「Nothing」と一致するもの

Matthew Herbert - ele-king

 UKの暴動(riotではなくriotsだ)を見ながらやりきれない気持ちになった。僕は1993年、たまたまロンドンでCJBのデモに参加して、そして暴動に巻き込まれて逃げ回った経験がある。こともあろうかハイドパーク沿いのマクドナルドに逃げてしまったために、まあ、ガラスは投石によってぱりんぱりん割れて、ホントに酷い有様だった。何が起きているのか掴めなかったが、それでもあとから気持ちは高揚した。なぜなら、その暴動には理想があり、政治的な異議申し立てがあった。
 ところが今回の暴動ときたら、BBCを見ていると、そのきっかけとなった警官の射殺に関しても、単なる言いがかりに過ぎないことが警官嫌いの僕にもわかる。また、その後の騒動がたんに暴れたいだけの、たんにモノ欲しさの略奪行為であることもわかる。BBCのレポーターに対して、ある若者は「だって政府が止めないからさー」と言う。「君の家のモノが君がいないあいだに誰かに略奪されたら君はどう思う?」と訊けば「そりゃ怒るよね」......。店で働いていた連中にしてもたまったものではないし、インディ・レーベルの倉庫も被害を受けている。狙われたのは何よりも服屋、それからスポーツウェア・ショップ、ゲームやコンピュータ・ショップ......とかそのあたり。社会への抗議でもないし、人種暴動でもない。

 震災後、しばらくして電車に乗ったとき、女性ファッション誌の中吊り広告に妙な空恐ろしさを覚えたことがある。「この夏はこんな服装で決めたい」などというコピーとともにモデル体型の女がこちらを見ていた。意訳すれば「この夏はこんな服を買え」となる。「買え」「買え」「買え」......と、その空虚なモデルは言っていた。
 あるいはこんなこともある。身内の話で恐縮だが、僕の両親は、テレビ番組の健康番組を盲信するあまり、あれもこれも食べている。野菜と果物を食べなければならない、あれもこれも摂らなければならない。「食え」「食え」「食え」......と言われ続け、食っている。買って、そして食っている。たまにサプリメントまで買わされている。
 これを資本主義的恐怖と呼ばずしてなんと呼ぼう。新しい靴を買わなければならない、新しい服を買わなければならない、スポーツウェア、ゲームにiPad、あるいは洒落た自転車......UKの暴動がこの恐ろしいオブセッションのなかから生まれたことはほぼ間違いない。物欲が暴動(というか略奪)をうながしているのだ。もちろん、まあ、マクロに見れば、嬉々としながら略奪を続ける若者たちも資本主義の犠牲者だと言えるのだが......。

 マシュー・ハーバートは、こうした資本主義的恐怖に警鐘を鳴らし続けているアーティストである。彼はかつて、電子音楽において音を「買うな」と言った。製品の音に満足するな、「自分で作れ」と。彼はそして、彼のクラシックとジャズの知識とハウス・ミュージックへの好奇心と、それから「買った」音ではなく彼自身が「作った音」によって、2001年に最高のアルバムを完成させた。それがこの度、リイシューされる『ボディリー・ファンクションズ』である。
 『ボディリー・ファンクションズ』はすべての電子音を身体に関するモノから採取して作られている。それら彼が「作った音」は、ダニ・シシリアーノの甘美な歌、フィル・パーネルのジャズ・ピアノと混じり合って、エレガントかつ芯のあるエレクトロニック・ミュージックとなった。10周年記念盤には、シングルで発表されたすべてのリミックス・ヴァージョンも収録されている。
 また、『ボディリー・ファンクションズ』の再発と同時に、"ワン"シリーズの最終章、『ワン・ピッグ』がいよいよリリースされる。ハーバートひとりがすべてをやるというコンセプトのこのトリロジー――最初の『ワン・ワン』は彼のシンガー・ソングライター・アルバム、続く『ワン・クラブ』はクラブの音(壁の音や便所の音まで)を採取して作ったテクノ・アルバム、そして今回は「豚の一生」をテーマにした政治的かつ実験的なものとなっている。

 ハーバートが自身のブログで初めて『ワン・ピッグ』についてアナウンスしたのは2009年5月のことだった。「このアルバムは、豚が一生で発せられる音を使って作られる。その豚の誕生の瞬間、生きているあいだ、死を迎える瞬間、そして食用の肉として処理される場にも僕は立ち会う予定だ。その豚の肉はシェフに渡り、そこにはご馳走が用意されるだろう。そのすべてが録音される」と、当時ハーバートはブログで書いているが、一匹の家畜、一匹の"豚の一生"をテーマに音楽を作るといった内容は大きな反響を呼んだ。『ガーディアン』のような新聞が大きく取り上げたばかりか、動物愛護団体のPETAはそれを動物の虐待を素材とした娯楽の制作として抗議したほどだった。

 『ワン・ピッグ』は、いままでのハーバート作品のどれとも違っている。それは採取した音の多くが豚の声であるという点において、音楽作品として異質な響きを有しているのだ。豚の誕生における美しいハーモニーと豚の声、兄弟たちと戯れているのであろう豚の声と彼のエレクトロニックな展開......豚の鳴き声は豊かな音であり、聴く側の精神状態によっては暗示的かもしれない。
 2010年9月のブログでハーバートはこう書いている。「死はこのプロジェクトにとって重要で、もっとも望まないプロセスでありながら僕が理解する豚の一生にとっていちばん強く関連している部分であると感じる」
 アルバムは、豚が殺され、そして調理され、食べられるところまでを描いている。ハーバートは、2005年の『プラット・ドゥ・ジュール』において、我々の食卓がいかに市場原理によって支配されているのかをほのめかした。スーパーマーケットの安さは、そのいっぽうでは個人経営の農家を窮地に追いやっている。1本のスパゲティにも実に怪訝な権力が関わっている。それは我々がこの薄氷を踏むような現代生活を営むうえで、たいした疑問を持たなくなっているところでもある。
 「このアルバムは自分のなかに多くの政治的、文化的、音楽的、道徳的疑問を生み出した」と彼は僕の取材で答えているが、『ワン・ピッグ』は、マシュー・ハーバートらしい問題提起をはらんだ実に興味深い作品だ。まずは何よりも僕は、自分が豚の声をよく知らなかったという事実に気がついた。豚のショウガ焼き定食やカツ丼、カツカレーを頻繁に食べているというのに、僕は豚の味ばかりを知っている。それは"常識"として、とくに疑問を持つべきことではないのだろうか。

Anti-G - ele-king

 諸般の事情で2ケ月遅れの紹介です。梅雨との見境もなく急に暑くなりはじめた頃です。つーか、もう、2ケ月も暑いのか......。暑い......。暑い...。

 反重力という意味なのか(G=グラヴィティ?)、アムステルダムのアフリカ系プロデューサー、ケンリック・コナーによるデビュー・アルバムは、たしかに腰が浮いてしまうようなユーロ・ハウスとUKベースのキメラといえ、洗練されたゲットー・ミュージックのユニークさを伝えてくれる。音数が少なく、非常にシンプルな構成で、アシッドな感覚に訴える面も強い。これは面白い。

 デイヴ・クアムによる詳細なライナーノーツによると、80年代末にオランダのハーグでDJモールティエが回転数を間違えてダンスホールのレコードをプレイし、それをオーディエンスが熱狂的に支持したことが「バブリング」というシーンをスタートさせたという。90年代を通じて移民を中心に拡大したバブリングは特異なカリビアン・ミュージックとしてさまざまなテクを加えながらロンドンのジャングルと同時並行で発展を遂げ、00年代も後半になると、ダッチ・ハウスに人気の座を明け渡す。オランダの移民文化というと、マルチ-カルチャラリズムを拒否したノルウェイの虐殺事件同様、04年にゴッホの甥の孫に相当する映画監督がイスラム過激派に路上で刺殺される事件がオランダ政府による同化政策の失敗を象徴していると報じられていたように(フランスの暴動の予告をなしたともいわれた)、非常な軋轢のなかでその文化を発展させていたことが容易に想像でき、当時のオランダでアフリカ系とラテン系の10代によって発展させられたという事実が、その急進性を物語っているといえる。「インスピレイションがバブリングと出会う」とか「バブリングがトラブルを引き起こす」といったタイトルはそれだけで何をかいわんやである。

 サウンドの隅々から醸し出される歪みや緊張感、そして、独特のユーモアはニューオーリンズでジャズが誕生したときと同じだとはいわないけれど、近いムードを持っているところはある。バブリング・ハウスの担い手としてライナーノーツにはほかにも若いDJたちの名前が列挙され、どちらかといえば洗練されたサウンドに目を付けやすい〈プラネット・ミュー〉の嗜好を考えると、サウンドの背景から考えてもっとブルータルな音楽性をメインに打ち出しているプロデューサーもまだまだ後には控えていることだろう。リリースが進むことを期待したい。

 現在、18歳になったばかりだというコナーは、10代を通じて「バブリング」を全身に浴びて育ったことは間違いない。これにUSヒップホップはもちろん、レゲトンやハウスが縦横に絡み合っているさまはすぐにも聴き取れる。エンディングに向けてヒップホップの色が濃くなっていく以外は、どのサウンドに優劣があるでもなく、見事なハイブリッド・センスだと言わざるを得ない。全体にハイファイでまとめられ、チップチューンのようなファニーさが過激なほど、そのドライさを引き立てている。

 また、イタリアのハウスに深くコミットしたことがある人には、92年に〈ビート・クラブ〉からリリースされたダブル・FMを強く想起させる面があることも伝えておきたい。ダブル・FMの、とりわけ"イリュージョン"で聴くことのできたヒプノティックなトライバル・ドラムが"フリーク・イット・アウト"や"フル・アップ"からはダイレクトに蘇ってくる。ハットの入るタイミングがまったく同じではないかと、かつてのイタリアン・ハウスまで聴き直してしまう夏......であった。

Sly Mongoose - ele-king

 『ミスティック・ダディ』が出た2009年は私の会社員最後の年だったので思い出ぶかい。あれからもう2年経つのかー、と愚にもつかない感慨を嘆息とともにもらしてしまうのも栓ないことだとお許しいただきたい。また、これはさらにどうでもいいことだが、年を重ねるにつれ時間がたつのが早くなるのはどうにかならないものか。気がつけば1日は暮れている。いまは夏であるから日が長いはずなのにそうは思えない。年をとると肉体はリットしていくのに人生はアッチェするのだろうか。この心身二元論の時間の側面における真逆の速度記号は人間は元からポリ(複合)グルーヴをもっているのではないかという妄想をかきたてる。あくまで妄想だが、こう暑いと空想さえ千々に乱れるし、だいいち私はいま、スライ・マングースの『ロング・カラーズ』を聴いている。
 "Wrong Colors(誤った色)"と題したスライ・マングースのアルバムは彼らの通算4作目で、スチャダラパー+ロボ宙とのハロー・ワークスの『ペイ・デイ』、そのあとにリリースした彼らの分岐点ともいえる『ミスティック・ダディ』から数えて2年目にあたる。分かれ目とはなんだったかというと、ダークで複雑な、つまりニューウェイヴとプログレシッヴ・ロックの記号性をグルーヴのフィルターを通し表現した『ミスティック〜』は、ダンス・カルチャーのレフトフィールドにあったスライ・マングースを、形容を付さないオルタナティヴ・ミュージックの領域に引きずり出した点にある。じっさいは引きずり出したのではなく、なるべくしてそうなった。スライ・マングースはジャンルを問わず、出音すべてを彼ら自身の言葉で語る術を体得した。これは頭で考える方法論とちがい、ひとが生まれ言葉をしゃべるようになるのと同じく、自然であり、また成熟するものである。そして、いうまでもないことだが、言葉は環境に左右され、身体に根ざしている。

 スライ・マングースの語法の中心には笹沼位吉のベースがある。ジャストからやや後ノリの笹沼のベースは、その特徴的なヌキサシのセンスも含め、レゲエを礎石とするが、塚本功のギターや松田浩二の鍵盤、富村唯のパーカスは笹沼の音楽性に追従しない。と書くと、悪口かと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではない。私はその絶妙の異化のスタイルがスライ・マングースとスタジオ・ミュージシャン集合体みたいな凡庸なバンドとを分かつ一線だと思う。ジェイムズ・ジェマスンを中心とした〈モータウン〉のハコバン、ファンク・ブラザーズはファンク〜ソウルの礎石ともいえるグループだが、彼らが作ったのはモータウン・サウンドであり、ジャンルではない。ジェマスンのベースはのちに普遍化されたものでしかない(普遍化がどれほど気の遠くなる、たいへんなものであるかはここではふれない)。
 私は音楽的な影響関係をいいたいのではなく、音楽の語り方をいっている。私はあるいはポリリズムとセットでいわれることの多い"訛"という言葉をもっと恣意的に、クセとか雰囲気とか揺らぎとかと同じ意味でもちいたいのかもしれない。だいいちスライ・マングースの訛はポリリズムと直接的には結びつかない。"エージェント・オレンジ"の10+6のリフと、8のドラムが2小節ごとに回帰するパターンはポリリズムの典型だが、この曲ではフェラやフェミのアフロビートに特有のうねりより、シェウン・クティがイーノのプロデュースで作った新作に似たマシナリーなグルーヴ・センスが前に出てきている。ここではリズムの空間性より時間の持続性を優先している......とかいう難しい講釈は抜きにしても、スライ・マングースの訛の一面はおわかりいただけたかと思う。
 ひとかどの訛をもってしまえば、またそれを世間ズレしてなくしてしまわなければ、どのような記号を扱おうとスライ・マングースのものとなる。ユーロ・ロックを参照した前作から、『ロング・カラーズ』ではエスニックをキーワードにサウンドトラック的な音楽遍歴を行っている。2曲目の"フー・マンチュー"(高橋幸宏とは無関係)は無国籍の国籍をもった音世界、 前述の"エージェント・オレンジ"はアップテンポのリフ主体の楽曲だが、この曲では塚本功のウードを思わせるアコースティック・ギターが不穏なサブリミナル効果を担っているし、パーカッションとギターが中心となった"ヤウザ!"の呪術性は『ロング・カラーズ』のカラーのひとつだろう。KUKIのエフェゥティヴなトランペットは音楽を色づけし、初参加となるドラムの繁泉英明と笹沼のリズム隊はバンドをしっかり支えているが、このアルバムではノンビートの曲やパートがこれまで以上に多い。私たちをグルーヴに巻きこむような手法はややうすらぎ、練りこんだ細部とアルバム構成の緩急でリスナーをひきこむ、ひとまわり大きくなった構えがとられている。そこには"サミダレ"でのmmm(ミーマイモー)のフィーチャーもふくまれる。mmmはマリア・ハトや王舟のメンバーで、『ミスティック〜』と同年に出した宇波拓のプロデュースの『パヌー』で注目を集めたシンガー・ソングライターで、スライ・マングースと親交があったとは不勉強ながら知らなかったが、ともあれ、mmmの声質とマングースのトラックは、和物レア・グルーヴをバレアリックな文脈に置き変えたような質感がある。このように、『ロング・カラーズ』の尺はLPに収まるほどコンパクトなのだが音楽の射程は広い。音楽が喚起するイメージの振幅が広いとでもいおうか。当然のことながら、"フロム・ファルス(笑劇)ランド"ではじまる本作の甘くないユーモアが私たちの胸元に突きつけられているのも忘れてはならない。まったく、スライ・マングースは油断ならない。

Chart by Underground Gallery 2011.08.11 - ele-king

Shop Chart


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JERRY WILLIAMS

JERRY WILLIAMS Ease On Yourself (ghost town) »COMMENT GET MUSIC
DAVID MANCUSO、DJ HARVEY、IDJUT BOYS、PRINS THOMAS、FRANCOIS.Kなど、ここでは紹介しきれない程、沢山のDJ達がプレイしまくっている、話題作が遂に入荷!過去のリリース、そのいずれもが大ヒットを記録したNYの大人気リエディットレーベル[Ghost Town]新作は、既に上記著名DJ陣もビッグサポート中の超・超・超話題作!何と言ってもお勧めは、[Flexx]や[Hands Of Time]、[Sentrall]、[Adult Contemporary]からも作品を残す、カリフォルニアのプロデューサーTHE BEAT BROKERが、ERIC CLAPTONらにも楽曲を提供していた事でも知られる、スワンプ・ロック界の雄 JERRY WILLIAMSの79年リリース作「Gone」に収録されていた「Ease On Yourself」のリミックス A1。オリジナルの情熱的なファンク・ロックな雰囲気はそのままに、サイケデリックな鍵盤やエフェクティブなリフなどを鳴らし、程よく緩いバレアリック感を抽出させた、傑作ダブ・ブギー・ディスコに仕上げています。既に国内外を問わず、色々なDJ陣が各地でプレイしまくっているようですので、聴いた事があるという人も本当に多くいるはず!1stプレス盤は即完売、リプレス待ちの状態だっただけに、買い逃していた人は絶対にこの機会をお見逃し無く!!またカップリングには、同曲のオリジナル B2に加え、同アルバム収録の「Call To Arms」のDENNIS KANEリミックスを収録。オススメ!

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 JEFF MILLS

JEFF MILLS 2087 (AXIS) »COMMENT GET MUSIC
JEFF MILLS「The Power」に続く、完全限定アルバム「2087」完成!1966年に公開されたクラシックS.F 映画「Cyborg(サイボーグ): 2087」の架空のサウンド・トラックとして制作された今作、繊細で深淵な電子音によって描かれた、神秘的な音風景により、映像的なイメージが喚起されてく、コンセプチャルな作品。

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 TRY TO FIND ME

TRY TO FIND ME I'm Dancer / Needs Ending (Golf Channel) »COMMENT GET MUSIC
DJ HARVEYのパワープレイが話題となった前作「Get To My Baby-TBD Extension」でお馴染みのTRY TO FIND ME、待望の最新作! NYの鉄板地下レーベル[Golf Channel]新作は、LEE DOUGLASとのTBD名義でも活躍する JUSTIN VANDERVOLGENのリエディットプロジェクト TRY TO FIND ME。今回はSide-Aで、炸裂系のドラムグルーブにエッジの効いた80'sなギタープレイを響かせた、ロッキンディスコ「I'm Dancer」。Side-Bには、メランコリックなメロディー、ソフトな女性ヴォーカルが◎なレイト・ドリーミーなバレアリックディスコ作「Needs Ending」。どちらもそれぞれの場面に応じたキラーチューンになりそうですね〜。

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VLADISLAV DELAY QUARTET

VLADISLAV DELAY QUARTET Vladislav Delay Quartet (Honest Jon's) »COMMENT GET MUSIC
話題の即興四重奏、VLADISLAV DELAY QUARTETデビューアルバム! ここ最近はMORITZ VON OSWALD TRIOのメンバーとして活動をしてきた、フィンランドのダブテクノ第一人者、VLADISLAV DELAYが、元PAN SONICの奇人MIKA VANIO、アルゼンチン人ミュージシャンのLUCIO CAPECE (ソプラノサックス/バスクラリネット)、"Improvised Music From Japan"のコンピレーションにも参加経歴を持つインプロヴァイザーDEREK SHIRLEY(ベース)を率いて、VLADISLAV DELAY QUARTETを結成! 旧ユーゴスラビア、セルビアのベオグラードにある、元ラジオ局だったというスタジオにて、僅か一週間で録音されたという今作、アコースティックとエレクトロニックが同居した、フリーインプロヴィゼーションを展開。

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JAMES BLAKE

JAMES BLAKE Order / Pan (Hemlock Recordings) »COMMENT GET MUSIC
ベースの振動の聴け!!出来るだけ爆音でどうぞ...。 少し遅れていましたが、この夏の話題盤、やっと入荷しました!説明不要の若き天才JAMES BLAKEの最新12インチ!これがかなり実験的かつドープでヤバい!!アルバムで魅せたような、ソウルフルなヴォーカルは一切なく、ベースの振動とリズムのみに焦点を当てた、新境地といえる問題作!無駄を徹底的に省き、ベースの鳴りを追求した、とにかくヘビーな一枚!家庭用のオーディオ機材で、どれくらい再生されるのかは、判りませんがが、凄い音がなっています。出来るだけ爆音でどうぞ

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HEROES OF THE GALLEON TRADE

HEROES OF THE GALLEON TRADE Neptunes Last Stance (Golf Channel) »COMMENT GET MUSIC
限定盤!レーベル買い出来る数少ないレーベルの一つ、UGヘビー・プッシュのN,Yアンダーグラウンド[Golf Channel]新作は、70'sクラウト/サイケロックな1枚。 同レーベル4番に登場していたSEXICANことGALLEON TRADEと、レーベル13番に登場していたGHOST NOTEのCHRIS MUNZOによるユニットHEROES OF THE GALLEON TRADEによる作品。Side-Aでは、泣きのギターリフが印象的なブルージーでフォーキーなアコースティック・サイケ・ロックナンバー「Neptunes's Last Stand」。QUIET VILLAGEや[Whatever We Want]作品、70'sロック方面の方には特にオススメですね〜。Side-Bでは、軽やかなパーカッションを鳴らしたハウストラックに浮遊感のあるスペーシーなコズミックシンセ、ディストーション・ギター、[Flying Dutchman]で知られる 超大御所ジャズ・ヴォーカリストLEON THOMASの歌声、トランペットを交えた コズミック・ハウス作「Winter Island Romance」。どちらも間違いありません!当然、今回も超一押しです!

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PARRIS MITCHELL

PARRIS MITCHELL Juke Joints Vol.1 (Deep Moves) »COMMENT GET MUSIC
94、5年頃、DERRICK MAYがヘビー・プレイしたカルト・シカゴ・チューンが復刻! うぉー!!これだったんだ!DERRICK MAYが、[Dance Mania]や[Relife]辺りのシカゴ・ハウスを連発していた94、5年頃に、毎回欠かさずプレイしていた、ジャッキン・ハウスが復刻! 94年に[Dance Mania]からリリースされた2枚組「Life In The Underground」から、4曲が抜粋されて復刻!何と言ってもA2に収録されている「Rubber Jazz Band」がイチオシ!ジャジーなウッド・ベースとチープにフランジングするウワ音のみで超ファンキーに攻めるシカゴ・チューン!94、5年頃のDERRICK MAYのDJプレイで、欠かさずプレイされていいました!個人的にも15年以上探していたので、これは本当に嬉しい

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2000 AND ONE

2000 AND ONE Kreamm (Bang Bang!) »COMMENT GET MUSIC
VILLALOBOSとLUCIANOが"B2B"でプレイしている、TYREE「Video Clash」 のカヴァーがコレです! 既にヨーロッパで話題となっているキラー・チューン![100%Pure]のディスコ・ライン人気レーベル[Bang Bang!]の新作は、ボス2000 & ONE自らが、いろんな意味で強烈な一枚をドロップ!シカゴ・クラシック古典、TYREE「Video Clash」 の、カヴァー?リメイク?リミックス?リエディット?コピー? 笑いが出るくらいに「Video Clash」 なんですが、とにかくカッコイイです! ヴァイナル・オンリーです!

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PIGON

PIGON Sunrise Industry (Dial) »COMMENT GET MUSIC
両者共にソロ活動が活発化し、各自順調な活躍を魅せていた、EFDEMINとRNDMコンビが久々にPIGON名義で新作をリリース!温度感もテンションも「絶妙」!決して熱くならない、程良い高度感を保ちながら、淡々とビートを刻んでいく「Painting The Tape」、丁寧な音響工作も光る、アトモスフェリックなディープ・テクノの「Sunrise Industry」、拍子木のような音が、巧みに変化そながら転がっていく「Flip_Over Pill」など、全曲完璧!

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REWARDS

REWARDS Equal Dreams (Dfa) »COMMENT GET MUSIC
BEYONCEの実妹 SOLANGE KNOWLESをフィーチャーした ソウルフルなNu-Disco作!コレ、本当にオススメです! TEST ICICLESの元メンバーとしての活躍でも知られる DEVONTE HYNES新作が NYの名門[Dfa]から登場。何と言ってもオススメは、Side-Aに収録されたタイトル作「Equal Dreams」で、グルーヴィーなブギーファンクグルーブとメランコリックな鍵盤、生っぽいフルートなどが交差するトラックに、ソウルフルな歌声を響かすSOLANGE KNOWLES嬢のヴォーカルが見事にハマる、Nu-Disco〜Deep House方面にかけて幅広くオススメしたい 超大推薦作!!カップリングには、同作のインストと、80年代のシンセポップな雰囲気を感じさせる「Asleep With The Lights On」。是非、チェックしてみて下さい!

Little Dragon - ele-king

 スウェーデンの4人組のバンド、リトル・ドラゴンをどうして聴いたかと言えば、ロンドンのダブステッパー、サブトラクトのアルバムにフィーチャーされていたからで(『サブトラクト』のなかでもリトル・ドラゴンが参加している曲は3本の指に入るほど良かった)、その数年前にはトドラ・Tにリミックスを依頼させている。話によればビッグ・ボーイともコラボレーションもじきに出るという。こうなれば、クープなどいちども聴いたことのないような僕も興味を抱くようになるわけだ。まあ、ユキミ・ナガノは昨年のゴリラズのアルバムにも参加していたし、数か月前にリリースされたラファエル・サディークのような大物の新作にもフィーチャーされるくらいだから、はっきり言えばいまや売れっ子なのだ。
 リトル・ドラゴンはジャズではない。強いて言えばR&B調のシンセ・ポップのバンドだ。ロンドンのベース・ミュージックとリンクしているだけあって、実に格好いいベースを有している。ベースはユキミ・ナガノのヴォーカリゼーションとともにこの音楽の魅力のひとつとなっている。

 『リチュアル・ユニオン』は彼らにとって3枚目のアルバムで、間違いなく、いままでもっとも注目を集めている作品だ。それは先述したように、彼らの拡張しつつある活動領域ゆえであるが、ところでベース・ミュージックとリンクするR&B調のバンドといえば、そう、ジ・XXがいる。『リチュアル・ユニオン』にはたしかに『ジ・XX』と似た瞬間もなくはない......が、リトル・ドラゴンはより外向的だし、電子ポップ的だ。オープニング・トラックの"リチュアル・ユニオン"は、ジ・XXのベースラインが明るい場所で飛び跳ねれているような曲だし、続く"リトル・マン"もソフト・セル調のシンセ・ポップがダブステップの時代に蘇ったような曲だ。控えめな"ブラッシュ・ザ・ヒート"のような曲にはこのバンドのスキルがよく出ている。淡泊なミニマル・ビートを基調にしながら見せる巧妙な展開が際だっているのだが、それはまあ、器用なこのバンドのすべての曲に言えることか......。ファンキー調のリズムとアンビエントを組み合わせた"ウェン・アイ・ゴー・アウト"、ディスコ・ファンク調の"ナイトライト"といった曲も魅力的で、ドリーミーなクローザー・トラックの"セカンズ"も印象的だ。
 熟練したバンドによる手の込んだポップ・アルバムで、多くの人に気に入られるタイプの作品だとは思うが、良くも悪くもエモーショナルな深さというものは感じない。スタイリッシュだが重さはなく、だから良いとも言えるし、MOR一歩手前とも言える......『リチュアル・ユニオン(儀礼的組合)』というタイトルで結婚式の写真てのもなー、金がなくて結婚式をさっさと諦めた人間が言うのもひがみっぽくて何だが、このタイトルにしてこのデザインではB級のJ-POPみたいな迎合主義というか。音楽はファッショナブルだというのに......まったく、レコードなんかで購入するんじゃなかったよ。

Chart by STRADA 2011.08.09 - ele-king

Shop Chart


1

HIROSHI WATANABE

HIROSHI WATANABE ISOLATED SOUL-KUNIYUKI REMIX UNDERTONE(UK) / »COMMENT GET MUSIC
新興レーベルUNDERTONE RECORDINGSの初12インチ・リリースは日本が世界に誇るアーティストHiroshi Watanabe aka KAITO!パーカッシヴでアフロ・ダブ・テイストなKUNIYUKIによるリミックスを収録!繊細でグルーヴィーなディープ・ハウスのオリジナルもグッド!

2

TORN SAIL

TORN SAIL BIRDS(COS/MES & FRANKIE VALENTINE REMIXES) CLAREMONT 56(UK) / »COMMENT GET MUSIC
スライド・ギターの音色に心地良いパーカッションやダビーに処理された男性ヴォーカルにハマるCOS/MESによるリミックスがオススメ!ベテランFrankie Valentineによるノリの良いフォーク・ロック調のミックスもナイス!

3

TRY TO FIND ME

TRY TO FIND ME TRY TO FIND ME VOL.3 GOLF CHANNEL(US) / »COMMENT GET MUSIC
DJ HARVEYらもプレイし大ヒットとなった「Get To My Baby」で知られるユニットTry To Find Me(Justin Vandervolgenによる変名ユニットという噂)の第3弾12インチ!エレクトリックなベースを軸にギターやパーカッション、男性ヴォーカルが絡むファンキーなディスコ・チューンのA面、メロディアスでムーディーな女性ヴォーカルもののミッド・テンポもののB面共に◎!

4

PAPERCLIP PEOPLE

PAPERCLIP PEOPLE 4 MY PEEPZ-DUBFIRE REWORK PLANET E (US) / »COMMENT GET MUSIC
Carl Craigによる変名プロジェクトPAPERCLIP PEOPLEの98年リリースの名作「4 MY PEEPZ」に新たなリミックス・ヴァージョン登場!DUBFIREがグルーヴィーで図太いトラックにアップデートしております!これは盛り上がる!

5

S.A.S.

S.A.S. ARE YOU SATISFIED E.P. FOOT & MOUTH(UK) / »COMMENT GET MUSIC
DJ HARVEYがリミックスしたことでも知られる89年のシカゴ・ハウス・クラシックス『HOUSE NATION UNDER A GROOVE』を含む初期ハウスのリエディット4曲入りの12インチが登場!オールドスクール&クラシカルな雰囲気はそのままに、現在のフロアでバッチリつかえる様チューニングされたオススメの一枚!RADIO SLAVEらが絶賛サポート!

6

ROBERT OWENS

ROBERT OWENS ONE BODY:INTERPRETATIONS EP NEEDWANT(UK) / »COMMENT GET MUSIC
ハウス・ミュージック黎明期から常に活躍しているベテラン・シンガーROBERT OWENSがナントNicholas、Mario Bassanov、Kaineといった新世代のアーティスト達を随え、強力な12インチをリリース!Nicholasらしいヘヴィーでちょっと遅めの90'sハウスっぽいミックスを筆頭に、各人気合の入ったシカゴ・ハウス・テイストな仕上がり!

7

JOHNWAYNES

JOHNWAYNES LET'S GET LOST VOL.8 LET'S GET LOST(UK) / »COMMENT GET MUSIC
絶好調のLet's Get Lost第8弾は第7弾に引き続きJohnwaynesが担当!アフロ・テイストなコズミック・チューンJasper Van't Hof「Hoomba Hoomba」のエディットをはじめ、恐ろしくドープに生まれ変わったGwen McCrae「Funky Sensation」、図太いベースが圧巻のダブ~レゲエ・ハウスのB2と、今回も大充実の内容!

8

CITY 2 CITY

CITY 2 CITY CITY 2 CITY BALANCE(FR) / »COMMENT GET MUSIC
CHEZ DAMIERが主宰するBalance Recordingsからデトロイト・テクノのフレイヴァー満開の1枚登場!CITY 2 CITYというユニット名からしてURのGalaxy 2 GalaxyやWorld 2 Worldを連想させますが、そんなネーミングを名乗るだけあって、クオリティーの高いディープで洗練されたデトロイト・テクノ~ハウスを展開しております!

9

ASHFORD & SIMPSON

ASHFORD & SIMPSON ONE MORE TRY-DIMITRI FROM PARIS EDIT WARNER (US) / »COMMENT GET MUSIC
RhinoレーベルからリリースされたAshford & SimpsonのCDにのみ収録されていた(アナログ・ボックス・セットには未収録)「One More Try」のDimitri From Parisによるエディット・ヴァージョンがアナログ12インチになって登場!ダンサブルなビートに強化された好エディットだっただけにこれは嬉しいアナログ化!しかもオリジナルの12インチ・ヴァージョンも収録されております!

10

MTUME

MTUME SO YOU WANNA BE A STAR EPIC (US) / »COMMENT GET MUSIC
【DANNY KRIVITプレイ!】オリジナルUS12インチはプロモ・オンリーのためレアな1980年の名曲が再発!メロディアスで伸びやかな女性ヴォーカルも最高な一発!同じく80年制作のファンキーな作品「Give It On up」をカップリング

Inc. - ele-king

 ここ数年のインディ・ロック・シーンにおいて、シンセ・ポップのリヴァイヴァルが目立つ点は多くの人が認めるところである。渦中のアーティストに明確にリヴァイヴァリストとしての意識があるのかどうかについては留保が必要だが、聴こえてくる音がシンセをフィーチャーもの、あるいはエレクトロ・ポップだったりすることは間違いない。
 この状況を牽引しているアーティストの多くは80年代生まれであって、ニューウェイヴの記憶など体験であるというよりは伝聞だ。よって彼らの方法や態度、また単純に音をめぐって、年長世代からのわりに厳しい評価があることも事実である。しかしアーティストばかりではなく、おそらくは彼らと同世代かそれ以下のリスナーもこの状況をよろこび、享受しているわけで、彼らの時代感覚がこれらシンセ・ポップの潮流の一部をチルウェイヴといった概念へと押し上げ、その裾野を広げ、解釈を洗練させていっている昨今である。よって当然と言えば当然だが、同じ時代の特定の音楽を参照しているように見えて、オリジナル世代に見えているものと当該アーティスト/リスナーに見えているものとは異なっているはずだ。
 インクにもまた濃厚すぎるほど80年代へのまなざしがある。なぜ80年代へとひかれていくのかという「そもそも論」はここでは措くが、彼らに見えているその時代もひとつの齟齬を含んでいるかもしれない。

 インクはロサンゼルスの兄弟ユニットで、ティーン・インクという名義で本作の前に1枚のシングルをリリースしている。アーティスト写真や彼らのホームページを訪ねればそのデザインのすみずみにまで80年代カルチャーへの思慕が刻み込まれていることがわかる。コスプレというレヴェルではなく、当時を実際に成人として生きたことを疑わないかのような奇妙な迫力があってしばし見入ってしまう。音も同様で、とくに前シングル「ファウンテンズ」はティアーズ・フォー・フィアーズなどを思わせる都会的なアフター・アワー・ポップ。そのシルキーでスムースな感覚は〈4AD〉からリリースとなった本シングルにも引き継がれているが、彼ら最大の特徴はほとんどのレビュワーが指摘するようにプリンスっぽさである。
 『ピッチフォーク』などはほとんどプリンスの盗作として不当なまでに低い評価を下している。「インクがなにか証明するとすれば、それはだれでもプリンスのマイナーなディスコグラフィから強盗を働けるということだ......」
 たしかにそっくりではあるが、では「インクを聴くならプリンスを聴けばいい」となるかといえば、そうはならない。これはパクリか否かという正統性をめぐる問題ではないのだ。もっと言えば、おそらくこの執筆者にはオリジナル世代が生きた時代やその時代の特定の音への正しい理解があるかどうかといった点でひっかかりや快く思わない点があるのだろうが、それすらも問題ではない。インクにはインクのプリンスがあり、80年代があり、いまがあり、それが彼らのなかでしっかりつなぎあわされていると感じるからこそこちらは共感するのである。あの美学的で隙間の多いファンキー・ソウルはたしかにプリンスの手つきだが、劣化したプリンスではなくてまるで別物だ。
 "スウェア"を聴くとよくわかる。"スウェア"のイントロ、まばゆくけむたげなシンセのフックが素晴らしい。切なく、みずみずしく、典雅だ。この冒頭に限って聴かれる独特のリヴァーブ感とこもったような音処理には、チルウェイヴに通じる感覚があり、じつにいまらしいと感じる。インターネット時代の無限にアーカイヴィングされた情報空間にばらばらに放り出された我々の、それぞれのありかたを静かにつつみ、祝福するかようなぬくもりがある。インクがプリンスのかわりにならないように、プリンスもまたインクのかわりにはならない。個人的な感覚から言えば、本当のプリンスや本当の80年代などどちらでもよいのである。むしろ、その「本当」が実装されていないプリンスであったり80年代だったりするからこそ後続世代にとってオルタナティヴに機能するのだ。

 あまりにシンプルなリフだが、"スウェア"ではその単音の音符と音符のあいだに、そして頼りなげな後打ちのビートの隙間に、レコードが回転していく時間をはっきりと感じることができるだろう。彼らには時間と間合いへの審美的なセンスも備わっている。それはこれまでも止まることなく進んできた時間であり、しかしスイッチを切れば無惨に止まってしまう再生音楽の時間でもある。回転するレコード盤の上にホログラムのように像を結んだ、よるべない音たち。そのようなよるべなさがインクのか細い、モノクロームで撮影された肢体からも漂ってくる。もともとセッション・ミュージシャンとしてスタジオからキャリアをスタートさせたという兄弟は生演奏にもこだわっていて、"ハート・クライムス"も"ミリオネアズ"も、艶やかなピアノやサックスのあしらい方が聴き所のひとつである。だがそれ以上にこうした時間感覚が、彼らをライヴ演奏に向かわせるのかもしれない。さまざまな点から見て、現在を生きて感受するものへのレスポンスがしっかりとあるユニットだと思う。

FUJI ROCK FESTIVAL '11 - ele-king

 日本には2、3万人ほど、盆休みよりも7月最終週の週末に休みを必死で取る人種がいる。彼らにとって、いや僕たちにとって苗場は故郷のようなもので、日本で最大級の野外フェスティヴァルであるフジロックフェスティヴァルが開かれるその週末は、ほぼ必ずそこに「帰省する」ことになっているのだ。

 僕が初めてフジロックに参加したのは2003年のことで、当時18歳の僕は大阪から12時間ほどかけて青春18切符で苗場にひとりで行った。僕なりにいろいろと調べて行ったつもりだったのだけれど、それでも認識が甘かった。眼鏡が吹っ飛んで壊れ、姉のスペイン土産だった腕時計も吹っ飛んで壊れ、両足靴擦れで流血し、ペース配分もよく分からないまま初日から雨に打たれまくり3日目の昼間には草むらで気絶していた。で......アンダーワールドとビョークを、それはたくさんの人がいる山の中で興奮して叫んで踊りながら観た。いい大人が心の底から楽しんでいる、開放されている姿をひたすら見続けた。こんな場所がこの日本にあることが10代の自分には衝撃的で、それからは絶対にここに毎年戻ってこようと誓ったのだった。
 以来、毎年欠かさず僕はフジに参加している。大学生の時はテスト期間と重なっていたから、夜行で大阪まで帰って来て大学の水道で頭を洗っていた。前夜祭で踊る苗場音頭は、確実に上達していると思う。いったい何本のライヴを観たことだろう。

 しかし慣れというのは恐ろしいもので、特にここ数年フジロックに大きな驚きを覚えなくなっている自分を発見しつつある。雨が降ってもそれに十分対応できる装備もあるし、ご飯は何が美味しいのか知っているからほとんど毎年同じメニューになってきている。体力の配分も掴んでいるし、テントを立てる場所も大体決まっていて、いつも利用している風呂屋の割引券まで持っている......。はじめの興奮があまりに大きかったために、なんだかもったいないことをしているような気がするのである。無理せず快適に、だらだらと......それでいいのか俺は? とふと思うときがある。18歳の僕がいまの僕のフジでのだらだらした過ごし方を見たならば、きっと文句を言うだろう。
 思うにこれは僕だけでなく、ここ数年のリピーターだらけの、そして年齢層が高めになりつつあるフジロック全体に言えることではないだろうか。オーディエンスのほとんどは野外フェスティヴァルでの過ごし方を熟知していて、無理なくそれぞれの楽しみ方をしている。その光景は気持ちのいいものだが、まったく個人的にはそろそろ新しい驚きがあっていいようにも思える。
 とはいえ、それは日本のフェス文化が成熟した証でもある。僕自身、フジぐらいでしか会えない知人や友人もずいぶん増えたから、彼らと会って酒を飲んだり近況を聞いたり音楽の話をしたりできるだけでも、充実した過ごし方をしていると言える。1年に3日間だけ出現する音楽好きの村のようなものだと思えばいいのだろう。子連れの姿がここ数年特に目立っているが、子どもたちが山で遊んでいるのを見ていると、あたかも親戚のようにその成長が楽しみになってくる。フジロックは日本では有数の、一種のコミュニティのようなフェスティヴァルだ。いまでは、それこそが最大の魅力だろう。

 今年も基本的にそんな感じだった。ざっと見る感じほとんどのオーディエンスは慣れた様子だったからリピーターだったろうし、雨と泥にもレインコートと長靴で難なく対応していた。初対面でも機会があれば話したりもするし、酔っ払いも多い。いい大人たちの開放的な姿、それは毎年変わることはない。
 ただし、今年は震災があってNGO団体からのメッセージは震災復興と脱原発が主であった。国内外問わずアーティストからのメッセージもあった。たくさんの人びとが集まる場でいまいちど我々が直面していることを共有するのは価値のあることだと思う。

 今年で9回目の参加となる僕は、輪をかけてだらだらしていた。いつもなら暑さのせいでテント生活では8時には嫌でも目が覚めるのだけど、天候が優れなかった今年は連日11時ぐらいまでは寝ていた。1日目深夜は一児の父の33歳の友人の「5時からシステム7を観ようぜ!」との誘いを無視して3時過ぎには寝たし、2日目深夜は「朝まで酔っ払って踊りたい」と言う同い年の友人をほったらかして寝た。33歳は泥だらけのオレンジコートで深夜に筋金入りのパーティ・ピープルときつい雨に打たれながら踊ったらしく、26歳は酔っ払ってその辺で寝潰れて救護のひとに思い切りビンタされて起こされたらしい。あー、僕よりフジを満喫しているなあー、と思ったが、まあ僕はテントでぐっすり寝て快適だった。
 彼らに比べれば僕は真面目に昼ごろからライヴを観ているほうなので、アクトについては書き出すとキリがないけれど、やはり印象に残ったものについては書いておきたい。

 初日は雨がしとしとと降り続けていたが、グリフ・リースの人柄が滲み出たサイケ・ロックの温かさとロン・セクスミスの深い歌声に嬉しくなって大して気にならなかった。それに、アークティック・モンキーズの堂々たる成長にも目を剥いた。たしか数年前に観たライヴではもっと照れがあったというか、アレックス・ターナーがもっと少年ぽかったはずだ。が、ずいぶん精悍にスターらしい佇まいになっていて、あの甘い声とドライヴィンなロックンロールを真正面から鳴らしていた。CSSの超元気なライヴを観てゲラゲラ笑った後には、ウォッシュト・アウトの大人気ぶりに驚かされた。5人編成のバンドのライヴは音源のフワフワ感よりも圧倒的にアグレッシヴでその分大いに盛り上がっていたが、どこか拙さを残したもので......やっぱり僕はそこが気になって乗り切れなかったが、チルウェイヴの日本での人気の高さは分かった。続くSBTRKTは丁寧にもマスクをつけて現れ、マッシヴなビートと複雑なエレクトロニクスをあくまで洗練された手つきで鳴らして、しかも生ドラムとサンファの生のヴォーカルでソウルフルにダイナミックにフロアを揺らしていて、こちらは僕も踊りまくったのだった。フォー・テットはこの前の単独のライヴの時よりもフロアライクだったように思うのだけれど、このとき僕は酔っ払った外国人グループに絡まれてぬるいビールを飲まされていたので記憶が曖昧である。友人と「良かったなー、良かった良かった」と言っていたのは覚えているのでたぶん良かったのだろう。XXのジェイミーのDJも途中まで観ていて「おーかっこいい」と思った気がするのだけれど......。

 2日目は昼過ぎまでぐだぐだしていたけど、ちゃんと観たバトルスは春に観たときよりもかなりまとまっていた。ドラムのジョンはセクシーだし。でもタイヨンダイがいない"アトラス"はちょうどひとり分パートが簡略化されていて、それはちょっと寂しかった。夏野菜カレーを食べながら観たトッド・ラングレンは相当良かった。マイクスタンドを持ってポーズを決めたり、謎の踊りを披露したりと機嫌良く、声もかなり出ていたし、何よりその洒脱で甘い歌はいまこそ再評価されているのも十分頷けるものだった。ラングレンを泣く泣く途中で切り上げて観た、マーク・リーボウと偽キューバ人たちの情熱的な演奏も素晴らしかった。そして泥を長靴で踏みしめて踊りまくったコンゴトロニクスvsロッカーズ、アフロ・ポップとロックがごちゃ混ぜになったそのパワフルさが最高だった......こういうのはまさにフジならではだ。祭には打楽器が一番だ。

 3日目はハンバーガーを食べながら観たトクマルシューゴのギターのテクニックとバンドのアンサンブルの掌握ぶりに感服するところからはじまった。そしてビーチ・ハウス、これが予想以上に素晴らしかった。正直、もっとぼんやりしたライヴを想像していたのだけれど、バンドの最大の魅力、すなわちヴィクトリアの中性的な声が魅力的に響くように音のバランスが熟慮されているように感じた。ヴィクトリアが髪を振り乱しながらあの甘いメロディを歌えば、もう完全にあの『ティーン・ドリーム』の世界だ。溶けた。モグワイの轟音にいつもながら歓声を上げ、ケイクの相変わらずの哀愁とエンターテイメントを楽しんだ。しかし僕にとって、今年は何と言ってもウィルコだった。カントリーが背負う歴史の重みに新しい音を切り拓こうとする実験を乗せ、ときにパワー・ポップやアーシーなロックまでを行き来する音楽性の幅。そしてジェフ・トゥウィーディーがややかすれた声で柔らかいメロディを歌う。グレン・コッチェの多彩な音を叩くドラム! "ジーザス、エトセトラ"のブリッジのオーディエンスの合唱は、昨年の単独公演のときよりも、より熱を感じるものだった。

  僕らの愛/僕らの愛/僕らにあるのはその愛だけ
  僕らの愛/神の財産はその愛だけ/誰もが燃え上がる太陽

 ああそうか......と僕は思った。フェスティヴァルはオーディエンスのもので、音楽はそこに集まった人びとでたしかにシェアされる。それは実際にそこに集まり、体験しなければ実感できないものだ。その美しい夜を感じるために、僕はやはり来年もあの場所に帰ることだろう。

Chart by JET SET 2011.08.08 - ele-king

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TORN SAIL

TORN SAIL BIRDS REMIXES »COMMENT GET MUSIC
サイキック・バレアリカ日本代表、Cos/Mesによるグレイテスト・リミックス収録!!Smith & Mudd一派のSSW、Huw Costin率いるニュー・プロジェクトTorn Sailによるデビュー・シングル"Birds"のリミックスEP。もはや説明不要のCos/Mes、さらにUKハウスを代表する重鎮Frankie Valentineによる豪華二本立て!!

2

SLOW MOTION REPLAY PRESENTS DUNK SHOT BROTHERS

SLOW MOTION REPLAY PRESENTS DUNK SHOT BROTHERS RUN IN THE HOUSE / JAMBE! »COMMENT GET MUSIC
Slow Motion Replayによるマッシュアップ専科シリーズ第2弾! 注目はJB'z"I'll House You"が華麗なブラジリアン・ジャズファンクVer.に変貌したA1!

3

SUZANNE KRAFT

SUZANNE KRAFT GREEN FLASH EP »COMMENT GET MUSIC
Chill Rave? Pill Wave? Running Backから何ともイイ感じの1枚が登場。Discotheque Recordsから発表したCDR、カセット・テープでにわかに注目を集めたLA発の新進プロデューサーD. E. Herreraによる1st.ヴァイナル・リリースは既に名門の風格のRunning Backから。

4

CHICAGO DAMN

CHICAGO DAMN DIFFERENT WORLDS »COMMENT GET MUSIC
話題のミステリアス・アクトChicago Damnが"Claremont 56"のリエディット部門から渾身の1トラックをドロップ!!Jazによる前作"Soopahluv"も好評を博しているClaremont 56傘下"Sixty Five"から早くも新作エディットが到着です。

5

BENOIT & SERGIO / SLOW HANDS

BENOIT & SERGIO / SLOW HANDS COVERS EP »COMMENT GET MUSIC
Wolf + LambメンバーGadi Mizrahi主宰Double Standard新作は、Benoit & Sergio、Slow Handsというポッセによる驚きのカヴァー・トラックをカップリングした限定10"ホワイト・ヴァイナル!!

6

MURO

MURO THE B-SIDE WINS AGAIN »COMMENT GET MUSIC
これまでサントラで使われていたヒップホップ楽曲をいつかミックスしてみたい...。Muro氏が今まで温めてきた企画が遂にベールを脱ぎます! 全ヒップホップ、ブラック・ミュージック・ファン必聴です!

7

HUDSON MOHAWKE

HUDSON MOHAWKE SATIN PANTHERS »COMMENT GET MUSIC
盟友Flying Lotusと共にニュービート・シーンを築き、Mark RonsonやJamie XX等と共に最も注目される新世代プロデューサー、Hudson Mohawke最新作アナログ・エディションが到着。

8

RAPTURE

RAPTURE HOW DEEP IS YOUR LOVE? »COMMENT GET MUSIC
片面収録のプロモ盤も大好評だったThe Rapture久々の新曲が遂に正規リリース。プロモ盤収録のオリジナルに加えて、The Emperor Machine(Andy Meecham of Chicken Lips)による強力なリミックスを収録した文句なしのマスト・バイ・アイテムです!!

9

AFRIKA BAMBAATAA, CHARLIE FUNK & THE MIGHTY MOCAMBOS

AFRIKA BAMBAATAA, CHARLIE FUNK & THE MIGHTY MOCAMBOS ZULU WALK »COMMENT GET MUSIC
全作大ヒットのMighty Mocambosの新曲は、ドファンキーな演奏をバックにAfrika BambaataaとCharlie Funkが歌ってラップする、超キラーな1曲!!

10

ONUR ENGIN

ONUR ENGIN EDITS VOL.4 »COMMENT GET MUSIC
Disco DevianceからのPatrice Rushen"Number One"を調理した前作も大好評、オブスキュアなネタ探しに奔走するシーンを尻目に、誰でも楽しめる王道のネタ選びで高いクォリティのリリースを続けるOnur Enginにょる主宰レーベルからの第4弾。

Hollie Cook - ele-king

 ザ・スリッツのライヴを見たときに、アリ・アップをのぞいて、ステージでとくに目立っていたのがキーボードを弾いてバックキング・ヴォーカルを担当していたホリー・クックだった。メンバーのなかで、ひとりだけアフリカ系の血を引いているというのもあったが、レゲエのリズムに乗ってぴゅんぴょん跳ねながら歌っている姿は、彼女がポール・クックの娘だと知らなくても自然に目に入っくる。ステージ映えのするチャーミングな女性だなーと思った。
 ポール・クックというのは、いちおう説明しておくと、セックス・ピストルズのドラマーだった男である。スティーヴ・ジョーンズとともにバンドの最初の核となったひとりで、あれだけのメンバーに囲まれながら、ある意味ではもっとも安定した性格の男かもしれない。そしてその娘は、アリ・アップに新星ザ・スリッツのセカンド・シンガーとしてスカウトされ、その才能を開花させた......そう言える彼女のデビュー・アルバムだ。

 ロックステディ時代の偉大なシンガー、フィリス・ディロンやラヴァーズ・レゲエの女王、ジャネット・ケイのようなアルバムを作りたかったという話だが、基本はその通りのラヴリーな作品となっている。僕はレコード店でわずか数秒試聴しただけで買うことを決めた。ジャケも良いしね。
 バックの演奏も、調べてみるとロンドンのアンダーグラウンド・レゲエの力のあるジャマイカ系のミュージシャンで固めているようだ。驚いたことに、1曲ではベテランのスタイル・スコット(クリエイション・レベル~ダブ・シンジケート/ルーツ・ラディックス)が叩き、1曲ではデニス・ボーヴェル(UKダブの父親)がベースを弾いている!
 ザ・スリッツの最後の作品となった『トラップト・アニマル』に収録されたラヴァーズ・ナンバーの"クライ"は、彼女の曲だったということも今回知った。このアルバムにはその別ヴァージョン(ディスコ・ミックス)が収録されている。トースティングをフィーチャーしたダブ・ヴァージョンで、間違いなくアルバムのなかのベスト・トラックである。シングル・カットした"イッツ・ソー・ディフィレント"も良い曲だ。フィリス・ディロン調の甘ったるい歌だが、トラックは引き締まったワンドロップ・ビートだ。
 ホリー・クックは、声が良い。ちょっとアリ・アップっぽい歌い方をしているが、クセがなく、柔らかい声をしている。イアン・ブラウンの曲でも歌ったり、再結成したビッグ・オーディオ・ダイナマイトでも歌っているというが、このデビュー・アルバムによって彼女はもう、主役座をモノにしたのではないだろうか。新しくはないが、何回でも聴きたくアルバムだ(なにせフィリス・ディロンだから)。悪いことは言わないので、夏が終わる前に聴いたほうが良いですよ。

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