「Nothing」と一致するもの

The Mount Fuji Doomjazz Corporation - ele-king

 オランダからドゥーム・ジャズを名乗る8人構成のサード・アルバム。母体であるキリマンジャロ・ダーク・ジャズ・アンサンブルにゲストを加えたラインナップで、いまのところ交互に各3枚づつのアルバムをリリースしている。「擬人化」と題されたライヴ・インプロヴィゼイションはアド・ノイジアムからの前2作とは違い、人類の進化をイメージした1時間程度の組曲。
 ジョン・コルトレーン『アセンジョン』やレッド・クレイオラから発展し(様式化し?)、無調であることに歯止めが利かなくなったフリー・ジャズはすべての楽器が溶け合ってしまうニーモニスツ式のドローン状態がいわば終着地点になったと勝手に思っているのだけれど、ここでドゥーム・ジャズと宣言されているものはドゥーム・メタルよろしくディジェリドゥーの演奏を模したヴァリエイションと考えられ、楽器もそこまでドロドロに混ざり合うことはなく、トロンボーンやチェロ、あるいはエレクトロニクスやギターがそれぞれにロング・ドローンを演奏し、それらが明快なアンサンブルとして構成されている。簡単にいえばゴッドスピード・ユー~のジャズ・ヴァージョンで、時代が変化したせいか、あれほど重い演奏ではなく、90年代から続くドイツのストーナー・ロック(ボーレン・ウント・デル・クラブ・オブ・ゴアなど)から派生した流れだと解すればいいのだろう(ジャズには詳しくないので、ジャズ評論家による言及を探してみたものの、ネット上では発見できず。おそらくジャズ・ファンには相手にされていない......?)。
 勇壮としたイントロダクション(ちょっとクラウス・シュルツェ? それが人類誕生のイメージか)。"ディメンジョン"と題されたパートでは「進化」が起こっているようで、なんとなくアシッドな感じがよく、トロンボーン(?)の咆哮がそれに加えて緊張感を与える。"フォーム"でヴァイオリンがしみじみとする辺りは一種の停滞感を表現しているのか、全体的にはダーク・アンビエントといえる範囲。ドゥームには興味があるけれど、メタルはちょっと......という方にはちょうどいい感じでしょう(切れてなければ、まだダウンロードできるかも→https://www.mediafire.com/?bb3b23iru2424us)。

 ゴッドスピード・ユー~からティム・ヘッカーまでドゥーム・カルチャーの総本山と化したモントリオールからは新たに〈コンステレイション〉がサックス奏者のセカンド・アルバムを送り出した。これが一筋縄ではいかない。ドゥームかと思えばミニマルなベースのループにサックスやパーカッションでアクセントを与え、踊れるドゥーム・ジャズのような展開がいくつかと、いわばゴッドスピード・ユー~の呪縛を解いた上で、バロックじみたサキソフォンだけの多重録音(?)はロル・コクスヒルを早回しで聴いているようなチープ・スリル。タイトル曲や"ア・ドリーム・オブ・ウォーター"ではスポークン・ワーズにローリー・アンダースンがフィーチャーされ、ムダに知的な感じがする一方、感覚的に飛ばしてるだけといった曲も多く、戦前のブルース・シンガー、ブラインド・ウイリー・ジョンスンのカヴァー"ロード・アイ・ジャスト・キャント・キープ・フロム・クライング・サムタイムス"はかなり斬新なブルースのドゥーム解釈。なるほどそっちと結び付ける手があったかと。後半に向かってベースが蠢き出す曲が増えたりと、手法的にはまったく統一感がないはずなのに、全体としては奇妙な眼鏡で世界を覗き見たようなスチーム・パンク的な快感を持ったアルバムといえる(それもまだ未完成の魅力にあふれた)。
 ちなみに前作『ニュー・ヒストリー・ウォフェア Vol. 1』からのリミックス・シングルはティム・ヘッカーが手掛けている。

interview with Scuba - ele-king


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ホットフラッシュ・レコーディングス・プレゼンツ......バック・アンド・フォース

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 DIY主義で成り立っているダブステップ・シーンにはいくつもの魅力的なレーベルがあるが、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉は人気レーベルのひとつであり、また、このジャンルにおいて重要なレーベルのひとつでもある。そして、〈ハイパーダブ〉がブリアルを輩出したレーベルとして知られるように、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉は昨年、マウント・キンビーのデビュー・アルバム『クルックス&ラヴァーズ』をリリースしているレーベルとしても知られるようになった。ブリアルとマウント・キンビーといえばジェームス・ブレイクが影響を受けた2トップとも言える存在だが、興味深いのは、〈ハイパーダブ〉を主宰するコード9がレゲエのサウンドシステム文化からの影響を受けているのに対して、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉を運営するスキューバは20年前からテクノに親しんでいたばかりか、いまではベルリンで暮らし、高名な〈ベルグハイン〉でレギュラー・パーティをオーガナイズしている。
 こうした背景は、スキューバの音楽性ないしはレーベルの方向性にも表れている。〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉には独自の色があり、以下もちろん 褒め言葉として言うが、クロイドンのヤンキーっぽさとも〈ナイト・スラッグス〉のちゃらさとも別種の、やはりテクノ/ハウス臭の強さによってレーベルの色 は構成されている。
〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉にとって最初のコンピレーション・アルバムとなる『バック・アンド・フォース』のリリースを祝して、レーベルの主宰者であり、もうひとつのダブステップをうなが してきたスキューバを名乗る男、ポール・ローズに話を訊いた。

ダブステップは音が独特だったんだ。他に比べられるものがないくらいユニークだった。FWDはすごく小さなハコなのに、バカでかいサウンドシステムを入れてて、ああいう音を聴くにはすごく良かったというのもあったかな。あとは単純に多くの人があまり好きじゃなかったか、まだ聴いたこともなかったという点も魅力的だったね。

まずは現在の日本の震災、福島原発について知っていると思いますが、あなたのコメントをもらえますか?

スキューバ:すべてが非現実のように思えるほど、テレビなどで見た映像は悲惨で、心を痛めるものだった。みんなと一緒で、一刻でも早く、復興が実現することを心から願っているよ。日本では素晴らしい経験をいままでさせてもらってるから、みんなの生活が元に戻ることを祈ってる。

今回、初めてレーベルのコンピレーションをリリースしますね。ようやくそのタイミングが来たという感じですか?

スキューバ:そうだね、ここ最近多くの才能がレーベルに関わってくれるようになって、それをいちどまとめて世間にショーケースしたかったのがまずあった。はじめたときとは趣向が少し違うけど、そのときといまの音もひとつの作品にするのも面白いと思ったし、これからレーベルを通して出てくるアーティストも見せたかった。みんな素晴らしい人ばかりだから、すぐコンパイルできたよ。

〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉らしい、多様性のある内容になったと思います。だいたいあなたのレコードは、日本ではテクノ系のDJも好んでいるんですよ。

スキューバ:ははは、そうなんだ(笑)。でも納得できる状況だね。たしかにダブステップからはじまった感はあるけど、いまはとくに何のジャンルにこだわっているとかはないし、どちらかと言うとテクノ系のDJの方ほうが回しやすいのかもね。

初めての取材なので、あなたの個人史についてまずは教えてください。ネットで調べたのですが、あなたは幼少期からピアノを習い音楽に親しんできた。学生時代にコリン・フェイヴァーとコリン・デイルをきっかけにダンス・ミュージックの世界の足を踏み入れて、ジャングル、そして〈ワープ〉のようなテクノに熱中した。とくにオウテカの最初の2枚のアルバムが好きだった。当たってますか? 何か付け足すことは?

スキューバ:その通りだね。90年代なかばはコリン・フィヴァーとコリン・デイルがやっていたラジオ番組をよく聴いていてよ。当時はまだちゃんとしたラジオ番組がいっぱいあったからね。彼らの番組はけっこう幅広いエレクトロニック・ミュージックをかけてて、14~5歳の僕にとってはすごく新鮮だったね。ロンドンではクラブに若くて入れたりして、僕もその直後くらいから行きはじめたりしたんだ。海賊ラジオも聴いたりしてて、そこではジャングルが一時期すごく流行ったり、その後にガレージが来たりしたんだけど、それもチェックしてたね。ダブステップとの出会いはガレージからの流れだったと思うんだけど、いまでも続いてるフォワード(FWD)という月1回のイヴェントがあって、3年ほど何も面白い出来事がなかったような時期の2001年にはじまって、そこでいろんな面白い連中が集まっててね。いまも最前線にいるスクリーム、ベンガやマーラとかみんなそこを通っていったよ。

卒業後、あなたは6年間の会社勤めを経験したが、それがアホらしくなってドロップアウト、そして2003年、スペクター(Spectr)の名義で、最初の12インチ・シングルをリリースするために、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉を設立する......。

スキューバ:2001年に学業を終えて、仕事に就いたけど、実は2007年くらいまでは辞めなかった(笑)。だからレーベルやりながら働いてたよ、普通に。

なぜ〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉という名前をつけたんですか?

スキューバ:一時期ブリストルで勉強をしていて、そこでやってたクラブ・イヴェントから名前を取ってるんだ。とくに深い意味はないんだけどね(笑)。

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いままで自分が影響を受けてきたエレクトロニック・ミュージックはアルバム形式のものが多いんだ。初期のオウテカの2枚、オービタルのセカンド・アルバム、エイフェックス・ツインとかもね。最初から最後まで楽しんで聴けるものを作りたかったし、当時はいろんな人を驚かせたと思う。


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自分で音楽を作りはじめたのはいつからですか? 

スキューバ:10代の頃には少し遊びで曲を作ったりしてたけど、大学の頃はずっとDJばっかりだったね。でも学校を卒業してから作りはじめたんだ。2001年に卒業して、2003年に作品を出してるから、2~3年かけて作曲を身に付けていったって感じかな。そんな簡単に出来るものじゃないし、どのプロデューサーもそんなすぐ納得して出せるものもないと思うしね(笑)。

6年も会社勤めをしていながらそれを辞めて、レーベルをはじめるって、けっこう勇気がいったと思うんですよね。

スキューバ:最初はレーベルやりながら働いてたし、辞めたときには逆にほっとしたというか、やっとこれに集中できるって感じだったかな(笑)。

当時のあなたはダブステップのシーンとはどういう関係だったのでしょうか?

スキューバ:レーベルは2003年にはじめて、その当時はリンスFMでも番組をやってて、けっこうどっぷり関わってた感じかな。でもみんな最初はファンとして入っていったんだ。僕らもそうで、ゼド・ビアスとかジンクがレジデントをやっていて、彼らはガレージの延長線のようなものを流してて、それが好きで集まってたんだけど、気付いたら自分たちもダブステップという音楽を作ってて、出してて。本当に気付いたらそうなってた、という感じだったよ。

あなたが知っている初期のダブステップのシーンの良さについて話してもらえますか?

スキューバ:音が独特だったんだ。他に比べられるものがないくらいユニークだった。FWDがやってた場所はすごく小さなハコなのに、バカでかいサウンドシステムを入れてて、ああいう音を聴くにはすごく良かったというのもあったかな。あとは単純に多くの人があまり好きじゃなかったか、まだ聴いたこともなかったという点も魅力的だったね(笑)。

レーベルが本格的にスタートしたのは2004年ですが、ディスタンスやボックスカッターのような人たちとはどのように出会ったのですか? クラブで知り合って、テープをもらったっていう感じですか?

スキューバ:ディスタンスとかはFWDで出会った仲間だったね。最初の頃から友だちだったという感じ。ボックスカッターはレーベルでは10個目のリリースとかだったと思うけど、その時点ではもうデモとかも送ってもらえてる状況になって、彼はそのなかから出会えたアーティストだね。デモはほとんどの場合ダメなものばっかりだけど、根気強くいろいろ聴いてると、たまにすごい才能に出会えるんだ。ボックスカッターは外部から送られてきた音源で初めて契約に至ったアーティストじゃないかな。

2008年にあなたはスキューバとしての最初のアルバム『ア・ミューチュアル・アンティパシー』をリリースしますね。素晴らしいアルバムだと思いますが、あなたの音楽はこのとき、すでにダブステップのクリシェから離れています。ダブやテクノ、アンビエント、エレクトロニカなど、よりオープンなエレクトロニック・ミュージックを展開しいています。あなたのこうした展開の背後には何があったんでしょうか?

スキューバ:アルバムというロングプレイヤー(LP)を作るとなると、ある意味自由度が増すと思うんだ。だからアルバムを作ると決めたときはダンス・トラックを単に集めたものとかにしたくなかった。さっきも言ってたけど、いままで自分が影響を受けてきたエレクトロニック・ミュージックはアルバム形式のものが多いんだ。初期のオウテカの2枚、オービタルのセカンド・アルバム、エイフェックス・ツインとかもね。最初から最後まで楽しんで聴けるものを作りたかったし、当時はいろんな人を驚かせたと思う。当然ダブステップだけじゃないし、テンポはそれに近くても、いろんな音を表現できたと思う。

ダブステップのシーンに対するあなたの気持ちに変化があったのでしょうか? それはあなたがロンドンを離れた理由とも関係があるのでしょうか?

スキューバ:ダブステップ云々でもなかったし、ベルリンに行ったこともあまり関係無かったんだ。というのも、あのアルバムを書いているあいだにちょうど引っ越して、しばらくは部屋にこもって作曲をしていたから、あまり街から影響を受けることもなかった。気持ちに良い変化はあったから、より集中できたというのはあるかもしれないけど。

ベルリンに移住して良かったことは何ですか?

スキューバ:そうだね、まぁ音楽的にはいろいろあるし、いろんなミュージシャンがいるから、刺激はたくさん受けるね。その上ロンドンよりリラックスしているし、ドイツの首都って感じもしないし、その和やかな空気がいいね。個人的にはあまりどこかのシーンに属するってことはないけど、たくさんの人に出会えて、つねにフレッシュな気分でいれるんだ。ロンドンでは少し飽和状態になってたというか、疲れてきた感じだったから、変化を求めて、ここに来たんだけど、まさに良い意味での変化になってるよ。

昨年リリースした『トライアンギュレーション』はさらにディープな作品になりましたが、やはりベルリンの音楽シーンからの影響が大きいのでしょうか?

スキューバ:もともと自分はいろんなスタイルの音楽に興味があるんだ。だからそれを分けて表現するのもおかしな話だし、よく名前を変えてやる人もいるけど(自分もそうしたりしてるけど、もうバレてるしね(笑))、僕はそれをひとりのアーティストとしてやりたい。1枚目から2枚目、その後もいろんなスタイルの音を追求してきたし、いろんな方向にいっていると思う。ベルリンのシーンから具体的影響を受けたとかは感じてないね。

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もともとこのレーベルはひとつのジャンルにこだわりたいという意志は最初からなかったし、いまでもない。面白いと思ったエレクトロニック・ミュージックは何でも出していきたいんだ。あと、いまの時代はそのように幅広く、好き勝手にやっても受け入れてくれる時代だと思うんだ。


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さて、コンピレーション・アルバム『バック&フォース』の話に戻したいと思います。個性的なアーティストのいろんなタイプの曲があって、過去と未来を繋げたいという気概を感じたのですが、あなた自身はどのようなコンセプトで選曲したのですか?

スキューバ:みんな仲間なんだ。このレーベルに関わってくれた人、これから関わるような人を収録したって感じだね。リリースがあった人、ある人はもちろん、自分が一緒に仕事をした人、関わった人で素晴らしい才能を持った人を選んだつもりだよ。

レーベルには若い才能が集まっていますが、まずはマウント・キンビーとの出会いについて教えてください。

スキューバ:彼らもデモを送ってきて、そこから関係がはじまったアーティストなんだ。メンバーの片方のドムがとても不思議でオブスキュアな音源を送ってきてね(笑)。2分間の沈黙の後にスネアが1回鳴るような音とか。すごく興味を惹かれていったのを覚えているよ。そしていまの編成になってから、より自分たちの音を確立させたような感じだし、最初のEPはアンビエントな作品だったけど、すごく反応が良くて。あと彼らはバンド形式でライヴをやるから、それも助かってるんじゃないかな。努力して世界中でツアーをしているしね。

ジョイ・オービソンのどこをあなたは評価しますか? ジョージ・フィッツジェラルドなんかも似たタイプというか、よりハウス・ミュージックに近い感覚があるように思うのですが。

スキューバ:彼は天性のメロディの持ち主だよ。初期はダブステップ的なことをやっていたかもしれないけど、いまは言う通り、ハウスに近いことをやっているからね。でもそれはすごく努力が必要なことだったと思う。だって、一番か二番を争うようなヒットを出しておいて、そこに背を向けて自分の信じたことをやるってことだからね。その辺も立派だと思う。

あなた自身のなかで、ハウスやテクノのDJで好きなのは誰ですか?

スキューバ:ちょっとベタだけど、マルセル・デッドマン、ベン・クロック、ステッフィとかカシアスとか好きだね。ステッフィの新作はすごく良かったよ。あとはサージョンとかすごく好きだね。彼のライヴ・セットは最近見たけど最高だったよ。

ロスカやアントールド、フェルティDLやディーブリッジなど、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉以外の、他のレーベルや自分のレーベルから作品を出しているキーパーソンの曲を選びましたね。ここにはどんな意図があったんでしょうか?

スキューバ:みんな友人だからさ。ロスカは昔から付き合いがあるし、ディーブリッジもフェルティ・DLもすごく面白いことやってると思うし、仲が良いし。レーベルで具体的にリリースが少なくても、いろいろと一緒にやってる人も多いしね。いろんなスタイルのアーティストがいるこの輪を見せたかったという気持ちもあったかな。

セパルキュア(マシン・ドラム)のようなアブストラクト・ヒップホップ系のベテランの、他のジャンルのシーンにいた人がいるのも面白いですね。

スキューバ:そうだね。彼らはいまレーベルにとって大事な存在だし、いまアルバムを制作中なんだ。9月頃に出したいと思ってるね。もともとこのレーベルはひとつのジャンルにこだわりたいという意志は最初からなかったし、いまでもない。面白いと思ったエレクトロニック・ミュージックは何でも出していきたいんだ。あと、いまの時代はそのように幅広く、好き勝手にやっても受け入れてくれる時代だと思うんだ。レーベル買いをしてくれる人もいるし、そのような人にも違ったスタイルを提供しないと面白くないしね。でもその幅広い中にもこのレーベルらしいカラーみたいなのはしっかりとあると思うんだ。

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個人的にいまはまったく興味がないだけなんだ(笑)。数年前は本当につまらなかったけど、ここ1年くらいはダブステップの周辺に面白い派生音楽があると思うし、そこはちょっと気にしてるけど、いまのダブステップを聴いてって言われたら、嫌だね。


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さて、あなたはいま、ダブステップというジャンルはどんな位置にいると思いますか? ダブステップはすでに終わって、いまはポスト・ダブステップにあると捉える人もいるし、まだまだシーンは元気だという人もいるし、いろんな解釈があると思いますが。

スキューバ:んー、まぁ終わってないことはたしかだね。この前マイアミに行ってたんだけど、ガンガンかかってたよ(笑)。でもたしかに変わったし、ここ数年の変化を客観的に見るのは面白かったけどね。そしてその変化はジャンルとして成功してきた結果の変化だと思う。それには問題はないんだけど、ただ個人的にいまはまったく興味がないだけなんだ(笑)。数年前は本当につまらなかったけど、ここ1年くらいはダブステップの周辺に面白い派生音楽があると思うし、そこはちょっと気にしてるけど、いまのダブステップを聴いてって言われたら、嫌だね。

欧米においてこのシーンはここ2~3年で加速的に拡大しましたね。最後にあなたがシーンの拡大を実感したときのことを教えてください。

スキューバ:んー、何かきっかけがあったという風には感じてないけど、徐々にそう感じるようになったかな。もともと自分もダブステップ専門とかじゃないし、レーベルも偶然ダブステップ的なレーベルに見られるようになっただけなんだよね。

ありがとうございました。日本でお会いできるのを楽しみにしています。

スキューバ:ありがとう。僕も早く日本に戻りたいと思ってるよ!

 最後に、『バック・アンド・フォース』に曲を提供している主なプロデューサーの名前を記しておこう。取材でも触れているように、ダブステップ、ファンキー、ミニマル、ハウスなど、実に多様性のある内容だが、ひと言で言えば、現在のベース・ミュージックにおけるテクノ系の総本山としての〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉の特徴の出ている好コンピレーションになっている。

■Boxcutter
Boxcutter / Oneric Planet Mu

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 2006年にデビュー・アルバム『Oneiric 』を〈プラネット・ミュー〉から発表したこのアイルランド人は、グライムとダブステップを盗みながら、ユニークなエレクトロニック・ミュージックを展開している。IDMの側からのダブステップへのもっとも初期のアンサーとも言える。

■dBridge
dBridge / Fabriclive 50 Fabric

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 ディーブリッジはインストラ:メンタルと同様にドラムンベースのシーンから来ている人気プロデューサー。

■Scuba
Scuba / Triangulation Hotflush Recordings

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 〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉を主宰するポール・ローズによるプロジェクト。2008年の『A Mutual Antipathy 』と2010年の『Triangulation』は日本でも人気盤となっている。

■FaltyDL
Falty DL / You Stand Uncertain Planet Mu

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 ニューヨーク在住のドリュー・ラストマンは、2009年に素晴らしいデビュー・アルバム『Love Is A Liability 』を発表。2011年にリリースしたUKガラージ調のシングル「Hip Love」では、ザ・XXのジェイミー・XXがリミックスを手掛けている。セカンド・アルバムも文句なく良い。

■George Fitzgerald
George Fitzgerald / Don't You Hotflush Recordings

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 2011年に〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉から最初のシングルをリリースしたばかりのロンドン在住の新人。ジョイ・オービソンのようにハウスの4/4のキックドラムを使い、ソウルフルなフューチャー・ガラージでダンスフロアを熱狂に導くであろう注目株。

■Roska
Roska / Rinse Presents Roska 12 Number One Rinse FM

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 UKファンキー(UKガラージにおけるアフロビートないしはソカのハウス的な混合)を代表するDJ/プロデューサー。


■Mount Kimbie
Mount Kimbie / Crooks & Lovers Hotflush Recordings

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 2010年〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉からデビュー・アルバム『クルックス&ラヴァース』を発表したドミニク・メイカーとケイ・カンポスのふたりによるマウント・キンビーは、IDMスタイルを取り入れ、音楽的にこのジャンルをさらに洗練させている。幅広い層から支持され、いまや〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉を代表する存在にまでなった。

■Joy Orbison
Joy O - Wade In / JelsHotflush Recordings

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 2009年に〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉からリリースされたデビュー・シングル「Hyph Mngo/Wet Look」によって瞬く間にシーン最大の注目株となった。ジェイディラをはじめ、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインからGGアレンまで愛する若き才人は、ダブステップのクリシェにとらわれず、自由な発想でダンス・トラックを作っている。

■Untold
Untold / AnacondaGet Physical

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 〈ヘムロック・レコーディングス〉レーベルを主宰するジャック・ダニングによるアントールドはイノヴェイターのひとり。2011年はいよいよアルバムのリリースが控えているとの噂もあり、それは幅広く注目されることになるだろう。

■TRG & Dub U
Cosmin TRG / A Universal CrushRush Hour

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 最近ファースト・アルバム『A Universal Crush 』を〈ラッシュ・アワー〉から発表したばかりのTRGは、ディープ・ハウスからゲットーテックまで幅広くこなす。収録曲は2562によるリミックス・ヴァージョン。

Pantha du Prince - ele-king

 アニマル・コレクティヴ(ブルックリンのアート・ロック)とフォー・テット(ロンドンのIDM)が1枚のレコードのなかで並んでいると言っても驚きはしないだろうけれど、そこにモーリッツ・フォン・オズワルド(ベルリンのミニマル)も加わっていると言ったらどうだろう。パンタ・デュ・プランスを名乗るドイツ人、ヘンドリク・ウェーバーは、それを可能とする唯一といっていいほどのプロデューサーである。彼のロマン主義まるだしのアルバム『ブラック・ノイズ』が、ディスクユニオンのインディ・ロックの棚からクラブ系の12インチを扱うテクノのコーナーまで横断できたのは、パンダ・ベアが1曲歌っていながら(そしてLCDサウンドシステムやチック・チック・チックのメンバーも参加しながら)、あるいはドゥルッティ・コラムをサンプリングしながら、彼のスタイルがミニマル・テクノの発展型だったからだろうけれど、そうしたクレジットやジャンル分け以上にアルバムの音楽がユニークだったからである。地滑りで壊滅してしまったアルプスの小さな村をテーマにしたというそれは、なおさら現在の我々には重たいものがあるが、美しかった風景をなんとしてでも書き留めておきたいという抑えがたい欲望は、アルプスでのフィールド・レコーディングまでやったという彼の並々ならぬ情熱にも表れているように、作品のなかに圧倒的な思いを吹き込んでいる。『イレヴン・ヴァージョンズ・オブ・ブラック・ノイズ』は、昨年各方面で好評を得たそのアルバム『ブラック・ノイズ』のリミックス盤というわけだ。

 リミキサーは先述したモーリッツ・フォン・オズワルド、フォー・テット、アニマル・コレクティヴのほか、〈ゴーストリー・インターナショナル〉のザ・サイト・ビロー、そして〈コンパクト〉レーベルやその傘下〈ダイアル〉レーベル関係のプロデューサー(DJコーツェのところから作品を出しているディ・ヴォーゲル、東京の〈ミュール〉レーベルから作品を出しているローレンスなどなど)が参加している。要するに、ブルックリンのアート・ロック系と親和性の高いドイツのミニマリストたちが多数占めている。オリジナルにあったロマン主義的な迫力は良くも悪くも薄まって(ロマン的なものにありがちな鬱陶しさはなくなり)、田園主義の生活にほどよくポップ・アートが入ってきたというか、ミニマル・テクノのさばさばした感覚がパンタ・デュ・プランスの濃厚な美意識を中和している。

 というわけで全体的に押しつけがましさのない、やわらかいアルバムだが、白眉をいくつか挙げるとしたら、まずはモーリッツ・フォン・オズワルドのヴァージョンだ。トリオでやっているとっつきづらい即興とは別の、彼のドイツ的な装飾性を削除した機能的なダブの美学が素晴らしい。フォー・テットはパンダ・ベアが歌っていた"スティック・トゥ・マイ・サイド"をエロティックなミニマルに変換している。アニマル・コレクティヴは、オリジナル盤においてもっとも美しい曲のひとつ"ヴェルト・アン・ドラト"を、彼らのサイケデリック・ポップのレパートリーに加えているようだ。3人のビッグネームはそれぞれ期待に応えていると言えるだろう。牧歌性を打ち出すディ・ヴォーゲルやシカゴ・ハウスのワイルドな質感を注ぎ込むハイエログリフィック・ビーイングも印象的で、〈コンパクト〉が送るアンビエントの使者、ウォールズによるドリーミーな展開はクローザー・トラックとして申し分ないばかりか、〈コンパクト〉のミニマリズムとアニマル・コレクティヴのピーターパン・サイケデリックとの見事な結合の瞬間というか......言うなればこの10年、欧米のインディ・ミュージック・シーンがひたすら追求している終わりなき非日常を象徴するような締めである。

Thurston Moore - ele-king

 突然休刊宣言して世間を賑わせた田中宗一郎は、編集部でよくギターを弾いていたものだが、何を隠そう僕もたまに家でギターを弾く。下手の横好きに過ぎないので、こんな風に書くのも我ながらこっぱずかしのだけれど、早い話、ギターの音が好きなのだ。どんなギタリストが好きかと問われれば、フィンガー・ピッキングかスティール・ギターが上手い人だと言う。これは、自分には到底できないからで、つまり憧れとも言える。カントリー・ブルースが典型的だが、たった1本のギターを最大限に弾きこなしながら、ことこまかな感情表現までしてしまうところがすごいし、まあ何よりもそのプレイは曲芸師のような側面もあるし、見ているだけでもたまらない。要するに、最近あらためて人気がありそうなケヴィン・シールズのようなタイプのギタリストとは真逆のタイプである......というか、まあ、シールズみたいなセンス一発のギターとはまったく別の発想の演奏である。
 ジャック・ローズといえば、そのソロ・ワークにおいてはジョン・フェイヒィの後継者とも謳われた人物で、2年前に心臓発作で亡くなっている。まさにフェイヒィ流のフィンガー・ピッキング演奏を継承しながら、いわゆるアメリカーナ(アメリカのルーツ・ミュージック)という口当たりの良い括りを破壊するような彼の諸作――2003年の『オピウム・ミュージック(アヘン音楽)』や翌年の『ラーガ・マニフェスト』などなど――はゼロ年代のディケイドにおいて大きなインパクトを残している。ブルースやカントリーのギター奏法の発展型における複雑さ、ないしは逸脱していく感覚もさることながら、こうしたの音楽の、流浪のなかの憂鬱さというのに胸を打たれる。ホント、やるせねーなーというわけだ。

 カリフォルニアのレーベル〈VDSQ〉は2009年からギタリストのアコースティック・ギター演奏によるソロ作品をリリースし続けている。アコギのソロ演奏が好きな人には興味深いシリーズで、アートワークも品が良く、コレクター心もくすぐられるだろう。ちなみに第二弾がエメラルズのマーク・マッガイアで、第四弾が三田格が例によってやたら情報量を詰め込んだレヴューのなかで紹介していたファブリックのギタリスト、マシュー・マリンの作品、そして第五弾がサーストン・ムーアとなっている。ムーアの作品はサブ・タイトルにもあるようにジャック・ローズに捧げられている。
 ムーアは12弦のアコースティック・ギターを演奏しているが、当たり前の話、ソニック・ユースのファンが納得するであろう、ムーアらしい演奏だ。僕がこのアルバムを聴いてみようと思った理由は、『SNOOZER』のレヴューで書いたように、ベックがプロデュースしたサーストン・ムーアの最新ソロ・アルバム(アコギによる弾き語り)が良いと思ったからである。ムーアはどちらかとえいばケヴィン・シールズのほうに近い、センスで勝負するタイプのギタリストで、ローズやフェイヒィのような流暢なフィンガー・ピッキングはない。ムーアのようなギタリストがアコースティック・ギターのみでどのように表現をするのかという意味においても、興味深い作品である。
 結論を言えば、これは直球勝負の作品である。アルバムは、ムーアが得意とする変則チューニングによる不協和音をしゃらーんと鳴らしながらはじまり、演奏はいわばパンキッシュだがそれでも瞑想的なレヴェルへとあがっていく。それはアカペラで歌うシンガーのように生々しく、録音は目の前でムーアがギターをかき鳴らしているようにも感じられる。故人への敬意や思いは、レコードをひっくり返してから最後のほうでさらに高まる。かき鳴らされるギターの背後からは明らかにムーアの叫び声が聞こえる。センスよりも気持ちが全体を支配したアルバムで、そのエモーションは感動的だし、ギタリストが自分の思いを表現するうえでこんな演奏もあるのだと思い知る。
 ちなみに〈VDSQ〉はヴァイナルのみのリリースだ。このレーベル以外でも、アメリカで一昨年から続くこうした傾向は、今年もますます強まっているようだ。みんな、ヴァイナルの時代に戻せと主張しているのだろう。

Chart by JET SET 2011.05.02 - ele-king

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1

THE MYTHICAL BEASTS

THE MYTHICAL BEASTS COMMUNICATE »COMMENT GET MUSIC
Gatto Frittoによるレーベル初のアルバム・リリースも大好評頂いた、トップ・バレアリック・レーベル"International Feel"より新作14番がデリバリーされました。Felix Dickinson a.k.a. Foolish Felix & Toby Tobiasのタッグ"The Mythical Beats"による2007年"Hector Works"からのリリース以来となる待望の新作です。

2

ANDRES

ANDRES AS WE ROCK ON »COMMENT GET MUSIC
毎度カルトな人気を誇るUSリエディット・レーベルWhatchawannadoのニュー・シリーズ"Spills"から、デトロイトを代表する漆黒サウンドで御馴染みのDez a.k.a. Andresによるシリーズ第一弾がデリバリーされました。

3

DONATO DOZZY

DONATO DOZZY IN BED (TIN MAN REMIX) »COMMENT GET MUSIC
Tin Manによるシリーズ1stでのウルトラ・ディープ・リミックスを経て、満を持しての登場となったDonato Dozzyによる待望の新作。Labyrinth 2010のために制作/録音されたSpaced Out Ambient Acid Tuneこと"In Bed"と、Tin Manによるディープ・アシッド・リミックスの2トラックスを収録。

4

CMT

CMT ZONAZONA »COMMENT GET MUSIC
今や週末には欠かせない存在となったCMTの新作は一筋縄では終わらないストーリー性豊かなミックス ! 2010年9月にBlack Smokerからリリースされた『Observacion Astronomica』とは大きく異なり、幅広いジャンルで構成された1枚。

5

COYOTE

COYOTE ALWAYS »COMMENT GET MUSIC
Is It Balearic?で御馴染みのCoyoteがNeedwantに参戦。International Feel発"Moving"でシーンに大いなる足跡を残した人気バレアリック・チームによる新作が、The Revengeによる"Just Be Good to Be"カヴァーがヒットのNeedwantから登場。

6

GRACEFUL EXIT

GRACEFUL EXIT REVOLVE DISCO »COMMENT GET MUSIC
天才Walter Jonesによる新ユニット、第1弾!!デトロイト・テクノを演ってたWalt J時代の作品も再発が進んできたWalter JonesがChas Bronzを始めとするサポート・ミュージシャンと結成した新ユニット、Graceful Exitの1st.シングルがDFAから登場。

7

CAURAL

CAURAL DIE BEFORE YOU DIE »COMMENT GET MUSIC
オランダのRush Hour系名門Eat Concreteからの限定10インチ。持ち前のメロディ・センスはそのまま、モダン・ビート・リサーチの最新成果も見事に取り込んだ最高の内容!!

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BANDA ACHILIFUNK & ORIGINAL JAZZ ORQUESTRA TALLER DE MUSICS

BANDA ACHILIFUNK & ORIGINAL JAZZ ORQUESTRA TALLER DE MUSICS I BELIEVE IN MIRACLES »COMMENT GET MUSIC
I Believe in Miraclesと"Ain't No Stopping Us Now"をスパニッシュ~ルンバ・カヴァー!!話題沸騰中のアルバムから、Jackson SistersとMcfadden & Whiteheadの大クラシックのカヴァーがシングル・カット。しかも日本先行発売です!!

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クボタタケシ

クボタタケシ CLASSICS 1~4 同時購入セット »COMMENT GET MUSIC
正真正銘のザ『クラシックス』。遂にあの伝説のミックステープ・シリーズが初 CD化!!ノベルティ・7インチ付きの4タイトル同時購入セットで す。'98年にス タートし、その後のオールジャンルDJ Mixの新しい扉を開いたミックステープ・ シリーズ『Classics』!!この度リマスタリングが施され念願の初CD化です。ジャ ケット・デザインはオ リジナル・カセット同様に光嶋崇氏が担当。』

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OWINY SIGOMA BAND

OWINY SIGOMA BAND S.T. »COMMENT GET MUSIC
Brownswoodからのロンドン~ナイロビ混合プロジェクト。話題のアルバム到着しました!!特大推薦盤★瑞々しくオーセンティックな音楽性とモダンなエッセンスが自然体のまま溶け合った、まさに"Havana Culture"のアフリカ版と評されるに相応しい仕上がりです!!

You Kobayashi (SWC) - ele-king

YOUKOBA's Choice April.2011


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Trotzkopf - Painting Drops - Mutate to Survive

2
Emptyset - Altogether Lost - CLR

3
Marcel Dettmann - Unrest(Norman Nodge remix) - Ostgut Ton

4
Hans Bouffmyhre - Release Me - Harthouse

5
Mikael Jonasson - Tussilago - Figure

6
Planetary Assault - Sucktion - Mote Evolver

7
Damon Wild - Avion(Terence Fixmer Remix) - Synewave

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Daniel Solar - Dirtiest Clean(Delano Smith Remix) - Kolour Recordings

9
Genny G - Woody Way - Exprezoo

10
Lee Foss - Warriors - Culprit

Dom - ele-king

 現在のようにとてもカジュアルに海外のインディ・バンドの音を聴ける状況下では、ふと気になる音をみつけても、バンド側にまだバンドとしてのキャラクターや方向性、気構えや覚悟といったものが備わっていない場合も多い。まだ無名で、メディアによる吟味を受けていなかったり、結成して数ヶ月というグループさえ気軽に聴けてしまうのだから当然だ。注目され、何だかんだとジャンル名を冠され、点数をつけられ、ツアーに出て云々というプロセスを経れば、おのずとなにかキャラクタライズされ、バンド側にもそれに対するリアクションや姿勢が生まれてくるわけだが、そうなる前の、まるで職場の友人のバンドを眺めているような、未分化でファジーな空気を感じることが、多くなった。ドムに感じるのも同様のものだ。私はそれをいまらしい、好もしいことだと考えている。

 ドムはマサチューセッツの5人組バンド。力の抜けたローファイ・ポップに、リヴァービーなサーフ・ポップと時流を外さないサウンド・スタイル。パッション・ピットを思わせるきらきらと甘いシンセ・チューンもある。MGMTのようにエキセントリックでファッショナブルなサイケデリアもわずかに漂わせつつ、はつらつとしてネオアコ・マナーなソング・ライティングのセンスも時折光る。非常にとっ散らかった印象だが、旬な音がつめこまれている。それに、昨年のデビューEP『サン・ブロンズド・グリーク・ゴッズ』リリースの時点で結成わずか数ヶ月だ。がちゃがちゃとしてまだまだ固まらず、いろいろと試している途中、そんなバンドの活動模様を写メで送ってもらったような、とてもくだけた雰囲気がパッケージングされている。昔なら、果たして海の向こうのいちリスナーの耳に入るようなバンドだっただろうか?し かしデモ・テープ然とした自主盤に過ぎない同作は、フェイスブックやツイッターなどから広がり、ブロガーや「ピッチフォーク」などのメディアに拾い上げられ、先日改めて〈アストラルワークス〉より再リリースされるにいたった。音ももちろんだが、こうした在りよう自体がきわめていまらしいバンドである。

 本作は、レコード・ストア・デイに際して限定リリースされたエクスクルーシヴ音源、新曲が収録されている。狂暴すぎて法的に飼育が禁止されているという(冗談だろう)飼い猫の名前を曲名にとった"ボチチャ"は、ドライヴィンなギター・リフとピクシーズを思わせる屈折したセンスが魅力的だったが、この"シングス・チェンジ"はとてもストレートでスウィートなパンク・チューンだ。クラウド・ナッシングスにも比較できるだろう。中心人物のドムは、借金取りに追われているからフル・ネームは明かせないなどとうそぶく、なかなかやっかいな人柄のようで、「アメリカに住むということはとてもセクシーなこと」と歌って彼らのアンセムともなった"リヴィング・イン・アメリカ"等、デビューEPにもそれは十分垣間見られる。しかし"シングス・チェンジ"は、ドムのサウンドへの支持が、基本的にはこのシングルにあふれるシンプルでストレートなメロディに対するものなのだろうな、ということを感じさせる佳曲だ。けれんみがなく、しかし平凡ではない。幼さを残すヴォーカルも切なく胸にせまる。そしてB面〈キャプチャード・トラックス〉の注目株ミンクスによる"ジーザス"リミックスは、これに対照的な陰影を与える仕上がりになっていて素晴らしい。ジョイ・ディヴィジョンやネオ・サイケのロマンチックな叙情性が、コーラスをたっぷりきかせたギターに溶かし込まれている。

 レコード・ストア・デイも定着しつつあるが、はじめての年はレコ屋店員の労働環境改善を訴えるキャンペーンかと思ったものだ。リアル店舗を持つ大手以外のレコ屋を楽しもう、盛り上げようという趣旨で、該当する店にだけ限定商品を流通させるというこの祭がはじまったのが2008年。いまやリリース数はロックだけでも100タイトルを超える。おそらくはCD作品もあるはずだが、圧倒的にヴァイナルが多く、大型店を嫌って中小規模のストアを優先するアナログ志向な姿勢は昨今のインディ・バンドには広く共有されるものである。『サン・ブロンズド・グリーク・ゴッズ』も10インチやカセットでリリースされているから、ドムも例外ではない。本作ももちろんヴァイナル・オンリーだ。ストレートで自然体でアナログ志向。これがいまのインディ・ロックのリアリティなのだろう。

 5月3日、日比谷野外音楽堂で行われるフィッシュマンズのライヴ「A Piece of Future」がUstreamで中継されます。さらに有志によって中継ポイントを全国各地に設置し、それぞれの会場でもライヴ中継を行う「ソーシャルヴューイング」の呼びかけを現在、行っています。詳しくは https://www.fishmansplus.com/を参照。

以下、公式サイトより

1987年の結成時から現在に至るまで、今だ色褪せないバンド「フィッシュマンズ」。 デビュー20周年、そしてボーカル佐藤伸治の13回忌を迎える今年、フィッシュマンズにとって思い出深い場所である「日比谷野外音楽堂」のライブチケットは、3000枚が一瞬で ソールドアウト。さらに去る3月28日に突然行なわれたドミューン(https://dommune.com)でのUstreamライブでは、わずか一晩で 9万人を魅了し、ソーシャルメディア上での大きな話題となりました。 そこで、メンバーによる「このライブを多くの人に解放したい」との想いと、今回の東日本大震災による復興支援への想いにより、無料のネット中継の実現に加えて、さらに全国各地の有志による「ソーシャルヴューイング」の呼びかけを行なうことになりました。

「ソーシャルヴューイング」とは、ネット中継サービスのUstreamやツイッターを中心とした「ソーシャルメディア」を利用して、まるでひとつの場所に集まったような気持ちでライブ体験を共有しようとする、オーディエンス参加型の新しい試みです。具体的には、全国の有志を募り、それぞれの有志がそれぞれの会場の主催者となって、各会場でUstreamによるライブ中継をスクリーンやモニターに上映し、たくさんの人たちで視聴する場を用意することを指します。 今回のUstream中継は、東日本大震災のチャリティー企画として開催します。各会場の主催者はボランティアとして参加していただき、各会場も 入場無料が前提となります。

この企画はFISHMANS+によるもので、フィッシュマンズの多くのミュージックビデオを手がけ、ライヴ&ドキュメンタリー映画"THE LONG SEASON REVUE"の監督でもある川 村ケンスケが当日のライブ中継の映像演出を担当します。リハーサル風景やライブ当日の設営風景やメンバー出演による楽屋風景も中継する予定です。今回のライブ・タイトルは "A Piece Of Future" 。「未来のかけら」と題された先にあるものは何なのでしょう。フィッシュマンズとソーシャルメディアの組み合わせを意外と感じる人もいるかも知れません。

フィッシュマンズが輝きを放ったあの頃から幾時を経て、徐々にあらゆるものが停滞し、そしてこの3月11日、日本中を大きな悲しみが襲いました。

今回の生中継とソーシャルヴューイングは、そんな今の日本の中を通り抜ける、一筋の風でありたいと願っています。 音楽が持つ力をもう一度感じ、ここからフィッシュマンズとあなたの、新しい未来がはじまっていくと信じて。

新しい気持ちになれること。 例えば、5月3日に日比谷に来れなくとも、好きな場所で寝転んで、夕暮れを眺めながら、ネット経由で参加してください。 カフェやレストラン、ライブハウスで、ボリュームをひとつ大きめにして聴いて欲しい。あるいは家で、台所で、その場所の空気と匂いを感じな がら、みんなで感じること。

そういう実験も、FISHMANS+(フィッシュマンズ・プラス)の活動の一部であり、この日に参加する人たちすべてが 、新しいFISHMANS+のメンバーなのです。メンバーだと思う人は、ツイーターで#FMS0503 のハッシュタグをつけて、このプロジェクトへの参加を宣言してください。

https://www.fishmansplus.com/

Metronomy - ele-king

 メトロノミーの音楽を聴いていて思うのは、いったいどんな連中がこれを聴いているんだろう......ということだ。アークティック・モンキーズのリスナーは大体想像できるし、ハード・ファイはすぐにわかる。フォールズのファンもある程度、ジ・XXやジェームズ・ブレイク、それにダブステップでガンガン踊っている男女も......イギリスでは音楽が若者のカルチャーとしていまでもどうにか機能している部分はあるので、リスナーがトライブを形成している例は多い。しかしメトロノミーはそういった分類のどれにもどうにも収まりが悪く、実験的ではあるけれども難解ではなくつねにポップで、脱力していてフェミニンで、メランコリックだが妙にユーモラスなその音は、オタクもラッズもファッション・ピープルも頭で結びつかない。
 その音楽は様々なもののあいだのどこかを漂っていて、それはエレクトロニカでありエレクトロでありシンセ・ポップであり、しかしそのどれかひとつに収まることをするすると避けてきた。彼らを有名にした『ナイツ・アウト』はくにゃくにゃと脱臼したその音に乗せて、情けなさと切なさと可笑しさの入り混じった説明のできない感情を醸し出していたのだが、それは僕も含め少なからぬ人間にとって皮膚感覚で覚えのあるものでもあった。正確な音階を外れたメロディにノイズが混じったシンセの和音が重なり、ヘナヘナとした歌声で上手くいかない夜遊びについて歌う。ダンスフロアで踊っていれば楽しくないわけではないけれど、かと言ってそこに溶け込めている気もしない......というような、そんな気分にピッタリとハマる音をメトロノミーは絶妙に表現していたのだ。どのトライブにも属しきらない、どのムーヴメントにも完全にはハマりきらないような人間にこそ、彼らの音は響いた。

 そういう意味でメトロノミーの音はニュー・レイヴに対するカウンターであり批判だというように説明されたが、しかしニュー・レイヴがきれいに消え去ったいま、彼らの3枚目のアルバムである『イングリッシュ・リヴィエラ』はますますカテゴライズがしにくいものとして存在している。というか、そういう分類にそもそも彼らの音楽は向いていないように思う。コミカルだった前作に比べれば随分エレガントに聞こえるし、指摘されているように西海岸のようなレイドバック感もあるが、気の抜けたノイズ混じりのシンセ・サウンドは相変わらずだ。ゆるーくチルウェイヴからの反響もあると言えるかもしれないが、もちろんそれはあくまで一部だ。それらが主張し合わずに、微妙なさじ加減で共存している不思議なダンス・トラック集、エレクトロニック・ポップスである。わかりやすい派手さもない。電子音が驚くほど小さな音で奥の方を移動し、ジョセフ・マウントが線の細い声で頼りなく歌っている。その歌とコーラスはメロディアスだが、とことん力が抜けている。
 全編を通して言えるのは、反復が生み出す穏やかなグルーヴと、心地良いメランコリアとアンニュイさだ。ロクサーヌ・クリフォードがムーディな歌で参加している"エヴリシング・ゴーズ・マイ・ウェイ"は「再び恋に夢中よ」と言うわりには物憂げで、アップビートな"ザ・ルック"もマイナー・コードが中心であるためか気分が晴れ渡らないままダンスするような1曲だ。
 アルバムのハイライトは恐らく、繊細で遠慮がちなアンサンブルがそれでも反復とともに上りつめていく"サム・リトゥン"から、ミニマルな音の出入りと展開で聞かせる"ラヴ・アンダーラインド"へと続くラスト2曲のダンスだろう。けれども僕のお気に入りは、アルバムでも突出してポップな"ザ・ベイ"である。そこでは、「ここはパリではなく/ロンドンでもなく/ベルリンでも/香港でも/東京でもないんだ」と、メトロノミーが鳴らしている音楽の居場所のなさが端的に表現されているように僕には思えるからだ。そして「この入り江はとても快適な場所」だと、架空の場所を拠りどころにし、その言葉はアルバムのアートワークへと繋がっていく。
 ジョセフ・マウントが作るおかしなシンセ・サウンドの物悲しさはきっと、どこにも落ち着ける居場所がない人間がつねに底に湛えているものを掬い取ったものだろう。けれどもそれは同時に、前作では力なくも笑えるものだったし、今回は心地良くレイドバックできるものである。何なら、緩やかにダンスだってできる。そして僕は、物悲しさや憂鬱とつねに共存していこうとするそのような態度は、直感的にとても現代的なものなのではないかと思う。メトロノミーは、簡単に気の晴れることのない毎日を送る僕たちのための――そしてとりわけ、それを忘れるくらい何かに熱狂することができない連中のための――、ささやかなユーモアと知恵である。

[Electronic, House, Dubstep] #6 - ele-king

1.Lone - Echolocations EP | R & S Records


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E王  ノッティンガムのボーズ・オブ・カナダ・フォロワー、ローンのこのところの人気にはすごいものがある。アクトレスのレーベル〈ワーク・ディスク〉からリリースされたセカンド・アルバム『エクスタシー&フレンズ』がロング・セラーとなって、そしてダンサブルな方向性を打ち出した昨年末の『エメラルド・ファンタジー・トラックス』によって完璧にファンの心を掴んだと言えるだろう。〈R&S〉からのリリースとなった2枚組のこのシングル「エコロケーションズEP」も『エメラルド・ファンタジー~』の流れで、ドリーミーでメロディアスなディープ・ハウスを展開している。テクノっ子たちが大好きな、昔ながらの909系のスネアの音がキープされているが、ビートにはガラージ~ダブステップ時代のシャッフルがあり、美しいメロディを有する上ものにはここ数年の傾向と言えるだろう、大いなる逃避主義とユーフォリアのみが輝いている。つまりチルウェイヴとも親和性が高く、ぼやけた夏の夢が揺れている。

2.Sbtrkt - Living Like I Do | Young Turks


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 ダブステップにおけるネオ・ソウルの代表を期待されているサブトラクトの新曲だが、曲のテイストは最近のポスト・ダブステップに逆らうかのようなバック・トゥ・ベーシックな展開。UKガラージ流れの2ステップ・ビートにのって、ヴォーカリストのサンパが例によってソウルフルに歌う。曲のはじまりのベースの響きは貫禄充分といったところで、驚きはないが悪くもないといったところ。B面はヒット曲"ルック・アット・スターズ"のマシンドラム(最近は〈ホットフラッシュ〉から素晴らしい12インチも出している)によるリミックスで、チップチューンめいた音色を加えながら安定したブロークンビートを展開している。

3.Factory Floor - Real Love | Optimo Music


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 エレクトロと呼ばれるジャンルにおいて、もっとも危険で、もっとも大胆で、もっともぶっ飛んでいて、ずば抜けて格好いいのがロンドンのファクトリー・フロア。彼らの音楽にはクリス&コージーとアンドリュー・ウェザオールが同居しているようなエロティックでドラッギーな凄みがある。昨年リリースした10インチ+DVDにおいては彼らの毒々しい美学を存分に繰り広げていたが、ミニマリズム映像とノイズによるDVDは、途中で停止ボタンを押すことができないほどの緊張があった。
 これはオプティモが運営するレーベルからのリリースで、高速にドライヴするアルペジエーターが容赦なく性的興奮を誘発する。B面に収録されたオプティモのJDトゥイッチによるリミックスは、オリジナルを過剰なまでにトランシーなトラックに変換している。

4.Toddla T feat. Roisin Murphy - Cherry Picking | Ninja Tune


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 そうか、同じシェフィールド繋がりだからか、ロイジン・マーフィ(10年前はモロコの名義でダウンテンポのクラブ・ジャズ系を出していた女性シンガー)をフィーチャーした、セカンド・アルバムのリリースを控えたトドラ・Tの先行シングルで、グライミーなダンスホール・スタイルにマーフィのキャッチーな歌が入った完璧なポップ・チューン。UKらしいポップ・ソングとも言える。
 トドラ・Tの新作には、その他、ガラージ・シーンの顔役たち、ドネイオー、ショーラ・アマ、ミズ・ダイナマイト、そして大御所ルーツ・マヌーヴァなどが参加しているらしい。ジェイミー・ウーンはいまだに買うかどうか迷っているけど、トドラ・Tに関しては迷わないよ。

5.Ari Up & Vic Ruggiero - Baby Fada | Ska in the World


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 昨年10月、ガンのために逝去したアリ・アップの未発表音源で、ニューヨークのスカ/ロックステディ・バンド、ザ・スラッカーズのメンバー、ビクター・ルジェイロとのコラボ作。これがまた......未発表とは思えないほどの出来で、何の目新しさもないレゲエ・トラックが、彼女の迫力あるヴォーカリゼーションが入っただけで別物すなわち魅力たっぷりのパンキー・レゲエ・スタイルになっている。
 このアルバムを聴くのが楽しみだし、生前にたくさんの録音物を残していたという話で、他にもニュー・エイジ・ステッパーズの新作も出るという。

6.Kitty, Daisy & Lewis - I'm So Sorry/I'm Going Back | Sunday Best Recordings


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 悪名高いレトロ主義者3兄弟のおよそ3年ぶりの新曲は、彼らの50年代のスタイルにさらに磨きをかけている......なんて生やさしいものではなく、驚くほどパーフェクトにそれを具現化している。録音機材もほぼすべてヴィンテージに進められたセカンド・アルバムからの先行シングルで、スカに挑戦した"アイム・ソー・ソリー"にはトロンボーンにリコ・ロドリゲス、トランペットにエディ・ソーントンといったジャマイカの大御所を招いている。それはいちど聴いたら耳から離れない、スタイリッシュかつキャッチーな曲だ。B面は彼らの十八番のレトロなロックンロールで、エネルギッシュで、格好いい。それはただ格好いいだけであり、ただスタイリッシュなだけだが、しかしそれのどこが悪いのだろう。ザッツ・エンターテイメント、本当に素晴らしいシングル。

7.The Beauty / Jesse Ruins | Cuz Me Pain

 〈カズ・ミ・ペイン〉は日本のインディ・レーベルで、昨年コンピレーション・アルバム『Complilation #01』を発表している。なんでも"日本のチルウェイヴを代表するひとつ"ということで、そのスジではずいぶんと注目されているという。日本のチルウェイヴ的な動きもいよいよ顕在化してきているようで、今年に入って橋元優歩が紹介していたフォトディスコも素晴らしかったし、遅まきながら僕も〈カズ・ミ・ペイン〉のコンピレーションも聴いたのだけれど、こちらも魅力的な内容だった。〈カズ・ミ・ペイン〉一派の音には、耽美的でエロティックな感性もあり、音楽的にもサイケデリック・ポップからダーク・アンビエント、エクスペリメンタル等々......それをチルウェイヴと呼ぶには抵抗を感じるほど多様な音楽性のように思ったけれど、このレーベルが日本においてUSアンダーグラウンドに強く共振していることはたしかだろう。
 ここに紹介するのは〈カズ・ミ・ペイン〉から出たカセットテープで、ザ・ビューティとジェシー・ルインのふたつがそれぞれの面に3曲づつ収録している。ディストピックなチルウェイヴ、ダーク・エレクトロ、デイドリーミングなポップ......さまざまな側面を見せていて、今後どの方向に進むのかわからないけれど、彼らのポテンシャルの高さは感じる(カセットで出しているところも良いね)。まあ、そんなわけで、日本におけるサイケデリック新世代はすぐにそこにいるようです!

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