「Nothing」と一致するもの

LIL' MOFO - ele-king

めちゃかけたラブソング 2014

東京のいろんなクラブで毎週DJしてます、2015も宜しくお願いします。
PROFILE
https://soundcloud.com/lil-mofo-business

SCHEDULE
1/11 SUN BAR LA FAMILIA
1/14 WED CLUB OPEN
1/15 THU CLUB GARAM
1/17 SAT CLUB OPEN
1/17 SAT GRASSROOTS
1/23 FRI HEAVY SICK ZERO
1/30 FRI LIQUID ROOM

LIL' MOFO - ele-king

2014(ヒップホップ編)

順不同です!
知ったように年間チャートとかはずかしいけど、2014もやっぱその人のロマンをまるっと表してる音楽にとてもひかれました。
選びきれないから、まとまったフォーマットで出されてるヒップホップに限定。
いや、やっぱ全然選びきれてない、、
東京のいろんなクラブで毎週DJしてます、2015も宜しくお願いします。

PROFILE
https://soundcloud.com/lil-mofo-business

SCHEDULE
1/11 SUN BAR LA FAMILIA
1/14 WED CLUB OPEN
1/15 THU CLUB GARAM
1/17 SAT CLUB OPEN
1/17 SAT GRASSROOTS
1/23 FRI HEAVY SICK ZERO
1/30 FRI LIQUID ROOM


OG from Militant B - ele-king

チョコレートソウルサンデー 2014.12.30

ヴァイナルゾンビでありながらお祭り男OG。
レゲエのバイブスを放つボムを日々現場に投下。
Militant Bでの活動の他、現在はラッパーRUMIのライブDJとしても活躍中。

あけましておめでとうございます。
2015年もじゃんじゃんバリバリいくんでよろしくお願いします。
さて、、今回は前回と打って変わって甘甘歌物特集をお届け!!
窓の外は雪がちらつき、揺れる暖炉の炎を見ながら2人で毛布にくるまりココアを飲む。ニットのセータもオン(設定長っ!)そんな時に聴きたい曲を挙げてみました。カバー曲多めなので元曲を知ってる!ってなったりできて楽しいと思います。狙ってるあの子、愛するあの人と聴いてもらえたら幸いです。

1/6 吉祥寺cheeky "FORMATION新年会"
1/14 新宿open "PSYCHO RHYTHMIC"
1/24 青山蜂
1/31 京都metro
2/3 吉祥寺cheeky "FORMATION"
2/22 青山蜂

Various Artists - ele-king

 古事記や日本書紀の神話に猿田彦という神様が出てくる。ニニギの命が天から地上に降り立ったとき登場する鼻の長い神様で、道案内役をつとめたことから、道開きの神様と呼ばれている。天狗や道祖神のルーツとされることもある。
 キューバにもこの猿田彦に似ていなくもないアフリカ伝来の道の神様がいて、エレグアという。この神様は十字路に出没して進路や運命を司り、神々と人間を仲介するメッセンジャーの役を果たす。ブルースマンのロバート・ジョンソンが十字路で悪魔と取引してギターの才能を手に入れたという伝説も、そのヴァリエイションと言えなくはない。キューバのアフリカ系民間信仰サンテリアの儀式では、神様たちに音楽を奉納するが、儀式の最初と最後はエレグアに捧げる打楽器の演奏と歌だ。
 このアルバムが“エレグア”からはじまるのは、キューバ音楽のルーツのひとつとしてサンテリアなどのアフリカ伝来のリズムがあることをふまえているからだろう。 オランダのDJによるこの曲のリズム・トラックはアンビエント的なサウンドに打楽器が加わるもので、細部まではわからないが、打楽器の部分は、サンテリアの儀式の演奏を引用、あるいは参照しているのだろう。
 一方、歌で参加しているセスト・センティドはキューバでは中堅の都会派女性ポップ・コーラス・グループで、この曲でもサンテリアの歌をうたっているわけではない。前半と後半の2種類のコーラスも途中のブリッジの部分も、キューバン・ポップ的。曲全体としてはハイブリッドな組み合わせだ。
 サンテリア関係では、5曲目の“イェマヤ”も海の神様の名前。ラップとも語りともつかない男声とメロディアスな女声の歌が入るが、どちらもスペイン語ではないから、これはサンテリアの儀式の言葉が流用されているのだろう。しかしハンガリーのDJによるトラックは、ラテン・ソウルからサルサに変わっていくような曲調で、途中ではブラスがジェイムス・ブラウン/フェラ・クティ系のリズムを刻む。“エレグア”と歌・演奏の立場が逆だが、曲の構造がハイブリッドであることに変わりはない。
 他の曲も、ラップの入る曲、サルサぽい曲、バラードなど、曲調はいろいろだが、多かれ少なかれこうしたハイブリッド感覚で作られている。クラブ系の音楽が好きな人には、アンビエント的なダンス・ミュージックにキューバの歌やリズムを上モノとしてのせたアルバムに聞こえるだろう。キューバ人が聞けば、猿田彦+ハウスのような、突飛に思えるイメージの組み合わせがあるかもしれないが。
 ラム酒のハバナ・クラブに依頼されてジャイルス・ピーターソンがキューバのシリーズをはじめたときは、彼の趣味を反映してラテン・ジャズ色が強かったが、比較的無名のDJたちを起用した今回はもっともクラブ・ミュージック寄りで、しかもキューバ 音楽の知識が増えたことを感じさせる。どの曲もストリート系のワイルドなサウンドでなく、音楽的になめらかな仕上りなのは、やはりジャイルスの趣味なのだろう。

interview with Nagisa Ni Te - ele-king

  その起源を80年代の京都のアンダーグラウンドに持ち、2000年代においては「ローファイ」や「うたもの」として、〈Oz disc〉のサンプラー『so far songs』などによって提示された新しいインディの価値観を象徴し、〈ジャグジャグウォー(Jagjaguwar)〉からパステルズまでを日本のシーンにつないだバンドとしても記憶される、渚にて。2008年の『よすが』より6年、「また正月かあ!」と口をついて出るほど時の流れははやく、この間育児という経験もへてあらたに音楽と出会い直したというその中心人物・柴山伸二の、いまの暮らしと音について、湯浅学が訊ねる。(編集部)

柴山伸二、竹田雅子の夫妻を中心として活動するロック・バンド。柴山は80年代には高山謙一や頭士奈生樹らが結成したバンド、イディオット・オクロックのメンバーとして京大西部講堂を中心としたライヴ活動を展開し、自身では〈オルグ・レコード〉を立ち上げ、ハレルヤズ名義でソロLP『肉を喰らひて誓ひをたてよ』をリリース。92年にレコーディングが開始され、95年に完成をみる渚にて名義でのファースト・アルバム『渚にて』には、頭士奈生樹、工藤冬里も参加し、99年には『Wire』誌による〈ドミノ・レコーズ〉のサンプラーに工藤のMaher Shalal Hash Bazの作品と並んでハレルヤズ「星」のパステルズによるカヴァーが取り上げられるなど活躍のステージを広げた。つづく2001年の『こんな感じ』以降は米〈ジャグジャグウォー〉からも共同リリースがつづき、2014年には2008年依頼6年ぶりとなるフル・アルバム『遠泳』が発表された。


レコーディングも子どもの夏休みがはじまるまでに終らせなければいけなかったんです(笑)。


渚にて - 遠泳
Pヴァイン

RockPops

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湯浅学:今回、渚にてのアルバムは計画的に作ったの?

柴山伸二:なかば計画的にですね。子育てが一段落してからはじめたので、6年ぶりというのも必然というか(笑)。子どもがひとりで自分のことができるようになった段階で、練習とかライヴができる状態に回復したという感じです。

湯浅:曲は作り溜めとかするんですか?

柴山:しないですね。何か設定されないと曲が出てこないんです。たとえばライヴをやるとか、レコーディングを年内にしなきゃいけないとか。宿題と同じで、締切とか目標がないとダラダラしてしまうんです(笑)。

湯浅:じゃあ、今回は発売を先に決めていたんですか?

柴山:発売が決まったのは後です。レコーディングがいつ終わるかハッキリとしなかったんですよ。作業を進めて、めどがついた段階で発売日を決めました。レコーディングも子どもの夏休みがはじまるまでに終らせなければいけなかった(笑)。子どもを見送ってから、午前中はスタジオに入って、学校が終わるまでにスタジオから帰ってこなければいけなかったという。だから、毎週午後3時までには帰宅していました。それが2月から7月までの足掛け半年くらいですね。

湯浅:今回、サウンド的なテーマや目標みたいなものはあったんですか?

柴山:サウンドの方向性はいつも同じなんですよ。90年代からそれは一貫しているつもりです。変わるのはスタジオの機材くらいで、目指している方向はつねに一点だけなので。僕は70年代っ子なので、黄金期のピンク・フロイドとかザ・バンドとかのやり方を自分なりに応用してみたり。まあ、勝手に肩を並べたい、という気持ちで。

湯浅:77年くらいまでですかね?

柴山:70年代前半までですね。ピンク・フロイドで言えば『狂気』までです(笑)。

湯浅:そうしたら73年(笑)?

柴山:そうなんですよ。ちょうど中高生くらいのとき。一枚のレコードを2ヶ月くらい毎日聴いていました。それとはまた別枠で76年以降はパンクの影響も入ってきますよね。70年代前半プラス76年以降、みたいな。パンクだったらジョイ・ディヴィジョンあたりまでだから、ディス・ヒートまでっていう感じですね。そう言うと「あ、そうですか」で終っちゃうんですけど、言わないと誰もわからないんです(笑)。

湯浅:そんなことはないと思うけど。でも、渚にてを聴きつづけていないとわからないと思うんですよ。

柴山:昔から聴いてくれている人はどんどん消えていってますけどね(笑)。

湯浅:最近の作品から聴きはじめた人と、昔の作品から聴いている人に接点はあるんだけど、感覚がズレちゃうところがあるらしくて。

柴山:それはいつの時代でもあると思いますよ。いまバンドをやっているような人はジミ・ヘンドリックスも後追いで、もちろん聴いたのは死んでからだし。ドアーズやビートルズでさえ全盛期はリアル・タイムでは知らないわけで。まぁ、僕は青盤赤盤世代ですから、それで聴いてどの曲がどのアルバムに入っているのかなってレコード屋さんで探して。それで『サージェント・ペパーズ』からさかのぼって聴く、みたいな。山本精一くんも検索すればボアダムズとか出てくるけど、いまはそういうイメージの人じゃないでしょう? 渚にても同じように、さかのぼって関心を持ってくれる人も少なからずいると思うんですけど。


僕は70年代っ子なので、黄金期のピンク・フロイドとかザ・バンドとかのやり方を自分なりに応用してみたり。まあ、勝手に肩を並べたい、という気持ちで。

湯浅:渚にてを聴いていると、歌詞の出発点で言葉をどのように紡いでいるのかなって思うんですよ。なんかこう、ある日閃いている感じもするし。

柴山:それもあります。ほとんどは子どもと散歩してるときとか、仕事中にちょっとずつ思いついたものをメモしてまとめて、っていう感じです。「紡ぐ」というのはまったくないですね。

湯浅:題名を先につけて詞を書くっていうのはないんですか?

柴山:タイトルをつけるのは最後ですね。まず歌詞の内容ができあがってから、タイトルを考えます。

湯浅:順番だと曲が先だと?

柴山:そうですね。まず、曲の一部となるメロディができてきて、そこから引っ張り出してくるみたいな感じです。その過程で、土台を忘れないようにフレーズを当てはめながら、残りのメロディを引っ張り出すというか、捻り出すときもありますけど(笑)。それである程度出てきた時に使えるものが採用になる。あとはギターでコードを付けて、という作業ですね。

湯浅:コード進行からメロディを作るんですか?

柴山:そっちの方が少ないです。ギターで遊んでいるうちにというのは珍しいんですが、今回のアルバムにはいくつか入ってますよ。2曲めの“まだ夜”はギターからできたやつですね。コード進行が先にできて言葉をつけていくというのは、普段あんまりないです。

湯浅:じゃあ、メロディがまず最初に浮かぶんですか?

柴山:そうです。急にサビが出てきて、あとでその前後の様子を探るというか。それとも、イントロの最初のメロディがパッと浮かぶか、その2パターンあるんですよ。それがだいたい半々くらいの割合です。

湯浅:タイトルとメロディと詞の3つがあるんですけど、題名が並んでいて、アナログ盤だと最初から聴いて……となる。だけど、CDって意外とランダムに聴けちゃうというか。

柴山:買って初めに3曲めから聴く人とかいますかね? ダウンロードとか?

湯浅:たまにそういうのがあるんですよ。題名で検索して聴いちゃった人もいるし。タイトルと詞の内容がかけ離れていると、かえって喜ばれることがあるらしい。それはほとんど例外的な話なんですけどね。だけど、基本的に詞ができて歌ができて曲ができて、タイトルをつけるにあたっては、詞のテーマと曲全体のイメージとのどっちを優先されるんですか?

柴山:どちらも同じですね。表現したい曲のイメージと、具体的にどういう言葉を選択するかをどこまで追求するかですよね。自分の中でのリアリティというか。これしかない、というところまで考えるという作り方ですね。

湯浅:今回のって、というか毎回そうなんですけど、作り込んでいったあとに、引き算で少し抜いた感じがするんですよ。

柴山:それは音に関してですか?

湯浅:いや、全体的に。歌詞とか。抜いたというか、ここを少し待とうというか。間合いが少し柔らかいというか。

柴山:それはたぶん、歳を取ってきたから(笑)。よく言えば余裕のようなものが出てきている気がしますね。今回の新作の曲も、おととし子どもが4才になって昼間は幼稚園に行って家にいない時間ができてやっと作れたんですよ。ふたりだけで育児をしていたので、その時を待ってました(笑)。子どもは双子で、幼稚園に上がるまでは24時間つきっきりで。おむつが外れるまでは音楽もクソもありませんでしたね。最初の1年はギターをぜんぜん触らなかったから、左手の指先がふにゃふにゃになってしまいましたよ(笑)。
 それでやっと幼稚園に上がって、とりあえず半日は家に子どもがいないので、その間にリハビリを兼ねてギターを練習してみたんですけど、昔の自分の曲のコードがなかなか思い出せなくて(笑)。レコードを聴くほうは夜中にコソコソとやっていたんですが、4年間曲作りはゼロだったんです。でもそれが案外いい方へ出たというか。しまい込んでいたギターを押し入れから出してきて子どもがいないうちに触ったら、「こんないい音がするんやな!」と、自分でギターを再発見してしまったというか。それまで1年以上はギターに触りもしなかったので。ちょっとした浦島太郎状態でしたね(笑)。

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しまい込んでいたギターを押し入れから出してきて子どもがいないうちに触ったら、「こんないい音がするんやな!」と、自分でギターを再発見してしまったというか。

湯浅:それで新鮮さはあるんですか?

柴山:さすがに何年か触らなかったから新鮮さはありましたね。で、最初にできたのがタイトル曲の“遠泳”で、歌詞もほとんど悩まずに自然と出てきました。次はこうだな、っていうのがわかったんです。誰かが用意していてくれてたのかなって思いました(笑)。ライヴのほうも妊娠中期くらいから休んでいたので、5年ぶりくらいにそっちの方も再開したんですよ。そのときは活動休止以降の新曲だけでやって、昔の曲はアンコールで2曲やっただけでした。

湯浅:ライヴのときは子どもをどうするんですか?

柴山:最初は地元の大阪でしかライヴができなくて、しかもランチ・タイムで12時半スタートっていう(笑)。妹が車で来られる距離に住んでいるので来てもらいました。妹はとっくに子育てが終わっていて、いちばん上の子はもう就職してたから、時間の余裕があったんですよ。だから妹に子守りをしに来てもらうという(笑)。妹にはなついていたので安心できました。妹に朝9時に家に来てもらって、僕は午後4時までに帰ってましたよ。妹も5時までには帰って晩ご飯の支度をしなきゃならなかったので(笑)。

湯浅:そういう生活上の縛りがあったほうが、やることがまとまるのかもしれませんね。

柴山:メリハリがつきますね(笑)。いい意味で緊張感が生まれる。まだ小学1年生なので、夜のライヴはちょっとできないんですよ。発売記念だけはしょうがないから東京で夜にやりますけど、どうしても一泊になるのでそのときは妹に預けて、次の日夕方の明るいうちに帰るっていう(笑)。

湯浅:1年生だとあと10年はかかりますよね。

柴山:ライヴの会場にはまだ連れて行けないですよね。小学校高学年くらいになったら、いっしょに行こうと思います。中学くらいまでは厳しいかな。

湯浅:中学くらいになれば、行きたい時に行けますけどね。坂本慎太郎くんの子どもが中学2年生で、オシリペンペンズのライヴを観に来ていて、このあいだ会いましたけど。好きな音楽も選べるし、自分のオヤジの音楽聴いているって言ってたよ。それでペンペンズのファンだから来たって言ってました(笑)。

柴山:ペンペンズの方が好きなのかな(笑)。


使う単語が歳をとって簡単になっていると思います。自分で漢字で書けないものは使わない、みたいな。

湯浅:ところで、生活のなかで詞を書いていくにあたって、やっぱり昔使っている言葉と、いま使っている言葉って少しちがうっていうのはあるんですかね?

柴山:多少はちがうと思いますけどね。

湯浅:それは意識的に変えていくってことかな?

柴山:使う単語が歳をとって簡単になっていると思います。自分で漢字で書けないものは使わない、みたいな。

湯浅:それは俺もよくわかります。

柴山:「喪失感」とかね。「喪」が書けない(笑)。

湯浅:でも若い頃って、けっこう無理して難しい言葉を歌おうとしていたってことないですかね?

柴山:ありますよ。はっぴいえんどの悪影響を受けて。国語辞典を引っ張り出してきて「寂寥なんです」なんて歌詞を作って真似事をしていた時期がありましたね(笑)。これはオフにしといてください(笑)。

湯浅:何かこう、到達しない部分もあると思うんですが。

柴山:歌詞がですか?

湯浅:いや、音楽全体で。つまり、昔は無理してやっていたけど、いまでは多少はできる部分もあるんじゃないのかなって思うんですよ。

柴山:いまは逆です。昔できていたことがいまはできない(笑)。高齢化とともに、記憶と体力が衰えましたね。やっぱり50歳を過ぎたあたりから。歌詞を全部暗記できなくなったとか。20年前は全曲普通に暗記してやっていたのに、いまは譜面台を置かないと歌詞が途中で出てこない(笑)。

湯浅:あれは一回置いちゃうとだめですね。

柴山:昔はなかったんですけどね。だんだんできないことが増えている(笑)。で、その中で必要に追いやられてシンプル化が進められてきたという感じです。退化していっているような。

湯浅:やり過ぎない部分というのもあるのかもしれないですね。結果的になのかもしれないけど。

柴山:音楽的にも歌詞にも、よく言えば無駄が無くなってきたというか。ハッタリをかます必要性が無くなってきたというか。やっぱり30代くらいまでは虚勢を張ってみたりだとか、ありましたね。


音楽的にも歌詞にも、よく言えば無駄が無くなってきたというか。ハッタリをかます必要性が無くなってきたというか。

湯浅:柴山さんにもあります?

柴山:ありますよ。誰にでもあるんじゃないですか? 「お前らにこれがわかるか?」みたいなハッタリをぶつけたい衝動が。

湯浅:それはありますけどね。

柴山:村八分的な。「今日はのらないし、やめるわ」みたいな(笑)。

湯浅:ははは(笑)。あれなんか、憧れがあるんですか?

柴山:ちょっとやってみたいなと思いますよね。でも、あれはチャー坊だからサマになるんで(笑)。

湯浅:真似しても、今日は具合が悪いのかなって思われたりして。

柴山:次に会ったとき「スイマセン」って謝ったりして(笑)。そういう憧れみたいなものもだんだんとなくなってきたりして、自分のスケールも「まぁ、こんなもんなんだな」みたいな(笑)。よくも悪くも自分に見切りがつくようになってきたというか。でもまぁ、できることとできないことは、人それぞれにあるものなので。自分には何十行もあるような歌詞は作れないなとか(笑)。昔に比べたら、やっぱり言葉数は少なくなりましたね。だけど、ちょっと尺が長くなりました。短い曲が減って、5分以上の曲がほとんどになって。年寄りの話は長い、みたいな(笑)。

湯浅:でも一音一音の間合いが長いというのはあると思うんですけどね。

柴山:でもそれは自分ではよしと思っていますけれどね。長くなったといっても無駄があるわけではないので。ギター・ソロとか回数が決まっているんですよ。“残像”とかはライヴで長くなる余地が残っているので、レコーディングでは詰めましたが、ああいうのも別にここまで短くしてもなんの支障も出ないというか。“残像”はCDだと10分程度なんですけど、ライヴだと15分以上とかになります。

湯浅:そうですよね。スタジオだとまとめるほうへ行きますよね。

柴山:CDは2枚組にはできないんで、70分くらいには押さえなきゃいけないという。

湯浅:まぁでもアナログなら確実に2枚組だから。

柴山:だからアナログを出してほしいんですけど、2枚組がネックになってディレクターから返事がこないという(笑)。

湯浅:2枚組はジャケ代がかかりますからね。

柴山:CDなんか出さないで、アナログとダウンロード・チケットのセットを販売したらどうか、と提案したんですけど、返事がなかったですね(笑)。やっぱりニール・ヤングとかそういうクラスじゃないと無理かな?

湯浅:アナログにCD付録がいちばんいいですね。

柴山:CDは売れないって、売る方も買う方も言っているのに、なんでCDを出すんだっていう気もしますよ。

湯浅:そうですね。アナログを作る人がもう少し増えたらと思いますけど。化成(東洋化成)しかないから。

柴山:国内一社だけで値段が決まっちゃってますからね(笑)。一時期、東欧のプレスが運賃考えても安く作れる、というんで流行ったこともあったけど。

湯浅:なんかヨーロッパのプレスって音が悪いんだよな。

柴山:コストは安くても、再生ビニール使っている感じがしますよね。東洋化成さんにもうちょっと値段を安くしてもらって(笑)。

湯浅:立ち会いもできるし、環境はいいんだけどね。あれは独禁法に触れないのかな(笑)。

柴山:文句言う人が誰もいないんですね(笑)。

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音はフォステクスのシブイチの8チャンネル(笑)。それしかスタジオになかったんです。


渚にて - 遠泳
Pヴァイン

RockPops

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湯浅:これはアナログ録音で?

柴山:リズム録りはアナログです。オープン・リールのテープを回しました。それで重ね録りをプロ・トゥールスでやりましたね。

湯浅:音は何チャンネルで録っているんですか?

柴山:音はフォステクスのシブイチ(4分の1インチ幅のテープを使用する)の8チャンネル(笑)。それしかスタジオになかったんです。

湯浅:よくありましたね。

柴山:エンジニアの私物です(笑)。

湯浅:テープは使い回し?

柴山:僕が持っていた6ミリのテープを押し入れから引っ張り出してきて。昔、テープをまとめ買いしていた時期があって。ピース・ミュージック(中村宗一郎氏のスタジオ)でやっていた時はアナログ録り、アナログ落としだったので。その頃に箱買いしていた6ミリテープの余りを発見して、それを使いました。大阪のスタジオで録った『よすが』の時はオタリのアナログ・マルチ・レコーダーのテープ2インチ幅の24トラックを使ったんですけど、渚にてが使ったのが最終稼働だったんですよ。今回もオタリで録ろうとしたらピンチ・ローラーのゴムが変形していて、使えない状態だったんです。エンジニアの人がスタジオのオーナーに修理を打診したんだけど、だめでした。「プロ・ツールスで全部できるんだから経費のことを考えろ」と言われて。
 それで諦めかけたら、エンジニアの人が学生時代に宅録で使っていたフォステクスが動くかもしれない、となって。持ってきてもらったらギリギリ使えたんです。それで今回のベーシックのドラムとベース、ギターの録りは4分の1インチの8トラックなんですよ。これは専門的な話でそれこそ『サンレコ・マガジン』(サウンド&レコーディング・マガジン)向けかもしれないんですけど……2インチ幅の24トラックのオタリはSNが非常によくてヒス・ノイズもほとんどないから、ノイズ・リダクションがなくても使えるほどなんです。非常にハイファイで硬質な音で、逆に言うとデジタル的なぐらいクリーンな音質。業務用マルチ・レコーダーの国産では最高峰。対して、今回使ったのは民生用のフォステクスでしかも83年製……! しかもシブイチで(笑)。フル・デジタルは回避したかったので仕方なかったんです。ダメもとで、もし途中で壊れたら諦めるかってやってみたら、トラブルがなくて全曲録れたんですよ。一応、業務用レコーダーと比べたらヒス・ノイズも多いのでドルビーだけは使いましたけど。で、録ってみたらテープの幅が狭いのが影響して、すごくいい結果が出たんですよ。いわゆるテープ・コンプレッションが、テープ幅の狭い分だけ極端にかかったんです。悪く言えば強い音が潰れかけてるんですけどね。

湯浅:俺はあの感じが懐かしいと思いました。

柴山:ベースのブイーンと鳴るときの音なんかね。あれは全部テープ幅の狭さによってできたものです。聴いてみたら、これは2インチのときよりも迫力があるよなって(笑)。メンバー全員一致でこれでいこうってなりました。

湯浅:そういう事情があったのか。

柴山:だからフォステクスの民生用の8トラックのオープンリール・レコーダーが出発点でした。


よく言われました。「これは今年の録音なんですか?」って(笑)。

湯浅:ギターはあとで?

柴山:重ねたギターはプロ・ツールスでやりました。基本的にはベーシックのエレキ・ギターとベースとドラムがアナログ録音です。

湯浅:キーボードは?

柴山:一日来れなくて後録りになったけど、3分の1くらいは4人いっしょにやりました。ドラムの前に皆並んで(笑)。

湯浅:8チャンネルでやりくりっておもしろいですよね。

柴山:マイキングでどれだけ録るかを工夫しましたね。8チャンネルなんて20歳ぐらいの宅録時代以来(笑)。

湯浅:8チャンって意外に命が短くて、4チャンの次はもう16チャンになっちゃうって言ってたから、かえっておもしろいなと思いました。

柴山:8チャンネルではベーシック・トラックで一杯になって重ねまではさすがにできないので、仕方ないですが後の作業はプロ・ツールスで(笑)。

湯浅:それはもうマルチで戻して?

柴山:うん。それにヴォーカルなどを重ねて、ミックスもプロ・ツールスですね。マスタリングはまた別のスタジオに入って、音源をスチューダーの2トラック・ハーフ・インチ・レコーダーのテープ・スピード76cm/秒で一回録りました(笑)。スチューダーを持ってるスタジオが大阪で見つかったんです。で、スチューダーで再生した音をまた取り込んでマスタリングしました。それでなんともいえない音色になってるんですけど(笑)。

湯浅:ぜんぜん、いまどき感がないですよね。

柴山:それはよく言われました。「これは今年の録音なんですか?」って(笑)。

湯浅:ははは(笑)。「あれ?」ってなって3秒くらいで慣れるんですけど。最初の印象はすごく新鮮な感じがしました。

柴山:マスタリングのスタジオでも言われました。「こんな感じのスネアの音を聴いたのは20年ぶりぐらいだ」って。

湯浅:スネアはすごいショックですよね。いま録ろうと思ってもなかなか録れないし。

柴山:ああいう感じにしたいなと思っていたのが、偶然ポコッとできて。「あれ? 鳴ってるやん!」みたいな。

湯浅:ドラムって本当に難しいですよね。

柴山:とくにスネアがね。ザ・バンドの、リヴォン・ヘルムじゃなくてリチャード・マニュエルのスネア・ドラムですよ。“ラグ・ママ・ラグ”のあの鳴りです。鈍く低いけれど、通りがいいというか。漬物石をドスっと置いたような音ですね(笑)。あの音が出せたから今回はもう成功したな、という(笑)。


ザ・バンドの、リヴォン・ヘルムじゃなくてリチャード・マニュエルのスネア・ドラムですよ。“ラグ・ママ・ラグ”のあの鳴りです。あの音が出せたから今回はもう成功したな、という(笑)。

湯浅:柴山さんはこの『遠泳』のステレオ感に関してはどういう構想を持っていたんですか?

柴山:左右の広がりとかですか?

湯浅:それとか、分け方とかですね。

柴山:けっこうこだわるほうですよ。それはやっぱりピンク・フロイドとかキング・クリムゾンの影響ですね。最初は左にあったギターがいつの間にか右にあるとかね。説明しないとわからないけど、鋭い人がヘッドフォンで聴くとわかる、みたいな。そういうのは毎回必ず入れてるつもりなんですけど。

湯浅:まず定位はセンターから作っていくんでしょ?

柴山:そうですね。ドラムとベースからはじまって。それはまぁ、基本のセオリー通りですけど。

湯浅:ドラムなり、上モノをどっちにするかとか、最初からモノで考えて振り分けする場合も?

柴山:レコードのモノラル盤は好きですけど、自分で作るときはモノラルはあまり考えないですね。小さい頃はラジオだけでモノラルしか知らなかった。でも、親にステレオを買ってもらってからは右と左が別れていて、ヘッドフォンで聴いたら「音が回る!」みたいな衝撃(笑)。ステレオの原体験は大阪万博の鉄鋼館のシュトックハウゼンの演奏で、あれもサラウンドの先駆けみたいなことをやってましたから。照明と音が同期して観客席を回るとか。

湯浅:いまは簡単にできることだよね(笑)。


プロ・ツールスは人生が500回ある感じですよ。今回は「もうそんなに要らんやろ!」って見切りをつけて作業してました(笑)。

柴山:そういう音のパノラマ的な定位ですよね。『2001年宇宙の旅』の後半のすごく盛り上がる光と音の洪水のところとか。前後感と左右感が全部出てる。そういう効果は今回のアルバムでも、あくまで味つけとしてけっこうやってますよ。そういう意味でプロ・ツールスはすごく便利になったので。でもプロ・ツールスも逆に能率が悪いですけどね。何でもできる代わりに修正もどこまでもできてしまうから、諦めがつかないんですよ。あと、指定した過去に瞬時に戻れるので。アナログだったら絶対に再現できない部分があって、そこで諦めがつくんです。人は生まれたら死ぬ、みたいな(笑)。アナログはいったんフェーダーをゼロにして電源を落としたら、卓の写真撮ってもフェーダーの位置をテーピングしても、次の日は絶対に同じ音は出ない。でもプロ・ツールスは何回でも生き返れるから、終わりがなくなっちゃうんですね。

湯浅:あれ聴き比べができちゃうのがよくないですよね。

柴山:『よすが』を録ったときは、「ベーシックは何月何日にやった何番目のテイクで、上モノの一箇所だけ今日はちょこっと変えます」とかやってましたからね(笑)。プロ・ツールスは人生が500回ある感じですよ。今回は「もうそんなに要らんやろ!」って見切りをつけて作業してました(笑)。でも、ときどきは「本当はまだ直しができるのにな〜」って内心思ったりしてましたよ。でも、プロ・ツールスで修正を重ねて追い込んだつもりでも結局はどう変わったのか、自分でもあんまり区別がつかないんです(笑)。ベーシックは同じもので、非常に細かいところをちょっと変えているだけですから。

湯浅:全体を変えるわけじゃないですからね。

柴山:今回やっとプロ・ツールスの見切りもついてきて、ミックスの作業も「子どもが学校から出てくるまでにキリをつけて帰らなきゃ」ってね(笑)。いまは子どもが狙われる犯罪がたくさんあって他人事じゃないですから。子どもを一人にすることが「まぁ、ええか」とはならなくて、「下校まであと20分しかない!」ってなります(笑)。そういった心地よい緊張感で作業を進めさせていただきました。

湯浅:だから忘れることがけっこう大事かもしれませんね。あんまり憶えているとかえって気になって戻りたくなっちゃうというか。

柴山:本当にそう思います。プロ・ツールス初体験のときは全部魔法のようでしたけど。

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ピッチと時間軸を変えるのだけは絶対にしない、と。

湯浅:アナログのほうが、かえって思い切りがよくできていたのかもしれないな、といまになって思うんですけど。

柴山:ミックスでも同じですよね。いまは0.2dBのレベルの上げ下げでエンジニアからツッコミがきますから(笑)。

湯浅:そうそう(笑)。なんか急に細かいことを言ってる。0.2ってどこだよっていう。

柴山:スタジオの現場でデジタルだと、0.2dB上がったっていうのがわかるんですよ。

湯浅:あと波形でわかるじゃないですか? あれがよくないと思うんだよな。

柴山:まぁプロ・ツールスでも、時間軸とピッチの修正だけはしません。バスドラが少し突っ込んでいるからコンマ1秒ずらして修正しよう、とかはやらないんです。エンジニアは耳が慣れているから気づくんですけど、絶対にいじるなって言ってあります。自分の歌のピッチも「ここ少し修正してもわかりませんよ!」って言われるんですけど、それだけはやめてくれってお願いしてます(笑)。一音だけ歌い直したりとかはしましたけど。

湯浅:それはアリなんですか?

柴山:それはアリにしました(笑)。でもピッチと時間軸を変えるのだけは絶対にしない、と。

湯浅:いまって歌が簡単に直っちゃいますもんね。

柴山:そうなんですよね。だからそれをやると人として終わり(笑)って自分で決めていたので。

湯浅:最初からそうだと潔くていいですよ。なんか細かく直すのにすごく抵抗があるんです。自分で歌っていても、そういうふうに思うし。だけど、たとえば昔も手動でピッチを直していた人もいるわけで。つまりマルチ・トラックのテープで一箇所ずつ微調整して再生して上げて音程を直す。ユーミンとかもそうなんですよ。ものすごく細かくやってもあれだっていうのがすごくおもしろくて(笑)。『ひこうき雲』のときはそうやって全部ヴォーカルを直したらしくて、歌だけでものすごく時間がかかってるんですって。

柴山:一曲やるだけで気が遠くなりそうですね(笑)。だから70年代の後半くらいにはピッチ・シフターが出てきましたもんね。

湯浅:あれは録ったのが72年だから出たのが73年か。すごい大変だったって言うんだけど。

柴山:『ミスリム』のときもそうやってたんですか?

湯浅:その頃までには音程はよくなっていたらしいんだけど。だけど、それはそういうふうにしたかったからそうしてるみたいだけどね。

柴山:70年代は、浅田美代子も修正をしてあれだったから。

湯浅:浅田美代子は直しようがなかったんじゃない?(笑) これは無理だ、みたいな。再生したものを聴いて違和感があるのが嫌っていうのもあるし。

柴山:本人にしかわからないですよ。歌って細かいところを気にしているのは本人だけ、っていう。プロ・ツールスだとエンジニアが簡単に「ここの音程は上がりきってないから一瞬だけ上げてみましょう」とか言うんですけどね(笑)。ピース・ミュージックで録ってたときなんか、あんまり何度も同じ箇所を歌い直すもんだから「テープが粉を吹いてきたので一回テープ止めませんか」(笑)ってなったこともありました。レコーダーのヘッドが熱くなって、テープの磁性体が剥がれ落ちてきたんですよ。新しいテープだったんですが「テープがダメになっちゃうんで、ここは置いといて別の箇所を録音しましょう」って(笑)。

湯浅:今回はパッチワーク感が少ないですよね。

柴山:少ないですね。プロ・ツールスは使っているんですけど。今回は一本筋が通ったアルバムとして手応えはあるんですよ。大体同じ時期にできた曲ばっかりで。半年間くらいかな。

湯浅:前の(『よすが』)はそうでもないんですか?

柴山:違いますね。何年かの間に少しずつ、という感じでした。ライヴが今度あるから、少なくとも新曲を一曲はやろう、という感じで。そうした方が新鮮でもあるんで。それを2、3年やって10曲超えたらアルバムを作ろう、となるんですよ。『よすが』まではその繰り返しが多かったですね。

湯浅:もうそういうふうにはできないんですかね?

柴山:ライヴ自体がコンスタントにできないので。子どもが大きくなったら、ライヴの回数は増やすかもしれないですけどね。


それまでは自分から音楽を取ったらゼロだと思っていた。いまはすべて子どもが最優先という形になってますから。それが幸せということなんですけど。

湯浅:うちは今年で上のが20歳なんですよ。下が中学3年で、ふたりとも女です。

柴山:口をきいてもらえますか(笑)?

湯浅:うちは仲良しなんですよ(笑)。

柴山:A&Rの井上さんの娘さんは14歳から20歳の間まで口をきいてくれなかったらしくて。

湯浅:井上のうちはビッチですから(笑)。うちの場合は子どもが小さかった頃はべったり育児してたからね。ライヴを観に行くのがとにかく大変だよね。双子だったらもっと大変なんだろうなって思います。

柴山:夜、子どもが寝てからヘッドフォンでこっそりレコード聴いていても、育児で疲れてるから3曲めくらいで寝ちゃうみたいな(笑)。

湯浅:生活のサイクルが変わって、昔作れなかったものが作れるってことはないんですか?

柴山:今回の新曲は全部そんな感じですね。表現としてはそんなに変化がないんですけど、子どもがいなかったときとは感覚的に違いますね。

湯浅:1回めはそんなでもないんですけど、2回めからわかるんですよ。最初は渚にての新譜として聴けるんだけど、2回めから「あれ?」と思うことが随所にあってまた1曲ずつ繰り返したくなるんですよ。そこはずっと聴いた身としても発見がありました。

柴山:ありがとうございます。

湯浅:いえいえ。それはやっぱり生活の変化がけっこうあるのかなって思って。

柴山:いちばん大きいと思います。まあフルタイムのミュージシャンではないので(笑)。4年も休んでミュージシャンとか言ったら恥ずかしいですけど。まぁ、片手間だったのが、そうではなくなったというか。自分から子どもとの生活を取ったら音楽しか残らない、みたいな感じですかね。子どもが生まれたのは本当に大きいですね。それまでは自分から音楽を取ったらゼロだと思っていた。いまはすべて子どもが最優先という形になってますから。それが幸せということなんですけど。だから健康に気をつけてますけどね。

湯浅:それはやたら言われますよね。死なないようにってね。

柴山:だからまぁ、生きてるって素晴らしい、みたいなことですよ(笑)。東日本大震災もありましたし。あのときは子どもがまだ3歳でした。そのときにできた曲っていうのはないんですけど、歌詞の世界観には入っていると思います。日本人全員が同時に死をリアルに意識したのが3.11だったと思うんですけど、戦後のナマっちょろい世界を生きてきた自分の世代にとっては、後にも先にもあれほどのものはなかったですからね。豊かな高度経済成長期で育ったので。

“遠泳”ができたときは、もう一度泳ごうという気分だったんですよ。(中略)結局、海へ泳ぎ出してどこかにたどり着くのか、一周して戻ってくるのか、コースは人それぞれなんだけど、そういう、生きていくことのメタファーなんです。

 被災された方々には不謹慎にあたる言い方かもしれないですけど、“遠泳”ができたときは、もう一度泳ごうという気分だったんですよ。津波で亡くなられた方々が、逆に海がなかったら死なずにすんだかというと、そう考えても意味はなくて、そもそも海がなかったら人間だけではなくてあらゆる動物も地球自体も生きてはいけないわけで。“遠泳”の歌詞にはそれがいちばん入っているかもしれないですね。海はもっとも豊かな存在であるかもしれないけれど、もっとも恐い存在でもあるわけで。結局、海へ泳ぎ出してどこかにたどり着くのか、一周して戻ってくるのか、コースは人それぞれなんだけど、そういう、生きていくことのメタファーなんです。比較的早い段階で(アルバムの)タイトル『遠泳』とタイトル曲は決まってました。あとはメンバーを説得するだけでしたね(笑)。他の曲名も全部漢字2文字にしようと思ったんだけど、ひらがなが好きな人もメンバーにいて反対の声があったので(笑)。世界でいちばんすごい存在は海であって、その次は母だということですね(笑)。お母さんもすごいです。

湯浅:そうだよなぁ。男って子どもを生めないしな(笑)。

柴山:次は生きているうちにアルバムを何枚作れるかという最大のテーマについて挑戦したいと思います(笑)。それと、孫の顔を見るというのと、レナード・コーエンに負けないように80歳を過ぎてもアルバムをリリースすることですね。この前、頭士奈生樹くんに会ったんですよ。同い年なんですけど、「あと何枚作れる?」みたいな話をして、「いや〜、あと1枚かなぁ」って(笑)。いや、それは少な過ぎるからせめて5枚くらいは出さないと、って。頭士くんはどこか仙人的な生き方をしている人で、べつに強いてCDを出さなくてもいいというか、いい曲さえできたらあえて他人に聴いてもらわなくてもかまわない、みたいなんですよ。僕は俗世間の人間なのでこんないい曲CDにしなきゃあかんで、と思ってしまうんです。頭士くんは田中一村みたいな考え方なんです(笑)。作品至上主義で。離れ島でひとりで制作に没頭して「ええ絵が書けた!」って完結(笑)。で、僕が出版社の編集者みたいになって「これは画集にしなきゃあかんよ!」って言う、みたいな。人に見てもらってはじめて作品って完結するんだからって言っても、「いや必ずしもそんなことはないんじゃ」っていうような感じ(笑)。

湯浅:死後発見っていうのもあるからね。

柴山:ゴッホになってどうするんだっていう(笑)。生きているうちに騒がれなきゃあかんやろ、と言っているんですけど。山本精一くんなんかも焦っていると思いますよ。ハイペースでライヴもやってアルバムも毎年のように作ってるから、「ちょっと出しすぎ?」みたいな。まぁ、それはそれで彼の生き方なのでいいと思いますけど、でもそれに対して憧れもありますね。彼はまだ独身で子どももいないから、好きに時間が使えていいな、と思います。好きなときにライヴにも行けるし、御前様になっても怒られたりしないし。気が向いたときにレコーディングしてCDを出して、単純にうらやましいなーと思います。いつでも練習できるし(笑)。

湯浅:じゃあ、子どもの成長に従って次のアルバムが決まりそうですね。

柴山:そうですね。だからリリースはいままでより増えると思います。


ゴッホになってどうするんだっていう(笑)。生きているうちに騒がれなきゃあかんやろ、と言っているんですけど。

湯浅:小学校1年生というと授業は5時間ですか?

柴山:5時間ですね。2年生から6時間になるみたいです。だから親の自由時間がちょっとずつ増えていくので、それがいまの楽しみです。あと、お風呂が一人で入れるようになるのが時間の問題で。いまは毎日いっしょに入っているけど、女の子ですから。

湯浅:お風呂は小学校3年生までですね。

柴山:「お父さん臭い」とか「来ないで」ですよね。まだ大丈夫で裸で走り回ってますけど(笑)。いっしょにいられる時間を楽しみたいと思います。

湯浅:こうしている間にも成長していますからね。

柴山:時間のスピードがあいつらと自分でぜんぜんちがいますからね。でも同じ時間軸で生きていることが不思議で楽しいですね。

湯浅:たぶん年齢の分母がちがうからだと思いますね。

柴山:もういま、自分の一か月っていったら一週間くらいの感覚ですよね。とくに子どもが生まれてからはファズをかけたみたいに自分の時間が加速してます。この間、向田邦子のドラマを観てたら、森繁久彌が出ている回があるんですけど、お正月のシーンで森繁久彌が「また正月かぁー!」って言うんですけど、その台詞が最近自分もよく出るようになりましたねえ(笑)。

湯浅:そうそう、すぐに年末になっちゃうんですよね。夏とか短い。

柴山:小学生のときとか、夏休みは永遠に近かったですもんね。

湯浅:夏が3日くらいで終っちゃう感じですよね。

柴山:もう1年が半年くらい、って感じですよね。だから、うかうかしてないでレコ発のライヴに向けて真剣に準備しようと思ってるんですけど。

湯浅:それはいつなんですか?

柴山:1月です。12月はライヴハウスが押さえられなかったんですよ。子どもの学校があるから土日しかライヴができないっていう括りがあるんで。土曜日の朝に子どもを妹に一泊預けて上京して、夜にライヴして翌日帰ってきて引き取って、月曜日に学校に行かせる、という。

湯浅:大阪のライヴは祝日の午後にやるんだ。

湯浅:大阪ではランチ・タイムにやって明るいうちに帰るということです(笑)。年配のファンにはそっちのほうが評判がいいんですけどね。帰るのが楽みたい。会場の外に出たらまだ日が出ていて、一杯飲んで帰るのにちょうどいい、みたいな。

湯浅:一杯飲んでも帰ったら9時みたいな感じですもんね。

柴山:普通のライヴだったら、終ったら10時半とかでゆっくり飲みに行くには終電が気になる。だから大阪は早めの時間にやって、東京は営業的にしょうがないから夜やりますけど(笑)。

湯浅:来年またアルバムができるといいですね。

柴山:来年はどうかな……。

湯浅:じゃあ、再来年。意外と毎日が早いので、気がつかないうちに2年くらい経っているんですよね。

柴山:ははは、今回のは6年ぶりなんですけどね!

Melodía - ele-king

 この季節、なんだかんだと飲み続けてしまい、けっこうそれもがっつりと飲んでしまい、50歳を越えた身体にはさすがにこたえる。今日は休もう今日は休もうと思いながら……もはや自分との戦いだ。
 さて、ele-kingは、こうして2014年も人と共有したい盤を何枚も発見し、平日のほぼ毎日1枚以上のアルバムを紹介し続けてきたわけだが、今年最後のレヴューを飾るのに相応しい作品が本作である(Mr.Mitchのアルバムについて書きたい誘惑を抑えながら)。のんびりと過ごしたいときこの音楽は本当に重宝する。

 これは伊達伯欣とアルゼンチンのフェデリコ・デュランドとのコラボレーション作品で、アルバムのタイトルは、スペイン語で『旅日記』。
 クラシックギターを演奏しているというよりも、ただ弦を爪弾いているだけの音が、演奏しているというよりも、ただ鍵盤を叩いているだけのピアノ音と絶妙に重なっていく。そして、フィールド・レコーディングの音が重なる。音はとことん隙間だらけで、年の瀬を迎えるこの国の静けさと親和性が高い。
 伊達伯欣は、コーリー・フラーとのイルハでの作品畠山地平とのオピトープでの作品と、2014年の密かなる楽しみを提供……いや、それどころか、最近はele-kingの読者の健康を気遣うあまり、医学の連載コラムまではじめてくれている(本業は医者である)。
 
 繰り返そう。本作は、この季節にはぴったりの、静謐なアンビエント作品だ。
 ジャケに写っている洒落た部屋は、かつて彼らがライヴで呼ばれたベルギーの田舎のヒッピー夫婦の家だという話で、つまり、一般家庭の部屋のなかで人びとが集まって開かれたライヴ写真だそうだ。なんとも羨ましいくらいにのんびりした話だが、曲のレコーディングはツアー中のホテルの部屋であるとか、道中でおこなわれている。旅を続けているときには日々のルーティンから切り離された独特の解放感があって、信じられないほどに、すべてが愛おしく思えるものだ。電車に乗っているだけでもウキウキするし、歩いているだけでも幸せな気持ちになる。
 本作において伊達伯欣とフェデリコ・デュランドのアンビエントは、楽天的で、牧歌性をとことん極めている感がある。よく晴れた暖かい午後、窓を開けっ放しにしながら、うたた寝をする。浅い眠りのなか、遠くで、楽器の音が聞こえる。そんな安らぎに満ちた、とても美しいアルバムだ。
 

 リリース元である〈home normal〉は、埼玉在住の英国人が運営しているレーベル。他にもさまざまな国のクオリティの高いアンビエント作品をたくさん出しているので、レーベルのサイトをぜひチェックしてみましょう。新しい発見があるかもしれません。読者のみなさま、ライターのみなさま、ミュージシャンやレーベルやヴェニューやオーガナイザー、レコード店や書店のみなさま、チャートを送ってくれたDJのみなさま、1年間ありがとうございました。2015年もよろしくお願いします。よきお正月をお過ごし下さい。

interview with D/P/I - ele-king

 紙エレキング年末年始号のためにインタヴューを行ったD/P/Iことアレックス・グレイから、取材下後も、まだ話したいことがあると、校了後だというのに答えが届く、届く。サン・アロー、ダッピー・ガン、D/P/I、ジェネシス・フル……と、いま、何をやっても波に乗っているアレックス・グレイがインタヴューでもノリノリです。来年早々にはD/P/Iの新作も控えているそうです。というわけで、本誌をお読みになった方にP99からの「続編」をお届けいたしましょう。

いま、D/P/Iが共感するLAのミュージシャンは誰?

アレックス・グレイ(以下、AG):僕はつねに仲間や友人に押されている感じなんだ。最近、近所ではアーンヌー(Ahnnu)にとてもインスパイアされる。同様に長年の友人たちもね、ショーン・マッカンやマシュー・サリヴァン、キャメロン・スタローンズにジェフ・ウィッチャー。

最近は精力的にパフォーマンスをおこなっているようだけど、アレックスがD/P/Iのショウに求めるオーディエンスのリアクションは何?

AG:サン・アローとしてのツアーは定期的に同行していて、先日の南アメリカ・ツアーではD/P/Iのセットも披露したよ。だけどもD/P/Iだけのショウはそれほど多くおこなってはいない。リクエストに応じて、なおかつ意味があったものはね。
 D/P /Iのプロジェクトとしてのアイデアは既存のいわゆるDJとオーディエンスの関係性を破壊することなんだ。複雑なテクノロジーを用いた音 声信号処理によっ てサンプリングを削ったり、解体したり、アレンジを加えることで、そのサンプリングがもたらす心象映像が投影されるある種の“割れた鏡" のイメージを作ろうとしているんだ。バラバラになった欠片がひとつも欠けることなく、異なる順序や空間的前後関係によって再構築するんだ。その過程でダンス・ミュージックに 染み付いたありふれた拍もとりいれる。ライヴのセッティングにおいてこの挑戦はオーディエンスの心にDJやエンタータイナーとは何なのか疑問と再考慮を投げかけるんだ。社会や人生における“ありふれた"ものの根本に疑問を持ってくれれば幸いだけどね。それに対する君の肉体的な反応がどうなのかは知らないけどさ。

アレックスは過去のリリースや手掛けたレーベルのほとんどのヴィジュアル・ワークもおこなっているね。ヴィジュアル・アート ワークに対するこだわりがあれば教えて欲しいな。

AG:白地、アルバムの裏に潜んだアイデアの直接性と反射するイメージ。

表記においてDJパープル・イメージとD/P/Iの違いってあるの? または何で表記を変えたの?

AG:ないよ。単にその文字がもたらす感覚が、よりこのプロジェクトに合うと思ったんだよ。過去13年間も印刷物のデザインに携わってきたからd.p.iって言葉は僕の人生においてありふれたものだしね。

過去にもたくさんの名義で音楽活動をおこなってきたわけで、そのすべてをアレックス・グレーが手掛けてきたってことを知る人は少ないと思うんだ。それってある種のミステリアスなイメージ、もしくは自分自身を無個性な存在に仕立て上げる魂胆があったから?

AG:僕は自分自身をなにかの箱の中に収めたいと思ったことはない。そうすべきだとも感じていない。
 ジャズにおける異なるグループの美意識、異なる名義での多くのプロジェクトはいつだって僕をインスパイアしてきた。同様にアートは人びとが掘り下げる価値がある ものだと思うんだ。だから僕もみんなが収集したり、探検したり、発見できるような投げかけを試みているのかもしれないし、異なるプロジェクトに対して個人 的な繋がりを得たいのかもしれないね。


interview with Daniel Miller - ele-king

 年末年始のお年玉企画の第一弾は、UKの老舗のインディ・レーベル〈ミュート〉の創始者、ダニエル・ミラーのインタヴュー。2014年は、プラスティックマンアルカスワンズなどの話題作をリリースしている。ニュー・オーダーと契約を交わしたこともニュースになったが、2015年の春には待望の新作が控えているらしい。  〈ミュート〉は、80年代のUKポストパンク時代を代表するレーベルのひとつであり、いまだアクチュアルなポップ・センスを失わない数少ないベテラン・レーベルである。相変わらずノイズ/インダストリアルをわんさと出しながら、他方ではポップスにも力を入れて、しっかりビジネスをしているところもすごい。2014年の春、筆者はいかにも仕事ができそうな同レーベルの経営者のひとりにお会いしたのだが、そのときに真顔で、「いまは名前が言えないが、我がレーベルはついにとんでもない大物と契約した。楽しみに」と言われたので、それは誰だ? 誰のことだ? と思っていたら、スワンズだった。たしかにスワンズは「とんでもない大物」である。我々が見習うべきは、このぶれない愛情だろう。

クロックDVAと契約できたらいいね。実はアモン・デュールやノイ!のカタログもリリスしたかったんだけどできなかったんだ。いろいろとややこしくてね。とても出したかったんだけど。

初めてお会いできて本当に光栄です。

ダニエル・ミラー(以下、DM):ありがとう。こちらこそ光栄だよ。

先日あなたがニュー・オーダーと契約したニュースにもすごく驚きました。

DM:どうして彼らとの契約に驚いたの?

当時のポスト・パンクの時代、〈ミュート〉と〈ファクトリー〉はライバル・レーベルという印象を持っていました。〈ミュート〉にはデペッシュ・モードがいて、〈ファクトリー〉にはニュー・オーダーがいましたからね。

DM:いや、むしろ友だちであり同士みたいなものだよ。

初期の頃、〈ミュート〉はユーモアを大切にしていましたが、それに対して〈ファクトリー〉はもう少しシリアスなレーベルだったので。

DM:〈ファクトリー〉創設者のトニー・ウィルソン自身はかなりユーモアに溢れていた。僕の経験では、ユーモアのあるひとほどダークな音楽をやっている。当時、僕はジョイ・ディヴィジョンやニュー・オーダーと交流があったわけではないから、彼らにユーモアがあったかどうかはわからないけど、〈ミュート〉もダークな音楽は出していたよ。

現在の〈ミュート〉にはニュー・オーダーやキャバレー・ヴォルテールもいるし、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンやスロッピング・グリッスルのカタログも持っています。80年代に重要だと思われていたエレクトロニック・ミュージックのほとんどのカタログが〈ミュート〉にはあるのではないでしょうか?

DM:ノイバウテンやスロッピング・グリッスルにしても当時は自主レーベルから出していた。だから〈ミュート〉から出せたことが嬉しいよ。バンドが解散したあとメンバーがもめていたんだけど、そういう困難を乗り越えて〈ミュート〉からのリリースが決まったから自分としても喜ばしかったね。

80年代に活躍したバンドで、〈ミュート〉が契約したいバンドはいますか? カタログを入手したいバンドでも結構です。

DM:クロックDVAができたらいいね。実は、これらはクラウトロックだけど、アモン・デュールやノイ!のカタログもリリスしたかったんだけどできなかった。いろいろとややこしくてね。とても出したかったんだけど。

あなたは、クオリティがが高いけど売れそうもない作品を出してしっかりビジネスにするところが、すごいなと思います。ご自身のビジネス・センスを客観的にどう思いますか?

DM:お金にならないものもあるよ(笑)。けれども売れるものあって、そのバランスが大事だと思う。様々なレーベルが世のなかにあるなかで〈ミュート〉が大事にしているのは独自の声と色がある音楽。他でやっていることをやっても意味がないと考えている。その指針となっているのは、ポップから実験的なものまで幅広い僕自身の音楽のテイストで、さっきも言ったバランスがやっぱり大事だよ。異なった音楽の共存が大事であって、それらの相乗効果が〈ミュート〉の生態系を作っている。

クロックDVAが売れると思いますか?

DM:それなりには売れると思うよ。ちゃんとリマスターをしてパッケージにもこだわってやれば、世界で1,000枚は売れるんじゃないかな。それだけ数字が出せればビジネスは成立する。カタログだとどのくらいの結果が出るのか先が読みやすいけど、難しいのは新人だよ。マーケティングで売り出すためにお金がかかるし、どういうひとが買うのかも考慮しなきゃいけないからね。

そういう意味ではもうすぐ発売されるアルカは〈ミュート〉らしいアーティストで、しかも、ポップにもアプローチできるアーティストだと思うんです。

DM:いま僕が言った意味でアルカはかなり〈ミュート〉らしい。ずば抜けてユニークだ。まだ非常に若く才能に溢れていて、ヴィジュアル面にもこだわっているしね。ライヴやアートワークにも力を入れているから、こちらとしてもやりがいを持っている。実は彼と契約するのに時間がかかったんだけど、リリースが決まって嬉しいし、ひととしても仕事がしやすいアーティストだよ。

アルカの音楽は新しい世代のエレクトロニック・ミュージックですが、彼のどこにあなたの世代にはない新しさや若さを感じますか?

DM:言葉で説明するは難しいね。音楽の構築が非常に独自で、いろんなジャンルの要素のミックスが見事だ。各楽曲から出ているムードや雰囲気がこれまでにないものになっている。サウンドそのもの組み立て方もユニークで、そういったものを総合的にみても、いままでにないオリジナリティに溢れた作品になんじゃないかな。

あなたは音楽シーンに30年以上携わっているわけですが、その間にエレクトロ・ミュージックはとても普及しました。ですが広く普及した反面、クオリティが下がったかもしれません。あなた個人はどうお考えですか?

DM:多くの点で評価しているよ。まず僕のなかで電子機材を自分の音楽で使うミュージシャンと、エレクトニック・ミュージックを作るミュージシャンは大きく違う。僕のエレクトロ・ミュージックの定義は電子機材を使って世界観を作り上げることだけど、いまとなってはコンピュータのなかにソフトがあって、そこからプリセットの音源を使って自分の音楽を作ることが一般化している。
 例えば、80年代にデペッシュ・モードとデュラン・デュランはライバル関係にあったけど、前者はエレクトロニック・ミュージックをやっていて、後者は電子音を自分の音楽に取り込んでいたバンドだった。これは音楽を作る上での哲学の違いでもあると思う。
 今日の制作現場では多くのひとたちがエレクトロニクスを使っている。なぜなら、それが安くて簡単だからだけど、僕はそれはそれでいいと思う。もちろんクオリティが低いものもあるけど、それはどのジャンルでも同じことだよね?
 数多く作り手の一握りから素晴らしい音楽が生まれてくる。エレクトロ・ミュージックの作り方が簡単になって、作り手が増えたことは肯定的に捉えているよ。その何万人のなかからポっと天才が現れるわけなんだけど、それがアルカだと思う。

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絶対的な自信があったのに、しかし売れなかたのは、レネゲイド・サウンドウェイヴだった。彼らはしょっちゅうケンカしていて、最終的にはメンバーの仲の悪さが原因で空中分解してしまった。バンドのポテンシャルはものすごかったんだよ。

あなたが昔やっていたザ・ノーマル名義の作品はリリースしないんですか?

DM:シンプルに答えよう。ノーだね(笑)。

(笑)でも当時はヒットしたし、グレイス・ジョーンズがカヴァーもしました。だから、あなたが音楽を続けなかった理由がいまひとつわからないんです。

DM:自分のことをミュージシャンやソングライターだとは思っていないんだ。自分はアイディアを出してそれを形にしただけであの作品はできた。曲を作るよりも、アーティストと仕事をしているほうが楽しかった。

シリコン・ティーンズも自分のなかで満足しているんですか

DM:シリコン・ティーンズはそれとはまた違って、たまたまの流れでできたもの。シンセを手に入れて曲を作っていたんだけど、それがすごく楽しかった。いろんな既存の曲のカヴァーを遊びでやっていて、そのうちのひとつが“メンフィス・テネシー”だったんだよ。それとは別に、当時の〈ラフ・トレード〉の店員と話していたときに、そのカヴァーの話になって聴かせてみたら、みんなが気に入ってくれてリリースしようという流れになった。だからザ・ノーマルとは違ったプロジェクトにしなきゃいけなかったから、コンセプトを考えてみた。それは近い将来に音楽をはじめるきっかけがギターとかドラムみたいにバンドなんじゃなくて、シンセサイザーになるんじゃないかってことだったんだけど、それがいま現実になってきているよね。そういった未来を思い描いていて、「10代のための音楽アルバム」というサブタイトルをつけた。リリースためのアルバムのジャケも将来のエレクトロ・ミュージックを想像しながら完成させたんだ。

いままで多くのリリースがありましたが、あなたの自信作でありながら思っていたほど売れなかったものはありますか?

DM:それはいっぱいあるけど、ひとつ挙げよう。絶対的な自信があったのに、しかし売れなかたのは、レネゲイド・サウンドウェイヴだった。彼らはしょっちゅうケンカしていて、最終的にはメンバーの仲の悪さが原因で空中分解してしまった。バンドのポテンシャルはものすごかったんだよ。音楽的にも素晴らしかったし、歌詞もとても知性を感じるものだった。ルックスも、カリスマ性も充分にあった。私はものすごく期待していたんだが、うまくいかなかった。

レネゲイド・サウンドウェイヴのメンバーは現在何をされているんですか?

DM:ひとりはどうなったか全然わからない。ダニー(・ブリオテット)はまだ音楽を作っているけれど、大学で国際関係の学位をとって国連で働いているんだ。専門はバルカン半島だったな。カール(・ボニー)はフランスに住んでいて、ホテルか宿をやっているらしい。

いまもUKにはインディ・レーベルがたくさんありますが、あなたが〈ミュート〉をはじめた頃、〈ファクトリー〉、〈チェリー・レッド〉や〈4AD〉、〈サム・ビザール〉など、多くの個性的なレーベルがありましたね。現在のインディ・レーベルのシーンはどう見ていますか?

DM:個性あるレーベルもあると思う。1978年の初めに、僕は最初のシングルを出して、同じ年に〈4AD〉もスタートした。僕たちはみんなラフ・トレードにシングルを置かせてもらって、毎週のようにお店に集まっていたね。当時はどこかのインディ・レーベルがそこでシングルを出すと、ガーっと一気に話題になって、気付けばみんなが自主レーベルをはじめていた。でもインディ・レーベルで溢れていたけれど、すべてが個性を持っているわけではなかったよ。簡単にレコードが出せたから、みんな飛びついたんだ。現在はネットによってそれがもっと簡単な時代になっただけで、状況は昔とあまり変わっていないじゃないかな。

現在のUKシーンは元気だということですか?

DM:以前と変わらず元気だよ。いまはもっと多様になってきたと思う。もちろん、ずっと好調なわけではないし、波はあるよ。ただ、私はブリット・ポップのときはそんなに興奮しなかったんだ。私はシーンごとに音楽をみたりしない。国を意識することは好きじゃないからね。そういう意味で一般的に見ても、現在のUKは健全なんじゃないかな。ゴミもたくさん混じっているけどね。

1991年かな、僕はロンドンの〈リズム・キング〉のオフィスを訪ねたことがあって……。

DM:そこが〈ミュート〉だよ(笑)。

ええ、ですから、〈ミュート〉へ行ったことがあるんです。現在の〈ミュート〉もああいったサブ・レーベルを作って、よりカッティング・エッジなアーティストをリリースしていくという噂を耳にしたのですが本当でしょうか?

DM:実はもうやっているよ。それが〈リバレーション・テクノロジーズ〉だね。12インチとダウンロードのリリースを展開している。是非聴いてみてほしいね。

どんなアーティストがいるんですか?

DM:キング・フェリックスのデビュー・シングルが最初のリリースだね。Sndのマーク・フェルも出している。

日本人のアーティストのリリース予定はありますか?

DM:ノー・プランだね。でもドミューンのフェスに出ていたアーティストで面白いミュージシャンを見つけたんだよね。ギャルシッドっていう女性ユニットだよ。

DJはよくやるんですか?

DM:いいかい、人生においては、いつかDJをする段階が訪れるんだ。〈ミュート〉をはじめる前は何年かDJをしていた。リゾート地でヒット曲をかけていたよ(笑)。私の好きな曲はかけられなかったけど、楽しい仕事だったね。15年くらい前には〈ノヴァミュート〉をやっているセスと一緒にやっていたよ。数年前には友人のテクノDJのリージェスがベルリンのベルクハインにDJとして呼んでくれた。すごく楽しい夜だったね。いまは年間10本くらいセットはやる。私にはエージェントがついているんだよ(笑)。そのお陰で今年は東京にも来れたから嬉しいね。またDJとして戻ってくるよ!

はははは。あなた自身は踊るんですか(笑)?

DM:DJは踊らずに音楽を流すからDJなんだよ(笑)。すごく酔っ払ったときは別だけど。

90年前後のダンスが空前のブームだったときにあなたはDJをしていたわけではないですよね?

DM:当時のダンス・ミュージックは面白いと思ったけど、やっていなかった。私にとって、レコードでDJするのは難しかったしね(笑)。いまは曲に専念できるようにソフトを使っているよ。

人生でいろんなことを達成してきたと思うんですが、いまも持っている夢や目標があれば教えてください。

DM:〈ミュート〉は僕が〈EMI〉に売ってからそのままだったんだけど、4年前に買い戻してからインディに戻った。〈EMI〉との最後の時期はとてもフラストレーションが溜まっていたから、いまはレーベルの再建にとてもやりがいを感じているよ。ニュー・オーダー、アルカ、ゾラ・ジーザスなど面白いアーティストと契約して、日本では〈トラフィック〉から出ているしね。

音楽以外では何かありますか?

DM:カメラが趣味なんだけど、写真家になりたい(笑)。カメラがよくても腕がないと意味がないから磨いていきたいな。写真には情熱をもって取り組める。この歳で世界をDJとして回るのも不思議な話だけどね(笑)。

いまのUKの政治には関心がありますか? 先日は、スコットランドの独立の投票もあったし、UKのEU脱退問題とか、国が揺れ動いていますほね?

DM:もちろん政治は関心がある。スコットランドの独立は間違いだよ。もし自分がスコットランド人だったら独立がもたらす結果に疑問を抱くと思う。通貨はどうなるとか、EUとの関係とかね。スコットランドでは投票という民主的な形で独立しないという結果が出たわけだけど、独立の影響がでるUKの他の地域に投票権がなかったことは非民主的だったと思う。
 EUに関しては、コンセプトは評価している。ヨーロッパでは歴史的にずっと戦争があって、それをもう終わりにする理念がEU(欧州連合)にあるわけだからね。だけどその方針に100パーセント賛成できるわけではない。非常に官僚的な国がEUの中心で動いていたりするからね。でもイギリスとしては連合に居続けて、中から制度を変えていってもらいたい。ヨーロッパでこれだけ平和が続いているのはEUの存在が大きいし、旧ソ連から独立した国々とも連合を組もうとする姿勢も肯定的に思っている。

カウントダウン・イヴェントは数あれど - ele-king

 待って、DREAMPV$HERがいるんだけど。なんということだろう、ele-kingにとってはオウガ・イヤーだったともいえる2014年の大晦日、そのOGRE YOU ASSHOLEの参加が新たに告げられたカウントダウン・イヴェントは、stillichimiyaや環ROY×鎮座DOPENESSから、藤井洋平 with Mr.MELODY + kashif、SeihoにNATURE DANGER GANG、DJにSEX山口と、和・洋・中(?)混在しつつも最上の素材が詰めあわされたおせちともいうべき体を示している。朝方のDREAMPV$HERとNATURE DANGER GANGの後には初日の出が拝めるだろう。そしてDREAMPV$HERはまさに2015年の暁天である。

■WWW COUNTDOWN 2014-2015
会場:渋谷WWW
日程:2014年12月31日(水)-2015年1月1日(木)
出演:stillichimiya / OGRE YOU ASSHOLE (new!) / KAKATO(環ROY×鎮座DOPENESS) / Seiho / NATURE DANGER GANG / 藤井洋平 with Mr.MELODY + kashif / DREAMPV$HER DJ:SEX山口
時間:開場20:00 / 開演20:00
料金:前売¥4,500(D代別 ※200枚限定) / 当日¥5,000(D代別)
※2015年1月1日0:30以降は「¥2,000」で入場可能!
問合:WWW 03-5458-7685

枚数限定 前売チケット発売中
チケットぴあ [P:251-418] / ローソンチケット [L:75086] / e+ / WWW・シネマライズ店頭

主催・企画制作:WWW
※本公演は20歳未満の方のご入場はお断りしております。顔写真付きの公的身分証明書をご持参ください。

イベント詳細
https://www-shibuya.jp/schedule/1412/005752.html


Neil Young - ele-king

 年末チャートと選挙結果は似ている。同じものを求める大勢の人たちと細かい趣味に分かれた小数の人たち。ファレル・ウイリアムスやイギー・アゼリアのような大多数を作り出すのも資本主義なら細かい趣味に分かれた人たちを作り出すのも資本主義。毎年、野党の分散状況を眺めているような気がしていたので、紙版『ele-king』でも個人チャートはやめました。自分は他人とはちがう光線を出したい人たちが個人発信でやればいいかなと。ちなみに「他人とはちがう光線を出す」ことはいいことだと思います。読んでもらう相手を間違わなければ。

 年末チャートにも選挙にも関心がない人をアナキストとは呼ばないと思うし(アナキストというのは選挙制度の無効を訴えるために、選挙になると必死になって「NO VOTE」を呼びかける運動家であって、選挙になると無関心をアピールする人ではないと思うし)、じつのところ資本主義と無縁のポップ・ミュージックもあまりおもしろいものではないと思う。「15本限定のカセット・テープ」がおもしろいような気がするのは、それが資本主義の世界だからで、「流されていない」とか、少しでも抵抗しているようなことを言いたいがための稚拙なアイディアを共有できるような気がするからで、逆に言えば資本主義だからこそ成立する会話のようなものでしかないと思う。そういうものを何本も聴いたり、なんだかよくわからないネット音源を聴いたり。それでいいんじゃないかな。「♪レリゴー」を歌っている子どもの横で「♪とりむしけもの~」と歌っている子がいれば、「この子は将来大物だ」とか思って笑っている感じ。本気でそう思っているわけがない(関係ないけど、「アナ雪」の作曲陣は3人で、そのひとりはチリー・ゴンザレスの弟なのね)。

 ニール・ヤングの新作は「♪レリゴー」でも「♪とりむしけもの~」でもなかった。「売れてる」をアピールしている音楽にも「売れてない」をアピールしている音楽にも聴こえなかったということである(本人は歌詞でフラッキングに反対=つまり資本主義には眉を顰めているけれど)。弾き語りヴァージョンをCD1、同じ曲をオーケストラやビッグ・バンドによってアレンジしたものがCD2で、通常盤は後者のみ。それはバカラック・マナーの優雅なオーケストレイションで幕を開け、チルウェイヴでもヴェイパーウェイヴでもないのに現代的な叙情性を兼ね備え、過去に連れ去ろうとするようなものではなかった。いや、バート・バカラックが夢見心地な曲を量産した時代ではなく、僕はほんの少しだけど、1982年に引き戻された。ペイル・ファウンテインズがバカラックをリヴァイヴァルさせた“サンキュー”を思い出したからである。

 「ネオアコ・ディフィニティヴ」でも書いた通り、演奏はけっして上手くないけれど、デビュー当初のペイル・ファウンテインズやアズテク・キャメラは透き通るような瑞々しさにあふれ、グラムやパンクで汚れきった世界観を清浄化するような作用があった。一瞬でもそのような時代があるとないとでは、その後の世界の受け止め方も変わるものである。80年代も中期になると、メジャーではヒップホップ、マイナーではポスト・インダストリアルがあっという間にダーティな空気を運んでくることになり、ペイル・ファウンテインズもファースト・アルバム『パシフィック・ストリート』がリリースされる頃にはもっと苦渋に満ちた感触を強めてしまう。時代からズレまくっていたとしても“サンキュー”のようなバカラック調で占められたアルバムが聴きたかったというのが本音ではあるけれど、彼ら自身が“サンキュー”の路線を信じられなかったのだから仕方がない。

 その時の気持ちの半分でも満たしてくれたのが、このタイミングで、しかも、ニール・ヤングになるとは思わなかった。“サンキュー”ほど朗らかではないし、もっと地味で落ち着いているし、ファレル・ウイリアムスだって「ハッピー」でミラクルズを思い出させてくれたじゃないかとは思うんだけど、どうしてもあれはスモーキー・ロビンスンのパクリに聴こえてしまう。ニール・ヤングにはなぜかそれがない。


neil young / tumbleweed

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