「Nothing」と一致するもの

ラウル・KとDub Struct #9のツアー日記 - ele-king

 Mr.Raoul K(以下、ラウル)との出会いは2年前、前回の〈eleven〉の「MONK!!!」に出てもらった時でした。
 もともとラウルを呼んだのは「MONK!!!」にふさわしいアングラでクールなトライバル系のDJということで「MONK!!!」を一緒にやっているトミオ君やあんなちゃんが提案してきたのだったと思います。彼の住むドイツでもベルリン以外はそうそう〈eleven〉や〈Liquid Room〉のようなオオバコはないらしく、そのときはえらく日本のパーティ・シーンを気に入った様子でした。また彼のアルバムのセールスの50%は日本におけるものだとも語っていました。

 ラウルとはそれからもちょこちょこカタコトの英語メールで連絡を取り合うようになり、自然とニュー・アルバムのリミックスをやってもらうことになりました。ラウルがリミックスしたデータを受けて、それにDUB STRUCTURE #9(以下、DUB ST#9)で上音を足して送り返してまたラウルがいじって......、というのを6回ほど繰り返していったなかで、「また日本に行きたい!」というラウルのジャパンツアーをコーディネートして、DUB ST#9も一緒に回ることにしました。次のアルバムのリミックスをしてもらう約束をして......。

■12月27 日
 ラウル到着の日。この日はELE-KINGの取材とDOMMUNE出演、さらに誰かがラウルをピックアップしホテルに案内するという複雑なスケジュール。ピップアップを誰かに頼もうにもこんな年末の平日にまともな人間が暇しているわけもなく、バンド内で一番運転に定評のあるAraiを空港に行かせ、残りの3人は取材の集合時間を守る係をやることとなった。日本では遅刻は御法度なのだ。前回ラウルが日本に来たときは風邪を引いていてものすごく元気がなかったためすごくナイーヴな人に見えたのだが、今回は体調が良かったため別人のように陽気でピースなナイスガイだった。驚くことに前回会ったほとんどの人の顔と名前を覚えていた。

11:00
ラウル成田着。ベース新井がお迎えにいく。
14:00 
渋谷でDUB ST#9のELE-KING取材。
Araiが成田からそのまま取材現場で合流する予定だったが、結局ラウルが入国に手間取ったためにAraiは現場入りが遅れ3人で取材の大半を受ける。インタヴューは和気あいあいと楽しい感じで進む。
16:00
取材を無事終え渋谷TEQNIQUEでラウルと2年ぶりに再開する(この後ラウルは東京にいる間は毎日TECHNIQUEに通うこととなる)。
ラウルを西麻布のホテルに一旦チェックインさせ、夜の現場DOMMUNEへ。
この日はラウルとのツアーで回る「MONK!!!」とTREE HOUSEというふたつのパーティのプレパーティということで、ラウル、DUB ST#9、UNIVERSAL INDIANNというメンツでDOMMUNEのライヴ・ストリーミングに出演。実はラウルのレコードバッグが誤ってロンドンに送られてしまったために、手持ち鞄に入っていたレコードとその日、TECHNIQUEで買ったレコードのみでプレイしていた。すごい。会場の熱気もなかなかでラウルもとても上機嫌であった。そしてトリのUNIVERSAL INDIANNこと、あつおさんのプレイもやばかった。やられた。
25:00
恵比寿の24時間営業の中華料理屋へ「MONK!!!」のメンバーとDUB ST#9のメンバーでラウルの歓迎会。ラウルは白米が大のお気に入りということが判明。「ベジタリアンだったり何か苦手な食べ物があるとかないの?」ときくと「No, I open all」だって。これが彼の基本スタンスであるようだ。朝4時頃解散。明日は寿司を食おう!と言って別れる。

■12月28日
17:30
大寝坊。昼に連絡すると言って既に日は暮れている。本気でこういうときは死にたくなる。ラウルが時間にうるさくない人であることを祈りつつ電話すると上機嫌でTECHNIQUEにいるとのこと。
18:00
TECHNIQUEでラウルと合流して一緒にDIG。
19:00
DUB ST#9メンバーと友だちと合流し都内のそんなに高くない寿司屋へ。貧乏なのでちょっとケチってしまったため寿司も微妙でちょっと後悔。ラウルは日本酒を気に入ってくれてぐびぐび熱燗を飲んでいた。結局熱燗を20合いただきました。 
21:30
みんなで我が家へ移動し、この日買ったレコードでラウルがDJをしてくれる。ラウルは英語が上手くしゃべれない自分の言葉を何度も聞き返して必ず言いたいことを理解するまで話を聞こうとする。この姿勢は日本人が見習うべきところだなと思った。そのおかげで英語で話すことが苦でなくなって来た。
24:00
解散。

■12月29日
 ラウルこの日は京都のパーティ・オーガナイザーが案内したいということで昼間は東京タワーにふたりでいっていたのだが、オーガナイザーが東京タワーに上らないかと進めたら「俺はいいや」とのことで、結局東京タワーに関心を示さず、すぐにTECHNIQUEへ移動することになった。

19:00
TECHNIQUEでラウルと合流。DIG。
20:00
ラーメンを食べる。ラーメンは今までで一番のヒットらしくご満悦であった。
21:00
都立大学のスタジオでバンドのリハーサルの予定だったのでラウルも飛び入りで参加。5人でセッションをしたりDJをしたりして楽しむ。ラウルがノリノリでそれがみんなにも波及してかなり調子がよい。
25:00
ラウル帰宅。ここから翌日の「MONK!!!」のリハーサルがスタート。かなり煮詰まり結局朝の9時まで延長してリハーサルを行う。
33:30
帰宅。

■12月30日
 この日は「MONK!!!」。これは僕らの2nd アルバムのリリース・パーティでもあり、またはるばるやって来たラウルのためにも(もちろん〈eleven〉に来てくれるみんなのためにも)自分たちのいまの力で用意出来うる最高のパーティをという精神で半年くらいずっと準備して来たもの。
 ふたつのフロアは常にダイナミズムで満たされていて、B2ではTOMIO~HIKARU~ALTZと縦横無尽なグルーヴでグリグリフロアを踊らせたところで僕らがバトンを渡してもらうというなんとも贅沢な展開。その後はMr Raoul KとCMTがストイックでクールかつDEEPな展開でコアなお客さんがだんだん壊れていく様が最高に愉快。視覚的にもDJブースの前で行われたKLEPTMANIACがブラックライトを用いたライブペイントと、ステージからのyamatくんのクレイジーな自作のレーザーシステムが幻覚的な効果を出していて、結果お客さんは色んな方向を向いて踊っていた。
 上のフロアはとにかくハウスで実験的なメンツで、それぞれが全く異なる音世界を持ちつつもハウス実験精神という数珠でつながっているようだった。
 〈eleven〉のラウンジは低音があまりないので少し心配していたが持って来たウーハーがいい感じに機能していてしっかり踊れるラウンジになっていた。
 お客さんも20代前半から40代まで幅広くいて、よくクラブで見かける人やDJの人もいれば普段はあまりクラブに行かない後輩の学生たちもいるし、外国人の人も結構いるしとにかく人種がごちゃ混ぜでおのおの自由に会話や音楽を楽しんでる感じ。いい感じだ。

 この日も昼間ラウルはTECHNIQUEにひとりで行っていた。

■12月31日
 結局打ち上げ等もありつつ家には帰らずにそのままAraiと年越しパーティ中の〈eleven〉に戻って年越し。猛烈な眠気に襲われフロアの後ろで寝ていると案の定、注意され店を出る。ふたりで麻布ラーメンに入るも意識が混濁してきたため解散し帰宅。そういえばラウルも〈eleven〉にくると言っていたが来なかった(Solfaにkuniyukiさんのライヴを観に行っていたらしい)。

朝4時就寝。

■元旦
 夕方に起床しとりあえず家族に挨拶まわり。おばあちゃんに会いに藤沢まで行く。その後は明日明後日と大阪京都でのパーティに出るため準備をしたのち深夜には出発しなければならない。

■1月2日
 午前4時、DUB ST#9のメンバーと一緒に行く音楽狂の友だち5人、ラウルの総勢10名が車2台で大阪に向け出発する。とくにトラブルもなく順調に進み昼頃には大阪に到着。バンドのリハーサルが16時からなのでそれまでみんなでミナミを散策する。
 大阪は昨年のクラブ一斉摘発によって深夜営業が出来なくなってしまったためにパーティは夕方からスタートするらしい。べつに夜中じゃなくてもええじゃないかという、たくましい大阪の音楽人にリスペクトしたいと思います。そして書かないけどすごい時間までやりました。

 ちなみにこの日のDJは関西のゴッドマザーと呼ばれているYA△MAさん、powwowでもおなじみのDNT、Cross Breadというアシッド・ハウスを生で演奏するようなちょうかっこいいユニットをやってるRie Lambdollさんという個人的には感動もののメンツで、お客さんもこんな状況でも来る熱い人達なので温度高めのあったかい、いいパーティでした。ラウルが「大阪は人が最高だ。だから大阪はパーティも最高なんだ」と終わってから熱弁していたなあ。
 パーティが終わるとホテルが用意されているラウルはホテルへ、それ以外はスーパー銭湯に行き仮眠をとる。3時間ほど寝て正午には京都に出発しなければならない。京都はなんと昼の3時からパーティがはじまるのだ!

■1月3日
 正午にラウルをホテルで拾い京都へ出発する。昨日が激しかったのでみんなお疲れの様子。正月の京都は人でごった返していて交通渋滞も激しいので余計にみんな疲れたみたいだ。

 今日のパーティは「393production」という同世代くらいの人たちがやってるパーティで場所はクラブではなくブリティッシュパブで行われた。ブリティッシュ・パブだと照明も明るいし寛げる場所が多いのもあって音楽メインというよりパーティ・メインという感じ。
 若いお客さんが多めの印象。ドイツのケムニッツという田舎町のパブでやった時の「地元の若者大集合!」って感じと似ていて面白い。
 夜中の3時頃会場を出て東京に向かう。明日は僕らが渋谷〈KOARA〉で毎月やっている「Armadillo」だ。

■1月4日
 昼過ぎに東京に着く。この日からラウルはうちに滞在することになった。うちに滞在する間ラウルにはいろいろなことを教えてもらった。そのなかで一番印象に残っているのは「すべての音楽にオープンでいることが大切だ。ジャンルにとらわれてテクノしか聴かないとかポップじゃなきゃ聴かないとかそんなのFUCKだ。I open allだ」みたいなことを言っていたことだ。他にもいろいろ教えてもらったけどいまは思い出すのが面倒くさい。
 この日の「Armadillo」は大爆発できた。レジデントDJみんな調子良かったし正直DUB ST#9もラウルもこのツアーで最高のプレイをすることができて、それを受け止めて返してくれるお客さんがいた。途中からはDJや僕たちが客を煽るんじゃなくてお客さんがDJやDUB ST#9を煽るという状態。そしてラウルはこっちが煽れば煽るだけいいプレイで返してくれる本当に調子のいいやつだった。東京のヴァイブス響いてくれたみたいだ!

■1月5日
 ラウル最後のGIGであるUNIVERSAL INDIANN主催のTREE HOUSE@宇都宮SOUND A BASE NEST。この日はDUB ST#9は出演せずラウルだけ出演だったが、メンバーと「Armadillo」のo!0も同行。朝パーティが終わったら直接成田にラウルを送らないと飛行機に間に合わないのだ。
ライヴがないため遊ぶ気はまんまん。

 〈NEST〉は宇都宮というクラブというイメージのあまりない土地柄からは想像も出来ないくらいしっかりとしたクラブで、日本の底力を見せられた気がした。
 DJもDEEPな選曲でいい感じ。まだこの土地にはシーンが根付いていないというような話も聞いたが、その分スキモノたちが集まっているようでDEEPな曲をおのおのじっとりと楽しんでいる感じ。
 ラウルもそれを感じ取ったか最初の30分はいままでになくスペーシーな感じでジワジワと展開させていた。それからすこしテンションをあげて宇都宮ピーポーを踊らせていた。そしてラウルからのUNIVERSAL INDIANNことあつおさんという流れ。初日のDOMMUNEもそういえばこれだったなー。UNIVERSAL INDIANNに始まりUNIVERSAL INDIANNに終わったこのツアー、やっぱりあつおさんはすごいDJでした。ごちそうさま。

■1月6日
 パーティが終わると宇都宮から成田へラウルを送り出しに直行。無事に時間に余裕を持って着いて荷物を預けて別れを惜しもうとしたところで問題発生。荷物が5KGオーバーしているために100ドル払わねばならないらしい。そりゃ毎日TECHNIQUEで買い物してたらそうなるわー。

 これに納得出来ないラウル、何をはじめたかというと、レコードバッグを開いてレコードのジャケットを抜いてまさにVinyl、中身だけバッグに詰めはじめました。そして、それでも足りないと分かると持って来た服を全部おまえたちにやるといいだしました。
 最終的にラウルの荷物はレコードの中身と日本で気に入ったセブンイレブンの辛口イカ焼きというお菓子だけという状態で帰って行きました。
「本当に価値のある物にだけ金を払え」と勝手に解釈しました。

 本当にいいやつだったラウル。いろいろ教えてくれてありがとう!


Canno Masanori(Dub Structure #9) - ele-king

初めまして。DUB STRUCTURE #9でギター弾いてます、菅野です。
ここ2,3年でよく聴いてたアルバム、曲から今の気分で選んでみました。
最近買ったJustin Velorの2013はかなりオススメ。


1
Justin Velor - 2013 - Brutal Music(UK)

2
Peter Gordon & Love of Life Orchestra - Another Heart Break - DFA

3
Petar Dundov - Oasis - Music Man

4
Soundstream - Love Town - Soundstream

5
Pharoah Sanders - Rejoice - Theresa Records

6
The Rolling Stones - Too Much Blood(Demo Mix) - Slow To Speak

7
Conrad Schnitzer - Ballet Statique - m=minimal

8
NEU! - '86 - GRÖNLAND

9
Sandro Perri - IMPOSSIBLE SPACES - constellation

10
D.A.F - DEUTSCH AMERIKANISCHE FREUNDSCHAFT - Virgin

DRUM & BASS x DUBSTEP WARZ 2013 - ele-king

 BIG BAD BASS 2013!! 今年初のDBS 〈DRUM & BASS x DUBSTEP WARS〉は世界最強のVALVE SOUND SYSTEMを保有し、20年以上のキャリアに培われた独自の重低音でドラム&ベースをリードする巨人、ディリンジャが5年ぶりに帰還! 
 一方のダブステップは昨年〈TEMPA〉からデビュー・アルバムを発表し、ディープ&ドープなサウンドで衝撃を与えたJ・ケンゾーが待望の初来日! WARNING!!!

DRUM & BASS x DUBSTEP WARZ 2013
2013.02.16 (SAT) at UNIT
feat. DILLINJA x J:KENZO
with: ENA, KEN, Helktram, TETSUJI TANAKA('93~'04 dnb 3decks set)

open/start 23:30

早割/2,013yen (枚数限定)予約開始日 1/13(日)11:00~1/18 11:00(金)まで
adv.3,150yen door.3,500yen

DILLINJA (Valve Recordings, UK)
DILLINJA (Valve Recordings, UK) 90年、16才で独自のサウンドシステムを編み出して以来、重低音にこだわったブレイクビーツの制作を開始。93~95年には"Deadly Deep Subs"、"Gangsta"(TRINITY名義)、"The Angels Fell"等でシーンに名声を博し、GOLDIEのアルバム『TIMELESS』に参加。Metalheadz、Prototype、V等から数多くの作品をリリース、CAPONE、D-TYPE等の変名を持つ。97年にはLEMON Dと共にレーベル、Valve Recordings及びPainを設立(後にTest Recordings、Beatzも増設)、"Violent Killa"、"Acid Track"を発表。01年、FFRRから1st.アルバム『DILLINJA PRESENTS CYBOTRON』を発表、以後LEMON Dとの合同名義を含め『BIG BAD BASS』(02年)、『THE KILLA-HERTZ』(03年)、『MY SOUND 1993-2004』(04年)の各アルバムと"Grimey"、"Twist 'Em Out" 、"Fast Car"、"This Is A Warning"等々のシングルを大ヒットさせる。近年も"Back To Detroit" (CAPONE名義)、"Time For You"を発表、ニューアルバムが待たれている。また彼はパワー出力96kW、サブウーファー52発からなる自己のVALVE SOUND SYSTEMを保有する、まさにキング・オブ・ベースである。
https://www.vlvmusic.com/
https://www.facebook.com/dillinjavalve
https://twitter.com/Dillinjavalve

J:KENZO (Tempa / Rinse FM / Artikal Music UK, UK)
J:KENZO (Tempa / Rinse FM / Artikal Music UK, UK) ジャングル、ヒップホップ、ダブ等を聞き育ち、実験的なドラム&ベース・トラックを創作していたJ:KENZOは、06年1月のDMZパーティーでダブステップに開眼して以来、ダブステップにフォーカスし、07年に自己のSoul Shakerzから作品を発表。08年の"Tekno Bass"が注目されて以降、Argon、2nd. Drop、Dub Policeといった人気レーベルからリリースを重ね、トップDJ、YOUNGSTAの支持を受け、ダブステップの名門レーベル、Tempaと契約。そして"Ruffhouse"(11年)、"Invaderz"(12年)でトップ・プロデューサーに躍り出て、シーンのトップ3DJ=YOUNGSTA、HATCHA、N-TYPEは勿論、LAURENT GARNIERからも支持を得る。また盟友MOSAIXとレーベルArtikalを立ち上げ、一躍シーンの台風の目となる。そして12年9月、Tempaからの1st.アルバム『J:KENZO』を発表、UKベース・ミュージックの真髄を遺憾なく発揮する。今まさに旬のプロデューサー、待望の来日!
https://www.tempa.co.uk/
https://www.facebook.com/pages/JKENZO/115497756739
https://twitter.com/JKenzo
https://soundcloud.com/jkenzo

Ticket outlets:1/19(SAT)発売!
PIA (0570-02-9999/P-code: 191-202)、 LAWSON (L-code: 76819)
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia/ https://www.clubberia.com/store/
渋谷/disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)、
TECHNIQUE (5458-4143)、GANBAN (3477-5701)
代官山/UNIT (5459-8630)、Bonjour Records (5458-6020)
原宿/GLOCAL RECORDS (090-3807-2073)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、JET SET TOKYO (5452-2262)、
disk union CLUB MUSIC SHOP(5738-2971)
新宿/disk union CLUB MUSIC SHOP (5919-2422)、
Dub Store Record Mart(3364-5251)
吉祥寺/Jar-Beat Record (0422-42-4877)、disk union (0422-20-8062)
町田/disk union (042-720-7240)
千葉/disk union (043-224-6372)

UNIT
Za HOUSE BLD. 1-34-17 EBISU-NISHI, SHIBUYA-KU, TOKYO
tel.03-5459-8630
www.unit-tokyo.com

Toro Y Moi - ele-king

 彼の心は彼のもの。チャズ・バンディックが体現するのは、一種の純潔ではないだろうか。"スティル・サウンド"で彼がくるくると踊るとき、"タラマック"で花火を振り回すとき、"ソー・メニー・ディテイルズ"で池に小石を投げるとき、間違いなく彼の心は彼だけのためにある。何ものもそれに触れ、それを汚すことができない......。

 バンディックが歌い、動き、踊るのをみていると、心というものはどこまでも自分のものであっていい、いや、そうでなければならない、というふうに思えてくる。心というとわかりにくいだろうか。人の思惑のために簡単に動いてしまうものは、人のなかに何かを残したりしない。それはよくもわるくもだ。彼がわれわれを惹きつけるのは、そうした何か動かざるもののためであると感じる。そうでなければ音楽オタクでも方法オタクでもない、そうテクニカルでもない、一大トレンドとして類似した音も多い、はや3作目にもなるトロ・イ・モワの音楽が、こんなに特別な存在感を持つことの説明は他にはつかない。彼のセンスや嗅覚は高く評価するとしても、音の足し算や引き算では説明のつかない魅力のために、われわれはまたアルバムを手にしている。

 ふわふわとした話ですみません。もちろん足し算と引き算の話も重要だ。今作、彼はさらにブラコン路線を強め、純粋なリヴァイヴァル気運を伴いつつチルウェイヴの展開形のひとつとしても浮上してきた90年代風R&Bの潮流(野田努が「チル&ビーって言うらしいよ~」と言っていた)に、完璧にシンクロしている。今回もホーム・レコーディングだということだが、ローファイの名残をとどめながらもぐっと洗練され、よりクリアなプロダクションを得ることになった。インクやハウ・トゥ・ドレス・ウェルなども同様の傾向を深めており、それらはいまもっとも気にされているトレンドのひとつになっている。

 実際のところよく聴き比べれば、トロ・イ・モワ自体、音楽の骨子の部分ではあまり変わっていないとも言える。だが、たとえばアマゾンの商品説明で『コージャーズ・オブ・ディス』がパッション・ピットやヴァンパイア・ウィークエンド、MGMTなどと比較されているのを見ると時代の変遷ぶりに驚いてしまう。アニコレも加え、当時はブルックリン勢の最後尾のように理解されていたわけだ(たしかにそういう感じもあった)。そしてミスター・チルウェイヴとしてウォッシュト・アウトと並び称された記憶もまだ払拭されたわけではない。同時にいまはインクハウ・トゥ・ドレス・ウェルに比較される。要するに音楽性自体はそう変わらないまま、彼はその代その代のもっともヴィヴィッドな流れにつねに比較されているのである。

 まわりに同調してくるくると音楽性を変えたりはできない。毎度、少し洗練されたなというような、自身のキャリアとしてまっとうな進歩を見せるだけのことである。周囲の思惑は、そう簡単には彼を動かせない。それは"ソー・メニー・ディテイルズ"のPVにもよく表れている。女優を用いて、大掛かりな道具立てやロケによって撮られてた、トロ・イ・モワとしてはかなり異色の作品だ。高級車や豪華な別荘や自家用ジェット、そしてハイクラスな美女に取り囲まれながら、そのどれにも染まず漂ってしまうバンディックの肢体は、その心そのものでもある。高級だからなじまないというのとも少し違う。彼自身に干渉しようとする異物に対する、潔癖的な恐れや違和感が画や姿からありありとたちのぼっている。石を池に投げる何気ないシーンでは、その動きが、彼が自分自身の領域を防護しようとするものであるように感じられないだろうか。彼の心は彼のもの、なのだ。
 ヒットチャートもののR&Bのミュージック・ヴィデオのパロディでもあるだろうが、その思惑すら越えてバンディックの静かな視線がカメラに注がれる。"セイ・ザット"も皮肉めいた笑いを誘うとても好きな映像だ。謎の大自然のモチーフもふざけているようでいて、カーティス・メイフィールドの『ルーツ』などを思い起こさせもする。バンディックに政治的なテーマはまるでないだろうが、ソウル・ミュージック全体のなかに自身のアイデンティティや立脚点を探ろうとするような意図は見える。ジャケットにも明瞭だ。彼の純潔はさまざまな雑音を洗い、払って、自分のゆくべきひとつの道を見つけ出そうとしているのかもしれない。

※蛇足ですが本文冒頭は昨年の傑作ドラマに出てきた名ゼリフの引用です。(https://www9.nhk.or.jp/kiyomori/cast/heike.html#h_shigeko

NHK'Koyxeи - ele-king

 二木信のいう「ファンク」が僕にはいまひとつわかるようで、わからない。僕は、彼と比べるのもおこがましいほど、量的な意味で日本のヒップホップを聴いていないので、偉そうなことを言える立場ではないのだけれど、もちろんいくつもの例外はあるにせよ、これはネガティヴな意味ではなく、個人的には、わりと人気のある日本語ラップからはむしろ演歌的なエートス/フォーク的な散文詩をかぎ取っていたので、それが二木のように、ざっくりファンクというタームに結びつく回路が見えないのである。いろんな現場に足をはこんでいる人にとってはわかって当たり前の感覚かもしれないし、これは僕の怠惰なのだろうけれど、どうせなら、いちどそのあたりの感覚をしっかり説明していただけたら幸いに思っている。

 「ファンク」というタームは、「ポップ」や「パンク」と同様に、それなりの歴史と展開と再解釈を経ているので、いまとなっては文脈のなかで主観的に使われることも多く、絶対的な定義を求めるのも野暮かもしれないが、僕が「ファンクとは何か?」と問われれば、迷うことなく、ジェームズ・ブラウンの「パパズ・ガット・ア・ブランド・ニュー・バッグ」に代表される、16ビートのリズミックな反復と、言語的な意味を超越した迫力について話す。基本中の基本の話で、世界で最高のフットボーラーはペレだというのに近い、ある種王道的な答えだが、一見単純に聴こえてその実複雑な反復、言葉の意味よりもそれもまたリズム譜であることを優先される演奏、そう、ダンスとある種の超越性、障害を説明するのではなく、障害を乗り越えるもの、それがJB、P-ファンク、トラブル・ファンク、クラフトワーク、バンバータ、パブリック・エネミー、UR、ジェフ・ミルズ、ドレクシア、あるいはオウテカ等々にも継承されているリズミックな衝動、すなわち「ファンク」ではないかと考える(『テクノ・ディフィニティヴ』には、テクノの重要なルーツとして「ファンク」の項目を設けたほど)。
 トーキング・ヘッズの『リメイン・イン・ライト』をファンクだと思える人なら、トム・ヨークとフリーのアトモス・フォー・ピース(平和のための原子力)名義のデビュー・アルバム『Amok』も素晴らしいファンクだと感じるだろう。そして、オウテカをファンクだと思える人なら、NHK'Koyxeиことマツナガ・コーヘイの『Dance Classics Vol. II』もファンクだと言えるだろう。3Dメガネをかけて、土木作業員のズボンをはいて、身体を小刻みに揺らしながらライヴをするその姿もファンキーそのものである。

 マツナガ・コーヘイは、Aoki TakamasaやKyokaやBunたちと同じように、今日の電子音楽シーンにおけるノマドで(日本という、たまたま自分が生まれた小さな島国にとどまることに必要以上な意味を見出さない)、2月におこなわれる彼ら4人の日本ツアー「abkn set japan tour 2013」の詳細に関しては来週記事をUPする予定だが、Bunをのぞく3人は、たとえばベルリンの〈ラスター・ノートン〉のような、便宜上、IDMの牙城のように分類されるレーベルから作品を出しているものの、しかしヨーロッパをよく知る彼らの音楽にはダンスがあり、ことNHK'Koyxeи名義の『Dance Classics』シリーズは、そのタイトルがはっきり言っているように、ダンスである。
 今回の『vol.2』はもちろん前作『vol.1』の延長だが、さらにダンサブルな展開が強調されている。エレクトロの影響下にあった頃の90年代初頭のプラッドがやり残したことをやっているようにも聴こえる。あるいは、ジェフ・ミルズがDJをやっているときに、いきなり彼の脇腹を「こちょこちょこちょ」と、くすぐったらきっとこんな音楽になるんじゃないかとも想像できる。ここには、言葉ではなく音の、笑い、ユーモアがあるのだ。
 しかし、ないものも多い。何よりもこの音楽には、啓発的な対話やわかりやすい説明がない。思い出話もなければ、気の利いた、何かに役に立ちそうなものがない。そういうものを求めたがる、決められた道筋を建設的に生きたい人生にとってはまったくもって無益な音楽だ。が、音楽の現場に、作品の送り手とその良き理解者たるリスナーという、昔ながらの上下はっきりとした関係性に逆戻りしている向きが固まっているのであれば、『Dance Classics』は極めて重大な滑稽さを秘めていると断言できる。まるでこの音楽は、「くっ、くっ、くっ」と笑いながら、動物と老人が安心して暮らせる世界へと自転車を走らせているようだ。前作のジャケはフラミンゴで、今回はキリン、裏ジャケの写真は、前回が丘の上から望遠鏡で町を見下ろすマツナガ・コーヘイで、今回は道路を自転車で走っているマツナガ・コーヘイ......ひと足先に春風を浴びているように、気持ちよさそうである。

「食らう」一冊──。

2010年代のヒップホップ・アーティスト9人のインタヴュー集。
ルードでも閉鎖的でも教条的でもない、自由で新しいフィーリングを持ったラッパーたちが、いまのびのびとヒップホップの歴史を塗り替えようとしている!

次世代を担う、新しいラッパーたちが語ってくれた言葉と物語。
リリックを贅沢に引用しながら、生活のこと、これまでのこと、未来のこと、じっくりと語りおろした珠玉の9編。スタイリッシュな撮りおろし写真、2000年代のシーンをトピックごとに振り返る対談コラムを収め、新しい世代の入門書として、新しい時代のスケッチとして日本の音楽史にあらたな補助線を引く一冊が登場!

☆★収録アーティスト★☆
OMSB / THE OTOGIBANASHI'S / PUNPEE / AKLO / MARIA / 田我流 / ERA / 宇多丸 / Mummy-D

 単に自分の知識不足のせいなのだが、韓国というのがホントによくわからない。たとえば12年12月26日付けの『Newsweek』によれば、とにかくごく一部のエリートが政治からメディアまでを牛耳っているそうで、そういう意味ではアジア的な支配構造がぬけぬけと継承されつつ、日米中関係の微妙さもさることながら、北朝鮮への複雑な感情もあるだろうし(民族的な同胞意識もあるだろうし)、サッカーのスタイルでは当たりが強いし、フィッシュマンズと忌野清志郎と素人の乱が人気があると聞くし、自分のなかの韓国像というのが落ち着きどころがない。
 興味はある。もっとも近距離の外国であるのにかかわらず、日本にいながら韓国の情報はごくいち部の選ばれたものしか入ってこないという不自然さが、興味を加速させる。
 今月末、韓国のインディ・シーンからYamagata TweaksterとWedanceがやって来る。昨年末リリースされたYamagata Tweaksterのアルバム『山形童子』の清水博之氏が書いたライナーによれば、「韓国ソウルのインディーズ・シーンは、90年代後半から、美術学科で有名な弘益(ホンイク)大学を中心に広がる、弘大(ホンデ)エリアで発展。現在も弘大がその中心となっており、ライヴクラブと呼ばれる、バーの一角を舞台にしたライヴハウスでは、週末ごとにインディーズ・ミュージシャンがライヴを繰り広げる」と記されている。そこから登場したのが、たとえばYamagata Tweaksterであり、Wedanceだ。
 Yamagata Tweaksterは社会批評とユーモアを盛り込んだシンセ・ポップで、男女ふたり組のWedanceは超絶的なノイズ・ロック・バンド、彼らは音楽として魅惑的なばかりではなく、臨み方というかその態度にも、当たり前の話だが、日本で知られるところのK・ポップとはまったく別の情熱が表れている。27日が東京、29日が大阪、26日には東京の幡ヶ谷でYamagata Tweaksterの弾き語りもある。行こう!
https://utakata-records.com/yt-wd-japan2013/

■<Tokyo> 2013.01.27 (Sun)
@新大久保Earthdom
OPEN 18:00 / START 18:30 
ADV. 2,500 yen / DOOR 2,800 yen (ともに+1D)
イープラス: こちら (1月25日 18:00まで)
メール予約:yamagata.wedance@gmail.com (~1月26日23:59。件名に『1.27予約』と書き、フルネーム(カタカナ)と予約枚数をお送りください)
出演:Yamagata Tweakster (withバックダンサーYamagata Boys and Girls)、Wedance、イルリメ、kuruucrew
☆「オルタナ・コリア」展 (展示&販売)もbarエリアで開催!(協力:IRA)
VEGEしょくどう & 元Vacantのyoyo.さんによる韓国フードも決定!
Facebook event page→ https://www.facebook.com/events/109776642525454/

■<Osaka> 2013.01.29 (Tue)
@心斎橋conpass

OPEN/START 19:30 
ADV./DOOR 2,500 yen (D込)
出演:Yamagata Tweakster (withバックダンサーYamagata Boys and Girls)、Wedance、ALTZ.wP、casio☆トルコ温泉 DJs: okadada、oswald
Facebook event page→ https://www.facebook.com/events/562930757054344/

■<Amature Amplifier special gig> 2013.01.26 (Sat)
@幡ヶ谷Forestlimit

OPEN 18:30 / START 19:00 
Price: 1,500 yen (+1D)
メール予約:yamagata.wedance@gmail.com (~1月25日23:59。件名に『1.26予約』と書き、フルネーム(カタカナ)と予約枚数をお送りください)
出演:Amature Amplifier (Yamagata Tweaksterの弾き語り名義)、トンチ、Alfred Beach Sandal、イ・ラン(Lang Lee)、DJ: 坂田律子

VEGE食堂 のyoyo.さんによる韓国フードも決定!
そして日本にすでにファンも多い、イ・ラン(Lang Lee)も特別出演決定!(2012.12.30追加)
Facebook event page→ https://www.facebook.com/events/135670996587564/

interview with Ultraista (Laura Bettison) - ele-king


ウルトライスタ -
ウルトライスタ

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 パフォーマーになることではなく、おもしろい挑戦をすることが自分の望みである、と昨年ナイジェル・ゴドリッチは語っている。いわずもがな、「オルタナティヴ・ロック」世代の名プロデューサーだ。レディオヘッドやベックをはじめ、数多くのバンドが彼のマジック・タッチによって独特のサウンド・キャラクターを得てきた。ゴドリッチの場合は、目立たぬようにそのバンドの音をブラッシュ・アップするというよりは、彼でしかありえない特徴的なプロダクションを植えつけるといった仕事ぶりが際立っている。その意味でとてもアーティスティックな裏方ではあり、そうした個性でもって同時代のロック・ファンのなかに大きなインパクトを残してもきた。
 そのゴドリッチが新しく示した「おもしろい挑戦」とは、他ならぬ彼自身によるバンド、ウルトライスタのことだ。しかしパフォーマーになることが自分の望みではない、と自らの活動スタイルについて言及しているのは興味深い。プレイヤーとしての個人的な表現欲求を満たすプロジェクトではなく、あくまでもより開かれた場所へ向けて問いかける力を持った取り組みだという自負がうかがわれる。

 プロジェクト誕生のきっかけは、ゴトリッチとベテラン・ドラマー、ジョーイ・ワロンカーとの対話であったというが、ふたりがもうひとりのメンバーとして白羽の矢を立てたのが、まだほとんどキャリアのないロンドンの女性アーティスト、ローラ・ベッティンソンである。彼女の通っていたアートスクールのイヴェントをのぞきにいき、そのことがハントに結びついたという。今回のインタヴューのお相手は、そのローラだ。いわば名ではなく、実の才能を見初められたといってもいい起用であるが、彼女はどういう人物なのだろうか。いまではいくつもの記事が公開されているが、インタヴューを行った当時はまだほとんど詳細な情報はなかった。音楽活動に対するしっかりとした意見やヴィジョンがあり、また、ただのシンガーというわけでもなく、楽曲制作の上でも本質的な部分を負っている、とても魅力的な存在だ。

アーティストたちが「理想のレーベル」や「ちょうど良いタイミング」とかを待つのにくたびれて、自分たちの音楽をすぐにファンと共有したいがために、そういうやり方に人気が出るようになってきている部分もあると思う。

ウルトライスタはどのような性格のプロジェクトなのでしょう? 期間限定のコラボといったかたちなのか、それとももっとバンドとしての有機的なつながりを持ったものなのでしょうか?

ローラ:このプロジェクトは、アフロ・ビートとエレクトロニカにインスパイアされたプロジェクトで、基本的にはバンドなの。いまはライブ活動もしているしね。わたしたちのうちの誰も、これからの方向性をはっきりとはわかっていないんじゃないかな。レコードをリリースしてからはいろいろ目まぐるしかったけど、これからも全員が十分な時間があって、楽しんでやれるかぎりは、いっしょに音楽活動を続けていくと思うわ。

ナイジェル・ゴドリッジがライヴを観に来たことが、あなたがウルトライスタとして活動するきっかけになったそうですが、ディンブルビー&キャパーはあなたひとりでライヴを行っていたのですか? どのようなステージングだったのでしょう?

ローラ:ディンブルビー&キャパーはわたしひとりで曲を作っていたんだけど、ライヴでは大抵バンドとダンサーに参加してもらっていたの。このプロジェクトは何年もやっているうちに何度も生まれ変わって、はじめはソロ・プロジェクトだったものが、最後にやったライブではステージ上に15人も登場するまでになったわ。

音源のリリースはテープが1本あるだけですか?

ローラ:わたしが大学2年めだった2008年あたりにディンブルビー&キャパーの曲を書きはじめて、そのエレクトロニックでループ中心の新しいセットを使ってどんなことをしようか試行錯誤している間、自分自身を隠せるような名前が欲しかったの。ほとんど遊びみたいなものだったわ。活動中の数年間には、自主制作のシングルをシリーズで出したり、小さなEPをいくつかリリースした。いまは別の名義でわたし自身のソロの作品を制作中で、できれば2013年中には世に出せるようにしたいと思っているの。

UKのシーンでもテープのリリースやD.I.Y.なレーベル運営は増えているのですか? あなたが活動していたシーンやまわりにいたアーティストについて教えてください。

ローラ:増えていると思うわ。お金のないレーベルが多いから、すでに小さくても熱心なファンが付いているアーティストは、自分たちでリリースした方が利益が上がるっていう場合もあるしね。でもそれだけじゃなくて、アーティストたちが「理想のレーベル」や「ちょうど良いタイミング」とかを待つのにくたびれて、自分たちの音楽をすぐにファンと共有したいがために、そういうやり方に人気が出るようになってきている部分もあると思う。
 インターネットはアーティストとファンがそういう形で交流するのにとても便利ね。わたしはアート・スクールとして有名なサウス・イースト・ロンドンのゴールドスミス・カレッジで勉強したから、わたしのいる「シーン」はまったく違ったいろいろな分野のクリエイティヴな人びとばかりだと思う。アーティスト、フォトグラファー、ファッション・デザイナー、ミュージシャンとか。とても刺激的よ!

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“バッド・インセクト”。あの曲が、わたしたちがアルバムを完成させるための触媒になったと思う。彼らの反応次第で、わたしたちみんなで時間を作ってアルバムを完成させるか、または全部をいったん休止させるか決まると思った。

あなたの音楽的な背景について教えてください。録音なども独学で身につけたものですか?

ローラ:とくに音楽的な家族のなかで育ったわけではないんだけど、子どもの頃は舞台や役者たちに囲まれていたから、そういうものがいつの間にか刷り込みみたいに自然と馴染んでいたんだと思う。一時は大学でアートを学ぼうと思ったんだけど、気が変わって、まずは音楽をやってみるのがいいんじゃないかと思ったの。わたしが最初にエレクトロニック・ミュージックの分野に足を踏み入れたのはループ・ステーションを使ってだったんだけど、そこから独学で音楽制作用のソフトウェアを使うようになったわ。そしていくつかのテクニックを覚えるようになると、少しのイマジネーションを使って、機材も楽器もほとんど要らずに、短時間で曲を書いてレコーディングするのが一気に、そしてずいぶん簡単になったの。すごく便利ね。

ジョーイ・ワロンカーはスマッシング・パンプキンズやR.E.Mとも仕事の経験のあるベテランですね。彼はバンドにどのような影響を与えているのでしょう?

ローラ:ジョーイはすっごく才能に溢れていて、その上わたしがいままで出会った人たちのなかでも最高に良い人たちのひとりよ。ウルトライスタのアルバム全体の土台になっているのはジョーイによるビートとパーカッションなの。彼がレコード全体の操縦をしていたようなものね。でもわたしたち全員のこれまでの経験と、共通の趣味や興味すべてが組み合わさることで、ウルトライスタの作る音楽が特徴づけられていると思う。

あなた自身はこのプロジェクトでの曲作りにどのように関わっていますか?

ローラ:いくつかの曲は共同で作曲したし、その他の曲はそれぞれ別に作業したり自然とできあがったりしたわ。アルバムの作曲プロセスでは、いろいろなものを構築したり、解体したり、気に入ったパーツだけを取っておいて一から組み直したりっていう作業が沢山あったから、もういまは記憶が曖昧になっているの。どれを最初にやったのかとか、もうほとんど思い出せないわ。

将来に対する希望について言うなら、わたしが望んでいることはとにかくもっとたくさんの人がライヴに来てくれて、いっしょに歌詞を歌ってくれるようになることだけ。それが起きつづけているかぎりは、自分たちのやっている方向性が正しいものだって確信できるわ。

今作でもっとも気に入っている部分について教えてください。

ローラ:わたしのお気に入りは“バッド・インセクト”。あの曲が、わたしたちがアルバムを完成させるための触媒になったと思う。わたしたちはお互い長いこと離れていたし、それぞれ違うプロジェクトをやっていたんだけど、わたしがある日ふとずっと放置していたアイディアを使って、何かすごく「ポップ」な曲を書いてみようと思ったの。他のふたりはそれをとても気に入るかすごく嫌がるかのどちらかになることはわかっていたし、彼らの反応次第で、わたしたちみんなで時間を作ってアルバムを完成させるか、または全部をいったん休止させるか決まると思った。幸いふたりともアイディアをすごく気に入ってくれて、そこからはアルバムの残りもそれなりに早く完成したわ。

ヴォーカルや作り手として目指していきたい存在、あるいはよい意味でライヴァル関係にあるアーティストはいますか?

ローラ:とくに自分と他のシンガーを比較したりはしないの、そういう姿勢でいるのってあんまりいいことじゃないような気がするし、それに人それぞれ声って違うものであって、それぞれの居場所があると思う。でもわたしが刺激を受けている、尊敬するアーティストやシンガーはいるわ。デヴィッド・ボウイやグレース・ジョーンズ、ダスティ・スプリングフィールド、ダイアナ・ロス、ビョーク、スコット・ウォーカー、スージー・スーとか、美意識的にアヴァン・ギャルドなものを作った人たちね。限界に挑戦したり、実験的だったりするものが好きなの。

今後どのように活動を展開されていくのでしょうか。バンドやソロでやってみたいことはありますか?

ウルトライスタは1月と2月にまたツアーに出て、アメリカと日本に行ってから、夏にはたぶんいくつかのフェスティヴァルに出演する予定。それと夏には新しい音楽も作ると思うから、それも楽しみにしてるの。将来に対する希望について言うなら、わたしが望んでいることはとにかくもっとたくさんの人がライヴに来てくれて、いっしょに歌詞を歌ってくれるようになることだけ。それが起きつづけているかぎりは、自分たちのやっている方向性が正しいものだって確信できるわ。

2012年には他にも良い音楽がたくさんあったぜと、なんと、おとぎ話と踊ってばかり国がベスト10を送ってくれました! 俺にも言わせろ「2012年のベスト・アルバム」です!

有馬和樹(おとぎ話)

おとぎ話やってます。有馬和樹と言います。31歳です。2012年の10枚と言われたので、選びました。順不同。1年で3枚アルバム出しちゃうようなTY SEGALLが好きです。青葉さんとホライズンは、日本の音楽表現の可能性を広げてくれたと勝手に思ってます。とか、いろいろ毎日考えてます。1月23日に、おとぎ話の新しいアルバム「THE WORLD」が発売されます。いつもに増して不思議なアルバムです。今年は映画の撮影があったり、いつもに増して不思議な活動になりそうなので、たのしみです。

https://otogivanashi.com/

1. TY SEGALL - TWINS
2. TY SEGALL & WHITE FENCE - HAIR
3. TY SEGALL BAND - SLAUGHTERHOUSE
4. 青葉市子 - うたびこ
5. ホライズン山下宅配便 - りぼん
6. CONVERGE - ALL WE LOVE WE LEAVE BEHIND
7. THE SHINS 「PORT OF MORROW」
8. TAME IMPALA - LONERISM
9. Grimes - Visions
10. King Tuff - King Tuff

下津光史(踊ってばかりの国)

どーも、踊ってばかりの国の下津です。マヤの予言通り新世界になったわけだし、世界を変えるのは一人一人の意識だと思うので、皆さんも心のドアを少し開け、風通しの良い一年にしましょう。若輩者がすいません。年男です。24歳、B型、既婚者です。

1. Dirty Projectors - Swing Lo Magellan
2. Alabama Shakes - Boys & Girls
3. Franc Osean - Channel Orange
4. Lana Del Ray - Born To Die
5. Mala - Mala In Cuba
6. おとぎ話 - サンタEP
7. 青葉市子 - うたびこ
8. Kindness - World You Need A Change Of Mind
9. Grimes - Visions
10. Jack White - blunderbuss

Chart - DISC SHOP ZERO 2013.01 - ele-king

2012年のZERO店頭"コレ誰"高確率チャート

店頭で長居してくれているコアな音楽ファンが、店頭に流れている音楽に「コレ誰ですか?」と反応して購入してくれるというのは、レコ屋の醍醐味のひとつ。今回はそんな「コレ誰?」率の高かった2012年リリースのアルバムを紹介。コチラに、下に紹介した作品から数曲ずつ"目隠し"で試聴できるようにしましたので、音から触れてみて気になる作品があったら購入してください。アルバム全体でまた違う表情を見せる作品も多いので、あくまでも"きっかけ"として、どうぞ。


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