「Nothing」と一致するもの

Chart by JAPONICA 2011.07.25 - ele-king

Shop Chart


1

IFEEL STUDIO

IFEEL STUDIO MORGENGRUSS III INTERNATIONAL FEEL / URY / 2011/7/22 »COMMENT GET MUSIC

2

V.A. [LARRY HEARD / MOODYMANN / OSUNLADE]

V.A. [LARRY HEARD / MOODYMANN / OSUNLADE] MOXA VOL.1 - FOLLOW THE X REBIRTH / ITA / 2011/7/22 »COMMENT GET MUSIC
廃盤状態となっていたMOODYMANN"I'D RATHER BE LONELY"の再収録をはじめ、当コンピレーションのために制作された新曲となるLARRY HEARD"WINTERFLOWER"、そしてOSUNLADE"MOXA'S THEME"の豪華顔ぶれによる絶品アナログ・サンプラー!

3

GROOVEBOY

GROOVEBOY GROOVEBOY EP3 UNKNOWN / US / 2011/7/21 »COMMENT GET MUSIC
80S'R&B名曲ALEXANDER O'NEAL feat. CHERELLE"NEVER KNEW LOVE LIKE THIS"をMARK E/EDDIE Cばりにざっくりとミニマル・ビートダウン化したA面"LOVE LIKE DIS"、そしてこちらも80S'ソウル名曲にしてサンプリング・ソースとしてもお馴染みのMTUME"JUICY FRUIT"を斬新にもレゲエ/ダブ・テイストでリコンストラクトしてしまったB面"WHAT U ARE"の今回も現行シーンの流れを的確に突いたDJフレンドリーな好エディットを披露の最高すぎる2トラック!

4

JOHNWAYNES

JOHNWAYNES HOOMBA HOOMA LET'S GET LOST / UK / 2011/7/22 »COMMENT GET MUSIC
DJ HARVEYもプレイする85年リリースのアフロ/バレアリック古典PILI-PILI"HOOMBA HOOMBA"のエディットA-1にはじまり、GWEN MCCRAE"FUNKY SENSATION"のボトム・ファットなエレクトロ・ファンク・スタイルでのドープ・ビートダウン・エディットB-1、そしてレゲエ・ネタを駆使したダ ビー・ディスコ・エディットB-2と、どれもかなり良い!

5

V.A.

V.A. BLACK FEELING VOLUME 2 FREESTYLE / UK / 2011/7/22 »COMMENT GET MUSIC
LANCE FERGUSON率いるバンド・プロジェクトが様々な名義を使い分けて名曲の数々をファンク・カヴァー&コンパイルする人気シリーズ第2 弾。"NAUTILUS"のトロピカルなラテン・ファンク・カヴァーにはじまり、JORGE BEN"COSA NOSTRA"のディープ・ファンク・カヴァー、そしてJACKIE MITTOO"OBOE"、RONNIE FOSTER"MYSTIC BREW"まで、、鉄板ネタを極上ファンク・アンサンブルで再演してしまった最高すぎる一枚!

6

DENSE & PIKA

DENSE & PIKA BAD BACK / VOMEE DENSE & PIKA / UK / 2011/7/22 »COMMENT GET MUSIC
<PLANET E>周辺という情報のみで全く持って詳細不明ながらそのクオリティの高さにはついつい反応せずにはいられない漆黒ドープ・ハウス2トラック届きました!MOODYMANN/THEO PARRISH系のデトロイト・ブラックスネスにベルリン地下経由のダブ・テクノ・サウンドの質感を混ぜ合わせたドープ・ブラック・ハウス!

7

BUILD AN ARK

BUILD AN ARK THE STARS ARE SINGING TOO DISQUES CORDE / JPN / 2011/7/22 »COMMENT GET MUSIC
才人CARLOS NINO率いるスピリチュアル・ジャズ・コレクティヴ=BUILD AN ARK、結成10周年を記念するメモリアル・ニュー・アルバム!今作は過去のライブ・パフォーマンス、リハーサル、レコーディング・セッション、コラボ レーションにて残された未発表音源の数々からCARLOS NINO自身が厳選コンパイルしたというこれまでの活動歴10年での全ての年代における音源を収録したいわゆる裏秘蔵ベスト音源集的内容の一枚。

8

MURO

MURO DIGGIN' ICE -MURO'S BREEZY SOUL- KING OF DIGGIN' / JPN / 2011/7/21 »COMMENT GET MUSIC
90年代「DIGGIN'ICE」シリーズ制作当時に収録候補となった楽曲や、続編用に考えていた楽曲を中心にコンパイル/ミックスしたという今 作までの 10年以上の時間の隔たりを全く感じさせない当シリーズならではのクール&ブリージンな空気感をしっかりと保った、まさに当時の秘蔵ミックス的内容の一 枚。

9

COYOTE

COYOTE HALF MAN HALF COYOTE IS IT BALEARIC? / UK / 2011/7/16 »COMMENT GET MUSIC
COYOTE待望のファースト・フル・アルバム!全編に渡り揺らめくダブワイズが要所で効いた幽玄バレアリック~アコースティック・チル・トラック、ダウンテンポetc..野外/海辺での開放感ある現場やラウンジ空間でのゆったりしたDJプレイには勿論、リスニング・アイテムとしてもばっ ちり重宝する聴き心地の良い絶品内容。今夏の清涼音楽としてもいかがでしょうか。ジャケット・アートワークも◎

10

DR. DUNKS / JUSTIN VANDERVOLGEN

DR. DUNKS / JUSTIN VANDERVOLGEN SO GOOD FEELING / VERSIONS KEEP IT CHEAP / US / 2011/7/11 »COMMENT GET MUSIC
首謀者DR.DUNKSサイドは和やかなミッド・クラップ・グルーヴに流麗なストリングス、色鮮やかなギター/キーボード・リフが爽快に掛け合っ ていく最高に突き抜けた絶品サマー・ブギー・トラック。そしてB面の盟友JUSTIN VANDERVOLGENサイドもバレアリック・フィールなギター/キーボード・リフが軽快に織り成すこれまた夏仕様な絶品ディスコ・トラックで、こちら 終盤あたりでタイトな四つ打ちグルーヴへと移行する展開もナイスな逸品。

Cass McCombs - ele-king

 ここのところ、僕はこのアルバムに取り憑かれている。この底の見えない暗さに、死の香りすら漂う音楽に身を沈めていることは危険だと頭では理解しつつも、聴いているとその魅力に抵抗するのさえ億劫になってくる。この歌は何も生み出さない。聴き手との親密で、退廃的で、甘美なひととき以外の何も――。

 前作『カタコンベ』が〈ドミノ〉からリリースされるまで、僕はこのキャス・マックムースというロサンゼルス出身のシンガー・ソングライターのことをよく知らなかった。気になったのは、そのアルバムのネット・メディアでの評価が異様に高かったこと、それまでにすでにグリズリー・ベアやガールズらミュージシャンたちから熱狂的な支持を集めていたことが理由だった。聴いてみると『カタコンベ』には穏やかなカントリー・ロックが収められていて、その丁寧な演奏と歌は確実に僕の好きな線だったので、僕はそのアルバムを好んで――そしてわりと気軽に――よく聴いた。『カタコンベ』にはたしかに軽快さがあったし、もっと初期の音源にはザ・スミスの影響が強く感じられるダークさのなかに煌きがまぶされたギター・ロックもあった。決して明るいタイプの音楽ではなかったが、沈み込むように重々しいばかりの音楽ではなかった。
 が、彼の5作目となる『ウィッツ・エンド』ではそんな軽やかさは消え失せていて、ひたすらスロウなバラッドが続く。冒頭の"カウンティ・ライン"からして、エレクトリック・ピアノの柔らかい調べの上でキャスがソウルフルな歌をゆっくりと聞かせるナンバーだ。「君は僕を愛そうとすらしなかった/君が僕を欲しがるために僕は何をするべきだったんだろう?/何も見えない、標識もわからない」......。その痛みがただ穏やかに歌われる。続く"ザ・ロンリー・ドールズ"は夢見心地のワルツで、その甘さにかえってぞっとする。アレンジはごくシンプルに削ぎ落とされ、感情は抑制され、演奏はメランコリアを纏いつつ静かに続けられる。
 この歌を聴いていると、それはどこかで現世を諦めてしまった人間の呟きのように聞こえてくるのはどうしてだろう? 彼が一時期アメリカを転々としながらボヘミアンのような生活をしていたことも関係しているかもしれないが、その正確な説明にはならない。アウトサイダーであることが簡単に許されないこの時代に、彼はここで世間を嫌うようにひとり自分の傷と孤独をえぐっている。"ブリード・アライヴ"、すなわち「生き埋め」ではその重々しいフォーク・チューンに乗せて「たぶん僕は間違えている」と歌い、"メモリーズ・ステイン"、すなわち「記憶の染み」ではエレガントなピアノの演奏と共に「見てくれ、僕はひとつも良くならない」「見てくれ、何て穴の広さだ!」と8分の6拍子のリズムに合わせて繰り返す。ただ、自分の痛みそのものに耽溺する感覚がここでは貫かれている。そして僕にとってこのアルバムは......彼の作品のなかでももっとも偏愛する1枚になりそうである。

 「ヘロイン中毒のような不健全なダウナー音楽ではないか」という批判があれば、僕にはそれに反論する言葉はない。しかし、心地良い逃避では片付けられないこのヘヴィさを聴いていると、沈み込むことでしかひとは自分の弱さや痛みを受け入れられないのではないか、と思えてくる。気軽に聴ける音楽ではない。だが、自分の内面に潜っていくような濃密な体験がここにはある。
 圧巻はラストで9分以上に渡って同じメロディが繰り返されるワルツ"ア・ノック・アポン・ザ・ドア"だ。ワルツは舞踏曲である。悲しみと共に踊りを続けるように、憂鬱な調べが延々とリフレインし、そこにバス・クラリネットのノイズ混じりの演奏が絡みつく。うっかりこの曲を外で聴こうものなら、意識がだんだんと朦朧としてくる錯覚を抱く。それがこの暑さのせいなのか何なのか、僕にはよくわからない。

 ヴィンセント・ラジオが陸前高田までバンクシーの映画を上映しに行くと聞いて、その車に飛び乗った。「あとひとり乗れる」というカードが切られれば、コールしない手はない。胴元がヴィンセント・クルーならカモられる可能性も低い。
 車が動き出す直前までわかっていなかったけれど、ヴィンセント・ラジオでは全国のリスナーに呼びかけて、援助物資を募り、現地ではそれらを配布しながらレイヴ・パーティを開催する予定だった。なるほど、この人たちがやることはひとつしかないんだなー。反戦デモをやろうが、ネット・ラジオをやろうが、被災地に物資を届けに行こうが、ターンテーブルを回すことしか頭にない。そんな連中だったのである。そう、だから、免許を取ってから2度目の運転だというベーナーさんのハンドルさばきで午前3時に高速を飛ばしつつ、当然のことながら「人、来るかな~」というのが全員の心配事になった。仙台から2人来るらしいとか、石巻からツイートがあったとか、少ない人数の足し算に明け暮れ、「若者は少ない」という固定観念が車内を幽霊のように徘徊し続けた。ほどなくして朝日が昇っても感動はまるでなく、ただ単に暑いだけだった。
 このムードを断ち切ったのはガイガー・カウンターだった。ロクのアッコちゃんがムードマンから借りたというロシア製の小型マシンに電池を入れ直したところ、東京で「0.1」もなかった表示が急に「0.3」、「0.4」と上昇し始めた。上がったり下がったりで直線的に数値が上がっていくわけではないけれど、郡山市を通過する頃には上限が「0.7」から「0.8」を更新し、とあるサーヴィス・エリアでは屋外で「1.2」を超える瞬間もあった(屋内だと「0.3」)。目に見えて数値が変化していくというのはやはり不必要に恐怖感を掻き立てられる。あるいは、この場から早く立ち去りたいと考えてしまう一方で、この数値のなかで暮らし続けている人たちがいることも考えざるを得なかった場面でもあった。矢作俊彦がいま、『スズキさんの休息と遍歴』を書き直したとしたら、果たしてどんな展開になるのだろうか? ドーシーボーの再出発を願いたい。

 一関インターまでは7時間ぐらいで辿り着いた。予定通り、スーパーマーケットが開店する時間だったので、イーオンでバーベキューの材料を仕入れることに。海産物はわかるけれど、ペット・ボトルがなぜか驚くほど安い。ビールや炭も買い込んで、様々な物資が詰まりに詰まった車に、さらにそれらをギュー詰めにし、再び海岸沿いまで1時間半の距離を進む。どこまで行っても景色は平穏で、頭に思い描いていたような惨状はどこからも立ち現れてこない。だんだんと避暑地に迷い込んだような気分になりかけた頃、ひしゃげた自動車がポツポツと目に入り出す。そして、山間の道を抜けたところで、景色はいきなり連続性を失った。そこからは何もなかった。真っ平な平野が果てしなく広がり、所々に瓦礫が積み上げてあるだけ。出発する日の昼間、近所でばったり会った保坂和志が少し前に気仙沼に行ってきたそうで、「陸前高田は見事に更地になっていた」と話していた通りだった。
 津波で父親を亡くしてしまったヤングカルビの実家がレイヴ会場だった。地元に戻った彼を励ましに行こうというのがそもそもパーティを企画した動機だったそうで、グーグル・アースで見てみると、なるほど庭も広いし、敷地内には家屋も5軒ぐらい建っているように見える。ヤンカルのお父さんは最初は助かったにもかかわらず、誰かを救助しようとして、結果的に津波の犠牲になったという。後で知ったことだけれど、お父さんは政治家で、共産党の及川一郎議員という人だった。
 カーナビに従って進んでいたら、あるはずの橋が落ちていて、道がいきなり途絶えてしまう。そのまま適当に車を迂回させていると、ふいに小学校らしき建物が見えてきた。ヤンカルの実家は少し高台にあり、後で聞いたところでは、その小学校が津波の防波堤になったという。そこを過ぎると、ヤンカルが庭先に立っていて、ヤアと手を挙げた。ようやく着いた。昼間の暑さは東京とかわらない。ガイガー・カウンターはとっくに落ち着いている。

 少しは休めるかと思ったけれど、昼ごはんにソーメンを食べただけで、すぐにサウンドシステムやスクリーンの設営がはじまり、支援物資を分けて並べる作業がはじまった。なんだかんだいって夜通し騒いでしまったに近いので、誰もほとんど寝てないにもかかわらず、全体の作業は何かを悟ったようにテキパキと早い。ヤンカルが使っていたシーツを石黒景太が指揮を取って即席のスクリーンに仕立て上げたものはなかなかの傑作だった。アッコちゃんが支援物資を並べていくセンスもとてもいい。サウンドデモの時もそうだったけれど、誰が指示するでもなく、自然と役割が決まっていき、どこからともなく現れたおじさんが「バーベキューはオレが仕切る」といって炭に火を入れてくれる。作業の合間にヤンカルのお母さんから「水が出るようになった時は本当に嬉しかった」など、被災地の現状をあれこれと教えてもらう。電話線がまだ回復していない上に、ソフトバンクがつながりにくいというのはやっぱり不便もいいところで、当然のことながらインターネットも観ることができないし、ヴィンセント・ラジオも中継は断念せざるを得なかった。
 なんとなく形が整ってきたと思ったら、早くも人が集まりはじめてきた。予定では午後5時からのスタートだったところを、そのままスタートさせてしまうことにする。僕はバーベキューを焼いたり、Tシャツを「えり好み」する人の相談相手を務めたり。人が商品を「えり好み」することがどれだけ楽しいことなのか。サイズを見たり、色を見たり。300枚近く提供してもらったので、それなりに贅沢な気分を味わってもらえたのではないだろうか。明日、バスケットの試合があるのにユニフォームが流されてしまったという女の子はRAW LIFEのTシャツを人数分、抱えて持っていった。上から下(=靴)までその場で全部、着替えてしまうおばさんもいた。
 DVDプレイヤーのような電子機器が人気だったのは当然として、それ以外では、子どものおもちゃ、女性用の化粧品、全巻揃ってるマンガとDVDはほとんど全部が持ち帰ってもらえた。カードを集めていた男の子は次の日の朝もまた貰いに来たりした。まったくダメだったのはアナログ盤とVHSテープ。VHSのなかには02年のイタリア映画で、家族の一員を失ったがために崩壊しかけていた家族がなんとか持ち直すという『息子の部屋』もあり、これはとてもいいものを提供してくれたと思っていたのだけれど、やはりVHSということだけで、残念ながら誰も手を伸ばしてはくれなかった。ノラ・エフロンが『奥さまは魔女』のリメイクを手がけたDVDも残っていたので、僕の文章を読んでくれているという青年に強く奨めてみた。ノラ・エフロンはスリーマイル島の原発事故が起きる前に南部で被爆についての問題提起を起こそうとして殺された女性を追う『シルクウッド』で脚本を務めたことがあり、主演のメリル・ストリープとは、09年に『ジュリー&ジュリア』でも再びコンビを組んだユニークな映像作家である。『奥さまは魔女』でもヘンなところにヒッピー・カルチャーの符号が散りばめられていて、なかなか通り一遍のリメイクではない。50年代の女優にしか見えなくなっているニコール・キッドマンを観るだけでも楽しい作品ではないか!
 スケートボードを見つけた子どもの嬉しそうな叫び声もまだ耳に残っている。お父さんもお母さんもスケボーをやっていて、自分だけが持っていなかったらしい。プロテクターを提供してくれた人もいたので、セットで持って帰ってもらい、親子3人で楽しそうに記念写真を撮っていった。本やCDはやはり好みが分かれるので、あれはないかこれはないかという注文にはなかなか応じられるものではなかった。ヒップホップに興味があるという女の子にはデ・ラ・ソウルやスパンク・ロックなど10枚ほどを見繕ってあげた。フライング・ロータスが残っていたのは意外だったけれど、ジャケットに何も書かれていなかったせいのようで、「あれ、フライング・ロータスが残っているな」と僕がいうと、すぐに持っていく人はいた。

 DJはヴィンセントのシバちゃん、阿部周平、2マッチ・クルーのポエム、石黒景太、ヤンカルが交代で好きな曲をかけまくった。後で聞いたところによると、ロックンロールをリクエストしたおばさんがいて、シド・ヴィシャスの「カモン・エヴリバディ」をかけてもPILをかけてもツイストで踊っていたそうだ。それは、ちょっと見たかったかもしれない。残ってしまったアナログ盤からシバちゃんがアニタ・ベイカーのカヴァ1曲をプレイする。「リング・マイ・ベル」をレゲエ調にアレンジしたもので、その日、聴いた音楽では行きの車のなかで聴いたクラフトワークのライヴと共になぜか強く印象に残っている。
 6時半の定例放送でヤンカルが自分の家でTシャツやCDを配っていると告知すると、来る人がどっと増えて、最終的には70人ぐらいの賑わいになっただろうか。仮設住宅や避難所の人たちも来るのかなーと聞くと、「あの人たちは来ないと思う。慰問疲れもあるし」という返事。なんとなく、被害の程度で同じ地域でも混ざり合うことがない垣根が生じている気配を感じてしまう。決定的だったのは何人かの人が「福島には行かねえ」といっていたこと。それ以上のことは何も言わないけれど、これはさすがに何をかいわんやである。日本がひとつになれるなんて幻想もいいところだというか。あるいは「仙台は復興のエネルギーに満ち溢れていますよ」という意見も耳にした。どうやらこことは違うムードのところもあるということを教えてくれたようで、当たり前のことだけれど、ヴィンセント号がたまたま陸前高田に着いたから、僕は被災地に対してひとつのイメージを持つことができたけれど、そうではなくて仙台に着いていればまったく違うイメージを持って帰っただろうし、相馬市に着いていれば車から降りることさえ躊躇したかもしれない。出発する前に「陸前高田に行ってくる」とEメールを送っておいた友人から、帰ってみると「福島はどうでしたか?」という返事が来ていた。福島以外は被災地だということが忘れられているといういい証拠である。日本どころかいまの東北をひとつにすることは頭山満にも田中清玄にもきっと無理に違いない。
 若い人は思ったよりも多かった。しかし、年輩の方々がガツンと盛り上がっているので、なかなかバンクシーの映画を上映するタイミングに入れない。午後7時を過ぎると、一気に涼しくなり、食べたり呑んだりもさらにいい感じになってしまう。とはいえ、映画を楽しみにしてきた人もいるはずだから、なんとか踏ん切りをつけて、予定よりだいぶ遅れて『イグジット・スルー・ザ・ギフト・ショップ』がシーツの上で封切られる(東京での公開も同じ日)。僕にしても、これがメインの目的だったので、がっちり観るつもりが、やはり徹夜明けには無理があったか、眠ったり起きたりで半分ぐらいしかストーリーはわからなかった。はは。なかなか正体をつかめないのがバンクシーということで、ここは諦めるしかないでしょう。震災前に試写を観ていた人の話から登場人物が欲望を交換してしまう話なのかと思っていたけれど、バンクシーはたしかにブレインウォッシュの欲望を適えているかもしれないけれど、バンクシーの欲望がどこに行ったかは表面的には明確にならないので、そんな単純な映画ではないのかなという印象が残ったのみ(後で石黒くんから凄まじい解釈を聞かされ、驚いてまた寝てしまった)。

 最後に花火。片付けは明日にして、いきなり寝てしまった阿部周平に続いて、みんなも総崩れで寝た......のかと思ったら、3時まで呑んでいた人もいたらしい。そのパワーを被災地の復興に役立てましょう!
 次の日はヤンカルとお母さんの案内で被災地をあちこち見て回ることに。釣り堀かと思ったら陥没した住宅地だったり(そういえば自動車が突き刺さっていたか)、海のそばに野球場があったのかと思ったら、そこまで海が広がったのだというし、新しい電信柱の横には倒れたままの電信柱や信号機がそのまま放置され、だんだん瓦礫の山にも目が馴れてきて、素材別に分けて積み上げてあることが分かってきたり。基本的には何もないので、何もないとしか書きようもなく、僕たちはここに街がひとつあったのかなーと思うばかり。何もなくてもヤンカルたちが見れば何かを思い出すだろうし、僕たちは何も思い出さないというだけのことである。ヤンカルのお母さんが、当時まで働いていた病院の辺りを指差してくれる。地震の後、津波勧告はなく、虫の知らせで患者さんたちを山の上に運び上げたところ、直後に津波が押し寄せてきたという。陸前高田はアイヌの子孫が移り住んできたところだという話もどこかで聞いた。地名には高台に住む人という意味もあるとか。道端の泥から阿部周平が文字通り7インチ・シングルをディグったら、それは山口百恵「赤い衝撃」だった。
 気仙沼にも足を延ばした。ここはどういうわけか一軒置きに家屋が倒壊し、何もなくなってしまった陸前高田とは対照的に、雑然といろんなものがあり過ぎるという印象が残った。実はここまで書かなかったことがある。震災直後には東京でもハエが急に増えた時期があったけれど、陸前高田でもハエは非常に多かった。僕たちが食卓を囲んでいる間も誰かが追っ払っていないと、どこかにハエがとまってしまい、顔や手にもすぐにたかって来た。それが、気仙沼ではそれが倍増していた。それどころか、臭気がものスゴく、最初は窓を開けるのも耐えられなかった。陸前高田は海水浴をメインとした観光地で、いわゆる漁港ではなかった上に、すべてが押し流されてしまったから、ウジの湧きようがなかったのに対し、気仙沼のような漁港はそうはいかなかったらしく、どうやら冷凍保存されていた水揚げがことごとく街中にぶちまけれ、そのまま腐り果てたために、どこを掘ってもウジだらけになったということらしい。これには参った。少しでも窓を開けると、あっという間に車のなかがハエだらけになってしまう。1匹、追い出そうとすれば、5匹は飛び込んでくる。街中を抜け、海に出てしまう方がまだしもだった。もう、インドにでも行ったと思って諦めるしかない。週刊誌などで見かける「少しは復興している」などという表現が僕にはとても信じられなくなった。
 最後に石油コンビナートの跡地を見ようと思ったものの、通行止めになっているようで、それは適わず、それを最後にヤンカルたちの車と別れ、ヴィンセント号はそのまま東京へ進路を向けた。おそらく僕たちは必要以上にくだらないことを言い合いながら(それはいつものことか......)。

写真 → https://vincentradio.com/report.html

PS
8月6日にヨコハマ創造都市センターで「<表現>としてのデモ」と題して、劇作家の宮沢章夫さんとトーク・イベントをやります。司会は桜井圭介さん。
https://www.parc-jc.org/event_tpamiyss2011.html

David Sylvian - ele-king

 2年前のある日、湯浅学氏に電話した。
「湯浅さん、デビシルの新作聴きました?」
「聴いたよ、あれおもしろいね」
「演奏とシルヴィアンの歌はギリギリの絶妙な緊張関係にありますね」
「シルヴィアンはデレク・ベイリーといっしょにやってからなー。その影響かもな」
「でもちょっとなつかしかったスね」
「なにが?」
「『歯のはえたケツの穴』みたいじゃなかったですか? あのころ湯浅湾も即興ノイズをバックに歌ってましたよね」
「デビシルはあんなデタラメじゃないからな。......そういうこといったり書いたりすると、良識あるひとに怒られるか狂人あつかいされるから、いったり書いたりしないようにしようぜ」

 湯浅さん、もうしわけない。約束を破ってしまった。
 みなさんのおっしゃるとおりシルヴィアンの『マナフォン』はデタラメではない。
 ベイリー~カンパニーの圏域のフリー・インプロヴィゼイションと、コーネリアス・カーデューの――つまり現代音楽の――の系譜に連なるAMMのメンバーに、クリスチャン・フェネス、大友良英や中村としまるや秋山徹次などの日本の即興演奏家の演奏(そこには2000年代の日本の即興シーンの問題意識が反映されていたのはいうまでもない)をプロツールスのマトリクスに配置することで、ベイリーが固執したイデオム(ストック・フレーズ)から完全に自由な即興を、ハードウェアのメモリとソフトウェアのファンクションをかりて"作曲"に置き換えた『マナフォン』は音響(派)とダンス・カルチャーの挟み撃ちにあったアヴァン・ミュージックがメタな視点をふくむコンセプトを前景化しはじめた動きとも無縁でなかった。というより、『マナフォン』はそれらの命題に深入りすることなく、別の場所に回路を拓いたとみるべきで、その意味で、〈samadhisound〉以降のシルヴィアンの隠遁者めいたイメージに似つかわしい孤高をあらためて感じさせた。

 『マナフォン』の日本盤にはボーナス・トラックが1曲入っている。英国在住の日本人作曲家、藤倉大の"Random Acts Of Senseless Violence"のリミックスがそれだが、藤倉のヴァージョンはシルヴィアンの歌に複数の楽器が散発的に同期する、文字通りランダムな原曲にストリングスを加え、それぞれのエレメントを時空間上に再配置することで、全体を整理し直している。機能美を追究したリミックス=解体~再構築の図式ともちがう、変奏と呼ぶべき解釈がそこではおこなわれていたが、密室の作業を思わせるシルヴィアンのどこか切迫した原曲に較べ、藤倉の音楽は開かれている。シルヴィアンは他者の音を彼の歌に密着させたが、藤倉は外から音を操作した。このあざやかなコントラストはあたりまえのリミックスではほとんどあらわにならない。これに気をよくしたシルヴィアンはこの方法論を拡張し、作業は最終的に『ダイド・イン・ザ・ウール』にまとまった。"Random~"リミックスを再録したアルバムの半分は前作の"変奏"。のこりはアウトテイク(のリメイク)と新曲である。

「『マナフォン』のリミックスを作る考えは僕にはまったくなかった。『ブレミッシュ』に較べると、『マナフォン』を作るのは感情面ではるかに疲れることだったと言うと驚く人もいるかもしれない。完成した後に、また曲に向かう気持ちは残っていなかったし、『オンリー・ドーター~ブレミッシュ・リミキシーズ』の時と同じアプローチがうまく作用するとは思えなかった。『ダイド・イン・ザ・ウール』は漸進的に出現した」シルヴィアンはライナーノーツでこう語っている。
 シルヴィアンは気をよくしたわけではなかった。むしろ精も根も尽き果てていた。後につづく文章によると、漸進的にシルヴィアンを駆り立てたのは進行中の藤倉大とコラボレーションだった。そのとき、ポピュラー音楽史に独自の地位を確立したミュージシャンと、クラシックの作曲家の3年に渡る共同作業は数曲に実を結びつつあった。
 変奏はいずれも前作を更新している。目的がそもそもちがうのだろう。歌に弱音の即興の断片をオーヴァーラップさせた『マナフォン』のモンタージュ的な構造に『ダイド・イン・ザ・ウール』はフレームをあてはめている。1曲目の"Small Metal God"ですでに、『マナフォン』では音の素描ともいうべき簡素な即興が歌をとりまいていたが、『ダイド・イン・ザ・ウール』の藤倉大の変奏は音が明確な意味をもつと語るようである。意味とは体系であり、歴史とか学習とか、もっといえば歴史の学習とかをふまえた音であると、私は思う。依然、シルヴィアンと藤倉大の対比はあざやかである。そこに本作のもうひと組のコラボレーターであるノルウェイのエリック・オノレ&ヤン・バングのラップトップ・インプロヴィゼイションが加わるとコントラストに階調がうまれる。『マナフォン』の曲名に名前のみえる19世紀の詩人、エミリー・ディッキンソンの詩を歌った"I Should Not Dare""A Certain Slant Of Light"のポップな曲調はアルバムのフックでもあるが、モノクロームのアナーキズムといいたくなる手法で自身の音楽に静かに裂け目を作った前作を、優美に、しかし大胆に編み直した本作へ橋渡す役割を担っている。エリック&ヤンとの比較において藤倉のコントラストがいっそうきわだつのはシルヴィアンの慧眼というほかない。前作のオクラだしである"Anomaly At Taw Head"の60年代の武満徹を彷彿するエレメントを点在させた空間構成、"Snow White In Appalachia"のロマンティシズムといった動的な魅力はアルバムの中盤で顕著になる。最終的にそれは、ニューヨークでシルヴィアンと藤倉が行った二度目のセッションで録音した"The Last Days Of December"に落としこまれるのだけれど、バス・フルートの重音(マルチフォニックス)が軋むように低く唸り、弦のドローンが時間の後ろ髪を引くこの曲は単(淡)色の『マナフォン』の世界に色彩を加えた『ダイド・イン・ザ・ウール』の次の彼の方向性さえ照らすように思えてならない。

[Electronic, House, Dubstep] #8 - ele-king

1.Hype Williams - Kelly Price W8 Gain Vol II | Hyperdub


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 ハイプ・ウィリアムスが〈ハイパーダブ〉から12インチ・シングルをリリースすることがまず驚きでしょう。いくらダブという共通のキーワードがあるとはいえ、ダブステップとチルウェイヴが結ばれるとは......思わなかった。
 今年〈ヒッポス・イン・タンクス〉からリリースされたサード・アルバム『ワン・ネーション』は、レーベルが〈ヒッポス・イン・タンクス〉ということもあって、ドローンやアンビエントというよりはチルウェイヴ色が強く、しかも実に不健康そうな多幸感を持ったアルバムだったが、このシングルもその延長にある音楽性だ。まあ、〈ハイパーダブ〉もダークスターのようなエレクトロ・ポップを出しているくらいからだからなぁ。しかし......ハイプ・ウィリアアムスはこれでますます目が離せなくなった。アンビエント・ポップということで言うなら、A1に収録された"Rise Up"は最高の1曲だ。

2.LV & Message To Bears Feat. Zaki Ibrahim - Explode / Explode (Mothy's Implosion) | 2nd Drop Records


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 〈ハイパーダブ〉からのファンキーよりの作品やクオルト330とのコラボレーションで知られるダブステッパー、LV(先日、ファースト・アルバムを発表している)とブリストルのメッセージ・トゥ・ベアーズ(熊へのメッセージ)とのコラボレーション・シングルで、この後リミックス・ヴァージョンがリリースされるほどヒットしたという話で、実際にダンスフロアに向いている。ミニマル・テクノの4/4キックドラム、メンコリックなシンセサイザーのループとスモーキーな女性ソウル・ヴォーカルが浮遊するトラックで、ポスト・ダブステップというよりはヒプナゴジックなテクノである。

3.FaltyDL - Make It Difficult | All City Records


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 これはフォルティ・DLによる"ハウス"シングルだが、まるでヤズーがダブステップの時代に蘇ったような、エレクトロ・ポップと強力なダンスビートのブレンドで、ニューヨークらしいというか、しかしそれは彼がいままで手を付けていなかった引き出しのひとつを見せているようだ。
 B面の"ジャック・ユア・ジョブ"も力強いアッパーなビートの曲だ。リピートされる「ゲット・ユア・ジョブ(仕事を見つけろ)」という声はネーション・オブ・イスラムのルイス・ファルカンの声だが、それは90年代に人気のあったガラージ(歌モノの)ハウスのアーティスト、ロマンソニーの有名な"ホールド・オン"からのサンプルだと思われる。アイルランドのヒップホップ系のレーベルからのリリース。

4.The Stepkids, - Shadows On Behalf | Stones Throw Records


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 今年の9月にデビュー・アルバムのリリースが予定されている〈ストーンズ・スロー〉の大器。数か月前のリリースだが、昨今のソウル・ミュージックの復興運動における注目株なので紹介しておこう。まあこのレーベルが推し進めているジャズ、ソウル、ファンクにおける新古典主義のひとつと言ってしまえばそれまでで、感覚的に言えば、ザ・クレッグ・フォート・グループやギャング・カラーズ、あるいは〈エグロ〉レーベルとも共通する。綺麗なデザインがほどこされた透明のヴァイナルで、白地にエンボスのジャケも良い。

5.LA Vampires Goes Ital - Streetwise | Not Not Fun Records


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E王 アマンダ・ブラウンがついに三田格と!? というのはさすがにない。イタルは、〈100%シルク〉からソロ・シングル「イタルのテーマ」を発表しているダニエル青年によるプロジェクト名で、これはアマンダとのコラボレーション12インチ・シングル。パンク・ダブ・ダンスというか、彼女がダンス・ミュージックをやるとこうなるのだろう、危なそうな人たちがひしめく不法占拠した地下室における饗宴で、リー・ペリーがポップに聴こえるような過剰で砂嵐のようなダブ処理は相変わらずだが、ぶっ壊れたドラムマシンが暴走したようなアップテンポのビートは素晴らしい。それにしてもこのデッド・オア・アライヴのようなアートワークは......(笑)。

6.The Martian - Techno Symphonic In G | Red Planet

 今年も親分(=マイク・バンクス)はメタモルフォーゼにやってくるそうだ。あの男のことだから当然こんかいの日本の惨事についてはいろいろ考えているようだ。それで1年前に発表した火星人の6年ぶりの新曲がヴァイナルで登場した。タイトル曲はクラシック・デトロイト・スタイルで、B面1曲目に収録された"Reclamation(再生)"は題名からして東日本に捧げられているようにも感じられる。B面2曲目の"Resurgence "はじょじょにビルドアップテクノ・ファンク。

7.Vondelpark - nyc stuff and nyc bags EP | R & S Records

 ロンドンのバレアリック系チルウェイヴの2作目だが......実はまだレコード店に取り置きしたまま......。また次回にでも!

Various Artists - ele-king

 紙ele-kingのベース・ミュージック特集の飯島直樹さんの原稿には、このわずか半年のあいだにダブステップという言葉が消え、ベース・ミュージックという言葉に統一されつつある現状が書かれていたが、考えてみればダブステップというサブジャンル用語が登場してから、僕が知ってるだけでも8年は経っているので、まあ、そろそろ寿命なのかなという気がしないでもない。初めてダブステップという言葉を聴いたときは、それ以前の「スピード・ガラージ」や「2ステップ・ガラージ」という用語があまりにも短命だったがゆえに、ダブステップも同じ運命を辿ると思っていたから、いまはよくここまで拡大したものだと思う。ダブステップという言葉にはその出自である「2ステップ」と「ガラージ」が含まれているという点において良かったと思うが、さすがにこの1~2年における拡張された姿をみると、あれもこれもダブステップと括るには無理が生じてきているのも事実だ。とくにシーンにジョイ・オービソンのような、積極的に4/4のキックドラムを用いる作り手が出てくるとハウス・ミュージックとの境界がまず曖昧になる。そしてそれはこの音楽がいま間口を広げていることを告げている。ダブステップのごっついビートには、多くの女性が入って行きづらいという指摘がかねてからあったが、これなら貴婦人も踊れる。

 ロンドンの〈アウス・ミュージック〉を運営するウィル・ソウルは、もともとハウス・ミュージックの文脈にいた人で、その耳を惹きつけた新世代のプロデューサーが、ラマダンマン、アップルブリム、ジョイ・オービソン、そして最近ではジョージ・フィッツジェラルドといった連中である。このレーベルにおける大きな輝きのひとつはジョイ・オービソンの「The Shrew Would Have Cushioned The Blow」だが、ちょうど彼が〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉から出した目の覚めるような「Hyph Mngo」(2009年)に続いたこの12インチのタイトル・トラックは、あぶくのようなチョップド・アップ・ヴォーカルと波打つシンセ、そしてガラージを最小限の音数で表すビートとベースで構成されている。それから温かいアンビエント系のコードがクラクラするループのなかに途中から挿入されるという、極上のディープ・ハウスの質感とメソッドが応用されたトラックだ。シングルに収録されたもう1曲の"So Derobe"は――個人的にはもっとも気に入っているトラックのひとつだが――、シカゴ・ハウスのバウンスするベースラインとミニマル化した2ステップ・ビート、控えめなパーカッション、そしてアシッディなチョップド・アップ・ヴォーカルによって構成されている。それはハウシーだがハウスではなく、完璧なまでに〈ヘッスル・オーディオ〉と〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉にリンクしている。
 コンピレーション・アルバム『アウス・ミュージック・プレゼンツ・セレクテッド・ワークス』をもっとも特徴づけるのは、ラマダンマンとアップルブリムとの共作「Void 23 EP」に収録されたカール・クレイグによるエディット・ヴァージョンだろう。それはポスト・ダブステップがデトロイト・テクノと本格的に出会った記念碑的なトラックで、クレイグはこの若いダンス・ビートにメリハリを与え、勢いを強調している。
 また、レーベルの看板アーティスト、リー・ジョーンズのトラック"As You Like It"をリクルーズがリミックスしているが、それもこのレーベルの趣向を象徴している。それは......オールド・ファンにはお馴染みのペーパークリップ・ピープルにおける、あの長いイントロを経てあわてることなくアップリフティングしていくハウス・ミュージックで、途中から挿入されるジャズのコードのループといっしょにグルーヴが生まれていく......そうしたソウル・ミュージックの感覚こそが、ウィル・ソウルがもっとも愛するところである。
 アルバムには、他に〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉の主宰者スキューバ、それからラマダンマンのもうひとつの名義、ピアソン・サウンド、そしてオービソンに次ぐ期待の若手、ジョージ・フィッツジェラルドらの曲が収録されている。フィッツジェラルドの"Silhouette"の、ミュート気味のシンセのループによるイントロは、まあもろにアリル・ブリカというか、ウィル・ソウル自身のトラックにも共通するスタイルの、いわばデリック・メイ好みともいえる美しいアトモスフィアを持っているが、ミニマルなビートにはUKベース・ミュージックの痕跡がある。後半に重ねられるR&Bヴォーカルのスムーズなループはブリアルのようにスリリングではないが、しかしより多くの人には馴染みやすい軽やかさを持っている。それは〈アウス・ミュージック〉にとって大きな魅力なのだ。

Chart by TRASMUNDO 2011.07.19 - ele-king

Shop Chart


1

ERA

ERA 『3 WORDS MY WORLD』 »COMMENT GET MUSIC

2

INGLORIOUS BASTARDS

INGLORIOUS BASTARDS 『INGLORIOUS.LP』 »COMMENT GET MUSIC

3

Dj Bokados

Dj Bokados 『OLDIES AND GOODIES』 »COMMENT GET MUSIC

4

DJ gringoose

DJ gringoose 『Prillmal Spring DEODORANT SONGS』 »COMMENT GET MUSIC

5

febb

febb 『3000』 »COMMENT GET MUSIC

6

Hollie Cook

Hollie Cook 『Hollie Cook』 »COMMENT GET MUSIC

7

$kinny Cee

$kinny Cee 『HANG MAGIC TIME』 »COMMENT GET MUSIC

8

ACE a.k.a.少年A

ACE a.k.a.少年A 『FUCKIN BOOT EP』 »COMMENT GET MUSIC

9

Dj Highschool

Dj Highschool 『fill in my[blank]』 »COMMENT GET MUSIC

10

dj ASAMA

dj ASAMA 『RUBY MY DEAR』 »COMMENT GET MUSIC

zelone records - ele-king

 ゼロ年代の日本のもっとも重要な動きをしたロック・バンド、ゆらゆら帝国......突然のその解散から1年以上を経て、坂本慎太郎がいよいよ動きはじめるようですよ!

 彼が新たに手掛けるインディペンデント・レーベル〈zelone records〉、そのオフィシャルサイト(www.zelonerecords.com)からソロとしては最初の曲となる"幽霊の気分で"(英題 : In aPhantom Mood)を今週末の7月22日(金)に配信する......という連絡が同レーベルの藤原さんから入りました!
 素晴らしいですね。楽しみです。

Chart by JET SET 2011.07.19 - ele-king

Shop Chart


1

TOWA TEI

TOWA TEI SUNNY EP »COMMENT GET MUSIC
2011年ダンス・ポップの最高峰!豪華ゲストが参加したTowa Tei注目の6thアルバム、『Sunny』からのアナログ・カットが実現!YMOの高橋幸宏と、今最も輝いている人気モデル水原希子の参加が話題を呼んでいる"The Burning Plain"をはじめ、アルバム未収録のエクスクルーシヴ・トラックなど全6曲を収録。渋すぎるムーヴィー・ポスター風のジャケットにてお届けです!

2

WASHED OUT

WASHED OUT EYES BE CLOSED »COMMENT GET MUSIC
Grimes、Star Slinger、Lovelock(Steve Moore)によるリミックス収録!!ファースト・フル・アルバム"Within & Wihtout"からのリード・トラックが遂にヴァイナル・リリース!!リミキサー陣も完璧すぎます。

3

SLY MONGOOSE

SLY MONGOOSE WRONG COLORS »COMMENT GET MUSIC
誰も追いつけない怒涛のグルーヴに完全ノックアウト!!サイケデリック・ブルース・アフロ・ファンク・グルーヴ・バンド最高峰★新作登場です。JET SETオリジナル特典付き!!

4

PROJECT CLUB

PROJECT CLUB EL MAR Y LA LUNA »COMMENT GET MUSIC
Lovefingersリミックス収録!!アルバム・リリースも控えている模様のサウス・イースト・ロンドン発新進気鋭コンビ、The Project Clubの2nd.シングルは、自らかなりの自信作と述べるAndrew Hogge a.k.a. Lovefingersによる傑作リミックスを収録!!

5

WASHED OUT

WASHED OUT WITHIN & WITHOUT »COMMENT GET MUSIC
Glo-Fi / Chillwaveの代表格、Ernest Greene = Washed Outによる待望のファースト・アルバム!!09年の傑作"Life of Leisure"でMexican Summerから衝撃のデビューを飾ったUS西海岸の天才Washed Out。FREAKS MUSIC FESTIVAL'11での初来日パフォーマンスと併せて大きく話題を集めていた待望のファースト・アルバムが遂に到着。

6

IFEEL STUDIO

IFEEL STUDIO MORGENGRUSS III »COMMENT GET MUSIC
International Feel新シリーズから最高に素晴らしい新作が到着!!現在アルバム制作中と噂される"Ifeel Studio"シリーズの新作第2弾は、BBC Radio 1のRob da BankやChris Coco、Giles Peterson、Balearic Mike、DJ Cosmo、Bill Brewsterといった玄人をも唸らせた珠玉作。初回プレス・オンリーの700枚限定盤。

7

L.H.A.S. INC.

L.H.A.S. INC. DUSK TILL DAWN / LIQUID SOUL DROPS »COMMENT GET MUSIC
Jamie Read & Felix Dickinsonによる痛快アシッド・ハウス!!今年はRoots Unit主宰Vibrationからも"Learning to Live"をリリースと復活してきたベテランJamie Readと、Life Forceでお馴染みの人気者、Felix Dickinsonから成る"Larry Heard Appreciation Society"の新作が、4年振りのリリースとなるFelix主宰Cynicから登場!!

8

RAS G & THE ALKEBULAN SPACE PROGRAM / SUN RA

RAS G & THE ALKEBULAN SPACE PROGRAM / SUN RA VIEWS OF SATURN #1 »COMMENT GET MUSIC
注目のSun Ra再解釈シリーズ第1弾を担当するのは、やはりこの人Ras G!All City Dublinからのリリースとしては、同じく& the Afrikan Space Program名義の例の10"シリーズ第3弾ぶり。今回はSun Ra"Nidhamu"(71年)の熟成リコンストラクト・ワーク!

9

SLUM VILLAGE

SLUM VILLAGE FANTASTIC VOL.2.10 EP 2 »COMMENT GET MUSIC
まさかの! "Fantastic Vol.2.10"からのカット第2弾が登場。(涙)Bustaを迎えた"What It's All About"、D'angeloとの"Tell Me"、そして"Jealousy"を収録! もちろんインストもしっかりあります。

10

MELTON BROTHERS BAND

MELTON BROTHERS BAND LIVIN' IN THE CITY »COMMENT GET MUSIC
遂にあの激名曲が手に入ります....。奇跡のメロウ・グルーヴ"Livin' in the City"!!須永さんMix Tape収録、Madlibがサンプリング。エレピと込み上げメロディーが一生胸を締め付け続ける名曲"Livin' in the City"収録の超レア盤が再発です!!

P.O.L.STYLE (NUMBERS / NIGHTSHIFTERS) - ele-king


1
Bok Bok - Reminder - Night Slugs

2
Raw Milk - Spreo Superbus - Numbers

3
Mike Q - I Am Legend - Unreleased

4
Blawan - Getting Me Down - White Label

5
Girl Unit - Club Rez - Night Slugs

6
KMA Productions - Cape Fear (Vlad Caia & Cristi Cons Edit) - Unreleased

7
Larry Heard - The Sun Can't Compare - Alleviated Music

8
Logic - Blues For You (Hard Dub) - Strictly Rhythm

9
Maxsta - East London Is Back - Wiley Zips

10
Roska & Jamie George - D.U.L.T. - Rinse
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