「Nothing」と一致するもの

Howler - ele-king

 ミネアポリス出身のバンド、ハウラーの『アメリカ・ギヴ・アップ』(アメリカは終わる/降参する)という実に興味深いタイトルのデビュー・アルバムは、とりあえずは、ロックンロールが年寄りの感傷ではないことを証明している。19歳の青年、ジョーダン・ゲイトスミスは、ラモーンズめいたメロディに載せて、言いたいこと言って、歌いたいことを歌っている。アルバムは最初から最後までほとんどダッシュ、ダッシュ。およそ40分弱、スピードを上げて走り抜ける。

 マルコム・マクラレンはセックス・ピストルズについて「音楽が面白いのではなく、姿勢が面白いのだ」と言ったものだが、ロックンロールという1950年代のスタイルはジョニー・ロットンがそれに"醒める"ことで蘇らせ、蘇生したそれはいまのところ情熱と信心深さによって生き延びている。ザ・クラッシュをはじめ、日本のブルー・ハーツ、ストーン・ローゼズからザ・ストロークスないしはアークティック・モンキーズまでみんながみんな情熱と信心深さを忘れない。「スタイル」もさることながら「姿勢」が面白いバンドもいくつもあった。ジーザス&メリー・チェイン、ザ・スミス、ザ・タイマーズ、それからまあストーン・ローゼズのデビュー・アルバムにも特筆すべき「姿勢」があった。「姿勢」とはセックス・ピストルズが言ったように「物事は見かけとは違う」ことを暴くこと、なかなか言えない少数派の意見をビビらないで言ってしまうこと。

もう試そうとも思わない
俺はビビッているし、俺はシャイ過ぎる "Beach Sluts"

 『アメリカ・ギヴ・アップ』のオープニング・トラックは、そうした「姿勢」の歴史、その重みに対するアイロニーのようだ。その慎重な入り方は、ロックンロールを取り戻すためのひとつのうまい手口かもしれない。またしても『NME』が過剰に持ち上げ、欧米では賛否両論を起こしているものの、他人の目を気にせずにやりたいことをやるのがロックンロールだ。いいんじゃないのか。僕は心情的には肯定できる。XTCを彷彿させる"Back To The Grave"やラモーンズ調の"This One's Different"や"Wailing"など、曲作りには巧さがあり、ジョーダン・ゲイトスミスの声はジョーイ・ラモーンとエルヴィス・プレスリー(たまにルー・リード)を彷彿させるような、いわば魅力的な低めの「ロックンロール声」を有している。
 「今夜俺を連れて行って......墓場に」と歌う"Back to the Grave"は、ロックのクリシェの冗談めいた書き換えだが、彼らの反抗心と楽しんでいる感覚が伝わる。「腐敗したカネと親父のかすかな不安/いますぐに逃げ出せ」――ロカビリー調の"アメリカ"も面白い。母国への失望を皮肉めいた言葉で、そしてプレスリーのような歌い方で歌っている。「まっとうなアメリカ人になりたい/だけどダーリン、もう終わっちゃったんだよ」――パロディじみた曲のなかには否定の意志が見え隠れする。

 否定における誠実さとは、いずれは政治的になることから逃れられない。セックス・ピストルズやザ・スミスは言うにおよばず、ザ・タイマーズ、ザ・ストロークスにも"ニューヨーク・シティ・コップ"がある。『アメリカ・ギヴ・アップ』は、そのタイトルに反して必ずしも政治的なアルバムとは言えない。社会よりも女の子への関心に占められている(当たり前の話、それは悪いことではない)。それでもこのやけっぱちな感じは、アメリカの凋落とは決して無縁ではないだろう。
 ラモーンズのようなポップ・センス(とくにコーラスは見事)、8ビートの疾走感と時折見せるロマンティックな高揚感。そして、最初から最後までダッシュの連続――そんなスピード狂のなかにあって"Too Much Blood"の気だるいメランコリーが耳に残る。
 「窓も床板もない部屋に暮らしている/いきなり真っ暗になるベッドで寝ている/外で風が空襲警報みたいに悲鳴をあげているあいだ/街で君に会うためにやって来た」――ジョーダンは、意味のない戦争で傷つき、不況を生きる思春期の代弁者のように見える。「誰を信じたらいいのかわかったらいいのにな/(略)俺は新しい街を見つける、新しい都市を見つける/それでも外で風が空襲警報みたいに悲鳴をあげている」

 そういえばブルース・スプリングスティーンの新作が話題になっているけれど、まあとにかくこれ以上世界中の人たちに迷惑をかけず、アメリカ(ないしはアメリカン・ドリーム)には終わって欲しい。〈ラフ・トレード〉のジェフ・トラヴィスほどの人物がこのバンドのどこに惚れたのか、本当のところを知りたい。

倉地久美夫 - ele-king

 倉地久美夫は福岡出身のシンガー・ソングライターで、ホロウボディのエレキギター(もしくはアコースティック・ギターを改造してエレキにしたもの、なのかも)を弾きながら歌う男性だが、その音は、おそらくこの説明からあなたが思い浮かべるどんな音楽とも似ていない。「倉地久美夫トリオ」のメンバーとして彼と長年共演している菊地成孔は彼をキャプテン・ビーフハートに喩えたことがあるけれど、それも音楽スタイルが似ているということではなく、その唯一無二な個性の強さを指していたのだと思う。

 2010年に制作された倉地のドキュメンタリー映画『庭にお願い』において、菊地は「天才だからしょうがない」と言い、高円寺の特殊レコード店・円盤(本作のリリース元)の田口店長は「誰から見てもヘンってことは、みんなにわかるってことじゃないですか。それはやっぱり大衆性だと思いますよ」と言っている。実際、倉地の音楽はすごくヘンだが、けっしてとっつきにくいものではない。凡庸な表現だが、「どこにもない国の民族音楽」みたいに聴くことのできる、不思議に美しい音楽だ。

 かつて「詩のボクシング」で優勝を勝ち取ったその詩世界と、朗々と発されているのにけっして明るくはない(だからといって暗いというわけもない)歌声に注意がつい向きがちだが、ギターもそれに劣らぬ個性とテクニックを持っている。ライヴではひとり異なる重力空間にいるかのようにゆらゆらと揺れながら、改造したカポを複数ネックに設置することで生まれる独特の音階を駆使して美しい音色を奏でるのを目撃できるだろう。

 本作はそんな彼の初めてのギター・インスト集である。1曲目の"太陽光パネル"おそらくは親指で低音弦を弾いてリズムをキープしつつ、ほかの指で高音弦を弾きメロディを奏でるというスタイルで演奏されており、繊細なメロディの反復によるサイケデリアは人によってはマーク・マッガイアあたりを思いおこさせるかもしれない。続くタイトル曲"逆さまの新幹線"と"中央公園"も同様に低音弦でリズムをキープしながらゆるやかに寄せては引き、時に小さな爆発のように密やかに弦をかき鳴らす。いずれも指のタッチが聞き手に伝わってくる生々しい録音だが、ライヴでの演奏でしばしば聴かれるちょっとゴツっとした低音の響きはあまりなく、終始"か細い"とすらいっていい。

 B面に入ると"アクセスポイントと風景"という(それにしてもなんというタイトルだ)プリペアド・ギターっぽい曲からはじまり、それに続くのは唯一の歌入りのトラックである"蘇州夜曲"のカヴァーだ。ギターはこのアルバムの中で最も激しく、時には叩きつけるようにピッキングしている。そういえば先日ライヴを観に行った際には一曲目にいきなり小田和正の"ラブストーリーは突然に"をカヴァーしていたのだが、それが完全に倉地の、あの空間をぐにゃりと曲げてしまうような音楽に聞こえるものだから驚いたものだ。
 最後は"夜霧の嬉野"という曲で、嬉野というのは佐賀県にある温泉町らしい。他の曲もそうなのだが、倉地は九州出身・在住であるにもかかわらず、なぜか私にはむしろ東北的に聞こえる。ひょっとしたらそれは私の祖先が北の出身だからなのだろうか。どこでもない土地への郷愁を誘う音楽は、聞き手に自身のルーツを思い起こさせるのかもしれない。

 そうそう、いまさらっと「B面」と書いたけれど、本作はアナログ10インチのみのリリースである。CD版は作られていないし、ダウンロードコードもない。これはもちろんレーベル側の「意志」によるものだ。個人的には変則サイズのヴァイナル(7インチと12インチ以外のサイズ。10インチとか8インチとか)というのは偏愛の対象だったりするので嬉しい。盤自体は厚みのあるしっかりした作りである。やっぱ同じアナログでもペラペラなやつとブ厚いやつとではモノとしてのありがたみが違ってくるというものじゃないですか。これが昂じると、よりよい盤を求めて各国版を集めたりするようになるのかもしれない。ボール紙のジャケットには倉地自身によるどこかの駅前風景を描いた絵が貼られている。このパッケージングもまた、簡素ながら本作に更なる「ものとしての魅力」を添えていると思う。

 とまあ長々と書いてきたけれども、さすがにこれは倉地久美夫の音楽に初めて触れようというリスナーに無条件にオススメできるものではない。CDなら先述の『庭にお願い』のサントラや、目下の最新作『スーパーちとせ』などがいいだろう。映画のほうはまだソフト化されてはいないが、最近でも時折上映される機会はあるようだ。ミニライヴがつくような企画も多い。彼のことがある意味ではよくわかるし、ある意味ではより謎が深まっていく、そんな映画だ。
 この際だから、昨年リリースだけど『庭にお願い』サントラのことも簡単に紹介しておこう。内容的には2006年に3日間にわたって行われたライヴから選ばれたテイクが収録されており、サントラといいつつライヴアルバムと言っていい。菊地成孔・外山明とのトリオや山口優をゲストに迎えた演奏を収録。コンセプト・メーカー的な役割を担わない純然たるプレイヤーとしての菊地の演奏が聴ける意外と珍しい機会でもある。すばらしいんですよ、これが。
 これもまた発売元は円盤だが、蛇腹式にたたまれた厚紙を開いていくと倉地自身によるものを含むさまざまなイラストが現れ、最後にゴムの留め具で留められたCD本体が現れるという凝った作りになっている。CDには「ものとしての魅力がない」とはよく言われることだけれど、実際は作り手の工夫でどうにでもなるものだったりするのである(昨年発売されたテニスコーツの作品も愛すべき作りでしたよね!)。

 ウォール・ストーリートの公園を占拠し、暴走する金融システムにアンチを唱えたオキュパイ・ムーヴメントは「我々は99パーセントだ」というスローガンのもと世界中に広がった。ムーヴメントは若者中心なので「親と同じ裕福な生活ができない世代」の氾濫と分析する向きもある。たしかにそうかもしれない。親と同じモデルで生活しようとすると、おもに経済的理由から挫折、やがて何故か後ろめたくなりブルーになる。一方、職場では理不尽な雑務に追われ、理不尽な残業を強いられる。疲労感が抜けきらない。暗闇のなかを生きているような閉塞感。でもいまだ、この国で若者の怒りは大きな叫びになっていない。
 黒人の文化/運動を研究する学者ロビン・D・G・ケリーは、アフロ・アメリカンが苦役のなかで夢に描き表現してきたことを論じた好著『フリーダム・ドリームス』で「夜は好機である」というセロニアス・モンクの言葉を引く。そして「つまり、それは欲望をさらけ出しそして充足させる時間であり、夢を見る時間であり、未知なるものの世界、幻覚である」と説く。暗闇のなかを生きる僕たちにとってこの希代のピアニストの発言は重要だ。むろん人種差別が横行した頃のハーレムと、いまの日本を比べるべきではない。けれど共感はできる。僕たちにとっても夜は好機であり、そこに賭けるしかない。しかも夜にジャズはよく似合う。ニューヨークでも、東京でも、またパリであっても同じことだ。ジャズが見せてくれる夢は、昼間の気怠さを追いやり、束の間の解放感を与えてくれる。

 前置きが長くなってしまった。本書『だけど、誰がディジーのトランペットをひん曲げたんだ?』は音楽評論家、鈴木孝弥の新訳本だ。原書は24時間ジャズのみをプレイするパリのラジオ局テーエスエフ・ジャズの開局10周年を記念して刊行された。副題には「ジャズ・エピソード傑作選」とあるが少しページをめくっただけで、ともすれば愛好家の内輪ネタに回収されがちなこの手の挿話集とはちょっと違う趣きに気付く。どちらかといえば狂った夜の匂いがするのだ。
 本書を絶賛した菊地成孔がTBSラジオ〈粋な夜電波〉で朗読した一節を紹介しよう。
 登場人物はディジー・ギレスピー。時は公民権運動が高揚した1963年。運動の支持者だった彼はなんと合衆国の大統領選挙に名乗りでる。掲げる公約が秀逸だった。ヴェトナム戦争からの撤退と人種差別政策の撤廃。ここまでは判る。でもアフロ=アメリカンを宇宙に派遣すること、ホワイトハウスの名称を〈ブルーズ・ハウス〉に変更すること......なんてことが宣言されていて胸をくすぐる。まあ、もちろんユーモアなわけでデューク・エリントンを国務長官に、ルイ・アームストロングを農務長官に任命する、であったり、選挙のキャンペーン・ソングがヒット曲"Salt Peanuts"にのせて「政治はイカしてないとダメ/だから、スウィングする素晴らしい大統領を選ぼうよ/ディジーに投票を! ディジーに一票を!」だったりいちいち洒落ている。こんな逸話を知るとそのセンスに共鳴し、ジャズ史上の"ビー・バップの王様"という称号だけじゃないトランペット奏者の可笑しみに満ちた姿がイメージできる。
 本書のジャズへのアプローチはこの一節からも判るように、熱狂的だったり過剰だったりする側面を切りとる。本書の一挿話、ビリー・ホリデイの代表曲"Strange Fruit"が、黒人へのリンチ(殺害し木に吊るす)への苦渋に溢れた哀歌だった、というエピソードが伝える漆黒の時代から、公民権運動が活発化する60年代までがメインに描かれる。ルイ・アームストロング、チャーリー・パーカー、チャールズ・ミンガス、エラ・フィッツジェラルド、そしてマイルズ・デイヴィスといった錚錚たる巨人たちが的を射抜くエピソードで描かれる。楽曲では知ることのできないキャラクターに迫る、全59遍のドラマ。
 ハーレムのクラブ〈ミントンズ〉に関してはもはや説明不要かもしれない。ビー・バップが産声をあげた聖地としてジャズファンにとって知られた場所だ。かの地の伝説を物語る一節はこんな風にはじまる。

「ジャズの古典はニュー・オーリンズの空の下、"赤線"ゾーンの路上で生まれ、ホット・ジャズはシカゴの高級ホテルで、スウィングはニュー・ヨークのダンスホールで生まれた。そして、ある革新的な少人数の集団がモダン・ジャズを産み出したのは、紫煙の充満したハーレムのクラブの中である」

 革新的な小集団―すなわちセロニアス・モンクやディジー・ギレスピー、そしてチャーリー・パーカーらビー・バップの先駆者たち。彼らに共通していたのは「踊らせること以外に何の"野望"も持たない白人のジャズを演ることに疲れていたことと、高度な演奏技術、ハーモニーやリズムを、より高次のものに磨き上げたいと考えていること」だった。〈ミントン大学〉ではマイルズ・デイヴィスやアート・ブレイキー、マックス・ローチらが基礎的な経験を積んだ。やがてモダン・ジャズの宇宙を形成し、世界中にその音と自在な実験精神が散らばっていく。
 パリにビー・バップが到来したときの様子はこう描かれている。

「その初演目である2月20日の夜、この、譜面なしで演奏しては、大胆なハーモニーと途方もないリズム感でソロのパートに突進していく"異常"なミュージシャンたちの演奏を耳にするために、誰もが会場に押し寄せた。〈略〉アフロ=キューバン・リズムが混じり合ったビー・バップの革命が、目の前で進行していた」

 この日を境にジャズはフランス文化の一部をなすようになったという。モンクの言葉を思いおこそう「夜は好機である」...夜は、夢見る時間であり、ゆえに常識を逸し、狂気へといたる時間だ。ロビン・D・G・ケリーはモンクの楽曲を「西洋的な思想の多くを破壊するような音楽を作り、作曲、ハーモニー、リズムの伝統的規則をひっくり返した」と論じている。パリの人びとはおそらく伝統的な西洋音楽に飽き飽きしていた。そしてビー・バップに熱狂し、ジャズを受容した。フランスではインプロヴィゼイションのことを「牛ろうぜ!」というらしい。コクトーが書いた笑劇バレエにその根拠があるという。本書ではこんなフレンチ・ジャズのエピソードもいくつか収められている。

 ジャズは黒人がその辛い現実のなかで描く夢だったのだろう。ジャズが見た夢はニュー・ヨークから飛び火し、東京やパリ、そして世界中に恩寵のごとく降注いだ。日本語に訳されたパリのジャズ本である本書の存在が、このことを如実に物語っている。そして、クラシックやロックにも影響を与えている。マイルズ・デイヴィスとジミ・ヘンドリックスの果たされなかったレコーディングのことや、アート・テイタムに陶酔したクラシックのピアニスト、ホロヴィッツが数ヶ月かけ有名な"Tea for Two"を採譜しテイタムに聴かせた、というようなエピソードも本書のなかで収められている。そのパッションと自由の気配はひときわ感染力が強かった。
 「親と同じ裕福な生活ができない世代」。僕たちはそんな諦念をただ生きるしかないのだろうか。でも、もちろん音楽がある。ジャズの歴史を紐解くとそんな当たり前のことに気付く。そこには個性的過ぎるプレーヤーがいて、幾多の物語がある。本書を読めば、暗がりを笑い飛ばし跳躍する勇気を、ちょっとだけ貰えたような気になる。

Ogre You Asshole | Dry & Heavy - ele-king

 最初に出てきたのはオウガ・ユー・アスホール。およそ20分にもおよぶ"rope"のロング・ヴァージョンからはじまる。まったく素晴らしい演奏。反復の美学、どんどん進んでいく感覚、クラウス・ディンガーのモータリック・サウンドをアップデートしたドライヴ感、出戸学のギターはリズムを刻み、馬渕啓はじっくりと時間をかけながら熱量を上げていく。やがて出戸学もアクセルを踏む。もうこのままでいい。このままずっと演奏し続けて欲しい。魅惑的な疾走感。もう誰にも邪魔されないだろう。ところどころピンク・フロイドの"星空のドライヴ"のようだが、支離滅裂さを逆手にとって解放に向かう『homely』の突き抜けたポップが広がっている。
 なかば冷笑的な佇まいは、心理的な拠り所を曖昧にして、オーディエンスを放り出したまま、黙々と演奏を続けている。それでもエモーショナルなヴォーカルとバンドの力強いビートが心を揺さぶる。そして、右も左も恐怖をもって人の気を引こうとしているこの時代、"作り物"の胸の高まりは前向きな注意力を喚起しているようだ。それにしても......こんなに気持ちよくていいのかと、そばでガン踊りしている下北ジェットセットの森本君の肩を叩く。が、彼はもうすでに手のつけられないほどトランスしている。
 オウガ・ユー・アスホールは、昨年の秋、赤坂ブリッツでのワンマンを見て以来だった。あのときも書こうと思っていたのだが、諸事情が重なり書けなかった。ようやく書ける。間違いない。90年代なかばのボアダムス、90年代後半のフィッシュマンズ、00年代のゆらゆら帝国、この3つのバンドの領域にオウガ・ユー・アスホールは確実に接近している。要するに、誰がどう考えても、彼らこそいまこの国でもっともスリリングなライヴ演奏をしうるロック・バンドなのだ。
 ちょうどライヴの翌日、彼らの新しい12インチ・シングル「dope」がリリースされている。"rope"のロング・ヴァージョンもそこで聴ける。同シングルのA-1は"フェンスのある家"の新ヴァージョンで、いわばキャプテン・ビーフハート的賑やかさ。語りは英語のナレーションに差し替えられ、管楽器によるジャズのフリーな演奏で飾り立てている。コーネリアス風のコーラスが不自然な入りかたをして、曲を異様なテンションへと導いている。

 オウガ・ユー・アスホールが終わると、ステージの中央にはいかにも重たそうなベース・アンプが置かれ、やがてドライ&ヘビーが登場する。向かって左にはドラマーの七尾茂大がかまえ、そして秋本武士をはさんで反対側にはキーボードとして紅一点、JA ANNAがいる。彼女は4年前、ザ・スリッツのメンバーとしてライヴをこなしつつ、バンドの最後の作品となったアルバム『トラップド・アニマル』でも演奏している。なんとも運命的な組み合わせというか、ドライ&ヘビーの鍵盤担当としてはうってつけだと言える。
 再活動したドライ&ヘビーは主に1970年代のジャマイカで生まれた曲をカヴァーしている。この日の1曲目はジャッキー・ミットゥーの"ドラム・ソング"だが、その音は『ブラックボード・ジャングル』のように響いている。最小の音数、最小のエフェクト、そして最大のうねり。ダブミキシングを担当するのはNUMB。そう、あのNUMBである(そして会場にはサイドラムもいた)。
 演奏はさらにまた黙々と、そしてストイックに展開される。ブラック・ウフルの"シャイン・アイ・ギャル"~ホレス・アンディの"ドゥ・ユー・ラヴ・ミー"......。ドライ&ヘビーの魅力は、ジャマイカの音楽に刷り込まれた生命力、ハードネス/タフネスを自分たち日本人でもモノできるんだという信念にある。その強い気持ちが、ときに攻撃的なフィルインと地面をはいずるベースラインが織りなす力強いグルーヴを創出する。気安く近づいたら火傷しそうだが、しかしだからといってオーディエンスを遠ざける類のものでもない。ドライ&ヘビーは、アウトサイダー・ミュージックというコンセプトがいまでも有効であること、"フェイド・アウェイ"や"トレンチタウン・ロック"といった名曲がいまでも充分に新しいということを身をもって証明しているのだ。
 僕は彼らと同じ時代に生きていることを嬉しく思う。

 追記:まとめてしまえば、オウガ・ユー・アスホール=クラウトロック、ドライ&ヘビー=ダブというわけで、『メタルボックス』時代のPILのようなブッキングだった。

Various Artists - ele-king

 シャンガーンという音楽を初めて聴いたのはちょうど30年前。マルカム・マクラーレンのデビュー・アルバム『ダック・ロック』からそれは聴こえてきた。「ブロンクスもソウェトーも同じストリートだ」というのが南アの音楽を取り上げた理由だそうで、それはフライング・リザーズやトーキング・ヘッズといったニューウェイヴ・バンドがワールド・ミュージックに手を染めた時期ともほぼ重なっていた。その頃はそれがシャンガーンと呼ばれる音楽だとは知らなかった。

 シャンガーンに再び巡り合ったのは元ベイシック・チャンネルのマーク・エルネストゥスが南アに渡り、『シャンガーン・エレクトロ』と題したコンピレイション・アルバムを企画したからで、ベースが入っていないのにエレクトロを名乗る同編集盤はとにかくBPMが早く、のんびりとした曲調で扱われていたマクラーレンのそれとはまったく趣が変わっていた(なので、同じ音楽だとは気がつかなかった)。

 〈ファインダー・キーパーズ〉がタイやインド、〈サブライム・フルクエンシーズ〉が途上国全域の音楽を掘り起こし、最近では〈アタ・タック〉がアフガニスタン沖縄の音楽に目をつけるなど、先進国以外の音楽がどこもかしこも掘りまくられているなか、長らくダブにかかわってきたエルネストゥスもコンゴの変り種であるコノノNo.1との共作がきっかけなのか(リミックスを手掛けただけなのか)、唐突にアフリカに向かい、モードセレクターやロボット・コッチがケニアとの交流を深めているのと同じく、いつの間にかシャンガーンを広める立場になっているように見える。同編集盤は、昨年、イギリスではかなりの評判を呼び、その結果なのか、こうしてリミックス盤までつくられることに(コノノNo.1やスタッフ・ベンダ・ビリリをヨーロッパに紹介したのも、80年代からワールド・ミュージックにアンテナを張っていた〈クラムド・ディスク〉のマーク・ホランダーだった)。

 この企画はとにかくリミキサーの人選が素晴らしい。シャンガーンがまったく原型を留めていないのは残念だとも思えるけれど、現在のダンス・カルチャーから新人もビッグ・ネームも問わずにフロントラインばかりが集められたことで、そのままフロア・ミュージックの最新カタログといえるようなものになっているし、ダブステップやチルウェイブはもちろん、ジュークやドローンからもエントリーがあり、クリック・ハウスやデトロイト・テクノといったスタンダードとも見事に調和させた堂々の仕上がりである。全16曲(2CD)。

 オープニングとクロージングはマーク・エルネストゥス。ソロではイェリ-イェリ・ウイズ・ンビアネ・ディアタ・セーとモロにアフリカン・ミュージックの制作もはじめているエルネストゥスがここではBBCのオリジナルをあっさりとダブ・テクノに変換しているだけ。ふわふわと宙を漂う感じが彼なりにアフリカン・イメージを反映させたものなのだろう。シングル・カットもされている

 同じくドイツからザ・ナイフのメンバーとして知られるオロフ・ドライヤーの変名、オニ・アイフンはエレクトロクラッシュがどこかでコジれたような避暑地の落語モード(なんとなくなく伝わらない笑いのこと)。スミスン・ハックからMMMもかなりオーソドックスな仕上がりで、テシュハ・ボーイズから疾走感だけを抜き出した印象か。この辺りからスリーヴとインナーでクレジットが異なっているために、どっちが正しいのか心許ないものの、スリーヴの表記に従えば、ペヴァーリストも同じくテシュハ・ボーイズをダブステップとエレクトロの折衷作として展開し、DJラシャド&スピンもまた(いじりやすいのか)テシュハ・ボーイズをアグレッシヴなジュークにリ-モデルさせている。これはマクラーレンのいう「ブロンクスもソウェトーも同じストリート」というやつだろう。ジュークとシャンガーンはBPMも踊り方も似ているし、妙な符号であることはたしか。混沌としたアクトレス、ダブ色の強いオールド・アッパレイタスとダブステップが続き、前半の締めはセオ・パリッシュがマンサンゲラーニを丁寧に料理。このリミックスがもっともシャンガーンの原型を留めたものになっている(阿波踊りみたいではあるけれど)。

 後半はもっと実験的で、デムダイク・ステアは(ナース・ウイズ・ワウンドがマンボのペレス・プラードに捧げたような )ドロドロとしたアブストラクト調、デトロイト・ヴェテランのアンソニー・シェイカーはエルネストゥスと同じくBBCをダンサブルなミッド・ファンクに、ジャズ寄りのバーント・フリートマンまで借り出されてザンヤ・フルンガニをごちゃごちゃとしたアフロ・ファンクにしたかと思えば、ジュークの開祖だとされるRP・ブーはスタンダードなジューク、2回目の登場となるアクトレスはシンセ-ポップ風ダブステップとでも言えばいいのだろうか、これもある意味でシャンガーンの本質を上手く抜き出したようなリミックスを完成させている。さらにハイプ・ウイリアムスはレイジーなシンセ-ポップ、リカルド・ヴィラロボス&マックス・ローダバウアーはお望み通りのクリック・ファンクと続く(ラマダンマンのミックスCDにも使われていたティアイセラーニ・ヴォーマシはその後のシングル展開もよかったのに、誰も取り上げていないのはちと残念)。

 アメリカではすでにディプロやM.I.A.はまったく人気がないそうで、先進国と途上国をダンスフロアで結びつけるという試みもオーヴァーグラウンドでは有効性を失いつつあるのかもしれない。OWSが主張する通り、戦争と金融危機を世界中に輸出して、返す刀で自分たちも傷ついてしまったアメリカ人は『ツリー・オブ・ライフ』や『マージン・コール』といった映画でも観ながらしんみりとするだけで、またしても内向きを決め込んでいるわけだから、それも仕方がないといえるだろう。ヨーロッパとアフリカがその間に音楽で絆を強めようという展開は、90年代にDJカルチャーがアメリカ抜きで進んでいた姿を再現しているようにも思えなくはない。これは終わりなんだろうか、はじまりなんだろうか。

Interview with Orbital - ele-king


Orbital
Wonky

ビート

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 いまでこそ日本でも「セカンド・サマー・オブ・ラヴ」というタームは普通に使われているけれど、このムーヴメントを最初に紹介したのは何を隠そう、三田格だった。『remix』というクラブ雑誌があったが、同誌はアートの延長線上においてハウスを解釈した。社会的なムーヴメントとしてのレイヴ・カルチャー、すなわち「セカンド・サマー・オブ・ラヴ」には触れなかった。
 『NME』というロック新聞はアシッド・ハウス・ムーヴメントを社会的な抵抗の文脈で紹介した。『i-D』というファッション誌はライフスタイル文化の延長で捉えた。よって1988年、前者はスマイリーを引きちぎる警官の写真を、後者は純粋にスマイリーそのものを表紙にした。とにかくまあ、大きなことが「セカンド・サマー・オブ・ラヴ」という括りのなかで起きているというのに、それが日本で紹介されていないのもおかしな話だということで、1992年、『クラブ・ミュージックの文化誌』における三田格の原稿が日本では最初にがっつりと、「セカンド・サマー・オブ・ラヴ」を紹介したものとなった。羽目を外して人生を台無しにした人が誰に苦情を言えばいいのか、もうおわかりだろう。
 
 オービタルのふたり――ポール&フィル・ハートノル兄弟は、「セカンド・サマー・オブ・ラヴ」からやって来た。プロジェクトの名前は、レイヴが開かれていた場所から取られている。
 彼らの初期のヒット曲、"チャイム"や"ハルシオン"、"ラッシュ3"を特徴づけるのは美しい音色のシンセサイザーと催眠的でトランシーな曲調、ダンサーを彼方へと飛ばすドラッギーな展開にある。そして......こうした恐るべき現実逃避の文化を背景に持ちながら、他方でオービタルは1990年の初めての「トップ・オブ・ポップス」の出演の際、反人頭税のTシャツを着て登場している。人頭税とはマーガレット・サッチャー第三期政権のときに出された法案で、人の数だけ税を取るという、低所得で子だくさんの家庭には洒落にならないものだったが、この反対デモが90年代ロンドンの最初の暴動へと発展している(この暴動に参加した自分の写真をジャケットに使ったのがジュリアン・コープである)。
 
 新作『ウォンキー』はオービタルにとって8年ぶりの、そして8枚目のオリジナル・アルバムとなる。ダブステップ時代においてオービタルがアルバムを作るとどうなるのか、それが『ウォンキー』だ。手短に言えば"2012年にアップデートされたオービタル"、ゾラ・ジーザスも参加しているし、ベース・ミュージックからの影響も前向きに取り入れている。その屈託のなさ、トランシーなフィーリングは変わっていないと言えば変わっていない。モードが一周してしまったこの時代の、ストーン・ローゼズやハッピー・マンデーズらに続く、「セカンド・サマー・オブ・ラヴ」世代の帰還と言えよう。
 取材はポール・ハートノルが答えてくれた。

みんなが自分たちに何を期待してるかわからなかった。いざステージに立ってみると、18歳から20代前半のオーディエンスが多くてビックリした。「待てよ、君たちって、俺たちが活動をスタートしたときはまだ赤ん坊だったよな?」って感じだった(笑)。

実に久しぶりのアルバムですね。

ポール:だね。活動を休止したあと、俺たちはそれぞれ違うことをしようと決めたんだ。俺は旅に出ることにしてイギリスを出たんだけど、母親が癌になってしまって、医者から余命9ヶ月って言われたから、急遽戻らないといけなくなった......それで曲のライティングをはじめた。
 俺はずっとオーケストラをやってみたかったから、自分にそれができるかどうか試してみたくて。それから2、3年はソロ・アルバムを書いて、レコーディングをしていた。『ジ・アイディール・コンディション』(2007年)をね。ソロ・オーケストラや聖歌隊と一緒に仕事した。最高だったよ。オーケストラを9人に濃縮して作品を作ったんだけど、それがすごく面白かったから、続けようってことになった。本当に楽しい作業なんだよ。
 あとは、『トーメンティッド』っていうホラー・アルバムのスコアも書いたりもしてたな。音楽は全部エレクトロニック。それもすごく楽しかった。フィルはロング・レンジのアルバムを作ったり、DJしてたね。お互い、いろんなことを試してた。休止したとしても、俺たちが音楽をやめることはないんだよ。

その間、ライヴは積極的にやっていたのですか?

ポール:ギグは......何年かストップしてたんだよな......最後のギグはいつだったかな? たぶん2010年だったはず。そのあとは他のことをやってたから。それまではいくつかギグをやってたよ。プラハでもやったし、〈ビッグ・チル〉(UKでもっとも評価の高いテクノ系のフェスティヴァル)でもやった。
 クリスマス休暇が終わって、去年の1月に小さなスタジオを借りてレコーディングをはじめた。お気に入りのシンセと機材を使ってレコーディングしたんだ。新しい部屋に新しい場所、新しいアイディア......新鮮ですごく良かった。自分たちがライヴ・セットで聴きたいもの、プレイしたいものを考えながら作った。いままでのライヴに何が欠けてたとかね。自然とそのアイディアで構想がどんどんできていった。

いまではセカンド・サマー・オブ・ラヴ以降に生まれたキッズもオービタルのライヴに踊りに来るわけですよね。

ポール:そうそう、来るんだよね。素晴らしいことだよ。本当にラッキーだと思う。そのポジションにまだいれるなんてさ(笑)。〈ビッグ・チル〉の前にプラハのにフェスに出演したんだけど、オーディエンスが自分たちに何を期待してるかわからなかった。普段のオービタルのショーでいいのかな? と思っていたけど、いざステージに立ってみると、18歳から20代前半のオーディエンスが多くてビックリした。他のフェスでもそんな若い彼らが俺たちのショーを気に入ってくれてて......、で、「待てよ、君たちって、俺たちが活動をスタートしたときはまだ赤ん坊だったよな?」って感じだった(笑)。
 いまだにそういうポジションにいて、彼らをエンターテインできるなんて最高だよね。変な感じもするけど。いまは年齢や年代が関係なくなってるんだろうね。前みたいに世代が関係しなくなってる。デジタルのおかげかもしれないね。iTunesとかiPodとか、ああいうのがあれば、例えばロックンロールの歴史をすべて持ち歩けるわけだろ? 自分が好きなものを、どこでも簡単にきける時代だからね。

8年ぶりの新作となるわけですが、新作を作ろうと思い立ったきっかけは、そうしたライヴからの刺激ですか?

ポール:ツアーをやりはじめて1年経って、で、2年目に突入したとき、こんなにライヴが続くなんて考えもしてなかったんだ。2、3回やって終わりだと思ってたのに、オーストラリアでまでライヴをやって、で、勢いが止まることがなかった。それで、自分たちが活動をエンジョイしてることに気づいたんだ。そのフィーリングを壊したくなくて、続けなくてはと思った。ただ続けるだけじゃなくて、ちゃんとしたものにしたかったから、ライヴに何か新しいものを入れたくなって、それで2、3トラック作ることにしたんだ。
 2010年にそれをスタートしたんだけど、トラックを作ってるうちにアルバムを作ろうってことになった。2011年の1月から本格的にスタートさせた。ライヴを続けたいって気持ちがアルバム制作につながったんだね。曲を書くのも好きだけど、ライヴも楽しいパートのひとつだからね。

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現代のダンス・シーンとからは確実に影響を受けてるよ。アルバムからは、少しだけどダブステップの要素が感じられると思う。『スニヴィライゼイション』にはジャングルの要素があったけど、あれがジャングルのアルバムじゃなかったのと同じように、今回もダブステップ・アルバムってわけじゃないけどね。


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ここ数年はダブステップの盛り上がりもあって、UKではずいぶんとダンス・カルチャーが熱気を帯びているようですが、そうした状況も後押ししていますか?

ポール:もちろんだよ。現代のダンス・シーンとか、それに関係したものからは確実に影響を受けてるよ。そう、つねにね。このアルバムからは、少しだけどダブステップの要素が感じられると思う。『スニヴィライゼイション』にはジャングルとかドラムンベースの要素があったけど、あれがジャングルやドラムンベース・アルバムじゃなかったのと同じように、今回のアルバムもダブステップ・アルバムってわけじゃないけどね。でも、要素のひとつだということはわかりやすいんじゃないかな。誰だって、自分がいいなと思うものがあればそれを試したくなるだろ? 音楽に限らず、アイディアはそうやって発展して、変化していくものだと思う。それって素晴らしいことだと思うんだ。

最近の若い子たちが集まるようなレイヴには行ったことがありますか?

ポール:最近は行ってないね。90年代はもちろん行ってたけど。いまは基本的にフェスでそういうのを楽しむかな。DJの仕事のときとか、いろいろチェックして楽しむんだ。そういうときに会場をまわって様子をみるんだよ。

いまのダンスの盛り上がりは、1989年から1991年の盛り上がりとはどこが同じで、どこが違うのでしょうか?

ポール:うーん、何だろう......ひとつ言えるのは、初期のダンス・ムーヴメントは全部アマチュアによるものだったということだね。あの頃は、みんな何もわかってなかった。運営してる人間のなかにプロがいなかったんだよ。いまはプロばかりだと思う。
 でも、ダンスは基本的にいつの時代も変わらないよね。どんな時代でもダンスに行きたいという気持ちはそのまま。人はつねに人と集まりたいし、大きな集団のひとつになりたいんだ。それは変わらない。ただ、80年代のイギリスのダンスはアグレッシヴだった。そこからケンカや殴り合いが勃発することも少なくなかった。ナイトクラブでね。人がビクビクしていた時代もあったかもしれない。いまはそれがフレンドリーになってきたかも。良いことだよ。ダンスのなかではみんなフレンドリーで、ハッピーになれる。ビジネスとしてしっかりしているし、もう、ナイーヴなふりは通用しない。みんなが状況をちゃんと把握してるから。まぁ、アマチュアのダンス・イヴェントを好む人もたくさんいるから何とも言えないけどね。

そもそも、あなたが最初にダンスの洗礼を受けたのはいつで、それはどんな経験でしたか? 

ポール:最初はたぶん、キングス・クロスにある〈ミュートイド・ウェイスト・カンパニー〉に行ったときだったと思う。超、超デッカいウェアハウスなだったよ。おもしろい格好をした奴らがたくさんいたんだよ。『マッドマックス』から出てきたような奴らがゾロゾロ歩いてるんだ。クレイジーだったね。
 最高だったのは、サウンドシステムが6、7つあったこと。ある部屋ではハウスが流れてたり、ある部屋ではヒップホップがガンガンかかってたり。トラベラーとかヒッピーっぽいパンク・ミュージックとかも流れていた。みんなが入り混ざって、一緒にダンスしてたんだ。いろんなジャンルの人が一緒に楽しく時を過ごしてたんだよ。本当に素晴らしかった。値段も安かったしね。とにかく最高な空間だったんだ。

"チャイム"はセカンド・サマー・オブ・ラヴの雰囲気を持った曲ですが、実際にあなたがたも自身がレイヴ好きだったんですよね?

ポール:もちろん。オービタルがはじまってからも行ってたよね。〈ドラム・クラブ〉にも行ってたし、ブライトンにあるクリス・ココがやってた〈ココ・クラブ〉ってクラブにもよく行っていたよ。あと、トンカのパーティにもよく行ってた。彼らのサウンドシステムは素晴らしいんだ。彼らも最高だったな。それにもちろん〈メガドッグ〉も。そこではギグもやってたしね。最高だったな。1990年代は、少なくとも1週間に1回は出かけていた。金曜の夜は〈メガドッグ〉、木曜は〈ドラム・クラブ〉、月曜はトンカ、土曜もクラブにでかけてたし......ははは(笑)! 毎日必ず何かはやてたから。ソーホーに集まって、土曜の夜にベロンベロンに酔っぱらって、二日酔いのときは出かけなかったりね。

いまはどうですか?

ポール:最近はほとんど出かけないよ。子供が3人いるし。出かけるのは自分のギグをやるときやDJするときだけ。ブライトンのライヴを見にいったりはするけどね。

そもそもオービタルは何がきっかけで結成されたのでしょう?

ポール:以前からふたりとも家で音楽を作ってたんだけど、あるときパイレーツ・ラジオ局に関与するようになった。アシッド・ハウスの良い作品をしょっちゅうプレイしてたDJがいたんだけど、彼が俺たちが金曜にプレイした"チャイム"をかなり気に入ってくれた。絶対に出したほうがいいと言ってきて、リリースしたら、2、3週間で2000枚も売れた......その時点ですでに6つのレーベルからオファーがあったから、名前から何からすべてを急いで決めないといけなかった。名前はすぐにオービタルに決まった。街の外に続くロンドン・オービタル・モーターウェイ(ロンドンにある環状高速道路)があって、この環状線の南東地域がデッカいレイヴが起こってた場所だから、そこから名前をとって、オービタルの活動がスタートした。
 俺は常に音楽を作ってたんだ。フィルがそれに参加したりしなかったりで。自分は13歳くらいからギターを弾きはじめて、バンドと一緒にジャムしたりしてた。パンク・バンドとかね。ドラムもギターもキーボードもプレイしてたし、大学のスクール・バンドでもプレイしていたよ。そのあとフィルと一緒にエレクトロにもハマっていった。そこからふたりで音楽を作りはじめたんだ。

当時のダンス・カルチャーの熱気はどんなものだったのでしょうか?

ポール:オービタルがスタートしたのは1989年だけど、その頃は、さっきも言ったように、幸福なアマチュアの時代だったね。とにかくアシッド・ハウスしかなかったな。そのあとデトロイト・テクノがちょっとでてきたって感じだったと思う。

日本でも"チャイム"はもちろんのこと、"オーメン"、"ハルシオン"や"ラッシュ3"など、日本でも僕の友人たちをはじめ、多くのクラバーをトリップさせましたが......。

ポール:そう言ってもらえると嬉しいね。

あなたがたはどんな狙いでこうした曲を作っていたのですか? 

ポール:いや~、狙いとか、そういうのはほとんどなかったね。ただただ、良い音楽を作ろうとしていただけなんだ。自然と出て来るアイディアに正直になるよう意識していたよ。書きはじめたらいつも流れにまかせて曲を書き続けるんだ。ライヴ・セットもそんな感じだし。
 俺たちの曲作りは1枚の絵を書いてるようなものでね。ストーリーを書いてるとかじゃなくて、直観で書くって感じかな。軽く聞こえるかもしれないけど、聴いてる人が踊れて、何らかの形で人びとを動かすことができればそれで良いんだ。プレイして、それで人びとが楽しめれば、それがいちばんだ。音楽作りで、いろいろ考えるのは逆に難しい。「just do it」がいいんだよ。そこから自分が好きだと思うサウンド、しっくりくるサウンドを作っていけばいい。俺は深くは考えない。直観と自然の流れにまかせる主義なんだ。

オービタルを特徴づけるのは綺麗でトランシーな音色ですが、アシッド・ハウスからの影響はどれほどあったのでしょうか? 

ポール:アシッド・ハウスは最初はキライだったんだけよね。知り合いが"アシッド・トラックス"をプレイしてきたんだけど、俺は気に入らなかった。新しすぎたからかもしれないけど、抵抗がなくなるまでに時間がかかったね。いくつか素晴らしいと思うものもあるけど、正直、いまでもアシッド・ハウスのトラックはあまり好きじゃない。お気に入りのジャンルじゃないんだな(笑)。アシッド・ハウスの定義って、わかるやついるのかな? と思うけどね。303のマシン自体は面白いと思うけど。小さいのに、すごくパワフルなサウンドを創り出すからね。ベースラインにはとくにいい。独特なサウンドだよね。パンチの効いた音をつくるし、それは他にはないと思う。でも好きではないんだよね(笑)。だから、アシッド・ハウスの解釈ってわけじゃないんだ。

なるほど。それでは、ドラッグ・カルチャーに関しては?

ポール:いまのドラッグ・カルチャーは......どうなんだろうね。コカインが出回ってるのは知ってるけど、あれは最悪なドラッグだ。みんな自己中になるし、ものすごく短気になる。ドラッグ・カルチャーに関してはいまは何も知らないし、意見もない。本当に何も知らないんだ。1回、どのフェスかは忘れたけど、あるフェスでオーディエンスが明らかにヤバかったのは覚えてるけどね(笑)。みんな、確実にエクスタシーをやっていた(笑)。ウケたよ(笑)。お互いにぶつかりあって、ぼけーっとしてるんだ。「おーい、こっち見てる奴ひとりでもいるか?」って感じ(笑)。DJしながらずっとそれを見てたんだ。あれは最強だったね(笑)。
 そもそも俺はドラッグに関しては語らないことにしてるんだ(笑)。全然やってないといえばつまらなく聞こえるし、昔やってたと言えばそれはそれで良くない(笑)。だから、謎のままにしておきたい(笑)。自分とまわりの友だちだけが知ってることにしたい。ミュージシャンはドラッグがつきものっていう印象はあるけどね。

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直観で書くって感じかな。軽く聞こえるかもしれないけど、聴いてる人が踊れて、何らかの形で人びとを動かすことができればそれで良いんだ。プレイして、それで人びとが楽しめれば、それがいちばんだ。音楽作りで、いろいろ考えるのは逆に難しい。


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DJよりもライヴのほうが重要ですか?

ポール:いや、DJはずっとやってるよ。去年もずっとDJしてたし。アルバムを書いてたから、ライヴができないぶん、DJをやってた。パフォーマンスをストップしたくなかったからね。それにDJは書いてるものを試しに使ってみることができるからいいんだ。書いたものをさっと木曜に録音して、金曜にDJするときに持っていってプレイしてみるっていうのを何回もやってた。それを楽しんでたしね。
 90年代は頻繁にDJをやってたけど、子供が生まれてからしばらくストップしてたんだ。わざと止めたわけじゃないし、封印したわけでもない。俺は、DJもライヴもどちらも好きなんだ。ふたつとも違うことだし、違う人たちと繋がることができる。どちらもいつだって楽しいしね。

あながたはUKトランスのスタイルを作ったと思うのですが、クリミナル・ジャスティス(レイヴ禁止法)への抗議を主題とした1994年の『スニヴィライゼイション』では、音楽的にはトランスから脱却しましたよね。

ポール:たしかに脱却したね。その前のアルバムにくらべてトランスっぽさがなくなったから。俺たちはトランスに影響を受けていただけで、トランスの方向に進もうとしてたわけじゃなかったからね。ただ、自分たちが進むべく方向性に進んで行っただけなんだ。いつも新しいものに挑戦していくのが自分たちだからね。あのアルバムはストーリー性のあるコンセプト・アルバムにしたかったかんだよね。わざと脱却したわけじゃなくて、流れでそうなったんだ。そのときに求めていたものが、たまたま違っただけ。そうしようと考えてたわけじゃなかったんだけど。

ダンス・カルチャーが嫌いになったことはありますか?

ポール:いいや。それは絶対にない。自分の要素を嫌いにはなれないよ。何年もオービタルの要素になってるものだし。ダンス・カルチャーではいつも何かしら面白いことが起こってると思う。つねに大好きってわけでもないけど(笑)。でも、嫌いになることはない。

ダブステップの影響に関する話がありましたが、最新の音をまめにチェックするほうですか? 

ポール:どちらとも言えるね。やっぱり俺はDJでもあるから、いつも新しいサウンドをチェックしないといけないし、ツイッターで新しい音楽のオススメを訊いたりもする。それでいつも違うものを試すようにしてるんだ。でも曲を書くときは......クラフトワークが言ってたんだけど、彼らは音楽を書いてるときは他の音楽は聴かないようにしてるらしい。気が散ってしまうから。俺もそれと似ていて、ライティングのときはあまり音楽は聴かないようにしてるんだ。自分の音楽に集中できるようにね。
 まあ、そうでもなければ、最近ではコンテンポラリー・フォークが好きでよく聴いてる。メランコリーなフォーク・ミュージックをね。ジョアンナ・ニューサムとかさ。そういう音楽は自分がやらないことだし、自分にできないことだから。エレクトロをもっと聴くべきだとは思うけど、仕事でいっつも聴いてるからさ......エレクトロには厳しくなっちゃうんだよね。毎日やってることだから。本当に良いものじゃないとダメなんだ。そのなかでも良いなと最近思ったのはプラッドのニューアルバム。あれはお気に入りだよ。

若い世代の音楽は?

ポール:よく聴くのは、エミリー・ポートマン。大好きなんだ。アルバムでも彼女の曲をサンプルしてる。エレクトロだと、〈ナイト・スラッグス〉は面白いことをやってると思う。そこから作品を出してるエルヴィス(L-Vis)1990はとくに良いね。最近アルバムを出したんだけど、彼も良いよ。彼は"ニュー・フランス"のリミックスをやってくれてるんだ。

たとえばインストラ:メンタルの昨年のアルバムを聴いたら、1990年ぐらいのジョイ・ベルトラムみたいでびっくりしたんですね。なんか、我々の世代にとっての古いものがいまの若い世代には新しいんじゃないかと思ったんですが、そう感じたことはありますか?

ポール:インストラ:メンタルを知らないからあまりわからないけど......そういう意味ではエレクトロは古くなることはないよね。グルグルと廻ってるんだ。エルヴィス1990は初期のシカゴ・ハウス・ミュージックをやってるけど、彼は当時のそれを経験したことはないわけだよね。それって面白いと思うんだ。いま20とか21歳の若者がそういう音楽を作ってるわけだから。しかもその場で構成を学んでるわけじゃないから、昔のシカゴ・ハウスとまったく一緒ではない。もちろん影響は受けているわけだけど、いつも新鮮で、オリジナルとは違うものができるんだ。それが面白いと思うんだよね。自分たちが影響を受けてきたものに、いまの若者が影響を受けて音楽を作ってるっていうのが。違いがあって面白いよな。

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ダンスは基本的にいつの時代も変わらないよね。どんな時代でもダンスに行きたいという気持ちはそのまま。人はつねに人と集まりたいし、大きな集団のひとつになりたいんだ。それは変わらない。


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新しいアルバムのタイトルを『ウォンキー』にした理由を教えてください。

ポール:ウォンキー(普通じゃない、不安定な、歪んだ)ってって言葉が、オービタルの音楽を表してると思ったからこのタイトルになった。アルバムにピッタリの名前だと思った。オービタルの音楽の軸はエレクトロだけど、エレクトロというひとつのジャンルにとらわれたことはないんだ。このジャンルでもあれば、あのジャンルでもあって......って感じ(笑)。つまり、ウォンキーなんだよ(笑)。べつの言葉で言えば、すべての音楽に成りうるってこと。
 俺たちは、ある特定のジャンルをフォローしてことはないんだ。自分に正直に、やりたいことをやって、作りたい音楽を作ってる。このアルバムは、ダブステップでもあればグライムでもあるし、昔のオービタルっぽいサウンドも残ってる。いろんな要素が詰まってるんだ。その状態をうまく表してるのが『ウォンキー』って言葉だった。

1曲目なんかホントにオプティミスティックだし、3曲目の"Never"や"New France"もパワフルで美しい曲ですよね。"Stringy Acid"も前向きなフィーリングを持った曲です。今回のアルバムはポジティヴな感覚が際だっているように思います。

ポール:ライヴ・フィーリングだよね。自分たちがライヴで何を聴きたいかを考えながら作ったんだ。それがポジティヴなフィーリングをもたらしたんだと思うよ。もちろんすでに作られたムーディーでダークな曲をライヴでプレイすることもできるけど、ライヴでプレイすることを初めから意識して作られた音楽はポジティヴになりやすいんじゃないかな。とにかく、ステージのことを考えて作った。とくに前向きでいたいって意識してたわけじゃないけど、ライヴを考えてたらこういう音になった。

新しいアルバムにはゾラ・ジーザスが参加していますが、彼女を起用したのはどんな経緯からなんですか?

ポール:アメリカに住んでる友だちが彼女をススめてきたんだ。だからいちど聴いてみることにした。聴いた瞬間、「最高!」って思った。彼女こそ自分たちが求めてるヴォーカルたった。そしたら彼女がちょうどその時期にロンドン公演を控えていて、こっちに来る予定になってたから、最終週にスタジオに来てもらって一緒にレコーディングした。ギグの合間に2、3日来てくれたかな。タイミングが良かったんだ。レコーディングも本当に順調で、最高だったよ。

オービタルは、ちょうどUKで人頭税の暴動の頃にデビューしてますよね。1990年に「トップ・オブ・ポップス」に初めて出演したときも反人頭税のTシャツを着て演奏しました。で、昨年のUKの暴動に関してはどのような意見を持っていますか?

ポール:クレイジーな出来事だったよね。俺は暴動を起こした連中と同じ立場にいないからコメントはすべきじゃないけど......何か他の方法で行動をおこせなかったのかなとは思うね。
 アルバムにはそういうものはぜんぜん反映されていない。普段のオービタルの作品に社会は反映されているけど、このアルバムはレアだね。毎回違うことをやるっていうスピリットがあるから、それはそれで良いことだと思う。でもちょっと考えてみると......現代の注意散漫さとかは少し反映されているかもしれないな。「やばい! 今日はまだフェイスブックをチェックしてない!」とか、そういう現代の社会的交流とかね。いまの時代、世のなかにはインフォーメーションが溢れすぎている。メディアも同じ。そういう精神錯乱みたいなものは、アルバムの要素のひとつかもしれないな。他にもあるはずだけど、メインはそれだよ。

たしかにそういう意味でも、この20年で音楽文化はほんとに変化しましたよね。インターネット、ダウンロード、iPod、mp3、PCひとつで音楽が作れる時代になって、そしてクラブのDJブースからはほとんどターンテーブルが消えてCDJとPCになりました。

ポール:そこはあんま関係ないと思う。家具を作るのにどの工具を使うかを議論してるのと一緒さ。大した問題じゃないんだよ。家具のできが良ければいいのと同じで、でき上がる音楽そのものが良ければそれでいい。良いDJがいて、音楽が良くて、ダンス・パーティが盛り上がってれば、それ以上に求めるものはないよ。

昔が懐かしいと思うことは?

ポール:ノーだね。それは全然ない! アナログ・シンセは好きだけど、ヴィンテージは高くなってきてるし、いまでは同じ機能をもつ新しいシンセがもっとたくさんでてきた。テクノロジーのおかげで、すべてがオープンになってきていると思うんだ。俺だって、パソコンひとつで壮大で素晴らしいテクノ・シンフォニーを書ける。しかも飛行機のなかでね(笑)。それって最高だよ。スタジオがなくても、どこでだって書けるんだ。ファンタスティックだと思うし、それをいちどできるようになると、もう昔には戻れないよ。

同世代の友人とはいまでも会って、遊んだりしますか?

ポール:いろいろな友人と会うよ。ケミカル・ブラザーズのトムには、けっこう近くに住んでるから、1年に1回くらい遭遇するんだ。そのときはシンセサイザーのことなんかを話してる。ほとんどは自分と同じ世代の人と出かけてるけど、騒ぐというより、パブとかに行くね。しかも、小さなパブにいくことが多いかな。

家にいるときによく聴いているのはどんな音楽ですか?

ポール:フォーク・ミュージックがほとんどかな。最近レナード・コーエンの新しいアルバムを買ったばかり。他は......やっぱりエルヴィス1990! エミリー・ポートマンもね!

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 先日、チン↑ポムが監修した美術手帖の打ち上げがあり、いま、ロシアで指名手配されながら美術活動を続けるヴォイナとのコーディネイトを務めたアンドレイ・ボールト氏と話をする機会があった。ヴォイナがどれだけ危険な状況にあるかは同誌に詳しくインタヴューが載っているので、そちらを参照していただくとして、2年前までロシアに住んでいたボールトさんに、ついあれこれと話題を持ちかけるなか、アンドレイ・ネクラーソフ監督『暗殺・リトビネンコ事件』は観たかと訊いてみたところ、それは観ていないけれど、僕の友だちもプーチンに逆らったために、いまも獄中にいると声を落とし、それまでの笑顔が少し曇ってしまった。ボクシングの試合に姿を現したプーチンに観客席からいっせいにブーイングが巻き起こるなど、全盛期の強権的支配が急速に翳りを見せているとはいえ、結局はヴォイナもパキスタンに脱出せざるを得ず(そのため、3月31日からワタリウムで行われるチン↑ポムとの共同展覧会に本人たちも来られることになったとはいえ)、表現者たちにとって厳しい状況が続いていることに変わりはない(『暗殺・リトビネンコ事件』ではイギリスに亡命したリトビネンコについてロシア国内で取材を続けていたジャーナリストたちが、最初はカメラに向かって様々な取材成果を語っていたのに、ドキュメンタリーが終わる頃にはひとり残らず死んでいたりする)。

 ロシアが資本主義化していく過程で生まれた新興の金持ちはオリガルヒと呼ばれ、時代の変化に対応できたのは当然、若い世代が中心だったために、彼らが好んだもののひとつにハウス・ミュージックがあった(プーチンもオリガルヒのチョイスだとされる)。現在、ロシアのディスコ・カルチャーは空前のイタロ・ブームに沸いていて、『フロム・ロシア・ウイズ・イタロ-ディスコ』といったコンピレイションがつくられたりと、まー、とにかく資本主義が謳歌されていることは間違いない。「働かざる者、食うべからず」というのはレーニンの言葉だし、その段階ですでにカトリック的な価値観は打ち捨てられていたのだから(カトリックというのは働いても食べるものが得られなければ、それも神の思し召しだと考え、労働量とその成果に明確な関係はないとするところがある)、自分の稼いだ金で遊ぶという面白さを制限できるわけがない。そして、そのような文化的な高揚のなかから、もしも面白い音楽が生まれているのなら聴かせていただくまでのことである。

 そうした退廃的ムーヴメントというか、日本人が置かれている環境と同じモードになっている場面にあって、どちらかというと暗いムードのコンピレイション・アルバムが耳を引いた。タイトルも『悲しいパターンの騎士たち』と、どこかオリガルヒに対して距離を取っているような印象もなくはない。モスクワのアントン・クビコフ(SCSI-9)とL.A.のエド・ヴェルトフが運営にあたり、早くからドイツのコンパクトにディストリビューションを委ねてきたレーベルの集大成である(対露投資では当然、ドイツが世界一なので、この関係はむしろ、言葉的にはドイツがロシアを食い物にするパターンだといえなくもない)。SCSI-9は〈サロ〉や〈フォース・トラックス〉からもリリースがある10年選手なので、ジャーマン・テクノを追っていた人なら名前ぐらいは目にしたことがあるだろう。同編集盤には「40分からの問題」と題された彼らの曲も収録され、煩雑になるので、いちいち名前は挙げないけれど、ロシアン・アンダーグラウンドからミニマル・ハウスのフロントラインがそれぞれにボコボコと重いベースを尖らせている(ジョン・テイヤーダがカリフォルニア、スーキーことシシー・カリーナ・ローマイヤーはベルリンからのエントリーか?)。ざわざとした店のムードとともにはじまる(英語読みで)テクニーク&ヤロースラヴ"チェック・ユア・アティチュード"からいきなりズブズブでドープ極まりなく、多少はしゃきっとしたところも見せつつ、クロージング・トラックにあたるドイエク"オールモスト・グリーン"ではリバーヴがあまりにも深く響き渡り、『悲しいパターン』は不思議なほど穏やかな気分で幕を閉じていく。

『ザ・ナイツ・オブ・ザ・サッド・パターン』に収録された8曲はどれも掛け値なしにハウス・ミュージックである。だけれども、ベースがあまりにゴツゴツとしているせいか、ダブステップを通過したハウス・ミュージックとして話題のBNJMNことベンジャミン・トーマスの近作にどことなく似通った印象を抱かせるところもある。デトロイト・テクノにしか聴こえないダブステップの逆パターンというのか、ブレインフィーダーのティーブスとジャックハイの名義でリリースした「トロピックEP」がブレイクのきっかけとなったトーマスは、ソロでは昨年、『プラスティック・ワールド』と『ブラック・スクエア』を立て続けにリリースし、今年になって、その2枚のアルバムから選ばれた14曲が初めてCD化されている。後者のアナログ盤はジャケットの内袋に外袋のデザインを印刷し、外袋には内袋のデザインを施したために、一見すると単なる12インチ・シングルにしか見えないというもので、錯視を利用したラッシュ・アワーのデザインをさらに遊び倒したものといえる。サウンドの方は、しかし、作を追うごとに機能的となり、軽妙洒脱な洗練と引き替えに遊び心は減少傾向にあるようにも感じられる。それでも、ハウス・ミュージックに新風を吹き込もうとする意欲は充分に伝わってくる(タイトル・トラックにはヴェルヴェット・アンダーグラウンドのサンプルが使われているらしい)。

 また、〈ラッシュ・アワー〉からオランダの老舗である〈デルシン〉に移籍したコンフォースことボリス・ブニクによるセカンド・アルバム『エスケイピズム』もハード・ワックスから支持されるだけあって、ベイシック・チャンネルを湿地帯でぶわぶわにしたような展開が実に気持ちよく、ダブとハウスの親和性をここでも印象付けてくれる(アナログの方が例によってデザインがいい。現場で作業しているのは理研軽金属工業株式会社の斉藤さんか?)。冒頭の「シャドウズ・オブ・ザ・インヴィジブル」からあっさりと持っていかれ、エレクトロの導入もいいアクセントになっている。なるほど「現実逃避」という感じかもしれない......

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ONUR ENGIN

ONUR ENGIN MUSIC UNDER NEW YORK GLENVIEW / US / 2012/3/11 »COMMENT GET MUSIC
エディット・シーンの超新星ONUR ENGINのファースト・アルバムが緊急リリース!定番クラシックスをニュー・ディスコ/ビートダウン/ブレイクビーツ/ダウンテンポetc..とDJ ユースなフォーマットにリエディット仕上げた絶品トラックが並ぶ抜群の内容でございます◎

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V.A.

V.A. AHYEWA SOUNDWAY / UK / 2012/3/16 »COMMENT GET MUSIC
QUANTICエディット収録!アンディスカヴァリーな上質ワールド/辺境ミュージック復刻の権威<SOUDWAY>からDJユースなアフリカ物 リエディット12"到着しました!純粋な発掘/復刻リリースも良いですがこういったエディット処理後の使える12"がDJ的には嬉しい限りです◎ 推薦盤!

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VAKULA feat. DICES

VAKULA feat. DICES ASUWANT SHEVCHENKO / UK / 2012/3/13 »COMMENT GET MUSIC
VEDOMIR名義も絶好調、間もなくそのアルバムもリリース予定のウクライナの天才VAKULA、<FIRECRACKER>傘下の <SHEVCHANKO>よりニュー・リリース!フォロワーが溢れかえる中、今作も型にハマらないフレッシュなハウス・ミュージックを披露。圧倒 的なリリース量にこのクオリティ・・VAKULAスゴイです!ワンショット限定クリアヴァイナル!

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KENNY DIXON JR

KENNY DIXON JR ULTRA RARE JAN REMIXES & EDITS 2 UNKNOWN / FRA / 2012/3/13 »COMMENT GET MUSIC
入手困難なMOODYMANNレア・ワークスをコンパイルしたMOODYMANN公認(?)と思われる「ULTRA RARE JAN REMIXES & EDITS」第2弾!今回も90年代のKDJ初期傑作レア・ワークスをコンパイル(ほぼ「MOODYMANN EP」のリイシュー!)した贅沢内容!第1弾同様、初回プレス・オンリーの限定盤となりますのでお見逃し無く!

5

JOAQUIN JOE CLAUSSELL

JOAQUIN JOE CLAUSSELL UNOFFICIAL EDITS AND OVERDUBS VERY LIMITED 7" PACKAGE SACRED RHYTHM MUSIC / US / 2012/3/1 »COMMENT GET MUSIC
推薦盤!「UNOFFICIAL EDITS AND OVERDUBS」シリーズからリミテッド7"!レアグルーヴ・クラシックのグレイト・リエディッツ!共に7分越えのDJユース仕様です◎

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UCND / DJ SHINYA

UCND / DJ SHINYA MORONDAVA / SK.HIGH NNNF / JPN / 2012/2/21 »COMMENT GET MUSIC
SOFTのメンバーUCONとKNDによるライブ・セッション・ユニットUCND(ウコンドウ)待望のスタジオレコーディング音源、そしてその UCNDも幾度となくライブ・セッションを重ねてきた京都発ブラック・ミュージック・パーティー「BUTTER」主宰DJ SHINYAによるラグドなレアグルーヴ・エディットがカップリング7"リリース!

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GENE HUNT

GENE HUNT MAY THE FUNK BE WITH YOU (THEO PARRISH REMIX) RUSH HOUR / NL / 2012/3/14 »COMMENT GET MUSIC
THEO PARRISHリミックス収録!昨年GENE HUNT所有倉庫に眠っていた80年代の鬼レア貴重未発表シカゴ・トラックスの数々をリリースにまで漕ぎ着けた<RUSH HOUR>が再び送り出すのはその重鎮GENE HUNTニュー・トラック!

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UNKNOWN

UNKNOWN STORY #6 STORY / GER / 2012/3/14 »COMMENT GET MUSIC
COTTAMら旬の人気クリエイターが覆面で登場する<STORY>シリーズ第6弾!シンセ/キーボードを多様したグッド・メロなウォーミー・ ディープハウス/ビートダウン3トラック!

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V.A.

V.A. LUV 005 LOVE UNLIMITED VIBES / GER / 2012/3/14 »COMMENT GET MUSIC
詳細不明"謎"の覆面リエディット・シリーズ<LOVE UNLIMITED VIBES>第5弾!例に漏れず淡いメロウ・ディープハウス/ビートダウン絶品3トラック収録!

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VEDOMIR

VEDOMIR VEDOMIR EP SOUND OF SPEED / JPN / 2012/3/1 »COMMENT GET MUSIC
EDDIE C、KERRIER DISTRICT a.k.a. LUKE VIBERTと確かなメンツの好リリースが続いた<SOUND OF SPEED>のアナログ・シリーズに、現行ハウス・シーンの次世代最注目株VAKULAが変名VEDOMIRで登場!

Metronomy - ele-king

 ジョセフ・マウントの作る音は耳を笑わせる。それも、思わず身体の力が抜けてしまうようなささやかさで、それを聞く人間の顔を綻ばせてしまう。このアルバムなら、手っ取り早く6曲目の"ピーターズ・パン"を聴いてみるといい。オモチャのフライパンをいい大人がポコポコ叩いてるような滑稽な音の反復が、しかし妙な真面目さも伴いながら繰り広げられるものだから、ふざけているのかもよくわからなくなってくる。僕はアキ・カウリスマキの映画の、無表情の登場人物たちが醸し出す人を食ったようなユーモアを思い出す。そして、ああこれは、ほんの少しだけ笑うことがどれだけ大切なことかよくわかっているひとが作っている音だなとしみじみする。

 このアルバムは、メトロノミーがジョセフ・マウントのベッドルーム・プロジェクトだった時代の記録であり、一躍世にその名を知らしめた『ナイツ・アウト』の前史である。ゼロ年代がはじまる前後から、田舎町のいくつかのバンドでドラムを叩きながらコンピュータでひとりでヘンテコなエレクトロニック・ミュージックを作っていたマウントは、やがてそれこそが自分の音だと気づくことになるのだが......ここにはまだその確信はない。とりとめもないアイディアが散らばって、それぞれがまだ不安そうにこちらの様子を窺っている。その当時の音源を集めたデビュー作をこうして再発盤で聴いいていると、もうなんだか、愛おしく思えて仕方がない。
 おそらく〈ワープ〉のクラシック・カタログに多大な影響を受けているだろうIDMと、ディーヴォの脱臼感(諧謔)と、初期のゲーム音楽のロウビットな音質とファニーさを混ぜ合わせたようなエレクトロニカのコレクション。現在に繋がる控えめな佇まいやアンニュイなムードは共通するものの、そのサウンドはバラバラだ。
 まず特筆すべきは、音そのものの圧倒的な語彙の多さだろう。ひとつひとつのシンセ音に明確な個性を与えんとばかりに、ノイズを混ぜたり、倍音を含ませたり、あるいは潰したり歪ませたり濁らせたりしながら、徹底的にそれらをいじり倒している。メトロノミーと言えばプロダクションの斬新さが何よりの特長だというイメージがあるが、『ナイツ・アウト』のコンセプチュアルな作りや『ジ・イングリッシュ・リヴィエラ』の洗練に向けてむしろ音を絞っていったことがこのアルバムを聴けばわかる。"デンジャー・ソング"でプニプニしたグミのような感触の音を聞かせたかと思えば、"ブラック・アイ/バーント・サム"では管楽器を音を外して吹いているような不協和音に力なく歌わせ、"ザ・サード"ではひしゃげたヒューマン・ビートボックスを模してみせる。そしてそれらが、足元が覚束ないビートの上ですれ違い、あまりにもゆるいグルーヴを漂わせていく。チルアウトでもない、とにかく情けなくて頼りないダンス・ミュージック。機能的ではないかもしれないが、意識の内側にはじわじわと染みこんでくる。
 トラックによって出来のバラつきはある。だが、"ブラック・アイ/バーント・サム"で普段大人しい奴がどうにかこうにか感情を吹き出したようなエモーショナルなメロディや、周波数が安定しないラジオから聞こえてくるようなディスコ"トリック・オア・トリーツ"辺りには、マウントのポップに対する感性がすでに存分に発揮されているし、ラストの"ニュー・トイ"ではどこか厳かな響きもあり、その引き出しの多さを見せつけている。とにかく、マウントはベッドルームでひとり、膨大な音と戯れ続けたのだ。

 それにしても、こんな風にひっそりとサウンド遊びをしていたマウントは、いったい誰を笑わせようとしていたのだろう? ここで彼が面白おかしく表現しているものは、しかしよく聴けば、切なさ、物悲しさ、情けなさ、もどかしさ、あるいは期待外れ......というようなものに感じる。ありったけのウィットとペーソスでもって、自分のカッコ悪さを慈しむようでもある。本作において唯一のヴォーカル・トラック"トリック・オア・トリーツ"では、女の子の目線を借りて新たな恋への期待と不安を虚勢を張りつつ歌っている......自分のみっともなさをチャーミングなものに仕立てるかのように。ただ何となく続いていく日常の、取るに足らない自分の情けなさや些末な感情に音を与えていたジョセフ・マウントは、自分のカッコ悪さを笑ってやることで許していたのだろう。だから、その音は自分のか弱さを知っているリスナーに......ダンスフロアの隅っこで遠慮がちに踊っているような人間に支持されることになったのだ。いま、ヨーロッパでメトロノミーが大いに支持されているのは、この頃から手軽な高揚に甘えなかったマウントの思慮深さによるものである。
 ちなみに、国内盤にはボーナス・トラックが4曲収められていて、とくに"アー・マムズ・メイト"の間抜けさ、"イン・ザ・D.O.D."の妙なファンキーさ、"ヒア・トゥ・ウェア"のチープな響きには思わず笑ってしまう。"アナザー・ミー・トゥ・マザー・ユー"の軽さもいい。このささやかな笑いは、明日も繰り返される日常に向かっていくために存在する。

Chart by Underground Gallery 2012.03.15 - ele-king

Shop Chart


1

THE HOUSEFACTORS

THE HOUSEFACTORS Play It Loud (Black Market / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
ロンドンの名門[Black Market Records]が、レーベルのクラシック作品を正規再発していくシリーズ第三弾は、シカゴ・レジェンドLARRY HEARDがTHE HOUSEFACTORS名義にて88年にリリースした幻の1stシングル「Play It Loud」! このシリーズ、本当に見逃せませんよ!数あるLARRY HEARDの中でも、マッドさ、レアさ、共にトップ・クラスのカルト作品「Play It Loud」がリマスタリング復刻!ドカドカと打ち鳴らされたTR909のグルーヴに、マッドなうねるアシッディーなアルペジオ・シンセがグルグルと回り続ける、"裏"LARRY HEARDを代表するクラシック!DERRICK MAYもその昔ヘビー・プレイしていました。ちなみに、中古市場では、70ユーロなんて金額で取引されています。音質も音圧もばっちりなので、オリジナル盤を持っているって方も、これは見逃せません

2

IUEKE

IUEKE Tapes (Antinote / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
フランスはパリの新興レーベル[Antinote]の第一弾は、IUEKEなる素性不明なアーティストが、1991年~92年にかけて、ロンドンのレゲエ・スタジオで制作し、カセットテープにてリリースされていたという、超マニアックな作品が、ヴァイナルにて復刻! とにかく音がマッド!ザラザラしたアナログ感は、現在主流の作品では味わえない、独特の質感があって、とにかくヤバイ...。ノイジーなウワ音とLO-FIなグルーヴを軸に、クレイジーに暴れるアシッド・シンセがマッドに飛び交うA面「Tape 1」、ドラッギーな電子音が入り乱れたインダストリアル・トラックのB1「Tape 2」など、3トラックを収録。JAMAL MOSSにも通じるマッドさと、初期APHEX TWIN的な実験性をもった、かなり危険は一枚!

3

SEAHAWKS

SEAHAWKS After Sunrise (Ocean Moon / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
限定500枚!DR.DUNKS aka. ERIC DANCAN / GATTO FRITTO リミックス! UKの名門レーベル[Lo Recordings]のオーナーJON TYEと、ATPフェスのアートワークもを手がけるPETE FAWLERによるバレアリック・デュオSEAHAWKSが、昨年末にリリースした 2ndアルバム「Invisible Sunrise」収録作を、RUB'n TUG、STILL GOINGでも活躍する ERIC DANCANのプロジェクト DR.DUNKS、[International Feel]や DJ HARVEYのへヴィープレイでも話題を呼んだ「Invisible Collage」のヒットで知られる GATTO FRITTOがリミックス。 アルバム内でも特に人気の高かった「Catch A Star」を、ERIC DANCANがダヴィーなシンセを効かせた、メロー・バレアリックなスローモー・ディスコ・リミックスへリミックスしたA面、アルバム・タイトル作「Invisible Sunrise」を GATTO FRITTOがディープ・エレクトロ・コズミック・サウンドにリミックスしたB面と、どちらも抜かり無し!

4

NO MILK

NO MILK One Time Or One More Time Ep (Ragrange Records / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
RONDENIONが主催する[Ragrange]の新作は、[Outergaze]や[Capricious]、[Yore]、[Third Ear]などから作品をリリースしてきた、日本人プロデューサー NO MILKのNewシングル。 過去作品は、THEO PARRISHにへヴィー・プレイされるなど、数いる日本人アーティストの中でも、頭ひとつ抜けたハウス作品をリリースしてくれるNO MILK、今回はアシッド・テイストを散りばめたA1や、スピリチュアル・ジャズ的な不穏なオルガン・ループドラッギーなリズム・ベースで展開させたA2、NO MILK流のファンキー・ハウスのB1、ディスコ・クラシックのコーラス・パートをサンプリングした、アシッド・ハウスB2と、全4曲を収録。当然、大推薦な1枚です。

5

RONDENION

RONDENION Devotion (Faces Records / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
もはや説明不要のジャパニーズ・ディスコ・マスターRONDENIONが、日本人アーティストKEZ YMやMOTOR CITY DRUM ENSEMBLEなどもリリースしてきた、フランスの[Faces Records]から新作をドロップ。限定500枚! 絶妙にカット・アップされたディスコ・サンプルを、ねちっこく、エロティクに反復 させた、RONDENIONらしいブラック・ディスコ・ハウスが3トラック。US産にも通じる ザラついた荒々しい質感もグッと来ます。初期のKDJファンにもオススメです。全世界 限定500枚プレスとのアナウンスです。

6

V.A

V.A Magic Wand Vol.4 (Magic Wand / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
UKの人気バレアリックレーベル[Is It Balearic?]傘下に立ち上げられた リエディットレーベル[Magic Wand]新作。今回は 御馴染み COYOTEを筆頭に、[American Standard]からリリースを残す SAD GHOSTらが参加した 4トラックを収録。まず A1ではその SAD GHOSTが、聞き覚えのある男性ヴォーカルモノの 哀愁系アコスティック・フォークナンバーを ネタにした レイドバック・ダヴィーリミックス「Sweet Lady Magic」、A2には 詳細不明のアーティスト SWARTHY ROUGUESによる 緩やかな AOR系バレアリック・ダヴィー・ディスコ「Like Loving You」。B1には サイケデリック~アシッドフォーク系ファンの方には御馴染みの USのシンガー・ソングライター TIM BUCKLEYによる 69年作「Cafe」を、サイケ・ダヴィーなスローモー・ディスコ化にアレンジ B1、B2には エキゾチックな女性ヴォーカル・ブギーをネタにした、COYOTEがリエディットを手掛ける「I Dig Marion」を収録。

7

JOSE GONZALES

JOSE GONZALES Cycling Trivialites (SAHKO Recordings / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
5年前にリリースされた名盤「In Our Nature」に収録され、長年12インチ・カットが望まれていた名作「Cycling Trivialites」が、フィンランドの名門レーベル[Sahko]より遂に12インチ化! 幻想的な空気感を奏でる繊細なギターの音色と、心地の良い温もりを持ったヴォーカルが紡ぎだす美しい世界は、もはや圧巻の一言...。ほんとうに素晴らしすぎます。 アルバム収録曲とは別ヴァージョンでA面、B1には同作の"Radio Edit"、さらにB2には同じくアルバム「In Our Nature」から「The Nest」を収録。LPは今では入手困難な1枚となっていますので、持っていなかった方も是非この機会をお見逃しなく!間違いなく、2000年代を代表するアコースティック/チルアウト/フォークの名盤ですよ!

8

JASON GROVE

JASON GROVE 313.4 Ever (Skylax Records / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
80年代後半からDJとして活動をはじめ、"WJLB"や"WDRQ"などの地元のローカルラジオ局にて活動してきた、デトロイトの隠れたベテラン・プロデューサーJASON GROVE、待望の1stアルバムがフランスの名門[Skylax]より登場! 昨年末[Skylax]傘下の新レーベル[Wax Classics]より、15年前に制作していたというテープ音源をリマスター12インチ化させ話題を集めたJASON GROVEが、自身のキャリア初となるフルアルバムをリリース!先行リリースされたの2作のシングル作品でも見せた、オールド・スクール感満載のリアル・アンダーグラウンド・デトロイト・ハウスを全12トラック(しかも全て新作)収録!OMAR-S、THEO PARRISH辺りの、リアル・ビートダウン・ファンの方なら間違いありませんよ~絶対にチェック!

9

RICHARD SCHNEIDER JR.

RICHARD SCHNEIDER JR. Dreamlike Land (Harvest/ LP) »COMMENT GET MUSIC
限定復刻! ドイツのマルチ・コンポーザー RICHARD SCHNEIDER JR.が[Harvest]から77年にリリース発表した、エレクトロニクスとワールドミュージックを融合させた、プログレ・ロック超名盤! ブラジリアンなサンバ、ボサノバ、メキシコやペルーなど南米音楽と、当時のドイツのシーンを象徴するかのような、ドラッギーでスペーシーなエレクトリックなシンセが見事に融合した、ナカナカ他では聴けないタイプの、70's ジャーマン・エレクトロ~プログレッシブ・ロック名盤。南米系ワールド・ミュージックファンや、AOR好きの方はもちろんですが、コズミック~レフトフィールド方面の方も、是非チェックしてもらいたい、踊れる楽曲も多数収録しているので、是非、騙されたと思って試聴だけでもしてみてください。本当に、カッコイイので、オススメです。限定プレスでのリリースとなっていますので、是非お早めに!

10

ASUSU

ASUSU Sister (Livity Sound/ 12inch) »COMMENT GET MUSIC
[Punch Drunk]を主催している事でもお馴染み、Peverelistが新たにスタートさせた、超限定ホワイト・シリーズ[Livity Sound]の第二弾は、地元ブリストルのトラックメイカーASUSUのよる、ダブステップ通過後のディープ・テクノ・サウンド! デトロイティシュな空間シンセと尖ったスネアが印象的な、ディープ・ハウス・ナンバーのA面も良いですが、ここで特筆すべきはB面に収録されたヘビー・ウェイト・ダブ・テクノ!非4つ打ちな、ドープグルーヴと、スモーキーなダブ空間でハメていく、ベース・ミュージック!かなりプレス枚数も少なく、現在のところは、入手が困難なシリーズなので、気になる方はお早めに!
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