「Nothing」と一致するもの

メシアTHEフライ - ele-king

 2006年、I-DeA や MSC 作品などへの客演を経て初のEP「湾岸 SEAWEED」を〈Libra〉から発表、2009年にファースト・アルバム『BLACK BOX』をリリースしたヒップホップ・ユニット、JUSWANNA(ちなみに「湾岸 SEAWEED」には、ISSUGI が 16FLIP として最初に世に発表したトラックが2曲含まれている)。
 その JUSWANNA のMCのひとり、メッセージ性の強いリリックで知られるメシアTHEフライが JUSWANNA 活動休止後にリリースしたソロ・アルバム『MESS - KING OF DOPE-』が、10年以上のときを経てついにアナログ化される。嬉しいことに、CDも同時にリイシューされるとのこと。LPのほうは完全限定生産なので、早めに予約しておこう。

JUSWANNAのブッ飛んだ救世主ことMESS a.k.a. メシアTHEフライが2010年にリリースした傑作ファースト・ソロ『MESS -KING OF DOPE-』が帯付き2枚組/完全限定プレスで待望のアナログ化! 同時に入手困難だったCDもリイシュー!

メッセージ性の強いパンチラインを最大の武器に独自のスタンスで常に斜め45度から世間を騒がす反逆者であり、MEGA-G、DJ MUTAとのユニット、JUSWANNAのブッ飛んだ救世主ことMESS a.k.a. メシアTHEフライ。そのJUSWANNAとして2006年に1st EP『湾岸 SEAWEED』、09年に1st Album『BLACK BOX』をリリースした後の10年5月にグループとしての活動を休止し、同年12月にファースト・ソロ『MESS -KING OF DOPE-』をリリース。サグライフでも、ハスリングライフでもない、実は一番ぶっ飛んだ「日常」の疑問をもう一度エグり返して出てきた問題作であり、メシアTHEフライが現実を色濃く模写した全13曲を収録した傑作中の傑作としてリリースから10年以上の時を経てもまったく色褪せることのないその『MESS -KING OF DOPE-』が帯付き2枚組/完全限定プレスで待望のアナログ化! 同時に入手困難だったCDもリイシュー!

[LP情報]
アーティスト: メシアTHEフライ
タイトル: MESS -KING OF DOPE-
レーベル: Libra Records / P-VINE, Inc.
発売日: 2021年12月2日(木)
仕様: 帯付き2枚組LP(完全限定生産)
品番: LIBPLP-001/2
定価: 4.950円(税抜4.500円)

[CD情報]
アーティスト: メシアTHEフライ
タイトル: MESS -KING OF DOPE-
レーベル: Libra Records / P-VINE, Inc.
発売日: 2021年9月15日(水)
仕様: CD
品番: LIBPCD-013
定価: 2.640円(税抜2.400円)

[LP:トラックリスト]
SIDE A
1. Intro
 Produced by DADDY VEDA a.k.a REBEL BEATZ
2. MESS
 Produced by DADDY VEDA a.k.a REBEL BEATZ
3. 東京 Discovery 3 feat. PRIMAL (MSC)
 Produced by HardTackle_66
SIDE B
1. 鉞-マサカリ-
 Produced by KAMIKAZE ATTACK
2. ビルヂング
 Produced by T.TANAKA
3. MONKEY BUSINESS feat. TAKUTO (JPC band)
 Produced by T.TANAKA
SIDE C
1. マンダラ
 Produced by I-DeA
2. POPS feat. 仙人掌 (MONJU)
 Produced by 16FLIP
3. 東口のロータリー
 Produced by DJ OLD FASHION
SIDE D
1. Skit
 Produced by KAMIKAZE ATTACK
2. No More Comics feat. BES (SWANKY SWIPE)
 Produced by DADDY VEDA a.k.a REBEL BEATZ
3. Wonderful World
 Produced by The Anticipation Illicit Tsuboi
4. Outro
 Produced by MUTA (JUSWANNA)

 ぼくは間違っていた。先日リリースされた『ラプソディー ネイキッド・デラックスエディション』の紹介文のことだ。なんかあれは、とくに高額商品ということもあって、ある程度年のいった連中にしかわからないんじゃないかという先入観を持って書いてしまった。なんて弱気な……。というのも、じつはあの文章を書いた直後に清志郎に夢中な12歳の少年の存在を知ってしまったのだ。親がファンというわけではない。どうやら彼が自分で清志郎の音楽を見つけて、バンドを組んで歌っているという。最近ではヘルメットを欲しがるほどにタイマーズにはまっていると聞いた。
 オリンピック以降、いや、それ以前からか、無理もないと言えばそうなのだけれど、世の中の空気はどんどん悪くなっている。誰かが何かを言えば誰かがむかつき、言葉の揚げ足をとっては炎上、それを各ネットメディアが同じように報じたり、そしてトーマス・バッハはいけしゃあしゃあとしていると……なんとも暗々たるこのご時世だが、清志郎の曲が12歳の少年に届いているという話は、嬉しいニュースじゃないですか。
 そりゃあ、さすがのぼくも清志郎の曲のすべてが現代に通用すると思っているわけではない。悪い意味での前時代的なノリもある。だが、いまだRCサクセションや清志郎の多くの曲は過去のモノにはなっていない、そう確信している。いまだパワフルに思える曲があるのは、もうどうしようもない事実なのだ。
 最近ユニバーサルが流したニュースによると、忌野清志郎50周年企画第5弾は、後期におけるソロの名作の1枚、『KING』だという。RCサクセション解散後、リトル・スクリーミング・レヴューやラフィー・タフィー、ラヴ・ジェッツなど複数のプロジェクトで活動していた清志郎が、三宅伸治らとがっつりバンドを組んで制作した2003年の作品で、この後続く『God』~『夢助』という晩年の傑作3部作の第一発目として知られている。この3枚は原点回帰的なロックンロールとソウルのアルバムで、いい曲がたくさんある。『KING』に関して言えば、個人的には女にふられた曲“胸が張り裂けそう”がベストだけれど、一般的にはソウル・ナンバーの“Baby 何もかも”や日本を風刺する“奇妙な世界”、十八番のソウル・バラード“雑踏”やなんだろうか。“ウィルス”なんかまるで最近できた曲みたいだな。なにしろ歌の出だしは「重い重い副作用が、体中に残っている」なんだからね。で、今回は当時録音されていた未発表が4曲も収録される。なんでも事情通によれば、どん底から立ち上がるあの名曲“Jump”にも似た秘蔵の曲があるらしい。一刻も早く聴きたいんだけれど、発売は11月24日だった。とりあえずその日までがんばろう。
 清志郎の長いキャリアのなかでもっとも売れなかったであろう1998年のアルバム『Rainbow Cafe』は、“世の中が悪くなっていく”という曲からはじまっている。2000年代以降の清志郎の諸作には、80年代には表現されていなかった世の中を覆う暗い空気や暗い予感がなにかしら通奏されている。悪い時代を生きているという自覚のもと、しかしではそこでどんな歌が歌えるのかと、もがき悪戦苦闘しているかのようだ。『KING』もそうだが、『God』と『夢助』のようなアルバムが再評価されるときがついに来てしまったのだろう。(野田)

忌野清志郎
KING Deluxe Edition

発売日:2021年11月24日
(オリジナル:2003 年11月19日発売)

【通常盤】
2CD+1DVD UPCY-7741 価格:3,636 円+税
Disc1(CD):KING 2021 Remaster + 4(未発表曲 Recorded at ロックン・ロール研究所)
Disc2(CD):忌野清志郎&NICE MIDDLE with NEW BLUE DAY HORNS LIVE in NHK「ONE NIGHT LIVE STAND」2003/10/26 at NHK 112st
Disc3(DVD):「WANTED」 LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003/8/17 ライヴ映像ダイジェスト
*仕様:紙ジャケ 3CD in 三方背 BOX

【限定盤】
3CD+1DVD+2LP UPCY-9993 価格:16,000円+税
(仕様:ゲイトフォールド 2LP ジャケット+3CD+付属 in LP BOX)

Disc1(CD):KING 2021 Remaster + 4(未発表曲 Recorded at ロックン・ロール研究所)
Disc2(CD):忌野清志郎&NICE MIDDLE with NEW BLUE DAY HORNS 「WANTED」
LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003/8/17 <前半> Disc3(CD):忌野清志郎&NICE MIDDLE with NEW BLUE DAY HORNS 「WANTED」 LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003/8/17 <後半>
Disc4,5(LP):KING 2021 Remaster + 4(未発表曲 at ロックン・ロール研究所)
Disc6(DVD):「WANTED」 LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003年8月17日 ライヴ映像ダイジェスト
〈付属〉
・佐内正史写真集「ANGEL」
人間「忌野清志郎」を捉えた未発表写真満載の全44P 豪華写真集
・「WANTED」 LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003年8月17日を捉えた写真プリント (写真:西村彩子)

■収録曲

【通常盤】
Disc1(CD)
KING 2021 remaster + 4(未発表曲 Recorded at ロックン・ロール研究所)
01 Baby 何もかも
02 WANTED
03 玩具(オモチャ)04, HB・2B・2H
05 雑踏
06 虹と共に消えた恋
07 ウイルス
08 モグラマン
09 奇妙な世界
10 胸が張り裂けそう
11 約束
〈未発表曲 at ロックン・ロール研究所〉
12 ジグソーパズル
13 ギブミーラブ
14 真冬のサイクリング
15 花はどこへ行った

Disc2(CD)
NHK「ONE NIGHT LIVE STAND」2003年10月26日 at NHK 112st
01 WANTED
02 玩具(オモチャ)03, HB・2B・2H
04 ウイルス
05 雑踏
06 スローバラード
07 上を向いて歩こう
Guitar:三宅伸治/Bass:中村きたろう/Drums:宮川 剛/Key:厚見玲衣 Alto Sax:梅津和時/Tenor Sax:片山広明/Trumpet:渡辺隆雄

Disc3 (DVD)
「WANTED」 LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003/8/17 ライヴ映像ダイジェスト


【限定盤】
Disc1
(CD)KING 2021 remaster + 4(未発表曲 Recorded at ロックン・ロール研究所)
01 Baby 何もかも
02 WANTED
03 玩具(オモチャ)
04 HB・2B・2H
05 雑踏
06, 虹と共に消えた恋
07 ウイルス
08 モグラマン
09 奇妙な世界
10 胸が張り裂けそう
11 約束
〈未発表曲 at ロックン・ロール研究所〉
12 ジグソーパズル
13 ギブミーラブ
14 真冬のサイクリング 15, 花はどこへ行った

Disc2
(CD)
「WANTED」LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003 年8月17 日 〈前編〉
01 WANTED
02 玩具(オモチャ)
03 サン・トワ・マ・ミー
04 トランジスタ・ラジオ
05 虹と共に消えた恋
06 MC
07 HB・2B・2H
08 奇妙な世界
09 MC
08 キモち E
09 ブ熱い LOVE SONG(愛しあってるかい?)
10 Baby 何もかも
11 ドカドカうるさい R&R バンド
12 約束
10 花はどこへ行った
11 君が代
12 誰も知らない
13 LONG TIME AGO
14 愛する君へ
15 スローバラード

Disc3
(CD)
「WANTED」LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003年8月17日 〈後編〉

01 ひどい雨
02 雑踏
03 世界中の人に自慢したいよ
04 月がかっこいい
05 胸が張り裂けそう
06 上を向いて歩こう
07 キモち E
08 Baby 何もかも
09 自転車ショー歌
10, MC
11 ウイルス
12 雨あがりの夜空に
13 約束

Guitar:三宅伸治/Bass:中村きたろう/Drums:宮川 剛/Key:池田貴史 Alto Sax:梅津和時/Tenor Sax:片山広明/Trumpet:渡辺隆雄

Disc4
(LP)
KING 2021 Remaster
A面
01 Baby 何もかも
02 WANTED
03 玩具(オモチャ)
04 HB・2B・2H
B面
01 雑踏
02 虹と共に消えた恋
03 ウイルス
04 モグラマン

Disc5
(LP)
KING 2021 Remaster + 4(未発表曲 at ロックン・ロール研究所)
C 面
01 奇妙な世界
02 胸が張り裂けそう
03 約束
D 面<未発表曲 Recorded at ロックン・ロール研究所
01, ジグソーパズル
02, ギブミーラブ
03, 真冬のサイクリング
04, 花はどこへ行った
2003/8/17 ライヴ映像ダイジェスト 

Disc6
(DVD)
「WANTED」LIVE at 日比谷野外大音楽堂 2003年8月17日 ライヴ映像ダイジェスト

Jana Rush - ele-king

「もし誰かが暗い場所にいるなら、このアルバムは素晴らしいリスニングになるかもしれない。そしてそれは鬱というものを反映し……だけどそれは、炎のように燃え上がる、ある種抽象的な情熱なんだ」とヤナ・ラッシュは『ワイアー』誌の8月号で話している。「激しい音と周波数は自分への鼓舞と攻撃性の解釈でもある」
 リリース元の〈プラネット・ミュー〉といえば、先日はDJマニーの、レーベル自身の説明文によると「ロマンティックなフットワーク」アルバムを出したばかりで、そして今度はヤナ・ラッシュによる、レーベル自身の説明によると「激しい感情的なジェットコースター」アルバムをリリースした。
 1ヶ月ほど前、ぼくは先行リリースされた“Moanin’”を聴いたときに、これはすごい曲だと興奮した。情熱的なビバップ・ジャズの遠吠えのようなサンプリングと武術のようなドラミングにサブベース。この10年、エレクトロニック・ミュージックを前進させた大きな勢力のひとつにシカゴのフットワークがあることは言うまでもない。そもそもはローカルなダンス・バトルのための音楽として開発されたドラミングに特徴を持つこのスタイルは、マイク・パラディナスのキュレーションによって世界に伝達されると、エレクトロニック・ダンス・ミュージックのシーン全般にアイデアと活力を与えた。シカゴ内部ではDJラシャドやRPブーらがそのサウンドを前進させ、近年では食品まつりやジェイリンのようにシカゴ外部の人はアートフォームとしての可能性を追求するようにもなった。そしていま、シカゴのヤナ・ラッシュはこのスタイルの可能性をさらに押し広げて、アルバム1枚分のダンスというよりはより感情豊かなディープな音楽表現へと発展させてみせている。
 
 彼女は新人というわけではない。調べてみると、ロバート・アルマーニやカジミエ、ポール・ジョンソンらシカゴ第二世代の影響のもと13歳から音楽を作りはじめたヤナ・ラッシュのデビューは90年代のなかば、レーベルはゲットー・ハウスの名門〈ダンス・マニア〉だった。大学にも進学し、やがて化学技術者、医療技術者、消防士などさまざまな職を転々としたそうだ。と同時に、彼女は長いあいだ、過労と深刻な鬱病からくる自己嫌悪に悩んできてもいる(彼女が20年近く作品を発表していないのもその影響だろう)。彼女が音楽で復活するのは2017年のアルバム『Pariah』で、ちなみにリリース元は〈Objects Limited〉、マイク・パラディナスのパートナー、ララのレーベルだ。現在ラッシュは石油精製所で化学技術者として働いているというが、本作『痛みをともなう啓発(Painful Enlightenment)』は4年ぶりのセカンド・アルバムで、彼女が自分の鬱病と向き合って制作された作品である。
 なにしろ曲名には“自殺念慮(Suicidal Ideation)”なんていうのがあって、しかもこの曲がアルバムの目玉だったりする。アルバムの2曲目に配置されたそれは不快でシュールなポルノ映画のような、じつに奇妙な世界を描写しているわけだが、ジャズ・ギターの破片が壊れた機械のように繰り返される表題曲“痛みをともなう啓発(Painful Enlightenment)”にしても、女のあえぎ声と不吉なジャズ・ピアノの“G-Spot”にしても、シカゴ・クラシックを攪拌機に詰め込んだ“かき乱されて(Disturbed)”なる曲にしても、アルバムには居合抜きのようなドラミングと、そしてなんとも言えない不快な感覚がある。“マインド・ファック(Mynd Fuc)”は、調性を欠いた自由さにおいて、いわばフットワーク版デレク・ベイリーだ。もしくは彼女は、シカゴのゲットー・ハウスとスロッビング・グッリスルの領域とのあいだに回路を開通させている、と言えるだろう。つまり、インダストリアル・フットワークと呼べる何か。いずれにせよ、オウテカのファンを自認するリスナーであれば必聴だろう。
 アクトレスのねじれたエレクトロを彷彿させるのは、DJペイパルとの共作“銀河のバトル(Intergalactic Battle)”で、これはアルバム中で唯一ファンキーと呼べる曲かもしれない。フランスのプロデューサー、ナンシー・フォーチューンとの共作“私を狂わせて(Drivin' Me Insane)”はそれこそTGの“ユナイティッド”の後につなげたくなる曲だったりするが、アルバムの最後を飾るDJペイパルとのもうひとつの共作“Just A Taste”の勇ましさが退廃に淫することを拒絶する。
    
 レーベルによれば、このアルバムは「フットワーク・アルバムではない」とラッシュから言われたという。彼女はこう言った。「よりダークなエクスペリメンタル・リスニング・ミュージックのようなものであって、疑うことなく自分自身になる機会なんだ」
 シカゴのフットワークはここまで来た。気楽に踊れるアルバムでないし、酔いにまかせて気持ちよくなれる音楽でもない。むしろただただシラフになっていく、そんな作品であるがゆえに好き嫌いは分かれるだろう。が、しかしひとつたしかなことがある。本作は懐かしい過去ではなく、エレクトロニック・・ミュージックの未来に向かっている。
 

Prettybwoy - ele-king

 2013年に〈Big Dada〉のコンピ『Grime 2.0』に参加、グライム/UKガラージの文脈から出発し、2017年には上海のレーベル〈SVBKVLT〉からEP「Genetics」を送り出している東京のプロデューサー、Prettybwoy が英ファクトの名物シリーズ「Fact Mix」に登場している。
 冒頭からびっくりするような展開で、『エヴァ』で耳にしたような声がするなと思ったら、90年代のアニメ『KEY THE METAL IDOL』がフィーチャーされている(主題歌も)。これがずっとつづくのかと思いきや、じょじょにノイズなどが侵入をはじめ、つぎつぎと尖ったダンス・ミュージックが繰り出されていく。
 なお Prettybwoy は9月17日に〈SVBKVLT〉からデビュー・アルバム『揺蕩う』をリリースすることになっている。そちらも楽しみ。

ラディカルで、クソ面白い!

大勢の人が集まって踊る、ただそれだけのことが国家を動揺させた……
アシッド・ハウス、イビサ、マッドチェスター、ニューエイジ・トラヴェラーズ、ジャングル……
英国ジャーナリストが見事な筆致で描く
20世紀最後で最大の音楽ムーヴメントの全貌

1997年に刊行され、2010年に増補版が出たクラシカルな1冊がついに翻訳刊行!

並々ならぬ共感と知性によって書かれた、熱を帯び機知に富んだ真実の歴史 ──アーヴィン・ウェルシュ

あれは「特別な時代」以上の何かだったのだろうか? ドラッグ熱に浮かされた享楽主義に過ぎなかった? それとも、我々の多くがそう強く信じたがっているように、それ以上に重要な何かだったのか? アシッド・ハウスの誕生以来、「じゃああれは一体なんだったのか」の疑問は何度もしつこく繰り返されてきたし、本書はそれに対する幅広い回答のあれこれを含んでいる。そのいずれも必然的に個人的な視点に依るものであり、どれひとつとして決定的な回答ではない。もしかしたら、今にして思えば、あのとんでもない時代を実際に生き抜いただけで充分だったのだろう。共同体の全員と共に我を忘れるあれら歓喜の瞬間の数々を味わったこと、おそらくそれ自体が、我々にはあれ以上を望めない素晴らしい体験だったのかもしれない。(本文より)

目次

前書き(長い歳月の後で)

序幕 八〇年代のとある晩

第1章 快楽のテクノロジー
第2章 サマー・オブ・ラヴ
第3章 マジカル・ミステリー・ツアー
第4章 東への旅
第5章 フリーキー・ダンシング
第6章 テクノ・トラヴェラーズ
第7章 都市のブルーズ
第8章 ケミカルな世代

謝辞
索引

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧
amazon
TSUTAYAオンライン
Rakuten ブックス
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ヨドバシ・ドット・コム
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HMV
TOWER RECORDS
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e-hon
Honya Club
mibon本の通販(未来屋書店)

全国実店舗の在庫状況
紀伊國屋書店
三省堂書店
丸善/ジュンク堂書店/文教堂/戸田書店/啓林堂書店/ブックスモア
旭屋書店
有隣堂
くまざわ書店
TSUTAYA

燻裕理 - ele-king

 1970年代、だててんりゅう、頭脳警察(『悪たれ小僧』のベース)、裸のラリーズ(有名な2枚組のライヴ盤『Live ‘77』でベース担当)に参加、長い活動休止期間を経てニプリッツ、MOLLS、ポートカスなどで活動、近年は燻裕理(くんゆうり)名義で知られる、日本のアンダーグラウンド・ロックのリジェンド、ヒロシ(悲露詩、HIROSHI 、ひろしNa、ひろしNar、楢崎裕史)がソロ・アルバムをリリースする。タイトルは『びど』。ドラムは、頭脳警察の石塚俊明。独特の脱力したロック・サウンドは健在です。
 

燻裕理 (Youri Kun)
びど

レーベル:いぬん堂
品番:WC-098
定価:¥2200(税込)
発売日:2021/9/6
https://inundow.stores.jp/items/610281ef053624788f619538

李劍鴻 Li Jianhong - ele-king

 『The Wire』2021年7月号で北京のトゥ・ウェンボウ(朱文博/Zhu Wenbo)が運営するレーベル〈Zoomin’ Night〉の特集が組まれたほか、同8月号では恒例企画「めかくしジュークボックス」にリー・ジェンホン(Li Jianhong/李剣鴻)とウェイ・ウェイ(Wei Wei/韋瑋)が登場するなど、ここにきて中国のアンダーグラウンドなノイズ/即興/実験音楽シーンがにわかに注目を集めはじめている。5月にイタリアの〈Unexplained Sounds Group〉から中国実験音楽のコンピ『Anthology Of Experimental Music From China』がリリースされたことも記憶に新しいが、本稿ではアンダーグラウンドなシーンにおける重要人物のひとりリー・ジェンホンにスポットを当て、彼が今年の春に発表した2枚の新作アルバム『山霧 Mountain Fog』『院子里的回授 Feedback in the courtyard』を紹介する。

 リー・ジェンホンは〈P.S.F. Records〉からのリリースでも知られる中国の実験音楽家/ノイズ・ミュージシャン/ギタリスト。1975年に生まれ、中国・杭州で90年代よりバンド活動をはじめ複数のグループで活躍。90年代後半に中国でインターネットが普及しはじめたことをきっかけに、ノイズや即興、実験音楽なども聴くようになっていったという。2003年には知り合いのミュージシャンとともにレコード・レーベル〈2pi Records(第二層皮独立唱片機構)〉を設立、同年にファースト・ソロ・アルバム『在開始之前、自由交談 Talking Freely Before The Beginning』を発表。また2003年から2007年にかけて 2pi 音楽フェス(第二層皮音楽節)を開催し、中国有数の前衛/実験音楽の祭典として知られるようになる。ゼロ年代後半から北京でも活動しはじめ、2011年に移住。同年には Vavabond 名義で知られるノイズ・ミュージシャン、ウェイ・ウェイとともに新たにレーベル〈C.F.I Records〉を立ち上げる。以降、これまで中国内外のレーベルから多数のアルバムを発表しており、中国においてアンダーグラウンドな音楽シーンが誕生した初期から活動を続けている代表的なミュージシャンのひとりとして高い評価を得ている。

 同じく中国出身で現在はフランスを拠点に活動しているミュージシャン、ルオ・タン(Ruò Tán/若潭)が運営するレーベル〈WV Sorcerer Productions〉からリリースされた『山霧 Mountain Fog』は、ジェンホンの真骨頂とも言うべきノイズ・ギターをソロとデュオで収録したライヴ・レコーディング作品。1曲目のソロではいきなり激烈なフィードバック・ノイズが鳴り響き、高柳昌行や大友良英を彷彿させる攻撃的な展開が延々と続く。だがオクターバーを使用して重低音を効かせ、フィードバックの持続音を強調した演奏内容は、ハーシュなノイズ・ミュージックではなくドゥームメタルにも近いダウナーなアンビエント/ドローンのようにも聴こえてくる。こうした傾向は中国の若手サックス奏者ワン・ズホン(Wang Ziheng/王子衡)を迎えた続く2曲目のデュオ・セッションでより顕著に表されており、ドローン状のギターとサックスが時に渾然一体となる特異な音楽内容は、フリー・インプロヴィゼーションの歴史に多数の名演を刻んだ編成(高柳昌行と阿部薫のデュオをはじめギターとサックスによる即興の系譜についてはhikaru yamada hayato kurosawa duo『we oscillate!』のライナーノーツで掘り下げたのでより詳しく知りたい方はそちらをご参照ください)でありながら、これまでのどの作品とも似ていない唯一無二のサウンドを生み出している。

 他方の『院子里的回授 Feedback in the courtyard』はジェンホン自身のレーベル〈C.F.I Records〉からリリースされたソロ・アルバム。フィールド・レコーディングとインプロヴィゼーションのあわいをいくような作品で、人びとの話し声や咳払い、虫の音、航空機の音など環境音と一体化するように、ギターの繊細なフィードバック・ノイズや電子音響のようなサウンドが聴こえてくる。紙版『ele-king vol.25』に寄稿したジャンル別2019年ベストのインプロヴィゼーションの項で触れたように、近年の即興音楽には環境音を活用した作品が多数発表されているものの、ジェンホンはこうした試みにすでに10年以上にわたって取り組み続けている。というのも彼は2010年に3枚組のアルバム『環境即興 Environment Improvisation』*をリリース、雨音や鳥の鳴き声、羽虫の飛び交う音といった自然環境の響きから、人びとの生活音、例えば日常会話やテレビから流れる音声、果ては酒場から聞こえてくる楽しげな音楽までをも相手取りながらギターによる即興演奏を行ない、その後も環境音と即興演奏を統合する独自の方法論を探求してきているのだ。今作では「おもちゃを片付けようとしない子供たち」や「夕食後のキッチンの片付け」、「夜10時、母はまだ咳き込んでいた」といった各楽曲のタイトルが示すように、まるでドラマ仕立てで日常生活のワンシーンを切り取るような環境音の響きとともに演奏を行なう内容となっている。

 冒頭で述べたように『The Wire』が中国のアンダーグラウンドなシーンを相次いで取り上げているものの、ジェンホンをはじめ中国で活躍するミュージシャンたちの多くは独自のコンテクストですでに長期間の活動を継続してきているのであり、その蓄積を見落としてはならないということは付け加えておきたい。なお、ギタリストとしてのジェンホンの活動を辿り直した記事が2019年に Bandcamp に掲載されているほか、コロナ禍に見舞われて以降の中国の実験的な音楽シーンについてはウェブ・マガジン『Offshore』主宰の山本佳奈子さんが多数のコラムを精力的に執筆されているので、あわせてお読みいただけるとより理解が深まるのではないかと思います。

*『環境即興 Environment Improvisation』は現在Bandcampでそれぞれ『十二境 Twelve Moods』『空山 Empty Mountain』『在这里 Here Is It』として個別に購入することもできる。

Koji Nakamura - ele-king

 多作で知られるナカコーが、CD-Rのみで展開していた「Texture」シリーズ。その全24枚250曲もの膨大な楽曲群のなかから、20曲を厳選した編集盤『Texture web2』が、配信限定でリリースされている。「2」と付いているとおり、昨年の『Texture Web』に続く試みだ。エレクトロニカやアンビエントなど、ナカコーの実験的な側面を知るのに持ってこいの作品なので、ぜひチェックを。

ナカコーが、CD-Rのみで販売していたTextureシリーズ全24作品250曲の中から、20曲を選曲したアルバム「Texture web2」が8月13日より配信スタート。

Koji Nakamraが2014年よりスタートさせた、CDRのみで販売されているTextureシリーズは、ナカコーの作品すべての通ずるテクスチャ音源集。2021年8月現在で、24枚250曲に及ぶ作品が発表されている。このシリーズは、コレクターも多く発売するも、すぐ完売を繰り返している作品群。そのTextureシリーズの中から20曲をセレクトし、配信限定アルバムとして発表したのが「Texture web2」。エレクトロニカからアンビエント・ドローンまで、インストゥルメンタルの楽曲で構成されている。サブスクで気になったらナカコーが運営するレーベル「Meltinto」でCD-R作品もチェックしてみて欲しい。

商品概要

Koji Nakamura / Texture Web2
MLT-1009
2021/8/13 on streaming

▶︎配信URL: https://linkco.re/zhZrf2ua

01. Computer In Love from Texture01
02. A Vision/A Dream from Texture02
03. Flower from Texture03
04. Ne U/A gE from Texture04
05. PRE from Texture05
06. Dead Moon from Texture06
07. Tyche from Texture07
08. Video Loop1 from Texture08
09. M o l t from Texture09
10. StigmA God Area from Texture10
11. Unkown Test from Texture11
12. Joy from Texture12
13. 826 from Texture13
14. Oboro from Texture14
15. Nocturne from Texture15
16. Snake Eater from Texture16
17. White Room from Texture17
18. Aura from Texture18
19. Border/Mind from Texture19
20. Red Sun from Texture20

OFFCIAL URL
https://kojinakamura.jp/

PROFILE
ナカコーことKoji Nakamura。1995年地元青森にてバンド「スーパーカー」を結成し2005年解散。その後、ソロプロジェクト「iLL」や「Nyantora」を立ち上げる。その活動はあらゆる音楽ジャンルに精通する可能性を見せメロディーメーカーとして確固たる地位を確立し、CMや映画、アートの世界までに届くボーダレスなコラボレーションを展開。その他remixerとしても様々なアーティトを手がけ遺憾なくその才能を発揮している。現在はフルカワミキ、田渕ひさ子、牛尾憲輔と共にバンド「LAMA」として活動。そして、2014年4月には自身の集大成プロジェクトKoji Nakamuraを始動させ「Masterpeace」をリリース。同年10月には大阪クラブクアトロ、名古屋クアトロ、恵比寿リキッドルームでワンマンライブを行った。キャリアを重ねつつも進化し続けるナカコーを示唆するライブとなった。現在は、Koji NakamuraとアンビエントプロジェクトNyantoraや、ダークロックユニット「MUGAMICHILL(ナスノミツル、中村達也、ナカコー)」を中心に活動中。また、2017年4月よりスタートした“Epitaph”プロジェクトは、CDリリースやダウンロード販売を想定せず、ストリーミングのみをターゲットとし、プレイリスト(≒アルバム)は、ナカコーの新作でありながら、彼の気分でそこに収められている曲が変わり、バージョンが変わり、曲順すら変わっていた。1ヶ月に1度2~3曲アップロードされており、DAW+アクセスモデル時代の新しい表現のトライだった。プロジェクトスタートより約2年。そして前作より約5年。2019年6月26日に「Epitaph」を遂にCD化した。同時期には関西テレビ他放映の連続ドラマ「潤一」の主題歌と劇伴音楽を担当。さらに、連続ドラマ「WOWOWオリジナルドラマ アフロ田中」の、メインテーマ曲と劇伴音楽を担当するなど、音楽の分野で多岐にわたり活動中。

Meltinto
https://meltinto.theshop.jp/

bar italia - ele-king

 謎が音楽を面白くする。わからないから知りたくなる。たとえばそれはベリアル(その謎はだいぶ薄まってはいるが)だったり、SAULT(『Nine』と呼ばれる素晴らしいニュー・アルバムはアクセス可能な世界から99日で姿を消す)だったりするわけで、共通しているのは音楽の向こうに誰がいるのかわからないということだ。耳に入る音が情報のほとんど全てで、そこから僕らはどんな人間がこの音楽をやっているのかと想像する。ヒントは音にちりばめられている、このスタイルは、この音色は、このメロディは。あるいは視覚からわかることもあるかもしれない。ジャケットの感じはあれに似ている、タイトルのセンスにだって個性は出る、そうやって姿を見せない誰かの形を作り上げていく。

 音楽だけがあればいい? そうなのかもしれないけれど、でも音楽の魅力はそれだけじゃない。極端な話、AIが曲を作る時代になったとしても僕らはきっとそのAIの姿を想像しているはずだ。おおよそ全ての創作物に作者の意図を感じとり、時代の空気をそこに見つけて、なんでいまこれをやったのかと考えて、こんなことをするのはどんな人間だろうと思いを巡らせる。言ってしまえば情報を伏せるということ自体がひとつの情報でもある。そうやって音楽に振りかけられた謎が好奇心を刺激する。

 ディーン・ブラントが主宰する〈Wold Music〉がリリースするバー・イタリアはまさにそのような好奇心を刺激するユニットだ(ユニットなのか?)。全てが秘匿されているというよりかはヒントをそこらかしこに散らばして攪乱させるタイプ。数多くあるような気がする手がかりは、どこかに繋がっているようでいてそうではなく、それっぽく見えるものはフェイクで、本物を演じる偽物だったり、あるいはその逆で偽物を演じる本物だったりして全ては煙にまかれている。ここまでEP 1枚とアルバム2枚がリリースされているがまったくもってつかみ所がない。聞こえてくるのはまとわりつくようなギターの音とのっぺりとした男女の声。フィルムに収められた映画のように1分台、2分台の短い曲がつなぎ合わされ、その隙間からイメージが浮かび上がり、そしてそれらがあわさり意味になっていく。2nd アルバム『bedhead』でも 1st アルバムで見せたそのスタイルは継続されていて、それはうらぶれた海辺のリゾート地を舞台にしたサイコホラー映画のような趣で、大仰で美しく、まとまりがなく強烈なイメージを浮かばせる。悪夢の始まりのような “Bechelorette” のギターの音から “angels” の壮大な覚悟への唐突な場面転換、ホテルのテレビに映るノイズまみれの映像が浮かぶ “itv2”、頭の中の旅というには駆け足すぎて、手のひらからこぼれ落ちるように、気がつけばもう次のシーンに移っている。それらの断片はまさに夢のようにイメージを残して消えていく(残るのは過ぎ去った余韻がもたらす感情だけだ。書き留めておかなければ忘れてしまう)。

 13曲、22分という短い時間は何かを考える隙を与えない。考えるのはだからその余韻に浸っている最中だ。僕は謎のユニット、バー・イタリアに思いをはせる。8曲目の “Letting Go Makes It Stay” にはミカ・レヴィがフィーチャーされている。考えてみるとミカ・レヴィがいまやっているバンド、グッド・サッド・ハッピー・バッド(Good Sad Happy Bad)の『Shades』と同じようなスタイルのアルバムなのかもしれない。だがそれよりももっと下世話でまとまりがない。何に似ているのかと言ったらそれはやはりディーン・ブラントで、ディーン・ブラントの『The Redeermer』(あるいは『Stone Island』)とハイプ・ウィリアムスから改名しリリースされたインガ・コープランド・アンド・ディーン・ブラントの『Black is Beautiful』を混ぜたような印象を受ける。

 ここでのインガ・コープランド役はイタリア人女性のニナ・クリスタンテという人が担っている(イタリア人だからバー・イタリアなのか? パルプの? ソーホーにある店の名前とかけて? このふざけた感じのセンスもいかにもディーン・ブラント的だ)。ニナ・クリスタンテという名前でググってみると1988年ローマ生まれのアーティストの個展の情報がヒットする。彼女は栄養士でありパーソナル・トレーナーでもあって、ベッドルームでのワークアウトのビデオが作品に添えられて展示されていた模様。もう少し調べてみると2016年にコペンハーゲンの YEARS というアート・ギャラリーでディーン・ブラントとおこなったという hot16 という名の展示会の情報が出てくる(そう言えばコペンハーゲンのシーンが盛り上がっていた頃、コペンハーゲンにディーン・ブラントが住んでいるらしいという話を聞いたことがあった。確か Lower とも関係があったはず。思い出して調べてみたら “At The Endless Party” のビデオを撮っていた。Lower も素晴らしいバンドだ)。バー・イタリアの最初のリリースは2020年だが、彼女とディーン・ブラントはどうやらそれ以前から一緒に活動していたようだ。

 だがインガ・コープランド・アンド・ディーン・ブラントのディーン・ブラントにあたる部分、バー・イタリアでのその役はディーン・ブラントではない。ディーン・ブラントの音らしきものは聞こえてくるがその声は聞こえてこない。響き渡るのは別の声だ。ディーン・ブラントのそれよりももっと感情的で、役者みたいな色気がある、白黒の昔の映画から流れてくるみたいな、そんな雰囲気を持った声がする。バー・イタリアについて表に出ている名前はニナ・クリスタンテの名前だけでこの声の男性の名前はどこにも記されていない。この男はいったい誰なんだろう?(Reddit で見かけた名前、ダブル・ヴァルゴ? この人が? 本当にそうなのか?)

 ニナ・クリスタンテの YouTube のページには先に挙げたワークアウトの映像と共に “prod. dean blunt” と書かれている曲がいくつかアップされていて、コペンハーゲンの展示会のことを考えてもディーン・ブラントが深く関わっているのは間違いなさそうに思えるのだけど、それも本当のところはわからない。考えれば考えるほど深みにはまっていく。

 それをあざ笑うかのような “not dean blunt” の文字、現在は削除されているがリリース当初の Bandcamp の作品紹介の欄にはただ一言この言葉だけがあった。しかしそれすら本当かどうかはわからない。自ら違うと言うあたりがいかにもディーン・ブラントっぽい。

 ますますわからなくなってきた。深みにはまりヒントを求め、再び再生ボタンを押す。本物を演じる偽物に偽物が示す本物、とっちらかった美しい悪夢のようなアルバムには謎が振りかけられていて、頭に浮かぶイメージはその時々で変わっていく。もしかしたら何かを理解しようとするその過程にこそ意味は生まれるのかもしれない。わからないから知りたくなる、謎が音楽を面白くするのだとしたら、きっとバー・イタリアの音楽は最高のエンターテインメントに違いない。ふざけたユーモアの美しい悪夢、イメージのパラノイア、深みにはまって抜け出せない。

Primal Scream - ele-king

 今年2021年は、プライマル・スクリームの革命的なレコード『Screamadelica』のリリース30周年にあたる。
 それを記念し、9月17日には同時期の12インチを集めた10枚組ボックスセット『The Screamadelica 12” Singles』と、『Screamadelica』のピクチャー・ディスクが発売。さらに10月15日には『Screamadelica』の未発表デモ音源やミックスを収録した『Demodelica』(ライナーノーツはジョン・サヴェージ)がリリースされることになっている。

 ボックスセットのうち1枚は、アンドリュー・ウェザオールによる “Shine Like Stars” の未発表リミックスなのだが、ついに昨日 BBC6 にて同曲が初オンエア、その後スポティファイやアップル・ミュージックで配信がスタートしている。すばらしいダブです。試聴はこちらから。

https://primalscream.link/SLSRemix

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