「Nothing」と一致するもの

Wire - ele-king

 ワイアーは、頻繁に表に出るタイプではないが、僕の世代にとって重要なロック・バンドのひとつだ。意味不明な攻撃を浴びせる"12XU"もさることながら、初期の(そしていまやアート・パンクの伝説となった)3枚のアルバムにおいて、このバンドは、ワイアー流のミニマリズムを開発した。
 ロックにおけるミニマリズムと言えば、たいていの場合は70年代のカンやクラフトワークといったクラウトロックが思い浮かぶものだが、ワイアーは、それをパンクのふるいにかけて、彼らの"反復"を創出した。名作(......といってもワイアーはすべてが名作なのだが)『154』の有名な"北緯41度西経93度"を聴いていると、僕たちは地図に刻まれた垂直の線のなかにいた。ワイアーの音は、無機質で、直線的で、ときにマシナリーだった。バンドのギタリストであるブルース・ギルバートは、ギターを楽器というよりも発信器のように扱った。彼のアンビエント・プロジェクトであるドームもまた、情緒というものがはいる余地のない抽象絵画のようだった。彼らの美学については彼らのアートワークが雄弁に物語っている。知りたければ、どの作品でも良いから1枚選んで眺めてみるといい。説明過剰なもの、具象的なもの、情緒的なものとは正反対のステージの上で、ワイアーはロック・バンドのふりをし続けているのだ。

 『レッド・バークド・トゥリー』は、ブルース・ギルバートがいないワイアーにとって2枚目のアルバム、2年前の『オブジェクト47』に引き続いて、ギターとヴォーカルにコリン・ニューマン、ベースとギターにグレアム・ルイス、ドラムにロバート・グレイといったオリジナルの3人による録音である。そして『レッド・バークド・トゥリー』はコリン・ニューマンによるアコースティック・ギターのストロークに特徴づけられている。
 それはワイアーの長い歴史において興味深い変化でもある。それは穏やかに展開される『ピンク・フラッグ』(1枚のLPに21曲をぶち込んだ彼らのデビュー・アルバム)のようにも思えるからだ。面白いことにそれは、山本精一のソロ・アルバムにも近い音の作りで、まあとにかくエレクトロニクスを応用した〈ミュート〉時代とはもっとも異なる方向性でアルバムは彩られている。"プリーズ・テイク"や"アダプト"のような曲は、そしてアルバムのクローサー・トラックでありタイトル曲でもある"レッド・バークド・トゥリー"は、つまり、フォーキーなワイアーなのだ。彼らにしては驚くべきほど人当たりが良い音で、僕には自分を耳を疑うほどエモーショナルに聴こえる。しかも、これらの楽曲は素晴らしく美しい。
 それでもファンが最初に熱狂するのは、間違いなく"トゥ・ミニッツ"だろう。ギターのフィードバックからはじまる"12XU"系のパンク・サウンドは、ワイアーにしか演奏できない毒のこもったミニマル・サウンドだ。慈悲のはいる余地のない態度で、世界を疑いの目で見続けているバンドらしい、2分弱のジェットコースターだ。"クレイ"や"モアオーヴァー"といった曲は『154』とXTCの中間を進んでいくようだ。"バッド・ウォーム・シング"をLCDサウンドシステムを好きな若者が聴いたら、このバンドがトーキング・ヘッズと並んでアート・ロックの双璧と言われる理由を理解するに違いない。そして......アルバムのクライマックスの"スマッシュ"は"北緯41度西経93度"の再解釈である!
 "トゥ・ミニッツ"でワイアーはこう歌っている。「知っているかい? コーヒーは食料と幸福の代替物ではない」。これはアレゴリーなのか、バカげたナンセンスなのか、どこまでが冗談なのか、われわれはしばし困惑する......が、そのすべてを知るにはまだ早いのでしょう。『レッド・バークド・トゥリー』でコリン・ニューマンはこう歌っている。「ずっと後になったら、日々僕が誰を嫌っているのかを教えてあげよう」

interview with Haiiro De Rossi - ele-king


Haiiro De Rossi
Same Same But Different

Slye Records

Amazon iTunes

 ハイイロ・デ・ロッシとタクマ・ザ・グレイトという若き勇敢なふたりのラッパーによる「WE'RE THE SAME ASIAN」はいわばヒップホップ・アゲインスト・レイシズムである。ラップ・ミュージックによる人種差別や排外主義への強烈かつ的確なカウンター・パンチであり、今日の日本において非常に重要な問題を提起している。

 彼らが昨年の11月28日にYouTubeにアップした「WE'RE THE SAME ASIAN」はすぐさまYAHOO! ニュースへ飛び火し、YouTubeには彼らにたいするアンサー・ソングがアップされる。「日本のラッパーが中国、韓国との差別解消を訴える」と題されたYAHOO!の記事には200件あまりのコメントがポストされ、炎上する。"活発な議論"というよりも誹謗中傷の嵐と言ったほうが正しいだろう。コメント欄は差別意識や悪意をむき出しにした罵詈雑言で溢れた。

 私たちはこのあいだ、領土問題や在日参政権をめぐる問題などで同じような光景に何度も直面している。アジア・カップの日韓戦の奇誠庸(キ・ソンヨン)の猿まねが日本人に対する侮辱だということで日韓のメディア、ネットで賛否両論の議論が展開されている。

 問題なのは、ここぞとばかりに便乗して差別意識や狂信的なナショナリズムを煽ろうとする人びとである。こういうときにこそ私たちは冷静になるべきだ。憎悪や不信や偏見を煽り、争いの火を焚きつけようとする同じ国の人びとよりも、平和と相互理解を求める隣国の人びとのほうが自分たちに近いのではないかと疑ってみることも必要ではないだろうか。ごくごく当たり前の話である。

 そう、ふたりは"当たり前のこと"を静かにラップしている。彼らはがなり立てない。メランコリックなジャジー・ヒップホップの上で叙情と情緒をコントロールしながら、静かな声明を差し出している。
 明確な政治的主張はないが、開かれた社会性があり、多文化主義と平和主義のコンセプトがある。表現が素直過ぎると感じる人がいるかもしれないが、それゆえの力強さがある。
 ヒップホップのアーティストがリスクを背負って、政治的に際どいテーマ(人種差別、排外主義)についての議論の場を作ろうとしたことにたいして私たちは応えるべきだろう。ハイイロ・デ・ロッシとタクマ・ザ・グレイトの勇気ある行動を僕はいまどこまでも肯定しよう。ハイイロ・デ・ロッシに話を訊いた。

オレらは右でも左でもないし、そういう思想は持ってない。ただ、普通に普通のことを言っただけなんですよ。普通にヒップホップだと思うことをやった。そしたら、普通じゃない反応が返ってきたから、ここ(日本)は普通じゃないんだって認知できた。

「WE'RE THE SAME ASIAN」の問題提起はいまの日本でもっともラディカルなもののひとつだと思いました。

ハイイロ・デ・ロッシ:勇気があったのはタクマだけじゃないですか。あいつはハーフで横浜の黄金町っていう町に住んでいる。昔、赤線があった場所です。家族もそうだし、いわゆる日本人以外のエイジアンのコミュニティが近くにある状態で生活している。だから、渋谷であった反中国のデモや朝鮮学校に石が投げられた事件もダイレクトに入ってくる。もし、彼がやってくれるって言わなかったらあの曲は実現しなかった。ハーフだから、リスクもあるじゃないですか。偏見の目で見られるかもしれないし。

YouTubeのコメントや反応は見てますか? 

ハイイロ・デ・ロッシ:あれこそオレらが狙ってたことなんです。あれを起こそうと思ってた。YouTubeのコメント欄だけじゃなくて、『bmr』のウェブ版のニュースに「WE'RE THE SAME ASIAN」のことが掲載されて、YAHOO!にも飛び火しました。そこに中傷コメントが200件ぐらい来て炎上したんです。あの曲を録っている過程もUSTREAMで配信していたんですけど、2時間ぐらいのあいだに300人ぐらいが見ていた。ツイッターでもRTされまくった。そして、次の日にYouTubeにアップしたんです。最初は、USTREAMを見ている人たちとオレたちの曲だった。でも、オレらがYouTubeにアップした時点で、曲が議論の場所に変わる。それがオレらの理想だったんです。最初は悪いコメントが集中したけど、「これがいまの日本なんだよ」っていうのがオレらが言いたかったことなんです。

なるほど。確信犯としてやったんですね。

ハイイロ・デ・ロッシ:でも、最近のコメントでちょっとずつ擁護のコメントが増えているんです。擁護が増えて来ていて、反対派と賛成派のやり取りがはじまっている。これでコミュニケーションが活字でもできるじゃないですか。

いわゆる"ネット・ウヨク"の冷静さを欠いたコメントは酷かったね。

ハイイロ・デ・ロッシ:あれが彼らのベスト・パフォーマンスなんですよ。オレらは音楽でベスト・パフォーマンスをしている。彼らも彼らで、あれがベスト・パフォーマンスだから、オレらもそれを受け入れるべきだと思う。一生懸命考えて、彼らはアレですからね。

相手を傷つけたい一心で書いている感じがするよね。

ハイイロ・デ・ロッシ:そうです。でも、あれで傷つくんだったら、オレはああいうことは表現していない。それなら表現するのを止めたほうがいい。

素晴らしいね。

ハイイロ・デ・ロッシ:日本人のコンプレックスがすごく問題だと思うんですよ。アジアでいちばんになりたいというのがあからさまに見えるじゃないですか。でも、正直言って、サッカーも韓国のほうが強いし、パク・チソンがなんでスターにならないの? って思う。日本を除外したすべての国から彼はトップ・プレーヤーとして認められていますよ。でも、日本だったら、いいところ中村俊輔と並べられて報道されるぐらいでしょ。それでも日本からすれば妥協じゃないですか。あれほどの選手がアジアから出たことに誇りを持てない。

show-kというラッパーのアンサー・ソングにもちゃんと返していましたね。

ハイイロ・デ・ロッシ:あそこで逃げたら文系ラッパーって舐められたまんまじゃないですか。右翼だろうが、ギャングスタだろうが、オレはラップだったらやりますよ。

僕が、中国人や韓国人にたいする排外主義が嫌なのは単純な話で、その考え方が憎悪や不信や偏見を煽っているからなんですよ。

ハイイロ・デ・ロッシ:話していることが国だったり、自分の手のなかにないものですからね。オレらは普通に人に言っている。オレらは右でも左でもないし、そういう思想は持ってない。ただ、普通に普通のことを言っただけなんですよ。普通にヒップホップだと思うことをやった。そしたら、普通じゃない反応が返ってきたから、ここ(日本)は普通じゃないんだって認知できた。それをずっとshow-kさんへのアンサー・ソングでも言っていたんです。けっきょくは人びとじゃないですか。目の前の人が中国人や韓国人だから態度が変わるわけではない。それを変えようとしてきたのが日本じゃないですか。それがオレらにも染み付いているのはわかるから、ぶっちゃけ自衛でやったのもある。「WE'RE THE SAME ASIAN」はオレらがやらなきゃいけないことでもあった。タクマもいて、いまはLAのヤツらもどんどん絡んできているんです。プロジェクト・ブロウド(LAを拠点とするヒップホップ・コレクティヴ)のヤツらにも日系のアメリカ人やいろんなヤツらがいるんですよ。

[[SplitPage]]

テレビやYouTubeを観て危険だって感じることもあるけど、オレたちの場合は横浜が近いし、中華街があるじゃないですか。タクマの家はモロその辺りなんですよ。オレはヤツのお母さんとも普通に仲良いし。やっぱり危険は感じていましたよ。だから、オレらに何かできることはねーかって考えた。


Haiiro De Rossi
Same Same But Different

Slye Records

Amazon iTunes

これまで僕は、ハイイロくんのラップはどちらかと言えば文学性に重きがあると思っていたから、「WE'RE THE SAME ASIAN」のような曲をああいう形で出したことに驚いたんです。タクマくんたちとの出会いが大きかったんですか?

ハイイロ・デ・ロッシ:もともとそういう考えはありましたね。うちの母親が養護学校の先生なんですよ。そういうことを小学校の先生とかは知っているじゃないですか。だから、特別学級の子が運動会で走る横でいっしょに走る役をお願いされたりとかしていた。オレは良いことをしている気も、悪いことしている気もなかった。だから、友だちの親とかに「すごいね」って言われることに違和感があった。その時点で差別的じゃないですか。家庭内で「差別はまじで止めろ」って言われていた。最初は人種とかじゃなくて、障害に関して親から言われたことが大きかったのかもしれない。

右翼のデモの熱量も凄いじゃないですか。そういう時代の風向きも肌で感じていました?

ハイイロ・デ・ロッシ:やっぱり危険っすもんね。

テレビを観ると、戦争を煽るような報道が平気であるわけじゃないですか。

ハイイロ・デ・ロッシ:テレビやYouTubeを観て危険だって感じることもあるけど、オレたちの場合は横浜が近いし、中華街があるじゃないですか。タクマの家はモロその辺りなんですよ。オレはヤツのお母さんとも普通に仲良いし。やっぱり危険は感じていましたよ。だから、オレらに何かできることはねーかって考えた。なんだかんだ批判のコメントが目立つけど、評価も注目もされているし、議論もされているから、狙い通りじゃないですか。モス・デフがブラックスターの歌詞で、「なんでオレがハスリングもしてないし、ストリート・ファイトもできないのにストリートからプロップスを得ているかわかるか? それはお前らよりラップができるからだよ」というようなことをラップしているんです。オレが音楽やヒップホップに求めているのはそういうことです。たとえば、右翼が絡んできたとしても、オレはラップが上手いからラップで返す。show-kさんとのビーフに関しても、あれはタクマが出るべきじゃない。ふたりで返すのが筋だけど、あれ以上はあいつ以外も傷つける可能性があるじゃないですか。だから、オレがひとりで出たんです。あそこでダサいラップをしたらおじゃんだったし、リスクがあったぶん、返って来たものも大きかった。

あそこでタクマくんを出さなかったことを考えると、今回の曲についてかなり慎重に考えていたってことだよね。

ハイイロ・デ・ロッシ:そうですね。そこを考えないで行ったら、ただの喧嘩ですからね。

なるほど。ハイイロくんのこれまでのキャリアについて少し教えてもらえますか。

ハイイロ・デ・ロッシ:17歳のときにラップをはじめたんですけど、最初は芽が出る雰囲気がゼロでしたね。20歳のときに活動の場所を地元の湘南から都内に移したんです。ノルマを払うしかない状況を一回作ってみた。そこでエクシーと知り合って、エクシー周りのイヴェントに出はじめました。で、1年ぐらいして〈スライ・レコーズ〉に入った。そこからはとんとんと進みました。去年、セカンドを出して、メンタル的にも身体的にも一度湘南に戻っていますね。湘南でやっていた人も上がってきているし、わりとオレの状態も湘南にフィットしています。

最初に影響を受けた音楽は?

ハイイロ・デ・ロッシ:いちばん最初はコーンやリンプ・ビズキットを聴いていて、そこからエミネムに行きました。で、コモンの『レザレクション』を聴いて、「これもエミネムと同じジャンルの音楽なんだ!」ってことに驚いた。それからいわゆるネイティヴ・タンやソウルクエリアンズ周りを聴くようになった。いわゆる向こうでナードって捉えられているラッパーもアルバムのなかに一曲はバトル・ライムが入っているじゃないですか。そういうところには忠実でいたいですね。

ハイイロくんのアルバムを聴き直して、〈ロウカス〉にもかなり影響を受けているのかなって感じました。どうですか?

ハイイロ・デ・ロッシ:そこはほんとにありますね。僕自身がモス・デフにむちゃくちゃ影響されている。モス・デフとQ・ティップが大きいですね。モス・デフはブルックリンだけど、ボヘミアニズムがあるじゃないですか。ああいう風にありたいと思います。Q・ティップのJ・ディラを発掘したりする、人を見つける力、プロデューサーの力をすごく尊敬してますね。タクマはタリブ・クウェリの超信者なんですよ。

ブラックスターじゃん!(笑)

ハイイロ・デ・ロッシ:そうそう(笑)。あいつと出会って、曲を作るミーティングをしようってなったときに、けっきょく車のなかでタリブのアルバムについて10時間ぐらい話したんです。オレらはタリブのラップに関して超研究していますね。とくにラップの拍の取り方ですね。

タクマ・ザ・グレイトと知り合ったのは去年?

ハイイロ・デ・ロッシ:17歳ぐらいからお互いクラブで見たりして知っていたけど、その頃はみんな尖っているから、タメとは絡みたくないという気持ちがあるじゃないですか。負けたくないというのもあるし。

湘南はどんな町ですか?

ハイイロ・デ・ロッシ:アレステッド・ディベロップメントとか合いますね(笑)。

ゆったりとしている?

ハイイロ・デ・ロッシ:そうですね。良いことかはわからないけど、夢を見て育てる場所ですね。

以前、インタヴューしたときに話していたけど、ギャングスタ系のラップをしようとしていた時期もあったんだよね?

ハイイロ・デ・ロッシ:それがちょうどエミネムを聴いている時期ですね。スリップノットとかも聴いていたから。破壊したかったんですよね。でも、やっぱり違うということに気づいた。

破壊というのはどういうこと?

ハイイロ・デ・ロッシ:すべてをぶっ壊す音楽をやりたかったんです。そういう時期だったんでしょうね。でも、コモンや〈ロウカス〉を聴くようになって変わりました。バイオレンスやイリーガルさを出しても、けっきょくラップが下手だったら、意味がないと思った。クラックだらけのジャケットにしても、そいつからその匂いがしなかったらおかしいじゃないですか。匂いがいちばん大事だと思います。その時期にジャズもスゲェ聴くようになった。オレにとってジャズは匂いがすごく強かった。

どんなジャズを聴いていたの?

ハイイロ・デ・ロッシ:マイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』をいちばん聴きました。あと、『サムシング・エルス』ですね。いわゆる有名盤を聴いていました。マイルスは白人のビル・エヴァンスをバンド・メンバーに入れたことで叩かれたじゃないですか。マイルスの自伝も読みましたけど、「いいプレイをする奴なら、肌の色が緑色の奴でも雇うぜ」って言っている。その気持ちはオレらも持っていますね。ファーストを作っている頃は、ジャズのネタでラップをすれば、オレが思うジャズ・ラップになると思っていたけど、それは違うんじゃないかなって。トラックがどういうトラックでもオレがジャズなラップをしとけばいいと思った。だから、いまはジャズにそこまで固執しなくなりましたね。

たとえば、ジェイ・Zのラップを音符にすればジャズに置き換えられるという説もあるけど、そういうのも意識している?

ハイイロ・デ・ロッシ:そうですね。レコーディングのとき、歌詞を読みながらラップするじゃないですか。いくつものヴァージョンを録ってみて、どれがいちばんいいのか、その瞬間生まれるものがある。エンジニアとちゃんと話したほうがいいのか、ひとりで高めてブースに入りっぱなしがいいのか。そのモチヴェーションの作り方はいま現在も研究しています。

ジャズ・バンドを従えてライヴしたいという気持ちなんかもある?

ハイイロ・デ・ロッシ:いずれはやりたいですね。オレが最終的に目指しているのは、日本人がワンマンで〈ブルーノート〉や〈ビルボード〉でやることなんです。武道館とかじゃないんですよ。

[[SplitPage]]

 ハイイロ・デ・ロッシはこれまでに『TRUE BLUES』『SAME SAME BUT DIFFERENT』という2枚のアルバムを出している。音楽的に言えば、流麗なジャジー・ヒップホップを基調としている。タクマ・ザ・グレイトは先日、デビュー・アルバム『TAKUMA THE GREAT』をハイイロ・デ・ロッシ主宰のインディペンデント・レーベル〈forte〉から発表したばかりだ。彼は台湾系ジャパニーズとして横浜の黄金町で育ち、LAで活動していた時期もある。日本語、北京語、英語を巧みに織り交ぜながらスムースにフロウするスタイルには特筆すべきオリジナリティがある。タクマ・ザ・グレイトが黄金町についてラップする"Sumeba Miyako"は、私たちを"もうひとつの日本"へと案内してくれる。町の匂いが伝わってくる素晴らしい曲だ。これを聴けば、彼らが「WE'RE THE SAME ASIAN」へと至った背景もわかるだろう。

メッセージ云々を言っているヤツらがなんでやらないのって思いますよ。オレはあの曲を聴いて欲しかったから、何人かのアーティストにオレのフォロワーにも見えるようにツイッターでリプライを飛ばしているんです。でも、なんの返信もない。オレらがこういうことをやっているのを評価して欲しいんじゃなくて、知って欲しいだけなんですよ。


Haiiro De Rossi
Same Same But Different

Slye Records

Amazon iTunes

ハイイロくんのような音楽主義の人が危機感を持って、ああいう曲を作ったことがまた興味深いね。

ハイイロ・デ・ロッシ:逆に言えば、メッセージ云々を言っているヤツらがなんでやらないのって思いますよ。オレはあの曲を聴いて欲しかったから、何人かのアーティストにオレのフォロワーにも見えるようにツイッターでリプライを飛ばしているんです。でも、なんの返信もない。オレらがこういうことをやっているのを評価して欲しいんじゃなくて、知って欲しいだけなんですよ。

でも、それだけ中国や韓国をはじめとしたアジアの人種問題は多くの人が積極的に触れたくないことだと思う。ある意味タブー視されていることでもあるから。

ハイイロ・デ・ロッシ:でも、それが臭い物に蓋をしていることじゃないですか。反対意見でもいいから反応が欲しかったですね。シカトはないでしょって。

それだけハイイロくんとタクマくんが勇敢だったということですよね。

ハイイロ・デ・ロッシ:でも、みんなそういうことを言っていませんか? アメリカでもジャマイカでもアーティストは危険と言われるメッセージを伝えようとしているじゃないですか。だから、レベル・ミュージックじゃないですか。一般の人からしたらリスクがあることをやるから、ウォーリアーと言われたり、アーティストと言われるんでしょ。それをやらないでポップス批判していても何にもならないと思うんですよ。

ほんとにハイイロくんの言うとおりだと思いますよ。たとえば、ハイイロくんが日本のアーティストやラッパーでメッセージの部分で共感できる人はいますか?

ハイイロ・デ・ロッシ:(長い沈黙)......みんな自分のことを言いたいことを言っているとは思いますけど、主張という意味ではオレよりちょい若いぐらいのビートメイカーが主張していますね。ラッパーだったら、気になるのはL-VOKALですね。

それはどうして?

ハイイロ・デ・ロッシ:PVを観ると、けっこう際どいですよ。狙いでやっているのかは知らないけど。ほんとに面白いです。

シミラボは知っていますか?

ハイイロ・デ・ロッシ:音源は聴いています。

日本であれだけ多様な人種的背景のある人たちが登場してきたことに僕は希望を感じますね。平気で人種差別的なことを言う人たちがいるけど、彼らのような人たちが出てくる複雑な現実がある世のなかで、オレはそんな短絡的に物事を考えられない。

ハイイロ・デ・ロッシ:中国批判しているラッパーがいてもいいと思うし、いなくなれとは思わない。ただ、ラフ・ライダーズのジンっていうチャイニーズ・アメリカンのラッパーがいたじゃないですか。あいつとかラップが超上手いんですよ。あのラップを聴いて、あまりの格の違いを感じないのかなと思う。さっきのマイルスの話じゃないですけど、いっしょに音楽をやる仲間は言葉が通じなくても、ラップが上手ければ上手いほうがいいし、トラックがヤバければヤバイほうがいいじゃないですか。音楽において優れているヤツを探すのは、日本のなかだけより、世界で探したほうがいいと思う。日本人だけでいちばんを決めたところで、海外にはそいつよりヤバいヤツらがゴロゴロいるから。シンゴ02が"400"のなかで、「同じ文化の違う世代よりも違う文化の同じ世代、そういう時代」って言っていたけど、まさにそうだと思う。ずいぶん前にそう言っていたけど、いまはそういう時代だと思う。

いずれにせよ、ここまで議論になったんだから成功ですよね。

ハイイロ・デ・ロッシ:これで危ないことがなければいちばんいですね。

それはほんとにそうだね。

ハイイロ・デ・ロッシ:成功したってスゲェ言える出来事があったんです。この前、横浜のクラブに遊びに行ったら話しかけて来てくれた子がいて、彼は中国人のハーフで、お母さんが中国人学校で働いているらしいんです。お母さんにあの曲を聴かせたら、「こういうことを日本人の若い子が言ってくれるのはありがたい」ってことでお礼を伝えに来ましたって言われて。ああ、これだなって。

いい話だね。

ハイイロ・デ・ロッシ:ビーフ云々はほんとにオプションですね。

一方で、show-kのような考え方の人もたくさんいるよね。

ハイイロ・デ・ロッシ:多いと思いますよ。しかも、それをスゲェ支持する人もいるわけじゃないですか。

もちろんそうだね。

ハイイロ・デ・ロッシ:オレは最後のアンサー・ソングで「クリックはプロップスじゃねーからな」ってラップしていますけど、難しいところですよね。彼らみたいなラップが評価される場所もあって、オレらがボロクソになる場所もある。

そうだね。

ハイイロ・デ・ロッシ:でも、オレは音楽からすべてが出ると思う。匂いとか活動とか発言とかタイミングとか、全部含めて音楽でしか良い悪いは決めさせられない。

うん。それはハイイロくんがアーティストとして地に足をつけているからですよね。

ハイイロ・デ・ロッシ:そいつらがオレよりラップが上手かったら完全否定はできないですね。そいつらよりヤバいトラックを作って、上手いラップをする自信がいま現在もありますね。でも、クリーンなほうだと思いますよ。右に寄っていたとしても、バイオレンスを持ち込んでいない時点でショーマンシップに則っていると思う。

愛国心や排外主義を歌うようなラッパーも世のなかに危機を感じて本人たちはレベル・ミュージックをやっているつもりだと思うんですよ。そこが難しいところだと思う。たとえば、政治的な集会なんかでもライヴしているAreiRaise (英霊来世)っていうヒップホップ・グループがいるんだけど、彼らの「8 30」という曲のYouTubeのコメントを見ると、彼らとパブリック・エネミーやレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンを比較しているようなコメントがあって、実際そう考えている人たちは多いと思う。でも、AreiRaiseがやっているつもりの"反抗"は圧倒的にマジョリティの論理なんですよ。彼らの音楽は、イメージとしては"反抗的"だけど、主張は生粋の保守の政治家が言う内容をデフォルメしている。それは、少数派の、これまで抑圧されてきた意見でもなんでもない。だから、少なくともカウンター・カルチャーではない。僕はshow-kのラップにも同じものを感じた。過激に見えるけど、よく歌詞を聴くとすごく凡庸な意見なんだよね。

ハイイロ・デ・ロッシ:でも、オレらがやっているのは反抗じゃないですよ。

反抗じゃない?

ハイイロ・デ・ロッシ:ただ振り回しているだけじゃないから。狙ってカウンターを撃っているから。そうじゃないと当たらないし。

[[SplitPage]]

「アシッド、MDMA、コケイン、オプションがなきゃ語れないペイン」って言ってるんです。やるのはいいけど、オプションのためにドラッグをやるんだったら、意味ないですね。オレは精神安定剤で内臓ボロボロになって、いま病院に行っている状態なんです。そこにイリーガルもリーガルも関係ない。ドラッグは武器でもなんでもないし、マイナスにしかならないから、オレは思いっきり切り離したいです。


Haiiro De Rossi
Same Same But Different

Slye Records

Amazon iTunes

「WE'RE THE SAME ASIAN」は歌詞の内容をめぐって議論できるリアリズムがあるのが素晴らしいと思いましたね。

ハイイロ・デ・ロッシ:抉り方は注意しましたね。わかりやすくするためにラップ的には下手に書いたと思いますよ。音楽的な拍のところなんかを詰めずに当たり前のことを当たり前に言うことだけを考えてやりました。そのぶん、歌詞がシンプルになった。だから、show-kさんから誤解を招いた。「渋谷のデモがテロ」なんて言っていないのに、そういう誤解を招いた。それはオレらの表現の仕方が悪かった。オレらがあの曲を発売しない理由もわかって欲しいですね。あれを500円で売ったら多少の金にはなるじゃないですか。でも、オレはあれを発売する気はない。

それはなぜ?

ハイイロ・デ・ロッシ:あれは曲じゃないから。あれは議論する場ですから。図書館や会議場を作って、そこで金を取るわけにはいかないじゃないですか。

でも、自分たちの曲という意識はあるでしょ?

ハイイロ・デ・ロッシ:オレらが蒔いた種ではあるけど、そこから育てるも枯らすも人びと次第ですね。唯一国が潰しに来ない場所ができたんだから。

主張というより問題提起という気持ちが強い?

ハイイロ・デ・ロッシ:主張できるほどオレらは頭良くないですから。オレらより政治的に理解があるヤツらはいっぱいいるから。

オレはあの曲には十分主張があると思うけどね。

ハイイロ・デ・ロッシ:オレは人としてラップしたし、タクマはそれにたいして勇気を持って協力してくれた。エンジニアやトラックを作ってくれたヤツもそうだし。

政治的な曲をお金にするのはうしろめたいという気持ちがある?

ハイイロ・デ・ロッシ:いや、そういうことではないです。形が変わってしまったからです。曲ではなくなってしまったからです。音楽を売るなら売るけど、音楽ではなくなってしまった。

なるほど。ところで、今年は3枚目のアルバムを出すんですよね?

ハイイロ・デ・ロッシ:12インチを先行で切ります。「グッバイ・キッズ・ヒップホップ」という曲です。いわゆる暴力やドラッグにたいして決別する曲です。

ドラッグを否定するのはどうして?

ハイイロ・デ・ロッシ:オレは歌詞で、「アシッド、MDMA、コケイン、オプションがなきゃ語れないペイン」って言ってるんです。ドラッグを好きにやるのはいいけど、オプションのためにドラッグをやるんだったら、意味ないですね。オレは精神安定剤で内臓ボロボロになって、いま病院に行っている状態なんです。そこまで行っても「ドラッグやってるぜ」なんて言わない。そこにイリーガルもリーガルも関係ない。ドラッグは武器でもなんでもないし、マイナスにしかならないから、オレは思いっきり切り離したいです。「グッバイ・キッズ・ヒップホップ」といっしょに収録するのが、「ドラッグ・バラード」って曲なんです。それがそのチェーンを切ってくれって曲です。

これまでとはまた違う、切迫感のあるアルバムになりそうだね。

ハイイロ・デ・ロッシ:3枚目は自分のレーベルですべてやります。追い込まれて、擦り切れそうな状態で作ったから、聴きづらいかもしれません。でも、満員電車に耐えられないとか、そういうヤツらって意外といっぱいいると思うんですよ。電車を降りないとヤバイ状態だけど、終電だよ、どうしようって。次のアルバムはそういうヤツらがあと10分乗って頑張れるようなアルバムにしたい。エミネムの『リカヴァリー』の6曲目から7曲目の流れがあるじゃないですか。いち度ぐちゃぐちゃになってからもオレはやるんだって。オレ、あそこで超泣いたんですよ。オレがどうやって乗り越えたのかっていうことを見せたいですね、次のアルバムでは。


MAQ - ele-king

ウーハーを震わせる12インチ


1
Mark imperial - Are you house - HouseNation

2
Dj brockie & Ed solo - System check - Undiluted

3
Dawn Penn -You Don't Love Me(dub)

4
David Green - Space Cowboy -FreeStyleListen

5
Alex Reece - PulpFiction - MetalHheads

6
Flynn&Flora - Breakbeat - IndependentDealersRecords

7
Calito & Addiction -Make It Real - CreativeSource

8
Tone pusher - Flyin to rio ( David Alvarade Mix) -Slusher Records

9
Dj Perre's AfroAcidProject - The Darkness - DJP Records

10
Gypsymen -Camarera - LoudHouse

James Ferraro - ele-king

 2010年のインディはだいたいチルウェイヴの年だったかどうか、ウォッシュト・アウトトロ・イ・モアスモール・ブラックも結局聴き逃したが、レインジャーズの『サバーバン・ツアーズ』をよく聴いた私にはなんともわからない。
 あげくのはてに、昨年末『サバーバン~』をリリースした〈Olde English Spelling Bee〉の出したジェイムズ・フェラーロの新作を今年に入って買った。これまでもフェラーロの作品を出してきた〈OESB〉は2008年のテープ・アルバム『ラスト・アメリカン・ヒーロー』を去年LP化している。そこで聴ける塊になった糸がほどけるようなギターのアルペジオとシンセサイザーの音の膜は『E2-E4』の後裔というよりライヒばりのフェイズ・ミュージックをサイケデリックに移すにあたりわざわざボタンを掛けちがえた節がある。私がいま傍点をふった、この「わざわざ」がクセモノであり、フェラーロの芯の部分にあるのは、このアルバムでも明らかである。シリアス・ミュージックとデフォルメあるいはパロディとの線引きを曖昧にしたまま全部を引き連れて行くフェラーロのコラージュ・センスはここでは1曲1曲に向けてはおらず、アルバムのコンセプトを作動させるコンセプト、物理の分野でいう「場」の概念にちかいやり方になっている。

 大袈裟に書いてしまったが、ジャケットをよくよくご覧いただければおわりかりの通り、ようはこれ、MTVがモチーフなんです。砂嵐を前にオカッパ頭の男が映ったテレビ画面の左下にはMTVを思わせる「HTV(Hは"Hell"のH)」のロゴがあり、画面の前にはサーモン・ピンクのストラトキャスターが漂い、手前にはリモコンを手に髪にカーラーを巻きペディキュアを乾かす女のうしろ姿をコラージュしている。ご丁寧に一周まわってオシャレといえなくもないスタッズ(鋲打ち)・ベルト風の縁取りまであるそれらの視覚記号はこのアルバムのテーマは「MTVとその時代」だと示しているが、『ナイトドールズ・ウィズ・ヘアスプレイ』の書き割りは80年代消費文化の戯画としての『アメリカン・サイコ』のスノビズムではなく、それを頂点としたヒエラルキーの下部に位置した、オーウェルが『1984年』で予見したディストピアの全体主義をレーガン時代の反共/保守に置き換えた社会風俗としてのポップ・カルチャーであり、作中では81年にバグルスの"ラジオ・スターの悲劇"とともに開局したMTVが好んだニューウェイヴ、エレ・ポップ、ニューロマ、ヘア・メタルをシミュレートした曲を、テレビをザッピングするように執着なく並べていく。「アリエル・ピンク的な」ポップさはたしかにウリだが、それ以上に、90210の同僚であり、マトリックス・メタルズ名義でLAヴァンパイアにジョイントし、アウター・リミッツ・レコーディングス名義では"アイ・ニード・マイ・T.V."と題したシングルを出したサム・メーランことサム・メレンゲの偏愛に感化されたとみるべきかもしれない。「マイTV」を「ユーチューブ」といい換えられる世界にあって、私たちはその気になれば世界の終わりまでPVを見つづけることさえできる。最新のものだけでなく過去のものも。しかし本作はアーカイヴ消費に与してはいない。〈OESB〉の諸作に特徴的なテープ・マスター風の劣化した音色は、このアルバムではアーカイヴ自体の経年変化を印象づける。『サバーバン~』ではそれが、チルアウトと一体になっていた。『ナイトドールズ~』の場合、それはたぶん、動画共有サイトにアップした倍速録画したVHSテープの映像とリンクしている。このふたつにはレトロな音楽への既聴感と、何かがリヴァイヴァルすること対する既視感が二重写しになっている。低予算のスタジオ・セット、DCブランドの逆三角形のシルエット、スプレイでオッ立ったヘアスタイル、マイケルの"スリラー"、シンディ・ローパーの"グーニーズ"、『悪魔のいけにえ』の撮影監督ダニエル・パールが撮ったビーフハートの"アイス・クリーム・フォー・クロウ"、それらのイメージが退色したネオンカラーの洪水のように押し寄せてくる。

嶋崎朋子 (UMI no yeah!!店長) - ele-king

ついつい脱ぎたくなっちゃう常夏song


1
ふたりの愛ランド(石川優子/チャゲ)

2
小麦色のマーメイド (松田聖子)

3
sogu/wakai( Umi no yeah!!)

4
GOOD MORNING BABY (やけのはら)

5
夏なんです(はっぴいえんど)

6
涙のキッス<Rio de Janeiro/BRAZIL>(関口和之 & 砂山オールスターズ)

7
I Want Candy(Bow Wow Wow)

8
Expo2000 (Senor Coconut Y Su Conjunto)

9
Coco Romance(LiveLoves)

10
Sunshower(Dr. Buzzard's Original Savannah Band)

Chart by JET SET 2011.02.07 - ele-king

Shop Chart


1

KENJI TAKIMI

KENJI TAKIMI LUGER E-GO KEEP »COMMENT GET MUSIC
04年5月、今は無き西麻布Yellowでのプレイを収録したCrue-L主宰Kenji Takimi氏による鬼強烈マッド・ミックス。混沌としたノイズ・サウンドに始まり、ニュー・ウェーブ~ロック~ディープ・ハウス~ディスコ・ダブへと縦横無尽に駆け抜けるまさにオリジナル・サイケデリア。ヤバ過ぎます!!

2

ULYSSES

ULYSSES ACID REFLUX »COMMENT GET MUSIC
ファンキー・アシッド・ハウス推薦盤、Prins Thomasリミックス収録!!2010年はPrins Thomas主宰Internasjonalからのリリースが光っていたNYのヴェテランElliot TaubによるThe Rapture主宰レーベルからの新作は捩れまくり、しかしすこぶるファンキーなアシッド・ハウス!!

3

DIMLITE

DIMLITE MY HUMAN WEARS ACEDIA SHREDS »COMMENT GET MUSIC
アイルランドのウォンキー/ニュービーツ名門All Cityからの7"も当店定番化しているスイスの天才が、USのソウル/ファンク系レーベルから再登場!!

4

ILYA SANTANA

ILYA SANTANA TRANSBORDER »COMMENT GET MUSIC
スペイン・カナリア諸島出身の逸材Ilya Santan。Eskimoからは3作目となる新作ニュー・ディスコ・トラック"Transborder"をMinilogueによるドープ・ミニマル・リミックスを収録した大注目の一枚。

5

CLINIC

CLINIC BUBBLEGUM »COMMENT GET MUSIC
最新アルバム"Bubblegum"からのカット。優しく泣かせるグレイト・ポップ・チューン!!孤高の英国アート・サイケ・バンド、Clinic。前シングル"I'm Aware"も傑作でしたが、これまた超良い!!Radioheadが60'sサイケ・ポップ化したような甘酸っぱく切ない名曲です!!

6

KINK / ADAM PORT

KINK / ADAM PORT DETUNATOR / STALKER »COMMENT GET MUSIC
現代的なアシッド感覚を武器に数々のレーベルから傑作をリリース中のブルガリアの星KiNKと、Rockets & PoniesからのSanteとのコラボ"Own EP"も大ヒットのAdam Portという旬の面子によるスプリット。

7

THE TORTOISE

THE TORTOISE GONNA BE »COMMENT GET MUSIC
メルボルンの新鋭The Tortoiseによる3rd Strike第五弾。ポスト・ビートダウン一押し盤です!!Jisco Music/Under The Shadeクルーが手掛けるビート・ダウン・アプローチの新レーベル3rd Strikeから、前2作を手掛けたドイツの新鋭Erdbeerschnitzelに続く素晴しい逸材を発掘。気鋭Huneeによるリミックスもお見逃し無く!!

8

DANIEL DRUMZ

DANIEL DRUMZ EP »COMMENT GET MUSIC
ポーランドの職人が放つ新作が限定10"ホワイト・ヴァイナルにて登場!まさに匠なビート・シーケンスに流麗なシンセ・ワークが乗るハイ・センスなダウンビート&ディスコ・リエディット全3曲を収録。

9

LAUER

LAUER H.R. BOSS / BANNED »COMMENT GET MUSIC
Brontsaurus中核Phillip Lauerによる傑作ソロ新作、お待たせしました!!Live At Robert Johnson主宰のAta(Playhouse)も相当にお気に入りなのは明白な、Arto Mwambe名義でのミックス・コンピ、シングル・リリースに続くBrontosaurusシリーズ第3弾。

10

GLASSER

GLASSER MIRRORAGE »COMMENT GET MUSIC
Lindstrom主宰Feedelity、約2年振りのニュー・リリースです。Tru Panther、Young Turksからのリリースで注目を集めるUSインディ・シンセ・トリオGlasserの1st.アルバム『Ring』収録曲がLindstromのリミックスを加えてライセンス・シングル・カット。素晴らしすぎます...。

Chart by Japonica 2011.01.07 - ele-king

Shop Chart


1

MOODYMANN

MOODYMANN PRIVATE COLLECTION 2 UNKNOWN / US / 2011/1/22 »COMMENT GET MUSIC
2009年にデトロイトの一部でのみ極少量出回ったMOODYMANNによるプライベート・エディット/リミックスEP、その幻とも言える涎垂級 の一枚が遂にリイシュー&正規流通されます!ヒップホップ/ブレイクビーツ~ニュー・ソウルまで意外なネタ元からのエディット・ワークについつい 惹かれてしまう(もちろん鉄板内容!)極上盤でさらには元ネタ不明のボーナス・トラックも収録でこれがまたまたとんでもなく最高なんですっ!と いった感じでDJ諸氏はまじでマストバイな逸品!

2

SOFT MEETS PAN

SOFT MEETS PAN ICHIGOICHIE / LUNAR REMIX JAPONICA / JPN / 2011/1/24 »COMMENT GET MUSIC
SOFTとMOOCHYによる話題の合作アルバム「SOFT meets PAN "Tam"」より限定7inchリミックス・シングル!SOFTのサウンド中枢KND/SINKICHI&DAICHIによるユニット=SLOW AIRリミックスをカップリング収録!!

3

SHOES

SHOES SHOES OF ROY AYERS SHOES / US / 2011/1/30 »COMMENT GET MUSIC
MOODYMANN、MILES DAVISにHAMILTON BOHANNON等のエディットを手掛けその斬新な手法にDJユースな仕上がりで人気を博すシカゴ/デトロイトのリディット・レーベル<SHOES>最新作はROY AYERSエディット!これまでの<SHOES>作品を知っている方ならもうタイトル見ただけで即買っすね。

4

ALTZ

ALTZ SLOWCRAPZ BLACKSMOKER / JPN / 2011/1/28 »COMMENT GET MUSIC
<BLACK SMOKER>×ALTZ!これまで国内屈指の様々なDJ/クリエイター達が参加してきた<BLACK SMOKER>が送る鉄板長寿ミックス・シリーズに、この度遂に遂に遂に(!)ALTZさん登場です!再生ボタンを押す前からかなりそそられるこの組み合わせ、、やはり期待を裏切ることはありませんでした!どんなレコード/楽曲もその魅力を 120%引き出し聴かせてしまうこのDJ/エディット手腕はやはり圧巻の一言です!

5

FAR OUT MONSTER DISCO ORCHESTRA

FAR OUT MONSTER DISCO ORCHESTRA DEAD DANCE FAR OUT / UK / 2011/1/30 »COMMENT GET MUSIC
広義でブラジリアン・サウンドを発信する信頼の<FAR OUT>が送るスペシャル・ユニット=FAR OUT MONSTER DISCO ORCHESTRA第2弾シングル!今作はシーンを賑わすポスト・ビートダウン・サウンドの今や第一人者とも言える人気の二組、LTJとMARK Eをリミキサー起用した激注目の一枚です!

6

MARTYN & MIKE SLOTT

MARTYN & MIKE SLOTT COLLABS 1 ALL CITY DUBLIN / UK / 2011/1/29 »COMMENT GET MUSIC
現行ビート・シーンを牽引する<ALL CITY DUBLIN>2011年は12inchシリーズ始動!テクノ/ミニマル~ダブステップ界隈を拠点とする両者による注目コラボ作!テック・ハウス~ミニマ ル・ダブ的アプローチが冴えるA面"ALL NIGHTS"、そしてゆるやかに広がるアンビエントな幕開けからジワジワとビルドアップしていくスペイシー・ビートダウン・トラック"POINTING FINGERS"のB面、どちらも<ALL CITY>が新たにダンス・トラックへとアプローチする快作です!オススメ!

7

ARTHUR'S LANDING

ARTHUR'S LANDING ARTHUR'S LANDING STRUT / UK / 2011/1/28 »COMMENT GET MUSIC
話題のARTHUR RUSSELLトリビュート・バンド=ARTHUR'S LANDING、待望のフル・アルバム!ARTHUR RUSSELLお馴染みの定番人気ナンバーから知られざるレア音源の数々をバンド編成ならではの独自の味付けを施しカヴァー/リメイク!ニュー・ウェーブ /ディスコ~ファンク/レアグルーヴ/サイケ/ダブ・・と広範囲にばっちりおすすめのDJ/リスニング両用万能盤!

8

COATI MUNDI

COATI MUNDI DANCING FOR THE CABANA CODE IN THE LAND OF BOO-HOO RONG MUSIC / US / 2011/1/30 »COMMENT GET MUSIC
80年代前半ノー・ウェーブ・シーンの代表的レーベル<ZE RECORDS>から数々の作品をリリースしていたCOATI MUNDIが先頃リリースされた復活作となる12inchシングルに続き待望のニュー・アルバムをホーム<RONG MUSIC>よりリリース!アフロ/プリミティブなトライバル・ディスコ・ファンク~コズミック・ディスコ、そしてラテン~カリビアン・ハウスまで多種多 様なグルーヴを乗りこなし歌い上げるCOATI MUNDI渾身の全11トラック!

9

WHISKEY BARONS

WHISKEY BARONS BSTRD BOOTS VOL.13 BASTARD BOOTS / US / 2011/1/28 »COMMENT GET MUSIC
人気<BASTARD BOOTS>第13弾はボストンのDJ/プロデューサー・ユニット=WHISKEY BARONSによる絶妙すぎる塩梅のラテン/サルサ・ネタの気持良い極上ブレイクビーツ/ディスコ・エディット!WILLIE COLONによるラテン/サルサ・クラシック"LA MURGA"を小気味良いクラップビートをベースにダビーにブレイクビーツ化した"LA MURGA SKANK"はじめ4トラックいずれもDJのツボを心得た痛快エディット皿!

10

SOFT ROCKS

SOFT ROCKS DISCO POWER PLAY ALBUM HIGHLIGHTS (PLUS ONE MORE) SOFT ROCKS / UK / 2011/1/30 »COMMENT GET MUSIC
アコースティック・サウンドにグルーヴィーなパーカッションを交えつつグッと引き込んでいくフォーキー・ロックなサイケ・ディスコ"DANZ BOY DANZ"、そして哀愁を帯びた爪弾かれるスパニッシュ・ギターの調べと共にこちらも小気味良いパーカッションがリズミックに打ち鳴らされるレイドバッ ク・チューン"FREE RIDE-RRR"、そしてフロア仕様のトライバル・シンセ・ロック・ブギー"AH-ZHAA!"と超充実の3トラックス!

Ducktails - ele-king

 みんな大好きダックテイルズ。唄心のあるリヴァーブ・ポップとゆるゆるしたギター・アンビエントでUSシーン最大のローファイ・コロニー〈ウッディスト〉を代表するバンドとなったリアル・エステイトのギタリスト、マシュー・モンダニルのソロ・プロジェクトがダックテイルズだ。リアル・エステイトは先日ウッズとともに来日公演も果たし、両者の日本での人気ぶりから推しはかるにこんな説明は不要かもしれない。だが、なぜリアル・エステイトやダックテイルズが支持されるのかということについてはもう少し注意を払う必要があると感じる。リアル・エステイトやダックテイルズを聴くということは、モンダニルのあのとろみのあるギターを聴くということだ。いや、「聴く」というよりはそれに「浸かる」「浴する」と表現したい。初めて耳にしたときから、筆者はあの音と「温浴」のイメージとを切り離すことができない。「ヒプナゴジック・ポップ(入眠ポップ)」という、なかば揶揄を含んだ形容もわからなくはない。しかしただ眠りに就くというよりは、温浴のように、治癒とかデトックスといったフィジカルな効能を想像してしまう。岩盤浴で身体の芯から温まってさらさらの汗が大量に出る、とか、ゲルマニウム温浴で体内の老廃物を排泄する、といったイメージがあの穏やかな熱と光源を持った音から湧いてこないだろうか?

 曲の骨だけを取り出せば変哲のないゆかしきアメリカーナである。これを当世風に仕立てているのが彼のサウンドのとろみに他ならない。リヴァーブでもフィードバック・ノイズでも、昨今のインディ音楽はクリアさを嫌う傾向が基調となっている。ドリーミーだったりシットだったり、音の濁り方はアーティストによってさまざまだが、ダックテイルズの場合は養分がたっぷりと溶かし込まれているようなとろみがついている。色でいえばはちみつ色のギター・サウンド。そして少ない展開のなかに、短く印象的な旋律が押し込まれる。わずかなフレーズの繰り返しやアルペジオによって、ゆるくスウィングするようにリズムが形成される。心地よいことこの上ない。USのインディ・ポップの伝統を高度に消化しているにも関わらず、なんとなく、これは音楽ではないんじゃないか、音楽ではなくて効果なのじゃないかと思えてくる。

 本作は、2009年〈オールド・イングリッシュ・スペリング・ビー〉からリリースされ、バンドの評価をいっきに高めた『ランドスケープス』に続くアルバムで、〈ウッディスト〉からは最初となる通算3枚目。非常に肌細かいリズム感覚を備えている。ペイヴメントからディアハンターまで、優れたローファイ・バンドがタイトなリズム感を有しているというのは筆者の持論であるが、ここでも大別すれば3種類のトラックがバランスよく乗り入れてアルバム全体に大きなうねりを与えている。アンダンテ、モデラート、ブロークン、と名付けよう。アンダンテはその名の通り、歩く速さのトラックだ。"ハミルトン・ロード"や"ドント・メイク・プランズ"、"キリン・ザ・ヴァイブ"など、CSNYやバッファロー・スプリングフィールドをフィルム栽培したような、ひょろついた足取りながらしみじみと唄を聴かせる数曲。モデラートはそれよりやや速く、切ないエモーションを垣間見せるトラック。"スプリンター"や"サンセット・ライナー"、"リトル・ウィンドウ"などがこれにあたり、作品に動きを与えている。今作でくっきりとしてきた方向性ではないだろうか。そしてブロークンは、それらの曲のつなぎ目に破れやほころびを生じさせるアンビエント寄りのトラック。リズムはあるが跳ねたり躍動したりはしない。ところどころに口を開けた穴のように配置されていて、"ザ・レイザーズ・エッジ"の定まらないピッチや"ポーチ・プロジェクター"のフィールド・レコーディングに重ねられた即興を聴くともなく聴いていると、足裏デトックスのように身体からどろどろとした毒素が流れ出してくるかに感じられる。

 インディ・シーンにおいて大きな信頼と支持を得ているアーティストのうち、少なからぬものが音楽の意味性にではなく機能性にフォーカスしているように見えるのは興味深いことである。〈ウッディスト〉周辺は、おおむねそうだ。チルウェイヴ/グローファイ批判なども、じつはその逃避的傾向以上に、音楽が気持ちよさや心地よさに支配されてしまってよいのだろうかという年長世代からの危惧が反映されているのではないか。個人的にはそれもよく理解できる。早晩このグローファイ・バブルも弾けるだろう。しかし、その後に意味性への揺り戻しが来るのかといえばそれも安直な想像である。〈ウッディスト〉たちが未来に何を残すのかしかと見届けたい。

KURANAKA 1945 (ZETTAI-MU) - ele-king

ROOTS and DUB CHART 2010


1
Twilight Circus ft. Gregory Isaacs - Touch Not - M Records

2
Twilight Circus ft. Sugar Minott - Take It Slow - M Records

3
Creation Steppers - King Nebuchadnezzar - Jah Tubbys

4
Shanti-Ites with Emanuel Joseph - Psalms From The Heart - Falasha UK

5
The Disciples - Return To Addis Ababa ft. Dixie Peach - Disciples Vintage

6
Iration Steppas - Dub Arena - Dub (Soon Come)

7
King Alpha feat Turbulence - For Life - King Alpha

8
Zion Train - Rainbow Children - Dub (Soon Come)

9
Masamatix ft. icchie - Vitamine P - Dub

10
Vibronics feat. Cha Cha - Dub (Soon Come)

DIGITAL SOUNDBOY CHART 2010


1
Benga - Ghetto Story - Dub

2
Don Carlos - Favourite Cup (Juju & DJG Remix)- Narco.Hz

3
Tes La Roc - We Nah Run - Dub

4
RSD - Dance Hall Rock - Zettai-Mu (Mar. 2011 On Store !! )

5
Andreya Tariana - A Town Called Obsolete (Mala Remix) - Ninja Tune

6
DJ Trax - Opening Shot feat KJ Sawka (Fanu Remix) - Dub

7
Uncle Sam - Thoughts (Japan Remix) - Dub

8
DJG - Spacecakes - Wheel & Deal

9
Donaeo - Riot Music - Digital Sound Boy

10
Last Jungle - Sub Focus - Pilse Recording

Daniel Steinberg - ele-king

 エレクトロクラッシュにノれなかった......と松村正人はいう。そのような極度のマイナー体質のせいで、結局は『スタジオボイス』が休刊になったという言葉を僕が呑み込んだり、呑み込まなかったりしていると、何かを説明し終えたような表情で松村正人は実験音楽の話をはじめる。あいつは実験音楽の話をしていれば機嫌がいいのである。そして、メルツバウを意識してベースを弾きはじめる。僕にはなぜかそれがヒルビリー・バップスに聴こえてしまう。あはは。
 かくゆう、僕がフロア・ミュージックから離れたのはプログレッシヴ・ハウス・リヴァイヴァルが原因だった。エレクトロクラッシュはまだしもレイヴ・カルチャーを通過した80年代のリモデルだったところがあるのに対し、ボーダー・コミュニティだとかなんだかはまったく同じことの繰り返しにしか思えなかった。あれをもう一度、頭からリピートするのかなと考えただけで、面倒くさくなってしまったのである。ゴールド・パンダが昨2010年のベスト・アルバムにルーク・アボットを挙げていたりすると、別に無駄な動きだったわけではなく、次につながるものだったのかなとは思ったりもするけれど、まー、大して好きな曲がかからないダンス・フロアにわざわざ足を向けようという意欲が低下しはじめていたことも少なからずではあった。
 そのうち気がつくと僕はヒップホップとドローンばかり聴くようになっていた。前者はともかく、イエロー・スワンズやマイ・キャット・イズ・アン・エイリアンが描き出すイメージは明確なビートを伴わないだけで、テクノやハウスが発揮していた機能とそれほど違うことをやっているとは思えなかった。DJにそれらを混ぜても反応する人もいなかったわけではないし、一時期まではDJカルチャーの範囲でそれらを扱うことは可能だとも考えていた。いまとなってはそのように考えていた自分を甘かったと反省するしかないけれど。

 ドローン系のミュージシャンに話を聴いてみると、彼らが一応にクラブ・カルチャーを否定しているという事実に行き当たる。マイ・キャット・イズ・アン・エイリアンがジャッキー・オー・マザーファカーのトム・グリーンウッドと組んでブラック・マジック・ディスコを名乗ったのはクラブでしか演奏させてもらえないことに対する皮肉だったというし、バーニング・スター・コアが出版名にドローンディスコと付けているのも単なる悪い冗談に違いない。その当時はほとんど聴かなくなっていたとはいえ、レイヴ・カルチャーと過ごした日々がそうあっさりと記憶から消え去るわけでもないので、ダブル・スタンダードというのか、多重人格的というのか、とにかく気持ち的にはややこしいことになっていく。KTLのライヴにある種のグルーヴを感じたりすることで、そのややこしさはさらに複雑なものになっていく。
 ドローンが変化しはじめたのはやはりグローイングからだろう。06年にリリースされた『カラーウィール』で、彼らはリズムへの興味を示しはじめる。いわゆるドゥーム・メタルを原型としていた彼らが試行錯誤の鬼と化した結果、フィールド・レコーディングをカット・アップ的に差し挟んだりして「ドゥーム・メタルのファンに嫌われるようなことがやりたかった」という感覚が全体の意志を反映し、それを先取りしたのかどうかはわからないけれど、ダブル・レオパーズやローブドアーが同じことをやり続けるのはいささか難しい状況を召喚し、マウサスやイエロー・スワンズが解散するという符号まで呼び寄せている。あのときから5年。ドローンの普及に一役買ったといえる〈ノット・ノット・ファン〉が今年に入って、傘下にダンス・レーベルをスタートさせた。〈100%シルク〉と名付けられた12インチ・シリーズは、イタロ-ディスコを意識したようなイケてないデザインで、それこそドローンディスコを体現しようとするような奇妙なグルーヴを弾き出す。セックス・ワーカーの変名であるアイタルはいささか既存のダンス・レコードに擦り寄り過ぎた印象もあるけれど、トロントのダブ・バンド、ザ・ディープによる「マディ・トラックス」は明らかにサン・アローやLAヴァンパイアーズの次に来るものを予感させる。この動きは〈100%シルク〉にとどまらず、もっと大きなものになっていくだろう。すでにハニー・オーウェンズが華麗なる転身を果たしているように。

 ......と、こんなことを書いていたらたまにはプロパーによるダンス・アルバムを聴いてみたくなり、今年の初めに来日していたらしいダニエル・スタインバーグのソロ1作目に手が伸びた。スウィング・ミニマルと称されるエレクトロ・ハウスの洒脱な才能が躍る『シャラップ』は能天気になりまくったジェフ・ミルズのようで、ヴィラロボスやリッチー・ホーティンが回しまくっているという情報にも頷ける仕上がり。その昔、ハリー・AXTの名義で珍作を連発していたプロデューサーです。なるほど、これは腰が軽い。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798 799 800 801 802 803 804 805 806 807 808 809 810 811 812 813 814 815 816 817 818 819 820 821 822 823 824 825 826 827 828 829 830 831 832 833 834 835 836 837 838 839 840 841 842 843 844 845 846 847 848 849 850 851 852 853 854 855 856 857 858 859 860 861 862 863 864 865 866 867 868 869 870 871 872 873 874 875 876 877 878 879 880 881 882 883 884 885 886 887 888 889 890 891 892 893 894 895 896 897 898 899 900 901 902 903 904 905 906 907 908 909 910 911 912 913 914 915 916 917 918 919 920 921 922 923 924 925 926 927 928 929 930 931 932 933 934 935 936 937 938 939 940 941 942 943 944 945 946 947 948 949 950 951 952 953 954 955 956 957 958 959 960 961 962 963 964 965 966 967 968 969 970 971 972