「Nothing」と一致するもの

Teen Daze - ele-king

 ティーン・デイズの音楽が急激に広がったのは、それがブログ主導の音楽カルチャーによって生みだされたものだといういい例だ。というのはある海外サイトで見かけた分析なのだが、書き手クリス・タプリーはそこに「はやさがウリ」というニュアンスを嫌味っぽく加えている。たしかに、誰もまだ見つけていない音を聴いてみたい、それをいちはやく紹介したいという欲望は筆者にもあるし、実際になにかしらの使命感をすら持ってそうしたフック・アップ作業をみずからに任じているブロガーも多いことだろう。大手の雑誌社に入る必要も、ファンジンを刷って配ってまわる必要もなく、簡単な手間で瞬時に、しかも世界に対して投げかけることができるわけで、レビュワーや発掘者たちがその嗅覚をかけて競合する状況が生まれている。インターネットが広げたのはインディ・アーティストたちの可能性ばかりではなかったわけだ。しかしクリス・タプリー氏の文章はこうした状況自体を快くおもっていないような書きぶりである。おそらく彼にはそれがイージーではかない「素人たちの祭」のように見えるのだろう。そうした祭の嚆矢ともいえるチルウェイヴというタグなどは言語道断なのである。しかし、ではオーソリティーなきブログ文化は音楽をつまらなくするだろうか? 折にふれて何度も述べているように、筆者はそのような見解はとらない。そしてブログ文化の寵児とも言えるチルウェイヴは、成熟社会におけるリアルな批評として現在もっとも説得力を持つ音であると思っている。

 それはともかく、ティーン・デイズにもまちがいなくチルウェイヴのタグがつくだろう。ドリーミーなシンセをサウンドの軸としたサマー・ウェイヴだ。このヴァンクーバーのひとりユニットの存在はSNSを通じて話題となり、〈アーケイド・サウンド〉からのデビューEPは『ピッチフォーク』をはじめ高評価で迎えられた。クリス氏は数年後にこのタグが取れても生き残っていれば本物だというような手厳しい評を下しているが、生き残る云々の評価基準でその作品のマキシマムを取り逃がしてしまうのはもったいない。たしかにアルバムを複数枚出せるかどうかというのはそのアーティストの力量をある程度は測る基準になるだろうが、曲単位で音楽の購買ができる時代に、アルバムという形式も見直され、姿を変えつつあるようにおもわれる。本作『ア・サイレント・プラネット』はセカンドとなるEP/ミニ・アルバムであるから、曲数的には1枚分のアルバムとして十分な量を持ちながらも、EPを2枚出していることにな。(本作の国内盤には13曲が収録されているが、7曲はボーナス・トラックである)。最近はこのようなEPのリリースがほんとうに多い。そしてウォッシュト・アウトの『ライフ・オブ・レジャー』を象徴として、需要の高いリリースがEPに顕著なことも多くの人が認めるところだとおもう。いま作品としてコンフォータブルなサイズは5縲鰀6曲だということなのだろう。それならば毎年や年に2度のリリースも苦ではないし、そのときそのときの感覚を鮮度よくまとめることができる。個人的にはシンセの音はギターよりも疲れやすいので、その点でもちょうどいい。そう、『ア・サイレント・プラネット』はコンフォータブルなチルウェイヴ作品として最大限に力を発揮している。ただただひたすらドリーミーで心地よいというのはチルウェイヴの本懐でもある。

 目を引くのは"サーフェイス"と"ザ・ハーヴェスト"、"ウォッチ・オーヴァー・ミー"だ。本編とその同数以上あるボーナス・トラックとの差は、ヴォーカルがフィーチャーされているという点と、いずれもギターが重要な役割を果たしているという点だ。この3曲においてはとくにうまく作用している。彼自身、多くのチルウェイヴ・アクトたちがそうであるように、もともとはギターで曲をつくるロック少年であったという出自を証してもいるだろう。『サーフェイス』ではちらちらとまばゆい音色で曲をリードし、ヴォーカルより雄弁に切ないエモーションを語り出している。ピッキングが生み出す躍動性が、アンビエントなシンセの澱との間に輝かしい対照をつくる。『ザ・ハーヴェスト』でも単純なコード弾きが、印象的な旋律をなぞるヴォーカルと絶妙に絡んでいてとてもよい。ベース音が抜けるアウトロもギター・アンビエントの趣が美しく出ている。"ウォッチ・オーヴァー・ミー"はレッティング・アップ・ディスパイト・グレイト・フォールツのエレクトリックなポップ・シューゲイズ、あるいはペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートの情緒的で翳りのあるギター・ポップを思わせる。エレクトリカルな部分とギターとの折衷が作品全体の目鼻をつくる主たる要素なのである。ボーナス・トラックにも何曲かはそうした傾向が見られ、"コロキアリズムス"のノスタルジックなアコースティック・ギターなどもおもしろい。これなどよけいな上ものの電子音は不要だと感じる。全体に、シンセの音の斡旋によりも、ギターのそれへの方が繊細な配慮が感じられるアーティストである。

Balam Acab - ele-king

 シンセ・ポップ/チルウェイヴ......ダークウェイヴやウィッチ・ハウス、ある種のダブステップ、そしてこの5年ぐらいのベッドルーム・ポップには、孤独、喪失、徒労感、恐怖、悲しみ......といった感情が目立っている。ブリアル、ジェームス・ブレイク、ハウ・トゥ・ドレス・ウェル、ホリー・アザー......パンタ・デュ・プランス(まあ、この人はミニマル・テクノですけど)などなど、PCを前にして感じる疎外感のようなものがメキメキと巨大化して、まるで世のなかに対して強力なバリアを張っているような、独特のくぐもり方をした音(それはおうおうにしてリヴァーブのデタラメな応用によって決定される)を特徴としている。これがバレアリックな陶酔感と同じカードの裏表にあるのは言うまでもなく、それが疎外感を打ち出すものだろうが、あるいは多幸感を表すものであろうが、どちらにも共通して言えるのはとことんダウナーに展開されているという点である。テレビの画面で見られるキビキビとした動き、なんともアッパーなダンスとは真逆のベクトルで、これら新種のダウナー音楽はそうしたアッパーな世界と隔絶するように拡大しているよう見える。バラム・アカブを名乗る現在20歳のアレック・クーンによる音楽もそうした一群に属している。どこまでも孤独で、どこまでも陶酔的で、そして美しい孤独と陶酔だ。ジェームス・ブレイク・フォロワーと言ってしまえばそれまでだが、ブレイクからベースを落としてダブ処理を過剰にし感じで、よりラフな分だけガレージ的な生々しさがある。この世界には居場所がない......そう強く訴えているような音楽だ。『錯乱/不安』、このタイトルがぴったりである。

 こうした音楽は、暗に未来の無さを告げているようだが(未来の無さという点においては、欧米も日本も同じだろう)、歪んだ声やけたたましい谺のなかにさえ、キラキラと光るものを感じる。A面が"Wander"で、B面が"Wonder"かもしれない。仮にそうだとしたら、錯乱そのものの"Wander"に対して、"Wonder"には安らぎの感覚があるから、「不安」というよりも「謎めいたときめき」と訳したほうが良さそうだ。B面は、ピアノの音色を効果的に使いながら、星がまばたく天上の阿片窟で少女が歌っているようなのだ。
 あるいは......『アンビエント・ワークスvol.2』の繭のなかのアンビエントがおよそ20年後のいまポップ・カルチャーのもっとも若い世代のベッドルームで増殖し、そして生温かい新しい夢の繭がいまこうして伝染しているようにも思う。何かもう、キビキビしたり、もっともらしいことを言うことに心底うんざりしているのだろう。

Chart by UNION 2011.09.28 - ele-king

Shop Chart


1

THEO PARRISH

THEO PARRISH Ugly Edits SOUND SIGNATURE / US »COMMENT GET MUSIC
かつてRON HARDYが行っていたDISCO RE-EDITSの手法を00年代に多くのリスナーへ広め、衝撃を与えたTHEO PARRISH手がける伝説のRE-EDIT=UGLY EDITSシリーズ!収録曲には、THEO自身のセットでも数多くプレイされたJILL SCOTT"Slowly Surely"、MUSIC BOX CLASSICSとしてお馴染みMADE IN USA "Never Gonna Let U Go"やHAROLD MELVIN AND THE BLUE NOTES "The Love I Lost" そしてDELLS"Get On Down"、シリーズの中でも最高傑作との声も多いFREDDIE HUBBARD "Little Sunflower" と、フィリーソウルからジャズにいたるまで全てに新たな息吹を吹き込んだ。Re-Edit=再編集することで旨みのあるパートを引き伸ばし不要なパートをカットする、時には曲の構成そのものを変えフロアでの機能を高めるべくアレンジが施されている。フロアを熟知したDJだからこそ、オリジナルとは異なる感動や躍動感を与えることが出来るのだ。

2

VARIOUS ARTISTS

VARIOUS ARTISTS Labyrinth TIME TO EXPRESS / BEL »COMMENT GET MUSIC
PETER VAN HOESEN主宰TIME TO EXPRESSから、あのLABYRINTHにちなんだ限定Wパックが登場! 毎年質の高いラインナップで多くのエレクトロニック・ミュージックラバーを虜にするアンダーグラウンド・レイヴの最高峰"LABYRINTH"に共鳴したPETER VAN HOESENが仲間に声をかけて創り上げたスペシャルなアナログ2枚組! DONATO DOZZY、MIKE PARKER、CONVEXTIONという現在のテクノ・シーンを代表する豪華アーティストが参加! LTD 500ですのでお早めに!

3

THEO PARRISH

THEO PARRISH Parallel Dimensions UBIQUITY / US »COMMENT GET MUSIC
自身のSOUND SIGNATUREから発表した9曲入りのアルバム『Parallel Dimensions』。CDアルバムが9曲入りだったのに対し、2LPはシングルカットされたトラックとの兼ね合いから5曲入りで、また音質もややぼやけたものであった。そのリリースから4年後、当時デトロイトのアーチスト作品のリリースも積極的に行っていたUBIQUITY RECORDSがこの作品に眼を着け、CDと同じ全9トラックを2LPへ収めリマスタリングを施して2004年に再発させたのが今回のUBIQUITY盤なのだ。

4

GILLES PETERSON

GILLES PETERSON Masterpiece(国内仕様盤) MUSIC 4 YOUR LEGS / JPN »COMMENT GET MUSIC
UKの名門MINISTRY OF SOUNDが誇るMIX-CDシリーズの至宝『Masterpiece』!遂にジャイルス・ピーターソン登場!!!常に力強い探究心と共に「いい音」を紹介し続ける男ジャイルス・ピーターソンが遂にMINISTRY OF SOUNDが誇る人気ミックスCDシリーズ『Masterpiece』に登場!本作では3つのテーマ「Dusk(夕暮れ)」「Dawn(夜明け)」「Twilight(たそがれ)」を展開。彼らしいジャンルレスな楽曲、新旧を織り交ぜ時代と国境を超越した選曲で、まったく予測不可能な展開ながらこの幅広い音を「一つの作品」へと纏め上げる説得力には脱帽するばかり!

5

RICARDO VILLALOBOS/MAX LODERBAUER/PEVERELIST

RICARDO VILLALOBOS/MAX LODERBAUER/PEVERELIST Meet Tshetsha Boys HONEST JONS / UK »COMMENT GET MUSIC
HONEST JON'Sからリリースされた南アフリカの新種ダンス・ミュージック"Shangaan"のコンピレーション・アルバム『SHANGAAN ELECTRO』を、いわゆるクラブ・ミュージック系アーティストたちがリミックスした興味深い12"シリーズ! こちらはECM解体作も話題を呼んだVILLALOBOS & MAX LODERBAUERのコンビ、そしてPUNCH DRUNK主宰のダブステッパー・PEVERELISTを起用! オリジナルの陽気なテイストを残しつつトリッピーにハメてくるVILLALOBOS & MAX LODERBAUERサイド、金属的なビートと空間的なエフェクトが絶妙に融合したPEVERELISTサイドと、今回も独創的な仕上がり!

6

KON & THE GANG

KON & THE GANG Sunlight HANDS OF TIME GOLD / UK »COMMENT GET MUSIC
既にSC上で猛烈にプレイされている話題の一曲が遂にヴァイナル化!MJの"Rock With You"の心地いいパートを大胆に借用し、まるでインタールードが存在したかのようなトラックに仕上げてしまったインスト・ブギー~バレアリックフィールなハウスチューン!グルーヴ感たっぷりのディスコベースにパーカス&クラップ、随所に散りばめられたダブ処理、キーボードやエフェクトの素晴らしいトバシも完璧!そして何よりハートウォームな全体のヴァイヴがフロアをやさしく包み込む、タイムレスにプレイできるトラックです。大スイセン!!!

7

OMAR S

OMAR S High School Graffiti SCION AUDIO/VISUAL / US »COMMENT GET MUSIC
JUAN ATKINSやDJ SNEAKからAZARI & IIIもリリースしている配信レーベルSCION AUDIO/VISUALからOMAR Sのミニアルバムがパッケージ化!シカゴハウスなラフなトラックに不穏なベースラインが絡む"Got the Drop on Dem3"、深いリヴァーヴの中アシッドシンセがうねるように泳ぐ"Gunup Runup"、アーバンなコードのデトロイトハウスにウィスパーヴォーカルをフィーチャーしたセミインスト"My Naffew Randy"、オールドスクール全快なアシッドを散りばめたヒプノティックハウス"Unitarian"そしてハイライトは独特な浮遊感を漂わせるTHEO PARRISHのフルートをフィーチャーしたコラボレート作"Who's in Key"!フロアを意識したリズムワークとリスニングにもマッチしたディープさを備えた、どれもが個性に満ち溢れた全5曲!

8

HIRONORI TAKAHASHI

HIRONORI TAKAHASHI Orgaza / Werzes AIMERSSE.ORG / ITA »COMMENT GET MUSIC
OBTANE、NESS、ROSSELLAなど前衛的MINIMALISTが名を連ねるSCHERMATE主宰レーベルAIMERSSE.ORGから、DISK UNION下北沢CLUB MUSIC SHOPスタッフHIRONORI TAKAHASHIが新作12"をリリース!!音の抜け方、重なり方などドラマ性のある展開を意識して制作したので、始めから最後まで聴いていただけるとうれしいです!!ぜひチェックしてみて下さい!!!!(HIRONORI TAKAHASHI)

9

MOODYMANN

MOODYMANN Mahogani Music Towel MAHOGANI MUSIC / US »COMMENT GET MUSIC
MOODYMANNが主宰するMAHOGANI MUSICのレーベルロゴを使用したタオルがリリース!!!!ワンショット生産となる限定アイテム!

10

PACIFIC HORIZONS

PACIFIC HORIZONS Beaches Of The Black Sea PACIFIC WIZARD FOUNDATION / US »COMMENT GET MUSIC
DJ HARVEYによるサポートや、COYOTE、DAVID MANCUSOなどのヘヴィープレイによりヒットを記録した"Universal Horizons"でシーンに現れたL.A.発のバレアリックユニットPACIFIC HORIZONSがセルフレーベルPACIFIC WIZARD FOUNDATIONから第3弾となる新作12"をリリース!!!哀愁漂うにシンセリフ、フラメンコギターの調べによりジワジワとハメていくジプシートラックA-1、ダビーに色めくフレーズ・サンプルにグイグイとベースライン、突然のピアノリフで展開するB-1と、チルウェイヴ/バレアリック~SEAHAWKSやIS IT BALEARIC?ファンには間違いない1枚!!

Tropics - ele-king

 これこそヒプナゴジック・ポップ(入眠ポップ)と言うべきだろう......。良く晴れた秋の昼下がりに本作を聴いていると、アルバムの最後までいく前に寝てしまっている。しかも何回も何回も、聴いては寝て、聴いては寝て、繰り返し寝てしまう。どこまでも生ぬるく、麻酔的で、気持ちが良すぎるのだ。いずれにせよ、トロピックスのこのデビュー・アルバムを聴けば、マイケル・パラディナスと〈プラネット・ミュー〉が本気でチルウェイヴにアプローチしていることがよくわかる。そしてUKの22歳の青年、クリス・ウォードはレーベルの期待に応えるべく、実に魅力的なアルバムを完成させたと言えるだろう。
 さまざまな要素が混合されている。バレアリック、ミニマル・ビート、ポスト・ダブステップ、シューゲイザー、アンビエント・ポップ......ひとつ特徴を言えば、セカンド・アルバムの頃のフォー・テットのフォーキーなテキスチャーとディアハンターのダウナーで靄のかかったようなサイケデリックを往復するような感覚だ。タイトル曲の"パロディア・フレア"がそれで、ウォードは控えめだが味のあるメロウなギター・ソロを弾いている。
 他にもいろんな楽器を弾けるようだし、歌も歌っているが、トロピックスはまどろみを壊すことはない。"ウェア・アウト"の歌メロはまるで70年代初頭のピンク・フロイドのようだが、深いリヴァーブとぼやけた音像が言葉を掻き消し、そしてまたリスナーの微酔をうながす。"セレブレート"のような曲は、たとえは悪いがいわばケイタミンめいた陶酔で、つまりもう身体は微動だにしないのである。ダブステップのビートを取り入れた"フィギュアーズ"にしても......リスナーは部屋の白い壁をただ虚ろに眺めるだけかもしれない。
 そして僕は、ふだんまったく飲まないコーヒーを胃に流し込んで、アルバムを最後まで聴いた。チルウェイヴをジ・オーブがリミックスしたような"アフター・ヴィジティング"、ウォッシュト・アウトを頽廃的にしたような"サファイア"も面白いが、リズミックな躍動感のある最後の曲"オン・ザ・ムーヴ"が、僕はアルバムのなかで一等気に入っている。まさに"スエーニョ・ラティーノ"のような人を惑わすようなウワモノの反復が10分以上も続く。
 日本盤のおまけに付いているキープ・シェリー・イン・アセンス(アテネのシンセ・ポップ)のバレアリック・ミックス、フォルティDLのリミックスも、トロピックスの危険なまでに恍惚としたサウンドを彼らなりに咀嚼している。リスナーは秋の落ち日を凝視しながら、もう何もしたくなくなるかもしれない。そしてエール・フランスが歌謡曲に思えてくるだろう。



Tropics - Mouves (Official Music Video) from Yasuyuki Kubota 久保田恭之 on Vimeo.

Chart by STRADA RECORDS 2011.09.27 - ele-king

Shop Chart


1

LIDY SIX

LIDY SIX TREMBLING:SENDING SPACE(PROMO) SACRED RHYTHM MUSIC (US) »COMMENT GET MUSIC
アムステルダムにあるトンネルにてパフォーマンス・アーチストLIDY SIXとJOE CLAUSSELLがコラボレーションを行った際の模様を収めたブックレット付きのDVD+CD『TREMBLING: Sensing Space』の中から4曲が限定アナログ・カット!心地良いアンビエント・サウンドやホワイト・ノイズのようなサウンド・コラージュが収められております!限定プロモにつきお早めに!

2

PACIFIC HORIZONS

PACIFIC HORIZONS BEACHES OF THE BLACK SEA PACIFIC WIZARD FOUNDATION(US) »COMMENT GET MUSIC
DJ HARVEYやDAVID MANCUSOもプレイした1stシングル「Universal Horizons」、続く2nd「Forest Electric」共に大きな話題となったL.A.発のバレアリック・ユニットPACIFIC HORIZONS待望の3作目!

3

ARGY

ARGY FUNDAMENTALS(W-PACK) IBADAN(GER) »COMMENT GET MUSIC
These DaysやPermanent Vacationといった人気レーベルからのリリースでもお馴染みのARGYがJerome SydenhamのレーベルIbadanから2枚組アナログをリリース!テクノ~ハウス系DJには打ってつけの即戦力な使いまくれるトラックばかりを収録しており、マジでどれをプレイするか迷ってしまうほどの好内容!

4

DJ NATURE

DJ NATURE CELEBRATE YOUR LIFE GOLF CHANNEL(US) »COMMENT GET MUSIC
Massive Attackの前身的ユニットWild BunchのメンバーDJ MiloがDJ Nature名義で12インチをリリース!ソウルフルで情感たっぷりな男性ヴォーカルが印象的なダウンビート・チューンのA面、BOHANNONをサンプリングしたファンキーなトラックにファルセット・ヴォーカルがハマッたB面共にカッコイイ!

5

SASCHA DIVE

SASCHA DIVE LA SANTA DANZA(10inch) DEEPLABS SELECT(US) »COMMENT GET MUSIC
新レーベルDEEPLABS SELECTからの初リリース作品!Deep Vibes Recordingsの運営でも知られるドイツのクリエイターSascha Diveによるファットで走った感じのトラックと、日本人クリエイターIori Asanoによるアトモスフェリックなディープ・テック・ハウスをカップリング!両面ともクオリティー高し!

6

VAKULA

VAKULA YOU CANNOT RESIST SHEVCHENKO(UK) »COMMENT GET MUSIC
【再プレス無しの初回のみの限定盤!クリア・ヴァイナル仕様!】リリース作品のどれもがハイ・クオリティーなウクライナの大注目株VakulaがFirecracker傘下の新興レーベルShevchenkoから12インチをリリース!パーカッシヴなビートに繊細なシンセの上モノが美しくも立体的な音世界を構築!見事な仕上がりです

7

VA

VA DEEP PEOPLE THAT MAKE THE MUSIC(UK) »COMMENT GET MUSIC
Mateo & Matosによる第1弾シングル「Want U Tonight」もヒットした注目レーベルPeople That Make The Musicからの第2弾!その「Want U Tonight」の新たなリミックスにと共に収録されたA1のAlla Farmer「Fortune」がグッド!バウンシーなベースが印象的なグルーヴ感溢れるトラックにシンセやピアノが重なり合う極上インスト・ハウス!

8

SPIKE

SPIKE MAGIC TABLE GOLF CHANNEL(US) »COMMENT GET MUSIC
カルトな人気を誇るGolf ChannelレーベルからSpikeなるアーティストによる80年代のレアな音源が復刻&リミックスで登場!イイ感じに歪んだギターと切ないヴォーカルが印象的な極上バレアリック・チューンのA1、それをMap Of Africa片割れThomas Bullock(Rub N Tug)がWelcome Stranger名義にてダンサブルにリミックスしたB1共にグレイト!メロウなA2やDJユースなアカペラB2も見逃せません!過去の音源ですがこれはまさに今欲しい音!

9

INNERZONE ORCHESTRA

INNERZONE ORCHESTRA PEOPLE MAKE THE WORLD GO ROUND-KDJ REMIX WHITE (UK) »COMMENT GET MUSIC
CARL CRAIGがINNERZONE ORCHESTRA名義で99年にリリースしたアルバム『PROGRAMMED』でカヴァーしたSTYLISTICS『PEOPLE MAKE THE WORLD GO ROUND』、直後にリリースされた同曲のリミックス・シングルに収録されるも、長らく廃盤&入手困難状態が続いているMOODYMANNことKENNY DIXON JR REMIXがホワイト盤で登場!ストーリー性のある展開やジャジーな響きが魅力の元祖ビートダウンの傑作です!

10

FAR OUT MONSTER DISCO ORCHESTRA

FAR OUT MONSTER DISCO ORCHESTRA THE LAST CARNIVAL-ISOUL8 REMIX FAROUT (UK) »COMMENT GET MUSIC
UKの人気ジャズ、ラテン系レーベルFar Outによるスペシャル・プロジェクトの第5弾シングル!パーカッシヴ&グルーヴィーなトラックに爽やかな女性のスキャット・コーラス、そしてエレピもソロが絡んでくる極上ブラジル~フュージョン系作品!イタリアのIsoul8によるハウシーなリミックスをカップリングしており両面共イケます!

Tuusanuuskat - ele-king

 フィンランド・アンダーグラウンドからサミ・サンパッキラとヤン・アンデルセンによる初のジョイント・アルバム......と、書いてもわかる人は少ないだろう。サンパッキラは(ハンガリー語の糸を意味する)〈フォナル・レコーズ〉を運営しながらエーアス(ES)という名義で5枚のソロ・アルバムをリリースし(裏アンビエントP221)、一方のヤン・アンデルセンはトムトント(Tomutonttu)の名義で(スペルは違うけれど発音は同じ)2枚のソロ・アルバム『トムトント(Tomutonto)』(06)と『トムトント(Tomutonttu)』(07)によって一気にその才能が知れ渡った奇才(今年の初めにはツアーで仲良くなったというOPNとスプリット・シングルをアルターからもリリース)。二人ともフォナルの看板プロジェクトともいえる9人編成のケミアリセト・イスタヴァット(=化学友だち、『ゼロ年代の音楽』P170))としても10枚近くのサイケデリック・インプロヴァイゼイションを展開するメンバー同士だったものが、ふたりだけのコラボレイションはこれが初めて。両者の個性が見事に交じり合った充実の1枚に仕上がり、アシッド・ハウス以降のヘンリー・カウ=ユーロ・インプロヴァイゼイションがどこまで来たかを教えてくれる。ユニット名はトウサノウスカト(=全部めちゃくちゃになる)、タイトルは『ナークサー・ナー・モン・クーナレート』......と読むらしい)。

 前半はテリー・ライリーを思わせるユーフォリック・ドローンにアシッドで引っかき傷をつけていくようなSEがこれでもかと被せられ、単純に明るいドローンを聴かせるようになっただけのアメリカとは同じ方向を見ているようで、少し差のある展開を聴かせる。そのつもりはなかったのかもしれないけれど、長い時間をかけてアンビエント・ミュージックとしての体裁が整ってきたエーアスに対して、アシッド・ミュージックの新たな地平を切り開こうとするトムトントにはかなりの癖があり、あっさりとは取り付けなかった部分があったところを、前者が全体にスケール感を与えることで、ダイナミズムと細部が同時に生きる構造を獲得したということになるのだろうか。これを聴いてしまうとエーアスもトムトントも物足りなく感じられるようになってしまったこともたしかで、今後はそれぞれが自分に足りなかったものをそれぞれのソロ・ワークに持ち帰ってくれることを願うばかり。後半はケミアリセト・イスタヴァットでも積極的に取り入れてきたフォークロアも素材として取り込みつつ、かなり混沌とした印象を与えるミニマル・サウンドやジ・オーブがシューゲイザー化したような荘厳なサイケデリック・ドローンを配置。トリップ・ミュージックとして、まったくの文句の出ないエンディングへとなだれ込む。優雅と野蛮の同居。これに対抗できるのはやはりラスティ・サントス率いるザ・プリゼントだけだろう。

 レイヴ・カルチャーの果てに進んだ実験音楽と快楽主義の混交ははまだまだ大きな地平を用意しているのかもしれない。エメラルズやグローイングのようにメジャーへのベクトルを持つことだけが能ではない。快楽主義にはむしろ潜むべき場所というものがあるはずだろう。

 なお、アナログ盤は未確認ですが、CDパッケージにはストライプ模様のアセテート・フィルムが帯としてつけられていて、これをスライドさせていくとジャケット・デザインがどんどん変化して見えるという仕掛けが施されています。これは一見の価値アリ。つーか、帯にこんな使い方があるとは...

Mathew Herbert - ele-king

 ステージの上の数本のマイクには白衣がかかっている。メンバーはステージに登場すると、白衣を着る。中央には四角に張られた数本の赤いストリングスがあって、それをひっぱるとPCから豚の声やらなにやらが聞こえる仕掛けになっている。ステージには豚小屋の藁がおいてある。演奏曲はアルバム『ワン・ピッグ』通りにの曲順で、つまり......なんとも言えない神秘的な力を持った曲""August 2009"、豚の誕生を描いたこの曲からはじまった。

 ステージの中央では張り巡らされた赤いストリングスを操作しながら、パントマイムのように演技している男が、時間の経過を知らせるために背中に月の名前(「SEP」「OCT」「NOV」......)が記された白衣を着替えていく。"September"は、豚の成長を表すかのように荒々しい息吹を持った曲で、男の動きも激しくなる。こうしたステージ上での演劇性は、グラム・ロック/ニューウェイヴの時代にはよく見られたものだが、プライマル・スクリームのナルシスティックなライヴや「私のソウル」を主張することが主流となったステージからは排除されていたものである。英国人らしい黒い笑いをもったモンティ・パイソン的な演劇性で曲を展開する『ワン・ピッグ』ライヴは、ライヴの質の変化を象徴するという点でも興味深いものだった。

 "December"は豚が親元を離れ、そして兄弟たちと小屋で過ごすようになってからの曲だ。この頃には、ステージ後方に用意されたキッチンでシェフが料理をはじめている。豚肉をジュージューと焼く匂いは扇風機によってフロアへと飛ばされる。生まれて初めて見る、豚肉の匂いの漂うライヴだ。豚肉の匂いのなか、豚の鳴き声、電子音、ドラミングが激しく響く。......それからビートは冷酷にも高まっていく。不気味な高まり、ミニマルなビート......おそらく豚が殺されているのだろう。この残忍なアップテンポの曲のとき、フロアから奇声が発せられていることに違和感を感じていたのは、すぐ近くで聴いていた三田格だった。

 シェフはそのあいだもたんたんと料理を進めて、器用な手つきで皿に豚肉料理を盛りはじめる。もうこうなると、最後にその料理をメンバーが食べるかどうかが興味の対象となってくる。キッチンの真横に用意された横長のテーブルには5皿の料理が綺麗に並べられる。演奏を終えたメンバーはテーブルに並び、そのお皿に視線を送る。さあ食べろ。食べたい......三田格が後方で「食べろー」と叫んでいる......。

 しかし彼らは食べなかった。マシュー・ハーバートは最後に豚の思い出を歌った。アルバムの最後の曲、"May 2011"である。
 ルイス・ブニュエルの映画だったら、最後にくちゃくちゃと音を立てて食べていたかもしれない。その音をサンプリングしてミニマル・テクノを演奏しただろう。マシュー・ハーバートはしかし食べなかった。そこには彼のメッセージが込められていると思っていいはずである。アンコールではマシュー・ハーバートが道化た演技と赤いストリングスを使って、彼のエレクトロニック・ミュージックを演奏し、それまで頑ななまでに笑顔のなかったパフォーマンスにおける唯一の笑顔をもってライヴは終了した。


 追記:それにしても残念だったのは、その晩、リキッドルームのすぐ近くのDOMMUNEでは、シカゴ・ハウス/ディープ・ハウスにおけるもっとも重要なDJ/プロデューサー、シェ・ダミエがプレイするというのに、ハーバートのライヴからは誰も人が流れてこなかったことである(しかも7年ぶり2度目の来日)。

Chart by JET SET 2011.09.26 - ele-king

Shop Chart


1

JUJU & JORDASH

JUJU & JORDASH UNIESH THE GOLEM PART1 »COMMENT GET MUSIC
ミドル・テンポに刻むドープなビートにダークネス・シンセやメタリックなパーカッションを絡めながら、ねじれの効いたエフェクトとドープ・バレアリックに通じるサイケデリックなストリングスをアクセントに添えたディープ・タイトル"Chelm Is Burning"。ストイックにロウを攻めるタフ・ビートやアシッド・シンセ、スリリングなSEが用いられたキラー・エレクトロ・ビートダウン"Chelm Is Dubbing"の2楽曲をカップリング。

2

DJ NATURE

DJ NATURE EDITS VOL.1 »COMMENT GET MUSIC
ダビーなエフェクトを噛ませながら、ヴォーカルやメロディアスKeyを軸に再構築していく、Jazzanovaの2001年大傑作"Days To Come"と同ネタ、Billy Cobham "Opelousas"('78年)のエディットとなるA-2"Billy C"が一押し。エレクトロ・シンセとインダストリアル・ビートをミニマルに紡いでいく"C.O.A."、ドス黒いアフロ・グルーヴが最高すぎるミニマル・パーカッション・ナンバー"Bush Beat"も強力なDJユースフル・エディットです。

3

DJ NATURE

DJ NATURE CELEBRATE YOUR LIFE / LET IT RING »COMMENT GET MUSIC
ソウルフルなヴォーカル・パートをフィーチャーしたブラックネスなビートダウン・ハウス"Celebrate Your Life"は、スリリングなボトム・プログラムと華麗なピアノのメロディが心小打つ珠玉作。さらにカップリングの"Let It Ring"では、勢いのあるドラミングとトビを効かせたドープなサンプリング・スキルが際立つビートダウン・トラック。こちらも漆黒かつウォーミーな鳴りにそそられる素晴しい仕上がりとなっています。

4

FOUR TET

FOUR TET LOCKED »COMMENT GET MUSIC
こちら011番は主宰自らによる必殺のレフトフィールド・ブレイクビーツ/ディスコ傑作です!!

5

WILL SESSIONS

WILL SESSIONS THE ELMATIC INSTRUMENTALS »COMMENT GET MUSIC
大人気ファンク・バンドWill Sessionsが叩き出すクラシック・ビートの数々。素晴らしい完成度を誇っていた『Elmatic』ですが、独自のアレンジが効いた彼らの演奏に度肝を抜かれた方も多いはず! これは持っておきましょう! ※ダウンロード・カード封入。

6

TROPICS

TROPICS PARODIA FLARE »COMMENT GET MUSIC
Caribouファンにも大推薦のドリーミー・レフトフィールド・ディスコ新鋭Tropicsが遂にアルバム・リリースです!!

7

SPIKE

SPIKE MAGIC TABLE »COMMENT GET MUSIC
オランダのギタリスト、Spike Woltersが'81~'83年にかけて製作/録音していた発掘音源2作品に加え、Thomas Bullock (Rub N Tug/Map of Africa)によるWelcome Stranger名義でのダブ/アカペラ・ミックスを収録!!

8

VAKULA

VAKULA SHEVC002 »COMMENT GET MUSIC
電子音を飛び交わせながら美麗な鍵盤音を轟かせるスペーシーなディープハウス・ナンバー"You Cannot Resist"。B-Side"Rural Dances"も同様に、トリッピーな電子音や奥行きあるアトモスフェリック・シンセを絡めながら、カッティングエッジなボトム・プログラムで引き込んでいくディープ・ナンバーに仕上がっています。

9

AUNTIE FLO / DJ SDUNKERO

AUNTIE FLO / DJ SDUNKERO OH MY DAYS / CHOOSING LOVE »COMMENT GET MUSIC
グラスゴー在住の大新星Auntie Floによる待望のニューシングル!!ビッグ・ヒットを記録した'11年デビュー作"Goan Highlife"と同じく"Huntleys & Palmers"からの10"作品となった、南アフリカのDJ Sdunkeroとの大推薦スプリット。

10

ONRA

ONRA EDITS (CHANGE OF HEART / KEEP ON LOVING ME) »COMMENT GET MUSIC
ダンス・クラシックスとして名高いChangeの名曲をリエディットしたA-1は、原曲の良さを十二分に生かしながら、これぞOnraといわんばかりのエレクトロ・ブギーに仕立て上げた一品。Whispersが83年にリリースした大ヒット曲"Keep On Loving Me"をリエディットしたB-1も同路線の仕上がりで、両面ともフロアを彩る必殺のダブルサイダー!

Idjut Boys - ele-king

 かれこれ20年近く活動しているUKのベテランふたり組、イジャット・ボーイズにとって本作『セラー・ドアー』がオフィシャルのファースト・オリジナル・アルバムというのが驚きである。彼らが登場したときは、彼ら自身が主宰するあの〈U・スター〉のレーベル面に描かれたぐにゃっとした気味悪いモノトーンのイラスト、そしてディスコのベースラインと過剰にダブ処理された音響との組み合わせがずいぶんとミステリアスに思えたものだが(それはベーシック・チャンネルの初期を彷彿させた)、この15年間、イジャット・ボーイズはいちども忘れられることなく"ディスコ・ダブ"なるタームで延々と語り継がれ、週末の深夜族に親しまれ続けている。
 イジャット・ボーイズが出てきた時代は、彼らと繋がりのあるロンドンの〈ニューフォニック〉レーベルも同じようにフリースタイルなディスコ・スタイルを展開していた。〈グラスゴー・アンダーグラウンド〉のような濃いめのソウル系ハウス・レーベルもそれに追随した。ちょうど80年代初頭のミュータント・ディスコが、ディスコ(・ビート)でありさえすれば他はなんでもアリだったように、90年代末はハウス・ミュージックがそのプレートとなっていた。そこにハウスのビートがあれば、他は何が乗っかろうが自由なのだ。

 そういう意味で『セラー・ドアー』は、当たり前だが、イジャット・ボーイズらしい作品である。彼らのこれまでの成果が凝縮されているし、自分たちの特徴を残したままポップの領域にもアプローチしている。少々お茶面な面を見せながら、心地よくチルアウトさせてもくれる。まあ、とにかくありきたりの言葉で言えば、完成度の高いアルバムなのだ。
 ノルウェイーの〈スモールタウン・スーパーサウンド〉からのリリースというのも興味深い。このレーベルは――リリースされている作品にほとんどハズレはないのだが――ほんの数年前まではコズミック・ディスコ(雑食性の高い、ゆるめのディスコ)の牙城として世界に名を馳せている。宇宙ディスコの王様で、レーベルの看板であるリンドストロームの音楽は、そうしたいわばフリースタイル・ハウスの発展型でもあるが、80年代的なレトロ・テイストも孕んでいるそれは、骨の髄までディスコ好きな連中の矛先に昨今のニューウェイヴ・リヴァイヴァルという新しいトレンドとの接点も与えたんじゃないだろうか......(イジャット・ボーイズは、ブラマンジェのような中道派のシンセ・ポップをリヴァイヴァルさせている)。

 オープニングはアコースティック・ギターのコード・ストロークからはじまる。エレクトリック・ギターのアルペジオが重なり、ベースラインが聴こえる。こうしたもったいぶった導入を経てはじまる2曲目の"Shine"で、イジャット・ボーイズ節は炸裂する。R&B調の女性ヴォーカルの歌メロは80年代風だが、しかしウワモノンのふわふわとしたシンセサイザーとハウス・ビートは完璧に彼らのものだ。4/4キックドラムとダビーに調整されたコズミック・ディスコ調の空間が気持ちよく、またポップ・ソングとしても秀逸である。"One for Kenny"もまた、80年代のレトロ・スタイルを少しばかり使いながら、しかしベースとドラム・プログラミング、そして途中で挿入されるピアノによるグルーヴが素晴らしい曲だ。
 "Going down"では彼らの何でもアリのスタイルが展開される。アコースティック・ギター、女性ヴォーカル、そして深いリヴァーブとエコーのなかをディスコのグルーヴが脈打っている。そうしたダンスの解禁区を"The way I like it"ではエレガントなチルアウト感覚へと拡大している。そして8分近くもある"lovehunter"はまさに彼らが初期から追求しているくらくらするようなディスコ・ダブ・サウンドだ。"Le Wasuk"はキングストンのダブとロンドンの高級ホテルのラウンジのピアノ演奏が手を取り合ったような曲で、その奇妙なステップを踏んだまま、クローザー・トラックの"Jazz Axe"の優雅なチルアウトへと辿り着く。
 イジャット・ボーイズはミラーボールをベッドルームに差し出すような真似はしない。自分たちの"音"をアルバムというフォーマットでどのように展開するべきかをよく知っている。そして......この作品を聴いていると〈スモールタウン・スーパーサウンド〉の明るい未来も見えてくるようである。

DUBBY - ele-king

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