「Nothing」と一致するもの

Blanck Mass - ele-king

 この明快さ。潔さと言い換えてもいいだろう。目を引くアートワークで剥かれた牙によく表れているが、それは獰猛かもしれないがもったいぶらずに清々しく野性を謳歌している。凶暴だが朗らかなのだ。UKノイズの代表格ファック・ボタンズの片割れであるベンジャミン・ジョン・パワーのソロによるエレクトロニック・ノイズ・プロジェクト、ブランク・マスの3枚めのことだ。

 いま振り返るとブランク・マスのこれまでの歩み、とくにアンダーグラウンドの名門〈セイクリッド・ボーンズ〉とサインした前作『ダム・フレッシュ』はインダストリアル・リヴァイヴァルときれいに同期するものだった。当然だがファック・ボタンズに比べるとエレクトロニック・サウンドに振りきっていて、ビートのアタックが気持ちいいくらいにハード。ファーストのころはまだ目立っていたドローンの要素はしだいに後退し、代わりにダンスが前景化する(ファック・ボタンズ『タロット・スポート』におけるアンドリュー・ウェザオールとの連携を引き継ぐものでもあるだろう)。再び〈セイクリッド・ボーンズ〉からのリリースとなる本作『ワールド・イーター』はひとまずその流れを汲みつつ、より幅広い音楽性を飲み込んで遠慮なく吐き出している1枚だ。なかばドリーミーなメロディのオープニング“John Doe's Carnival of Error”が曲の終わりでテンポを乱して高速化すると、いきなりアルバムのハイライト“Rhesus Negative”に突入する。ジャングルとスラッシュ・メタルを結合してインダストリアル化したとでも言えばいいのか、荒々しいカオスが展開するが不思議と視界はクリアだ。意外にも叙情的なシンセのメロディがかぶさると、やがてシンフォニックなコーラスがトラックのクライマックスを演出する。この躊躇のない高揚感、あるいは無闇な全能感。同様の傾向は本作のリード・トラックと言える5曲め“Silent Treatment”にも見られる。クワイアを思わせる人声がループされると途端にキックの連打が吹き荒れ、しかし次の瞬間にはビートは緩行しヴォーカル・サンプルとメロウなメロディが時間をスロウにする。その荒涼としつつもリリカルな風景は初・中期のモグワイを思わせ、つまり間口が広い。1曲のなかに近年のアンダーグラウンドへの目配せ――〈トライ・アングル〉のダークなエコー、〈モダン・ラヴ〉のモノトーンの色彩、メタルの拡張――がありつつも、なんと言うか、「はい次、はい次」といったふうな展開のダイナミズムで引きこんでしまう。組曲形式の“Minnesota / Eas Fors / Naked”は本作においてもっとも実験的なトラックだが、それにしてもドローン/アンビエントのさざ波は人懐こいチルアウトへと姿を変えていく。



 もうひとつ本作の目立った特徴はユーモア・センスが磨かれていることだろう。マシーナリーで垂直的かつ高圧的なビートではじまる“The Rat”はやたらシンコペートするシンセの煌びやかなメロディ(なにやらハドソン・モホークを連想する)が上に乗ることで不思議なスイング感を生み出しているし、アルバムの要所要所で登場するカットアップされ断片化したヴォーカル・サンプルの応酬は存在そのものが愉快だ。本作のメロウネスを代表するクロージング“Hive Mind”もまた、ちょうどまん中あたりで導入されるつんのめるようなヴォーカル・チョップをスパイスとして利かせている。アンニュイかもしれないが、そこに沈みこませることはないのだ。

 ファック・ボタンズにしてもそうだが、ブランク・マスのノイズ・ミュージックにはいくらかの祝祭感が混入している。『ワールド・イーター』というタイトルに象徴されているように出発点は荒涼とした気分が大きいように思われるが、ダンスを導入し身体的に響かせることによって混沌を躍動の舞台に変えてしまう。エクストリームであることが自己目的化しておらず、剥き出しの野性の簡潔な正しさで貫かれている。痛快だ。

Blue Iverson (Dean Blunt) - ele-king

 ああもどかしい。彼はなぜこの日本であまり評価されないのでしょうか。彼の名はディーン・ブラント。ハイプ・ウィリアムズ名義の方が有名かもしれません。昨年彼がベイビーファーザー名義で〈ハイパーダブ〉からリリースしたアルバム『BBF』は、昨年『ele-king』の年間ベスト30にも選出しましたが、われわれ編集部はこの知能犯をどこまでも支持します。
 さて、そんな『ele-king』イチ押しのディーン・ブラントが、去る4月11日、突如 Blue Iverson なる新名義で『Hotep』と題される8曲入りのアルバムをリリースしました。しかもフリーです。ジャケはローリン・ヒルです。YouTube で全曲公開されていますが、こちら(MediaFire)からダウンロードすることも可能です。しかし彼はいったいいくつの名義を作り出すつもりなんでしょうね!



[Tracklist]
1. Coy Boy
2. Soulseek
3. Nappytex
4. Brown Grrrl
5. Hush Money
6. Jenna's Interlude
7. Brother Saturn
8. Fake Loathe

坂本龍一 - ele-king

 この『async』は、2009年の『アウト・オブ・ノイズ』以来、8年ぶりのソロ・アルバムというだけでなく、坂本龍一という、ひとりの音楽家が40数年の年月をかけて行き着いた未踏の音楽に思えた。(個々人、さまざまな意見があるかもしれないが客観的にみても)最高傑作といってもいいかもしれない。“戦メリ”に代表されるリリカルな旋律を生み出す作曲家としてではなく、未知の音を追求する「ノイズ音楽家、坂本龍一」の集大成である。

 ノイズといっても轟音ではない。静謐で、空間的で、澄み切ったマテリアル=音の連鎖である。沈黙をも取り込んだ響きとリズム。微かな和声と旋律。それらの「音」たちのズレを孕んだ、しかし自由で豊穣な配置=コンポジション。まさに坂本の自伝の書名『音楽は自由にする』ということの実践に思えてならない。そもそも「async=アシンク」とは「非同期」、つまり同調しないという意味である。同調しない自由。美しく、豊かで、しかし微かな音の美を生み出すための強い意志。音への飽くなき好奇心。未知の音楽への探求心。そして世間という抑圧への抵抗と闘争心。いまの日本で、このような静謐で美しいアルバムをリリースすることじたい、「パンク」な行為ではないか。

 その「自由」のために、『async』にはまったく妥協がない。コマーシャリズムもタイアップの要素も希薄だ。メロディやビートなどポップ・ミュージックの基本フォームすら手放している(正確には形式的に「同調」するだけのポップ・ミュージックのフォームから遠く離れているだけで、耳を拓いて無心に音を追い続ければ、『async』はある意味でとても聴きやすいアルバムでもある)。
 同時に「妥協しない」という堅苦しい不自由さからも自由であり、その自由さによって本作は聴き手の耳に向かって、無限に開かれてもいる。すべては聴き手次第。聴くこと次第、とでもいうように。ゆえに本作はリスナーをとても信頼している作品のようにも思える。われわれに問いかけている音楽のようにも聴こえる。
 とはいえ、『async』は唐突に生まれたわけではない。この20年ほどの電子音響の潮流を背景に、カールステン・ニコライやフェネス、テイラー・デュプリーなどとのコラボレーション/創作活動の結果、生まれた作品でもある。その意味で、90年代の音響派、90年代後半以降のグリッチ、00年代的なアンビエント/ドローン、10年代的なエクスペリメンタル・ミュージックやフィールド・レコーディング作品以降の音楽作品として、全世界・各国で高い評価を獲得することも予想できる。たとえば、〈ラスター・ノートン〉、〈タッチ〉、〈12k〉を愛聴するリスナーたちに。もしくは〈ECM〉を求めるような繊細な耳を持ったリスナーたちに。

 この静謐で美的な音楽を生み出すマテリアル=音の数々を、坂本龍一はまるで縄文時代の狩猟民族のように「捕って」きているように思える。雨、足音、ざわめき、アルセニー・タルコフスキーの詩を朗読するデヴィッド・シルヴィアンのヴォイス、『シェルタリング・スカイ』のポール・ボウルズによる朗読、電子音、弦、東北大震災の洪水に溺れたピアノの音などなど……。坂本はいまだ音の狩人なのだ。それこそが受動的に「聴くこと」を推奨するエレクトロニカ系のサウンド・アーテイストとは違う点ではないか。この世界に横溢する音の蠢きを、坂本は繊細な音響彫刻、もしくは静謐な映画のように織り上げてみせる。狩猟/織り上げ。野蛮と繊細の共存。
 私見だが、本作のコンポジションの過程において「時間」の感覚が、これまで以上に研ぎ澄まされているように思えた。本作のアルバムの収録曲は、どれも比較的短い。この種のエクスペリメンタルなアンビエント曲は長尺になる傾向があるが本作は違う。同時に「短い」とも感じない。むしろ聴いているあいだは、豊穣な時間の只中にいる。ここが本作の肝ではないかと思う。聴き手を音響や音楽の時間に招き入れる力があるのだ。
 21世紀に復活したバッハのコラールのような1曲め“andata”から、持続音のなかに溶けたマーラーのアダージョのようなアンビエントである最終曲“garden”まで、止めることなく一気に聴けてしまう。曲の構造、アルバムの構成など、シーケンスとシーケンスが厳密に、しかし感覚的に、記憶に作用するように編集されているような感覚を抱いた。
 まるでアルバム1枚で、90年代以降のゴダール作品や、タルコフスキーの作品などの映画作品を観たかのような充実感がある。となれば、本作の坂本龍一は音だけの、「音による映画」を生み出したのだろうか。じっさい本作には「タルコフスキーの架空のサントラ」というコンセプトもあるようだが、それは表面上の問題ではなく、音響=映画によって、生の記憶と受難を表現しようとする意志を感じた。

 この『async』に漂っている悲痛なムードは、まるで環境音、アンビエントによる受難曲のようである。それは悲観とは違う。長い冬を抜けて、春の芽のようにある命が生まれ、その命がこれから辿る生の、受難の響き/音楽だ。冬から春へ。そして夏から秋へ。四季という生の循環。
 そう、ライフ=生の感覚が、確かに、この音の蠢きの中に息づいている。もしかすると、坂本龍一にとってノイズ=サウンドとは、生=ライフのことなのかもしれない。


Nate Smith - ele-king

 アメリカの〈ロープアドープ〉は、1999年に設立されて以来、ヒップホップやネオ・ソウルをはじめとしたクラブ・サウンドと、ジャズやアフロ、ラテンなどとの接点を探ってきたレーベルである。フィラデルフィア・エクスペリメント、デトロイト・エクスペリメントといった意欲的な企画も生み出した。2010年代以降は新しいジャズの潮流に乗り、スナーキー・パピー、マーク・ド・クライヴ=ロー、クリスチャン・スコット、ショーン・マーティン、テラス・マーティン、トマッソ・カッペラットたちの作品をリリースしている。ネイト・スミスのセカンド・アルバム『キンフォーク:ポストカーズ・フロム・エヴリホエア』もそうした位置付けにある作品だ。

 1974年生まれのネイト・スミスは、年齢的にはすでに中堅どころのジャズ・ドラマーである。ドラムだけでなくキーボード演奏やプログラミングもおこなうプロデューサーであり、近年出てきた新世代のミュージシャンというよりは、すでにそれ以前から輝かしいキャリアを積んできたと言える。最初は大御所シンガーのベティ・カーターのバンドに抜擢されて頭角を現し、2000年代半ばよりデイヴ・ホランド、クリス・ポッターといった大物たちのバンドで演奏してきたことが名高い。共演者もラヴィ・コルトレーン、ニコラス・ペイトン、ジョン・パティトゥッチ、アダム・ロジャース、レジーナ・カーター、マーク・ド・クライヴ=ローからジョー・ジャクソンと多岐に渡る。2008年にソロ・アルバム『ワークデイ、ウォーターベイビー・ミュージック vol. 1.0』を発表しているが、こちらはジャズよりR&B的なヴォーカル作品という印象が強く、トラックも生ドラムでなく打ち込みが主となっていた(ちなみに、「ウォーターベイビー・ミュージック」とは彼が興したプロダクションのことを指す)。そして、近年で特に注目すべきはホセ・ジェイムズのバンドに在籍したことだろう。このグループには同時期に日本人の黒田卓也ほか、コーリー・キング、ソロモン・ドーシー、クリス・バワーズがおり、黒田卓也のソロ作『ライジング・サン』(2014年)はこれらミュージシャンに、ゲストでホセとリオネール・ルエケが参加して制作された。ホセ・ジェイムズのバンドでの活動は、ネイト・スミスが自分より年下の新しい世代のジャズ・ミュージシャンたちとも積極的に関わっていることを示している。『キンフォーク:ポストカーズ・フロム・エヴリホエア』は、そうした近年の彼の活動の集大成的な作品である。

 キンフォークとはネイト・スミスの新しいプロジェクトであり、彼が本当にやりたかったこのバンドは、クリス・バワーズ(ピアノ)、フィマ・エフロン(エレキ・ベース)、ジェレミー・モスト(ギター)、ジャリール・ショウ(アルト&ソプラノ・サックス)を軸とする。ほかにネイトがいままで共演してきたデイヴ・ホランド(アコースティック・ベース)、クリス・ポッター(テナー・サックス)、アダム・ロジャース(アコースティック&エレキ・ギター)、リオネール・ルエケ(ギター)、グレッチェン・パーラト(ヴォーカル)らがゲスト参加し、ニューヨーク・ジャズ・シーンの豪華な顔触れが集まっている。内容も『ワークデイ、ウォーターベイビー・ミュージック vol. 1.0』に比べてずっとジャズ寄りで、その筆頭がデイヴ・ホランドとリオネール・ルエケのシリアスなプレイが冴えるダークでミステリアスなムードの“スピニング・ダウン”。ストリングスとサックスがノスタルジックな雰囲気に包む“ホーム・フリー(フォー・ピーター・ジョー)”は、アルバム・タイトルやジャケットのイメージに沿ったバラード曲。アルバム全体の印象としては、ラテン~ブラジリアン風のコーラスを生かしたフュージョン・ナンバー“スキップ・ステップ”、力強いビートに乗ってクリス・ポッターのサックスがグイグイとブロウするジャズ・ファンク“バウンス”、ネオ・ソウル的な要素の濃い“モーニング・アンド・アリソン”など、〈ロープアドープ〉ではスナーキー・パピーの路線に近いクロスオーヴァー・ジャズと言えそうだ。

 ワードレス・ヴォイスがフィーチャーされた“リトールド”は、前に紹介したカート・ローゼンウィンケルの『カイピ』のように、ブラジルのミナス・サウンドからの影響を思わせるドリーミーで清涼感に満ちた世界。クリス・バワーズのピアノも素晴らしい。グレッチェン・パーラトの暖かな歌が印象的な“ペイジス”はじめヴォーカル作品も充実しており、アマ・ワットが優しく歌う“ディセンチャントメント:ザ・ウェイト”は、ムーンチャイルドやザ・キングの作品あたりに匹敵するものだ。この曲では歌やストリングスはソフト・タッチであるが、それに対するネイト・スミスのドラムスはパワフルでダイナミックなもので、クリス・デイヴなどに通じる現代ジャズ・ドラム的なテクニックも見せている。そして、ソング・ライティングの面におけるネイト・スミスの才能の高さも見せるアルバムで、そうした一端がこれらヴォーカル曲に表われている。ネイト自身はこのアルバム作りにおいて、リズムとメロディにフォーカスし、なるべくシンプルな素材で作曲することを心掛けたそうだ。ドラム、ピアノ、歌のアイデアが浮かぶと、それをヴォイス・レコーダーに録音し、そこからミュージシャンやシンガーたちとのセッションを通して、バンド・サウンドとしてどう色付けや形成されていくかを楽しんだアルバムだったと述べている。ホセ・ジェイムズの新作はジャズから離れてしまい、トレンドに媚びたような妙なR&Bで、自分にとっては残念な作品となってしまっていたのだが、『キンフォーク:ポストカーズ・フロム・エヴリホエア』はそれを補って余りある作品となっている。

NHK yx Koyxen - ele-king

 つい先日パウウェルの来日公演で、東京では久しぶりのライヴを披露したばかりの世界を股にかけるエレクトロニック・ミュージシャン、Kohei Matsunaga、Koyxeи、NHK yx Koyxen、NHKyx、NHK'Koyxeи……などの名義で知られるコーヘイマツナガが、この度、〈DFA〉から新作をリリースすると発表した。
 近年は、ベルリンの〈PAN〉、パウウェルの〈Diagonal〉、マンチェスターの〈Skam〉、NYの〈L.I.E.S.〉……などといった、アクチュアルなシーンにおいてじつに重要なレーベルから作品を出しているKohei Matsunaga、Koyxeи、NHK yx Koyxen、NHKyx、NHK'Koyxeи……だが、次作が人気レーベルの〈DFA〉とはね、いやいや、ついに来たか! といったところだろう。夏過ぎにはこのデザインのTシャツを着たキッズが、街で、フロアで、踊っているに違いない。

Gigi Masin - ele-king

 昨年ele-kingからも12インチをリリースしたイタリアのアンビエント・ミュージシャン、ジジ・マシンが来日ツアーを開催します。東京、新潟、大阪、そしてふたたび東京をまわります。これまで彼のリリースに携わってきた国内レーベルやアーティストたちが集結した今回のツアーは、きっと歴史に残る公演になるでしょう。詳細はこちらから。
 また、今回の来日にあわせてジジ・マシンのキャリアを総括したコンピレーション盤『For Good Mellows』が4月19日にリリースされます。さらに、ジジ・マシン再評価を誘導したオランダの〈Music From Memory〉の、初となるレーベル・コンピレーションも発売されています。これは要チェックですね。


混沌の現代へ呼び起こされる記憶の温もり、
イタリアの伝説的電子音楽作家Gigi Masinの
待望の初来日ツアーのフルラインナップと全詳細が発表

1986年に『Wind』でデビュー、Björk、Nujabes、To Rococo Rotなどのサンプリング・ソースとしても名を馳せ、ドラマのディレクターも務めるヴェネツィアの電子音楽家Gigi Masin。80年代Brian Enoや〈ECM〉とも共振するニューエイジ・アンビエントやバレアリックの記憶を呼び起こし、至高の憩いとなったアムステルダムの振興レーベル〈Music From Memory〉からリリースされた編集再発盤『Talk To The Sea』(2014)の話題を皮切りに国内外のレーベルから再発と新譜のリリース・ラッシュとなり、遂にはライヴを始動。現代社会の憧憬とも言える80年代のエレガンスまとうシンセサイザーとピアノの美しきアンビエントの海原にそよぐ心地の良いバレアリックな風と祈りにも似た神秘への越境、本ディケイドにて実しやかに浮かび上がリ、過去から未来を投影する新時代(ニューエイジ)の「記憶」がいよいよ本邦初公開。

東京は渋谷WWWにて、ツアー初日の4/12(水)は東京公演のみとなる貴重なピアノ・コンサートにオープニング・ゲストとしてharuka nakamuraのアンビエント・セッション・プロジェクト「LABO」とDJにGigi Masinの名盤『Wind』の再発とキャリア・ベストのコンピレーションをリリースする橋本徹(SUBURBIA)とファッション、音楽、文芸など様々なフィールドに精通する〈BEAMS〉の青野賢一を迎え、Gigi Masinの叙情性をフィーチャー。ツアー最終日の4/18(火)にはベテランDJ3人、〈Music From Memory〉初のコンピレーションも監修したChee Shimizu(Organic Music)、COMPUMAによるニューエイジ・セット、橋本徹のオープニングと、ライヴにやけのはら率いるアンビエント・ユニットUNKNOWN MEとTerre Thaemlitz主宰のレーベル〈Comatonse Recordings〉からDJ Sprinklesとシリーズのコラボレーション作品を発表したWill Long(Celer)を迎え、アンビエントを軸にバレアリックを拡張し、現代におけるGigi Masinの多様性をフィーチャーした電子音楽イベントの2公演が開催。

4/15(土)新潟公演は待望の新作を携えDustin Wong & 嶺川貴子とふたりの盟友でもあるASUNAが出演、4/16(日)大阪公演はリズム、メロディ、ロジックの3要素を主体とする岡本右左無と山田厭世観のパーカッション・デュオ、ダダリズムとDJには関西が誇る女性DJ威力とイベント主催のSAITO(Newtone)が出演、ツアー前日の4/11(火)にはDommuneも開催され、イントロダクションとしてGigi Masinのトークに名曲“Clouds”のリミックスも手がけた電子音楽作家Inner Scienceと様々なコラボレーションで目下精力的な活動をみせる中村弘二のアンビエント・プロジェクトNyantoraのライヴ、そしてやけのはらのアンビエント名義NOHARA TAROがDJで出演決定。

Gigi Masin Japan Tour 2017 (Full Lineup)

■4/11 (火) 東京 at Dommune | Gigi Masin - introduction -
START 21:00 DOOR ¥1,500
Talk: Gigi Masin w/ 橋本徹 & Chee Shimizu
Live: Inner Science / Nyantora
DJ: NOHARA TARO (やけのはら)

■4/12 (水) 東京 Shibuya WWW | Gigi Maisn - piano concert -
OPEN 19:00 / START 20:00
ADV ¥4,800+1D *全席座り (170席限定)
Ticket Outlet: e+ / Lawson [L:72573] / WWW店頭
Live: Gigi Masin
opening guest: haruka nakamura LABO
DJ: 橋本徹 & 青野賢一
more info: https://www-shibuya.jp/schedule/007624.php

■4/15 (土) 新潟 Sakyu-kan | experimental rooms #25
OPEN 17:00 / START 17:30
ADV ¥4,000円 / DOOR ¥4,500 / 県外 ¥3,500 / 18歳以下無料
Ticket Info: info@experimentalrooms.com
Live: Gigi Masin / Dustin Wong & Takako Minekawa / Asuna
DJ: Jacob
more info: https://www.experimentalrooms.com/events/25.html

■4/16 (日) 大阪 Grotta dell' Amore | Gigi Masin Japan Tour Osaka
OPEN 17:00 / START 17:30
ADV ¥3,900+1D / DOOR ¥4,500+1D
Ticket Outlet: Newtone Records (店頭/通販) / Meditations (京都) / Noon+Cafe (梅田)
Live: Gigi Masin / ダダリズム
DJ: 威力 / SAITO
more info: https://www.newtone-records.com/event.php?eid=715

■4/18 (火) 東京 Shibuya WWW | Gigi Maisn - balearic state -
OPEN 18:30 / START 19:00
ADV ¥3,300+1D / DOOR ¥3,800+1D
Ticket Outlet: e+ / Lawson [L:72573] / RA / WWW店頭
Live: Gigi Masin / UNKNOWN ME / Will Long
DJ: Chee Shimizu / COMPUMA *New Age set / 橋本徹
more info: https://www-shibuya.jp/schedule/007625.php


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《ツアー関連新譜リリース情報》

■3/20 (月) 発売
V.A – 『Music From Memory』
Compiled by Chee Shimizu [Music From Memory / ritmo calentito]

ジジ・マシン再評価を先導したオランダの新興発掘レーベル〈Music From Memory〉が Chee Shimizuとのコラボでレーベルのキャリアを総括する初コンピレーションをリリース!
more detail: https://calentitomusic.blogspot.jp/2017/01/rtmcd1237.html


■4/19 (水) 発売 ※東京公演会場先行発売
V.A. – 『Gigi Masin For Good Mellows』
Compiled by Toru Hashimoto for Suburbia Factory [SUBURBIA / disk union]

チルアウト・メロウ・ピアノ・アンビエントの最高峰、絶大な再評価を受けるイタリアの生ける伝説、ジジ・マシン(Gigi Masin)のキャリア集大成ベスト・コンピレーション『Gigi Masin For Good Mellows』誕生!
more detail: https://apres-midi.biz

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主催: WWW, Newtone Records, experimental rooms
協力: Music From Memory/calentito, SUBURBIA/disk union, ele-king/P-Vine, Organic Music

https://www-shibuya.jp/feature/007626.php

Basic Rhythm - ele-king

 Imaginary Forces としてドラムンベースの黎明期から活動を続けてきた Anthoney J Hart が、別名義 Basic Rhythm で突然USのレーベル〈Type〉からデビュー・アルバム『Raw Trax』をリリースしたのは昨年のことだ。『Raw Trax』は、ソリッドなドラムにベース、そして女性ヴォーカルのサンプリングが駆け抜ける。初期ジャングルの感覚を現代にアップデートし、140bpm に落とし込んだアルバムとも言えるだろう。
 リリース後はベルグハイン出演や初来日など、ツアーなどでも精力的に活動している。Radar Radio では Kwam や Darkos Strife といったグライムMCが参加する回もあれば、彼のダブプレートを含むジャングルを詰めた2時間もある。彼はUKの音物語(*)を自由自在に行き来しているように見える。

 ロンドンに帰ってきた彼から届けられた2枚目のアルバム『The Basics』は、BPMの幅を広げながら個性を存分に聴かせてくれた。

 前半の02.“E18”(東ロンドン郊外 Woodford 周辺を指す)ではグライムMCの声がサンプルされ、03.“Fake Thugs”では、Mobb Deep の口撃が使われ、MCのエネルギーが抽出される。04.“Silent Listener”、05.“Cool Breeze (Summer In Woodford Green)”では、サイン波の低音に混じってヒップホップ的なサンプリング・カットアップが織り込まれる。06.“Blood Klaat Kore”は、Basic Rhythm 版の攻撃的なグライム・トラック、そして最後のトラック08.“Night Moves”は、キックとベースと1発の効果音だけで4分攻め切る。

 来日時に彼と話したとき、もっとも衝撃を受けたのは「ドラムを組んで、ノイズを乗せて、それでよければ曲は完成だ」と話していたことだ。
 構造的にはけっして4×4ビートではないが、エレクトロニック・ダンス・ミュージックのダンスの機能性に忠実すぎるほどで、それがかえってアヴァンギャルドな作風を作り出している。女声ヴォーカルと男声MC、ドラムマシンとサイン波、一瞬の静寂。テクノ、グライム、ジャングル、Basic Rhythm はどの呼び名にもハマりきらない、モダンで荒いダンス・ミュージックを鳴らし続ける。

(*) Simon Reynolds による、UKの90年代の音楽に関する理論では、「UKハードコア連続体」の言葉で説明される。
The Wire 300: Simon Reynolds on the Hardcore Continuum: Introduction

Can - ele-king

 先日、スロッビング・グリッスルの再発を発表したばかりの〈ミュート〉が、先週、突然CANのシングル・コレクション、シングル23曲を集めたコンピレーション『ザ・シングルス』を6月16日に発売するとアナウンスした。これまでもCANは、『カニバリズム』シリーズのような編集盤を出してきているが、シングルをすべて網羅するのは、今回が初めて。また、日本盤のみHQCD(高音質CD)仕様にて発売されるというから嬉しい。
 CANは、クラフトワークと並んでクラウトロックの最重要バンドであり、このバンドのアルバムは、少なくとも1977年まではすべてコレクションする価値がある。CANは子供ではなく大人(それも現代音楽を学んだ大人)がロックをやるとどうなるのかという点においてたぶん最高のバンドで、ゆえにつねに先走っていたバンドだった。初期のミニマルとジャズのミクスチャーは言うにおよばず、たとえばダモ鈴木が脱退してからの『スーン・オーヴァー・ババルマ』(1974)、『フロウ・モーション』(1976)、『シー・ソー』(1977)のようなアルバムにおけるワールド・ミュージック的要素の取り入れ方も、いまでもぜんぜん新鮮に聴こえる。“ピンチ”(1972)はいまだに最高のドラムンベース・ファンクであり、“マザー・スカイ”(1970)はオウガ・ユー・アスホールの偉大な父であり──。
 と同時にCANは、当時TVドラマにも使われた“スプーン”のヒットでも知られるバンドで、彼らが活動していた1970年代には10枚以上のシングルを出しており、しかも一連のシングルにはアルバム未収録の曲も少なくなく、とくに『フロウ・モーション』時代の「サイレント・ナイト」はいままで再発/再収録されることはなかった。今回の『ザ・シングルス』は、そうしたものすべてが収録されている。CANのファンにとっては嬉しい編集盤で、これから聴いてみたいという人にもオススメ。
 〈ミュート〉は最近YouTubeに「タートルズ・ハヴ・ショート・レッグス(亀には短い足がある)」をあげた。『タゴ・マゴ』時代の曲だが、CANらしいユーモアがあり、チャーミングな曲なので、息抜きにどうぞ。

カン (CAN)
ザ・シングルス (The Singles)

6月16日 (金)
2,300円(税抜)
HQCD(高音質CD)仕様


[Tracklist]
1. Soul Desert
2. She Brings The Rain
3. Spoon
4. Shikako Maru Ten
5. Turtles Have Short Legs
6. Halleluwah (Edit)
7. Vitamin C
8. I’m So Green
9. Mushroom
10. Moonshake
11. Future Days (Edit)
12. Dizzy Dizzy (Edit)
13. Splash (Edit)
14. Hunters And Collectors (Edit)
15. Vernal Equinox (Edit)
16. I Want More
17. ...And More
18. Silent Night
19. Cascade Waltz
20. Don’t Say No (Edit)
21. Return
22. Can Can
23. Hoolah Hoolah (Edit)

音楽と美術のあいだ - ele-king

すごい新しい物だから、批評軸をまだ持ってない。音楽から見たらこうである、ということは言おうとしたら言えるんだけど、音楽だけで話すと片手落ちだなって気がするし、美術からだけ見てもそれも片手落ちだし、両方から見ても片手落ちで。だからこれは、全然違う軸を持って見なきゃいけないんじゃないか、と少しずつ気づいてきたんですよ。で、それがどういうものか、未だにオレはわからなくて、だから『音楽と美術のあいだ』っていうこんな本をつくろうとしてるわけです。 〔本書311頁〕

 新刊情報のアナウンスが流れてからおよそ2年、ついに大友良英による待望の新著『音楽と美術のあいだ』(フィルムアート社、2017年)が刊行された。本書はこれまで、いわゆる音楽ジャンルに限ってみても、映画音楽、ジャズ、音響、ノイズ、歌もの、テレビ・ドラマの劇伴など、非常に多岐にわたってきた著者の活動のうち、音楽とも美術とも言い切れないような実践について振り返り、その思想的核心を抽出し、あるいはそうした名付け難い実践の可能性と展望について――具体的には今年の夏に開かれる札幌国際芸術祭2017の推奨副読本として――解き明かした、400ページ超のボリュームを伴う濃厚な1冊である。とはいえ全編が平明な語り口のインタビュー形式で織り成されているため、マニアックな固有名詞や音と音楽を巡る原理的な思考に話題が及んでも、けして読者を選ぶということもなく、そこで生まれる問いの数々に対して丁寧に説明がなされていくといったような、誰もが読み進めていくことのできる間口の広さを備えたものとなっている。

 本書が出版されるきっかけとなったのは、2014年11月から2015年2月にかけてNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)で開催されていた大友良英による展覧会「音楽と美術のあいだ」にあるのだが、この展覧会がそもそも、2013年に急逝したキュレーター/梅香堂主・後々田寿徳による遺稿「美術(展示)と音楽(公演)のあいだ」をひとつの契機としたものなのだった。本書にも全文が収載されているその論稿では、近代的なジャンルとしての音楽と美術のあいだにある様々な相違、たとえば一回性と複製可能性や、観客に向けられたものであるか否かといったことが指摘され、そうした異なりがあるにもかかわらず、それを考慮することのない美術の制度性が、音楽家が美術館で展示をおこなう際の「居心地の悪さ」を生み出していることについて、より自覚的になることの必要性が書かれていた。言うまでもなくそれは、そこからどのように音楽家が美術とも交わる領域で活動をおこなっていくことができるのかについて、さらに書き進められるところがあったはずである。その意味では本書は、そこで提起された問題を継承し、書かれることのなかった「続編」を紡ぎ出している部分もあると言うことができる。

 本書は大きく二部構成にわかれている。第一部にはICC主任学芸員である畠中実が聞き手役を務めておこなわれた、「音楽と美術のあいだ」展のクロージング・トークとその後二回継続しておこなわれた対話をもとに加筆修正されたものが収載されていて、2005年に築港赤レンガ倉庫でおこなわれたグループ展の衝撃と、それに共振する大友自身の活動が、幼少期の体験にまで遡りながら綴られていく。赤レンガ倉庫での出会いはひとえにその出演作家たちの力量が呼び寄せたものであるにしても、それをあくまで音楽家としての立場から接した大友が「新しい音楽」と述べたような「驚き」は、彼自身がそれまでの歩みの中で、でき合いのパッケージングされた「音楽」を生産/消費することで良しとせず、音楽とはなにか、音とはなにかという根源的な問いを常に問い続けながら、自らの立場を自ら切り崩すようにして新たな領域を切り開いてきた功績が、展示作品から「音楽」を聴くことを可能にしたのだとも思われる。

 さらに第二部では、音楽とも美術ともつかないような活動をおこなってきた6人のゲスト・インタビュイー(毛利悠子、刀根康尚、梅田哲也、堀尾寛太、Sachiko M、鈴木昭男)を迎えて大友とのあいだで対話を交わしていくというものになっている。ゲストの共通点はその表現の「語りえなさ」にあるのみならず、誰もが大友に衝撃を与え彼の活動に影響を及ぼしてきた存在でもある。その対話のなかでは、たとえば録音や録画によっては記録しきれない「作品」をいかにして後世へと伝え残していくことができるのか、という問いに対して、大友が「たとえば、「誰かの人生を変える」という残し方もあるのかもしれない」と応える場面がある。それを踏まえて言うならば、まさしくこの第二部には、他ならぬ人生を変えられた受け手としての大友良英による、6人の「作品」を次の世代へと伝えていくための、ひとつのアーカイヴのしかたが残されているのだとも言えるだろう。

 「音楽と美術のあいだ」とはいえ、それは第三項を打ち出すこと――その第三項が新たにジャンル化することで「あいだ」としての意味合いを失っていかざるをえなかったのが、50~60年代に特異な実践として注目を集め、ディック・ヒギンズによって理論化された「インターメディア」だった――が重要なわけではなく、むしろ音楽でなく美術でもないような、しかし同時に音楽であり美術でもあるような、語の定義の境界線上をいく「あいだ」の探究にあるということには気をつけなければならない。それは音楽と美術に限らず、演劇や舞踊を持ち出すこともできれば、いわゆる芸術ジャンルでなくとも、「凧揚げと音楽のあいだ」でも「ミュージカルと中高校生と大人のあいだ」であってもいいものだろう。その意味で対話篇が収載されている本書は、大友良英と畠中実のあいだにあり、ゲスト・インタビュイーとのあいだにあり、さらには後々田寿徳と彼の遺した文章とのあいだにもあるといったふうに、それ自体がテーマを体現するいくつもの関係性の「あいだ」において編み上げられた書籍であるようにも受け取れる。

Black Mecha - ele-king

 ゼロ年代以降、もっとも細分化し、多様化した音楽ジャンルはメタルだろう。そのポテンシャルはまるで地下水に含まれるベンゼンのようにあっさりと基準値を上回り、予想外の方向へと影響を広げていった。ドゥーム・メタルとエレクトロニカを交錯させたKTLの登場によってテクノやインダストリアル・ミュージックもその射程内に収められ、『アメリカン・バビロン』によってルッスーリアはマッシヴ・アタックの、『アイ・シャル・ダイ・ヒア』によってザ・ボディはオウテカの位置に取って代わったとさえ言える。アンビエント・ミュージックとの親和性はそれ以前から高かったこともあり、最近ではエクトプラズム・ガールズからナディン・バーン(Nadine Byrne)がソロで完成させた『ア・ディッフェレント・ジェスチャー』もポップやアカデミックにはない新境地を編み出したことはたしか。同じくフェネスがウルヴァーというブラック・メタルのバンドに参加していることもよく知られている。

 エレクトロニカとメタルを融合させた際、KTLのそれがジェフ・ミルズのようなハード・スタイルを模索したものだとしたら、カナディアン・ブラック・メタルのウォルドからフォートレス・クルックドジョー(Fortress Crookedjaw)がソロではじめたブラック・メカは果たしてどのような文脈でジャンルの壁を乗り越えたといえばいいのか。ウォルド名義の『ポストソシアル』と同じく〈デス・オブ・レイヴ〉からとなったデビュー・アルバム『AA』(2015)はまだいい。メタルのテクスチャーが少しは残っている。しかし、セカンド・アルバムとなる『I.M. メンタライジング』は冒頭からパウウェルとレジデンツの共演ではないか。諧謔と凶暴性の同居。運命論が重くのしかかってくるようなメタルの美学は微塵もなく、強いて言えば笑い死にしたくなるような多幸感に覆い尽くされている。サイドAはそれで最後まで押し切られる。

 後半はエレクトロニック・ミュージックの表情がもう少し多様化され、スラッシュ化したエレクトロのような展開へ。エンディングはややストイックで、アシッド・ハウスのように少しずつコントロールを失っていく。そして、乱暴なミニマル・ミュージックは死んだように静まり返り、もっと聴きたいという願いは届かない。曲名には超自然を思わせるタイトルが多々つけられている。そういう意味では、あまりお近づきにはなりたくないタイプかもしれないけれど、いまのところ文句を言う気はない。音楽が素晴らしければそれでいい。ちなみにナジャよりもわずかにキャリアが長いウォルドは〈エディション・メゴ〉傘下でステフェン・オモーリーが主催する〈イデオロジック・オーガン〉からもリリースがあり、クレジットにはラシャド・ベッカーの名前も見受けられる。もしかすると後者からは少なからずの影響を受けているのかもしれない。わからないけれど。

 最初は『ダーク・ドゥルーズ』でも読んで、破壊の気分で聴こうかなと思っていたんだけれど、なんと言うか、すっかり愉快な気分になってしまった。いやいや。

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