「Nothing」と一致するもの

Oneohtrix Point Never × Ryuichi Sakamoto - ele-king

 これは事件です。最新作『Good Time Original Motion Picture Soundtrack』のリリースを控えるOPNが、なんと坂本龍一のリミックスを手がけました。原曲は坂本の最新作『async』に収録されている“Andata”です。2015年にLIQUID ROOMで開催されたOPNの来日公演ではカールステン・ニコライが前座を務めていましたが、いやはや、ついに坂本龍一とも繋がってしまいましたか。そのこと自体ビッグ・ニュースではありますが、いや、これまたこのリミックスが良いんですよ。どういうふうに料理するのかとどきどきしながら再生ボタンを押すと……2分を過ぎたあたりで鳥肌が立ちました。OPN、おそるべし。なお、このリミックスは後日リリース予定の坂本龍一の作品(リミックス・アルバムでしょうか?)に収録される予定で、そこにはOPNの他にもコーネリアスアルカ、ヨハン・ヨハンソン、モーション・グラフィックス、エレクトリック・ユースなどが参加しているとのこと。

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーが坂本龍一をリミックス
- Ryuichi Sakamoto - Andata (Oneohtrix Point Never Rework) -

前衛的な実験音楽から現代音楽、そしてアートや映画の世界にまで、年々活躍の場を広げ、日本でも今年公開予定の映画『グッド・タイム』のサウンドトラックで、本年度のカンヌ・サウンドトラック賞も受賞したワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(Oneohtrix Point Never)ことダニエル・ロパティン(Daniel Lopatin)が、坂本龍一の最新アルバム『async』収録曲「andata」のリミックス・ワークを公開した。

Ryuichi Sakamoto - Andata (Oneohtrix Point Never Rework)
https://soundcloud.com/milanrecords/ryuichi-sakamoto-andata-oneohtrix-point-never-remix/

本楽曲は、『async』に続く坂本龍一の最新作に収録され、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの他、コーネリアス、アルカ、ヨハン・ヨハンソン、モーション・グラフィックス、エレクトリック・ユースなどの参加が明かされている。

ますます注目を集めるワンオートリックス・ポイント・ネヴァー最新作『Good Time Original Motion Picture Soundtrack』は8月11日(金)世界同時リリース! 国内盤には、ボーナストラック“The Beatdown”が追加収録され、解説書が封入される。iTunesでアルバムを予約すると、公開中の“Leaving The Park”と“The Pure and the Damned (feat. Iggy Pop)”の2曲がいちはやくダウンロードできる。


label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Good Time Original Motion Picture Soundtrack

cat no.: BRC-558
release date: 2017/08/11 FRI ON SALE
国内盤CD: ボーナストラック追加収録/解説書封入
定価: ¥2,200+税

【ご購入はこちら】
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002171
amazon: https://amzn.asia/6kMFQnV
iTunes Store: https://apple.co/2rMT8JI

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https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Oneohtrix-Point-Never/BRC-558

8年ほど前、ぼくらは音楽に、あるいはワンオートリックス・ポイント・ネヴァーその人に興味を持っ た。ぼくはいつもダンの音楽(特に初期の頃の)を、まだ作ってもいない映画のサウンドトラックとして想像していた。『Good Time』でのコラボレーションから、それを取り巻く対話を通じて、ぼくらは深い友情と、もちろんこの色鮮やかでこの世のものとは思えないようなスコアを手に入れた。制作の前にダンとはコンセプトのことでよく話し合った。それがカンヌで花開くことになるとは……まるでハイレゾ・ファンタジーだね。 ― ジョシュア・サフディ

ぼくはワクワクしながら、ミッドタウンにある兄弟のオフィスを訪ねた。そこには彼らが好きなものが何でもあって、まるで聖地みたいだった。巨大な『AKIRA』のポスターと『King of New York』が並んでたよ。ふたりはぼくに、特殊な映画に取り掛かるつもりだと言った。ぼくから見たサフディ兄弟は、非常に特異なことに取り組みながらも、伝統を尊重する監督だ。ジム・ジャームッシュやクエンティン・タランティーノ、レオス・カラックスといった監督を思い浮かべても、彼らは映画の歴史を愛するがゆえに映画制作そのものから遠ざかりがちだが、いずれにせよあの独特の個性を失うことはない。ぼくらに共通しているのは、傷ついてボロボロになったものに対する愛着と敬意だ。たぶんぼくらは今現在の歴 史を守りたいという衝動を感じていると思う。昔の、ではなく。ぼくら自身の言葉でだ。 ― ダニエル・ロパティン


映画『グッド・タイム』
2017年公開予定
第70回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門選出作品

Good Time | Official Trailer HD | A24
https://youtu.be/AVyGCxHZ_Ko

東京国際映画祭グランプリ&監督賞のW受賞を『神様なんかくそくらえ』で成し遂げたジョシュア&ベニー・サフディ兄弟による最新作。

コニー(パティンソン)は、心に病いを抱える弟(ベニー・サフディ監督兼任)のため、家を買い安全に生活させてやりたいと考えていた。そこで銀行強盗をふたりで行うが、途中で弟が捕まり投獄されてしまう。弟は獄中でいじめられ、暴れて病院送りになる。それを聞いたコニーは病院へ忍び込み、弟を取り返そうとするが……。

出演:ロバート・パティンソン(『トワイライト』『ディーン、君がいた瞬間』)、ベニー・サフディ(監督兼任)、ジェニファー・ジェイソン・リー(『ヘイト・フルエイト』)、バーカッド・アブティ(『キャプテン・フィリップス』)
監督:ジョシュア&ベニー・サフディ兄弟(『神様なんかくそくらえ』)

2017/アメリカ/カラー/英語/100分
(C) 2017 Hercules Film Investments, SARL

配給ファインフィルムズ

NORIKIYO - ele-king

 これは自分がいかに不良だったのかを述べる本ではない。そういう箇所がないわけではないが、アジアン・カンフー・ジェネレーションの後藤正文氏がツアー前の忙しいなか、本書のゲラを読んで、帯コメントとしていみじくも書いてくれたように、これは「反骨と愛」の本だ。
 ぼくが仕事させてもらって感じたことのひとつは、NORIKIYOのある種の“無垢さ”、ないしは“一本気”なところだ。換言すればそれは庶民的な小粋さのことである。無粋なことはしない、大きなモノには媚びない。NORIKIYOの言葉には、庶民的があるゆえの反権力、反エリート、負けん気がある(それがポリティカルに表出することもある)。反骨心に溢れていて、あるいは社会の裏側まで知っているかのような風情もある。
 が、しかし、愛も滲み出てしまう。NORIKIYOの言葉を特徴付けているもうひとつのことは、ギャングスタかっけーと思わせるムキとは正反対の、ロックの理想主義の精神が注がれていることだ。“゙ジョン・レノンに会いたい”という曲はそうしたNORIKIYOらしさの典型だが、本書には他にも清志郎をはじめとするロック・ミュージシャンたちの名前が何回も出てくる。『路傍に添える』を読んでいると、昨今のファッショナブルなインディ・ロックが失ったモノを神奈川県相模原を拠点にするこのラッパーは執拗に追い求めている/むしろ継承しているように思えてくる。(ぼくが思うに彼の言葉には、庶民性、無頼性、社会性という点において、泉谷しげるを彷彿させるところがある)
 
 8月7日、ele-king booksからNORIKIYOの詩集にして回想録『路傍に添える』が刊行される(※7月30日「Bouquet Tour Final」のライヴ会場、恵比寿リキッドルームでは限定先行発売予定です)。
 国際的に活動するグライム・プロデューサー、米澤慎太朗の音楽にのめり込むきっかけが高校時代に聴いたNORIKIYOだったと最近知ってビックリしたのだけれど、本書にはNORIKIYOの有名な『EXIT』から最新作『Bouquet』までの、あるいは語り下ろしによる、彼の言葉という言葉が印刷されている。アイルランドの詩人トーマス・ムーアによれば詩人とは魂の揺さぶりを記述する人であるというが、自由を失った片足を持つ、ひとりの人間の人生への情熱──正直で、魂を揺さぶる熱い1冊をどうぞ。


NORIKIYO
『路傍に添える』

ZAKAIAmazon
Disk UnionTower
HMV

Jeff Parker - ele-king

 ジェフ・パーカー『ザ・ニュー・ブリード』を聴いて、ギュイヨン夫人の本にあった一文を思い出して、本棚から引っ張り出してみた。
 「第二段階の魂は、ゆったりと重々しい足取りで行く大きな川にたとえることができる。こうした川は、壮麗さや威厳に満ちている。そして、その流れは際立って几帳面な様子をしている。こうした川は、よく水運に利用され、また、他の川の流れに頼らずに、一人で海まで行き着くこともできる」(村田真弓訳/以下同)

 柳樂氏のライナー・ノーツには、「ポストロックを代表するバンド、トータスのメンバーであり、一方で現代最高のジャズ・ドラマー、ブライアン・ブレイドのバンドに起用されているジャズ・ギタリストでもある」から始まって、バイオグラフィーや影響、トータスやアイソトープ217°はもちろん、ATCQ『Low End Theory』、Jディラ『Donuts』、マカヤ・マクレイヴン『In The Moment』と今作の伏線になるような作品の紹介が交えられていて、その観察はやはり、わかりやすく且つさりげなくディープである。お陰で、これら関係している作品を初めて聴く機会にありつけた。『Donuts』も初めて聴いた。ヒップホップ初心者にも程がある。「第三段階の魂を形容するあたり、高い山から流れ落ちる奔流のようだと言う以外に、何か付け加える必要があるだろうか。何ものをもってしてもその流れを遮ることはできないのだ。彼らはなに一つ身にまとわず、すっかりむきだしのまま、どれほど大胆な人であろうと思わず怖気づくような速さで駆け抜けて行く」ような音楽だと思った。

 『ザ・ニュー・ブリード』ほど、様々なものが流れていながら、それらが強すぎないまま形をなしている作品はあまり聴いたことがない。なるほど、Jディラのビートが流れていることもよくわかった。よくヨレていると表現されるそれは気持ちいいところに行きたかった故のもので実は理にかなっている。元々、ふたつのリズムが一緒に流れてひとつになることは、よくスクエアと表現されるそれより、ずっと長い歴史を持つ。ほんとの意味ではヨレても訛ってもない。その上で1曲目からやられた。生楽器メインで、ディラ的ビートを柔らかく打ち出したと思ったら、ジャズ的即興要素のある展開へ行き、それらを繰り返す。そして、どちらも強すぎないし、サウンドスケープとしての余白があるから、何が起こったか理解できないままでも音に入ることができる。強要されずに、飛び込んでくる。気づいたら音は広がっていたり、気づいたら気持ちのいい8ビートが聴こえていたり。
 そもそもギターリストのソロ作としては、ギターがさりげなさすぎる。もちろん抜群なギターで、何度か現れるしつこいまでの管とのユニゾンは、スピリチュアルジャズのようなトリップ感をもたらすが、それだけを押し出すものではなく、音像の一部であることから外れていないし、柳樂氏が指摘している“Get Dressed”のグラント・グリーン的ギターも、ループ的リズムと相まって抑制がよく効いていて、安易な踊りを誘い出しはしないし、ケニー・バレル的“Cliché”も、やはりリズムと相まって、4ビート臭さは一切ないままジャズの質感だけを残すのだが、音楽にあるスペースのお陰か自然に音に入っていける。7:45あるアルバム中最も長い“Jrifted”の7:14辺りから現れるサンプリングが、もはやサウダージといってもいいんじゃないかというリラックス効果を発揮しているのも面白い。というか気持ちいい。

 ここまで書くだけに何度聴いただろうか。もうひとつ言えることは、この作品には、捨て曲どころか捨て局面さえ一切ない上に、リスナーをして強要をしない。個性を隠すことが、個性を際立たせるようなマジックがある気がする。それは、奔流には作りえない不思議な魅力だ。一体どんな人なのだろうか。再三柳樂氏の名前を出して恐縮だが、彼をしても「わからない」らしいが、ジェフ・パーカー初心者の僕はいま、ギュイヨン夫人の言葉がしっくり来るような気がしている。

TECHNIQUE - ele-king

 この4月に大幅に店舗をリニューアルした渋谷のレコード・ショップ、テクニーク。そのリニューアルにあわせて、大々的なセールが開催されます。これは嬉しい! 期間は7月28日(金)~8月3日(木)。ぜひ足をお運びください。

「テクニーク リニューアルセール」開催
【開催期間:2017年7月28日(金)~8月3日(木)の7日間】

半期に一度の中古盤全品30%OFFに加え、リニューアルに伴う新古品が30%OFF~
中古盤2000枚以上、新古品2000枚以上放出予定

テクニーク(運営:株式会社エナジーフラッシュ、所在地:東京渋谷区)は、「テクニーク リニューアルセール」を2017年7月28日(金)~8月3日(木)までの7日間渋谷店舗にて開催いたします。

 2017年4月、よりお客様に快適にレコードを視聴して、購入していただける店舗を目指し店内を大幅にリニューアルしました。
 半期に一度、毎年7月に開催している中古盤全品30%OFFセールに加え、リニューアル記念を兼ねまして新古品も大放出いたします。中古盤全品30%OFF、新古品30%OFF~80%OFFでお探しのレコードがお買い求めいただけます。
 中古盤2000枚以上、新古品2000枚以上放出予定しております。また放出スケジュール/ジャンルは7月28日(金)にテクノをメイン、7月30日(日)はシカゴ、ディープハウスをメイン、8月1日(火)は、デトロイト、ミニマルをメインとなります。
 7月29日(土)と7月30日(日)はリニューアル際に設置したDJブースからインストアーイベントを開催し、その模様はストリーミング配信いたします。

 中古、新古品併せて4000枚以上を放出する今までにない大規模なセールとなっております。この機会に是非、お探しのレコードを見つけにテクニークへ足をお運びください。

「テクニーク リニューアルセール」
開催期間:2017年7月28日(金)~8月3日(木)
内容:中古盤全品30%OFF 新古品30%OFF~80%OFF
詳細:https://www.facebook.com/events/1759382054353011/

テクニークとは
■1994年から時代の様々な変化に沿いながら、その時々のトレンドに合わせた音楽を輸入、販売してきた渋谷は宇田川町にあるレコードショップ、「テクニーク」。アナログ・レコードの重要性や希少価値、レーベル、アーティストのブランディングのひとつとしてなど現在の音楽シーンの中で重要なパートを担っているといえよう。
■オンラインショップ
www.technique.co.jp

ハテナ・フランセ - ele-king

 夏といえばフランスでもロック・フェスティバルが毎週末のように各地で行われている。一口にロック・フェスティバルと言っても色々なタイプがあるので、今回は私が今年参加したいくつかのフェスを紹介しながらそれぞれの特色をお話ししたい。

 まずはシャンパーニュ地方はランスで行われた3万人規模の比較的こぢんまりしたラ・マニフィック・ソサエティから。ヘッドライナーはジェイミー・カラム、モデラット、エールやグレゴリー・ポーターなどのフランスでは中規模フェス仕様のラインナップ。
 シャンパーニュ地方はその名のとおりシャンパンの生産地のため経済的に豊かな地方で、その地方自治体や市などの全面協力を得て、ユネスコ指定公園のシャンパーニュ公園で行われた。他のフェスとの違いといえばアーケードゲーム機やファミコン、フィギュアなどを揃えた日本テントだろう。日本人アーティストも水曜日のカンパネラ、Seiho、Dé Dé Mouse、YMCK 、kiLLa、Dotama、ピノキオPが出演したのだが、中でも水曜日のカンパネラは個性&工夫溢れるステージで日本といえばゲームとアニメのイメージしかないフランスのオーディエンスをまずは唖然とさせ、そして最後には心を鷲掴みにしたようだった。公園の両脇はシャンパン畑だし、フランスのフェスでも初(との宣伝文句だったが真偽のほどはナゾ)のシャンパン専門ブースがあったりと優雅な雰囲気。客層も家族連れが多くシニア層もチラホラ。泥んこ万歳! な感じの若者よりもカットオフデニムにフラワークラウンを頭に乗っけてコーチェラ気分な若者の方が多く、移民系の若者はほとんど見かけなかった。

 深夜帯には若者たちしか見かけなくなったが、酔っ払って正体をなくす輩は全く目にすることもなかった。以前よく行っていたブルターニュ地方はレンヌのフェスティバル、レ・トランスミュージカルで若者たちの立ちション危険地帯やゲロ攻撃に閉口していたことを思い出し、地方によって若者たちの生態やフェスのあり方も違うのだと改めて感心した。レ・トランスミュージカルは約40年も続いている新人発掘に定評のあるフェスだが、それより何より地元の若者たちが羽目を外せるお祭りでもあるようで。しかも深酒に定評のあるブルターニュ地方とくれば、へべれけティーンネイジャー軍団に混じって深夜にシラフでライブを見るのはほとんど苦行のですらあった。

 その点、都市型フェス、パリ郊外ヴァンセーヌ公園で行われたウィ・ラブ・グリーンも別の意味での苦行であった。パリ郊外で行われるいくつかのフェスのなかでも一際スノッブなのがこのフェス。いまヨーロッパのマーケティングにおいて欠かせない要素のエコを標榜したフェスだが、今年のヘッドライナーはソランジュ、アンダーソン・パーク、ジャスティス、リッチー・ホーテンらオシャレ層に響くラインナップで集客も2日で5万8千人と大規模フェスの範疇に入る。
 おが屑を使用したバイオトイレやフードスタンドの食器を全てリサイクルにするなどのわかりやすいエコから、消費電力を食用油のリサイクルによって捻出するという一般的にはあまり聞いたことのない手法まで看板に偽り無しのエコぶり。ただオーディエンスの捌き方などには無頓着でトイレからフードスタンドまで行列がひどい。ラテン系ヨーロッパに独自のメンタリティかもしれないが、フランス人は秩序を守って行列をするのが本当に苦手だ。どこの行列もとにかくびゃーっと人が広がって、それを整える人員もいないので、皆我先にと人を出し抜こうとする。フェス仕様の軽いオシャレをしたパリジャンが澄ました顔をしてどうにかしてズルをしようとする様は、エコという意識の高さとはまったく相容れない。そこに無頓着なフェス側の姿勢はエコをマーケティングのみで取り入れているとしか思えないというのはうがった見方だろうか。
 そんなヘコんだ気持ちを持ち直してくれたのがフランス東部のベルフォールで行われたレ・ユーロケンヌだ。日本人アーティストReiに同行したのだが、約30年続いているフェスだけに地元民総出でフェスを支持している感が溢れていた。約12万人規模の大型フェスなので、他地方、スイス、ドイツなど周辺国から集まったいわゆるフェス慣れしたオーディエンスも多かったが、地元の家族連れ&シニアととてもいい塩梅で共存していた。
 Reiのサイン会には老若男女が集まり「あたしたちゃ初回からレ・ユーロケンヌに来てるけど、あんたみたいなアーティストは見たことないよ。いい筋してる!」と太鼓判を押してくれる半ズボン&サンバイザーの老夫婦などに大変癒され、会場となっている自然公園の湖畔の緑に癒された。あくまで個人的感想だが、フランスの地元密着型なフレンドリーなフェスは悪くないなあとフードブース定番のケバブを頬張りながら思ったのだった。

D.A.N. - ele-king

 子供が生まれると、徐々に成長していく過程の中で、教えてもいないのに音に合わせて小さな体を自分で揺らしはじめる場面に遭遇する。愚かな我々はたちまち「うちの子って何だか音楽に興味があるみたい(やはり!)」などとのぼせ上がるのだけれど、そのうち集団に紛れて周りに目を配る余裕ができて、そこでやっと大事なことを思い出す。そうだった、人は誰でも気に入った音楽が流れると気分が高まり、踊りたくなるのだと。

 昨年出たD.A.N.の1stアルバム『D.A.N.』を聴いたときに、長いこと忘れていたダンス・ミュージックのリズムを思い出した。エレクトロニカの複雑で歪んだ音や、ガレージ・ロック・リヴァイヴァルの熱に浮かされ、他のことに気を取られたりしているうちに、記憶の彼方へ葬られていた暗闇で反復するリズム。それによく似た種類の、血の通った新しいミニマル・サウンドを人力で鳴らす。なんて飄々としてこなれたダンス・ミュージックを作るバンドなんだ、しかもすべてにしっかりと日本語が乗っている、と唸りながら何だかもう百回位は聴いた。

 そこから1年経って発売されたミニ・アルバム「TEMPEST」。昨年末に配信リリースされていた“SSWB”は、タイトでしなやかにうねるリズムの繰り返しとスティールパンの淡い音色が土台になり、親しみやすいメロディに馴染んだクールな歌詞が重なって、D.A.N.のダンサブルな魅力を凝縮させたような素晴らしい出来。あの音の上に高い声で「Hold on baby いいかい」なんてさらっと乗せてしまう感性にまいった。誰かにD.A.N.を勧めるならいまは迷わずこの曲を選ぶ。続く“Shadows”はゆっくりとテンポを落として更にスケールを広げ、不穏な空気を漂わせる。この曲のMVがまた美しく壮大な作品で、クリエイティヴな才能に囲まれている証拠を見せつけてくれる。D.A.N.のMVはハズレが無い。

 そして表題曲の“Tempest”。もはや何処の国かもわからない謎なリズムと分厚いベースと怪しい歌声が、寡黙に進んでいくうちに徐々に交差して浮かび上がり、別の形になって耳をじわじわ襲いながらも幻のように消えていくカオスな空間が生まれる。クラブでDJが2時間かけて作り上げるようなグルーヴをD.A.N.はこの1曲でやってのけてしまった。手と足と声を使って。

 きっと彼らは音楽の趣味が良く、それを自分たちで消化して表現する能力がとくに優れているのだと思う。そういうセンスのある人たちは、国やジャンルや世代の壁をひょいっと外して、無防備な誰かの懐に忍び込み、体を揺らすことができるはず。いくつになっても、人は踊りたいものだ。それは夏のせいかもしれないけれど。

Bullsxxt - ele-king

 UCDこと牛田(ラッパー)+4人の楽器奏者(ドラマー、ベース、ギター、鍵盤)という、5人の20代半ばの青年たちから成るバンド、ブルシットは、ジャズとヒップホップを養分としながら、おもいのたけの言葉とグルーヴィーな演奏によって人びとを鼓舞し、安部政権下におけるアンガーも露わにする。ブルースな側面もあるが、連中は何と言っても勇敢な怒れる若者たちである。SEALDs世代における音楽的成果のひとつといっていいだろう。
 そう、そんな彼奴らが、賛否両論あろうが世界の見方を変えた奴らが、いよいよ本腰入れてアルバムを録音していると耳にしたので、牛田が眠っているあいだにスタジオに潜入した……と思いきや、写真を見ればわかるように、ブースのなかでノリノリでラップしておりました(ダハハハ)。
 少しだけ聴かせてもらえたが、牛田のエモさとのバランスを取るように、演奏はクールでスムーズになっており(その逆の場合=牛田がクールで演奏がエモいこともあるそう)、とにかくこれは、ケンドリック・ラマーからの影響を全力で自分たちなりに解釈した素晴らしいアルバムになるのではないかと期待が高まった。リリースは10月の半ば予定とか? 牛田が泣いて牛田が暴れる、ブルシット只今アルバム録音中!

Island people - ele-king

 まるでSF映画のサウンド・トラックのようなサウンドだ。あくまでイメージだが21世紀版『惑星ソラリス』の音響のように聴こえる。そう、〈raster-media〉のファースト・リリースであるIsland people『Island people』のことである。とにかく素晴らしい電子音響作品だ。全14曲79分、アナログ盤だと2枚組の大作となっている。

 それにしても〈raster-noton〉がAlva notoの〈noton〉と、Byetoneの〈raster-media〉に分裂したことは、大きな時代の転換点だったと思う。90年代末期から00年代の先端音楽の中心を担っていたレーベルがひとつの終わりを迎えたわけだから。
 正直にいえば、Alva notoの個人レーベルになる〈noton〉の行く末にはそれほどの心配はなかった。Alva notoはAlva notoとして作品をリリースしていくだけだろう。むしろ彼が抜けた後の〈raster-media〉はどうなるのだろうかと思っていた。Byetoneを主宰とすることには何も心配はない。そうではなく両輪のひとつを失ってしまったレーベルなのだから、うまくコントロールができるのだろうかと勝手に心配していたのである。誠に勝手な話だ。だが、そんな心配はとりあえず無用だった。少なくとも、このIsland people『Island people』は傑作である。
 
 ミニマルなリズム、硬質なドローン、躍動する音響ノイズ、微かに音楽的なエレメント(和声・旋律の残滓)、架空のSF映画のサウンドトラックのようなドラマチックで壮大な構成など、アルバム全体の音楽的・音響的な質の高さは、まったく申し分のない。
それもそのはずである。このグループは、実は相当なメンバーたちが結集してるのだ。まずは、マスタリング・エンジニアのConor Dalton、そしてSilicone SoulのメンバーGraeme Reedie、さらにあのCraig Armstrongのプログラマー/コラボレーターであるDavid Donaldson(04年に公開されたRay Charlesの伝記映画『Ray』のサウンド・トラックの制作・エンジニアリングでグラミー賞を受賞している)、加えてギタリストIain 'Chippy' MacLennanも参加。彼らの拠点であるベルリンとグラスゴーで、3年ほどの月日をかけ、ファイル交換をしながら楽曲を完成していったという。
 じじつ、フィールド・レコーディングからノイズ、ギターから打楽器まで多様なサウンドを用いられた楽曲は、高品質なアトモスフィアを形成しており、何度も繰り返し聴ける質の高さを誇っている。まさに磨き上げられた宝石のごとき電子音響作品である。
 また、これほどまで「音楽的」な要素を持った作品は〈raster-noton〉の時代はあまりなく、彼らの作品を最初にリリースしたことは、byetoneなりの〈raster-media〉宣言といえるだろう。簡素にして深いキックの音に、複雑な環境音、硬いノイズ、ミニマルでに民族音楽的なリズムがレイヤーされていく1曲め“Ember”を耳にした瞬間に、本作がすばらしさを確信できるはずだ。素晴らしいトラックなのだ。

 同時に、Island peopleがバンドである点も重要に思える。レーベルが準備したアーティスト写真もいかにもバンド的なイメージである。むろんイメージだけではない。こういったアンビエントな楽曲を複数の音楽家によって制作されるという事実の方が重要に思える。アンビエント楽曲が個人の音の結晶から複数の人間の多層的な融合になったとき、そのサウンドはどう変化するのか。その最初の(?)の兆候のようなものを、このIsland peopleのファースト・アルバムには、確かに感じた。
 簡単に言えば音楽と音響のレイヤーに「複数性」があるのだ。アンビエント/電子音響のレディオヘッド? なんていう妄想が思い浮かんでしまったほどである。とはいえ今後もヴォーカルなどが加わらず、徹底的に音楽/音響のみで、そのスケール感を拡張していってほしいものだ。
 いずれにせよ、本年のエレクトロニック・ミュージックの中でも一際完成度の高いアルバムであることに違いはない。ノイズの空気と層が音楽/音響のなかに、まるで惑星を包みこむ大気のような音響空間と音楽が生成している。まさに必聴といえる。

interview with Songhoy Blues - ele-king


Songhoy Blues
Résistance

Transgressive / ホステス

AfricanBluesRock

Amazon Tower HMV iTunes


 デーモン・アルバーンによるアフリカ音楽プロジェクト〈Africa Express〉のスカウティングで、アマドゥ&マリアムを手掛けたマーク・アントワーヌ・モローに見いだされ、同プロジェクトのコンピ『Maison Des Jeunes』でデビュー。その勢いに乗ってヤー・ヤー・ヤーズのニック・ジナーらのバックアップで2015年にリリースされたデビュー・アルバム『Music In Exile』はブライアン・イーノらに大絶賛され、ジュリアン・カサブランカスやアラバマ・シェイクスのライヴにも登場。2012年のマリ北部紛争により、ジハーディスト集団に占拠された故郷を離れて生活することを余儀なくされたソンゴイ族の若者たちが、南部のバマコのキャバレーに集い奏でたバンド・アンサンブルは、様々な民族が集うマリの首都の夜を熱狂させただけに留まらず、いまや全世界から注目を集めるアフリカ新世代のサウンドとなった。

 そして『Music In Exile』から2年、プロデューサーにニール・コンバー(MIA、ジャンゴ・ジャンゴ、etc.)を迎えた、ソンゴイ・ブルース待望のセカンド・アルバムが届けられた。タイトルは『Résistance(レジスタンス)』。

 かつてアリ・ファルカ・トゥーレを輩出したソンゴイ族ならではの乾いたブルース・フィーリングを、B・B・キングやジョン・リー・フッカー、そしてジミヘンらアメリカのブルース~ロック由来のキャッチーでアグレッシヴなギター・ワークに反映させた小気味良いバンド・サウンドは今作でも健在だ。マーク・アントワーヌ・モローは、ソンゴイ・ブルースを初めて観たときの印象を「紛れもないロック・バンド、アフリカ云々は問題じゃなかった。マンチェスターやグラスゴー出身のロック・バンドとなんら変わりはなかった。そこが良かったんだ」と語り、プロデュースするにあたって「ワールド・ミュージックのシーンは徹底的に避けるようにした」と告白しているが、この清々しいまでに外連味のないロック・マナーのギター・アンサンブルの向こうに、アフリカの、マリの、ソンゴイ族ならではの濃密な音空間が聴くほどに広がるこの不思議こそ、このバンドの持つ堪えられない魅力だ。今作ではそこにさらにホーンやシンセが加わって、シンプルさはそのままに、よりダイナミックな仕上がりになっている。


 そのバックグラウンドにもかかわらず、もしくは、だからこそ、というべきか、彼らののびのびとした音楽的な佇まいを通して伝わってくるのは「ポジティヴなアフリカ」だ。今アルバムのリード・カットとなった“Bamako”のプレス・インフォには、ヴォーカルのアリユ・トゥーレのこんな言葉が添えられている。「アフリカっていうとネガティヴで、戦争や飢饉といった悪い報道しかされない。そんなイメージを払拭できて、誰もが共感できる曲にしたかった。土曜の夜に出かけることについて歌うことで、人びとが普段知らないアフリカを伝えたかった」。

 『Résistance』に納められたそれぞれの曲は、マリの状況に関する明確な意図を持つ、抵抗(レジスタンス)の音楽だという。それはまた、我々の一方的なアフリカ観、ステレオタイプなアフリカ音楽のイメージ、旧態依然としたアフリカ音楽の聴き方に対するレジスタンスでもあることにも気づく。

 ヴォーカルのアリユ・トゥーレに新作について訊いてみた。


 

僕にとってテレビは人の家の鍵穴から覗いて観るものだったよ。音楽は村の人みんなにとって日常だった。サッカーだってマリに到達したのは比較的最近だよ。マリはアフリカの中でもいちばん音楽的な国だと言っていいと思う。


通訳:このインタヴューは日本の音楽雑誌でwebzineの『ele-king』という媒体のためのものです。よろしくお願いします。

アリユ・トゥーレ(Aliou Touré、以下AT):マリで子どもの頃よく『ドラゴンボールZ』を観ていたんだよ! 日本に早く行きたいな。

デビュー作『Music In Exile』も素晴らしいアルバムでしたが、新作『Résistance』はそれをさらに上回る傑作になっていることに驚きました。新作についてはあとで訊かせていただくとして、あなたがた、マリのガオやトンブクトゥ周辺で暮らすソンゴイの人びとの暮らしというのはなかなか日本人には馴染みがありません。まずはあなたたちが幼少の頃の音楽的な環境から教えてください。生演奏、ラジオ……どのようにして音楽と接していたのでしょうか? 音楽は身近なものだったのでしょうか?

AT:マリの北の砂漠で育ったんだけど、当時のマリ北部には何もなかった。ラジオは94年に、テレビも96年から始まったからね。でも音楽はとても身近なものだった。というより音楽が唯一のエンターテインメントだったんだ。結婚式や洗礼式があるたびにミュージシャンが呼ばれて路上でパーティがおこなわれて、そこから音楽を学んでいったんだ。踊ること、歌うことをね。PlayStationなんかなかったから音楽が唯一の楽しみだったんだ。テレビなんてすごく高かったから家になかった。僕にとってテレビは人の家の鍵穴から覗いて観るものだったよ。音楽は村の人みんなにとって日常だった。サッカーだってマリに到達したのは比較的最近だよ。マリはアフリカの中でもいちばん音楽的な国だと言っていいと思う。マリはいろいろな文化に囲まれてる。モーリタニア文化、アラブ文化、セネガルのパーカッション、とにかくさまざまな文化の影響が混ざり合った国なんだ。

あなたはソンゴイ・ブルース結成以前から故郷のガオで音楽活動をしていたと聞いています。どのような経緯で人前で歌うようになったのでしょう?

AT:最初に組んだのはサラリーズ・ドゥ・ガオというバンドで思春期の衝動で作ったようなバンドだった。それから大学に行って歌詞が書けるようになって、ギターが弾けるようになってメロディが書けるようになって、と成長していった。それでマリでライヴをやるようになっていったんだ。マリがジハーディストたちに占領されて音楽が禁止されたりしている中、それぞれ他のバンドをやっていて顔見知りだったメンバーがバマコで会ってソンゴイ・ブルースが始まったんだ。北部出身者たちが南部のバマコで寄り合って同じ言葉を話してちょっとしたノスタルジーや安心感もあったと思う。そのうちジャム・セッションをするようになって、前座ライヴをするようになっていったんだけど、メインのバンドより受けちゃってね。一緒にやる運命なんじゃないか、と話してソンゴイ・ブルースを始めたんだ。

影響を受けた人物、アーティストなどがいたら教えてください。

AT:まずはマリのアーティスト、アリ・ファルカ・トゥーレ(Ali Farka Touré)、ティナリウェン(Tinariwen)、アマドゥ&マリアム(Amadou & Mariam)などの伝説的存在。こういったアーティストたちはラジオでも流れていたし結婚式や洗礼式でも彼らの音楽が演奏された。今はインターネットが普及して、ヒップホップ、レゲエ、ロック、ブルース――ブルースは僕たちの故郷が発祥の地だけどね――といった音楽もどんどん聴けるようになって、僕たちの音楽にも若い世代に好まれる音楽の影響が入ってきている。

(前作収録曲の)“Al Hassidi Terei”のPVを見たとき、ヘヴィな曲調にもかかわらずあなたがとても楽しそうに歌っているのに虚をつかれる思いがしました。困難な状況、理由でバンドをスタートさせたにもかかわらず、あなたはいつもじつに楽しそうに歌っていますね。

AT:音楽は瞑想方法なんだ。音楽を演奏しているときは音楽に没頭して不安や困難とは別の境地に達することができるんだ。


マリがジハーディストたちに占領されて音楽が禁止されたりしている中、それぞれ他のバンドをやっていて顔見知りだったメンバーがバマコで会ってソンゴイ・ブルースが始まったんだ。

バマコでの活動中から、バンドのコンセプトにもかかわらず、トゥアレグの人たちをはじめ、ソンゴイ族以外からも人気があったそうですね。どうしてそんなことが可能だったんでしょう?

AT:それが僕らの音楽のマジックなんだ。バマコのキャバレーで演奏しているとき、オーディエンスの中には13部族全部が混ざっていた。彼らの言葉や服装なんかでどこの部族かすぐにわかるからね。音楽を聴いているときは憎しみも消えるんだ。それが音楽を分かち合ういちばん重要なところだよ。僕たちの音楽の根底に流れている善良さにみんな惹きつけられた気がする。

〈Africa Express〉に関わったことで、ソンゴイ・ブルースの音楽性に何か変化はありましたか?

AT:そうだね、大きな変化へのきっかけになった。マリのクーデターの真っ最中にバマコに来てマリのバンドをサポートしたんだから彼には頭がさがるよ。デーモン(・アルバーン)はアフリカ音楽を本当によく理解しているし。あの政治的状況の中、50バンドのオーディションをして1週間かけてレコーディングしていったんだ。〈Africa Express〉をきっかけに僕たちのキャリアはガラッと変わった。

ニック・ジマーやマーク・アントワーヌ・モローがプロデュースをしたことでソンゴイ・ブルースのサウンドに変化はありましたか?

AT:もちろん。音楽的にもすごく成長したと思う。ニックは経験豊富で才能豊かで、彼からアレンジの新しいスタイルを学んだよ。その後にツアーに出て3年かけてさらにいろいろな経験を積んだんだ。いろんなバンドやプロデューサーに出会ってジャム・セッションをしたりしてね

前作『Music In Exile』には知る人ぞ知るハイラ・アルビー(Khaira Arby)が参加していました。彼女はどういう経緯でアルバムに参加したのでしょう? また彼女はマリの人びとにとって、そしてあなたがたソンゴイ・ブルースのメンバーにとってどういった存在でしょうか?

AT:北のディーヴァさ。彼女は僕たちのことを息子のように思ってくれているし、僕らも母のように慕っているよ。それでレコーディングの時に「参加してくれない?」って頼んだら、快く引き受けてくれたんだ。今までもクラブでジャムに参加してくれたことも2回ほどあった。ソンゴイ・ブルースのギタリストは、彼女のバンドの代打ギタリストとして彼女のコンサートによく参加していたから、僕らのこともよく知っていてくれた。それで朝に彼女に電話したら午後にはスタジオに来てくれて、リハも何もなくぶっつけ本番でレコーディングしてくれたんだ。


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マリの国民としてこれは不正な統治に対する抵抗であり、軍、権威などに対する抵抗の音楽なんだ。それぞれの曲がマリの状況に関する明確な意図があって書いてる。










Songhoy Blues

Résistance


Transgressive / ホステス

AfricanBluesRock



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セカンド・アルバムの構想はいつくらいから練りはじめましたか? 今回のアルバムのテーマ、あるいは制作のモチベーションになったことなどがあれば教えてください。

AT:『Résistance』は『Music In Exile』を巡る冒険の延長線上にあるんだ。『Music In Exile』というとても特別なコンセプトのもとに作ったアルバムのツアー中にも曲を書いたんだけど、マリの国民としてこれは不正な統治に対する抵抗であり、軍、権威などに対する抵抗の音楽なんだ。それぞれの曲がマリの状況に関する明確な意図があって書いてる。それらの歌詞はツアー中に書いた。空港やホテルや車の中でね。でも何曲かは『Music In Exile』が出る前にすでに書かれていたものもあるんだ。

今回のアルバムはロンドンでレコーディングされていますが、アルバムの制作のためにメンバー全員で一度故郷であるガオやトンブクトゥに帰っていましたよね。アルバムを制作するにあたって、やはり故郷に戻る必要があったんでしょうか?

AT:ソンゴイ・ブルースを始めてから、それぞれが1週間か2週間のブレイクをツアー前にとるようにしてたんだ。家族に会って英気を養うためにね。マリの状況は変わりつつあるから新しいアルバムへのインスピレーションにもなったよ。

先行シングルである“Bamako”や“Mali Nord”には、前作にはなかったホーン・セクションやキーボードのサウンドが聴こえてきます。

AT:いろいろな音楽を聴くうちにホーン・セクションやキーボードのサウンドにも魅力を感じるようになってね。それにヨーロッパでの方が僕たちの故郷よりソンゴイ・ブルースが聴かれていることがわかって、ヨーロッパのオーディエンスにも合うようなサウンドを作りたかったんだ。

“Bamako”という印象的な、ある意味であなたがたの出発点になった街のタイトルを持つこの曲の歌詞を解説してください。

AT:“Bamako”からすべてが始まったから、オマージュを捧げたかったんだ。僕たちのバックグラウンドを理解するのに役立つ歌詞なんだよ。バマコは夜が本当に生き生きした街なんだ。ここ最近のバマコにまつわる暗いイメージを払拭したくてね。旅行に行ったり、働いたりすることをためらうような状況があるけど、バマコに行ったら面白いバンドが見られる、楽しい夜が過ごせるということを言いたかった。パリでテロがあったって、パリの街の魅力が損なわれたわけじゃないだろ? それはバマコも同じなんだ。

“Mali Nord”には(前作収録曲の)“Irganda”をサンプリングしていたグライムMCのエルフ・キッド(Elf Kid)が参加していますね。彼はどのような経緯で参加することになったのでしょう?

AT:(エルフ・キッドが)“Irganda”を使いたいということで、でき上がった曲を聴いたら僕たちの曲より素晴らしくて「OMG!」ってなったんだ。それでエルフ・キッドに会って、いい仕事をするだけじゃなくて良いヤツだってわかって、いつか一緒にできればとレーベルに話してたんだ。それでアルバムの制作時にこの曲にはラッパーが必要だってなって、すぐにエルフ・キッドに提案したっていうわけ。曲のテーマは難民。そして難民が亡命したければ受け入れるべきだということ。エルフ・キッドも同じ思いなんだ。



バマコは夜が本当に生き生きした街なんだ。ここ最近のバマコにまつわる暗いイメージを払拭したくてね。〔……〕パリでテロがあったって、パリの街の魅力が損なわれたわけじゃないだろ? それはバマコも同じなんだ。

“Ici Bas”の美しいコラの音とヘヴィなギター・サウンド、軽快なリズムのフュージョンにシビレました。あのコラを演奏しているのは誰ですか? マンディングのグリオの楽器であるコラをフィーチャーした理由はなんでしょう?

AT:トゥマニ・ジャバテ(Toumani Diabaté)の弟だよ。別のプロジェクトで一緒になってマリのスタジオで出会って、コラの演奏が素晴らしかったから「今度一緒にやらないか」と声をかけたんだ。演奏スタイルもマンディングだけど、そうやって別のスタイルや民族性を混ぜていくことが、美しいと思う。歌詞もマンディング語で歌ってる。モラルや人間同士の関係性についてだ。夫婦や親子、雇い主と雇われる側などいろいろな人間関係のそうあるべきあり方について歌っている。

他にアフリカ・サイドから参加しているアーティストがいれば教えてください。また彼らはどういう経緯で参加することになったのでしょうか?

AT:バッキング・ヴォーカルとンゴニくらいかな。ンゴニはマリの南から来てもらったバカラという友だちだよ。このアルバムではパーカッション、メロディ、歌詞、楽器などマリのあらゆる民族の音楽を取り入れているんだ。

イギー・ポップの参加には驚きました。どういった経緯で参加することになったのでしょう?


AT:“Sahara”をレコーディングした時、この曲のメッセージを伝えるには高みにあるアーティストに頼まないといけないね、と皆で話し合って、スタッフがイギーに頼んだんだ。曲を聴いてイギーは特に質問するでもなくすぐに引き受けてくれた。イギーは新人バンドをとても良くサポートしているけど、アフリカの砂漠から来た若いバンドとやるのは初めてだったようだよ。

“Hometown”は、タイトルとはうらはらにとてもハイブリッドな曲ですね。フィドルを弾いているのは誰ですか? またフィドルを加えた理由はなんでしょう?

AT:ロンドンの友だち。ロンドンのコンサートの後に楽屋に会いにきてくれて、ビールを飲んだりして話しているうちに意気投合して、レコーディングで声をかけるよ、ということになったんだ。

ニール・コンバーとのコラボレーションはいかがでしたか?

AT:ニールは最も人の言葉に耳を傾ける忍耐深いプロデューサーだよ。彼はものすごく経験が豊富なのに指図をしてくるのではなく、アーティストの意見をまず尊重してくれる。それはアーティストにとって理想だよね。僕たちには経験がないから、僕たちが欲しいと思っている音がなんなのかよくわからなくて口で「こういう音」と真似ることが多かったけど、そういうことにもいちいち付き合ってくれたよ。そしていつでも笑顔で熱心で僕たちを励ましてくれた。

今回のアルバムにテーマのようなものはありますか? バンドが目指したサウンドやメッセージがあれば教えてください。

AT:最後の曲“One Colour”の歌詞で歌っていることだね。皆が一緒になればこの世界は素晴らしいものになる。ギター、ドラム、ベースが一緒になったようにね。

あなたたちはマリという国の出身であるにもかかわらず、マリと同時に欧州のフランス語圏ではなくUKやアメリカなど英語圏を中心に活動し人気を博しています。あなたがたの故郷であるガオやトンブクトゥはニジェール川のほとりにあり、イスラム世界とアフリカの交易の中心地として栄えた大都市で、ひょっとしてオープンな、進取の気風があったりするのかなと思うんですが……どうでしょう?

AT:僕たちが欧米で受け入れられた大きな理由は、この世界情勢が僕たちの活動に与えた影響、そして僕たちの物語にオリジナリティをもたらしたと思う、そして僕たちの戦いに世界の人びと、欧米の人たちが共感してくれたんだと思う。


Okada Takuro - ele-king

 2015年、さあこれからだってときに「森は生きている」を解散させて、その後の動向が注目されていたバンドの中心メンバーもしくは彷徨するギタリストこと岡田拓郎(ソロ名義Okada Takuro)の作品がようやく完成、ソロデビュー曲“硝子瓶のアイロニー”の配信が今日からスタートしました。思考を重ねに重ねできあがったであろう、ポップな曲で、岡田拓郎の新境地が聴こえます。ぜひ注目してください。



Okada Takuro (岡田拓郎)
硝子瓶のアイロニー

Hostess Entertainment
https://hostess.co.jp/news/2017/07/014553.html

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