「Nothing」と一致するもの

Anthony "Shake" Shakir - ele-king

 かつて彼は自分自身を"テクノの透明人間"と形容している――つまり、いるのかいないのかよーわからんと。まあ、たしかにアンソニー・シェイカーが目立ったことはいちどもないけれど、彼は紛れもなくデトロイト・テクノのヴェテランのひとりである。初期のトラック"シークエンス"は1988年の歴史的コンピレーション『Techno! The New Dance Sound of Detroit』に収録されているばかりか、シェイカーはホアン・アトキンスとヴィジョンズ名義で作品を出したり(89年)、オクタヴ・ワンの"アイ・ビリーヴ"(90年)の共作者でもある。彼は本物のオリジナル世代なのだ。ただ......、アンソニー・シェイカーは他のデトロイトのプロデューサーのように自分自身をアピールすることが得意ではなかったのかもしれない。たしかに彼は自身が自虐的になるほど地味な存在ではあったが、しかし、彼が音楽活動を止めたことはなかった。シェイカーは20年代以上にも渡ってリリースを続けているのだ。

 彼は、90年代は主にシェイクの名義で自身のレーベル〈フリクショナル・レコーディングス〉から10枚以上の12インチを発表している。そして、〈メトロプレックス〉や〈トラック・モード〉、〈パズルボックス〉や〈セヴンス・シティ〉、〈ムーズ&グルーヴス〉や〈インターナショナル・ディージェイ・ジゴロ〉等々からも地道に12インチを切っている。2000年にはフランクフルトの〈クラング・エレクトロニック〉からアブストラクトなアルバム『Mr. Shakir's Beat Store』を発表しているし、2009年にはフランスの〈シンクロフォン〉からまったく素晴らしいシングル「アライズ」をリリースしている。

 『フィクショナリズム 1994-2009』はシェイカーの〈フリクショナル・レコーディングス〉時代のトラックを中心に編集されたベスト盤だ。12インチ・ヴァイナルだと4枚組、CDでは3枚組(全35曲)となる。アンソニー・シェイカーの音楽の特徴を簡潔に言うなら、彼のサイケデリックなセンスにある(なにせホアン・アトキンスとのコラボレーターだ)。そしてB-52'sの熱烈なファンである彼は、自分のトラックのなかにどこか捻れた(アーティな)センスを注入する。わっかりやすいハウスやテクノではないし、機能性を重視したトラックでもない。あくまで音楽的なのだ。

 実際、3時間以上におよぶ彼のこのセットは多様性に富んでいる。ジャジーなダウンテンポ"デトロイト・ステイト・オブ・マインド"、ベースとドラムマシンが見事に絡み合う"ローミング"、これこそデトロイト・テクノだと言わんばかりの"アライズ"......アンビエントもあればアシッディなファンクもある、クラフトワーキッシュなテクノ・ポップもある。『フィクショナリズム』を聴いていると、いままで日の当たらなかったデトロイト・テクノの歴史を思い知るようだ。嬉しい発見が随所にある。デリック・メイが彼の13振りのミックスCDの最初にシェイカーのトラックを選んだのも、なにか含みがあるんじゃないかとさえ思えてくる。

 〈ラッシュ・アワー〉はとても良い企画盤を思いついたものだ。控えめなだが眩しいオールスクールの輝き、自称"テクノの透明人間"に尊敬を込めて――。

CHART by JET SET 2010.02-2 - ele-king

Shop Chart


1

ポチョムキン

ポチョムキン BRAND NEW LOVE »COMMENT GET MUSIC
ポチョムキンが代弁する脱力東京ラヴ・ストーリー!?Zazen Boys向井氏制作のアノ曲が12"に!刺激的な都会暮らしの中にあっても、決して満たされることのない性的衝動。男の悲しい性(さが)を、東京上空から夜の街へと降下するエレクトロ・ファンクに浮かべた逸品"Brand New Love"加えて、B面にはPUNPEE(P.S.G.)、Mountain Mocha Kilimanjaro、Olive Oilという超豪華メンバーが集結!

2

RONI NACHUM

RONI NACHUM GUEST SERVICE SHALOM (MARK E REMIX) »COMMENT GET MUSIC
Mark Eリミックス収録のグレイト・リリース!!Limited300!!何かと話題作をドロップしてくるUK発"Fine Art Recordings"からマスト・アイテム到着。エルサレムからの新鋭"Roni Nachum"×ご存知"Mark E"。バッチリっす!!

3

ITAMAR SAGI

ITAMAR SAGI COMMON SENSE »COMMENT GET MUSIC
Be As Oneのトップ・イスラエリー・クリエイター、Itamar SagiがDrumcodeから!!これまでにもJosh Wink率いるOvemやKlap KlapそしてSomaなど世界各国の優良レーベルより作品をリリースをしてきた実力派、I.Sagiが奥行きのある覚醒的なドープ・ミニマルをリリース!!

4

SLUGABED

SLUGABED ULTRA HEAT TREATED EP »COMMENT GET MUSIC
☆特大推薦☆スクウィー x ウォンキーなカラフル特大傑作トラックス!!北欧産エレクトロ・ファンク最前線サウンド=スクウィーへの憧憬を公言するUK鬼才がPlanet Muから放つ特大傑作EPがこちら!!

5

RED RACK'EM

RED RACK'EM THE NIGHTSHIFT »COMMENT GET MUSIC
デトロイト注目レーベルからの見逃せない一枚!!Hot Coins名義でも御馴染み、ニュー・ディスコ~ディープ・ハウスを横断するDaniel BermanによるRed Rack'em名義でのグッド・リリース。

6

COSMETICS

COSMETICS SOFT SKIN »COMMENT GET MUSIC
Glass Candy~Nite Jewel直系のダーク・ウェイヴ・ディスコ・ポップ!!メチャ最高です。こんなのも出しますCaptured Tracks。カナダの男女デュオ、Cosmetics!!レトロ・シンセに気だるい女子ヴォーカル、ロウファイ感も加わった完璧シンセ・ウェイヴ・ディスコ。グレイテスト!!

7

D1

D1 JUS BUSINESS »COMMENT GET MUSIC
☆大推薦☆天才ダブステッパーD1がデス・テクノをネタ使いした超話題盤です!!ダブステップ史上初のディープ・ハウス・ネタ名作"I'm Loving"を手掛けた鬼才が、今度はデス・テクノと鍵盤ハウスを下敷きにしたA1をお届け~!!

8

U.S. GIRLS

U.S. GIRLS GO GREY »COMMENT GET MUSIC
US最狂女子、Siltbreezeからの強烈セカンド・アルバム!!かなりスゴイことになってます。ポートランド在住のMegan Remyによるソロ・ユニット、U.S. Girls。この人は本当にヤバい。ロウファイ~ジャンク~ドローン~トライバル全てメチャクチャにかき回す23世紀ポップ!!最高。

9

DJ HELL FEATURING BRYAN FERRY

DJ HELL FEATURING BRYAN FERRY U CAN DANCE 1/3 (CARL CRAIG REMIX V.2) »COMMENT GET MUSIC
Carl CraigによるリミックスVersion 2を収録。アルバム『Teufelswerk』から一挙に3枚同時リリースされたリミックス・シングル3部作のうちの第1弾がこちら!!

10

ARTO MWAMBE

ARTO MWAMBE LOVE LIFT »COMMENT GET MUSIC
ブリージー・エレクトロニックなオールドスクール更新型ハウス大傑作!!エレクトロニカ方面の方にも是非聴いて頂きたい4つ打ちサウンド推薦盤。細身な男性ヴォーカルが際立つ爽やかなアッパー・トラックが憎らしい!!

Alayavijana - ele-king

 どっちが先だったか忘れてしまったけれど、昨年は春先に東京経済大学で粉川哲夫氏の身体パフォーマンス論にオイゴル(LKO+ユザーン)を紹介し、2時間の長丁場を持たせるために彼らがタカシタールを連れてきてライヴをやったことと、『スタジオヴォイス』ではミニマル・ミュージックの特集をやるというので、あれこれと打ち合わせをしているうちにミニマル・ミュージックにはアフリカ起源とインド起源のものがあるだろうということになり、そのせいでシタールやタブラといったインドの楽器がやたらと気になっていた時期があった。そこに『朝日新聞』で洋楽CDのセレクションをやっているからか、デバシシュ・バタチャルヤという、それまで1ミリも聴いたことがないインドのスライド・ギタリストによるサード・アルバム『オー・シャクンタラー!』が送られてきて、ラ・モンテ・ヤング以外のドローン・ラーガを初めて長々と聴くことになった。これが......けっこうよかった(朝日の会議で強く推したけれど、ほかには誰も聴いてなかった)。

 そして、年末から年始にかけて手塚るみ子さんと『手塚治虫 エロス1000ページ』を急ピッチで編集していたら、彼女がやっているレーベルからの新作だといって『アラヤヴィジャナ4』を渡された。『ゲゲゲの娘 レレレの娘 らららの娘』も先行して作業していたんだから、一体、いつの間に......と思ったものも束の間、家に帰って再生してみると、これがまた最初から最後までドローン・ラーガで、えー、なに、手塚るみ子ってテクノしか聴かないのかと思っていたのにアッチョンプブリケで、慌てて調べてみると、これって最初はヨシダダイキチとユザーンがはじめたグループだったりして、ありりー、だけど音楽はただ静かにフワフワと気持ちよいループを繰り返し続け、バタチャルヤに比べると緩急があまりなく、一本調子なためにドラマ性が排除され、いわゆるテクノやハウスで経験してきたトランス状態に近いものになっているのではないかと。これがほんとのゴア・トランスだ......とはいわない方が身のためですが、光を求めて時空を彷徨っているかのようなバタチャルヤとは違い、低音部がしっかりし過ぎているためか(?)飛ぶというよりは地に足をつけたまま揺らめいているというところが日本製だし、奇妙なリアリティを伴って聴けるという感じ。オイゴルにしてもインド音楽をそのままやろうとしているわけではなく、そのことに仮託しながら表現しているのはやはり「いま・ここ」だということが強く伝わっくる。

PS 日本はいま、都会を歩く人びとの足の速さでは一気に16位にまでずり落ちたとか(1位はシンガポール)。そーいやー、繁華街が歩きづらくなったことはたしか。通勤ラッシュのことはよく知らない。

The Album Leaf - ele-king

 ジ・アルバム・リーフは......先日レヴューしたフォー・テット同様、10年前のポスト・ロック/エレクトロニカ時代にそのシーンのひとりとしてデビューしている。西海岸のサンディエゴを拠点とするジ・アルバム・リーフことジミー・ラヴェルは、それ以前はスウィング・キッズなど地元のハードコア・バンドにも参加していて、あの奇妙なコスチュームで知られる英雄的バンド、ザ・ローカストのオリジナル・メンバーだったという経歴まである。もちろんジ・アルバム・リーフの音楽はザ・ローカストとは180度違った種類のもので、それは透明なタッチを特徴とする抒情派IDMといったところだ。シガー・ロスに見出され、アイスランドのシガー・ロスのスタジオで録音して、2004年にシアトルの〈サブ・ポップ〉とベルリンの〈シティ・スラング〉から発売された3枚目のアルバム『イン・ア・セイフ・プレイス(In A Safe Place)』が初期の代表作である。

 ポスト・ロックは、それが注目された頃は毒にも薬にもならない"壁紙音楽(wallpaper music)"などと揶揄されたものだが、しかし90年代の狂騒におけるチルアウトとして機能した......と僕はフォー・テットのレヴューで書いたが、しかしそれがダンス・カルチャーと切り離され、それ自体の独立を求められたときに、ではこれら音楽は何を目的意識とすればいいのかという問題が生じてくる。ボーズ・オブ・カナダはサイケデリックな荒野を選び、そしてジ・アルバム・リーフの辿ってきた道は、その問いに対する典型的な回答のひとつとなった。それはポスト・ロック/エレクトロニカのチルアウト感覚とアーティな香りを残しつつポップになること=俗称ポップトロニカへの道である。

 ジ・アルバム・リーフにIDM的な目新しさ、刺激や奇矯さを見出すのは困難だが、より親しみやすい音楽、より柔らかいチルアウトへと進んでいる。透明なタッチで描かれた風景画のようであり、詩情漂う写真集のようでもある。飛び道具のように電子音を使うことはないが、ここには美しいメロディがあり、エレガントなアンサンブルがある。毒のないボーズ・オブ・カナダ、もしくは抒情派アンビエント・ポップとでも言おうか。

 通算5枚目のアルバムとなる『ア・コーラス・オブ・ストーリーテラーズ』も優秀なポップトロニカだ。ポップといっても、ジ・アルバム・リーフの音楽はメランコリックである。彼の音楽を特徴づける電子ピアノの音色は美しいが、同時に悲しく、淋しく響いている。そして"Summer Fog"、"There is a Wind"、"Falling from the Sun"......こうした曲名から彼が自然をモチーフに好んでいることがわかる。あるいは"Within Dreams"という曲名からも喚起させるように、彼の音楽には良くも悪くもロマン派的なこってりとした抒情が表現されている。変形された電子音によるドラム・ループとシンセサイザーのストリングス、そしてピアノのメロディ、あるいはヴァイオリンが重なっていくその曲は、アルバムのベスト・トラックである。彼のメロディ・センスが光る鮮やかなドリーム・ポップ"Falling from the Sun"も素晴らしい。しかしこの人にしかできないスタイルがあるとしたら、ほとんどヴァイオリンとピアノ、そしてストリングのみで構成される"Summer Fog"のような曲だろう。

 いっそうのこと、ブライアン・イーノの『ディスクリート・ミュージック』もしくは『ミュージック・フォー・エアポート』の領域まで振り切ってしまえばいいのにと思うのだが、しかしこの人はあくまで中道なのだ。この音楽を聴かないなんてもったいない! とは決して言わないけれど、買って聴いても損はない......と思われる。安心して聴けるという意味において。

Four Tet - ele-king

 フォークトロニカを定義した2001年のセカンド・アルバム『ポーズ』は、よく聴いたものだった。上質なクリームのように甘くドリーミーなテクノ・サウンドは、あの時代が生んだ価値ある1枚のひとつである。

 この潔癖性的なエレクトロニカは、1990年代半ばのポスト・ロックを出自としている。フォー・テットを名乗るキエラン・ヘブデンは、元々はロンドンを拠点とするフリッジのメンバーで、いわばトータス・フォロワーだった。それは行き詰まりを見せていたダンス・カルチャーにおける新潮流で、結局のところ、ポスト・ロックにしてもエレクトロニカにしても、なかばの風俗と化したドロドロのダンスフロアに背を向けて「もうちょい品良くいこうぜ」ということだった。僕は当時のこうした気持ちを理解できる。ジャズとクラウトロックとアンビエントとの融合だとか、いろんなことが語られてきたが、大きな目で見れば、ポスト・ロックにしてもエレクトロニカにしても、これらは1990年代というディケイドにおけるチルアウトだったのだ。

 『ポーズ』も良かったし、サード・アルバムの『ラウンズ』(2003年)も愛聴した。彼のライヴにも行った(まあまあだった)。キエラン・ヘブデンはそれから、『ラウンズ』を最後に彼のフォークトロニカを止めてしまい、2005年の『エヴリシング・エクスタティック』ではビートを強調した。悪くないアプローチだった。『ポーズ』も『ラウンズ』もリズムという観点ではヒップホップの影響を取り込んでいるとは思えないほど凡庸なところがあった......が、『エヴリシング・エクスタティック』はその弱点と向き合った。ロマンティックな彼の音楽のなかにダンスの要素を取り入れようと試みた。それは結果として成功し、それからヘブデンは売れっ子リミキサーとなった。他方で彼は自分のフリー・ジャズ趣味を満足させるかのようにジャズ・ドラマーのスティーヴ・リードのプロジェクトにも参加した。サンバーンド・ハンド・オブ・ザ・マンの『ファイヤー・エスケープ』では見事なプロデュース・ワークも見せた。

 ヘブデンは、そして2008年のシングル「リンガー」でミニマル・テクノに挑戦すると(それは決して出来が良いとは思えなかったが)、おそらくその延長としてブリアルとのスプリット・シングルを自身のレーベル〈テキスト〉から昨年発表した(こちらは素晴らしかった)。この流れで考えれば、5年ぶりのアルバムとなる『ゼア・イズ・ラヴ・イン・ユー』がミニマリズムの冒険になることは納得のいく話なのだろう。

 だとしても、新しいアルバムは4つ打ちを基調としている......などと書けば昔ながらのファンは懐疑的になるかもしれない。繰り返すが、フォー・テットとは10年前の4つ打ちの狂騒へのアンチテーゼだったのだ。が、ご心配は無用である。ヘブデンは今世紀のベルリンではなく1970年代のニューヨークもしくは1970年代のデュッセルドルフへと向かっている。スティーヴ・ライヒのミニマリズム(現代音楽における"陶酔")であり、クラウトロックにおけるアートのほうに。

 アルバムは女性の美しい声の反復とエディットによるミニマリズム"エンジェル・エコーズ"ではじまる。夢見るブレイクビートの"ラヴ・クライ"が再生され、そしてベスト・トラックのひとつ"サークリング"へと続く。スティーヴ・ライヒ的な音の重なりによって場面が変化しながら、絶妙にクラウトロックへとスライドする"サークリング"には、ヘブデンの音楽の良いところすべてが凝縮されている。ドリーミーで、ロマンティックで、つまり潔癖なトランスなのだ。

 それでもヘブデンは、興味深いことに、前作以上にダンスフロアを目指している。"シング"はコーネリアスがミニマル・テクノをやったようなユニークな曲で、リスナーはサイケデリックな遊園地のメリーゴーランドを楽しむことになる。『ゾビゾーゾー』の頃のクラスターをわかりやすく現代風にしたような"ディス・アンフォールズ"のユーモラスでキュートなエレクトロニカも魅力的だ。心地よいパーカッションと素朴な単音によるメロディがディレイで重なっていく"シー・ジャスト・ライクス・トゥ・ファイト"もまた素晴らしくラヴリーな曲で、このアルバムの最後に相応しい出来だと言える。

 時代の"チルアウト"から離れて、フォー・テットは彼のダンスフロアを練り上げた。危険なほど甘く、溶けてしまいそうなそこは、現実などクソ食らえと言わんばかりに妖しく発光している。

Massive Attack - ele-king

 ロバート・デル・ナジャ......3Dによれば彼が『ヘリゴランド』のポスターのために描いた絵は、ロンドンの地下鉄では使えないそうで、何故ならそれがあまりにも"ストリート・アート"すなわちグラフィティに見えてしまうからだという。もっともそれはマッシヴ・アタックにとって今回のアルバムが成功していることの証左でもある。しばしデヴィッド・リンチを引き合いに出して語られるマッシヴ・アタックの"暗さの芸術(art of dark)"は、ごくありふれた日常のなかの暗い予感を拡大してみせる。「嵐を予感すると人は背を向ける/不安だから」、と『ヘリゴランド』の"パラダイス・サーカス"でホープ・サンドヴァルが歌っているが、これは彼らの不朽の名曲"アンフィニッシュド・シンパシー"でシャラ・ネルソンが歌った「夜も知らないでどうやって昼を過ごせると思うのか」というフレーズとまあ同じようなもので、マッシヴ・アタックはこの世界の負性のようなものと向き合うことで自らのアートを磨いてきた。彼らは闇を友とし、雨を祈願した。コミュニケーションよりもディスコミュニケーションを、笑みよりも無愛想でいることを選んだ。そうした暗さの芸術家たる姿勢がいまやお馴染みとなった3Dの政治活動にも繋がっているのだろう。

 ただ、ファンにとって複雑だったのは、3Dが積極的な反戦デモ活動をおこしていた時期にマッシヴ・アタックが発表した『100th・ウィンドウ』が実に不可解な出来となっていたことだった。彼らのそもそもの武器――つまり、彼の地の音楽における二大要素=パンクとレゲエを繋ぐことのできた彼らの方法論――それは言うまでもなくヒップホップである。バンドからマッシュルームが去ったとき、多くのファンがマッシヴ・アタックから離れたのは無理もない話なのだ。彼らの暗さの芸術に眩い光沢を与えていたのはマッシュルームのブレイクビートであり、サンプリングのセンスだったのだから。『100th・ウィンドウ』にはそして、ダディー・Gすら関わっていない。豊富な音楽の知識を持つブリストルのベテランDJも離れ、音楽からは"ソウル"が消えてしまった。3Dは明らかに孤立し、そしてマッシヴ・アタックは長い冬眠に入った。もちろん誰一人としてそれを責めなかった。彼らは1990年代にクラシックと呼べる最高のアルバムを3枚(+1枚)も発表しているのだから。

 そんなわけで昨年の先行シングルを聴くまでは、僕はこのブリストルの大物の新作に何の期待もなく、注目もしなかった。だが、2008年にポーティスヘッドの10年振りの『サード』が素晴らしかったように、7年振りの『ヘリゴランド』も見事だった。3Dとダディー・Gはふたたびタッグを組んだ。多くの協力者が集まり、マッシヴ・アタックはソウルを取り戻したようだ。

 昨年リリースされて先行シングル「スプリッティング・ジ・アトムEP」を聴いてあらためて感心したのは、彼らの"暗さ"だった。中毒性の高いスカンキング・ビートをバックに、地上に釘付けにされたようなダディー・Gの(音程をキープできるギリギリの低音の)歌ではじまり、続いてホレス・アンディの高く甘い声、そしてまたダディー・G、そしてまたホレス・アンディ、それから3Dの妖艶な声へと代わっていくそのタイトル曲は、不機嫌というよりは恐怖の領域で鳴っている。そしてタチの悪いことに、曲も歌詞も魅惑的なのだ。「ドープなしではホープはない。失業者のお帰りだ」――とても他人事とは思えないだろ? 結局"スプリッティング・ジ・アトム"はアルバムのなかでもベストな1曲で、曲のモチーフは昨年の、G20金融サミットときの銀行を粉々にしたロンドンにおける反資本主義の暴動ではないかと思われる。(筆者による『SOOZER』誌のための取材で3Dは、暴動はコンサートよりもマシだと大いに肯定している)

 『ヘリゴランド』の1曲目となった、TV・オン・ザ・レイディオのヴォーカリスト、トゥンデ・アデビンペをフィーチャーする"プレイ・フォー・レイン(雨乞い)"の不気味なパーカッションによる墓場のダンスホールもたまらない魅力がある。が、マルティナ(トリッキーの初期の名作におけるヴォーカリスト)の個性あるパンキッシュな声をフィーチャーした蜃気楼のダブステップ"バベル"、アシッディなミニマリズムとマルティナの歌による"サイケ"、あるいはホレス・アンディが歌い、ブレイクビートと震動するベースラインがしなやかな絡みを見せる"ガール・アイ・ラヴ・ユー"のような曲こそファンが待ち望んでいるマッシヴ・アタックかもしれない。これらの曲は『ブルー・ラインズ』へと接続する。そして、エルボウのガイ・ガーヴェイをフィーチャーしたドラッギーな悲歌"フラット・オブ・ザ・ブレード"、西海岸から参加したホープ・サンドヴァルの妖艶な声とピアノ・サンプルのループが目眩を生む"パラダイス・サーカス"は『メザニーン』へと接続する。

 3Dが歌う"ラッシュ・ミニット"もまた『メザニーン』的な――つまりヴェルヴェット・アンダーグラウンド的な暗いトリップで、これが『ヘリゴランド』のハイライトである(残念なことに日本盤ではこの曲の訳詞が割愛されている)。盟友デーモン・アルバーンのソウル・ヴォーカルをフィーチャーした"サタデー・カム・スロー(土曜日はゆっくり来る)"は、エリザベス・フレイザーによる"ティアドロップ"をはっきりと思い出させる。

 3Dによれば、アルバムの歌詞にはあらゆる位相において政治的な問題提起がされているとのこと。なお、日本盤には"フェイタリズム"の坂本龍一と高橋幸宏によるリミックスが収録されている。昨年マッシヴ・アタックがメルトダウン・フェスティヴァルのキュレーターを務めたときに、3Dいわく「政治的な理由から」YMOを呼んでいる。また、ブリアルによるリミックスも近い将来に聴くことができそうである(グレイト!)。

Scout Niblett - ele-king

 この10年、いわば退廃的な女性シンガーというのが顕在化していて、ホープ・サンドヴァル、キャット・パワー、あるいはエマ・ルイーズ"スカウト"ニブレットあたりがその代表と言えよう。彼女たちはまるで......とくに在米イギリス人のスカウト・ニブレットは、スティーヴ・アルビニと組んだサード・アルバム『アイ・アム』(2003年)以降は、温かいブルースと激しいのソウルのミックスジュースで、エレガントなバラードを歌うかと思えば、ローファイ・ノイズ(エレクトリック・ギターとドラムによる)が爆発する曲もある。牧歌的なフォークもあるし、天文学についての曲もある。だが、いずれにしてもニブレットの本質とはブルースなのだ。それもまた、傷ついて、疲れ、すり減った心が歌う勇敢なブルース。彼女がいまだに熱心なファンを逃さないのは、彼女の音楽にはどうしようもなく魂を揺さぶられるような瞬間があるからである。

 〈トゥ・ピュア〉を離れ、〈ドラッグ・シティ〉からのリリースとなった通算6枚目のアルバム『ザ・カルシネーション・オブ・スカウト・ニブレット』は、ウィル・オールダムとのデュエットなどに象徴されるような3年前のフォーキーな前作とは打って変わって、よりハードに、よりノイジーに、よりシンプルに、ニブレットのブルースが強調されている。エレクトリック・ギターのみで弾き語られる"I.B.D."のようなバラード、"ベルジン"のような美しいブルースは彼女の独壇場で、彼女のこの手の曲はいつ聴いてもうっとりさせらる......が、このアルバムはこれまでの彼女のキャリアのなかでもっともハードな作品になっている。

 アルバムはまるでストゥージズのように、彼女の強烈に歪んだギターからはじまる。そして2曲目の"ザ・カルシネーション・オブ・スカウト・ニブレット"や"ルーシー・ルシファー"のような不機嫌なブルース・ロックがアルバムの方向性を浮かび上がらせる。アルバムの後半も穏やかさと激情が交錯する"リップ・ウィズ・ライフ"、ひときわノイジーな"ストリップ・ミー・プルート"(彼女が好きな天体をモチーフとしている)といった曲が続く。

 ニブレットの歌は、間違いなく研磨されているようである。彼女のなかの激しさは自分の理性によってコントロールされ、アルバムでは彼女の新しいスタイルが作られようとしている。それはいわばローファイ・オルタナティヴ・ブルース・ロックで、長年のパートナー、スティーヴ・アルビニの手によってあたかもライヴハウスで聴いているような音になっている。その驚くほどの生々しさが、彼女のエモーショナルな音楽をさらに特別な響きにしている。

Eccy、あるぱちかぶと - ele-king

 ダブステップで踊りたい――身も蓋もないその思いは、ここ1~2年で突然変異のように多様化したこのジャンルの魅力に取り憑かれ、いまどき12インチを漁っているような人間にとっては拭い去れない衝動である。先日、2年もの休止を経てようやく再オープンする宇川直宏の〈マイクロオフィス〉(まだ準備中)に行ったときも、彼の自慢のファンクション・ワンでイターナルの『メッセージ・フロム・ザ・ヴォイド』を鳴らしてもらったほどだ。そういうわけで、エクシーのDJとクオルタ330のライヴが聴けるのであればと、昔同じ編集部で臭いメシを食った仲間である西崎博之の送別会を抜けて、僕はひとりで渋谷の〈プラグ〉へと向かった。その夜は、あるぱちかぶとのライヴもある。あるぱちかぶとというのは、つい先日目の眩むようなデビュー・アルバムを発表したばかりの、まだ20代ちょいの才気溢れるラッパーである。

 午前0時ぐらいに会場に着くとフロアは若い連中で賑わっている。ほとんどが20代前半だろう。間違っても30代はひとりもいない......が、40代はふたりいた。僕とY氏である。これだけ若者で埋め尽くされたパーティに行ったのがものすごーく久しぶりだったので、それだけで充分に新鮮だった。フロアにいるのは50人ぐらいだったが、20年前のレイヴ前夜の東京のクラブもこんなものだったので、懐かしくもあった。もっとも、若い世代による若いダンス・カルチャーの素晴らしいエネルギーがみなぎっているこの夜のフロアは、ノスタルジーに浸ることなど許さない。

 EMFUCKAのDJ、小宮守のライヴ、HAIIRO DE ROSSI のDJとオロカモノポテチのMCがフロアを盛り上げる。Broken HazeのライヴDJを経て、クオルタ330のライヴがはじまる。もったいつけるようにしばらく間をおきながら、ダブステップのあの揺れるような汚い低音が飛び出す。格好いい~!

 ロンドンの〈ハイパーダブ〉(ダブステップの最重要レーベル)から作品を出しているこの日本人クリエイターの音楽は、既発のモノに関して言うなら、テクノ・ポップをダブステップに変換したような作風を特徴としている。が、ライヴではレコードで聴ける"ブリープ"なテイストはなく、そしてダブステップは彼の音楽の一部であり、すべてではなかった。とはいえダブステップ世代らしいセンスが随所にあって、新鮮なテクノ・サウンドを披露した。

 そこへいくとエクシーは彼のダブステップ体験を存分に発揮した。既発のダブステップ音源を自分流に手を加え、さらにそこに自分の音源を混ぜたりしながらのライヴDJだった。最後はビョークの"ハイパーバラッド"の彼自身によるダブステップ・ヴァージョン。上機嫌になって「未来は明るいね!」と、僕はY氏に鼓膜に喋ったほどだ。

 あるぱちかぶとはフロアからは目が見えないほど帽子を深くかぶって登場した。右手にはマイク、左手にはスナフキンの指人形があった。その姿はラッパーというよりも、別の世界から何かの間違いで迷い込んだ少年だった。彼は手はじめに、"完璧な一日"と"トーキョー難民"といったアルバムのなかでもとくに印象的な曲を続けざまにやった。あのおそろしく大量な言葉をアルバムに録音されたスピードで彼はラップした。世界への冷酷な眼差しと温かい慈しみが交錯する"完璧な一日"はライヴではなおすさまじく、"トーキョー難民"で綴られる猛スピードの風景はその場を圧倒した。あるぱちかぶとは時折フロアに目をやるものの、多くはステージの右から左へと往復して、たびたび天を仰いだ。最後の曲は"日没サスペンデッド"だった。「だけど欲張って他人の人生を生きるなんて/そんな愚かなことはないだろ?」――曲のなかでとくに印象的なこのフレーズは、人生のロールモデルとなる大人が不在のこの国の子供たちの、静かな決意のように思える。

 新しい言葉と音が渋谷の暗い暗い地下2階で、胎児のように動いていた。鮮烈のラッパーのライヴが終わったとき、時刻は午前4時だった。僕は長い距離を歩いて、そしてタクシーに乗った。

Gucci Mane - ele-king

 ジェイ-Zやスヌープ・ドッグの新作も悪くはない。耳を引く瞬間だって何度かはあった。キャリアの重みを聴き取ることも音楽体験の一部だろうし、なによりも彼らの表現がそのことに押しつぶされていないということはけっこう重要だといえる。目も当てられない大御所というのはゴマンといるわけだから。

 しかし、ジェイ-Zだったら"ハード・ノッキン・ライフ"、スヌープだったら"ワッツ・マイ・ネーム pt.2"を聴いた時と同じ興奮を感じさせてくれる曲がいまここにあり、どちらを繰り返し再生するかといわれれば、前者に勝ち目があるわけがない。なぜなら、時代と強く結びついているのは明らかに後者であり、その時にしか味わえないスリルを多分に有していることがポップ・ミュージックを聴く意味や理由になっていたりするのだから(音楽をよく知っている人はスクリームを聴きませんよね)。マイルス・デイヴィスやビートルズがとんでもないのは、彼らの曲がいまだに彼らのキャリアを超えてしまう瞬間が頻繁にあるからだろうし、ある特定の時代を思い出すという感覚とは、それはまったく異なるものである。


 メジャー2作目(国内盤は初)。09年度に行われたMTVのMCランキングではリック・ロスに続いて6位に入るという注目株。E-40やヤング・ジョックほどサウンド的にズバ抜けているとは思わないけれど、エレクトロ系では先行したソウルジャ・ボーイに多少のヒネリを与えたような仕上がりで、時によっては典型的なサウス系のトラックに力の抜けたフロウが妙に合う(ソウルジャ・ボーイも"ビンゴ"でフィーチャー)。大上段に振りかぶるか、奇をてらった展開に出るか、いずれにしろ極端な傾向が目立つサウス・サイドではしっとりとした感性が際立ち、抒情に流れそうな一歩手前でビート・ミュージックとしても独特の機能を有している(なんというか非常にしなやかで、寝技という言葉がとてもよく似合う)。リル・ウェインをフィーチャーした"ストゥーピッド・ワイルド"はケイデンス・ウェポンのファーストを思わせるし、トラックとフローの整合性がいったいどこで取れているのかという驚異はK-ザ・I???『ブロークン・ラヴ・レターズ』でイヤというほど思い知らされたことだけれど、"~~~"でもそれに近いスキルは(も随所で)堪能することができる(これはもうジャズを聴く感じか?)。


 スヌープ・ドッグを彷彿とさせるゴシップは割愛。ヒップホップでは珍しくない話だし。ちなみに"ジンジャー・ブレッド・マン"の「アイ!」という合いの手のループがスチャダラボーズの声に聞こえてしょうがない......

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paryty flyers

 ライアン・マッギネス(https://www.ryanmcginness.com)。アーティストとしてすっかり有名な彼だが、彼が〈50 parties〉というパーティを、自分のスタジオ(@チャイナタウン、隣はエミネムのスタジオ!)で、毎週金曜日にはじめた。2009年の7月3日に第1回を開き、ワイン、カジノ、ディベート、スケート、ゴス、ドローイング、かなり個人的なバースディ、季節にそったニュー・イヤーズ、ハロウィン、プール、ホワイト・トラッシュBBQ、その他意味がわからない、唾飛ばしパーティなど、ぶっちゃけ何でもあり。パーティ内容は,キュレーターによって全然違うが、タイトルに沿った催しをするのだろう。それぞれのパーティにロゴマークがデザインされ、お酒はオープン・バー、招待された人しか入れない、秘密のプライヴェート・パーティである。

 私が参加したのは、1月22日に開かれた"ロックンロール・パーティ"。28回目になる。この2回前は"セックス・パーティ"、1回前が"ドラッグ・パーティ"、そしてこの週が"ロックンロール・パーティ"、でこの次の週は"リハブ・パーティ"。"セックス、ドラッグ、ロックンロール!"、そして"リハブ".....一応繋がっているのだろう。

 私は参加していないが、聞いた話によると、セックス・パーティは、ベイブランドという大人のトイショップの人がキュレーターで、個室が作られ,光り輝く穴、プロの手があり、ドラッグ・パーティは、たくさんのサイケデリックな物を試していき、どんどんいろんな種類の良い物がテーブルの上に積み上げられ、リハブ・パーティは、マッサージとカラー・セラピー、日本でいうところの健康ランドみたいな状態になったらしい。想像ばかりが膨らみ、真相をたしかめたい気もするが、どのパーティもプライヴェートなのでお誘いがないと参加できない。

 で、こういうときに強いのが,顔の広いパーティ・ピープル。いろんな人を捕まえては、内容を聞き出そうとしたが,結局パーティ好きのアメリカ人なので,どんなパーティでも、いろんな人と話し、お酒を飲んでいるのは変わらないとのことでした。
そして,今回お誘い頂いた、ロックンロール・パーティ。キュレーターはDJ Listo。タイムテーブルは以下の通り。

Punk Rock Karaoke
Punk Rock Karaoke

Hard Nips
日本人の女性たちによるHard Nips

Sugarlife
Sugarlife

9:00 pm
- Guy Fantasy

9:45 pm
- Punk Rock Karaoke

10:45 pm
- battle of the bands:
Hard Nips vs. Scorpio Rising

12:00 pm
- Sugarlife

12:30 pm
- LightAsylum

dj's Virgil Rhames - dj Listo(me)

 今回のパーティの客層(というかどのパーティもほとんど層は変わらないと思うが)は、ライアンやキュレーターの友だちで、アート系,音楽系の20代後半から40代前半ぐらい。とにかくお酒の飲めないキッズ系はいないので,少し余裕のある大人のパーティという感じだ。

 パンク・ロック・カラオケは、演奏する人たちの経歴が長いのか、演奏が激うま! かなりたくさんのカラオケリストを持っている。プロの演奏で歌うカラオケ(それもパンク仕立て)はかなりいい感じで、5~6人がフリも完璧で歌っていた。キュレーターのひとりはバウ・ワウ・ワウの"アイ・ウォント・キャンディ"を歌っていたが、着ていたTシャツまで、「I want Candy」という懲りよう。

 次の女の子バンドのバトルは、スペースの端と端にバンドのセットをし、1曲1曲交代で演奏する。お客さんは見たいバンドの方に来る。といっても、行ったり来たりする人がほとんどだったが、バトルといってもキャット・ファイトなので、普通に盛り上がる。どちらもブルックリンのローカル・バンドでハード・ニップスは日本人女の子4人のバンドである。

 今回のメインはライト・アサイラム。!!!のボーカルもしていたシャノンという女の子のバンドで、かなりやばい。時間がかなりおして2時頃からはじまったのに帰るひとはいない。その後はまたもやダンス・パーティ......

 うちのカフェ〈スーパーコア〉からも歩いて近い、〈モンキー・タウン〉という、レストラン、イヴェント・スペース、音楽ヴェニューがある。オーナーがアーティストで、内装が素敵でとても良い空間を生み出している。レストランのメニューはインターナショナルで、ハンバーガーにでさえひと工夫が加えられている。イヴェント・スペースにはスクリーンが、前、後、右、左と4つあり、そこでは、違う映像を流したり、同じ映像を流したり、バンドが演奏したり、DJがいたり。そこでお酒を飲み、ご飯を食べ、ゆったりとソファにくずれ落ち、寝転びながら、音楽と映像を浴びるのである。

 このインディペンデントな場所が1月末にクローズした。最後の日に行ったら案の定すごい人。レストラン・スペースも、後ろのイヴェント・スペースも動けないぐらい人でいっぱい。そこには、先ほど書いた、〈50 parties〉のキュレーターやバトル・バンドのスコーピオ・ライジングのメンバーも来ていた。イヴェントがあるとみんなきちんと現れるのがNY風だ。宇宙のような空間でのDJの後は、ラヴ・イズ・オールをもう少しクレイジーにしたようなバンドが登場。その後はソファーやイスをすべて取っ払って、朝までダンス・パーティ。とても楽しかったが、かなり複雑。ブルックリンで重要なスペースがまたひとつ消えたから。

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