌ってるけど、ドラッグ・ソングのバンドだとは思わないでほしい」と言ってるわけじゃない? 

壮太:バンドが音を紡いでいるところ。バンドの部活感。その、何て言うんですかね。バンドとはこういうものですよ、というものを見てほしいですね。

バンドの部活感?

壮太:何て言うんですかね、典型的なバンドだと思うんですけど。集まってアンサンブルするときにどんなことが起こるかっていう。すべて起こってますから。

アッキー:誰かが大統領じゃないっていう感覚というか。誰かひとり出てるわけじゃないっていうか。

バンドの面白さっていうこと?

アッキー:マキちゃんはすごく象徴的なんだけど、演奏とかそういう部分で言うと、全員が同列というか。

アラタ:バンドやってるのが楽しいっていうことじゃないですか(笑)。

テッペイ:楽しそうに見られれば一番いい。

でもマキちゃんはHBもやってるわけだから、ラヴ・ミー・テンダーやらなくてもいいわけじゃないですか。

マキ:あ、そうですね、あはは。

(一同笑)

じゃあHBとラヴ・ミー・テンダーの違いは何ですか?

マキ:違い。違いはもう......それは全然違いますね。ギャル・バンドと。

アッキー:あれはやっぱり女子高でしょ。

マキ:女子部。

でも世のなかにはすごくバンドが数多くいるわけじゃないですか。ラヴ・ミー・テンダーは存在する必要はないじゃないですか。

アッキー:存在してないのかもしれないです。

(笑)ほら、これはCDの売り上げに直結する質問をしているつもりなので。

テッペイ:そうやって外向いちゃうとキリがないじゃないですか。

いいじゃないですか(笑)。

壮太:どうなんですか、アンディ

いやアンディはアンディなりに解釈してるんだから(笑)!

マキ:アンディが言う通りなんじゃないかな(笑)。

アラタ:でもまあ、たとえば下北で演劇系のひとたちとミュージシャンのひとたちをざっくり分けると、こういう言い方すると悪いけど演劇系のひとたちは頭でっかち。芝居論の話をしたりとか。ミュージシャンのほうがもっとバカというか、考えてないっていうと語弊があるけど、ほんと楽しいからやってる。快楽主義的な傾向が強いというか。

マキ:そうだよね。

アラタ:あるじゃないですか、そういうの。

はいはい。

マキ:終わらない討論を朝までやってる感じ。

そうそう。

マキ:そういうのじゃない。もっとくだらないことで朝までいるっていう。

アラタ:楽しいとしか言いようがない。

マキ:そう、楽しいからやってる。

アラタ:ほかのバンドとの差別化ってことで言われちゃうと、まあどのバンドも楽しいからやってんだろうなっていう。

アッキー:でも洗練されたポップ・ミュージックをやりたいっていうのが......俺はあるんだけどどうなの?

それすらも共有されてない(笑)。

アラタ:まあ洋楽志向ではある。

アッキー:それを通ったAOR感みたいなそういうことが。

AOR感はあるね。

アッキー:日本独特のポップスもあるじゃないですか。僕は80年代の終わりぐらいから見てるけど。そういうのはちょっとねじれ度が違うと思うんですよね。たとえばなんだろう、ボ・ガンボスとかフィッシュマンズとかが残したものを、そのまま置き換えたって子たちもたぶんいたりして。でもそことは違うっていうか何ていうか(笑)......。言いづらいな。

アラタ:AORとかそういうので言ったらさ、流線形とかキリンジとかのほうがそうかな、って。あれよりもうちょっとうちらのほうが綻びがあるっていうか、何だろうね。自分たちのことを言葉にしようとすると難しい。「どんなバンドやってるの?」って言われたら答えられない。

テッペイ:そう、俺も言えない。

アラタ:ざっくり歌ものメインでインストもある、みたいな(笑)。

なるほどね。どうですか、壮太くんは?

壮太:いやだから、奥渋谷系ですよ。渋谷の奥のバーで醸成されたもの。実際そうなんだから。それがどういうプロセスを経てそうなったかはちょっと説明できないですけど。そう思ってくれたら。メンバー募集で集まったバンドでもないし、ここでしかないケミストリーがあったわけで。そうとしか言いようがないですね。

テッペイ:まだ途中だからね。

壮太:バンドだけが落下傘で落ちてきたわけじゃなくて、周りの人脈とか細かいバー同士の繋がりとか、そういうのが全部くっついてる。ファミリーを形成してるわけじゃないけど、どうしてもそういうの濃厚ですよね。

まあそうだよね。だから、ちょっと硬い言い方になっちゃうけど、コミュニティ的なところもある。

壮太:そうですね。

ちなみにアルバム・タイトルは誰が決めるんですか?

マキ:あ、あたしが。今回は。

『スウィート』ってしたのはとくに意味があるの?

マキ:えっと、あんまりないんですけど。友だちがニューヨークに行ってて、帰ってきたときにお土産でくれたポストカードに、「LOVE ME TENDER SWEET」って書いてあって。それで、「これだ!」って(笑)。

ははははは。自分たちの音楽を形容するのに今回ぴったりかなって?

マキ:はい。ぴったりで。すごくピンと来ちゃったので、それにしちゃいました。

ところで、今日はみなさんが来るまでにアッキーと話してたんですけど、6日付のロイター通信によると、アメリカの2州でマリファナが合法化されたという。

アラタ:まあ連邦法が変わんないとっていうところではありますけどね。

まあそうだけどね。ただ、いわゆる多数決で嗜好目的の大麻の是非が問われたときに決まったっていうのはね。住民投票で可決されたっていうのは初めてのことなので。ここ数年のアメリカの大麻合法化の動きはすごいじゃないですか。それはいい悪いの問題じゃないですよ。日本ではもちろん違法ですからね。でも、まず情報として日本のニュース番組でそういうものがまったく報道されていない不自然さというかね。

壮太:いや、簡単ですよ。大麻の是非以前に、ドラッグの会話自体がタブーなんですよ。たとえばカニバリズムってあるじゃないですか、人間がひとを食うっていう。あれは日本人は話題にするでしょ、「お前人間の肉食える?」「いや」「腹減ってたら食うかも」っつって。でも欧米だとそういう話自体が禁止ですよ。おおっぴらには。そういう話題に触れること自体がひととしてマナーに反するみたいな。日本でのドラッグがそうですよ。ドラッグの是非論とかやってもしようがないですよ。ドラッグの話題に触れることがタブーだから。

逆に日本は少女ポルノに寛容でしょ。たとえばマッシヴ・アタックの3Dが反戦運動をやったときに、何でイギリス政府が彼を捕まえたかって言うと、少女ポルノですよ。

壮太:ええー。

ドラッグじゃなくてね。そっちのほうが向こうだと罪が重いから。こうした文化の差っていうか、きっとそういうことも含めて、ラヴ・ミー・テンダーは投げかけてるのかなっていう風に思うんですよ。

壮太:解禁して安くなるなら万々歳ですけど。俺はその問題を考えるけど、解禁しても吸うひとは増えないと思いますよ。

アラタ:それはそうよ。

日本文化の異分子ではあり続けようとしてるとは思うんですよ。アゲインストしてないにしても。

壮太:でもたしかに東京にしか居場所がないですね。もうどこにも住めません。東京じゃないと自分みたいなのの居場所がない。受け入れてくれるところが。

テッペイ:東京の数店舗しかない(笑)。

(一同笑)

テッペイ:そういう話は毎回してますけど、そこを直接曲に入れたくはないです。重くなるから。

いやいやわかりますよ。

テッペイ:だからたとえば、全曲スウィートな曲調だったらタイトルを『スウィート』にはしてなかったと思うし、そのギャップは絶対出したい。

そういう意味で言うとね、コンセプト自体がすごくギャップがあるよね。一番清潔感のある日本のポップスのスタイルを取りながら、いちばんタブーなことを言ってるっていうね。

アッキー:でもそれも意識してたわけじゃないですね。結果的にそうなっちゃったっていう。

ああ、そうなんだ。

壮太:なんか、カシミアのセーターを着てまつ毛の長いおぼっちゃんがいつもナイフ持ってるとか、そういう感じ。

ははははは!

壮太:そういうのあるじゃないですか。フリッパーズ・ギターとかもそうだったと思うし。

※アンディ(LMT担当の敏腕A&R)

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今回はしませんよ。もう卒業しました。(高木壮太)
うちのバンドは合法ドラッグ・覚醒剤は禁止ですから。(アラタ)
はい、そうですね。悪いものはちょっとやめていこうか。(マキ)


LOVE ME TENDER
SWEET

Pヴァイン

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ああー、なるほどなるほど。じゃあ、みなさんは自分たちのリスナー像っていうのは見えてる部分ってあるんですか?

壮太:オタクが聴いてるっていうのはあるんですけど――。

えっオタク聴いてる!? 

壮太:オタクは聴いてると思いますよ。

テッペイ:俺のイメージは、ヒップホップとか何かを20代前半で飽きたひとが寄り道して聴いてる感じがするかな。

壮太:フュージョン・ファンとかシティ・ポップ・ファンは聴いてないと思います。

マキ:怒られるよ、だって。

壮太:なんちゃってシティ・ポップ、なんちゃってフュージョンだから。本格派のひとは聴かないと思いますよ。聴くひとは変わったバンドと思って聴いてるんじゃないですか。

いまの壮太くんのなかで、とくに問題意識みたいなものがあったら教えてください。

壮太:社会的にですか? やっぱりシリアスになりすぎてるくせに、すごくカジュアルになってて、インテリが迫害されているし、かと言って冗談も通じないし、窮屈になるいっぽうですね。

ああ、なるほどね。たしかに。

壮太:俺とか完全に知性のひとなんですけど。キャラクターはフクロウみたいな感じなんですけど。ぜんぜんそういうのは受け入れられなくなってるなあと。尊敬されない。

ははははは!

壮太:もの知ってるとバカにされるっていう。

アラタ:いやそれ、日ごろの行いなんじゃないでしょうか(笑)?

壮太:そのくせ冗談が通じない。戦争コメディとかがぜんぜん作られなくなった。昔はあったでしょ。『M★A★S★H』ぐらいまではあったじゃないですか。朝鮮戦争ぐらいまでの戦争パロディは。湾岸戦争とかを舞台にした戦争コメディとか全然ないじゃないですか。アフガニスタンを舞台にしたものとか。

ああ、でもイギリスはありそうだよね。

アラタ:アメリカも『ヤギと男と男と壁と』っていうやつは、あれはイラク戦争だよね。あれはけっこう面白かったけどね、脱力してて。

アッキー:なんかあったよね、湾岸戦争でコメディ。アイス・キューブが出てたやつだと思うけど(注:デヴィッド・O・ラッセル『スリー・キングス』だと思われます)。

壮太:アメリカ大統領選もわけのわからない泡沫候補が出なくなった。昔はスパイダーマンの格好したやつとか、出てたのにいつも。キャプテン・アメリカの格好したやつとか。

アラタ:日本もね、参議院選でUFO党がどうとかあったよね。

壮太:そういうのがなくなってきてると思います。

息の詰まりそうな場面っていうのはどんなときに思いますか? 日々?

壮太:日々。

なるほど。じゃあ......。

壮太:自分がいま大恋愛をしているからかも。街を歩くとみんなうつ病に見える。

ははははは! 自分は楽しいのにっていう。アラタくんも恋愛中だっけ? 恋をしているほうがテッペイくん?

マキ:そうです。

じゃあアッキー、ほかに言い足りないことがあれば言ってください。脱法ハーブについてでも何でも。

アッキー:うーん......合法はやめたほうがいいですよね。

マキ:やめたほうがいいですね。

壮太:仕組みはわからないけど、これだけバッドな症例がいっぱい報告されるってことはやっぱ統計学的にもおかしい。

アッキー:若いひとが死ぬってニュースを聞くのはやっぱイヤですよね。

また脱法ハーブっていう言い方もイヤだよね。

アラタ:存在自体が姑息。法の抜け穴でっていうのが何か。存在してる過程自体が姑息だし、やだなあって。キマり方が孤独に陥るキマり方だし。

それで儲けてるひともいるわけだからね。

アッキー:DJバーはぜんぶ、合法ハーブを店で吸うのを禁止にしたほうがいいですよ。

DJバーで吸ってる?

アッキー:うーん、吸ってるひともいる。

アラタ:合法だからね、堂々と吸える。

とにかく、合法には手を出すなと。

アッキー:そういうプロパガンダをしてもいいんじゃないですか、DJバーが。

アラタ:身近でもね、20年覚醒剤をやってたひとが、最後は合法に手を出して死にましたからね。

ああ、危険なんですね。

アラタ:覚醒剤もすごく危険なドラッグなのに、それをちゃんと20年コントロールしてやってられるようなひとですら。キングギドラだっけ? そういう銘柄があるらしくて。

それはどういうやつなの?

壮太:バス・ソルトとして売ってるんですよ。

奇妙な世のなかだよね。

アッキー:ねじれがすごいですよね。

壮太:ラボの技術が法律を制定する速度を上回ったって、ただそれだけしょう。新薬を作る速度のほうが、法律を制定する速度より速くなったからこの現象が起こってて。そのいたちごっこはいままでもあったけど。ちょっとだけ化学式を変えて、新薬だっていうのは。この先はどうなるか予測がつかないです。

なるほどね。わかりました。今日はいろいろ話を聞きましたが、ラヴ・ミー・テンダーは基本的には、すごくロマンティックな音楽だと思ってるから。

マキ:ありがとうございます。

テッペイ:ラヴです、ラヴ。

壮太:化学式はやりません。

言い方は悪いですけど、すごくバカなことをやってるでしょう、この歌詞にしても(笑)。敢えてバカなことをやっているのはなにゆえなんでしょう?

壮太:計算してやってるわけじゃなくて、ほんとにイノセント感の表れだと思ってます。

テッペイ:冗談が好きなんですよ、ただただみんなほんとに。へへへ。

なるほど、わかりました。そんなところでしょうか。

アッキー:最後に一言。

お、なんですか?

アッキー:脱法には愛がない。これ、壮太くんが言った名言だと思ってます。

壮太:言ってたっけ、俺?

いいですね。バンド名がラヴ・ミー・テンダーってぐらいだからね。本質はあくまでそっちにあるってことですね。ではどもありがとうございました!

一同:ありがとうございました!

LOVE ME TENDER "SWEET" RELEASE PARTY ~また逢う日まで~
2012.11.28 (WED) SHIBUYA WWW
OPEN 18:00 / START 19:00

LIVE: LOVE ME TENDER / ホテルニュートーキョー / LUVRAW & BTB
DJ: 二見裕志

ADV 2,500 yen (+ drink fee) / DOOR 3,000 yen (+ drink fee)
TICKET: e+ / LAWSON [L: 70179] / WWW

INFO: WWW 03-5458-7685 https://www-shibuya.jp
LOVE ME TENDER https://lovemetender.mond.jp

 前作『ダズ・イット・ルック・アイム・ヒア?』(2010)で、そのステージをアメリカ中西部のストーンドなノイズ・シーンから世界のインディ・シーンへと広げたエメラルズが、新作をリリースする。いまやメンバーそれぞれのソロ活動もリスナーの大きな関心を集めているが、ジョン・エリオットは、エメラルズが3人にとってもっとも大きなプロジェクトであり、いちばん時間をかけているのだということを述べている。日本盤リリース(今月24日)を前に、そのエリオットのコメントがもらえたので紹介したい。

 「2012年6月の始まりからレコーディングをスタートして、3週間かけて終わらせました。最後の週はアルバムのミックスに時間を費やしました。」

今作で大きな特徴をなしているのはローランドTR-808、通称やおやの使用だと言えるだろう。

「『ダズ・イット・ルック・アイム・ヒア?』から2年以上たつので、新しいレコードではもちろん自分たち自身やエメラルズのサウンドの繰り返しはしたくありませんでした。アルバムは線状の流れの上に構成されていて、だから結果的に、録音された順番通りにアルバムのトラックが現れるようになっています。サウンドや方向性は僕らの環境を映し出すものとして生まれてきました。」

こうした新機軸もあくまで彼らの音楽性の自然な発展形である、と。どんな環境だったのだろうか?

「制作中は閉じ込められたような環境でした。なぜなら、スタジオはアクロン北部にあって、ほとんどの時間、室内にはほんの少しの太陽の光しか差し込まないんです。僕らは夜行性になってスケジュールをこなしていました。」

"ザ・ルーザー・キープス・アメリカ・クリーン"などにはかつての暗黒があるが、とくに閉鎖性は感じられない。むしろマッガイアの熱情的なギターがこれまで以上にフィーチャーされている印象だ。

「ジョンと僕はたくさんの様々なアプローチを取りました。だからその結果、とても面白いサウンドとテクスチャーのオーヴァーラップが生まれました。それに、僕らはマークのギターの音色にもこだわり、異なるアンプやマイクに通したりしてたくさんの時間をかけました。今回はたくさんの物がより自由に使える環境だったので、だから今作では前のアルバムよりももっとたくさんの楽器を使っています。」

夏のマッガイアのインタヴューでは「いいスタジオを借りてもらえるんだ!」と話していたことが思い浮かぶ。ちなみに、どんなスタジオでした?

「タンジェリン・スタジオは、アクロン北部にあるスタジオで、シンセサイザーのコレクションやたくさんの録音機材をもっているBen Vehornが主に運営をしています。彼の機材はリストにできないほどたくさんあるのですが、僕たちはそれらを使ってたくさんの作業をしました。」

シンセサイザーのコレクションに喜びながら録音に没頭する彼らの姿が目に浮かぶようだ。さて、あなたはこの新作をどのように聴くだろう?

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