「Nothing」と一致するもの

interview with Yeasayer (Ira Wolf Tuton) - ele-king


Yeasayer
Amen & Goodbye

Mute / Traffic

PsychedelicIndie Pop

Tower HMV Amazon

 イエーセイヤーは、とくに世界的なヒットとなった『オッド・ブラッド』以降はポップ・フィールドでサイケデリックを追求してきたバンドだ。それはMGMTやドードースがそうであるようにサイケデリックであり、また、ヴァンパイア・ウィークエンドがそうであるようにエキゾチズムを内包している。以下の発言ではアラン・ローマックスからジョン・コルトレーンにまで言及されているけれども、彼らは学究肌でもスピリチュアルに突き抜けるでもなく、トライバルな意匠をあくまでポップに扱いつづけてきた。その少しねじれた感覚は、このインタヴュー冒頭においていくつかの質問への回答が絶妙にかわされていることにもあきらかだろう。登場こそブルックリンのアンダーグラウンドだったものの、彼らはアニマル・コレクティヴやギャング・ギャング・ダンスとも、あるいは、初期のレーベルメイトであるポニーテールらのエクスペリメンタリズムとも別の道を行った。そして参照点は異なれども、もはやフレーミング・リップスやオーウェン・パレットなどにこそ比較すべきストレンジ・ポップの旗手となりつつあるのかもしれない。

 『オッド・ブラッド』よりも抽象性とダンス要素を上げた『フラグメント・ワールド』から4年、今作『エイメン&グッドバイ』はアートワークにデイヴィッド・アルトメイド(ニューヨークで活動するカナダ人彫刻家)を加えていることにまず目が行くが、ジャケットにあふれている乱雑で多様な意匠のせめぎあいは、彼らの音楽の在り処としてとてもしっくりとくる。そしてこの一見無秩序な要素の中から、彼らにとっての中心はここだといわんばかりに歌と旋律が立ち上がってくるのは感動的だ。“アイ・アム・ケミストリー”にはスージー・ローチェ(ロバート・フリップのプロデュースでデビューした三姉妹コーラス・グループ)がフィーチャーされているが、子どもの声かと錯覚するそれは、アルバム全体から奇妙な歌の力を引き出しているように感じられる。こうしてみると、イエーセイヤーが歌や旋律の引力に魅せられてきたバンドであったことにあらためて気づかされる。
 それではこのタイトルも奇怪なポップ・アルバムについて、ベースのアイラ・ウルフ・トゥートンに訊ねてみよう。

■Yeasayer / イエーセイヤー
NYブルックリンのインディ・ロック・バンド。クリス・キーティング(Chris Keating Vo/Kb)、アナンド・ワイルダー(Anand Wilder G/Vo/Kb)、アイラ・ウルフ・トゥートン(Ira Wolf Tuton B/Vo)、2007年に『オール・アワー・シンバルズ(All Hour Cymbals)』でアルバム・デビュー。ベックのツアー・サポート等を行い、2010年には〈ミュート〉移籍第一弾のセカンド・アルバム『オッド・ブラッド』をリリースし、同年フジ・ロック・フェスティヴァルにて来日。2013年にサード・アルバム『フレグラント・ワールド』をリリース。同年、初の単独来日公演を行う。

シェイプノート唱法、シェイカー・スピリチュアル、ミサ・ルバというコンゴの合唱団、それにバルカンの合唱音楽など数例を取っても、すべての伝統的ヴォーカル音楽が僕らを惹きつけたんだ。

エキゾチズムはあなたがたが初期から持っている特徴だと思います。これはイエーセイヤーのひとつのテーマととらえてもよいのでしょうか?

アイラ・ウルフ・トゥートン(以下アイラ):僕らはいつもたくさんの異なったかたちや過去やいまの様式を組み合わせるようにしているし、そうしたいと思ってるんだ。その中でお互いを活かしあって、しなやかでまがい物でなく、コンテンポラリーなサウンドになるように努めてるよ。

そうしたものは、専門的な民族音楽へのアプローチを通してではなく、あくまでポップ・ミュージックとして表現されていると感じます。純粋な民族音楽の表現にはあまり興味がありませんか? また、とくに興味を寄せている地域の音楽はありますか?

アイラ:アラン・ローマックス(Alan Lomax)の作品に関してはバンド結成前にメンバー全員がそれぞれいっぱい聴いたね。シェイプノート唱法、シェイカー・スピリチュアル、ミサ・ルバというコンゴの合唱団、それにバルカンの合唱音楽など数例を取っても、すべての伝統的ヴォーカル音楽が僕らを惹きつけたんだ。
 それから、僕らは映画音楽にも多大な影響を受けてきている。その(音楽的)解釈や録音物を通して、通常だったらそんなにたやすく出会うことのない伝統なんかに、一足飛びに触れることができるんだ。早坂文雄は好きで印象に残っている。彼はまだ幼い頃の僕に世界の扉をひとつ開けてくれたんだ。

地理的にもそうですが、時代的にも大胆な混淆を好まれているように見えす。“チャイルド・プロディジー”などはわかりやすい例かもしれませんが、とくに脈絡なく突然バロック音楽が参照されたりもしますね。このようにいろいろなものが混ざるのはなぜなのでしょう?

アイラ:思うにそれは音楽に対する一つのアプローチ手段だよ。僕にとっては、美しさ、それに音楽制作にチャレンジすることも無限の可能性の中に存在している。そのかけら(可能性)さえも完璧に掴むことはできないけど、むしろ自分のあらゆる理解力を養ったり拡げるため、また、時には別の伝統で自分の最高の声をより理解するために、すべてのことは可能だと知るほうがいいだろう。

僕の好きな音楽は、いま生きているこの世界を見るためのレンズとして機能するような音楽なんだ。僕らは懐古主義になろうとしたことは一度もないよ。

こうした音楽性には、実際に世界の現在の状況や未来についてのヴィジョンが重なっていたりしますか?

アイラ:僕の好きな音楽は、いま生きているこの世界を見るためのレンズとして機能するような音楽なんだ。僕らは懐古主義になろうとしたことは一度もないよ。

前作『フラグメント・ワールド』などは、そのタイトルがまさにあなたがたの音楽を示唆するようにも思われます。ダークでモノトーンな印象ながら、とてもリズム・オリエンテッドなダンス・アルバムでしたよね。今回は、対照的に楽曲性の高いものになっていると思いますが、これは意識された差なのでしょうか?

アイラ:僕らは毎回アルバムでは異なったアプローチをしている。個々人が変わるのと同じように、友人関係もそう、愛や家族、影響を受けるものや環境もそう、挙げていくとそのリストはずっと続くよ。どの作品であれ意図的に過去にやってきたものと同じようなものをリピートして作るのは不誠実だと感じるんだ、だってその間僕らの周りはめまぐるしく変わってるんだから。

お答えいただけるみなさんそれぞれにお訊ねします。あなた方が考える意味でもっともエキゾチックだと思う作品(音楽でも映画でも小説でもなんでも)と、もっともドリーミーだと思う作品を教えてください。

アイラ:僕がもっともインスピレーションを受けたのは個人で、彼らは完全に自身のアート、創造そして愛に身を投じていて、それは普通では到底できないことのようだ。『ジャイアント・ステップス(Giant Steps)』から『至上の愛(A Love Supreme)』『クル・セ・ママ(Kulu Se Mama)』までのジョン・コルトレーン。ボウイ(David Bowie)はいまでも忘れられない。グスタフ・スティックリー(Gustav Stickley)、ドビュッシー(Debussy)、ジョージ・ナカシマ(George Nakashima)、ショパン(Chopin)、ミース・ファン・デル・ローエ(Mies Van Der Rohe)、ジョン・ミューア(John Muir)……と、挙げていくと止まらなくなるよ。
 僕が夢見るのは自分の住むキャストヒルにある湖のことだね、毎日それぞれ少しづつ違う表情を見せるし。自然界のほうがより自分にとっては夢のようなものになってきているよ。

『オール・アワー・シンバルズ』をミックスした場所はいまやジェイクルー(J Crew)というブランドのデパートになってるね。そう、ブルックリンは変わってしまった。

『オール・アワー・シンバルズ(All Hour Cymbals)』の頃から聴いています。当初は「ブルックリン」というキーワードとともにあなたがたの音楽を知りましたが、あなた方自身は当時「ブルックリン」で起きていたことをどのようにとらえていましたか?

アイラ:『オール・アワー・シンバルズ』をミックスした場所はいまやジェイクルー(J Crew)というブランドのデパートになってるね。そう、ブルックリンは変わってしまった。まだ巨大な都市だけど。カルチャーやアート・スポットはもっと遠くの郊外に移ったみたいだよ。でも悲しいのは僕らが当時知っててよく通ったいくつかのクラブやアパート、リハ用の場所や溜まり場がブランドやインスタントな建造物にとって代わったことだね。もっと頭にくるのは、金のある企業の取り繕ったようなサマで、すぐに乗り替わってブランド企業の取り巻きになったこと。しかし、僕らはこの年の過剰開発を止める第一世代にはならないだろう。理由として、世代に限らずニューヨークの過去を懐かしむ心が強いのは、都市の変化のスピードがいつの時代も急速だから。そこはコンスタントに建造物を建て、破壊する都市なんだ。

あの頃と比べて、時代が要請している音にどのような変化があったと思いますか?

アイラ:思うに音楽の消費のされ方が変わってしまったね。インターネット上のコンテンツ増加を通して、いまや誰でも自らの手でブランディングをできるようになったから。僕らは手っ取り早く、より自分と同質で安全なものに近づき、恐ろしいものにも近づいている。前者はすぐに消え去るようなつまらないカルチャーであり、後者は、仲間や会社、政府の監視を認識したり受け入れたりすることによって生じる個人の権利への不安だね。

今作のアートワークにデイヴィッド・アルトメイド(David Altmejd)さんを起用したのはどのような経緯ででしょう? また、人体やとくにその頭部の表現に特異な方法を持っているアルトメイドさんですが、彼の作品とイエーセイヤーとの音楽の関連をどのあたりに見られますか?

アイラ:デイヴィッドが僕らといっしょにやりがってくれてたんだ。彼のようなヴィジョンを持ったアーティストが僕らの作品を解釈し、また違った視点から彼の作品として表現してくれるなんて、光栄だったよ。

“アイ・アム・ケミストリー(I AM CHEMISTRY)”のMVもじつにインパクトがありました。子どもたちのコーラスが挿入されているのは、テーマやコンセプト上での必要があったからでしょうか?

アイラ:あのヴィデオはマイク・アンダーソンの作品で、ニュー・メディア・リミテッド(New Media Ltd)が手がけたものなんだ。いつもながら、才能ある人たちと仕事をするのは僕らの世界観を広げてくれてすごく興奮するね。あのコーラスは実際ザ・ローチェス(The Roches)のスージー・ローチェの声を目立つようにフィーチャーしてるんだ。レコーディングの過程で女性のパートを意識して作った部分で、実際、女性の声が必要だと感じたんだ。スージーと彼女のバンド(彼女の二人の姉妹とともに)から僕らは多大な影響を受けてきたから、彼女といっしょにやるのはとても光栄だったよ。

ミュートが僕らにアドバイスしてくれたのはプロデューサーといっしょに仕事すること。

アルバムを重ねてこられる中で、よりポップに感じられるもの、より複雑な音楽性をもったもの、それぞれに特徴があったと思います。〈ミュート〉への移籍はアルバム制作の上でどのような影響があったでしょう?

アイラ:ミュートが僕らにアドバイスしてくれたのはプロデューサーといっしょに仕事すること。それはいままで僕等がやってこなかったことで、やろうとも思ってなかった。しかし数度の失敗を経て、僕らが出会ったのがジョーイ・ワロンカー(Joey Waronker)、彼は自然と僕らの作業プロセスに馴染んでくれて、思うに気分的にも盛り上げてくれた。彼は4番めのメンバーになってくれて、いままで見れていなかった音楽的なポイントのいくつかを埋めてくれたね。

“ハーフ・アスリープ(Half Asleep)”などのようにテクスチャーを優先したサイケ・ナンバーと“デッド・シー(Dead Sea)”などビートが優先される曲では制作の過程はまったく異なるものでしょうか?

アイラ:僕らがトライしているのは、曲それぞれに異なった、その曲に正直なアプローチなんだ。だいたいにおいて、もし2つの曲で同じアプローチやお題があるとしたら、そのうちの1つは削ることになるだろう。君が言った2曲の制作上の違いは、僕ら3人から生まれるまさに(それぞれの曲で)異なったパーツの組合せから作り上げられた、ひとつの結果だね。

今回のアルバム・タイトルでもある「エイメン・アンド・グッドバイ(Amen & Goodbye)」ですが、これは誰か(何か)に向かって投げかけられた言葉なのでしょうか? 表題曲がニューエイジ風の短いトラックだったことで、謎かけのようにも感じられます。あなたたちが何かに決別したということですか?

アイラ:だいたいにおいて、僕らが決別したのは時間と諍い事、そしてこのアルバムを作るためにかかった手順だね。そうたくさんのことと決別したよ。

僕がいま注目してるのは、いくつかのLA関連のもので、ケンドリック・ラマー関連やサンダーキャット周りのミュージシャンたちかな。

“ユーマ(Uma)”などは壊れた懐メロといった雰囲気を感じました。あなたがたの音楽には時折古風なポップ・ソングの片鱗も現れますが、これはとくにあなたがたのうちの誰の資質によるものなのでしょう?

アイラ:アナンドが“ユーマ”に、より70’sロックのアレンジのテイストを持ち込んだんだ。グループ的にもそっちのほうがおもしろそうだったし、もともとのララバイにするよりも、もっとコラージュした感じでジュークボックス的、それに子どもっぽい感じのアプローチのほうがね。僕ら的には初めてドラムスもパーカッションも使わなかった曲で、そういうふうに極端に振れることが重要だったんだ。

ライヴ・パフォーマンスにも定評のあるみなさんですが、今回のアルバム・コンセプトはどのようにライヴに反映されているでしょうか?

アイラ:ちょうどいまそれに取り掛かっているところさ。僕らにはライティングなどショウを組み立ててくれるアーティストの友人がいて、アルバムをライヴ用に組み替えているところなんだ。このプロセスは実際すごく楽しくて、早くその完成形を見せたくて仕方がないよ。

現在の音楽シーンのトレンドを意識することはありますか? どんなものをトレンドだと感じていますか?

アイラ:僕がいま注目してるのは、いくつかのLA関連のもので、ケンドリック・ラマー関連やサンダーキャット周りのミュージシャンたちかな。いま現在起きているミュージシャンたちのフレッシュな動きを見るのはいいと思う。だけど僕がよく聴いてるのはオスカー・ピーターソンで、そんなにトレンドを追ってはいないよ。

結成から10年になります。これからの活動として意識的に話しあっている目標などはありますか?

アイラ:未来に生きるほど危険なことはないよ、いまだけを生きるようにしてるよ。

Fatima Al Qadiri - ele-king

 ただのグライム。ファティマ・アル・カディリならそう言うだろう。そこに枕詞を付け足す必要はない。「元々あった呼び名で十分だったのに」と、フューチャー・ブラウンの一員として彼女は昨年のインタヴューで答えている。アンビエント・タッチのグライムは昔からあったのであり、わざわざそれをリ・ブランディングする必要などない、と。
 とはいえ彼女の前作『エイジアティシュ』が注目を集めたのは、単にその「想像上の中国」というコンセプトが、グライムの上モノにときおり現れるアジア趣味(シノグライム)の受け皿となって、西洋文化に潜む東洋への欲求をうまい具合に満足させたから、というだけではない。低く唸るベースとヴォーカル・ドローンとの共存によって特徴づけられた『エイジアティシュ』は、ベース・ミュージックであると同時にアンビエント・ミュージックとしても成り立っていた。オリエンタルな意匠の下にグライムとアンビエントとを同居させてみせたこと、やはりそこにこそファティマ・アル・カディリの面白さがあったと言うべきだろう。

 セカンド・アルバムとなる本作でも基本的にその路線は踏襲されている。悪く言えばサウンドの上で大きな変化はないということだが、明確に前作にはなかった要素もある。それはメッセージ性だ。彼女は同じインタヴューの中で「フューチャー・ブラウンの政治的関心をひとつ挙げるとしたら?」という問いに対し、「警察の残忍性について」と答えている。本作のテーマは、ジョシュ・クラインの彫刻が大きく掲げられたアートワークからも窺えるように、近年合衆国で多発している警察による過剰な暴力の行使である。
 いくつかタイトルを並べてみよう。「血色の月」、「外出禁止令」、「集中砲火」、「地下牢」、「崩壊」、「権力」。これらの語が差しあたって映し出しているのは、いまアメリカで実際に繰り広げられている壮絶な暴力行為だ。そういう意味でこのアルバムは、アティテュードの面で最近のビヨンセと共振しているとも言える。
 だがさらに言ってしまえば、本作が告発しようとしているディストピアは必ずしもアメリカ国内に限定されるものではない。アル・カディリの出身地がクウェートであることを思い出そう。「軍隊の警察化」や「警察の軍隊化」が主張されるようになって久しいが、その転換期にあたる湾岸危機当時、彼女はまさにイラク軍による占領下で幼年時代を送っていたのである。このアルバムには彼女のそのような過去も色濃く反映されているように思われる。つまり本作は、「ブラック・ライヴズ・マター」からパリ同時多発テロやシリアの騒乱までをも射程に含んだ、怒りと絶望の音楽なのである。

 ハードな現実を直視するという意味で、本作はたしかに正統なグライムだ。彼女の言葉で言えば、ただのグライムである。それなのにこのアルバムでは、グライムの大きな要素の一つであるラップという手法が用いられていない。ニュース番組や引退した巡査部長の発言などがサンプリングされてはいるものの、それらはあくまで装飾の域に留まっている。つまり、本作には明確なメッセージ性があるのにもかかわらず、それが直接的に主張されることはないのである。フューチャー・ブラウンのように、やろうと思えばMCをゲストに迎えることだってできたはずだ。だが彼女はそうしなかった。それには彼女の音楽のもう一つの重要な側面であるアンビエントが関わっている。
 アンビエント・ミュージックには、通常は聴く必要のないものとして意識からシャットアウトされている音を強制的に顕在化させるという機能がある。ベッドルームでアンビエントを流しながらうとうとしたことのある者ならば一度は体験したことがあるであろう。風が窓を叩く音、車が外を走る音、換気扇が回る音、衣服が擦れる音、自分が呼吸する音、そういう普段は意識から排除されている様々な「ノイズ」が際立って耳に入ってくる瞬間を。
 アル・カディリはこのアルバムで、そのようなアンビエントの効果を音以外の事象にまで拡張させようとしているのだ。仕事に忙殺されている人びとに、エンターテインメントに熱中している人びとに、恋愛のことで頭がいっぱいになっている人びとに、かれらの意識からシャットアウトされている現実──いま合衆国で、世界中で起こっている悲惨な出来事──へと一瞬でも注意を向けさせること。
 要するにこのアルバムは、あなたのオフィスやあなたのベッドルームと、実際に暴力行為が発生している海の向こうの現場や戦場そのものとを、直接的な手段を用いずに接続しようとする試みなのである。だから彼女の言葉に逆らって言おう。これはただのグライムではない、と。

Terrace Martin - ele-king

 第58回グラミー賞受賞式のハイライトとなったケンドリック・ラマーのステージ。最初にケンドリックやバンド・メンバーたちは監獄の囚人に扮したが、ケンドリックとともにテナー・サックスを吹くテラス・マーティンの存在感も光っていた。5冠に輝いた『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』でもテラスはキー・パーソンのひとりで、ケンドリックにとってデビュー・アルバムの『グッド・キッド、マッド・シティ』からテラスは音楽的参謀の位置にある。

 ミュージシャン、ラッパー、プロデューサーという複数の顔を持つテラスだが、そもそも2000年代半ばからパフ・ダディ、スヌープ・ドッグらの作品や活動に関わり、とくにスヌープのプロデューサーとして知る人ぞ知る存在だった。ヒップホップ界での成功により注目を集めるが、もともとはジャズ・サックスが出発点で(父親はジャズ・ドラマーで、母親はゴスペル・シンガー)、コルトレーン、チャーリー・パーカー、ジャッキー・マクリーン、グローヴァー・ワシントン・ジュニアなどの影響を受けてきた。奨学金をもらってカリフォルニア芸術大学へ進学後、プロのジャズ・ミュージシャンとなるが、子どもの頃からドクター・ドレやスヌープをはじめとした西海岸のヒップホップやR&Bは身近にある存在で、自然とそうした分野での演奏も増えていく。こうした経歴は東海岸を代表するジャズ・ピアニストのロバート・グラスパーと同じ流れで、いまのUSのジャズ・ミュージシャンらしい。西海岸でジャズとヒップホップ/R&Bを繋ぐ存在がテラスなのだ。実際彼らは高校時代にサマー・キャンプで出会い、ロバート・グラスパー・エクスペリメントの『ブラック・レディオ2』にもテラスはスヌープといっしょに参加している。

 2013年に発表したソロ・アルバム『3コードフォールド』は、そんなテラスの集大成的な作品で、グラスパー、ケンドリック、スヌープ、レイラ・ハサウェイ、ウィズ・カリファ、ミュージック・ソウルチャイルドらが参加した。グラスパーの『ブラック・レディオ』に対するヒップホップ/R&Bサイドからのアンサー・アルバムにあたるような内容で、『ブラック・レディオ』から『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』への流れを結ぶ作品でもある。なお、この中ではマイケル・ジャクソンの“アイ・キャント・ヘルプ・イット”をカヴァーしているが、原曲のプロデューサーだったクインシー・ジョーンズまでが共同制作を買ってでるなど、新旧のアーティストから高い評価と信頼を集めている。クインシーやスティーヴィー・ワンダーなどからの影響を、しっかりといまに受け継ぐミュージシャン/プロデューサーでもあるのだ。

 『3コードフォールド』から3年ぶりとなるテラスのニュー・アルバム『ヴェルヴェット・ポートレイツ』は、グラスパーやレイラ・ハサウェイなど前作から続く面々に加え、カマシ・ワシントン、サンダーキャットというLAジャズ・シーンのキー・パーソンも参加する。ほかにジャズ系のミュージシャンでは、ディアンジェロのツアー・メンバーで、グレゴリー・ポーターのニュー・アルバムにも参加したキーヨン・ハロルドも演奏している。全体的には前作に比べてヒップホップ/R&B度は薄れ、そのぶんジャズ方向へ傾き、同時にディアンジェロ的な70年代ソウル~ファンク・リバイバルの流れを汲んだアルバムとなっている。“ヴァルデス・オフ・クレンショー”はダニー・ハサウェイの“ヴァルデス・イン・ザ・カントリー”からの引用で(ダニーの娘のレイラが本アルバムに参加するのも感慨深い)、「プッシュ」はカーティス・メイフィールドの『スーパーフライ』の“プッシャーマン”を意識したように聴こえる。“トライブ・コールド・ウェスト”はATCQからインスパイアされた曲だそうだが(皮肉にも、先に急逝したファイフ・ドーグへの鎮魂歌となってしまった)、曲自体はキーヨンのトランペットをフィーチャーし、ファンクやアフリカンの要素を取り入れた現代版エレクトリック・マイルスとでもいうようなもの。“シンク・オブ・ユー”ではカマシのサックスとともに女性シンガーのローズ・ゴールドをフィーチャーし、ジャズとソウルの最良の接点を見せてくれる。

 なお、現在テラスはフライング・ロータスやサンダーキャットとともにハービー・ハンコックの新作を制作中とのことで、そちらへの期待も否が応でも高まる。

New Order - ele-king

 ニュー・オーダー、5月25日の、29年ぶりの単独公演即日完売につき、追加公演が決定しました!
 追加公演は週末金曜日(5月27日)、場所は新木場スタジオコーストです。フェス以外で彼らのライヴを見れるのは、滅多にありません。ファンの方はここを逃さないように!
 また、25日、27日の両公演では、石野卓球がDJをやることも決定しました。待望の12インチ盤もついにリリースされました。アートワークは鮮やかな紫です。

Tutti Frutti ‒ Takkyu Ishino Remix

Fika(フィーカ) - ele-king

「スウェーデン人にとってFika(フィーカ)は生活の一部よ」

フィーカって、ご存知ですか?
それはスウェーデン流の“お茶の時間”を指す言葉です。
お隣の家で、友人とカフェで、会社でさえも、
顔を合わせれば「Ska vi fika?(スカ・ヴィ・フィーカ/お茶にしましょう)」と誘いあう──
スウェーデン人はお茶が大好きなのです。
そして、それは休み上手、楽しみ上手な彼らの文化をよく象徴しています。
フィーカで大事なのは、くつろぐこととおいしいお菓子。
多くの家庭には、フィーカのためのさまざまな手作りお菓子が常備されています。
そうした定番お菓子のレシピと、さまざまなコラム、そしてたくさんの素敵なイラストとともに、
フィーカの12か月をたどります!

■Contents

はじめに * 合い言葉は「Ska vi fika?」 2

スウェーデン人のFika 4

Fika i mars * Våfflor
3月 ヴォッフロル(ワッフル) 15
Våffeldagen * ワッフルの日 / Påsk * 復活祭 / Kafferep * かしこまったお茶会 / Alla korvars dag * すべてのソーセージの日

Fika i april * Kärleksmums
4月 シャーレクスムムス(チョコレートのスポンジケーキ) 27
Jättegott!* おいしいときの合い言葉「mums=う~ん(おいしい)♡」 / Gott till kaffet * おかしな名前のお菓子 / Valborgsmässoafton * ヴァルプルギスの夜 / Surdeg * 天然酵母の日

Fika i maj * Morotskaka
5月 モーローツカーカ(ニンジンケーキ) 39
Morotens dag * ニンジンの日 / Prinsesstårta * お祝いのケーキ / Kaffe * Fika=コーヒー / Primör * スウェーデンの野菜事情

Fika i juni * Nationaldagsbakelse & Smörgåstårta
6月 ナショナルダーグスバーケルセ(建国記念日のミニケーキ)& スモルゴストータ(サンドイッチケーキ) 51
Sveriges Nationaldag * ナショナルデー / Utspring * Fikaで旅立ちのお祝い / Midsommardagen * スウェーデン最大のイベント・夏至祭 / Sju sorters kakor * 一家に1冊あるFika菓子の教本 / Färskpotatisens dag * 新ジャガの日

Fika i juli * Chokladbollar
7月 ショクラードボッラル(チョコレートボール) 67
Sommarlov & Sommarsemester * 夏の暑い日は火を使わないチョコレート菓子作り / Fläderblomssaft * 夏のFikaはサフト / Praktiskt & Enkelt * 合理的で簡単に作れるレシピ / Kryddor & örter *スパイスとハーブ

Fika i augusti * Rabarberpaj
8月 ラバルベルパイ(ルバーブのクランチパイ) 79
Rabarbersäsong *季節限定のフレッシュ菓子・ルバーブのパイ / Sylt * ジャム作りは夏の終わりのシーズンワーク / Kräftskiva * ザリガニの解禁日 / Köttbullens dag * ミートボールの日

Fika i september * Sockerkaka & Äppelkaka
9月 ソッケルカーカ(スポンジケーキ)& エッペルカーカ(リンゴのスポンジケーキ) 91
Äppelsäsong * スウェーデン人はリンゴが大好き / Glass * アイスの消費量は世界トップクラス / Teets historia * 意外に古い紅茶の歴史 / Paket * スーパーは北欧デザインの宝庫

Fika i oktober * Kanelbullar
10月 カネールブッラル(シナモンロール) 103

Kanelbullens dag * シナモンロールの日 / Mejeriprodukter * おいしくて種類も充実、スーパーの乳製品売り場 / Svampar & Allemansrätten * 森や山はスウェーデン人みんなの宝 / Höst & Vinter * もっともFikaが重要になる時期

Fika i november * Kladdkaka
11月 クラッドカーカ(ぐちゃぐちゃチョコレートケーキ) 115
Kladdkakans dag * クラッドカーカの日 / Chokladens dag * 10月から11月にかけてチョコレート三昧のFika / Ärtsoppa * 木曜日に豆のスープを食べる習慣 / Martinsdagen * 聖マッティン祭

Fika i december * Lussekatter & Mjuk pepparkaka 127
12月 ルッセカッテル(サフラン入りパン)& ミューク・ペッパルカーカ(ソフトジンジャーケーキ)
St. Lucia * サフラン入りのパンを食べる聖ルシア祭 / Pepparkakans dag * ジンジャークッキーで「お菓子の家」作り / Advent * アドベントからはじまるクリスマス月間 / Julafton * もっとも盛り上がるクリスマスイブ / Nobelbanketten * ノーベル賞の授賞式、晩餐会のメニューは注目の的

Fika i januari * Hallongrottor
1月 ハッロングロットル(ラズベリージャムのクッキー) 143
Gott nytt år!* Fika定番の伝統クッキー / Tjugondedag jul * 世界で一番長いクリスマス / Nötter & Frön * お菓子作りに欠かせないナッツ類 / Rörstrand&Gustavsberg / クオリティーの高さで知られるスウェーデンデザイン

Fika i februari * Semla
2月 セムラ 155
Fettisdagen * 春を告げるシーズン菓子、セムラ / Geléhallonens dag * ラズベリーグミの日 / Kvällsfika * 夜のFikaは、ホットチョコレートでほっと一息 / Vinter▷▷▷Våren * 暖かい春へと向かう日々


■著者プロフィール

塚本佳子(つかもと・よしこ)
編集者・ライター。さまざまなジャンルの書籍や雑誌の制作に携わる。週末のみ「北欧雑貨の店 Fika」の店主。暮らしを豊かにするための方法を日々模索中。著書に『小さくてかわいい家づくり』(新潮社)、『好きなことだけ』(Pヴァイン)など。

ホームページ
https://zakka-fika.com/



見瀬 Klingstedt 理恵子(みせ・くりんぐすてっと・りえこ)
フリーランスイラストレーターとして活躍。1995年から現在まで通算12年間を家族とともにスウェーデンの首都ストックホルムで暮らす。帰国後は友人井上佳子と料理ユニット「SPISEN(スピーセン)」を組み、スウェーデン大使館のイベント等で料理を提供するかたわら、コラムニストとしても活動。著書に『シンプルを楽しむ 北欧の幸せのつくり方』(エディシォンドゥパリ)など。

ホームページ
https://www.riekomise.com

flickr
Rieko Mise Klingstedt on Flickr

光りの墓 - ele-king

「後はもれ姫がどうなったのか気になるんだな、でもどういう姫だったのかはもう判りません、もまえらもれのかわりに思い出してください、もれの気持が判れば思い出せますよ。」 笙野頼子『だいにっほん、ろんちくおげれつ記』2007

 数年前、タイの映画監督と話をしていた時に彼女は「でも私の映画はタイでは上映できない。学生服を着たキャラクターがセックスするシーンが検閲に引っかかる」と言っていましたが、『ブンミおじさんの森』で2010年にカンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を獲ったタイの映画監督、アピチャッポン・ウィーラセタクンの新作『光りの墓』も検閲でカットされかねない要素を含むため、始めからタイ国内での上映は無いものとして作られたようだ。

 タイ東北部にある、昔は学校だった建物が今は病院になっている。そこには原因不明の昏睡状態で眠り続ける兵士たちが収容されており、主人公のジェンおばさんが(母校でもある)病院にやってくるところから話は始まる。何だかよく判らないままに入院中のある青年の介護を始めたジェンの、ほぼ周囲のみにおける光景が波紋のように行ったり来たりする映画、とでも言えばいいのだろうか。病院が建っている土地は元は王家の墓だった、という設定が検閲をクリアしないと判断したそうだが、ただそうした「歴史の大きな流れ」から何かを説明しようとする映画ではない。

 この映画の日本版予告編が全編クールな音楽に貫かれているのに対し、本編にはいわゆる「音楽」がほとんど付けられておらず、かなり異なる印象のサウンドスケープで覆われている――隣の工事現場で人が歩いている音、鳥の、または虫の声、回る水車の音から兵士たちが立てる寝息までも――が、全ての好ましい音として組み上げられた光景の中に彼に特有の、音に対する(言うなればDJ的、な)卓越した才能と感覚が響き渡っている。

 アピチャッポンはいわゆる「わかりやすいゲイ映画」を撮るゲイの作家ではない。が、別に本人が秘密にしているわけでもないのに日本では妙に(これまたいかにも日本的な感じで)その部分が触れられないでいるせいで、観客が受け取り損なってしまう要素が案外あるかもしれない。例えば話の途中で、地元の信仰を集める隣国ラオスのお姫様(姉妹)を祀ったお堂が出てくる。ジェンがそこへお参りをした後に「お姫様本人」も「王女です。もう死んでるけど」などと言いながら大変ラフな感じでお出ましになったりするのですが、その祭壇などは何だかもう女装の神棚みたいなのである。

 生きているとも死んでいるとも言いがたい、文字通り「眠っている」さまざまな人や土地の、或いは自分自身の記憶にも触りながら、足の悪いジェンは終始、あくまでゆっくりと画面の中をうごいてゆく。それはまるで、達観した人が眼の前にある風景をただ眺めているかのようだ。だが軍事政権下のタイで撮られた、「眠ったままの兵士(兵士としては機能していない人間)」が見ている夢と現実とをあっさり繋いでしまうこの作品を、ある意味で検閲よりもさらに厄介な「自主規制」によって表現が萎縮しつつある日本で観るとき、「現実を恐れずに先へと進め」というシグナルを受け取らずにはいられない。

RAINBOW DISCO CLUB 2016 - ele-king

 いきなり昔話から始めてもいいですか? 90年代の中頃だったかな、ロンドンのKings Cross駅の近くのダンジョンみたいなハコでやってる渋いパーティがあったんですよ。日曜なのにやけに豪華なDJが出てた。その日は、メインがアンドリュー・ウェザオールで、セイバーズ・オブ・パラダイスとかでガンガン活躍してた時代だったから、もう喜んで行ったわけ。前の晩も朝まで遊んでてヘロヘロだった気がするけど、ウェザオールがやるなら行かなきゃって。
 その日はたしかワールドカップの予選でイングランドの大会出場がかかってる大事な試合があって、ロンドン中がそのことで沸き立ってた。クラブに早めに着いたら、驚いたことに客が全員フロアに座って、テレビでサッカー観てるんですよ。当時の日本だとサッカーなんてマイナーなスポーツだったしワールドカップで国中大騒ぎなんて理解できなかったんだけど、ウェザオール自身も試合中はDJなんてやってらんねぇって感じだったのかね(笑)。試合が終わったら、おもむろにDJが始まって、試合の熱狂を引きずるようにウェザオールもすごくいいプレイを聴かせてくれて、最初は「なんでクラブに来たのにサッカーの中継観させられるんだよ」ってちょっと頭来たけど、やっぱりウェザオールすげえぜ! って踊り狂ったのを覚えてる。ハッピー・マンデーズやプライマル・スクリームのプロデュースで台頭した頃から何度も彼のDJは聴いてるけど、このときのプレイがすごく印象に残ってるのは、非日常的な雰囲気だったからかなと思ってる。いいDJはやっぱり、ロケーションとかクラウドの持ってるポテンシャルを最高に引き出すワザを持ってると思うんだよね。選曲とか技術だけじゃなくて、場の雰囲気を掴んでそれをぐぐっと持ち上げるというか。

 そんなウェザオールが、伊豆に移って2年目のRAINBOW DISCO CLUBにヘッドライナーとして登場するのは、ほんと楽しみだ。自身のオーガナイズするフランスの古城でのフェスには敵わないかもしれないけど、4年ぶりの日本で、しかも広々とした東伊豆クロスカントリーコースでの、音楽フリークたちを前にしてのプレイは絶対彼だってあがるはず。さらに、ナイトメアーズ・オン・ワックス、ムーヴD、ジャイルス・ピーターソン、瀧見憲司、井上薫といったエクレティックで頼もしい大ベテランたちがメイン・ステージを盛り上げる。今年の夏、ヨーロッパのフェスで引っ張りだこな日本人アーティスト2人がスペシャルな組み合わせで登場するのも楽しみだ。ハウス・レジェンド寺田創一は、昨年彼をフックアップしてスポットライトを当てたアムステルダムのラッシュ・アワー・チームの一員として登場。また、DJ NOBUは、シカゴの伝説的クラブのレジデントDJザ・ブラック・マドンナとの超レアなB2Bセットで登場する。それとそれと、レッドブルのステージにDJファンクとエジプシャン・ラヴァーとサファイア・スロウズっていうひと癖ある個性的な連中がまとめて出るのも嬉しい。たぶん、最近フェス行きはじめたとかアゲアゲでビキビキなのだけがエレクトロニックなダンス・ミュージックだと思ってる層には「誰?」って感じのDJ/アーティストたちかもしれないけど、とにかく騒げればOKみたいなノリじゃない大人な(元)パーティ・ピープルにはグッと来るはずだ。
 ただ、どこにでもある夕方から翌日昼までみたいなフェスだと、いくらラインナップが魅力的でも、全然メインのアクトを見れない! って悩む人も多いと思う。うちもそうなんだけど、子供がいるファミリー層がまさにそれ。なんせ夜は子供と一緒に寝ないとだから、深夜が一番盛り上がるタイムテーブルだと、高い入場料払っても一番美味しいところは寝てるかテントで遠くから残響音が聞こえるくらいで楽しめないっていう。その点、RDCがすごくいいのは、夜は音が止まるかわりに、3日間たっぷり楽しめるってところ。豊かな自然の中でキャンプしながらゆったり贅沢に音楽とプチ・アウトドアな週末が楽しめる。
 晴海でやってた頃から、RAINBOW DISCO CLUBはクラブ界隈のトレンドとか流行りの音とかでパーティを作ってないなというのが伝わってきた。だから、音に関しては信頼してるんだけど、いくら海辺と言っても都心で寝転がっても下がコンクリだったりするとどうしてもしっくりこない部分があった。それが、伊豆になったでしょ。実は僕は、去年すごくたくさんの友人知人から誘われていたにも関わらず行けなくて、後でとっても楽しげな写真を見たり話を聞かされたりして悔しい思いをした。つまり、この会場は今年が初体験。フェスやレイヴの楽しみの結構でかい部分は、知らないところに行って初めての環境で踊るってことでしょう。わがままだけど、何年もずーっと同じ場所で同じように開催してるイヴェントに段々興味が薄れていくのはそういう理由。だから、去年パスした僕と同じように、今これを読んで今年初めて「行ってみようかな」なんて思った人はすげーラッキーなんじゃないかな。2年目で運営面もさらに改善してきてるだろうし、ファンクション・ワン使ってかなりよかったというサウンドももっとよく鳴るだろう。それでこのラインナップだからね。あとは天気さえよければ、それこそパラダイスじゃない? (渡辺健吾/Ken=go→)

Lifted - ele-king

  〈フューチャー・タイムズ〉を運営するマックス・Dと、コ・ラのマシュー・パピッチのユニット、リフテッドの国内盤CDが〈メルティング・ボット〉よりリリースされた。オリジナルはエクスペリメンタル・レーベルとしてほかの追随を許さない〈パン〉から2015年に発表されたアルバムで、しかもCD盤でのリリースは日本のみという快挙。
 最初に断言してしまうが、このアルバムは、 ポスト・インターネット以降のアンビエント/ニューエイジ・シーンでも極めて重要なアルバムである。傑作といってもいい。昨年のリリース時は、どこかワン・オートリックス・ポイント・ネヴァー『ガーデン・オブ・デリート』の登場に掻き消されてしまった印象であったが(皮肉なことにOPNの〈ソフトウェア〉から発表されたコ・ラの新譜も素晴らしいアルバムだった)、その騒動がひと段落ついた2016年だからこそ、この作品の真価が伝わりやすい状況になっているように思えるのだ。

 さて、ここで事態をわかりやすくするために、あえて単純化してみよう。OPN『ガーデン・オブ・デリート』(以下、『G O D』)よりも、リフテッド『1』は、より「音楽的」である、と。もっとも「音楽の残骸」を庭から拾い集めるように組み上げたOPN『G O D』は、いわば20世紀のポップ音楽の亡霊=ゴースト・ノイズのような作品であり、「音だけのインスタレーション」とでも形容したいアート作品であったのだから、「音楽性の希薄さ」は当然だ。そもそもダニエル・ロパティンは、これまでもそういう作品を作ってきた。また、『G O D』は、聴き手に「語り」の欲望を刺激させ、俯瞰的な意識を持たせることにも成功しているのだが(あたかも「神」のように?)、アートにおいて作品と語り(批評)は共存・共感関係にあるので、これもまた当然のことといえよう。その意味で、ダニエル・ロパティンは確信犯的に『G O D』を世界に向けて送り出した(はずだ)。彼は「いま」という時代に、音楽が生き残るためには、単に「音楽」の領域だけに留まっていてはダメだと直感している(と思う)。『G O D』の成功は、その戦略によるものと思われる。

 だが、OPN『G O D』において、確信犯的に切り捨てられた「2010年代以降のアンビエント的な、ニューエイジ的な」音楽の系譜には、「音楽的」進化の余白があることも事実だ。そして、このリフテッド『1』は、その「新しさ」を内包したアルバムなのである。それは何か。これまたザックリと書くと、「2010年代的なアンビエント的な、ニューエイジ的音楽」に、「ジャズのリズム」を分断するように導入することで、「アンビエント+ジャズ」という新たなフォームを生み出している点が、本作特有の「新しさ」である。

 もっともコーネリアス・カーデューが参加したAMMなどの例を挙げるまでもなく、実験音楽やアンビエントとジャズの関係はいまに始まったわけではないし、また、カーデューとブライアン・イーノとの関係を踏まえると、実験音楽からアンビエントの移行は必然ですらあったのだろう。

 だが本作のおもしろさは、オーセンティックなジャズのリズム(ドラム)を分断するようにトラック上にコンストラクションしている点である。いわゆるジャズ的な和声感は皆無なのだ。上モノは極めて端正なテクノ以降の2010年代的ニューエイジ/アンビエント・ミュージックだ。
 そうではなく、『1』で抽出されたジャズ的な要素は、ハイハットとシンバルの非反復的な運動によって生成する音響的なエレメントなのだ。それはビート・キープのため「だけ」に用いられているわけではない。リズムは分断され、ほかの音楽的要素のレイヤーと交錯し、複雑で端正なサウンドを形作っていく。シンバルの音が電子ノイズのように聴こえる瞬間もあるほどだ。
 とはいえオーセンティックなジャズのビートも、ほぼベースによってキープされているものだから、これもまた当然の帰結といえる。しかし90年代のクラブジャズ以降における「ジャズ的記号」の援用はリズムではなく、コード感の簡素な流用にあったわけで、本作のリズム主体のジャズの音響エレメントの抽出は確かに新しいのだ。ちなみにリズム面の豊かさは、パーカッションでゲスト参加のジャレミー・ハイマンの功績も大きいだろう(本作の「新しいワールド・ミュージック」感覚は、今後の音楽を考えていく上で重要ではないか)。

 アルバム中、7分51秒に及ぶ“ベル・スライド”は、「アンビエント+ジャズ」の総決算ともいえる曲だ。まさにジャズ的/アンビエント的/ニューエイジ的なエクレクティック・サウンドで、まるで仮想空間のリゾート・ホテルのロビーで演奏されているような浮遊感に満ちた電子ラウンジ・ミュージックが展開する。この“ベル・スライド”からアンビエント・ジャイアンツであるジジ・マシンの透明なピアノが響く“シルヴァー”に繋がるのだが、これはニューエイジ/アンビエントの歴史性を意識した構成といえよう。
 ジジ・マシンは近年再評価が著しいアンビエント音楽家である。彼が自主制作した『ウィンド』は中古市場において高値で取引されていたが、昨年、アムステルダムの優良アンビエント再発レーベル〈ミュージック・フロム・メモリー〉からようやくリイシューされた。また同レーベルからリリースされていた未発表音源集『トーク・トゥー・ザ・シー』も素晴らしいアルバムで、彼の黄昏の色のアンビエント感を満喫できる作品集であった。現在のニューエイジ/アンビエント・シーンを語る上で、最上級のリスペクトを受ける重要人物である。
 本作はその彼に深いリスペクトを捧げている。それほどまでに、この『1』において、ジジのピアノはアルバムの中心で深く、深く、鳴り響いているように聴こえるのだ(ジジ・マシンは続く“ミント”にもギターで参加)。『1』における彼の演奏は、ヒトのいない仮想世界に、不意にヒトによる真に美しい音楽が鳴り響くような感覚をもたらしてくれる。
 むろん、ゲストはジジ・マシンだけではない。マックス・Dとマシュー・パピッチは、ジェレミー・ハイマン、ダヴィト・エクルド、ジョーダン・GCZ、そしてモーション・グラフィック=ジョー・ウィリアムズらと共に、アンビエント/電子音楽の「庭」に新しい種を蒔いていく。そう、新しい「音楽」を育てるために。

 ここまで書けばわかるだろう。本作が2016年にもう一度、「新譜」としてリリースされる意味、それは『ガーデン・オブ・デリート』的な「音楽の廃墟の庭」に、仮想空間のラウンジ・ミュージック、新しいニューエイジ、海の煌きのようなアンビエント、ジャズのリズム・エレメント、新世代のワールド・ミュージックなどの音楽の種が、すでに「蒔かれていた」ことを実感できる点にある。そう、この2015年作品にこそ、2016年以降の「新しいモダン・アンビエント/モダン・ニューエイジ」の萌芽であった、とはいえないか? そして、〈パン〉主宰のビル・コーリガスのモダニスト的な審美眼にもあらためて唸らされてしまうのだ。

 春です。春が来ましたよ! 皆さん、新年度、元気にスタートされましたか?

 いやぁ、しばらく更新がないから「ひょっとして借りパクネタがもう尽きてしまったのでは?」と勘ぐられているみなさん、とんでもございません。まだまだあります。

 年の瀬にちょっとわたくしめの新著新譜のWリリースがあったりで、しばらくドタバタとイベントライフを過ごしておりましたが、いつ何時も借りパクにまつわる深い反省の気持ちと貸してくれた恩人一人ひとりの残像への想起が途切れることはなかったのです。そして、今回からは、僕だけの借りパク音楽だけでなく、僕の友人や仲間たちからいただいたエピソードも踏まえて紹介していければと思います。

 では、本日はあの曲。誰もが一度ならず耳にしたことがあり、平原綾香も「ひとりぃじゃあ?なぁ?いぃ??」と日本語歌詞をつけて熱唱した「Jupiter(ジュピター)」が収録されている、G・ホルストの組曲『惑星』の3連発です! いちばん上が僕。そして次が高校時代の友人、森下くん、そして最後が同じく高校時代の友人、河井さん。




2012年時のもの

 もうお気づきかと思いますが、僕も含めてこの3人はみんな同じ高校の同じブラスバンド部に所属していました。こんなに身近すぎるブラバン友人をリサーチしただけでも、このホルスト『惑星』借りパク・エピソードが重複しているなんて、いったい、全国のブラスバンド青少年たちの何十人、何百人、いや、何千人がこの作品を借りパクしてるんだ……って話ですよね。しかも指揮者や楽団、レーベル別に多様な名盤があるからもうその借りパクヴァリエーションの芳醇さは計り知れない……。

 まず僕はと言えば、パートは打楽器だったんですね。日々、メトローム60で4分音符、8分音符、3連符、16分音符とスティックを振るわけですよ。もちろん一人に一台ずつスネア(小太鼓)なんてないから、机です。あの教室にある木の机。放課後誰もいなくなった教室にパーカッション・パートが陣取り、誰か知らないやつの机をバカスカ傷だらけにする。いま思えば、何気にけっこうひどいことをやっていたなと思います。そして、この名盤は、そのパートリーダーだった一つ上のT先輩から借りた気が。で、カバーするのはやはり『ジュピター』ですわな。そこで、はっきり覚えているのはグロッケン(小さい鉄琴ね)担当だったこと。あとはたしかシンバルも兼務していたような……。で、何よりも入部してたしか最初に演奏会への出演が決まった課題曲だったんですよ。もう、ただでさえ楽譜読むの苦手(いまでもだけど)なのにいきなり初見演奏とかさせられて結果はさんざんだったのは言うまでもなく。曲をディスクマン(CDのウォークマンね)で日々聴いてとにかく身体に覚え込んでキンコンコンキンコンコンと演ってましたね。こういう課題曲のCDってなかなかなんというかズルズルと返すタイミング逃してしまうもので、しかもうちの高校はいちおう進学校だったためか部員の引退が早くてね(みんな受験勉強するから)。よけいに返しそびれ……ともう言い訳でしかないけど20年たったいまも手元にあるというわけです。

 森下くんは、テナーサックスでしたね。やつはどうも同期のユーフォニウム(いまアニメの影響で脚光浴びてますね)担当のGさんに借りたらしく、オカン的頼られキャラのGさんがゆえにドーンと貸してくれて、そのままドーンと快く借りパクを受け入れてくれたのかもしれませんが。森下くんいわく、同窓会の幹事を引き受けた際に「これを機に返そう」と思っていたらしいですが、結局のその幹事の仕事すらさぼってしまってさらに顰蹙を買い深い反省に包まれたことを、後日僕に報告してくれています。

 そして河井さんは、トロンボーン。やっちゃんというニックネームで呼ばれていた彼女は中学時代からブラスバンド部だったこともあり、課題曲などの知識も豊富でしっかり者だったんですが、そんな彼女にもこんな借りパクエピソードがあるとはリサーチするまで知る由もありませんでした。まさに「お前もホルスト借りパクかよ!」って感じです。しかも中学当時貸してくれた先輩がタバコ事件で部活出入り禁止になって返すタイミング逃したってのが、なかなか時代も感じる味わい深い話ですよね。しかもその先輩が指揮者だったって、そりゃもう楽団ごとしょっぴかれそうな勢い。

 と、まぁ、今日は「ブラバン」という文化ならではの借りパクエピソードをお届けしました。
 みなさんからの多様な借りパク投稿、引続きお待ちしております~!!



■借りパク音楽大募集!

この連載では、ぜひ皆さまの「借りパク音楽」をご紹介いただき、ともにその記憶を旅し、音を偲び、前を向いて反省していきたいと思っております。
 ぜひ下記フォームよりあなたの一枚をお寄せください。限りはございますが、連載内にてご紹介し、ささやかながらコメントとともにその供養をさせていただきます。

Cullen Omori - ele-king

 戻ってきたインディ・キッズたちに伝えたいアルバムだ。
 スミス・ウェスタンズが鮮やかに登場した2010年前後に、彼らと同じような年齢だった──おそらくはいまそれぞれに20代半ばを過ぎようとしていて、もうジェットセットには通っていないけれども、ときどきはなにかいい音楽が聴きたいなというひとたち。
 フロントマンのカレン・オオモリも同じような年齢で、同じように少しだけ齢をとっている。
かつてローファイ・ブームの上でおもいきりレイドバック・サウンドを楽しんでいたスミス・ウェスタンズだが、時は移ろい、ブームもひと段落した。そしてバンドは静かに分解し、オオモリもひとりで曲をつくりはじめる。
 そんな中で彼が自分なりのソングライティングを模索していく過程は、きっと多分に内省的な時間でもあったことだろう。自身初のソロ・アルバムとなる本作は、そうしたことがありありと想像される作品だ。彼の「その後」は、どんなふうにつづいていくのだろう。そして、あの頃手にしたSWのシングル盤は、もしかしたらただ仲間内での背比べのアクセサリーだったかもしれないけれど、いまなら本当に聴けるかもしれない。この『ニュー・ミザリー』を通して。

 当時について少し補足すると、舞台は2010年前後、あれはインディ・ロックが最後に輝いた時期だったのかもしれない──ローファイの一大ブームはガレージ・サイケを現代風に磨き上げ、トゥイーやジャングリー・ポップといった概念にふたたび光を当て、ウォール・オブ・サウンドを真似たレトロな音にビーチ・ポップ等の名を与え、シューゲイズのリヴァイヴァルやチルウェイヴとも交差した。シットゲイズなんて言葉もあった……まさに塵芥のように散ったけれども、だからこそ胸に残っている
 ザ・ドラムスの最初のEP『サマータイム!』やザ・モーニング・ベンダースの『ビッグ・エコー』が、リアル・エステイトの同名ファーストが、ベスト・コーストの『クレイジー・フォー・ユー』が、ウェイヴスの『キング・オブ・ザ・ビーチ』が、ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートのこれまた同名アルバムが……いっせいに出てきたタイミングだ。スミス・ウェスタンズもこうした無数の才能たちとともに、シーンに大きな星座を描いたバンドだった。

 そしてこのアルバムは「大人の自分に手紙を書いた/諦め時をわきまえててありがとうと」と歌う“ノー・ビッグ・ディール”からはじまる。タイトルは『新しい苦悩』だ。ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』がズタズタにコラージュされたスミス・ウェスタンズのファーストは、盛大にオーヴァーコンプ気味でノイジーなお気楽ガレージ・ナンバーが詰まっていたが、本作はテンションもプロダクションもなんとも対照的である。ごく内省的で、もったりと重いドリーミー・サイケ。勢いやラフさを捨て、楽曲としての輪郭と水準、そして歌を優先している。ジョン・レノンのソロを彷彿させる。「諦め時」という詞がそのまま彼の境遇や心情を表すものだとは言わないまでも、オオモリのいまがけっしてアッパーでイケイケではないことがまるで随筆のように伝わってくる。20代の真ん中は本当にぐるぐるとしてくるしく、くるおしいですよね。しかしそれは迷いの時間ではあっても、ネガティヴな時間ではけっしてなさそうだ。新しさもエッジもないが、生きている時間の切実さ、リアリティが、きちんと美しい楽曲として実を結んでいる。それは私たちがポップ・ミュージックに求めるものの中で重要なことのひとつであることは間違いない。

 もうひとつ、シンセに向かっていることも特徴だろう。サポート・プレイヤーにはMGMTのバンド・メンバーを務めるというジェームス・リチャードソンや元セレモニーのライアン・マットスの名も見える。ロックとエレクトロニック・ミュージックの狭間で、ポップスの2000年代を見つめてきた人々だ。もちろん「シンセ・ポップをやってみました」という安直な転身ではないからご安心を。むしろギターと溶けながら、あくまで彼の歌……心や魂と言いかえてもいい、を支える、柔らかくぬくもりある材質としてきこえてくる。10代のエネルギーの遠心力では回れない、しかし成熟にはまだまだ時間を必要とする、そんな時期を正直に生きるための音楽ではないだろうか。

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