「Nothing」と一致するもの

Toro y Moi - ele-king

 トロ・イ・モワ(チャズ・バンディック)は今年発表したセカンド・アルバム『アンダーニース・ザ・パイン』でふたつの方向性を見せている。ひとつはソフト・ロック路線、もうひとつは今回の5曲入りのEP「フリーキング・アウト(ぶっ飛び)」で展開しているディスコへのアプローチだ。
 もっとも「ジェリービーン(マドンナの初期のプロデューサーとして知られるDJ)がイーノといっしょにやった感じだ」と、この新作を喩えていた人がいたように、「フリーキング・アウト」はダフト・パンクの背中を見ているような作品ではない。『コージャーズ・オブ・ディス』で展開したチルウェイヴ感覚は活かされたまま、ダンス・ビートはよりファンキーに変換されている。音の質感は「シューゲイズ+ディスコ・ビート」そのものだと言えるが、ポップスとしての洗練度は高まり、まあ何よりも「フリーキング・アウト」は僕から見たところの80年代ディスコの場末感=あの時代のR&B色がさらに強調されている点が最高に面白いのである。

 それにしてもトロ・イ・モワは音数が多い......という風に、20年ものあいだダンスのミニマリズムに親しんできた耳には感じる。実際の話、装飾性を排除し、機能美を追求するテクノに対して、トロ・イ・モワの音楽はバターやマーガリンがこってり塗られたトーストのようにオーヴァーダブされている。キャッチーなシーケンス、随所ではエフェクトとチョップ、そして何回も重ねられるチャズ・バンディックの声......この音楽はアールデコとしてのローファイ・インディ・ディスコ・ポップとも言えなくもない。
 が、「フリーキング・アウト」が引用しているのは、ヨーロッパのシンセ・ミュージックではない。80年代のブラック・コンテンポラリーの洗練された甘いR&Bスタイルである。言うなれば、最高にちゃらい黒人音楽だ。やるせなさがあふれ出す"オール・アローン"、メロドラマ風の"フリーキング・アウト"、フィルター・ディスコ調の"スウィート"、ハウス調の"アイ・キャン・ゲット・ラヴ"......それらはチルウェイヴ/シンセ・ポップがなんだかんだと拡大して、勢いづいている現在がうながした4曲なのかもしれないが、「フリーキング・アウト」におけるシンセサイザーやリズムマシンは、ニュー・オーダーよりもジャム&ルイスに近い。実際のところ、収録曲でもっとも光っているのは、アレキサンダー・オニール(80年代のブラコンを代表するシンガー)のカヴァー曲"サタデー・ラヴ"なのだ。
 僕はリアルタイムで言えば、この手のポップR&Bとはずいぶん距離を置いていたものだったが、それがこの歳になって......なんということだろう......若い頃の自分に会わす顔がない。しかしこれが時代の風というものだろうか、ラヴ・ミー・テンダーがいまさら都会派のポップスに執着するのと無関係でもあるまい。そういえば15年前に流行ったトランスは、その"ぶっ飛び"の虚無の穴を埋めるかのように、いわばエクスキューズとして、イルカや精神世界を持ち出したものだったが、「フリーキング・アウト」の装飾性はそうした前世代のトリップとは逆の、ある種の下世話さを喚起させる。いまはその下世話さのなかに、若いよろこびとそのエネルギーを感じる。俗物としての恋愛(ロマンス)こそ最高だと言わんばかりだ。

#4:ステファン・ゴールドマンとの対話 - ele-king

 実験精神旺盛なレーベル〈Macro〉のオーナーであり、〈Panorama Bar〉でもレギュラー・パーティに出演するDJであり、ハウスと現代音楽を横断するプロデューサーでもある生粋のベルリナーであるステファン・ゴールドマン。日本でも人気は高いはずだが、不思議なことにこれまで日本のメディアに取材を受けたことはないという。しかも来年には3ヶ月日本に滞在する予定になっている。これはぜひ日本の音楽ファンにも彼のことを知って頂きたいと思い、インタヴューを行った。ちょっと意外なバックグラウンドのこと、レーベルのこと、父フリードリッヒ・ゴールドマンのこと、そしてベルリンのことを聞いた。

父がレコードをかけている姿はほとんど記憶にないです。それより楽譜を読んでいました。音を聴かなくても楽譜を読むことでその音楽が彼には聴こえていたんですよ。まるで新聞を読むように楽譜を読んでいた。変な感じでしょう? 僕にはできませんけどね、世のなかにはそういう人もいるんです(笑)


Stefan Goldmann
Macrospective
Macro/Octave-lab

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本邦初インタヴューということで、いろいろ伺いたいことはあるんですが、まずは最近のリリースの話からにしましょうか。レーベル〈Macro〉設立から5周年、そして25番目のリリースとしてミックスCD『Macrospective』が出たばかりですよね。

ゴールドマン:そうですね。

まったく同じトラックリスト(選曲)をあなたとフィン・ヨハンセンふたりのDJがそれぞれ違う順序でミックスするという、ちょっと変わったダブルCDですが、このアイディアはどのように生まれたんですが?

ゴールドマン:収録している曲自体はデジタルでしたら誰でも変えますし、フィンも僕もすでにミックスやポッドキャストはかなりの数やってきているので、普通のミックスではつまらないと思ったんです。商品としてそれほど魅力がない。そこで特別でユニークなものにするにはどうしたらいいか考えたんです。いままで誰もやっていないし、5周年を機に過去のリリースを振り返る意味でもいい企画だと思いました。聴く人がそう思ってくれるといいんですけど!

資料によるとフィンのミックスは一発ライヴ録りだそうですが、あなたのミックスはどのように録ったんですか?

ゴールドマン:僕のもレコードでライヴ録りですよ。ただフィンは本当にクラブでプレイするみたいに、その場で曲順も決めずに「一発録り」したのに対し、僕は8~9回録ってみた中で一番満足できたものを出しました。多少雑音を消したりといった後処理はしましたけど、ミックスはいじってません。だから若干のミスは残してあります。

あなたのDJとしてのキャリアは、実はあまり知らないんですが、いつ頃からやっているんですか?

ゴールドマン: 学生の頃にドラムンベースを回しはじめたのが最初ですね。98年くらいかな。友だちとベルリンでアンダーグラウンドなパーティをオーガナイズしてたんです。 その後2年ほどDJを止めていた時期がありました。あまりその頃の新しいドラムンベースの流れが好きじゃなくて。それで自分で制作をするようになったんですが、「ドラムンベースじゃなくてハウスが作りたい」と思ったんですよ。でもそれまでハウスをやっていなかったので、ハウスDJとして自分のスタイルを確立するまでには少し時間がかかりました。「プロ」としてDJをするようになったのは、最初のリリースが〈Classic〉からだったこともあり、ドイツではなくUKでよくやっていました。〈Perlon〉から曲を出してからですね、ドイツやそれ以外の国でもやるようになったのは。2004~2005年くらいかな。

実は先日Discogsであなたの過去のリリースを確認するまで、〈Classic〉からデビューしたということは知らなかったんですよ。ちょっと意外でした。〈Classic〉と言えばデリック・カーターのイメージが強かったので。

ゴールドマン:でも実はかなりオープンなレーベルなんですよ。イゾレーやアトランティック・フィージョンのようなものも出してましたし。

ドラムンベースに飽きてから制作をはじめたとおっしゃいましたが、それまでは音楽制作はしていなかったんですか?

ゴールドマン:バンドでベースギターを弾いていたことなどもありましたが、コンサートをやるというようなレヴェルではなくて、仲間とジャム・セッションをしていた程度ですね。

最初に世に出たのは〈Classic〉からの「Shnic Shnac EP」だったと。

ゴールドマン:実はその前に、〈Classic〉の姉妹レーベルである〈Music for Freaks〉から、Simitliという名義で2002年に1枚EPを出しているんですけど、本名で出したのはそれが最初です。

それはどういう経緯で?

ゴールドマン:自分の曲がいくつか出来上がったときに、どこに送ればいいかわからなかったので、まずは〈Poker Flat〉とか〈Playhouse〉に送ってみたんです。反応はあったんですが、リリースには至らなかった。そこで、当時〈WMF〉クラブのレジデントだったDJディクソンにデモを渡して聴かせたところ、とてもいいと言ってくれて。「外国のトップ・レーベルに送ってみたらいい」とアドバイスをもらい、「例えばどんなところがいいと思う?」と聞いたらいくつかのレーベルのリストをくれた。その内のひとつが〈Classic〉で、約1週間後に返事が来て「あなたと仕事がしたい」と言ってくれたんです。

ディクソンがきっかけだったとは面白いですね(笑)。

ゴールドマン:なんせ僕はハウスのことは詳しくなかったのでね。それまで〈Classic〉のことも知りませんでした。後で気づいたらいくつか〈Classic〉のレコードを持っていましたけど。

そして2007年に〈Macro〉を立ち上げたわけですね?

ゴールドマン:実は〈Classic〉からアルバムを出すはずだったんですが、その過程でレーベルが倒産してしまって。その後レーベルは再建されましたけど、アルバムはリリースしてもらえず終いだった。だから他に出してくれるレーベルを探しはじめて、〈Perlon〉とほとんど話をまとめたんですが、彼らはものすごい量のリリースを抱えていて、出るまでに1年以上かかりそうだということになって。それに、レーベルのA&Rに「このトラックはいいけど、そっちはダメ。これをA面にしてB面はあれにしよう......」と指図されるのにも疲れて、だったら収録曲から発売日まですべて自分でコントロールできる自分のレーベルをやろうと思ったんです。

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父、フリードリッヒ・ゴールドマンはクラシックの作曲家であり指揮者でもありました。現代的・アヴァンギャルドな作品を手がけていました。シュトックハウゼンなどの系譜の音楽ですね。ですから、僕自身もそういう音楽を聴いて育ちました。十代の反抗期に入るまでは(笑)

フィン(・ヨハンセン)は立ち上げ当初から共同オーナーだったんですか? それはどういう経緯で?

ゴールドマン:やはりレーベルをはじめるにあたり、ひとりでは不安だったので誰か頼れる人が欲しかった(笑)。まだ知り合って1~2年の頃でしたが、彼とはすぐに意気投合して。彼はドイツの音楽雑誌『De:Bug』や『Groove』、『Resident Advisor』のようなウェブサイトにも原稿を書いてきた経験があったので、プレス業務にぴったりでした。レーベルのコンセプトについても共通の理解があったし、同じ考え方を持っていたので協力し合うことにしたんです。

5年経って、これまでのレーベルの歩みを振り返ってみてどうですか?

ゴールドマン:やはりレーベルをはじめたときは、「こんな人と仕事したい」とか、「こんな作品を出したい」というアイディアを勝手にいろいろ持っていて、それが実現可能かどうか、相手が僕らと一緒に仕事をしてくれるかどうか全然分かりませんでしたが、実際その多くを実現できました。それに、まったくの新人であるエレクトロ・グッツィのようなアーティストを世に紹介できたことも、とても誇りに思っています。素晴らしいリミキサーたちにリミックスを手がけてもらうこともできました。5年間を振り返ってみても、いい「音楽ファミリー」を築けたと感じますね。〈Classic〉や〈Perlon〉や〈Innervisions〉では絶対に出さないような風変わりな自分の作品も出すことができましたし(笑)。まだしばらく続けていける、いい基盤が整ったように思います。

レーベルのA&Rとしては、どんな基準で出すアーティストや作品を選んでいるんですか?

ゴールドマン:陳腐な言い方に聞こえてしまうかもしれませんが、私たちが求めているのはユニークなサウンドを持っているアーティストです。「○○っぽい」とか、「××風」、あるいはすでに〈Macro〉で出しているアーティストのような作品はもう必要ありません。他のレーベルが出していないようなものを出してきたと思いますし、それがひとつの判断基準になっていますね。プロダクションの上手さにはそれほどこだわりません。まあまあのアイディアで精巧に作られたものよりも、技術的にはそれほど高度でなくても面白いアイディアが光るものがいい。

実際にはどうやってそういうものを見つけ出すんですか? 積極的に探しに行くのか、それとも勝手に集まって来るものですか?

ゴールドマン:いろいろですね。個人的な知り合いを介してということもありますが、エレクトロ・グッツィなどはまったく接点はないのに向こうからレーベルのことを知ってデモを送ってきてくれました。ピーター・クルーダーは、もともとレーベルのプロモを送っていた相手でした。リリースを気に入ってくれていて、ある日「こんな曲があるんだけど、良かったら出さない?」と曲をくれて。「ワオ、ほんとですか?」という感じでしたね。

なるほど。でもレーベルのカラーを保ちつつ、ユニークなものに寛容であることは難しくないですか?

ゴールドマン:レーベルのやり方というのは主にふたつの方法に分けられると思います。ひとつは、特定のサウンドを確立して、それを追求する方法。でもこの方法は短期的には有効ですが、長期的に続けるのは難しい。5年以上は無理だと思います。もうひとつの方法が、ひとつひとつのリリースを個別に扱う方法。〈Warp〉や〈Ninja Tune〉のようなレーベルはこれをやってきたから、聴く人を驚かせながら長く人気を保つことに成功しています。

いま例に出てきたレーベルは、同じアーティストと継続的に仕事をしてともに成長してきたレーベルでもありますよね。

ゴールドマン:そうです。まだ〈Macro〉は5年しか経っていませんが、そういうつもりでやっています。いま一緒に仕事をしているアーティストたちとはずっと一緒に成長していきたいですね。若いアーティストというのは、そのときにいくつかいいトラックが作れても、同じクオリティのものを作り続けることが出来るとは限りません。ですから、潜在力、成長の可能性を見出すことが重要だと思いますし、〈Macro〉ではそういうアーティストたちと仕事をしているつもりです。だから10年後、15年後も一緒にやっていけたらいいなと思っていますよ。

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B面とD面を組み合わせてループを構築することができるようにしたものを出しました。片方が4/4拍子で、もう片方が3/4拍子なので、同時にプレイすることで異なるリズムのループを作れるようになっています。何か人がやっていないことを考え出すのは、僕の趣味みたいなものです(笑)

レーベルの今後の展開として、新たな計画などはありますか?

ゴールドマン:今後の予定は、同じアーティストたちと一緒にやっていくということ以外はとてもオープンです。向こう6ヶ月ほどの予定は決まっていますが、それ以降は決めていません。年内はエレクトロ・グッツィの新しいアルバムが11月に出て、ピーター・クルーダーのシングルが12月に出ます。来年は、そろそろ自分の制作に集中したいと思っています。ですから、リリースの数は少し減るかもしれません。実は、4月から京都にしばらく滞在する予定なんです。僕はハードウェアを中心に曲作りをするので、それまでにはある程度完成しているようにしたいですね。日本に全部持って行くわけには行きませんから。

「アーティスト・イン・レジデンス」というプログラムで日本に行かれるということですが、そのことを少し教えて下さい。

ゴールドマン:はい。ドイツのゲーテ・インスティテュートが、京都に「ヴィラ鴨川」という施設を持っているんです。ドイツ文化を紹介する事業の一環として、ドイツのアーティストを3ヶ月滞在させ、日本のオーディエンスにドイツ文化を伝えたり、日本のアーティストとの交流を行います。実は遊び半分でそれに応募してみたところ、受け入れてもらえた(笑)。ちょっと驚きましたね!

でも少なくとも日本に行きたいという気持ちはあったわけですよね?

ゴールドマン:もちろんです。日本には1度だけ、5日間だけしか行ったことがありませんが、とても興味を持ちました。5日間だけでは東京のいち部を見れただけで、不十分だと感じたんです。ですから、3ヶ月という時間があればだいぶ日本のことを知ることができると思いました。これまでにもフォース・オブ・ネイチャーのリミックスをやったり、〈Mule Musiq〉のミックスCDを制作したりと日本のアーティストやレーベルとも交流があったので、長期滞在することでより密なコラボレーションの機会も生まれるのではないかと思います。

京都にはまだ行ったことがないんですね?

ゴールドマン:ないんです。いろんな人から話は聞いているんですけど。だからとても楽しみですね。

東京とはまた全然違うところなので驚かれるとおもいますよ!

ゴールドマン:そうですね。とても美しいところだと聞いています。

少し話を戻しますが、先ほど楽曲制作をはじめたのが90年代も終わりになってからのことだと聞いて少し驚きました。日本のリスナーでは知らない人も多いと思うんですが、あなたのお父さんは著名な作曲家でいらっしゃいますよね。少しお父さんのお話も聞かせて下さい。

ゴールドマン:実は、父は京都に行ったことがあって、同じゲーテ・インスティテュートで講義をしたこともあるんですよ! 父、フリードリッヒ・ゴールドマンはクラシックの作曲家であり指揮者でもありました。現代的・アヴァンギャルドな作品を手がけていました。有名なところで言うとシュトックハウゼンなどの系譜の音楽ですね。ですから、僕自身もそういう音楽を聴いて育ちました。十代の反抗期に入るまでは(笑)。反動でクラシックのピアニストやミュージシャンには絶対になりたくないと思いました(笑)。

でも、それまでにレッスンを受けさせられたりはしていなかったんですか?

ゴールドマン:父はあまり気にしていませんでしたね。でも母は僕に長いあいだピアノの練習をさせようとしました。いまでは、そのお陰でMIDIキーボードなどの電子楽器を操作でき、すべてマウスでプログラムしたりする必要がないので良かったと思っていますが、当時はまったくピアノに興味が持てなかった。即興演奏は好きだったんですが、既存の曲を弾く練習をするのが嫌いだったんです。親もそれを見て諦めた(笑)。でも、僕が電子音楽をはじめてからは応援してくれましたよ。関心も持ってくれたし。

お父さんは、電子音楽との関わりは全然なかったんですか?

ゴールドマン:なかったです。ただ、音大で彼の教え子だったポール・フリックという学生が、ブラント・ブラウアー・フリックというユニットをはじめて、彼と一緒に作曲をしたりもしていましたね。それに父の音楽仲間には実験的な電子音楽に触れていましたし、父の恩師であるカールハインツ・シュトックハウゼンは電子音楽のパイオニアのひとりですから。でも、自分自身では電子音楽を作曲したりプロデュースすることはありませんでした。

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ドイツのハウス・レーベルが外国で評価されるようになったのなんて、本当に最近のことですからね。僕の初期のリリースがドイツのレーベルではなく、UKのレーベルだったという事実もそれを物語っています。〈Classic〉からリリースした東ドイツ人は僕が初めてだったはずですよ(笑)

子供の頃、家ではどんな音楽が流れていたんですか?

ゴールドマン:家ではあまり音楽を聴いていませんでしたね。不思議に思うかもしれませんが、母が個人的に好きなものをときどきかけていたくらいで、父はあまり家で音楽を聴きませんでした。父がレコードをかけている姿はほとんど記憶にないです。それより楽譜を読んでいました。音を聴かなくても楽譜を読むことでその音楽が彼には聴こえていたんですよ。まるで新聞を読むように楽譜を読んでいた。変な感じでしょう? 僕にはできませんけどね、世のなかにはそういう人もいるんです(笑)。

へぇー! では家に音楽が溢れていたというわけじゃないんですね?

ゴールドマン:違いましたね。よくリハーサルを見に行ったり、母に連れられてコンサートを見たりはしましたけど、家に音楽はそれほどありませんでした。

音楽ファンにとっては、音楽家の親を持つことは憧れですけど(笑)、そういう音楽家系もあるんですねぇ。

ゴールドマン:親が酷い音楽を作っていたら、それはそれで悲劇じゃないですか(笑)?

でもあなたのお父さんはそうじゃなかったでしょう?

ゴールドマン:それでも、父の音楽を評価するまでには時間がかかりましたよ。父が周囲に評価されているということは何となく感じていましたけど、子供の自分にはその良さがわかりませんでした。20歳を過ぎてからじゃないですかね、父の音楽そのものに興味を持てるようになったのは。

そうなんですね。でも今年はお父さんの作品を〈Macro〉からもリリースされましたね。

ゴールドマン:はい。残念ながら本人は2009年に他界したんですが、もし生きていたら去年で70歳だったんです。そこで、『WIRE』誌との共同企画で『Late Works』というCDに商品化されていなかった彼の晩年の作品をまとめました。『WIRE』誌の購読者プレゼントとして無料で配布され、その後〈Macro〉からリリースして誰にでも買えるようにしたんです。そういうかたちで世に出せて良かったと思っています。普段なら彼の音楽に触れないような層の人たちにも聴いてもらえることが出来たと思うので。エレクトロニック・ミュージックのアーティストやDJなどからも、とても好意的なフィードバックをもらって嬉しかったですね。

お父さんから、音楽的な影響は受けていると思いますか?

ゴールドマン:僕のハーモニーへのアプローチは受けていると思います。とくにハウス・ミュージックではハーモニーを軽視しているものが多いように感じます。コードの組み合わせが耐えられないものとか、よくありますよ(笑)。もし父が聴いたら同じことを言っただろうと思います。それに豊かで厚みのある音作りというクラシック音楽の録音の技巧なども、自分の曲を制作する際に参考にすることがあります。背景音のディテールに注意を払ったりとか。

〈Macro〉は他の多くのダンス系レーベルと比べると、かなり実験的な音楽を紹介している印象がありますが、そこは意識していますか?

ゴールドマン:はい、そうですね。理由は、僕たち自身が飽きないようにしているからでしょう。レーベルによっては、レコードをDJのツールとして出しているところもありますが、僕たちはそれ以上のものと考えています。自分達のカタログの中に、それまでにない表現を加えたい。新しいことを色々試していることが、結果的に「実験的」になっているんでしょう。新しいものは実験してみないと分からないですからね。

逆に、クラブ/ダンス・フロアも意識していますか?

ゴールドマン:ええ。僕もフィンもDJですから。それが基本にあることは変わりません。そのなかで、いままでにない新たな要素やヒネリを加えるようなものを意識しています。ですから、クラブが基盤となっていることはとても重要ですが、そのクラブ体験をこれまでにないようなものにしたいんです。いくら実験的になろうとも、頭の片隅では必ずクラブを意識していますね。

また音楽的な実験だけでなく、今回のミックスCDのようにコンセプトやフォーマットも変わったことに挑戦していますよね?

ゴールドマン:そうですね。例えば『The Grand Hemiola』という作品では、2枚組の12インチのB面とD面を組み合わせてループを構築することができるようにしたものを出しました。片方が4/4拍子で、もう片方が3/4拍子なので、同時にプレイすることで異なるリズムのループを作れるようになっています。何か人がやっていないことを考え出すのは、僕の趣味みたいなものです(笑)。

カセット・テープでリリースした作品もありましたよね?

ゴールドマン:これも同じような考えのものです。〈The Tapeworm〉というレーベルから出した『Haven't I Seen You Before』というテープで、片面に5曲、裏面に同じ5曲が逆の順番に入っています。ですから、曲を再生中にリバース・ボタンを押すと、同じ曲が延々とループできる仕組みです。同じレーベルでフェネス(Fennesz)のリミックスのテープも制作しました。これは彼が出した、サンプル集のテープを元に、僕がサンプルのリミックスをしたというものです。といっても、彼のサンプルをそれに合った自分のサンプルとひとつずつ差し替えていくという作業をしたものなので、実際にはフェネスのサンプルはいっさい含まれていません。まさに実験的なおかしな作品ですが、ダンス・トラックを作るのとは全く違う体験で。そうやって、「今度は何をやってやろうか」と考えるのは楽しいですよ。

最後になってしまいましたが、一つ伺うのを忘れていたことがありました。あなたはベルリンで生まれ育ったんですか?

ゴールドマン:そうです。僕が子供の頃、両親はよくブルガリアのソフィアとベルリンを行き来していましたが、僕はずっと東ベルリンで生まれ育ってきて、ベルリンを長期間離れたことはないです。いまは西側に住んでいますけどね。

では幼少の頃は、この街がエレクトロニック・ミュージックの首都になる日が来るとは想像していなかったでしょうね?

ゴールドマン:してませんでしたね。その兆候を感じたのは、やはり90年代に入って〈Tresor〉が出来た頃からです。その頃から、デトロイトのアーティストがたくさん来るようになったり、ベルリンから彼らのレコードが出たりしていましたから。でもドイツのアーティストの曲を、外国の人たちに聴いてもらえるようになるとは、だいぶ後になるまで想像できませんでした。ドイツのハウス・レーベルが外国で評価されるようになったのなんて、本当に最近のことですからね。僕の初期のリリースがドイツのレーベルではなく、UKのレーベルだったという事実もそれを物語っています。〈Classic〉からリリースした東ドイツ人は僕が初めてだったはずですよ(笑)。いまでは多くのUKのアーティストがベルリンのレーベルにデモを送るようになっていますけど!多くのUKレーベルがそのままベルリンに引っ越してきてしまうケースも多いですしね。

そのような変化は好意的に見ていますか?

ゴールドマン:ええ、とてもいい変化だと思います。ただ、この状態がずっと続くわけではないこともわかっていますけど。ベルリンはかつて、とても不親切で排他的な街でした。90年代の後半くらいでも、例えばレコード屋に行っても本当に店員があり得ないくらい不親切で(笑)、疎外感を感じたものですが、いまでは全然変わりました。国際的でコスモポリタンな文化が流入してきたこと、さまざまな国や地域からやってきた人びとと触れ合うようになったことで、ベルリンはずっといい街になりましたよ。

外からやってきた人間としては、そう言ってもらえると嬉しいです(笑)。ありがとうございました。

(以上)

Wolfgang Voigt - ele-king

 カフカをモチーフにしているという話題だけが先行していた「カフカトラックス」を1枚にまとめ(て5曲をプラスし)たマイク・インクによる本人名義の4作目。ピアノをモチーフとした昨年の『フライラント・クラフィエムジーク』(裏アンビエントP189)がかなりいい出来だったので、つい買ってしまった。アート・ワークがよかったせいもある。活動を再開してからの勢いに押されているともいえる。......とはいえ、M:I:5やスタディオ1でやっていたことと大きく隔たりがあるわけでもない。『クラフィエムジーク』の方がリヴァイヴァルしつつあるミュージック・コンクレートとの親和性も高く、新機軸には富んでいたし、「カフカ」という目くらましがなければ、従来と同じミニマル・テクノの範疇でしかない。低音が効いていて、ビートはドイツに特有のメトロノミックなそれ。洗練度は格段に高い。

 アルバム全体に散りばめられているのはカフカの小説を朗読している「声」。これが断片的に聞えてきたり、あらゆる方向から、そして、折り重なって響き渡る。言葉の意味がダイレクトにはわからないので、内容的なことまではわからないけれど、基調は『クラフィエムジーク』で使い倒されたピアノと同じく、不安を呼び起こすような使い方が「カフカ的」だと信じられていることは確か。統合失調症の人が聴いたらどうなってしまうんだろうと思うようなオープニングを筆頭に、次から次へと「声」は波状に襲い掛かり、ヴァーゴやバム・バムなど初期のシカゴ・アシッドがそうであったように、どう考えてもバッド・トリップに誘い出そうとしているとしか思えない(ユーロ危機のサウンドトラックとしては充分すぎる効果を上げている)。とくにアルバム用につくられたクロージング・トラック「3.4」の重厚さには特筆すべきものがあり、14年前につくられた無機質でダークなM:I:5がどれだけ躍動感に満ちていたかを痛感させられる。メクチルド・フォン・ローシュ(裏アンビエントP133)もかくや、ゆっくりと地の中に引きずり込まれるようなループ・サウンドは、回転数を落としただけなんだろうけれど、逆説的に醸し出される甘美さと奇妙な説得力に満ち溢れている。このような重苦しさはヨーロッパの白人にしかつくれないに違いない...(ことダンス・カルャーに関する限り、アメリカもイギリスも再度、サマー・オブ・ラヴへと向かっているというのに...)。

 そういえばカフカと同じく、アメリカに行かずしてアメリカを描こうとしたラース・フォン・トリーアの映画『ドッグヴィル』は、この7月にオスロで大量殺戮を行ったアンネシュ・ベーリング・ブレイビクのフェイヴァリットなんだそうである(ゼロ年代における僕のベスト2作品でもあるけど。あとの2本は、クリストファー・ノーラン『メメント』とチャーリー・カウフマン『脳内ニューヨーク』)。

 ちなみに『カフカトラックス』と同じことを日本の小説でやるとしたら、誰のどの作品を使えば、同じように「不安」を煽れるのだろう?

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Maria Minerva - ele-king

 音楽的にも、そして文化的にも、今日のシンセ・ポップがたんなる"リヴァイヴァル"ではないことを証明する1枚で、まだレヴューしていないけれど性文化への揺さぶりという点では、リル・Bの『アイ・アム・ゲイ(アイム・ハッピー)』とも共振するアルバムなんじゃないかと解釈する......。
 ロサンジェルスの〈ノット・ノット・ファン〉レーベルが揺さぶりをうながすようなレーベルだ。低俗を装いながら、実験的でアーティで、ぶっ飛んでいるようで思想をほのめかす。「正解」を振りかざすような暴君から1億光年離れたところで、作品性という観点から言っても自由気ままにやっている。エストニア系のマリア・ミネルヴァ(音楽評論家の娘らしい)の音楽も、そうしたDIY音楽の今日的な自由のなかで生まれたひとつだと言えよう。

 『キャバレ・シクスー』――これはパリに「女性学センター」を立ち上げた先駆的なフェミニスト、エレーヌ・シクスーにちなんだタイトルだが、マリア・ミネルヴァは性(ジェンダー)の問題、つまり「男らしさ」「女らしさ」というこの手の変革可能な人工物の問題にを主題にしている。そして、『キャバレ・シクスー』にはタイトルが言うように、彼女のキャバレ・ヴォルテール(ポスト・パンク時代におけるダダ中毒)へのシンパシーとポスト・ライオット・ガールとしての視座、そしてポップへの情熱(アバのカヴァー)が詰まっている。
 それは彼女が『FACT』マガジンのために提供したミックスの選曲にも表れている。L.A.ヴァイパイアーズとクリス&コージー、ホアン・アトキンス(コズミックなデトロイト・テクノ)、シェ・ダミエ(セクシャルなシカゴ・ハウス)のトラックが並べられるそのミックスは、彼女の野心的な折衷主義、それから性文化への挑発と前向きさがよく出ている。
 『キャバレ・シクスー』を喩えれば、"ナグ・ナグ・ナグ"とベスト・コーストの残響音の融合、そしてファンカデリックとリー・ペリー、そしてドリーム・ポップとシカゴのゲイ・ハウスがブレンドされているようなズブズブの音で、この官能と皮肉が混じった彼女の型破りな音楽からは社会派と言われている音楽が見落としがちな自由を感じる(収録曲の"Soo High"のソフト・ポルノを用いたPVも面白い)。「居ることができる家があるというのに何故、出るの?」と、彼女はインナーで簡潔な言葉を用いてリスナーに問うている。「何故、安全な場所からわざわざ出たがるのかと、私は尋ねる。部屋に居ることができるのに、何故、こんな下世話な音楽を一晩中聴くんだろう。私の大好きな歌を聴いて下さい」
 マリア・ミネルヴァは今年〈NNF〉のサブレーベル〈100%シルク〉からも12インチ(しかもユーロビート!)を発表している。また、〈NNF〉からカセットテープでもう1枚のアルバムも出している。そっちの『Tallinn At Dawn』は、彼女の実験色がより強く出ている。

interview with Amanda Brown - ele-king

 その奇矯なエロティシズム、挑発的でビザールなヴィジュアル、ノイズ、ドローン、アンビエント、ダブ、ファンク、それから低俗なディスコまでもがミックスされる奇異な音楽性、混乱、混乱、また混乱、キッチュ、キッチュ、またキッチュ......あるいはヴァイナルとカセットで限定リリースされる大量の作品群(たとえば2005年の1年だけでも20枚以上の作品を限定リリースしている)。2004年にはじまったロサンジェルスの〈ノット・ノット・ファン〉は、現在リスナーにとってもっともミステリアスなレーベルのひとつである。
 アマンダ・ブラウンはレーベルの創始者のひとりだ。彼女は......強いて喩えるのなら、ポスト・ライオット・ガールを代表する存在、ないしはUS ローファイ・アンダーグラウンド・シーンにおけるリディア・ランチ(ないしはマドンナ)のごとき存在である。彼女は政治的にも性文化的にも、そして社会的にも、旧来のコンテクストに組まれることを拒むかのように自由気ままに活動している。
 アマンダ・ブラウンは、この5年は、レーベルの看板バンド、ポカホーンティットとしても何枚もの作品を発表し続けてきた。昨年はメンバーのひとり、ベサニー・カンテンティーノがバンドを脱退(ベスト・コーストとしての活動をはじめたため)、残されたアマンダ・ブラウンはL.A.ヴァンパイアーズと名義を変えてあらたな道を進んでいる。
 2011年は12インチのダンス・ミュージックに的を絞ったサブレーベルとして〈100%シルク〉をスタートさせ、すでに11枚ものシングルをカットしているが、これが日本でも人気がある。数が少ないというのもあるが、わりとすぐに売り切れる。だいたい、ヒップホップ系、ハウス系、そしてインディ・ロック系のDJが同時に注目するようなレーベルはそう多くはない。もっともそれ以上に興味深いのは、ゼロ年代のUSアンダーグラウンドにおけるノイズ/ドローンがミラーボールがまぶしいディスコの世界へと到達したという事実である。男性的な実験音楽の世界に揺さぶりをかけるように、アマンダ・ブラウンはユーロビートとポルノをそこに持ち込む(マリア・ミネルヴァにもそれがある)。
 『WIRE』誌の表紙を飾り、いよいよヨーロッパでその評価を高めている〈NNF〉レーベルにメールを送ったところ、返事はすぐに来た。「私はアマンダ! 質問を待っているわ」

女性はアンダーグラウンド・シーンでもっと評価されるべきなのよ。音楽のメインストリーム世界では女性をよく見る。稼ぎ手、ビジネス権力者、トレンドセッターといったところでね。しかしアンダーグラウンドの世界では、ショーにいる大多数は男性なのよ。

今回、メール・インタヴューを引き受けていただき、ありがとうございます。ヨーロッパ・ツアーはいかがでしたか?

アマンダ:いや、結局ヨーロッパにはいかなかったんだけど、オーストラリアにいたわよ。とくに興味もなかったし、オーストラリアに行くなんてまったく思っていなかったのに、そしてそのツアーで、私の人生最高の音楽経験をするなんて、おかしいわよね。私は新しいセットをプレイするのに、とても緊張していたわ。でも、都市のバイブやエネルギーが自分のパフォーマンスをインスパイアして、はっきりいってオーストラリアでいちばん良いショーをすることができたのよ。

あなたの〈100%シルク〉レーベルが日本のアンダーグラウンド・シーンで人気なのは知ってますか? ヒップホップ系、ハウス系、そしてインディ・ロック系のDJが買っているんですよ。

アマンダ:それは素晴らしいわ。欧米のミュージシャンにとってのゴールは日本で愛されることだよ思うのよ。日本人は何か、すばやくて、強烈で、アートへの情熱に満ち溢れているように思う。もし日本に行って、DJが〈シルク〉のレコードを回しているのを聴いたら、驚くでしょうね。

あなたのレーベル〈NNF〉のどれもが独特の音だし、いくつかのリリースは実験的です。まずはあなたの歴史から教えてもらえますか?

アマンダ:私はロサンジェルスに80年代初頭に生まれた。実を言うとね、音楽を演奏することには、そこまで興味がなかったのよ。ずっとライターになりたいと思っていた。その学位を取って、芸術のアウトレットとして続けていくものだと思っていたわ。音楽は別の方向から何となくやって来たのよ。ブリット・ブラウン(Robedoorとして数多くの実験作品を出している)と私はデートをしていて、彼はカシオとギターを持っていた。私たちはそれを面白おかしく使い、曲と歌詞を書いて遊んでいた。私たちは、この初期の空想を、大きな規模になったけど、まだプレイし続けているのだと思うわ。

どんな10代を送りましたか?

アマンダ:いわゆる変人よね。普通に学校に通っていたけれど、 同時にモヒカンで口にピアスをしていたという意味でね。

パンクに少し脱線した優等生ですか?

アマンダ:私はパンクではなかったのよ。R&Bやヒップホップが好きだったの。異常者でもなかった。私はただたんにクールでいたかったし、いまもそうなのよ。

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真面目な話、ドラッグの影響はないわ。ドラックは退屈で、興味を持ったことがないの。外の世界では私はかなりのストーナーだと思われているのかもしれないけど、それは私ではない。

あなたにとっての音楽とは何でしょう?

アマンダ:私は音楽を作るってことよりも、まずは音楽の大ファンなのよね。インスパイアされる、すばらしいアーティストと仕事をするのが好きなのよ。すばらしい音楽に圧倒されるのが好きだし、ダンスするのも好きよ。

音楽はどうやって学んだんですか?

アマンダ:いや、まったく学んでないわ。

ブリット・ブラウンとはどのように〈NNF〉レーベルをはじめたんですか?

アマンダ:ブリットはファッション雑誌の仕事の私の上司だったのよ。私は、彼と出会ったとたんすぐに好きになったの。彼が私を好きになるまでは時間がかかったけどね(笑)。そして私たちはレーベルをスタートしようと思い立った。それがフルタイムの感情になるなんて考えてもいなかったけど。「音楽を作っている友だちがいて、私たちには彼らをサポートするお金がある。じゃあ、レコードを作ろう(let's make a record!)」、こんな感じだったのよ。

〈NNF〉レーベルのポリシーについて教えてください。

アマンダ:ブリットと私が音楽とアーティストが作るモノを信じているということだけ。信頼と真実は私たちにとって大きいのよ。ファンが私たちがいままでリリースした作品についてどう思っているのか、すべて知っているわけではないけれど、私たちは音楽が好きで、アンダーグラウンドへの愛にふさわしい、という信頼を持たれるべきだと思っているわ。私たちは流行先導者ではないけれど、強い意見と特有なテイストを持っている。もし私たちが、あなたが「いけている」と思ったら、あなたも仲間よ。

レーベルはなぜヴァイナル、カセット、あるいはCDRでリリースするのですか?

アマンダ:CDRは触れたりプレイしたり聴いたりするには楽しいものではないわ。まず美学的に面白くないし、メディアとして記憶に残るものでもない。

CDを嫌っている理由は?

アマンダ:傷がつくし、ケースは壊れるし、たったひとつのシミでスキップするし、かなり迷惑よね。

ちなみに〈Not Not Fun〉というレーベル名はどこから来たんですか?

アマンダ:これは昔私がよく言っていた言葉で、まぬけ風に使ってたのよ。最悪と、そんなに楽しくないの中間ぐらいの意味よ。

あなたは長いあいだポカホーンティットとして活動してましたが、このバンドはどうやって生まれたんでしょう?

アマンダ:まずね、「ポカホーンティットというバンドをはじめた夢を見たのよね」と、私がベスアニー(現、ベストコースト)にかけた電話からはじまっている。いま聞いたらバカみたいだけど、本当の話よ。ベスアニーは素晴らしい声を持っているわ。私には、彼女の歌があり、言葉に表せないほど至福があって、ディストーションのギターがなり響く......というバンドのヴィジョンがあった。ラッキーなことに、彼女は私の空想を満足させることが好きだったのよ。

初期の音はノイズ/ドローンでしたよね。これは何の影響なんですか?

アマンダ:正直言うけど、直接影響を受けているものはない。あなたが聴いているのは、(ノイズ/ドローンというよりも)アマンダとベスアニーが純粋に即興している音なのよ。私も彼女もドローン音楽を聴いたことがない。私はファンクやダブ、ビョーク、シャーデー、ア・トライブ・コールド・クエストが好きで、彼女はビリー・ジョエル、スプリングスティーン、ブリンク182、ビーチ・ボーイズが好きだった。どこから私たちの音楽が来たのかわからないけど、私たちのあいだで何か生まれたんでしょうね。

すごくサイケデリックな音楽だと思うんですけど、何を目的として作られたんでしょう?

アマンダ:目的は、私たちの友情、女らしさ(femininity)、ユーモア、そして創造性を祝うために接合することだった。それはともに、私たちの時代のタイムカプセルだった。注目されはじめたとき、私たちは自分たちの幸運を信じることができなかったわ。

ドラッグ・カルチャーからの影響はありましたか?

アマンダ:いいえ、真面目な話、ドラッグの影響はないわ。ドラックは退屈だし、興味を持ったことがないの。外の世界では私はかなりのストーナーだと思われているのかもしれないけど、それは私ではない。

〈NNF〉の初期のウェアハウス・パーティについて教えてください。

アマンダ:ロサンジェルスでは大きなフォロワーはつかなかったけどね。ほとんどのパーティは75~100人規模で、それ以下のときもたくさんあるほど親密だったわ。自分たちが何かかっこ良くて特別という感覚だったし、そんなにたくさんの人に気づかれなかったということでもある。正直言って、私たちはいつでもこれで良かったのんだけどね。

2010年のポカホーンティット名義の最後のアルバム『Make It Real』はダビーで、ユニークなビートを持った作品でした。Pファンクのようなアートワークも面白かったし、そのファンキーな感じとか、それ以前のポカホーンティットとは別物というか......。

アマンダ:バンドが5人編成に変わるということはすべてのジャンルにおいて、かなりの変化なのよ。部屋に5人の人間がいるということは、ドローン音楽やアンビエント音楽にはエネルギーが高すぎるの。生のドラマーがいて、ファンキーなベース・プレイヤーがいて、それで突然、こんなグルーヴィーでサイケ・ワールド・ビート・アンセムを書いたのよ。リスナーに、よりアカデミックな音楽を......という初期のヴァージョンとは違って、私たちは人びとを動かしたかったし、自分たちも動きたかったの。私は自分の歌詞を信じると言うことにも気づいたし、何かモットー(従来の物語より深い自己表現)のようなモノに変えた。

あなたのなかにそのような進化があったんですか?

アマンダ:私たちは新しい方向に行こうと意図的に発展した。どんなリスナーにむけてもまったく違う経験ができるように、古い音を洗い流すという、重大な意図を持って、何か震える、新しいものを作り出そうとした。私たちに1日目から最後の日までファンがいることを知ってびっくりしたけどね。

何か特別な影響があったら教えてください。

アマンダ:私はいまでも音楽が好きで、音楽への愛がどんどん成長している。トリップ・ホップ、R&Bやヒップホップ、ダンス・ミュージック、そしてデジタル・アンダーグラウンド、ディー・ライト、ブラック・ボックス、ビギー、ポーティスヘッド、ミスター・フィンガーズ、ア・ガイ・コールド・ジェラルドが大好きなのよ!

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私たちは音楽が好きで、アンダーグラウンドへの愛にふさわしい、という信頼を持たれるべきだと思っているわ。私たちは流行先導者ではないけれど、強い意見と特有なテイストを持っている。

女性アーティストだけを集めて『My Estrogeneration』というコンピレーション・アルバムを作りましたね。これはどんな経緯で生まれたんでしょう?

アマンダ:女性はアンダーグラウンド・シーンでもっと評価されるべきなのよ。音楽のメインストリーム世界では女性をよく見る。稼ぎ手、ビジネス権力者、トレンドセッターといったところでね。しかしアンダーグラウンドの世界では、ショーにいる大多数は男性なのよ。オンライン・バイヤー、ブログ運営者、ミュージック・ジャーナリストも男だらけよね。もっとも私たちが女性というだけでゲットー扱いされる考えは好きではないけどね。フェミニストの最善の提案は、パイのスライスを欲しいことではなく、自分たちの別々のケーキが欲しいってこと。私たち女性がみんなひとつの場所で、創造的な力、重要な存在として知覚されるのはいいわよね。

サブレーベルの〈100% Silk〉をはじめた動機について話してください。

アマンダ:アンダーグラウンド・ダンス・ミュージックのアートを強調したかったからレーベルをはじめたのよ。ダンスのほとんどのチャンネルは健康的だと思う。ダンスというヴィジョンには、教養ある男性に美しいコンピュータや複雑な機材もある。ダンスのなかにソウルと優雅さ、ランダムと興奮、アウトサイダーの感覚を組み入れてやっている連中を知っていたので、私は彼らにハイライトを当てて、アーティストをサポートしたかった。コンセプトはダンスで、そう、本物のダンシングよ。

チルウェイヴやシンセ・ポップは好きですか?

アマンダ:チルウェイヴはよくわからない。シンセ・ポップは好きじゃない。私はあくまでディスコを崇拝しているの。大好きよ。〈シルク〉からでている音楽はたんに電子楽器で作った音楽ではない。あなたをダンスさせ、グルーヴさせなければならないの。

でもあなたの音楽には80年代のニューウェイヴからの影響がありますよね?

アマンダ:自分では80年代的だと思ってないんだけどね。ニューウェイヴでもないと思うけど、幾何学的なニューウェイヴのアートは好きよ。スペンサー・ロンゴは私を素晴らしいナーゲルの女性として描いてくれた。それが80年代の審美からの借りてきた物だとしても、スペンサーは古い物を新しい感覚で再生できる人だと思うわ。

クラブ・カルチャーに関するあなたの考えを教えてください

アマンダ:クラブ・ミュージックは文字通りにいってセンセーショナルよね。ほとんど知覚の音楽で、大袈裟で、人を楽しませ、ドラマティックで、遊び心があって、セクシーで、催眠効果がある。私は踊るのも、汗をかくのも、ダンスフロアで自分の体を失うのも好きなのよ。もし私が他人のなかの同じ反応を刺激する音楽をリリースすることができたら、私が望んでいたよりも良いモノができたと満足するでしょうね。

いろんなスタイルを楽しんでいるって感じですか?

アマンダ:そのときの感覚をね。その瞬間に何に惹かれているかによるわ。あるときはダブだったり、エクスペリメンタル・ポップだったり、ハウスだったり......。音楽を探しながら変化することが好きなのよ。ひとつのことを20年続けためにここにいるわけではないから。


LA Vampires
So Unreal

Not Not Fun

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2010年末にL.A.ヴァンパイアーズ名義で出した『Unreal』はとてもパワフルな作品でしたけど、あのタイトルはどこから来たんですか?

アマンダ:あのアルバムをレコーディングしていたとき、私の人生すべてが非現実的に感じられた。ポカホーンティットは解散して、仲の良い友だちを失って、レーベルが私のフルタイムのジョブになって、私の最初の小説が売れたばかりで、かなり圧倒されていた。『Unreal』(非現実的)は、このセンセーションを表すいちばんの方法だった。

アメリカであなたの音楽は受け入れられているんでしょうか?

アマンダ:答えるのに難しい質問よね(笑)。何人かは嫌いで、何人かは好きで、ひとりかふたりぐらいは大好きであって欲しいけど。

あなたの音楽は、アメリカの主流文化とはどのような関わりがあると思いますか?

アマンダ:いいえ、私はアメリカ文化のメインストリームから外れているからね。人は私の音楽をただの騒音だと思っているし、ローファイのエクスペリメンタル・アーティストだと思っている。まあ、反論はしないけどね。

音楽を通じて言いたいことは何でしょう?

アマンダ:まずはあなた自身が楽しむってこと。

レディ・ガガについてどう思う?

アマンダ:深く考えたことはないけど、少なくともあの音楽が良いとは思えないわよね。でも彼女の体はすごいと思う。綺麗な形をしているし、ファッションも大好きで、その部分は尊敬している。ただ、彼女の音楽が彼女の個性やアウトサイダー感のように奇妙で壊れていれば良いのにと思う。そうすれば、彼女はメインストリームでもアンダーグラウンドでも重要人物になれるからね。

今後の予定は?

アマンダ:仕事,仕事,仕事,仕事。良い音楽を作る。ベストな音楽をリリースする。愛し続ける。自分が楽しむ。


ST.Vincent - ele-king

 何年か前、アマゾンでミランダ・ジュライを探していたときに「この商品を買った人はこんな商品も買っています」欄にセント・ヴィンセントをみつけてあっと驚いた。と同時に深く納得もしたものである。当時調べたかぎりでもとくに接触のなさそうなこのふたりを、筆者はつよく結びつけて考えていたのだ。セント・ヴィンセントことアニー・クラークは、筆者にはミランダの短篇の登場人物か、そのモデルとなった人物のように思われて仕方なかった。とくにふたりの女性の同性愛的な関係を描く作品では、受け身で気弱な主人公の視線を通じて描かれる孤独で豪傑な恋人を、アニーと重ねて読んだ。だからアマゾンで偶然ふたりの名前が重なったとき、同じように感じている人が他にもいるのだと思って驚いたのだ。
 だが、そのようなほとんど妄想ともいえる感覚を共有しなくとも、このふたりの名前はどこかで交差しただろう。いわゆる現代アートの新鋭として知られ、小説や映画、〈K〉から朗読パフォーマンスをリリースしていたりとマルチな活動を行うミランダと、過去にはポリフォニック・スプリーに参加し、様々な楽器の素養やどことなくアート・シーンと親和する雰囲気を持ち、佇まいからしてもただのミュージシャンという枠に収まりきらないギタリスト、アニー。革新的な表現を生み出している点、サブ・カルチャーというよりはハイ・カルチャーの側からポップ・シーンを更新するように見える点、そして男性を標的とすることなくマッチョイズムへの強い批評を感じさせる点。キャラクターは対照的だが、ふたりの共通点は非常に多いのだ。ここにジュリアナ・バーウィックも加えると、いままでに見たこともないような、自由で刺激的な活動をする、本当に新しい女性アーティスト像が見えてくる思いがする。

 『ストレンジ・マーシー』は、アニー・クラークのソロ・プロジェクト、セント・ヴィンセントの3作目となる作品だ。『ピッチフォーク』のインタヴューではアルバム制作を子育てになぞらえていておもしろかった。要約すれば、ひとりめ(=1枚め)は何もかもはじめてで無我夢中の全力投球、しかし3人めともなれば「ハイハイ、お前は7日連続でこのハードロック・カフェのスプラッターTシャツを着て、髪もボサボサでいたいのね? そうしたらいいわ。好きにしなさい」。随意というわけにはいかないが、どのように取り組み、向かい合えばよいのかがわかっている、ということだろう。気負いのない、しかしエネルギーに満ちた作品である。
 ふだんはコンピュータで作り込むことが多いが、このアルバムに関しては「アンプラグド」......ギターと歌のアルバムだとも述べている。実際にはアンプラグドとは程遠く、音数も音色も豊富な作品だが、1曲1曲がソングとしての充実を持っていることはたしかだ。その意味ではファイストなどの女性シンガーと比較し、上質なポップ・アルバムとして聴くこともできるだろう。しかしその上で「ソング」の枠を大きく逸脱し上昇しつづけるようなエモーションの奔流がある。ギターは歪み、バーストし、かと思えばコミカルに動き、時折アコギに持ちかえられる。『アクター』のカラーを決定づけたオーケストラルなアレンジも『クロエ・イン・ジ・アフタヌーン』など冒頭から顔をのぞかせ、そこに華やかさを添えている。どの曲をとってもじつに表情ゆたかなギター・ワークである。しかしたとえばマーニー・スターンのようにテクニック志向なプレイとは大きく異なる。気品や教養をそなえ、そこにはブルースのハートも宿っている。スペーシーなプロデュースがなされているが、表題曲"ストレンジ・マーシー"や"イヤー・オブ・ザ・タイガー"などの数曲を聴けば、そのことがよくわかるだろう。
 "サ―ジェン"では頭のラインに大胆に性的な表現があり、「身体と精神の齟齬について示された作品ではないか」などと質問されていたが、本人はたっぷりとした余裕をみせながら笑ってかわしていた。読みにくく剛毅で、深い思索性を感じさせるこの強烈なキャラクターが彼女のもっとも大きな魅力かもしれない。彼女のレコード・レヴューが難しいのは、ジャンル化しにくい音楽性と、その音楽性の高さを超えて彼女自身の個性に言及しなければならないからだ。とくに日本のレコード・ショップのレヴューなどでは、ありきたりのバイオグラフィ以外はオミットされている感があるし、それもむべなるかなと筆者ですら感じる。この曲も細やかな小技をきかせたギターづかいが印象的で、ローラー・コースターのようにテンションが上り下がりするが、自身の中の躁/鬱というレベルをはるか上から睥睨し、手放しにしているような雰囲気がある。"クルーエル"のミュージック・ヴィデオでは、アニー扮する囚われの主婦が、まったく才能のない家事業務で失敗を繰り返し、最後に家族に生き埋めにされるという寸劇が展開されていたが、土が顔を覆う直前でも不遜なまでに落ち着きはらって態度を変えない様子には、おそらくこれが実際に起こったとしても彼女が同じように事に臨むだろうということを窺わせるものがある。自分の才能の大きさや特異な個性、まわりの人間からの疎外感のようなものから目をそらさず、むしろそれを見つめながらアニーは長い時間を生きてきたのだろう。どうしたって目を惹いてしまう

 独特な顔立ちや物言い、耳というか意識に強くこびりつく声、腕ではなく精神性がかき鳴らしているようなギター、クラシカルな雰囲気やたたずまい。アニー・クラークの存在そのものをみっちりと感じとることができるアルバムである。それはいつだってそうなのだが、荒ぶる彼女の魂を音楽というフォーマットに落としこむことに少し馴染んできたような、歌もの集としてのまとまりを感じさせる余裕の1枚となった。

message from AXIS - ele-king

 デトロイト・テクノにおける偉大なるミニマルの父、そして手のつけられないSF中毒者でもあるジェフ・ミルズから新しいプロジェクトに関する連絡を受けた。以下は、彼自身からのメッセージである。

文:ジェフ・ミルズ

 『Fantastic Voyage』(「ミクロの決死圏」)プロジェクトはパリのシテ・ラ・ミュージックというベニューからの依頼ではじめたものだ。そのベニューでいくつかの映画上映をスペシャルな形で行う企画があり、僕にも好きな映画の音楽を制作してほしいと言われ、すぐにこの映画を選んだ。1966年発表以来毎年のようにどこかで上映されていて、僕も長年お気に入りだったし、他のSF映画とは一線を画した内容でいちど観たらその感動はなかなか忘れない印象的なフィルムだ。
 『Fantastic Voyage』を新しいサウンドトラックとともに上映するにあたって、僕は観客を巻き込んで体験するような内容を考えた。映画のなかで、病気の科学者の体内に潜水艦が入っていくところで、観客も同様なフィーリングを感じるようなシナリオを考えた。観客が体感できるように、映画内で風が吹く場面では会場に設置した巨大扇風機を回し、床を振動させるべく第二のサウンドシステムを用意したり。スクリーンもふたつ用意し、体内に入る前は1枚目のスクリーン、2枚目のスクリーンのまわりにはデコレーションやライティングを施し体内の雰囲気をだし、その他にも観客が体内にいるような感じを体験できるよう工夫した。
 サウンドトラック制作には数か月を要し、実際に使用したよりもっと多くのサウンド、80~90曲を用意していた。制作初期の段階から、このサウンドトラック制作ではテクノロジーに頼るような音はつりあわないと考えていた。人間の体のなかに入っていくのはとてもオーガニックなことで、それがテクノロジーの進歩、コンピュータや機械より重要なことだと思った。音が複雑に絡み合い、多次元的な層を織りなすようなサウンドをつくりあげていく必要があると感じた。あえてシンクされていないシーケンスを組み合わせることで、血流や内臓の自然な感じを表現しようとした。映画のために制作したスケッチ(曲)をぜひリリースしたいと思って今回2枚組のCDにした。
 映画『Fantastic Voyage』のおもしろいところ、他の映画とは違うところは、信じられない体験が宇宙や海などではなく、人間の体内で起きるというところだ。だからどんな人でも興味を持つはずだし、身近なこととして感じられるはずだ。医学的な知識がなくても、わかりやすいように科学者たちの冒険とともに説明されており、若い人たちは一度は見るべき映画だし、すべての人が自分たちの体がスペシャルだということを再認識する機会を与えてくれると思う。




Chart by Underground Gallery 2011.10.06 - ele-king

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KRAMER...

KRAMER... #House Revenge #502 (HOUSE REVENGE) »COMMENT GET MUSIC
FIRST CHOICE「Let No Man Put Asunder」幻のDERRICK MAY & ASHLEY BEEDLEリエディットが遂に復刻!DERRICK MAYが90年代中期に毎回必ずプレイしていた、FIRST CHOICE「Let No Man Put Asunder」のリエディットが遂に復刻! DERRICK MAYのミックスCD「Mix Up」でも一部分がリエディットされ使用されていたので、聞いたことがある方も多いと思いますが、実はコレ、ASHLEY BEEDLEとDERRICK MAYが、RON HARDYのリエディット・ワークをお手本にして制作した、アンオフィシャルなリエディット作品なんです!電車が走り去るSEをバックに、抜群にファンキーなパーカッシブ・グルーヴで展開していく、とにかくアガるディスコ・ハウス!!ASHLEY BEEDLEによるA面、DERRICK MAYによるB面、どちらも本当にカッコイイ!!!オリジナル盤は欧州の中古市場では100竄ャを超える値段で取引されることもある正真正銘"幻"のトラックです

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MO MOODY (MOODYMANN)

MO MOODY (MOODYMANN) Doin Ya Thang (White Label) »COMMENT GET MUSIC
MOODYMANNの新プロジェクトMO MOODY!超限定プレス! 既にyoutubeにPVが公開され、ファンの間で大きな話題を集めていた新曲「I Got Werk」、初期の[KDJ]の作品を思い出させるような、ライブフィーリング溢れるディスコ・チューン「Doin Ya Thang」など、全3曲を収録!ここ最近のMOODYMANNの作品の中でも群を抜いた一枚だと思います!

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REEL BY REAL

REEL BY REAL Surkit Chamber - The Melding (A.R.T.Less) »COMMENT GET MUSIC
デトロイトの隠れた重要人物REEL BY REALが約20年振りに新作を発表! 90年代初めに、JUAN ATKINSが運営していた幻のレーベル[Interface Records]や、当時のデトロイト・テクノを積極的にUKへ紹介していた名門レーベル[10 Records]から作品を発表し、コアなデトロイト・ファンの間では伝説のアーティストとして語られたいたMARTIN BONDSによるプロジェクトREEL BY REALが、何と20年ぶりの新作をリリース!ジャケットのアートワークは、[Underground Resistance]や[Red Planet]、[Transmat]のデザインでもお馴染みのABDUL HAQQによるもの!デトロイト・ファン・マスト!

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RONNY & RENZO

RONNY & RENZO Heartbreak Theme (Rekids) »COMMENT GET MUSIC
CARL CRAIGリミックス収録!ベルギーのカルトレーベル[King Kung Foo]で知られる RONNY & RENZOが、盟友 RADIO SLAVE主宰の[Rekids]から新作をリリース! QUIET VILLAGE名義でリミックスを提供していたこともあるRADIO SLAVEが、自身主宰の人気レーベル[Rekids]より、ベルギーのカルトレーベル[King Kung Foo]で御馴染み RONNY & RENZOによる最新作をリリース。低くドープにウネりを上げるスローモーなグルーブにシリアスなムード漂うアンビエンスなウワモノやディープな声ネタ、シンセリフなどを響かせ、10分を超える長尺世界の中ジワジワとハメに掛かる 超強烈トラックを披露。さらにカップリングには、ファンクネスなグルーブとスペーシーなシンセメロを響かせ、より壮大な世界を展開していく御大 CARL CRAIGによるリミックスを収録。当然、こちらも間違いありません!大・大・大推薦!

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QUINTUS PROJECT

QUINTUS PROJECT Night Flight (Derwin) »COMMENT GET MUSIC
UGヘビー・プッシュ!87年に限定300枚でリリースされたQUINTUS PROJECTのアルバム「Moments」に収録の「Night Flight」をPSYCHEMAGIK、LEXXがリミックス!しかもカップリングには、オリジナルも収録されています! JAZZANOVAのALEX BARACKが主宰する新レーベル[Derwin Recordings]新作は、87年にドイツ[NGM]よりリリースされた激レアアルバム「Moments」より、可憐な鍵盤が印象的に響く、緩やかなチル・コズミック/フュージョン・シンセ・クラシック「Night Flight」が世界初の12インチ化!このオリジナルを再発させてくれただけでも本当に嬉しい1枚ではあるのですが、さらにカップリングには[Ambassadors Reception]からアルバムリリースが予定されている PSYCHEMAGIKによるリミックス、KAWABATAこと LEXXによる'Night Crusin'なレイトバック/バレアリック・リエディットを収録。

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STRANGER SON

STRANGER SON Inside Many Summers (WHITE BOX) »COMMENT GET MUSIC
A MOUNTAIN OF ONE辺りのサイケデリック縲怎oレアリックなロッキン・ディスコは絶対に要チェックです!!限定250枚プレス。 元TVH3のGARETH SMITH率いるマンチェスターの大所帯ポストパンク・バンドSTRANGER SON OF WB改め、STRANGER SONによる待望のニューシングルが、ホーム・レーベル[Whitebox]から登場! A MOUNTAIN OF ONEのサウンドを彷彿とさせるようなサイケデリック縲怎_ブ縲廸.W縲怎Iルタナロック縲怎oレアリックな要素を、独自フィルターを通し昇華させた、オリジナリティー溢れるロック・サウンドを披露。収録3作、どれも本当に良いですので、コレはホントいオススメです!

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DON PAPA & SUBMARINE

DON PAPA & SUBMARINE Kambo Super Sound (Sex Tags Amfibia) »COMMENT GET MUSIC
ノルウェーのカルト・レーベル[Sex Tags Mania]傘下[Sex Tags Amfibia]新作は、昨年リリースされ話題となった DON PAPA & SUBMARINEによるレゲエ/ダブスプリットシングル!! レーベル看板 DON PAPAがSUBMARINEと共に手掛けるレゲエ/ダブ・スプリット・シングル 第2弾。ジャマイカン・ダブ手法な深く打たれるダブ・グルーブにスモーキーなヴォーカルを響かす DON PAPA手掛ける Side-A「Come 2gether」、カップリングには同曲のダブヴァージョン「Moss Dub Massive」を収録。ジャンルレスにコレは本当にオススメしたいです!! 限定プレスでのリリースとなると思いますので、コレだけは是非お早めに縲

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BRYAN FERRY

BRYAN FERRY Alphaville (Leo Zero Remix) (White) »COMMENT GET MUSIC
しばらく前から話題となっていた1枚が遂にヴァイナル・リリース!ROXY MUSICのフロントマン BRYAN FERRYのリミックスアルバムからのホワイト・ヴァイナル・カット!LEO ZERO、TIME & SPACE MACHINEのリミックスを収録!! 知らなかった人も多くいるとは思いますが、実はコレ、[Virgin]傘下[The Vinyl Factory]より、今年春先頃にほぼUKオンリーの取り扱い(日本にはほとんど入っていなかったと思います)で超限定リリースされていた「Alphaville Remixes」が、ホワイトながらも原盤と同じカップリング仕様で再登場!!!まず Side-Aでは、A MOUNTAIN OF ONEの中心人物 DJ LEO ZEROが、どこかトロピカルなムードを醸しだす、暖かくメランコリックな雰囲気が◎なミッドテンポなチル/バレアリックなディスコリミックスを披露し、Side-Bには、THE JOUBERT SINGERS「Stand On The World」の印象的なオルガンプレイをネタとして使ったと思われる TIME & SPACE MACHINEのリミックスを披露。どちらも本当に最高ですね縲怐B恐らく今作も限定プレスでのリリースになると思いますので、Nu-Disco縲怎nウス派の方は絶対にお見逃しのないよう、お早めのチェックをオススメします!当然、当店一押しの1枚です!

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DJ DEEP AND JOVONN

DJ DEEP AND JOVONN Back In The Dark (Clone) »COMMENT GET MUSIC
2000年にフランス[Distance]からリリースされた、DJ DEEP & JOVONNのディープハウス・クラシックが[Clone]より復刻![Blance]やCHEZ DAMIER辺りにも通じるミニマルなリフをバックに、セクシーにうねる黒いベース・グルーヴ、ワンコードながら絶妙のタイミングで刻まれるオルガン・リフを絡めながら、ジワジワとビルドアップする最高のディープ・ハウス・サウンド!ポエトリーも良い感じです!リリース当時は、それ程ヒットした訳ではありませんが、当時よりも今のムードに合っているように気さえする、ハウス・ファンなら絶対に聴いて頂きたい一枚です!傑作!

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KASSEM MOSSE

KASSEM MOSSE Enoha Ep (Nonplus) »COMMENT GET MUSIC
[Workshop]や[Mikrodisko]からのリリースでお馴染み、ベルリンのカルトアーティストKASSEM MOSSE、 ダブステップ縲怎eクノ越境レーベル[Nonplus Records]からの新作!モノ・ミニマル縲怎Gレクトロまで、全曲◎!MAURIZIO「M5」を"酸"を加えたような、ドープ・モノ・アシッド・ミニマルのA1がとにかくカッコイイ!うねるようにビルドアップしていく展開も素晴らしい!その他にも、DREXCIYAを思われるようなダーク・エレクトロや、ベルリン産らしい、インダストリアル・テクノなど、全4曲、全て◎!ここ最近のKASSEM MOSSEの作品の中では、ずば抜けてカッコイイです!

Walls - ele-king

 ウォールズのセカンド・アルバム『コラクル(かご舟)』を聴いて笑ってしまった。欧米および日本で圧倒的な人気をほこるケルンのミニマル・テクノのレーベル〈コンパクト〉がリリースする新作は、チルウェイヴと〈コンパクト〉のものの見事な融合と言える。まあ......このレーベルはパンダ・ベアのソロ・シングルを出しているようなところもあるし、そもそも現在のインディ・シーンにおいても広範囲にわたって影響力のあるレーベルのひとつなので、いまさら特筆すべきことではないけれど、しかしこうした"音"を聴くと、いかに現在のシーンが互いに接続し合って、いわばリゾーム状に広がっている感じがよくわかる。チルウェイヴないしはシンセ・ポップ、ポスト・ダブステップ、あるいはドリーム・ポップでもヒプナゴジック・ポップでも呼び方は何でもいいのだけれど、インディ・シーンのこの絡み合うような広がりは、機会の均等化の表れとも言える。30万枚売れるアーティストは生まれづらくなったかわりに、30万人の作り手が音楽でなんとか生計を立てられるような、社会主義的な資本主義の実践と言えやしないだろうか。昔ながらのスター崇拝者には気の毒な話だろうが、シーンは独占的で支配的な世界から逃れていくように進展しているのである。

 ウォールズの『コラクル』は、IDM色が強かった前作『ウォールズ』とは打って変わって、ティーンガール・ファンタジーの『7am』のように、今日的な意味においての折衷的かつ社交的な音楽性を有している。ミニマル・テクノとアンビエント、チルウェイヴとクラウトロック、ドリーム・ポップとエレクトロニカといったものの交錯点で鳴っている音楽で、それが〈コンパクト〉レーベルらしくダンスのグルーヴを持ちながら展開される。ふたりのメンバーは昨年、カリブーの「スウィム」でリミックスを手掛けているが、本作もまたテクノにおけるポップの新しい可能性と言えるだろう。
 明るいメロディと直線的なビートによる幻覚症状があの手この手で繰り広げられる。ソウル・ミュージック的なテクスチャーはなく、そしてヴォーカルのレイヤーにもべたつくような叙情はない。人間主義を回避しながら、ひたすら優しく、気持ちの良いところへと向かうのは最近のインディ・シーンの傾向のひとつである。
 オープニング・トラックの"イン・アワ・ミドスト(僕らのまんなかで)"は、まさにカリブーやフォー・テットのようなインディ・ポップとしてのミニマル・テクノだ。曲をリードするヴォイス・サンプル、クラウトロック風に覚醒したドラミングとベース、デトロイティッシュなシンセサイザーのメロディが重なる。"ヒート・ヘイズ"や"ヴェイカント"といった曲では、シガー・ロスを彷彿させるような、いわばイーサリアル系(空気のような電子音)の展開をみせる。ふわふわのアンビエントとモータリック・サウンドによる"エクスタティック・トゥルース(忘我的真実)"~さざ波のようなアンビエント"ドランクン・ガリオン(酔っぱらった船)"へと続く終盤は楽しい音のサーフィンのシメとしては申し分ないでしょう。
 アナログ盤にはおまけにCDも付いている。

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