「Nothing」と一致するもの

#7:DIY主義者たちの小さな革命 - ele-king

 ほんのわずかだが、この1~2年で変化を感じている。例を挙げてみよう。

 Julian Lynch - Mare (Olde English Spelling Bee)
 Donovan Quinn & The 13th Month - Your Wicked Man (Soft Abuse)
 High Wolf - Ascension (Not Not Fun Records)
 Candy Claws - Hidden Lands (Twosyllable Records)
 The Samps - The Samps (Mexican Summer)

 以上はこの8月に買ったレコードのいちぶで、音楽性はそれぞれフォーク・ロック、チルウェイヴ、エクスペリメンタル/アンビエント、サイケデリック......バラバラだが、この5枚には興味深い共通点がある。
 1. すべてが12インチのヴァイナルであること。2. すべてがUSインディの比較的若い世代であること。3. 〈ノット・ノット・ファン〉を除く4枚のレコードにはmp3の無料ダウンロードのコードカードが挿入されていること。〈ノット・ノット・ファン〉はずいぶん前からレーベルとしてCDのリリースをしていない。また、いま人気の〈メキシカン・サマー〉にいったては最初にヴァイナルのみを限定リリースし、CDはその数ヶ月後になってからリリースする。いずれにせよ、フィジカル・メディアはヴァイナルであることが優先されている。彼ら・彼女らにおいてCDは......いわば格下で妥協案、ま、そんな風に思える。
 
 渋谷のHMVが閉店して、いよいよCDが売れなくなっているとTVのニュース番組で特集されたらしい。数年前に、音楽関係の専門学校の講師をしている知り合いが生徒に訊いたところ、金を出してCDを買っているのはクラスの数人ほどで、多くが違法ダウンロードで音楽を聴いていたという。オバマが大統領に当選したときに、アメリカの音楽産業の上層部は違法ダウンロードの問題の解決を音楽好きな大統領に期待している。イギリスでは昨年、エルトン・ジョンやリリー・アレンが違法ダウンロードの取り締まりを支持する団体を結成して、話題になった。リリー・アレンは「ファイル共有は災害」とまで言っている。彼・彼女らは音楽文化の産業としての未来をシリアスに案じているのである。
 
 こうした問題がより深刻なのは、それが違法だろうが合法だろうが、こと若い世代においてCDよりもダウンロードのほうがいまやスマートだからだろう。6~7年以上前の話だが、remixという雑誌の編集部にいた頃、新しく入ってきたKという大学を出たばかりの男は、自分のiPodに実にたくさんの、いろいろなジャンルの音源を大量に詰め込んで(彼の名誉のために言うと、もちろん合法の音源だが)、ちょっと聴いてはまた他の曲を聴いたりとか、そんなことを何度も何度も繰り返しているのを目の当たりにして、僕にはそれが"新しい聴き方"に思えたものだった。実際の話、それはよりスマートでよりモダンな、より"格好いい聴き方"なのだ。レコード会社の方々には頭の痛い話だが、若い世代が、携帯オーディオのなかの自分のデータを蒐集し、編集しながら聴いている姿を見ていると、「こうしてCDの存在価値はなくなっていくのか」と納得する。〈マルチネ・レコーズ〉の「MP3 Klilled the CD Star?」という問いかけは、ある意味真実とも言える。
 
 mp3という圧縮音声ファイルフォーマットには関しても諸説がある。もっとも頻繁に議論されるのは音質の問題だが、これに関しては他に譲ろう。僕はmp3の使用者のひとりで否定者ではないが、さすがにiPhoneやiPodをDJミキサーにぶち込んだりはしないし、家ではレコードかCDで聴く。
 先日のWIREで知り合った20歳の青年の話によれば、彼の世代のほとんどはYouTubeで満足してしまうそうで、何故なら彼ら・彼女らは"音"を聴いているのではなく"言葉"を聴いているからだという。これは"音"を楽しむ行為とはまた別の話になってくる。
 

 音楽に限らずだが、映画でも何でも、デジタルに関する問題のひとつは、それがネット上にアップできる点にある。それは諸刃の剣だ。より民主的にもなりうるが、同時に違法ダウンロードの氾濫も可能にしている。レディオヘッドが『イン・レインボウズ』でこの問題に立ち向かったとき、彼らはリスナーに音楽の値段を決めさせた。問題提起としては面白かったが、スーパー・バンドの高慢なやり方とも思える。名前が大きくなければできないし、違法ダウンロードは小さなレーベルにとって死活問題だ。ましてやデトロイトのように、ヴァイナルが地域産業(カッティング技師、プレス工場等々)として成り立っている場所にとってはよりゆゆしき問題である。ムーディーマンは、2007年に「テクノロジー・ストール・マイ・ヴァイナル」というタイトルの12インチ・シングルを発表しても言い足りなかった。ヴァイナル主義者で有名なこのハウス・プロデューサーは、2009年の『アナザ・ブラック・サンデー』のインナーにおいてさらに毒づいている。「お前が俺の音楽をダウンロードして悦に入っているあいだ、お前のフリーキーな彼女は俺の12インチをプレイしている」と記し、そのメッセージの背景にはヴァイナル・レコードを手にしながらセックスしている男女の写真を載せている。

 ところが......ムーディーマンの憤怒とは別のところで、ここ2~3年、USインディのシーンにおいてヴァイナルの量が増えつつある。それなりに経済力のあるインディ・レーベルはCDも出しているが、より小さなレーベルのDIY主義者たちはヴァイナル・オンリーに移行しつつある。OPNやエメラルズのようなアンビエント系はCDも出しているが、同時にヴァイナルも作っている。そしてヴァイナルと比例するように、カセットテープによる超限定リリースも増えている。今年に入ってからこの傾向はより顕著になっている。これをアメリカのジャーナリストは新たな「時代精神」の象徴として"テープ・シーン"と呼んでいる。いわば手作りの文化である。最近のジン文化の盛り上がりにも同じことが言えるかもしれない。小さな場面での出来事かもしれないが、少なくともデジタルの大衆性に対して疑問が突きつけられているのだ。
 
 デジタルに関する問題のもうひとつは、mp3の捉え方にある。冒頭で書いたように、USインディの彼ら・彼女らのヴァイナルのなかにはたいていmp3の無料ダウンロードのコードカードが封入されている。デジタルは配信用として考えるか、もしくはmp3程度の音質でよければ無料で提供する、そのレヴェルでの割り切りが彼ら・彼女らにはある。そして、例えばキャンディ・クロウズのコードカードに記された「Long live physical media」という言葉が表すように、若い彼ら・彼女らは、フィジカル・メディアが生き残る道はヴァイナルであると結論づけているようなのだ。それはダウンロードによってより多くの人に聴いてもらいたいというデジタル時代の楽天性からだいぶ軌道修正された、現代のDIY主義者の思いの表れでもある。
 
 さらにもうひとつ面白いのは、これらUSインディのDIY主義者たちの作品の収録時間が、45分以下になっている点である。CD全盛の90年代にもヴァイナル文化はあったが、それはなかば記念物としての、おおよそコレクターズ・アイテムとしての、CD作品のヴァイナル化に過ぎなかった。が、アメリカのヴァイナル主義者たちは収録時間も伝統的なLPフォーマットに戻している。
 
 それが違法ダウンロードに歯止めをかけるとは思えない(データ化してしまえば同じだし)。が、USインディにおけるDIY主義者たちのこうした動きは、インディペンデント・レーベルの将来に向けての重要な試みのように思える。ヴァイナル文化への強い憧憬が、現実を動かしただけのことかもしれない。あるいはダウンロードが一般化し過ぎたあまり、もはやそれはがスマートな聴き方ではなくなっているということなのかもしれない。まあ、どんな理由があるにせよ、USインディをメインに仕入れているレコード店からはCDが減りつつある。CDを作らないレーベルが増えている。小さなレーベルになればなるほど、こうした傾向は強まっている。デジタルを拒否しているのではない。CDというメディアによる作品の発表に価値を見出せなくなっているのだ。
 
 プレス工場を持たない日本でUSインディと同じ展開を期待するのは非現実的だろう。しかし、7インチ・シングルやカセットテープなら手の届く範疇にある。実際、日本でもここ数年で7インチ・シングルをリリースするレーベルが出てきている。デジタルと違ってより多くの人が自由にアクセスできるわけではない。枚数は限定され、それなりの労を要するだろう。が、求めている人のより深いところに届く可能性はこちらのほうがより高い......と僕は思うのだが。

P.U.D.G.E. - ele-king

 当初はイナーゾーン・オーケストラのテレル・マクマシス(クラック・ナックルズとしても〈トレス〉から08年にアルバム『ピース・トークス』をリリース)を含む6人組として03年にデビューしたヴァイナル・ジャンキーズからレジナルド・シンクラー2世によるファースト・ソロ。オンラやハドスン・モーフォークをフィーチャーした「7×7」インチ・シングルに続いて、今年の頭からオール・シティが新たにスタートさせた「ロサンジェルズ 10×10」のトップを飾った新鋭で(テイク、ラス・G、フライング・ロータスのコラボレイターとして知られるサミヤンなどがこれに続く)、その通り、L.A.ヒップ・ホップのこれからが期待される重要人物のひとりといえる。

 オープニングでプリンス"レッツ・ゴー・クレイジー"のイントロにのせて打ち込まれるギクシャクとしたビートはいまや......クリシェに近い。ここからどう個性を編み出すかだけれど、シンクラー2世のそれは乱れ打ちになるかと思えばビートが完全に途切れてしまったりと、まるでコラージュの一部であるかのように機能するだけで、ビートを追って聴いていくことはけっこう難しい。さらにはアルバム・タイトルとなっている『イディオット・ボックス』とは実はTVのことで、最初から最後まで絶え間なくTVの音声がそのまま垂れ流され、いってみれば大音量でTVをつけながらヒップホップのアルバムを聴いているのと変わらない。ジャケット・デザインを見る限り、きっとくだらないことがサンプリングされていて、英語が母国語の人にとってはそちらのほうが耳には入っていきやすいはずである。そうなると、ビートのほうはどう考えても醒めた調子に聴こえるだろうし、それが途切れたりするということは、時々、ヒップホップにも耳が行くようなシチュエイションがわざと画策されているとしか思えない。正確なところはわからないけれど、なぜかこれが飽きないし、10年前のオッド・ノズダム『プラン9』にどこかで一脈通じるような感性ではないかと思えてくる。そう、ヒップホップという名のアメリカのゴミあさり。カット・アップされたメロドラマ風のストリングスが誰をどこにも連れていってくれない。その場でいつまでも淀んでいるだけ。映画『ブラック・ダリア』や『チェンジリング』に描かれた絶望的なL.A.に滞留を余儀なくされるだけである。

 また、09年にMP3「シュロー-ファイEP」で注目を集めたヘンリー・ローファーも夏前にはファースト・ソロをリリースし、いわゆるフライング・ロータスのフォロワーのなかでは奇妙なマイナー・チェンジを味わわせてくれる。ダブステップとのクロスオーヴァーとでもいえばいいのだろうか、スケールは小さく、感情表現も低く抑えられた8曲+リミックス4曲はP.U.D.G.E.が投げ捨ててしまったビートの快楽に疑問を投げかけ、重箱の隅をつつくように可能性の足踏みを続けていく(ちなみに彼もサン・フランシスコとL.A.を行き来するプロデューサーである)。

Takamori K.( E-NAUT) - ele-king

DETROIT 2010 CHART


1
Model500 -Ofi / Huesca - R&S

2
Urban Tribe -Program 1-12 - Mahogani Music

3
Jeff Mills -The Drummer Pt.1-3 - Axis

4
Carl Craig -At Les Remixes - Tronic

5
Soul Designer -The Soul Is Back Remixes - Third-Ear

6
Greg Gow -The Pilgrimage EP - Transmat

7
Zak Khutorestsky/DVS1 -Love Under Pressure - Transmat

8
The Oliverwho Factory -Night Lights - Planet E

9
V.A. -A Tribute To Ken Collier - White

10
Andreas -II - Mahogani

Pirahnahead -NGTV NRG EP - Third Ear

Shitaraba - ele-king

クソガキチャート


1
Ntrld - White Chains -Simplify Recordings

2
Ntrld - Satan -Play Me Recordings

3
Big Dope P - Kazfara Juke -Moveltraxx

4
DJ Rashad - Took It Doggy Style -Juke Trax

5
Mochipet - Ghetto Puddin Pet (Jacob London Remix) -Daly City Records

6
Radiokillaz - Gona B Fire feat. MC Cobra -Radiokillaz Recordings

7
DJ Rashad - Lick On The Dick -Juke Trax

8
Kill Frenzy - Uuuh! -Juke Trax

9
Feadz - Subiu, Desceu feat. MC Wesley (Vocal Mix) -Man Recordings

10
Robot Koch, Cerebral Vortex - Vortex Cookies (fLako Omegaman Remix) -Up My Alley

Chart by JAPANICA 2010.09.02 - ele-king

Shop Chart


1

BLAST HEAD

BLAST HEAD IN WATER DISCO RUDIMENTS / JPN / 2010/9/1 »COMMENT GET MUSIC
高揚感/疾走感を掻き立てるベース・ラインにフルート、サックス、パーカッション等がワイルドに絡み合いトライバル感覚溢れるアフロ・ファンクな 激烈ダンス・グルーヴ"IN WATER DISCO"はアルバム中でもハイライトとなっていた一曲でほんとヴァイナル化を待ち望んでいた方も多いのでは!?そして本盤はさらにC/Wにマルチ・プ レイヤー=GLYN BIGGA BUSHによるアフロ・ブレイクビーツ・リミックスを収録!こちらもオリジナル・ヴァージョンのテンションそのままにクロスオーヴァーした土着的な鳴りを 響かせる絶品リミックスに!

2

HOLGER CZUKAY

HOLGER CZUKAY PERSIAN LOVE CLAREMONT 56 / UK / 2010/8/24 »COMMENT GET MUSIC
クラウト・ロックの伝説グループCANのベーシストであり、バンド解散後も活発なソロ活動を続けきたHOLGER CZUKAYが1979年にリリースした傑作アルバム「MOVIE」に収録、美しいギターの旋律と短波ラジオから流れてきたコーランやノイズをテープ・コ ラージュしたこの曲は、日本でもかつて、あのスネークマンショーの「戦争反対」に収録されたり、「サントリー・ウィスキー角」のCMに使われて大 ヒットした一曲。今回もゴールド・ヴァイナル&特色印刷ジャケという豪華仕様!

3

BING (a.k.a. カジワラトシオ)

BING (a.k.a. カジワラトシオ) DISCOTECA MAHAMID SLEEPING BUGZ / JPN / 2010/8/29 »COMMENT GET MUSIC
<SLEEPING BUGZ>が新たに贈る新ミックス・シリーズ「A NIGHT FOR STRANGERS」第1弾にBING(a.k.a. カジワラトシオ)が登場です!前2作とは対照的に実験的であり、また好奇心に溢れたタイトル通り「STRANGERS」の為の音楽をリリースするという当 シリーズ。70~80'Sあたりのロック、ディスコ、エレクトロに辺境グルーヴなどを、独特の空気感を放ちつつじっくりと煮込んでいくような、、そんな燻し銀ミックス・ワークで知らず知らずのうちにどっぷりとハメられてしまう危険な一枚!凄過ぎます!

4

DJ NATURE

DJ NATURE FOGGY MONDAY MORNING / FEELING LIKE A WOMAN GOLF CHANNEL / US / 2010/8/17 »COMMENT GET MUSIC
<GOLF CHANNEL>よりまたまたどヤバイ新作2タイトルが緊急リリース!お得意のエレピやサックス・ソロ等が軽やかに鳴り響き全体を通し淡いジャズ・ヴァイブスが覆うディープ・ジャズ・ハウス"FOGGY MONDAY MORNING"は清涼感とドス黒さが同居したくそヤバイ一発に!そしてC/Wにはパーカッションにマリンバ、フルート等が織り成す土着的ビートダウン・ グルーヴ"FEELING LIKE A WOMAN"を収録!

5

DJ NATURE

DJ NATURE EVERYONE / NEIGHBOURHOOD NOVELTY GOLF CHANNEL / US / 2010/8/17 »COMMENT GET MUSIC
<GOLF CHANNEL>よりまたまたどヤバイ新作2タイトルが緊急リリース!ポエトリー風のサンプルを配しディスコ/ヒップホップ感覚での展開に中盤のトランペット・ソロがまた違った側面で渋味を効かせるジャジー・ブラック・ハウス"EVERYONE"!C/Wは躍動的なベース・ラインにメリハリのあ るキック/ハットで構成されたトラック上にエレピやヴォイス・サンプルのエフェクティブな演出が随所に光るこちらも至高のブラック・ジャズ・ハウ ス"NEIGHBOURHOOD NOVELTY"!

6

SYLVIA STRIPLIN

SYLVIA STRIPLIN GIVE ME YOUR LOVE UNIVERSAL SOUND / UK / 2010/8/30 »COMMENT GET MUSIC
黒人女性ジャズ/R&Bヴォーカリスト=SYLVIA STRIPLINのROY AYERSプロデュースによる81年リリースの唯一のソロ・アルバム「GIVE ME YOUR LOVE」が重量盤2LPでオフィシャル・リイシュー。ディスコ・クラシック"GIVE ME YOUR LOVE"をはじめ、サンプリング・ソ-スとしてもお馴染み、最近ではERYKAH BADUがまんま使用したメロウ・クラシック"YOU CAN'T TURN LOVE AWAY"等、全編に渡りROY AYERSサウンドとSYLVIA STRIPLINのヴォーカルとが抜群の相性で織り成す80'Sディスコ傑作盤です!

7

CRUE-L GRAND ORCHESTRA

CRUE-L GRAND ORCHESTRA (YOU ARE) MORE THAN PARADISE INCLUDES THEO PARRISH REMIX CRUE-L / JPN / 2010/8/13 »COMMENT GET MUSIC
CRUE-L GRAND ORCHESTRAの来るサード・アルバム「CRUE-L GRAND ORCHESTRA III」収録曲でもあるPORT OF NOTES"(YOU ARE) MORE THAN PARADISE"のカヴァーをTHEO PARRISHがビートダウン・リミックス!原曲のサウダージな質感を残したまま見事ダンス・トラックへと昇華させたグレイト・ワークス(しかも2ヴァージョン収録!)で今後全国各地のフロアを彩ること請け合いの逸品です!DJ HARVEYも絶賛、2010年を代表するビッグ・リリースです!

8

SAGARAXX

SAGARAXX FLOATING POINT RUDIMENTS / JPN / 2010/9/1 »COMMENT GET MUSIC
世界規模での広がりと進化をし続けるエレクトロニクスにフォーカスしたビート・ミュージックを中心に、あくまでDJ視点によりセレクト/ミックス を施した本作。決して派手にはならず、さりげないミックス・ワークによりしっとりとクールな空気感を演出し、最後までぶれることなく保たれる芯の 通ったグルーヴ感が覆う、まさにセレクトされた楽曲郡を完全に自分の世界観の中で昇華してしまった傑作と呼ぶに相応しいスゴすぎる作品!マスタリングは盟友でもあるお馴染み京都の才人KNDが担当です!

9

GILLES PETERSON'S HAVANA CULTURA BAND

GILLES PETERSON'S HAVANA CULTURA BAND ROFOROFO FIGHT (LOUIE VEGA REMIXES) BROWNSWOOD / UK / 2010/8/20 »COMMENT GET MUSIC
モダン・キューバン・ミュージックの傑作コンピレーション「HAVANA CULTURA」収録のGILLES PETERSON'S HAVANA CULTURA BANDによるFELA KUTI"ROFOROFO FIGHT"のキューバン・ジャズ・カヴァーをさらにLOUIE VEGAがサルサ・テイストで軽快なダンス・ナンバーへとリミックスした逸品!程よいBPM、テンションで展開するまさに場所を選ばずオールタイムで使え る至極のリミックス・ワークです!

10

七尾旅人 × やけのはら

七尾旅人 × やけのはら ROLLIN' ROLLIN' P-VINE [JPN] / 2010/9/2 »COMMENT GET MUSIC
アーバン・メロウ最高傑作"ROLLIN' ROLLIN'"奇跡の再発!先頃リリースされたアルバムが話題を集めている両雄、七尾旅人とやけのはらによる奇跡の名曲"ROLLIN' ROLLIN'"が待望の再プレス!今回は前回未収録のリミックスも3VER.収録!そしてジャケットはもちろん、菱沼彩子(東京BITCH)!前回も瞬 く間に市場から姿を消しましたが、今回も初回限定生産なので激レア化間違いナシ!

The Samps - ele-king

 大きくはネオン・インディアン系と言えるが、わけのわからなさではこちらのほう上手。強いて喩えるなら、ザ・レジデンツがいま蘇って、チルウェイヴ・ディスコの波に乗ったとしたら......サンプラーに投げ込まれたR&B、ファンク、カートニッシュ・サウンドの断片、安っぽいレイヴ・サウンド、古びたグラム・ロック、スキゾフレニックで、いわばフリーキーなディスコ・ショーのハイパーモダン・ヴァージョン、それがザ・とうもろこし(サンプス)のデビュー12インチである。で、耳の早い方はよーく知っての通り、ザ・サンプスとは先頃、アルバム『ビフォア・トゥデイ』を発表したばかりのサンプル・マニア集団、アリエル・ピンクス・ホーンティッド・グラフィティのメンバーによるプロジェクトである。

 もっとも......最初に自分で書いておいてこんなことを言うのは恐縮だが、このお茶目な3人組の音楽をチルウェイヴと括るには抵抗がある。何故なら彼らのDIY音楽には、チルウェイヴやドリーム・ポップ、グロー・ファイなどと呼ばれているものに共通するメランコリーがない。アリエル・ピンクがそうであるように、つまりシューゲイズがない。『ラヴレス』でもなければゲンイチでもないのだ。この音楽から聴こえる感情とは、ナンセンスな笑い、乾いた感情、バカバカしさ、喜び、大雑把に言ってそんなものである。むしろ『ビフォア・トゥデイ』以前の、アニマル・コレクティヴのレーベル〈ポウ・トラックス〉時代のアリエル・ピンクに近いと言えよう。

 アッハッハッハッハ~というバカ笑いとお決まりのロック・ギターからはじまる1曲目の"ウィザードスリーヴ"は、途中、間抜けな男の声「あふあふあふあふ」によって転調すると途端クラウトロックに変わる。2曲目の"F.X.N.C."はベースラインがうねるスペース・ディスコ・ファンクだが、いわば発狂したジャズン・クルーとなって爆発する。3曲目の"イエロージャケット"は酔っぱらったアーバン・ディスコ・ソウルで、驚くほど楽天的なフィーリングを展開する。4曲目の"Thy"は脈絡のないシュールなエレポップ、5曲目"ハイパーボリック"にいたっては......Bボーイによるドタバタ喜劇である。そして、最期の曲"ペッパーグッド"虹色のミラーボールによる悪ふざけでこのインパクトの塊のようなレコードは終わる。

 そう、これはまだヴァイナルのみの発売で、レコードしかない。〈メキシカン・サマー〉の戦略であり、それがUSインディの出したひとつの回答である。そして、ザ・とうもろこしにはサンプリング・ミュージックの最高に滑稽な現在が詰まっている。「自分が何をやっているのか本当によくわからないんだ」、とはザ・とうもろこしのひとり(そしてアリエル・ピンクのギタリスト)、まるで故スネークフィンガーを思わせる変人ギタリスト、コール・マーズデン・グライフ-ニールの言葉だが、たしかにこの音楽は「本当によくわからない」。それでも......惹きつける何かがある。ちなみに全6曲中、3分台が2曲、2分台が2曲、1分台が2曲、まるで初期のワイヤーである。

Curren$y - ele-king

 ニュー・オーリンズからシャンテ・アンソニー・フランクリンによるメジャー・デビュー作(ジャケット・デザインがいいと思ったら、すでにコンバーズのモデルになっていた)。インディ時代はよく知らないんだけど、ノー・リミットやリル・ウェインのヤング・マニーと契約があったらしく、ロッカ・フェラからリリースの予定が同レーベルを再スタートさせたデイモン・ダッシュの(個人?)レーベルからのリリースとなった。これは争奪戦というやつなのか、それとも、もっと複雑な大人の事情があったのか(まー、ゴシップには興味がないので背景は省略で)。

 2010年のメイン・ストリームなのか、一聴すると、ドレイクやB.O.B.を思わせるメロウ・ムードに全編は覆われている(メイン・プロデューサーは元オリジナル・フレイヴァーのスキー・ビーツ)。だらだらしているようで、だけど、センチメンタリズムは希薄で、むしろ、ハードボイルドな印象が強い。ドレイクがマーヴィン・ゲイならカレンシーは山下達郎というのは無茶苦茶かもしれないけれど、どことなく口当たりの良いシティ派の風情があり、そのせいか、曲によってはスチャダラパーともイメージがダブる(「ザ・ハングオーヴァー」で任天堂DSがどうしたとかいってるし)。

 「操縦士が語る」という設定とストレートにつながっているのか、いかにも空を飛んでいるような"スカイバーン"と、内面に深々と沈んでいくような"ローステッド"との対比。サウス系のような派手さは皆無にもかかわらず、1曲のなかに複雑な表情があれこれと詰め込まれ、スヌープを迎えた"シート・チェインジ"など流れるようにシルキーなのか、鉛を呑んだように重いのか聴くたびに印象がコロコロ変わる曲も少なくない。勇ましくブラスのリフが鳴り響く"ザ・デイ"でさえ晴れ晴れとした印象からはほど遠く、デヴィン・ザ・デュードを起用した"チルド・カッフィー"がなんとか単純な響きをキープしている程度か。ゲストはほかにモス・デフやジェイ・エレクトロニカなど。ブレイディ・ワットによるベースがほとんどの曲でフィーチャーされている。

 インナーには「理解したことは説明の必要がない」というスローガンらしきものが掲げられている。これは一体、どんな屈折なのだろう。復興の対象から置き去りにされたニュー・オーリンズで芽生えてきたものなのだろうか。何もかもがナゾのまま、ただ、スウィート・ソウル・ヒップ・ホップが流れていく。

割礼 - ele-king

 CDプレイヤーのスタートボタンを押した途端、フラッシュバックを起こした。1曲目に流れてきたのは、1990年頃、吉祥寺のライヴハウスで膝を抱えながら聴いていた割礼の曲、"リボンの騎士"である。スローなテンポで紡がれていくダークで妖艶な演奏と、おどろおどろしくも少年的でロマンティックな歌声。演奏の細部こそ覚えていないが、当時に受けた強烈なインパクトがありありと思い出される。しかしこんなにエロかっただろうか......。チリチリに音を歪ませ、アームを痙攣させながら弾かれるギターは、まるで女体に侵入するヘビのよう。ジャジィな旋律でループを紡ぐベース&ドラムも、身体に巻き付き陰部を舐め回すようにねっとりとまとわりつく。まして宍戸幸司のヴォーカルにいたっては......(自粛)。10分を超えてもなおオーガズム寸前の快楽で責めるこの曲に、男の筆者も、身体が火照ってしまうほど。"リボンの騎士"は古くからの割礼の代表曲であるが、今回初めて正式なかたちで収録されたのである。

 割礼は1983年に結成、今年で活動27年に及ぶ。『星を見る』は7年ぶりにリリースされる6枚目のアルバムだ。前掲の"リボンの騎士"以外にも"ルシアル"、タイトル曲"星を見る"といった、以前から演奏されている名曲が収められており、ほかに収録されている新曲も、同じようにスローで(宍戸いわく)"平ら"なもので統一されている。2000年に発表された『空中のチョコレート工場』、2003年に発表された『セカイノマヒル』ではカラフルでポップな表現も聴かせていたが、今回の新作ではそれ以前の割礼のムードを全体に感じさせるものとなった。
 こう書くと「80年代の音?」だとか「前時代的なんじゃないか?」と思われるかもしれない。いやいや、このリッチな音の鳴りはどうだ。研ぎ澄まされた演奏はどうだ。何よりエキサイティングな刺激と、サイケデリックなトリップを与えてくれるではないか。ぼくが20年前に受けたインパクトはまったく薄まることなく、どころか、さらに長い年月をかけて磨き上げられた豊潤な演奏に完全にノックアウトされた。

 日本のサイケデリック・ロック・バンドといえば、アシッド・マザーズ・テンプル&ザ・メルティング・パライソUFOやゴースト、スターズ、そして解散してしまったゆらゆら帝国や羅針盤などが挙げられるが、"サイケデリックなギター・バンド"といえば、僕のなかでのいちばんは割礼だ。とくに、かつてテレヴィジョンのギター・プレイにハマった人ことがある人は、ぜひ聴いてもらいたい。

白石隆之 - ele-king

LOUNGE CHART


1
Ry Cooder - Paris,Texas - Warner Bros

2
This Heat - Sleep - Piano

3
Isophonic - Crystal Motions -EM

4
Terry Riley - A Rainbow In A Curved Air - Columbia

5
Joni Mitchell - Jericho -Asylum

6
Franco Battiato - No U Turn -Island

7
Max Roach - Troubled Waters - Atlantic

8
Don Cherry - Brown Rice - A&M

9
Fripp & Eno - Wind on Water - Island

10
Robert Wyatt - At Last I Am Free - Rough Trade

Q'HEY - ele-king

Q'HEY TOP 10 CHART AUGUST 2010


1
Umek / OMGWTF / 1605

2
Duca & DJ Slater / Virada - Manuel De La Mare Remix / Tribal Vision Records

3
Joseph Capriati / Galaxy Express / Drumcode

4
Funk D'Void / Flealife / Outpost Recordings

5
Sasha Carassi / White Sucker / Harthouse

6
Nihad Tule & Nima Khak / Framework / Drumcode

7
Marco Bailey & Tom Hades / Always Valid / Excentric Muzik

8
Hans Bouffmyhre / Mistake Me - Matador Remix / Perc Trax

9
m0h / Pink Elephant - Secret Cinema Remix / Weave Music

10
Mark Broom / If You / Saved Records
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